JPH1175429A - 種子入り簡易苗床とその製造方法及び梱包方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 家庭園芸や小規模農業において、手間を掛け
ずに園芸や農業が可能になり、必要量に応じて小規模で
も供給可能な苗床を提供することができ、大規模農業に
おいては、苗床作成から苗の移植にかかる労力が軽減さ
れ、さらに、その製造や流通に既存の材料をなるべく使
えるようにし、また、育成しようとする植物の必要とさ
れる量の多少に関わらず、その必要量に応じて手間の少
ない簡易な苗床を提供する。 【解決手段】 植物の種子と、繊維の並ぶ方向が略同一
方向であるが繊維自体の捩れやうねりにより綿状に膨張
した有機繊維質の綿状束と、水溶性紙から成り、種子
は、綿状束の間に挿入され、種子の挿入された綿状束
は、通気と吸水が可能な範囲で繊維の並ぶ方向に垂直の
方向に圧縮され、水溶性紙は、圧縮された綿状束の周り
を有機繊維質を束ねるように巻かれ、水溶性紙の巻かれ
た両端は固着手段で固定される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、植物種子の苗床に
関し、更に詳しくは、植物の種子が予め苗床に挿入され
て水に浸けるだけで植物の種子の発芽が促せる種子入り
の簡易苗床に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の苗床としては、水或いは水に液肥
を混ぜてトレー等に薄く張った上に植物の種子を浸すよ
うに蒔いていく方法や、水を十分に含ませた土に植物の
種子を蒔いていく方法や、土の代わりに水に浸したスポ
ンジ状の材料を用いてその上やそこに設けた穴等に植物
の種子を蒔いて苗床にする方法が知られている。

【０００３】一般に家庭園芸や小規模の農業において
は、植物の種子を土に直播きして水や肥料を与えて発芽
させるか、既に種子から発芽して有る程度大きくなった
植物の苗を購入する等で得て、その苗を土に植え替えて
成長させており、通常は苗床は用いられない。

【０００４】大規模な農業においても、自分たちで必要
とする量の苗を用意するためには苗床の容器やその中に
入れる水や液肥あるいは土といった苗床の基盤となる材
料や苗床で発芽される植物の種子を自分たちで用意し、
まず、苗床の水や土等を容器に入れて用意し、その用意
された基盤の上に自分たち自身で種子を蒔いて苗床とし
ている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
直播きでは、植物の種子が鳥や小動物に食べられたり、
水の量や土の被さる量が不適当であったりして発芽しな
いことがあり、種子から苗まで成長するかどうかがわか
らず、種を蒔いた場所で苗が成長する見通しが立て辛か
った。また、発芽しない種子があると、植物の育成場所
における苗が間引き状態になり、植物の生産効率が下が
っていた。

【０００６】大規模な農業においても、苗床を用意して
種子を蒔き、さらにその種子が発芽して成長した苗を苗
床から移植する作業に必要とされる労力は多大である。

【０００７】本発明の解決しようとする課題は、家庭園
芸や小規模農業においては、手間のいらず、必要量に応
じて小規模でも供給可能な苗床を提供し、大規模農業に
おいては、苗床作成から苗の移植にかかる労力を削減す
ることであり、その製造や流通に既存の材料をなるべく
使えるようにすることである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明に
おいては、植物の種子と、繊維の並ぶ方向が略同一方向
であるが繊維自体の捩れやうねりにより綿状に膨張した
有機繊維質の綿状束と、水溶性紙から成り、前記種子
は、前記綿状束の間に挿入され、前記種子の挿入された
前記綿状束は、通気と吸水が可能な範囲で繊維の並ぶ方
向に垂直の方向に圧縮され、前記水溶性紙は、前記圧縮
された前記綿状束の周りを前記有機繊維質を束ねるよう
に巻かれ、該水溶性紙の巻かれた両端は固着手段で固定
されることを特徴とする。

【０００９】請求項１に記載の発明では、育成しようと
する植物の必要とされる量の多少に関わらず、その必要
量に応じて手間の少ない簡易な苗床が提供できる。

【００１０】請求項２に記載の発明においては、前記綿
状束の中の前記種子と直接に接しない場所に、前記種子
の植物の成長に有効な水溶性肥料を挿入することを特徴
とする。

【００１１】請求項２に記載の発明では、前記請求項１
の内容に加えて、植物の生長に必要な肥料も同時に与え
ることができる。

【００１２】請求項３に記載の発明においては、繊維の
並ぶ方向が略同一方向であるが繊維自体の捩れやうねり
により綿状に膨張した有機繊維質の綿状束の間に、植物
の種子を挿入する行程と、前記種子の挿入された前記綿
状束を、通気と吸水が可能な範囲で繊維の並ぶ方向に垂
直の方向に圧縮する行程と、前記圧縮された前記綿状束
の周りを前記有機繊維質を束ねるように水溶性紙を巻
き、該水溶性紙の巻かれた両端を固着手段で固定する行
程を有することを特徴とする。

【００１３】請求項３に記載の発明では、育成しようと
する植物の必要とされる量の多少に関わらず、苗床をつ
くる際の手間を少なくすることができる。

【００１４】請求項４に記載の発明においては、前記繊
維束を圧縮する行程の前に、挿入される種子の植物の生
長に有効な水溶性肥料を挿入する行程を有することを特
徴とする。

【００１５】請求項４に記載の発明では、前記請求項３
の内容に加えて、植物の生長に必要な肥料も同時に与え
ることで手間が一層少なくなる。

【００１６】請求項５に記載の発明においては、種子が
挿入され、圧縮され、水溶性紙を巻かれた綿状束の長さ
と直径が煙草の直径と略同一である種子入り簡易苗床
を、所定本数入りの煙草のパッケージと略同一なパッケ
ージに所定本数の種子入り簡易苗床を梱包することを特
徴とする。

【００１７】請求項５に記載の発明では、既存の煙草の
材料や梱包材料、梱包装置をそのまま流用することがで
きる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て、図を用いて説明する。

【００１９】図１は、本発明に係る種子入り簡易苗床の
実施形態の全体的な構成を示す図である。

【００２０】種子１は、一般的な植物の種子であり、例
えば、水稲の種籾、観葉植物の種子、家庭菜園の種子等
である。

【００２１】綿状繊維束２は、繊維の並ぶ方向は略同一
方向に揃えてあるが、繊維自体の捩れやうねりにより綿
状に膨張している有機繊維質の束であり、例えば、煙草
吸い口のフィルタ部分に用いられている繊維質の束を煙
草１本の長さに延ばしたものか、必要に応じてより長く
延ばしたものである。

【００２２】水溶性紙３は、一般的に入手可能な水溶性
の紙であり、例えば、パルプ等の天然の有機繊維質を、
その繊維質自身の水溶状態から乾燥時状態になる時の固
着能力を使用するか、水溶性のバインダ材料等を使用し
てシート状に薄く形成したものである。また、この水溶
性紙３の両端を固着する固着材料も、一般に入手可能な
水溶性の固着材料であり、一例としては、澱粉糊であ
る。

【００２３】発芽４は、必要な水分の供給等や温度条件
等が合ったことから、種子１から発生した発芽部分であ
る。

【００２４】根５は、発芽４と同様に、必要な水分の供
給等や温度条件等が合ったことから、種子１から発生し
た根部分である。

【００２５】図１（ａ）の状態の種子１入り簡易苗床
を、トレイに置いて薄く水を張るか、水を充分に含ませ
た土の上に置いていくか、土の上に置いて水を充分に掛
けるかする。

【００２６】図１（ａ）の水溶性紙３は、水を吸って解
け始め、そのもっとも弱い部分に、圧縮された綿状繊維
束２の膨張しようとする力により亀裂が生じて裂け、綿
状繊維束２は膨張した状態である図１（ｂ）の状態とな
る。

【００２７】図１（ｂ）では、まだ水溶性紙３は溶けき
っておらず、綿状繊維束２の周りに残っているが、綿状
繊維束２は膨張しきっており、その中に周りの水分を充
分い取り込んだ吸水状態である。従って種子１にも十分
に水分が供給されて、また、綿状繊維束２が広がってお
り、通気性も確保されているので、綿状繊維束２に挿入
されている種子１の発芽４が促される。

【００２８】図１（ｃ）の水溶性紙３の溶解は時間と共
に進み、やがて完全に溶けてパルプ状態のみとなり有機
分解されてしまうが、水と空気の供給が続くので、発芽
４は成長を続けて苗となる。

【００２９】この種子入り簡易苗床を、上記のような家
庭菜園や個人の観賞用の植物栽培に使用する場合ではな
く、大規模な農業に使用する場合には、栽培される植物
の種子の大きさに合わせて綿状繊維束２の量を調整する
ことで種子入り簡易苗床の太さ（直径）を変えたり、種
子入り簡易苗床の長さを煙草の長さと同様に切断しない
で長く繋いだままとしてこの種子入り簡易苗床を作り、
さらに、綿状繊維束２の中に挿入する植物の種子の量や
挿入間隔を調整する等を製造時に行うことで、作業効率
を良くすることができる。

【００３０】図２は本発明の種子入り簡易苗床の実施形
態の製造方法の行程を示す図である。

【００３１】スライバーの綿状繊維束のトウ６は、エア
ーブロー機７でブローされ、膨張し、入ロール８と出ロ
ール９を通り、種子挿入機１０で所定位置に所定間隔で
種子が挿入され、巻上部１３に入る。巻上部１３では巻
上テープ１２で進められて、綿状繊維束は圧縮されなが
ら巻取紙１１で巻き上げられ、棒状になり、接着部１４
に送られ接着乾燥される。

【００３２】切断部１５では巻き上げられて接着された
綿状繊維束入り巻取紙が、巻上テープ１２のスピードに
同期して所定の長さに切りそろえられ、製品が完成す
る。完成した製品は、計量部１６で計量されて、品質検
査される。品質検査で合格後の製品は図示しない梱包が
行われて出荷される。

【００３３】この製造過程では、煙草製造における、フ
ィルタ部の製造方法を煙草１本の全ての長さとして、綿
状繊維束を巻き上げる前に植物の種子を種子挿入機９
で、所定位置に所定間隔で挿入するものでもよい。

【００３４】このようにして得られた種子入り簡易苗床
を商品として梱包する場合には、種子入り簡易苗床の外
形は煙草の外形と同様に形成され、寸法もどうようにで
きることから、従来の煙草の梱包に使用されている梱包
装置がそのまま利用可能である。

【００３５】また、梱包が煙草の梱包と同様にできるこ
とから、煙草の自動販売機等を利用して、本発明の種子
入り簡易苗床を販売することも可能である。

【００３６】尚、本実施の形態では、煙草の寸法に合わ
せて種子入り簡易苗床を製造しているが、本発明はこれ
に限らず、さらに細い直径サイズの種子入り簡易苗床
や、逆に太いサイズの種子入り簡易苗床、あるいは、長
さが１ｍ等の長い種子入り簡易苗床を供給する場合にも
適用可能である。

【００３７】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、以下
のような優れた効果を奏する。

【００３８】請求項１に記載の本発明によれば、家庭園
芸や小規模農業においては、手間を掛けずに園芸や農業
が可能になり、必要量に応じて小規模でも供給可能な苗
床を提供することができ、大規模農業においては、苗床
作成から苗の移植にかかる労力が軽減される。さらに、
その製造や流通に既存の材料をなるべく使えるようにし
た。また、育成しようとする植物の必要とされる量の多
少に関わらず、その必要量に応じて手間の少ない簡易な
苗床が提供できた。

【００３９】さらに、本発明の種子入り簡易苗床は、全
て土に帰る材料で構成されるため、土中に毒性の有る材
料や物質が残らないので環境にも良いものである。

【００４０】請求項２に記載の本発明によれば、請求項
１の内容に加えて、植物の生長に必要な肥料も同時に与
えることができた。

【００４１】請求項３に記載の本発明によれば、育成し
ようとする植物の必要とされる量の多少に関わらず、苗
床をつくる際の手間を少なくすることができた。

【００４２】請求項４に記載の本発明では、前記請求項
３の内容に加えて、植物の生長に必要な肥料も同時に与
えることで手間を一層少なくすることができた。

【００４３】請求項５に記載の本発明では、既存の煙草
の材料や梱包材料、梱包装置をそのまま流用することが
できた。

【００４４】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る種付き苗床の全体構成の実施の形
態の一例を示す図である。

【図２】本発明に係る種付き苗床の実施の形態の製造方
法の一例を示す図である。

【符号の説明】

１・・・種子、 ２・・・綿状繊維束、 ３・・・水溶性紙、 ４・・・発芽、 ５・・・根、 ６・・・トウ ７・・・エアーブロウ機 ８・・・入ロール ９・・・出ロール １０・・・種子挿入機 １１・・・巻取紙 １２・・・巻上テープ １３・・・巻上部 １４・・・接着乾燥部 １５・・・切断部 １６・・・計量部

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】植物の種子と、繊維の並ぶ方向が略同一方
   向であるが繊維自体の捩れやうねりにより綿状に膨張し
   た有機繊維質の綿状束と、水溶性紙から成り、 前記種子は、前記綿状束の間に挿入され、 前記種子の挿入された前記綿状束は、通気と吸水が可能
   な範囲で繊維の並ぶ方向に垂直の方向に圧縮され、 前記水溶性紙は、前記圧縮された前記綿状束の周りを前
   記有機繊維質を束ねるように巻かれ、該水溶性紙の巻か
   れた両端は固着手段で固定されることを特徴とする種子
   入り簡易苗床。
2. 【請求項２】前記綿状束の中の前記種子と直接に接しな
   い場所に、前記種子の植物の成長に有効な水溶性肥料を
   挿入することを特徴とする請求項１に記載の種子入り簡
   易苗床。
3. 【請求項３】前記水溶性紙は、水に浸されるか吸水可能
   な水分を含む場所に置かれることで水を吸って溶解を始
   め、該水溶性紙表面のもっとも弱い場所に亀裂を生じ、
   中の綿状束が露出され、 前記綿状束は、前記水溶性紙に亀裂が生じたことから圧
   縮されていた力が解放されて膨張を始めると共に周りの
   水分を吸い込んで綿状束の中に取り込んで保水すること
   を特徴とする請求項１又は２に記載の種子入り簡易苗
   床。
4. 【請求項４】繊維の並ぶ方向が略同一方向であるが繊維
   自体の捩れやうねりにより綿状に膨張した有機繊維質の
   綿状束の間に、植物の種子を挿入する行程と、 前記種子の挿入された前記綿状束を、通気と吸水が可能
   な範囲で繊維の並ぶ方向に垂直の方向に圧縮する行程
   と、 前記圧縮された前記綿状束の周りを前記有機繊維質を束
   ねるように水溶性紙を巻き、該水溶性紙の巻かれた両端
   を固着手段で固定する行程を有することを特徴とする種
   子入り簡易苗床の製造方法。
5. 【請求項５】前記繊維束を圧縮する行程の前に、挿入さ
   れる種子の植物の生長に有効な水溶性肥料を挿入する行
   程を有することを特徴とする請求項４に記載の種子入り
   簡易苗床の製造方法。
6. 【請求項６】種子が挿入され、圧縮され、水溶性紙を巻
   かれた綿状束の長さと直径が煙草の直径と略同一である
   種子入り簡易苗床を、所定本数入りの煙草のパッケージ
   と略同一なパッケージに所定本数の種子入り簡易苗床を
   梱包することを特徴とする種子入り簡易苗床の梱包方
   法。