JPH1140430A - 磁心およびインダクタンス素子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大電流下において、改善された直流重畳特性
と共に、高いインダクタンスを得る。 【解決手段】 第１の磁心部材１は凹部１３を有する。
第３の磁心部材３は、第１の磁心部材１および第２の磁
心部材２とは、特性が異なる。第３の磁心部材３は、第
１の磁心部材１と第２の磁心部材２との間に設置され、
一端３１が凹部１３内に嵌め込まれている。第３の磁心
部材３の一端３１を凹部１３の内部に嵌め込むことによ
り、第１の磁心部材１および第２の磁心部材２の間にお
いて、端面１１と端面２１、および、端面１２と端面２
２が互いに突き合わされ、面接触が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、磁心およびインダクタ
ンス素子に関し、更に詳しくは、高周波動作する電力伝
送用回路、例えばスイッチング電源において、チョーク
コイルや変成器等として用いるのに適した磁心およびイ
ンダクタンス素子に係る。

【０００２】

【従来の技術】情報機器、通信機器、計測機器などの電
子機器、工作機械などの製造装置の電子回路及び機械的
な駆動に用いられる電源装置として、動作周波数の高い
高周波スイッチング電源が用いられるようになってい
る。高周波スイッチング電源では、パルスなどの交流波
形を直流波形に変換し、直流安定化出力を得る。交流を
直流に変換する手段として一般的にＬＣフィルタが使用
される。ＬＣフィルタを構成するインダクタンス素子の
磁心のための磁性材料としては、フェライト磁性材料、
パーマロイなどの結晶系の金属磁性材料及びアモルファ
ス材料が知られている。

【０００３】このうち、結晶系の金属磁性材料及びアモ
ルファス材料でなるインダクタンス素子は、直流重畳特
性に優れているが、鉄損特性ではフェライトに劣る。こ
のため、この種のインダクタンス素子の磁心材料として
は、フェライト磁性材料が主に用いられている。

【０００４】ところで、携帯用などのコンピュータなど
では小型・薄型化・軽量化が進んでいるが、一方では高
速化や高機能化に対し市場のニーズが強く、回路規模が
大きくなり大電流化の傾向にある。従って小型・薄型
で、かつ、大電流領域でも使用可能な低損失なインダク
タンス素子が必要になっている。

【０００５】従来のこの種のインダクタンス素子は、ギ
ャップのない完全な閉磁路構造の磁心を用いたギャップ
なしタイプと、磁心の一部にギャップを有するギャップ
付きタイプの２つが主に用いられていた。ギャップなし
タイプは、小さな直流電流によって磁気飽和を生じるた
め、一般にはギャップ付きタイプが使用されている。と
ころが、ギャップを設置すると、通常は空気層となるギ
ャップのため、透磁率が低下する。かかる問題点を解決
する手段として、例えば、特開平７−２８８２１０号公
報は、磁気特性の異なった磁性材料でなる複数の磁心部
材を突き合わせて磁心を構成し、直流重畳特性を改善す
る技術を開示している。複数の磁心部材を突き合わせて
構成するので、複数の突き合わせ端面が生じる。

【０００６】しかし、磁気特性の異なった磁性材料でな
る複数の磁心部材を用いる場合、材料特性や製造条件の
違いによって、組み合わせるべき磁心部材の寸法精度に
ばらつきを生じる。例えば、フェライト磁心部材を考え
ると、その製造ロットによって、配合、成型、焼成条件
などを完全に一致させることは困難であり寸法精度のば
らつきを生じるのを回避することができない。このた
め、磁心部材を組み合わせたときに、複数の磁心部材間
に生じる複数の突き合わせ端面において、一つの突き合
わせ端面において完全接触を生じさせると、他の突き合
わせ端面において、寸法精度に起因するギャップが発生
してしまうという問題を生じる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、大電
流下において、改善された直流重畳特性と共に、高いイ
ンダクタンスを得ることができるインダクタンス素子お
よびそのための磁心を提供することである。

【０００８】本発明のもう一つの課題は、製造条件のば
らつきなどに影響されずに、安定な磁気特性を得ること
の可能な磁心およびインダクタンス素子を提供すること
である。

【０００９】本発明のもう一つの課題は、製造が容易
で、歩留まりが高く、従って製造コストの安価な磁心お
よびインダクタンス素子を提供することである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ため、本発明に係る磁心は、複数の磁心部材を突き合わ
せて構成されている。前記複数の磁心部材の少なくとも
一つは、特性が他の磁心部材と異なる。

【００１１】複数の磁心部材間に生じる複数の突き合わ
せ部の少なくとも一つにおいて、一方の磁心部材に形成
された凹部に、他の磁心部材の端部が嵌め込まれてお
り、前記嵌め込みによって、他の突き合わせ部において
磁心部材間の面接触が得られる。

【００１２】上述のように、複数の磁心部材間に生じる
複数の突き合わせ部の少なくとも一つにおいて、一方の
磁心部材に形成された凹部に、他の磁心部材の端部が嵌
め込まれており、嵌め込みによって、他の突き合わせ部
において磁心部材間の面接触が得られているから、事実
上、ギャップの発生しない磁心が得られ、高いインダク
タンスを得ることができる。

【００１３】製造条件のばらつきなどににより、磁心部
材に寸法変動が生じた場合でも、凹部に対する磁心部材
の嵌め合いにより、寸法変動を吸収することができる。
このため、製造条件のばらつきなどに影響されずに、安
定な磁気特性を得ることができる。

【００１４】しかも、磁心部材の少なくとも一つに凹部
を設け、この凹部に他の磁心部材を嵌め込むだけでよい
ので、製造が容易であり、歩留まりが高くなり、製造コ
ストが安価になる。

【００１５】複数の磁心部材の少なくとも一つは、特性
が他の磁心部材と異なる。このような構成によれば、改
善された直流重畳特性を得ることができる。この構成
と、前述した嵌め込み構造によるギャップなし構造とに
より、大電流下において、改善された直流重畳特性と共
に、高いインダクタンスを得ることができるようにな
る。

【００１６】磁心部材間において対比されるべき特性に
は、透磁率および高周波損失特性等の電気磁気特性の
他、切削加工性等の物性的ないしは機械的特性等が含ま
れる。

【００１７】磁心部材の組み合わせ構造によっては、凹
部は、２箇所以上設けられていてもよい。

【００１８】好ましくは、凹部は、入口部にテーパを有
する。これにより、磁心部材を、凹部に容易に嵌め込む
ことができるようになる。

【００１９】本発明の他の目的、構成および利点につい
ては、実施例を示す添付図面を参照して、更に詳しく説
明する。

【００２０】

【発明の実施の形態】図１は本発明に係る磁心の正面図
である。図示された磁心は、第１の磁心部材１と、第２
の磁心部材２と、第３の磁心部材３とを含む。第１の磁
心部材１および第２の磁心部材２は、互いに対向し、端
面１１と端面２１、および、端面１２と端面２２が互い
に突き合わされている。第１の磁心部材１は、第２の磁
心部材２と対向する面に凹部１３を有する。

【００２１】第３の磁心部材３は、第１の磁心部材１お
よび第２の磁心部材２とは、特性が異なる。第３の磁心
部材３は、第１の磁心部材１と第２の磁心部材２の間に
設置され、一端３１が凹部１３内に嵌め込まれている。
第３の磁心部材３の一端３１を凹部１３の内部に嵌め込
むことにより、第１の磁心部材１および第２の磁心部材
２の間において、端面１１と端面２１、および、端面１
２と端面２２が互いに突き合わされ、面接触が得られ
る。

【００２２】図２は第１の磁心部材１の一例を示す斜視
図である。図示された第１の磁心部材１は、両端に脚部
１４、１５を有する。凹部１３は脚部１４、１５をつな
ぐ連結部１６の表面に、開口溝として形成されている。

【００２３】第２の磁心部材２も、同様の構造であっ
て、両端に脚部２４、２５を有し、脚部２４、２５を連
結部２６によってつないだ構造となっている（図１参
照）。

【００２４】図３は第１の磁心部材１の他の一例を示す
斜視図である。図示された第１の磁心部材１は、両端に
弧状脚部１４、１５を有する。凹部１３は脚部１４、１
５をつなぐ連結部１６の表面に、開口溝として形成され
ている。

【００２５】図４は第３の磁心部材３の横断面図であ
る。図示された第３の磁心部材３は、４隅部３２〜３５
がＲ付き曲面となっている。このような構造であると、
凹部１３に対する第３の磁心部材３の嵌め込み作業が容
易になる。第３の磁心部材３は種々の形状をとることが
できる。例えば、横断面で見て両端が円弧状となってい
るようなものであってもよいし、横断面が楕円状のもの
であってもよい。

【００２６】上述のように、第１の磁心部材１および第
２の磁心部材２は、互いに対向し、端面１１と端面２
１、および、端面１２と端面２２が互いに突き合わされ
ており、第３の磁心部材３は、第１の磁心部材１と第２
の磁心部材２の間に設置されているから、第１の磁心部
材１、第２の磁心部材２および第３の磁心部材３を巡る
閉磁路φ１、φ２が形成される。

【００２７】第１の磁心部材１は、第２の磁心部材２と
対向する面に凹部１３を有しており、第３の磁心部材３
は一端が凹部１３内に嵌め込まれ、第１の磁心部材１お
よび第２の磁心部材２の間において、端面１１と端面２
１、および、端面１２と端面２２が互いに突き合わさ
れ、面接触が得られるから、閉磁路φ１、φ２に、事実
上、ギャップの発生しない磁心が得られ、高いインダク
タンスを得ることができるようになる。

【００２８】第３の磁心部材３は、第１の磁心部材１お
よび第２の磁心部材２とは特性が異なる。対比されるべ
き特性には、透磁率および高周波損失特性等の電気磁気
特性の他、切削加工性等の物性的ないしは機械的特性等
が含まれる。

【００２９】例えば、第１の磁心部材１及び第２の磁心
部材２には、透磁率が高く、高周波損失が少なく、切削
加工の容易なフェライトを用いる。フェライトを用いる
ことにより、凹部１３を、切削加工によって精度よく制
作することができる。

【００３０】一方、第３の磁心部材３には、第１の磁心
部材１および第２の磁心部材２との比較において、低透
磁率、高飽和磁束密度の磁性材料であって、高精度成形
の可能な金属磁性材料を用いる。そのような材料の一例
は、ダストコアである。ダストコアは、寸法精度が、ほ
ぼ成型時の金型の精度に依存するため、高い寸法精度を
得ることができる。

【００３１】上述のように、第１の磁心部材１及び第２
の磁心部材２に、透磁率が高く、高周波損失が少ないフ
ェライトを用い、第３の磁心部材３に、低透磁率、高飽
和磁束密度の磁性材料を用いることにより、閉磁路φ
１、φ２の磁気効率の低下、および、磁気飽和を回避
し、改善された直流重畳特性を得ることができる。

【００３２】また、第１の磁心部材１及び第２の磁心部
材２にフェライトを用いることにより、凹部１３を切削
加工によって精度良く制作すると共に、第３の磁心部材
３にダストコアを用いることにより、第３の磁心部材３
を高寸法精度で作成し、凹部１３に対して第３の磁心部
材３を密着して嵌め込み、嵌め込み部分のギャップを完
全になくすことができる。

【００３３】よって、大電流下において、改善された直
流重畳特性と共に、高いインダクタンスを得ることがで
きるようになる。

【００３４】しかも、フェライト製造条件のばらつきな
どににより、第１の磁心部材１および第２の磁心部材２
に寸法変動が生じた場合でも、凹部１３と第３の磁心部
材３との嵌め合いにより、寸法変動を吸収することがで
きる。このため、製造条件のばらつきなどに影響されず
に、安定な磁気特性を得ることができるしかも、第１の
磁心部材１に設けられた凹部１３に第３の磁心部材３を
嵌め込むだけでよいので、製造が容易であり、歩留まり
が高くなり、製造コストの安価になる。

【００３５】凹部１３の深さは、第１の磁心部材１およ
び第２の磁心部材２を突き合わせたとき、第３の磁心部
材３の端面と、凹部１３の低面との間に間隙ｇが生じる
ような寸法に定める。また、凹部１３に第３の磁心部材
３を嵌め込んだときに空気を逃がす手段として、凹部１
３を外部に開口させておくことが望ましい、上述した磁
心により、高周波電力伝送用回路またはスイッチング電
源等において、チョークコイル、変成器等として用いら
れるインダクタンス素子を構成するには、図１に示すよ
うに、コイル４を磁心に巻装する。コイル４は、一般に
は、第３の磁心部材３に巻装する。

【００３６】図５は本発明に係る磁心の他の実施例を示
す正面図である。この実施例では、第１の磁心部材１及
び第２の磁心部材２の両方に、凹部１３、２３がそれぞ
れ設けられている。第３の磁心部材３は、両端が凹部１
３、２３にそれぞれ嵌め込まれる。この実施例の場合、
第１の磁心部材１および第２の磁心部材２が同一構造と
なるため、第１の磁心部材１および第２の磁心部材２が
一種類となり、標準化するのに好都合である。

【００３７】図６は本発明に係る磁心の更に別の実施例
を示す正面図である。この実施例では、凹部１３は、入
口部にテーパ１３１を有する。これにより、第３の磁心
部材３を、凹部１３に容易に嵌め込むことができるよう
になる。テーパ部１３１は平面、曲面の何れであっても
よい。

【００３８】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
のような効果を得ることができる。 （ａ）大電流下において、改善された直流重畳特性と共
に、高いインダクタンスを得ることができるインダクタ
ンス素子およびそのための磁心を提供することができ
る。 （ｂ）製造条件のばらつきなどに影響されずに、安定な
磁気特性を得ることの可能な磁心およびインダクタンス
素子を提供することができる。 （ｃ）製造が容易で、歩留まりが高く、製造コストの安
価な磁心およびインダクタンス素子を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る磁心およびインダクタンス素子の
正面図である。

【図２】本発明に係る磁心に用いられる第１の磁心部材
の斜視図である。

【図３】本発明に係る磁心に用いられる第１の磁心部材
の別の例を示す斜視図である。

【図４】本発明に係る磁心に用いられる第１の磁心部材
の断面図である。

【図５】本発明に係る磁心の別の実施例を示す正面図で
ある。

【図６】本発明に係る磁心の更に別の実施例を示す正面
図である。

【符号の説明】

１ 第１の磁心部材 ２ 第２の磁心部材 ３ 第３の磁心部材 ４ コイル １３ 凹部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶田 朝子 東京都中央区日本橋１丁目13番１号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 伊藤 一行 東京都中央区日本橋１丁目13番１号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の磁心部材を突き合わせて構成した
   磁心であって、 前記複数の磁心部材の少なくとも一つは、特性が他の磁
   心部材と異なり、 複数の磁心部材間に生じる複数の突き合わせ部の少なく
   とも一つにおいて、一方の磁心部材に形成された凹部
   に、他の磁心部材の端部が嵌め込まれており、前記嵌め
   込みによって、他の突き合わせ部において磁心部材間の
   面接触が得られる磁心。
2. 【請求項２】 請求項１に記載された磁心であって、 第１の磁心部材と、第２の磁心部材と、第３の磁心部材
   とを含んでおり、 前記第１の磁心部材および前記第２の磁心部材は、互い
   に対向し、少なくとも一箇所で、端面が互いに突き合わ
   されており、前記第１の磁心部材および前記第２の磁心
   部材の少なくとも一方は、他方と対向する面に前記凹部
   を有しており、 前記第３の磁心部材は、前記第１の磁心部材および第２
   の磁心部材とは特性が異なり、前記第１の磁心部材と第
   ２の磁心部材の間に設置され、少なくとも一端が前記凹
   部内に嵌め込まれている磁心。
3. 【請求項３】 請求項２に記載された磁心であって、 前記凹部は、前記第１の磁心部材及び前記第２の磁心部
   材の両方に設けられており、 前記第３の磁心部材は、両端が前記凹部にそれぞれ嵌め
   込まれている磁心。
4. 【請求項４】 請求項１に記載された磁心であって、 前記凹部は、入口部にテーパを有する磁心。
5. 【請求項５】 磁心と、コイルとを含むインダクタンス
   素子であって、 前記磁心は、複数の磁心部材を突き合わせて構成されて
   おり、 前記複数の磁心部材の少なくとも一つは、特性が他の磁
   心部材と異なり、 複数の磁心部材間に生じる複数の突き合わせ部の少なく
   とも一つにおいて、一方の磁心部材に形成された凹部
   に、他の磁心部材の端部が嵌め込まれており、前記嵌め
   込みによって、他の突き合わせ部において磁心部材間の
   面接触が得られており、 前記コイルは、前記磁心に巻装されているインダクタン
   ス素子。
6. 【請求項６】 請求項５に記載されたインダクタンス素
   子であって、 前記磁心は、第１の磁心部材と、第２の磁心部材と、第
   ３の磁心部材とを含んでおり、 前記第１の磁心部材および前記第２の磁心部材は、互い
   に対向し、少なくとも一箇所で、端面が互いに突き合わ
   されており、前記第１の磁心部材および前記第２の磁心
   部材の少なくとも一方は、他方と対向する面に前記凹部
   を有しており、 前記第３の磁心部材は、前記第１の磁心部材および第２
   の磁心部材とは特性が異なり、前記第１の磁心部材と第
   ２の磁心部材の間に設置され、少なくとも一端が前記凹
   部内に嵌め込まれているインダクタンス素子。
7. 【請求項７】 請求項６に記載されたインダクタンス素
   子であって、 前記凹部は、前記第１の磁心部材及び前記第２の磁心部
   材の両方に設けられており、 前記第３の磁心部材は、両端が前記凹部にそれぞれ嵌め
   込まれているインダクタンス素子。
8. 【請求項８】 請求項５に記載されたインダクタンス素
   子であって、 前記凹部は、入口部にテーパを有するインダクタンス素
   子。