JPH11344226A - ガスタービン燃焼器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、ガスタービン燃焼器に係り、特に隣
接する燃焼器が火炎伝播管によってリング状に構成され
た場合に発生する振動燃焼の連成振動を防止できるガス
タービン燃焼器を提供することにある。 【解決手段】周方向に並設配置された複数個の燃焼器３
ａ，３ｂ，３ｃ間を連絡する火炎伝播管１３ａ，１３ｂ
の取り付け位置を燃焼器軸方向中央部にする手段を一つ
以上の火炎伝播管に設けたガスタービン燃焼器。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はガスタービン燃焼器
に係り、特に複数個の燃焼器が火炎伝播管を介して結合
されているガスタービン燃焼器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来一般に採用されているガスタービン
燃焼器は、複数個の燃焼器を備えており、その各々の中
で燃料と圧縮空気を反応させて、高温高圧の燃焼ガスを
発生するように形成されている。この複数個の燃焼器は
ガスタービンの周長に沿った円上に配置されており、隣
接する全ての燃焼器は連結パイプ（火炎伝播管外筒）に
よって結合され、この連結パイプの内部に火炎伝播管が
設置されている。火炎伝播管は管状となっており、接続
された燃焼器の圧力差によってこの中を燃焼ガスが通る
ことのできる構造となっている。

【０００３】始動の際、ガスタービンは、外部エネルギ
によって点油回転数まで回転数を上昇し、その後、全て
の燃焼器に燃料と空気を導入する。一つあるいは二つの
燃焼器に設置した点火栓をスパークさせて、燃焼反応を
開始させる。燃焼器内で燃焼反応が始まると、高温ガス
が発生するため、燃焼器内部の圧力が上昇する。隣の燃
焼器が未点火な場合、点火した燃焼器との差圧により、
高温の燃焼ガスが未点火の燃焼器へ流入する。こうして
一つあるいは二つの燃焼器だけの点火から始まって、隣
接する各々の燃焼器が点火される。

【０００４】従来例では火炎伝播管を、隣接する燃焼器
に設置することにより、全ての燃焼器に点火栓を設置す
る必要がなく、全ての燃焼器を点火することが可能とな
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このように形成されて
いるガスタービン燃焼器であると、ガスタービンの始動
時には火炎伝播管によって、全ての燃焼器を点火するこ
とが可能であるが、負荷運転時には次のような課題があ
った。

【０００６】すなわち、従来例のように形成されている
発電用ガスタービン燃焼器の多くは、地球環境保護の観
点から窒素酸化物（ＮＯｘ）の排出量の少ない予混合燃
焼方式と燃焼安定性に優れた拡散燃焼方式を併用し運転
する場合が多く、さらなる低ＮＯｘ化のため、予混合燃
焼の割合を大きくする傾向にある。

【０００７】しかし、予混合燃焼方式は燃焼安定性に欠
けるため、予混合燃焼割合を大きくすることによって、
燃焼器内部の圧力が変動する振動燃焼が発生しやすくな
る場合がある。

【０００８】従来例のように火炎伝播管によって複数の
燃焼器がリング状に連結されている場合、振動燃焼が発
生すると、各々の燃焼器で振動燃焼する振動モードに加
え、リング状に連結された複数の燃焼器全体が、一つの
振動系を構成して振動燃焼する連成振動モードが数多く
発生することがある。

【０００９】振動燃焼の振動モードが多数存在すると、
燃焼器を構成する部品の固有振動数と振動燃焼周波数と
の共振回避設計が困難になるばかりか、色々な運転条件
で振動燃焼が発生する可能性が高くなり運転条件が制限
されることがある。

【００１０】また、振動燃焼が発生すると燃焼器を構成
する部品の摩耗や破損が生じる恐れがあるばかりか、燃
焼器に火炎が逆流する逆火や火炎が喪失する課題があっ
た。本発明の目的は、ガスタービン燃焼器全体が一つの
振動系を構成して振動燃焼する連成振動の発生を防止で
きるガスタービン燃焼器を提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係るガスタービン燃焼器の第１の特徴は、
内筒と内筒の上流端に設置された燃焼バーナと、内筒の
下流端に設置されたトランジションピースからなる燃焼
器と、この隣接する燃焼器の内筒間を連通する火炎伝播
管からなるガスタービン燃焼器において、該内筒の入口
端と該トランジションピースの出口端を結ぶ燃焼器軸方
向位置の中央部に該火炎伝播管を設けるようにしたこと
にある。

【００１２】また、本発明の第２の特徴は、該火炎伝播
管を該トランジションピースの入口端に設けるようにし
たことにある。

【００１３】このように構成されたガスタービン燃焼器
であると、内筒の入口端と該トランジションピースの出
口端を結ぶ燃焼器軸方向位置の中央部に火炎伝播管を設
置したため、火炎伝播管を設置した位置は燃焼室に形成
される振動モードの圧力振幅の節となる。圧力変動の節
の位置では、圧力変動が火炎伝播管を伝わって隣接する
燃焼器に影響を及ぼさないため連成振動燃焼を防止する
ことが可能となる。このため振動燃焼の発生によって制
限される燃焼器の運転範囲を縮小することにより、安定
燃焼運転範囲が拡大する。

【００１４】また、火炎伝播管の取り付け位置が、従来
の燃焼器と比較してガスタービン燃焼器の軸方向下流の
位置となり、燃焼器点火の際、火炎伝播管を通って流れ
る燃焼ガスは、安全燃焼した高温の燃焼ガスとなるた
め、火炎伝播管に必要となる燃焼ガスのエネルギが高く
なり火炎伝播管特性が向上する。

【００１５】さらに、火炎伝播管は燃焼器に供給する空
気流路を突き抜けて取り付けられているため、火炎伝播
管の下流部に渦が発生し、燃焼器に流れ込む空気流に偏
流を発生させ安定な火炎を保持することができなくなる
ことが考えられる。

【００１６】しかし、本発明によれば従来技術より、火
炎伝播管の取り付け位置がガスタービン燃焼器の軸方向
上流の位置にあるため、火炎伝播管から燃焼室入口まで
の空気流路を長くとることができ、渦が発生しても流れ
が整流化され燃焼器に流れ込む空気流の偏流を防止する
ことが可能となる。

【００１７】また、火炎伝播管内部に流れる冷却空気
は、火炎伝播管を通って燃焼室に流れ込む。この空気が
均一な燃焼状態の妨げとなることが考えられるが、従来
技術より、火炎伝播管の取り付け位置がガスタービン燃
焼器の軸方向下流の位置にあることにより、冷却空気は
完全燃焼した燃焼ガス部に流れ込むことになるため、冷
却空気が火炎に影響を及ぼすことがなく、均一な燃焼状
態を保持することが可能となる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を用
いて説明する。図１は、本発明の燃焼器を備えたガスタ
ービンプラントの要部が示されている。このガスタービ
ンプラントは、主としてガスタービン２と、ガスタービ
ン２に連結され、燃焼用の圧縮空気を得る圧縮機１と、
複数の燃焼器３ａ，３ｂ，３ｃなどにより構成されてお
り、圧縮機１より吐出された圧縮空気４は圧縮空気流路
７を通って、燃焼器３ａ，３ｂ，３ｃに導かれ燃焼器内
筒５ａの内部に形成されている燃焼室６で燃料とともに
燃焼する。燃焼によって生成された燃焼ガス８は、トラ
ンジションピース９を経てガスタービン２に噴射されガ
スタービン２を駆動する。そして図示してはいないが、
一般にガスタービンに連結されている発電機によって発
電するように構成されている。

【００１９】燃焼器３ａの主な構成は、燃焼ガスを生成
する内筒５ａと、燃料を供給する燃料ノズル１０と、燃
焼器を点火させるための点火栓１１を外筒１２で密閉し
ている。燃焼器３ａと隣接する燃焼器３ｂは、火炎伝播
管１３ａで内筒５ａ，５ｂが連絡されている。燃焼器３
ａ，３ｂ，３ｃは、車室１４に組込まれ固定されてい
る。燃焼器３ａに設置されている点火栓１１によって、
燃料と空気の混合気に点火を行う。点火栓１１を持つ燃
焼器３ａの圧力上昇により、火炎伝播管１３ａで連絡さ
れた燃焼器３ｂとの間に圧力差が生じ、この圧力差によ
って燃焼ガス１５が燃焼器３ｂへ送り込まれ、燃料と圧
縮空気の混合物に点火する。そしてさらに、燃焼器３ｂ
の点火により燃焼器３ｂ，３ｃとの間に圧力差が生じ、
この圧力差によって燃焼ガス１１５が燃焼器３ｃへ送り
込まれ、燃料と圧縮空気の混合物に点火する。こうして
全ての燃焼器に火炎が点火される。

【００２０】本発明の第一の実施例は、燃焼器間を連絡
する火炎伝播管１３ａ，１３ｂをそれぞれの内筒５ａ，
５ｂ，５ｃの入口端１６とそれぞれのトランジションピ
ース９の出口端１７の中央部に取り付けたものである。

【００２１】燃焼器で発生する振動燃焼は、燃焼器構
造，燃焼器運転条件などによって多数の振動モードが発
生する。この振動モードの一つに燃焼室内部すなわち、
内筒の入口端とトランジションピースの出口端を音響学
から見た固定端とする振動モードがあり、これらの振動
モードは固定端で圧力振動が最も変動する圧力振幅の
腹、その中央部で圧力振幅が小さくなる圧力振幅の節と
なり、また、発電用ガスタービンではこれらの振動モー
ドが発生する割合が比較的多い。

【００２２】本実施例では、火炎伝播管１３ａ，１３ｂ
を燃焼振動の振動モードの節の位置となる内筒５ａ，５
ｂ，５ｃの入口端１６とそれぞれ燃焼器のトランジショ
ンピース９の出口端１７の中央部に取り付けたため、隣
接する燃焼器に火炎伝播管を通って圧力変動が伝わるこ
とがなく、他の燃焼器と連成する振動燃焼の振動モード
は発生しないことになる。

【００２３】このため、振動燃焼によって制限される燃
焼器の運転範囲が縮小し、安定燃焼状態で運転できる範
囲が拡大する。この結果、振動燃焼によって制限された
NOx排出量の低い条件での運転が可能となり、より一層
ＮＯｘ排出量を低減する効果が期待できる。

【００２４】また、火炎伝播管の取り付け位置が、従来
の燃焼器と比較してガスタービン燃焼器の軸方向下流の
位置となり、燃焼器点火の際、火炎伝播管を通って流れ
る燃焼ガスは、完全燃焼した高温の燃焼ガスとなるた
め、火炎伝播に必要となる燃焼ガスのエネルギが高くな
り火炎伝播特性が向上する。

【００２５】さらに、火炎伝播管は燃焼器に供給する空
気流路を突き抜けて取り付けられているため、火炎伝播
管の下流部に渦が発生し、燃焼器に流れ込む空気流に偏
流を発生させ安定な火炎を保持することができなくなる
ことが考えられる。

【００２６】しかし、本発明によれば従来技術より、火
炎伝播管の取り付け位置がガスタービン燃焼器の軸方向
下流の位置にあるため、火炎伝播管から燃焼室入口まで
の空気流路を長くとることができ、渦が発生しても流れ
が整流化され燃焼器に流れ込む空気流の偏流を防止する
ことが可能となる。

【００２７】また、火炎伝播管内部に流れる冷却空気
は、火炎伝播管を通って燃焼場に流れ込む。この空気が
均一な燃焼状態の妨げとなることが考えられるが、従来
技術より、火炎伝播管の取り付け位置がガスタービン燃
焼器の軸方向下流の位置にあることにより、冷却空気は
完全燃焼した燃焼ガス部に流れ込むことになるため、冷
却空気が火炎に影響を及ぼすことがなく、均一な燃焼状
態を保持することが可能となる。

【００２８】次に、火炎伝播管の設置方法の一例につい
て説明する。本実施例では、火炎伝播管１３ａ，１３ｂ
を従来例に比較して燃焼器の上流側に設置するため、そ
の位置がガスタービン車室１４の内部になることが考え
られる。

【００２９】そこで、本実施例では図２に示すように、
火炎伝播管１３ａを伝播管１８，１９と分割して形成
し、伝播管１８は伝播管１９に挿入されることによっ
て、火炎伝播管１３ａの軸方向距離を調節することが可
能な構造となっている。さらに、伝播管１８，１９の外
径は内筒５ａに設けたカラー２０ａより径が小さく、伝
播管１８，１９の外形には溝２１，２２が形成されてい
る。このように構成された火炎伝播管１３ａの設置方法
は、伝播管１８を伝播管１９に挿入した状態で、内筒５
ａの内側よりカラー２０ａに挿入し、伝播管１８が所定
の位置になったら伝播管１９を軸方向に移動させ内筒５
ｂのカラー２０ｂに挿入する。その後、伝播管１８，１
９に設置した溝２１，２２にストッパ２３，２４を設置
し、ストッパ２３，２４を車室１４に固定する。

【００３０】以上より火炎伝播管１３ａを容易に着脱す
ることが可能となる。

【００３１】次に本発明による第二の実施例を図３を用
いて説明する。第二の実施例では、火炎伝播１３ａをト
ランジションピース９の入口端２５に設置したものであ
る。この時、トランジションピース９の軸方向の距離を
内筒５ａの軸方向距離より長くなるように形成し、トラ
ンジションピース９，内筒５ａの軸方向位置の中央部が
トランジションピース９の入口端２５となるように構成
する。

【００３２】これにより、第一の実施例と同様な効果が
期待できる。さらに、火炎伝播管１３ａがトランジショ
ンピース９に設置されているため、例えば、上流側から
内筒５ａまでの燃焼器点検では、火炎伝播管１３ａを分
解する必要がなく点検時間の短縮を図ることが可能とな
る。

【００３３】次に本発明による第三の実施例を図４を用
いて説明する。第三の実施例では、各燃焼器間で火炎伝
播管の取り付け位置を燃焼器の軸方向に変化させたもの
である。振動燃焼には、多くの振動モードが存在するた
め、全ての振動モードの節の位置が燃焼室中央であると
は限らない。したがって、第一の実施例のような方法で
は、全ての振動モードの連成振動を回避することが困難
である。

【００３４】振動燃焼の連成振動は同一構造を周期配置
することによって、より発生し易くなるため、本実施例
のように各燃焼器間で火炎伝播管の取り付け位置を変化
させることにより、連成振動の発生を抑制することが可
能となり、第一の実施例と同様な効果を得ることが可能
となる。

【００３５】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、振
動燃焼の連成振動の発生を防止する効果がある。また、
負荷運転時には、安定燃焼状態で運転できる範囲が拡大
するため、その結果、ＮＯｘ排出量などを低減させる効
果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第一実施例であるガスタービン燃焼器
とその構成を説明する側断面図。

【図２】第一実施例の伝播管の詳細を説明する側断面
図。

【図３】本発明の第二実施例であるガスタービン燃焼器
の詳細を説明する側断面図。

【図４】本発明の第三実施例であるガスタービン燃焼器
の詳細を説明する側断面図。

【符号の説明】

１…圧縮機、２…ガスタービン、３ａ，３ｂ，３ｃ…燃
焼器、４…圧縮空気、５ａ，５ｂ，５ｃ…内筒、６…燃
焼室、７…圧縮空気流路、８…燃焼ガス、９…トランジ
ションピース、１０…燃料ノズル、１１…点火栓、１２
…外筒、１３ａ，１３ｂ…火炎伝播管、１４…車室、２
１…冷却孔。

フロントページの続き (72)発明者 室田 知也 茨城県日立市大みか町七丁目２番１号 株 式会社日立製作所電力・電機開発本部内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内筒と内筒の上流端に設置された燃焼バー
   ナと、内筒の下流端に設置されたトランジションピース
   からなる燃焼器と、この隣接する燃焼器の内筒間を連通
   する火炎伝播管からなるガスタービン燃焼器において、
   該内筒の入口端と該トランジションピースの出口端を結
   ぶ燃焼器軸方向位置の中央部に該火炎伝播管を設けたこ
   とを特徴とするガスタービン燃焼器。
2. 【請求項２】請求項１記載のガスタービン燃焼器におい
   て、該火炎伝播管を該トランジションピースの入口端に
   設けたことを特徴とするガスタービン燃焼器。
3. 【請求項３】請求項１記載のガスタービン燃焼器におい
   て、該火炎伝播管を設置する位置を各燃焼器間で変化さ
   せたことを特徴とするガスタービン燃焼器。