JPH11307260A - 電子輸送材料およびこれを用いた有機el素子 - Google Patents

電子輸送材料およびこれを用いた有機el素子

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JPH11307260A
JPH11307260A JP10113184A JP11318498A JPH11307260A JP H11307260 A JPH11307260 A JP H11307260A JP 10113184 A JP10113184 A JP 10113184A JP 11318498 A JP11318498 A JP 11318498A JP H11307260 A JPH11307260 A JP H11307260A
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organic
electron transport
transport layer
electron
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JP10113184A
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Inventor
Hiroo Miyamoto
裕生 宮本
Shinko Kamikawa
真弘 上川
Hitoshi Ikeda
等 池田
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Oki Electric Industry Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた電子輸送性、耐熱性および成膜性を有
する電子輸送層を構成する電子輸送材料であって、さら
に蛍光を発生しないこと。 【解決手段】 下記(1)式で示される、トリス(8−
ヒドロキシキノリノール)ビスマス(以下、Biqとす
る。)からなる電子輸送材料。 【化14】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、有機エレクトロ
ルミネッセンス(以下、単に有機ELという。)素子に
関するものであり、特に有機EL素子の電子輸送材料に
関する。
【0002】
【従来の技術】有機材料に電界を印加することにより得
られる有機エレクトロルミネッセンスを利用した発光素
子(有機EL素子)は、文献1(文献1:「Organic el
ectroluminescent diodes 」C.W.Tang and S.A.VanSlyk
e,Appl.Phys.Lett.vol 51 No.12 pp913-915(1987) )に
おいて、Tangらが、低電圧で高輝度の発光が得られ
る発光素子を実現させて以来、研究開発が活発に行われ
ている。
【0003】文献1の有機EL素子は、陽極、正孔輸送
層、電子輸送性発光層および陰極を具えた2層型のもの
で、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電
子とが再結合して、この再結合によって発生するエネル
ギーによって電子輸送性発光層中の有機化合物が励起さ
れ、その化合物固有の発光が放出される。文献1では、
10V程度の直流電圧で、輝度1000cd/m2 を越
える面発光が得られている。
【0004】また、有機EL素子においては、2層型の
構造を有する上記以外のものとして、陽極、正孔輸送性
発光層、電子輸送層および陰極を具えているものもあ
る。さらに、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層お
よび陰極を具えた3層型の構造を有するものもある。
【0005】このような有機EL素子を構成する各層の
材料として、様々な有機化合物が用いられている。
【0006】発光層に含まれる発光材料としては、例え
ば緑色発光の材料として、トリス(8−ヒドロキシキノ
リノール)アルミニウム(以下、Alqと称する。)
や、青色発光の材料としてジスチリルビフェニル誘導体
や、オレンジ色の発光が得られる発光材料としてジシア
ノメチレン系色素や、黄色発光の材料としてルブレンな
どが報告されている。
【0007】また、正孔輸送層を構成する材料として、
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフ
ェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
(以下、TPDと称する。)が挙げられる。TPDは正
孔移動度が高く、かつ薄膜形成性に優れている。また、
このTPDの耐熱性を向上させた材料として、TPDの
メチルフェニル基の代わりにナフチル基が導入された化
合物や、スターバースト状のトリアリールアミンや、ポ
リシラン等が考案されている。
【0008】また、電子輸送層を構成する材料として
は、オキサジアゾール誘導体やペリレンテトラカルボン
酸誘導体等が挙げられるが、これらの材料よりも耐熱性
および成膜性に優れたAlqが一般的によく用いられて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Alq
は強い緑色の蛍光を発生する材料である。このため、有
機EL素子の構成によっては、発光にこのAlqに起因
する緑色発光が混入してしまうおそれがある。
【0010】このため、優れた電子輸送性、耐熱性およ
び成膜性を有する電子輸送層を構成する電子輸送材料で
あって、さらに蛍光を発生しない材料およびその材料を
用いた有機EL素子の出現が望まれていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】このため、この発明の発
明者等は、鋭意研究の結果、電子輸送性、耐熱性および
成膜性といった電子輸送材料として必要な性質をAlq
と同程度に有し、かつ蛍光を発生しない新規な材料を見
出した。
【0012】この発明の電子輸送材料によれば、下記
(1)式で示される、トリス(8−ヒドロキシキノリノ
ール)ビスマス(以下、Biqとする。)からなること
を特徴とする。
【0013】
【化7】
【0014】この発明の電子輸送材料によれば、後述す
る実験結果から明らかなように、Alqと同程度の電子
輸送性、耐熱性および成膜性を有する。さらに蛍光を発
生しないという特性を有する。
【0015】また、好ましくは、この電子輸送材料を、
陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極を具
える有機EL素子の電子輸送層の材料として用いるのが
よい。このような有機EL素子においては、電荷の漏れ
などによって電子輸送層で電荷の再結合が起こったとし
ても、電子輸送層からの発光を抑制することができる。
これにより、発光層のみからの発光を得ることができ
る。
【0016】また、好ましくは、発光層とこの発明の電
子輸送材料で構成された電子輸送層との間に正孔ブロッ
ク層が設けられているのがよい。陽極から注入される正
孔が、電子輸送層にまで移動するのを防ぐ正孔ブロック
層が電子輸送層と発光層との間に設けてある有機EL素
子においては、発光層で電荷が再結合する効率を向上さ
せることができ、これにより発光効率を向上させること
ができるが、一部の正孔は正孔ブロック層から電子輸送
層に漏れてしまう。そして、漏れた正孔は電子輸送層内
で電子と再結合して、発光が生じてしまうおそれがあ
る。しかしながらここでは、電子輸送層の材料に非蛍光
性のBiqを用いているために、電子輸送層に起因する
発光を抑制することができる。
【0017】また、この発明の電子輸送材料は、電極付
着性に優れた材料である。このため、陽極、正孔輸送
層、発光層、電子輸送層および陰極を具えた有機EL素
子であって、電子輸送層と陰極との間に電極付着層が設
けられていて、この電極付着層を構成する材料として、
この発明の電子輸送材料であるBiqを用いることがで
きる。電子輸送層を構成する材料として、電子輸送性等
の性質は有していながら、電極の付着性のよくない材料
は数多くあるが、そのような材料を用いて電子輸送層を
構成するとき、このBiqを含む電極付着層を電子輸送
層と陰極との間に設ければ、陰極を好ましく付着するこ
とができ、かつ陰極からの電子の移動を妨げるおそれも
ない。従って、有機EL素子を構成する材料の選択の幅
を広げることができる。
【0018】また、このBiqで構成された電極付着層
を、陽極、正孔輸送性発光層、電子輸送層および陰極を
具えた2層型の有機EL素子や、陽極、正孔輸送層、電
子輸送性発光層および陰極を具えた2層型の素子に適用
させることもできる。
【0019】また、好ましくは、電極付着層は、0.1
〜50nmの範囲内の厚さで設けることが可能である。
陰極からの電子の移動を妨げることのないように、でき
るだけ、薄い層であることが望ましいが、陰極を良好に
付着させるためには0.3nm以上の厚さにするのが好
ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して、この発明の
電子輸送材料を用いた有機EL素子の実施の形態につき
説明する。なお、各図は発明を理解できる程度に各構成
成分の形状、大きさ、配置関係を概略的に示してあるに
過ぎず、したがってこの発明を図示例に限定するもので
はない。
【0021】図1は、基板11上に、陽極13、正孔輸
送層15、発光層17、電子輸送層19および陰極21
をこの順に具える3層型の有機EL素子10に、この発
明を適用した例を示した図であり、この有機EL素子1
0の概略的な断面図である。
【0022】基板11は、典型的には透明基板で構成す
る。例えばガラス基板で構成することができる。
【0023】陽極13には、EL発光を透過し、かつ仕
事関数の大きな(概ね4.0eV以上)金属や電気伝導
材料が用いられる。一般には、酸化インジウムスズ(I
TO)が用いられる。
【0024】正孔輸送層15には、例えば一般的によく
用いられているN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス
(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,
4’−ジアミン(TPD)や、N,N’−ジフェニル−
N,N’−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−
4,4’−ジアミン(以下、NPD)等のジアミン誘導
体や、トリフェニルアミン系、トリフェニルメタン系、
ピラゾリン系、ヒドラゾン系、若しくはアモルファスシ
リコン系の材料などの有機材料若しくは無機材料で構成
される。
【0025】また、発光層17は、例えば、上述したジ
スチリルビフェニル誘導体やEu錯体等の発光材料を、
NPDやオキサジアゾール誘導体(以下、PBD)等の
ホスト材料にドープさせて構成される。
【0026】また、陰極21には、例えば、マグネシウ
ム、またはマグネシウムと銀との合金、またはアルミニ
ウムとリチウムとの合金が用いられる。
【0027】電子輸送層19は、この発明の電子輸送材
料を用いて構成する。この電子輸送材料は、トリス(8
−ヒドロキシキノリノール)ビスマスである。
【0028】これら、陽極13、正孔輸送層15、発光
層17、電子輸送層19および陰極21のそれぞれの層
の厚さは設計に応じた好適な値とする。
【0029】また、図2に示すように、基板11上に、
陽極13、正孔輸送性発光層23、電子輸送層19およ
び陰極21をこの順に具えた2層型の有機EL素子20
に、この発明を適用させてもよい。図2は、この有機E
L素子20の断面の切り口を示す概略図である。
【0030】各構成成分11、13、19および21
は、それぞれ図1を用いて説明した有機EL素子と同様
とすることができる。また、正孔輸送性発光層23は、
正孔輸送性を有し、青色発光を示すTPDや、このTP
Dに他の発光材料をドープさせて構成する。
【0031】上述したように、有機EL素子の電子輸送
層19には、電子輸送材料としてBiqが含まれてい
る。Biqは、電子輸送性、耐熱性、成膜性および電極
付着性といった特性は一般的に用いられているAlqと
同程度である。このBiqはさらに、非蛍光性を示す材
料であるため、有機EL素子において、電荷の漏れが生
じたりして電子輸送層で電荷の再結合が起こることがあ
っても、電子輸送層の材料に起因する光が発生すること
はなく、発光層からのみ発光が得られる。従って、用い
る発光材料に特有の色の発光を得ることができる。
【0032】また、図1に示した3層型の有機EL素
子、若しくは図2に示した2層型の有機EL素子におい
て、発光層(または、正孔輸送性発光層)と電子輸送層
との間に正孔ブロック層を介在させてもよい。この正孔
ブロック層の材料としては、例えばトリアゾール誘導体
を用いる。この正孔ブロック層により正孔を電子輸送層
に伝導させないようにし、発光層で好ましく電荷の再結
合が起こるようにする。電子輸送層から発光層への電子
の移動を妨げることのないように、この正孔ブロック層
は20nm程度と薄くしてあり、電荷の漏れが生じやす
い。しかしながら、この発明の有機EL素子の電子輸送
層の材料はBiqであり、蛍光を発生しない材料である
ために、万が一、正孔ブロック層に電荷の漏れが生じて
電子輸送層で電荷の再結合が起こったとしても、この電
子輸送層を構成する材料に起因する光が発生するおそれ
はない。
【0033】また、Biqという材料は、電子輸送性に
優れているだけでなく、電極付着性にも優れた材料であ
るため、電子輸送層の材料に、電子輸送性には優れてい
るが電極付着性のよくないトリアゾール誘導体などを用
いている場合、電子輸送層と陰極との間に、電極付着層
としてBiqの層を介在させる。この層の厚さは0.1
nm以上、50nm以下で用いることができる。これに
より、電子輸送層の材料の選択の幅を広げることができ
る。
【0034】
【実施例】次に、実施例により、この発明の発光材料お
よび有機EL素子について、さらに具体的に説明する。
ただし、以下の説明中の薬品等の使用量、処理温度、処
理時間等の数値的条件、使用薬品等は、この発明の範囲
内の一例に過ぎない。
【0035】<第1の実施例>まず、第1の実施例とし
て、この発明の電子輸送材料である、以下(1)式で示
されるトリス(8−キノリノール)ビスマスを合成す
る。
【0036】
【化8】
【0037】ここでは、まず、氷酢酸中にBiCl2
g(3mmol)および8−キノリノール1.84g
(13mmol)を加え、攪拌しながら、NaOH水溶
液を徐々に加えて反応液のpHをpH5にする。反応液
中に生成している沈殿をろ別した後、この沈殿を薄い酢
酸で洗浄する。さらに、エタノールを用いて洗浄すると
黄色の沈殿が得られる。この沈殿に対してクロロホルム
を用いて再結晶を行って、目的のトリス(8−キノリノ
ール)ビスマス(Biq)と思われる化合物が0.85
g得られた。
【0038】この化合物がBiqであると仮定すると、
収率は42%であった。
【0039】次に、合成された化合物を同定するため
に、1H−NMR、IR、元素分析を行う。
【0040】まず、NMRの測定結果は次に示す通りで
ある。なお、この説明を下記の(2)式を参照して行
う。
【0041】NMR装置としてJEOL社製のα−40
0(型番)を用いる。また、1H−NMR測定用のサン
プルとして上記合成した化合物3mgを重クロロホルム
と重DMSO(ジメチルスルホキシド)との混合液0.
6mlに溶解させたものを用いる。
【0042】NMR測定により得られたチャート中に、
化学シフト値δ=6.8の位置を中心としてピーク面積
比が2のピークが生じ、化学シフト値δ=7.4の位置
を中心としてピーク面積比が2のピークが生じ、化学シ
フト値δ=8.2の位置を中心としてピーク面積比が1
のピークが生じ、化学シフト値δ=8.7の位置を中心
としてピーク面積比が1のピークが生じていた。
【0043】これらピークは、下記の(2)式に示すB
iq中の各プロトン(a)〜(d)に、以下のように対
応している。
【0044】すなわち、化学シフト値δ=8.7の位置
を中心として生じたピークは、下記(2)式中の(a)
で示した3つのプロトンに起因するピークである。ま
た、化学シフト値δ=8.2の位置を中心として生じた
ピークは、下記(2)式中の(b)で示した3つのプロ
トンに起因するピークである。また、化学シフト値δ=
7.4の位置を中心として生じたピークは、下記(2)
式中の(c)で示した6つのプロトンに起因するピーク
である。また、化学シフト値δ=6.8の位置を中心と
して生じたピークは、下記(2)式中の(d)で示した
6つのプロトンに起因するピークである。
【0045】このNMRデータから、上記合成した化合
物がBiqであることが推定できる。
【0046】
【化9】
【0047】また、この化合物について、FT−IR測
定を行って、この化合物がBiqであることを確認す
る。
【0048】このFT−IR測定を行うIR装置とし
て、BiO−Rad社製のFTS−60(型番)を用い
る。
【0049】その結果、反応後の化合物において、16
00cm-1、1500cm-1および1450cm-1付近
に、芳香族、特にピリジン核を含む構造に由来する吸収
が見られる。このため、この化合物がBiqであること
が示唆される。
【0050】また、この化合物を元素分析したところ、
次のような結果が得られた。Biqの分子式はC2718
33 Biであるため、各元素の含有率の計算値
(%)は、Cが50.55、Hが2.81、Nが6.5
5となる。これに対して、元素分析法によって測定した
実測含有率(%)は、Cが50.15、Hが2.60、
Nが6.44であった。この計算値と実測値とがほとん
ど同じであるため、得られた化合物はBiqであると推
定できる。
【0051】これらの結果から、実施例1で合成された
化合物はBiqであると同定できる。
【0052】また、このBiqの熱に対する特性を調べ
るために、熱分析装置を用いて熱分析測定を行う。な
お、熱分析装置として、理学電機株式会社製のTHER
MOFLEX TAS300(商品名)を用いる。ここ
では、TG(熱重量)−DTA(示差熱分析)を行う。
【0053】この結果、約320℃で吸熱のピークおよ
びTGの減少が見られる。
【0054】吸熱のピークは相転移を表している。そし
て、320℃における熱重量の減少は、320℃が融点
ではなく熱分解温度であることを示している。これによ
り、Biqは、電子輸送材料として一般的に用いられて
いるAlqと同程度の耐熱性(Alqの熱分解温度40
0℃)を有していることが分かった。
【0055】次に、この実施例で得られるBiqのTH
F(テトラヒドロフラン)溶液(濃度10-5mol/
l)を測定溶液として用いて、蛍光スペクトルを測定す
る。
【0056】この結果、可視光の波長範囲である380
nm〜780nmの範囲内では、蛍光スペクトルは得ら
れなかった。これにより、Biqは可視域において、非
蛍光性を有していると言える。
【0057】次に、合成されたBiqを有機EL素子の
電子輸送層を構成する材料として、有機EL素子を形成
する。この素子はBiqの電子輸送性および発光性(非
蛍光性)を調べるための実験用サンプルである。また、
この素子は、ガラス基板上に陽極として透明電極、正孔
輸送層、Biq層および陰極である金属電極層をこの順
に具えた構造を有している。
【0058】この実験用サンプルの形成は、まず、十分
に洗浄したガラス基板上に電子ビーム蒸着法を用いて、
酸化インジウム錫(ITO)薄膜を200nmの厚さに
設ける。このITO膜のシート抵抗は10Ω/□であっ
た。このITO膜に対してフォトリソエッチングを行っ
て、2mm幅のストライプ状に加工して、陽極である透
明電極が形成される。
【0059】次に、陽極が形成された基板をアセトンお
よびイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した
後、乾燥させる。
【0060】この基板を有機膜形成用の真空蒸着装置に
移した後、正孔輸送層の材料であるTPDを装置内のる
つぼの中に入れて、このるつぼを抵抗線加熱する。陽極
を含む基板上へのTPDの蒸着速度が0.3nm/秒で
一定速度となるように、装置に備え付けてある水晶振動
子式膜厚計を用いて、蒸着速度およびるつぼの温度を制
御して、45nmの厚さの正孔輸送層を形成する。
【0061】続いて、同じ真空蒸着装置内の別のるつぼ
の中にBiqを入れて、0.2nm/秒という蒸着速度
で正孔輸送層上にBiq層を28nmの厚さに形成す
る。
【0062】この後、Biq層、正孔輸送層および陽極
が形成された基板を金属蒸着用の真空装置内に移して、
真空蒸着法を用いて、陰極としてマグネシウム(Mg)
を200nmの厚さに形成する。この陰極の形成には、
幅2mmのスリットを有する金属マスクを用いる。この
マスクによってBiq層が覆われるように、Biq層上
に金属マスクを設けて真空蒸着を行う。これにより、幅
2mmのストライプ状の陰極が形成されるが、形成され
る陰極がちょうど基板上の陽極と直交するように金属マ
スクの位置を設定する。
【0063】これにより、基板上に陽極、正孔輸送層、
Biq層および陰極がこの順に具えられた実験用サンプ
ルが形成される。このサンプルを第1サンプルとする。
【0064】次に、上述した処理と同様の処理を行っ
て、第2サンプルを形成する。この第2サンプルにおい
ては正孔輸送層の厚さを45nmとし、Biq層の厚さ
を42nmとした。
【0065】これらの実験用サンプルの陽極と陰極との
間に電圧をそれぞれ印加して、電流−電圧特性を調べ
る。図3は第1サンプルおよび第2サンプルの電流−電
圧特性図であり、横軸に電圧(V)をとり、縦軸に電流
密度(mA/cm2 )をとって示してある。また、図3
中、第1サンプルの特性曲線を、白丸をつないだ曲線で
示し、第2サンプルの特性曲線を黒丸をつないだ曲線で
示す。なお、この白丸と黒丸は、各印加電圧における電
流密度の値を示している。
【0066】図3によれば、第1サンプルでは16Vの
電圧を印加すると、電流密度は450mA/cm2 とい
う値が得られる。これは、一般的に電子輸送材料として
使用されているAlqを用いた有機EL素子の電流−電
圧特性とほぼ同等の特性が得られていることを示してい
る。これにより、Biqは、Alqと同等の優れた電子
輸送性を有していることが分かった。
【0067】また、第1サンプルよりもBiq層の厚さ
を厚くしてある第2サンプルにおいては、20Vの電圧
を印加して、およそ120mA/cm2 の電流密度の値
が得られた。第1サンプルと比較すると、Biq層の厚
さが厚くなると流れる電流は少なくなっている。これ
は、Alqを用いた有機EL素子においても同様に、A
lqの含有された層の厚さが厚くなれば、流れる電流は
少なくなる。よって、この実施例で合成されたBiq
は、Alqとよく似た電流−電圧特性を有することが分
かる。また、これらのサンプルに対して、陽極にマイナ
ス、陰極にプラスの電圧を加える、逆バイアスの電圧を
印加すると、電流はほとんど流れなかった。このため、
良好な整流性を有していることが確認された。
【0068】また、これらのサンプルに電圧を印加して
も、発光は見られなかった。
【0069】このため、Alqと同等の電子輸送性、耐
熱性および成膜性を有し、非発光性の電子輸送材料を得
ることができた。
【0070】<第2の実施例>この発明の電子輸送材料
を電子輸送層の材料として用いた有機EL素子の一例を
第2の実施例として説明する。
【0071】この例では、図1を用いて既に説明した有
機EL素子10を次のようにして作製する。なお、第1
の実施例と相違する点につき説明し、同様の点について
は、その詳細な説明を省略する。
【0072】まず、ガラス基板11に、陽極13として
ITOを電子ビーム蒸着法を用いて200nmの厚さに
成膜する。このITO膜のシート抵抗は10Ω/□(ス
クエア)であった。次に、周知のホトリソグラフィおよ
びそれに続くエッチング処理を行って、ITO膜を2m
m幅のストライプ形状に加工して陽極13を形成する。
その後、この陽極13を形成したガラス基板11を、ア
セトンおよびイソプロピルアルコールを用いて超音波洗
浄した後乾燥させて、有機膜形成用の真空蒸着装置内へ
移動させる。
【0073】次に、陽極13を具えた基板11上に正孔
輸送層15を形成する。
【0074】この例では、正孔輸送層15の材料として
TPDを用いる。真空蒸着装置のるつぼへTPDを入れ
て、るつぼを抵抗線加熱する。蒸着速度が0.3nm/
秒となるようにるつぼの温度を制御する。蒸着速度が
0.3nm/秒で一定となったことを確認して、基板1
1とるつぼとの間にあるシャッタを開けて、基板11上
にTPDを蒸着する。水晶振動子式膜厚計の表示で、4
0nmの厚さの正孔輸送層15が形成される。
【0075】次に、同じ蒸着装置を用いて、正孔輸送層
15上に発光層17を形成する。
【0076】この例では、発光層17の材料として、下
記の(3)式に示すEu錯体(以下、Eu(DBM)3
Phenと称する。)と、下記の(4)式に示すオキサ
ジアゾール誘導体(以下、PBDとする。)とを用い
る。
【0077】
【化10】
【0078】真空蒸着装置内の別々のるつぼへ、PBD
とEu(DBM)3 Phenとを入れて、るつぼを抵抗
線加熱する。この例では、PBDとEu(DBM)3
henの蒸着速度の比が3:1になるように、それぞれ
のるつぼの温度を制御する。上記蒸着速度の比が3:1
(PBD:Eu(DBM)3 Phen)で一定になった
ことを確認して、正孔輸送層15とるつぼとの間にある
シャッタを開けて、正孔輸送層15上に発光層の材料を
蒸着する。水晶振動子式膜厚計の表示で10nmの厚さ
の発光層17が形成される。
【0079】続いて、発光層17上に電子輸送層19を
形成する。
【0080】この例では、電子輸送層19の材料とし
て、この発明のBiqを用いる。
【0081】真空蒸着装置内のるつぼへBiqを入れ
て、蒸着速度が0.2nm/秒となるようにるつぼの温
度を制御して、発光層17上にBiqを蒸着する。これ
により、30nmの厚さの電子輸送層19が形成され
る。
【0082】この後、陽極13、正孔輸送層15、発光
層17および電子輸送層19が形成された基板11を金
属膜蒸着用の真空蒸着装置に移して、電子輸送層19上
に、陰極21として、マグネシウム(Mg)膜を真空蒸
着法を用いて200nmの厚さに形成する。この陰極2
1の形成は、電子輸送層19上を幅2mmのスリットが
設けられている金属マスクで覆って、Mgの蒸着を行
う。これにより、2mm幅のストライプ形状の陰極21
が形成される。また、この陰極21は上記の陽極13と
直交するように形成する。これにより、第2の実施例の
有機EL素子が得られる。
【0083】(比較例1)ここで、比較例1として、A
lqを用いて電子輸送層を形成する例につき説明する。
ここでは、電子輸送層の材料を、電子輸送材料として一
般的によく用いられているAlqとすること以外の構造
および製造工程は、第2の実施例と同様にする。ここで
は、陽極、正孔輸送層および発光層が形成された基板上
に、真空蒸着法を用いてAlqを30nmの厚さに成膜
して電子輸送層を形成する。その後、第2の実施例と同
様にこの電子輸送層上にMgで以て陰極を形成して、比
較例1の有機EL素子が得られる。
【0084】第2の実施例の有機EL素子の陽極と陰極
との間に電圧を印加したところ、直交している両電極の
重なる部分から赤色の発光が生じて、ガラス基板側から
観察された。図4に、第2の実施例の有機EL素子の発
光スペクトル特性図を示す。横軸に波長(nm)をと
り、縦軸にEL発光強度(任意単位)をとって示してあ
る。図4によれば、波長615nmにするどく高い強度
を示すピークが得られている。このピークは、Eu錯体
のEuイオンの、50 準位から72 準位への電子遷
移に基づく発光に対応している。また、580nmから
600nmまでの波長付近に現れている弱いピークもE
uイオンの他の準位間の電子遷移に基づく発光を示して
いると考えられる。
【0085】一方、比較例1の素子に電圧を印加して、
その発光スペクトルを測定した結果を、図5に示す。図
5によれば、波長615nmに、Euイオンからの発光
を示す強度の大きいピークが得られているが、この他
に、波長510nmにピークを有するブロードなスペク
トルが得られた。このスペクトルは、電子輸送材料であ
るAlqからの発光を示している。
【0086】従って、この発明のBiqを電子輸送材料
として電子輸送層の材料に用いた、この実施例の有機E
L素子においては、Biqが非発光性であるために、電
荷の漏れなどによって電子輸送層で電荷の再結合が起こ
ったとしても、電子輸送層からの発光を抑制することが
できる。これにより、発光層のみからの発光を得ること
ができる。この例では、発光層を構成するEu錯体のE
uイオン特有の赤色発光を得ることができる。
【0087】また、この実施例において、発光層である
PBDとEu(DBM)3 Phenとの共蒸着膜の厚さ
は、10nmとしたが、2〜30nmの範囲内の厚さに
この共蒸着膜を形成しても、得られる発光の発光強度に
変化は見られるが、発光スペクトルの形状は変化せず、
波長615nmにするどいピークが得られた。
【0088】また、この実施例のように、3層型の有機
EL素子であって、電子輸送層以外の層を、この実施例
で用いた材料と異なる材料で以て構成した素子において
も、電子輸送層にBiqを含有させることができる。こ
れにより、発光層のみからの発光が得られる。
【0089】また、3層型の素子でなくても、陽極と、
正孔輸送性発光層と、電子輸送層と、陰極とを具えた2
層型の有機EL素子の電子輸送層の材料にBiqを用い
ても、同様の効果を得ることができる。
【0090】<第3の実施例>第3の実施例として、陽
極上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極を具
えた3層型の有機EL素子であって、発光層と電子輸送
層との間に正孔ブロック層を介在させた例につき、説明
する。
【0091】ここでは、第1および第2の実施例と相違
する点につき説明し、同様の点についてはその詳細な説
明を省略する。
【0092】まず、第2の実施例と同様にして、ガラス
基板上にITOで以て陽極を形成して、洗浄した後、こ
の陽極が形成された基板上に正孔輸送層を形成する。
【0093】この例では、正孔輸送層の材料として、下
記(5)式で示されるジアミン誘導体(以下、NPDと
称する。)を用いる。
【0094】
【化11】
【0095】有機膜形成用の真空蒸着装置内に陽極が形
成された基板を移して、この基板上にNPDを30nm
の厚さに蒸着して正孔輸送層を形成する。
【0096】続いて、この正孔輸送層上に発光層を形成
する。
【0097】この例では、発光層の材料として、上記
(3)式で示されるEu(DBM)3PhenおよびN
PDを用いる。
【0098】第2の実施例と同様にして、真空蒸着法を
用いて正孔輸送層上にNPDとEu(DBM)3 Phe
nとの共蒸着膜を形成する。ここでは、NPDとEu
(DBM)3 Phenの蒸着速度の比が10:1(NP
D:Eu(DBM)3 Phen)になるようにして、2
5nmの厚さの、NPDにEu(DBM)3 Phenが
およそ10%ドープされた発光層が形成される。
【0099】その後、この発光層上に正孔ブロック層を
形成する。
【0100】この例では、正孔ブロック層の材料とし
て、下記(6)式で示されるトリアゾール誘導体(以
下、pEt−NTAZと称する。)を用いる。
【0101】
【化12】
【0102】真空蒸着法を用いて、pEt−NTAZを
20nmの厚さに蒸着させて、正孔ブロック層を形成す
る。
【0103】その後、正孔ブロック層上に電子輸送層を
形成する。
【0104】この例では、電子輸送層の材料を、この発
明の電子輸送材料であるBiqとする。第2の実施例と
同様にして、真空蒸着法を用いて正孔ブロック層上にB
iqを30nmの厚さに蒸着する。これにより、電子輸
送層が形成される。
【0105】最後に、電子輸送層上に第2の実施例と同
様にして、Mgの陰極を形成する。
【0106】これにより、陽極上に、正孔輸送層、発光
層、正孔ブロック層、電子輸送層および陰極をこの順に
具えた第3の実施例の有機EL素子が得られる。
【0107】(比較例2)ここで、比較例2として、A
lqを用いて電子輸送層を形成する例につき説明する。
ここでは、電子輸送層の材料を、電子輸送材料としてよ
く用いられているAlqとすること以外の構造および製
造工程は、第3の実施例と同様にする。ここでは、陽
極、正孔輸送層、発光層および正孔ブロック層が形成さ
れた基板上に、真空蒸着法を用いてAlqを30nmの
厚さに成膜して電子輸送層を形成する。その後、第3の
実施例と同様にこの電子輸送層上にMgで以て陰極を形
成して、比較例2の有機EL素子が得られる。
【0108】第3の実施例の有機EL素子および比較例
2の有機EL素子に電圧をそれぞれ印加して、測定され
た発光スペクトルの特性図を図6および図7に示す。図
6および図7は、横軸に波長(nm)をとり、縦軸にE
L発光強度(任意単位)をとって示してある。なお、図
6は第3の実施例の素子における発光スペクトル特性図
であり、図7が、比較例2の素子の発光スペクトル特性
図である。図6および図7によれば、いずれの素子にお
いても、波長615nmにするどいピークが得られてい
る。このピークは発光層に含まれているEu(DBM)
3 PhenのEuイオンからの発光スペクトルを示して
いる。また、比較例2の素子からは、第2の実施例と同
様に、波長510nmにピークを有するAlqに起因す
るスペクトルが得られた(図7参照。)。
【0109】この実施例および比較例の有機EL素子に
おいて、陽極から注入された正孔は、正孔輸送層および
発光層を伝導して正孔ブロック層でその伝導が阻止され
る。一方、陰極から注入された電子は、電子輸送層およ
び正孔ブロック層を伝導して発光層へ到達する。正孔ブ
ロック層によって発光層内に閉じこめられた正孔と、発
光層に到達した電子とは、発光層内で再結合して、発光
層から発光が得られる。しかしながら、正孔ブロック層
の厚さは電子の移動を妨げないように20nmと薄くし
てあるために、一部の正孔は電子輸送層へ漏れてしま
う。このため、電子輸送層内においても電荷の再結合が
起こる。
【0110】比較例2の素子では、電子輸送層の材料に
Alqを用いている。Alqは強い緑色発光を示す材料
であるため、電子輸送層で電荷の再結合が起こると、こ
のAlqに起因する発光が生じてしまう。このため、こ
の素子に電圧を印加して得られる発光には、発光層から
の発光の他に電子輸送層からの発光が混ざってしまう。
【0111】しかしながら、この実施例の素子の電子輸
送層の材料は、非蛍光性のBiqであるため、電子輸送
層で電荷の再結合が起こっても、電子輸送層に起因する
発光が生じるおそれはない。
【0112】このことから、陽極から注入される正孔
が、電子輸送層にまで移動するのを防ぐ正孔ブロック層
が電子輸送層と発光層との間に設けてある有機EL素子
においては、発光層で電荷が再結合する効率を向上させ
ることができ、これにより発光効率を向上させることが
できるが、一部の正孔は正孔ブロック層から電子輸送層
に漏れてしまう。そして、漏れた正孔は電子輸送層内で
電子と再結合して、発光が生じてしまうおそれがある
が、この実施例の素子においては、電子輸送層の材料
に、非蛍光性のBiqを用いているために、電子輸送層
に起因する発光を抑制することができる。
【0113】<第4の実施例>第4の実施例として、陽
極、正孔輸送性発光層、電子輸送層および陰極をこの順
で具える有機EL素子であって、電子輸送層と陰極との
間に電極付着層が設けられている例につき説明する。こ
の電極付着層を構成する材料として、この発明のBiq
を用いる。
【0114】ここでは、第1〜第3の実施例と相違する
点につき説明し、同様の点についてはその詳細な説明を
省略する。
【0115】まず、第2の実施例と同様にして、ガラス
基板上にITOで陽極を形成した後、正孔輸送性発光層
を形成する。
【0116】この例では、正孔輸送性発光層の材料とし
てTPDを用いる。
【0117】真空蒸着装置内に陽極が形成された基板を
移して、この基板上にTPDを40nmの厚さに蒸着し
て正孔輸送性発光層を形成する。
【0118】続いて、この正孔輸送性発光層上に電子輸
送層を形成する。
【0119】この例では、電子輸送層の材料としてpE
t−NTAZを用いる。真空蒸着法を用いて、正孔輸送
性発光層上にpEt−NTAZを35nmの厚さに蒸着
して電子輸送層を形成する。
【0120】この後、この実施例では電子輸送層上に電
極付着層を設ける。真空蒸着法を用いて、Biqを1n
mの厚さに蒸着する。これを電極付着層とする。
【0121】この電極付着層上に第2の実施例と同様に
してMgの陰極を形成する。
【0122】これにより、陽極上に、正孔輸送性発光
層、電子輸送層、電極付着層および陰極を具えた第4の
実施例の有機EL素子が得られる。
【0123】(比較例3)ここで、電極付着層を設けな
いこと以外は、第4の実施例と構造および製造工程を同
様にして、比較例3の有機EL素子を形成する。
【0124】第4の実施例の有機EL素子に直流電圧を
印加したところ、発光層を構成するTPDに起因する青
色発光が得られた。一方、比較例3の素子に直流電圧を
印加しても発光は得られなかった。
【0125】比較例3の素子の電子輸送層を構成するp
Et−NTAZは、電極付着性がよくない材料である。
このため、電子輸送層上にMgの陰極が付着していなか
ったため、素子に電流が流れず、発光を得ることができ
なかった。
【0126】第4の実施例では、電極付着層として、B
iqの薄膜を電子輸送層と陰極との間に設けてあるため
に、Mgの陰極を電子輸送層の上側にBiqの層を介し
て付着させることができる。また、このBiqはAlq
と同程度の電子輸送性を有し、かつ薄い層であるため
に、Mgから電子輸送層への電子の移動を妨げるおそれ
はない。従って、この実施例の素子に電圧を印加すると
電流が流れ、その結果発光を得ることができる。
【0127】これにより、この発明のBiqは電極付着
性に優れた材料であることが確認された。
【0128】また、この実施例で挙げたpEt−NTA
Zのように、有機EL素子の電子輸送層を構成する材料
として、電子輸送性等の性質は有していながら、電極の
付着性がよくない材料は多く存在している。しかしなが
ら、この発明のBiqを電極付着層として電子輸送層と
陰極との間に介在させれば、電極の付着性のよくない材
料で以て電子輸送層を構成することが可能となる。従っ
て、有機EL素子を構成する材料の選択の幅を広げるこ
とができる。
【0129】また、この実施例では、陽極、正孔輸送性
発光層、電子輸送層および陰極を具えた2層型の有機E
L素子に、Biqを用いた電極付着層を設けたが、この
構造に限らず、陽極、正孔輸送層、電子輸送性発光層お
よび陰極を具えた2層型の素子であって、電子輸送性発
光層の電極付着性がよくないような素子に適用させるこ
ともできる。この場合、電子輸送性発光層と陰極との間
に電極付着層を設ければよい。また、もちろん陽極、正
孔輸送層、発光層、電子輸送層、および陰極を具えた3
層型の有機EL素子に適用させてもよい。
【0130】また、この電極付着層は、0.1〜50n
mの範囲内の厚さで設けることができる。陰極からの電
子の移動を妨げることのないように、できるだけ、薄い
層であることが望ましいが、陰極を良好に付着させるた
めには0.3nm以上の厚さにするのが好ましい。
【0131】
【発明の効果】上述した説明から明らかなように、この
発明の電子輸送材料は、下記(1)式で示される、トリ
ス(8−ヒドロキシキノリノール)ビスマスである。
【0132】
【化13】
【0133】この材料は、一般的に有機EL素子の電子
輸送層の材料として用いられているAlqと同程度の電
子輸送性、耐熱性および成膜性を有する。さらに蛍光を
発生しないという特性を有する。
【0134】よって、この電子輸送材料を、陽極、正孔
輸送層、発光層、電子輸送層および陰極を具える有機E
L素子の電子輸送層の材料として用いれば、電荷の漏れ
などによって電子輸送層で電荷の再結合が起こったとし
ても、電子輸送層からの発光を抑制することができる。
これにより、電子輸送層に起因する発光が混入すること
なく、発光層のみからの発光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態および第1の実施例の説
明に供する、有機EL素子の概略的な構成図である。
【図2】実施の形態の説明に供する、有機EL素子の概
略的な構成図である。
【図3】第1の実施例の有機EL素子の実験用サンプル
の電流−電圧特性図である。
【図4】第2の実施例の有機EL素子の発光スペクトル
特性図である。
【図5】比較例1の有機EL素子の発光スペクトル特性
図である。
【図6】第3の実施例の有機EL素子の発光スペクトル
特性図である。
【図7】比較例2の有機EL素子の発光スペクトル特性
図である。
【符号の説明】
10,20:有機EL素子、第1実施例の有機EL素子 11:ガラス基板 13:陽極 15:正孔輸送層 17:発光層 19:電子輸送層 21:陰極 23:正孔輸送性発光層

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)式で示される、トリス(8−
    ヒドロキシキノリノールビスマスからなることを特徴と
    する電子輸送材料。 【化1】
  2. 【請求項2】 陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層
    および陰極をこの順に具えた有機EL素子において、 前記電子輸送層を構成する電子輸送材料として、下記
    (1)式で示される、トリス(8−ヒドロキシキノリノ
    ール)ビスマスを含んでいることを特徴とする有機EL
    素子。 【化2】
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の有機EL素子におい
    て、 前記発光層と電子輸送層との間に、正孔ブロック層が設
    けられていることを特徴とする有機EL素子。
  4. 【請求項4】 陽極、正孔輸送性発光層、電子輸送層お
    よび陰極をこの順に具えた有機EL素子において、 前記電子輸送層を構成する電子輸送材料として、下記
    (1)式で示される、トリス(8−ヒドロキシキノリノ
    ール)ビスマスを含んでいることを特徴とする有機EL
    素子。 【化3】
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の有機EL素子におい
    て、 前記発光層と電子輸送層との間に、正孔ブロック層が設
    けられていることを特徴とする有機EL素子。
  6. 【請求項6】 陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層
    および陰極をこの順に具えた有機EL素子において、 前記電子輸送層と陰極との間に電極付着層が設けられて
    いて、 該電極付着層には、下記(1)式で示される、トリス
    (8−ヒドロキシキノリノール)ビスマスが含まれてい
    ることを特徴とする有機EL素子。 【化4】
  7. 【請求項7】 陽極、正孔輸送性発光層、電子輸送層お
    よび陰極をこの順に具えた有機EL素子において、 前記電子輸送層と陰極との間に電極付着層が設けられて
    いて、 該電極付着層には、下記(1)式で示される、トリス
    (8−ヒドロキシキノリノール)ビスマスが含まれてい
    ることを特徴とする有機EL素子。 【化5】
  8. 【請求項8】 陽極、正孔輸送層、電子輸送性発光層お
    よび陰極をこの順に具えた有機EL素子において、 前記電子輸送性発光層と陰極との間に電極付着層が設け
    られていて、 該電極付着層には、下記(1)式で示される、トリス
    (8−ヒドロキシキノリノール)ビスマスが含まれてい
    ることを特徴とする有機EL素子。 【化6】
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009234832A (ja) * 2008-03-26 2009-10-15 Nagasaki Prefecture 金属箔を接合した陶磁器製品およびその製造法

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