JPH11303041A - 海水に接する構造物の防汚方法 - Google Patents

海水に接する構造物の防汚方法

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JPH11303041A
JPH11303041A JP12811198A JP12811198A JPH11303041A JP H11303041 A JPH11303041 A JP H11303041A JP 12811198 A JP12811198 A JP 12811198A JP 12811198 A JP12811198 A JP 12811198A JP H11303041 A JPH11303041 A JP H11303041A
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anode
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cobalt
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JP12811198A
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Tadahiko Oba
忠彦 大庭
Morihiko Kuwa
守彦 桑
Hidetomo Usui
英智 臼井
Takahiro Kajiyama
貴弘 梶山
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Nakabohtec Corrosion Protecting Co Ltd
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Nakabohtec Corrosion Protecting Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境に優しく、施工性や再加工性に優れた電
気化学的海生生物付着抑制または防止する方法を提供す
る。 【解決手段】 海水に接する構造物の表面をチタンから
なる基材で構成し、該チタン表面にコバルト又はマンガ
ン含有溶液を塗布し、熱活性化処理で酸化コバルト又は
酸化マンガンに変換する。該酸化物被覆チタンを陽極と
して塩素を発生しないで酸素のみ発生する電位に保持す
ることによって該構造物の海水界面に海生生物の付着を
抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水に接するコン
クリート或いは金属製(主として鉄鋼)構造物の界面に
棲息・成育し種々のトラブルを発生させる海生生物(海
藻類も含む)の付着防止に関する。
【0002】
【従来の技術】海水に接する桟橋、護岸または取水路等
のコンクリート製構造物や鋼矢板岸壁、鋼管杭、石油掘
削リグ、スクリーン、ポンプ、クラゲ防止金網または熱
交換器等の金属製施設は、これらの構造物の界面に付着
棲息し、成育する海生生物(海藻類も含む)が種々のト
ラブルの要因となっている。
【0003】水路や冷却管にあっては管路の閉塞に伴う
水量の減少、冷却効果の低下、または次工程プラントの
操業に影響が大きい。金属構造物にあっては海生生物の
付着に伴って腐食の局部集中化が避けられず、護岸や桟
橋にあっては美観を損なうことも重要な課題である。
【0004】該構造物の海生生物付着防止(以下、防汚
と称する)対策は、環境内に塩素または次亜塩素酸塩の
投入、電解による塩素や銅等の毒性イオンの生成、もし
くは防汚塗料の塗布等が開発され実用に供されている。
しかし、これらの大半は毒性イオンに基づくものであ
り、該海生生物のみならず有用な生物までも死滅させ、
加えて効果を高め、長期に効果を維持させるため濃度は
高めに管理されるので、余剰のイオンは環境汚染の因に
なりやすい。
【0005】海水を冷却水として使用する熱交換器や復
水器は、冷却管の入口または出口の管板にフジツボやイ
ガイ等の大型海生生物が付着し、冷却管の管径を塞ぐの
で、洗浄用スポンジボールを通して除去を図っている
が、該スポンジボールが通過できなかったり詰まったり
して、止むなく運転を停止して海生生物の除去を実施し
ている例がある。特に、銅合金製管板より耐食性の優れ
たチタン製管板において顕著である。
【0006】無毒性または無害性の防汚対策も近年盛ん
に研究開発が進められているが、シリコーン系防汚塗料
や亜鉛溶射被覆は、効果はともかく寿命、施工コストに
加えて千m2以上に及ぶ対象物や半永久的な既存施設へ
の対応にはより簡潔な手段の開発が望まれる。対象構造
物の表面にカーボン、グラファイト等の導電材含有導電
塗料で被覆し、該導電塗料皮膜を陽極として通電し次亜
塩素酸イオンや塩素イオンを生成させて該構造物の表面
を防汚する方法が、例えば特公平6−15069、同8
−14036、特許第2601807、および同257
5866号公報に開示されている。また、導電性シート
を被防汚体の防汚を必要とする部分にライニングし、別
途同環境内に電極材と照合電極及び直流電源を設置し、
導電シートを陽極、電極材を陰極とし、照合電極と陽極
の電位差を一定に保持して該導電シートに触れた微生物
が電気的ショックを受けて付着できないようにする方法
が特公平7−24822号公報に記載されている。かか
る導電塗料や導電シートライニングは、導電材であるカ
ーボンや接着用樹脂バインダーの寿命に加えて電解によ
って発生する塩素や次亜塩素イオンによる劣化が避けら
れず、長期使用に耐えられず被覆再加工の頻度が多くな
り、構造物の形状、大きさまたは環境によって再加工は
用意ではない。コンクリート構造物にあっては、塗料や
シート被覆はコンクリートの劣化検査も容易ではない。
【0007】無毒性または無害な他の防汚方法には、本
発明の出願人の先願にかかる国際公開WO93/022
54号公報がある。これは、溶出イオンが無害である鉄
鋼を被防汚対象物の海水との界面に取付け別途同海水環
境中に電極材を取付け、前者の鉄鋼を直流電源の正極に
接続して陽極とし、後者の電極材を負極に接続して陰極
とし、陽極電流密度1A/m2以下で通電し、塩素の発
生を抑え(陽極電位1.1V−SCE−以下に保持)な
がら該鉄鋼表面に海生生物の着生を抑制する方法であ
る。類似の方法に特公平1−46595号公報がある。
これは、水(海水を含む)と接する金属(例えばチタン
製熱交換器)の表面に電気触媒皮膜(主として白金族金
属或いはこれらの金属を基とした合金またはこれらの金
属の酸化物)を形成し、陽極として電解して、塩素ガス
を実質的に発生させないで十分な酸素を発生させて生物
及びスケールの沈積物を存在しないようにする方法であ
る。これらの方法は、環境に無害な方法として注目され
るが、長期効果の期待に比して高価な電極材料と現場施
工工数がかかり、施工コストが他の方法よりも高くなる
のが難点であり、実用に供するための大きな要素となっ
ている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、環境に優し
く、長期に亘って防汚性を有し施工が容易で補修も容易
な防汚方法を提供する。加えて従来の電解方式による防
汚方法に比して防汚効果において優れ且つ施工コストの
低減を図るのが目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
め、従来の防汚手段と同等またはそれ以上の防汚効果を
有し、電極材料が安価で、施工作業が安全且つ容易で長
寿命である触媒被覆電極の開発に鋭意検討を行い本発明
を完成させた。
【0010】その手段は次の通りである。基本的手段
は、海水と接する構造物(金属製またはコンクリート
製)の防汚対象表面にチタン溶射を施し、該溶射皮膜の
上にコバルトまたはマンガン含有溶液、もしくはこれら
の溶液にイリジウムを混合した溶液を塗布して乾燥後、
該溶射皮膜を陽極的または火炎で励起して熱活性化処理
をおこない酸化コバルトまたは酸化マンガン皮膜に変換
形成させることにある。該酸化コバルトまたは酸化マン
ガン皮膜を形成させたチタン溶射皮膜は、海水中で陽極
として該陽極電位を酸素発生電位内に保持し、塩素ガス
発生電位より卑な電位で海水電解を行う事により該構造
物の防汚対象面に海生生物(藻類を含め)の付着を抑制
または防止する方法である。
【0011】対象構造物によっては、該構造物の表面を
覆うチタン溶射被膜がチタン板または薄板条であって、
予め工場で上記コバルトまたはマンガン酸化物皮膜を形
成させて、現地に搬送して対象物に取付けることも可能
である。
【0012】また、チタン製管板や管から成る熱交換器
にあっては、チタン溶射やチタン板条の事前用意の必要
はなく、該チタン製管板の表面をケレン清浄後、直接コ
バルトまたはマンガン含有溶液、もしくはこれらの溶液
にイリジウムを混合した溶液を塗布して乾燥後、火炎や
電熱で加熱し酸化コバルトまたは酸化マンガンに変成さ
せる事ができる。
【0013】本発明において、これらの酸化皮膜形成チ
タンは、該酸化皮膜が電気活性触媒として作用する。該
電気活性触媒を有するチタンは、外部直流電源の正極に
接続して陽極とし、海水中で陽極電位を塩素発生の1.
1V(SCE基準)より卑であって酸素発生電位の0.
5〜1.0Vに保持するように定電位装置で制御する。
【0014】酸化コバルトや酸化マンガンが消耗した場
合には、チタン溶射またはチタン面に直接コバルトまた
はマンガン含有溶液、もしくはこれらの溶液にイリジウ
ムを混合した溶液を塗布して乾燥後、火炎や電熱で加熱
することによって容易に再生できる。
【0015】
【発明の実施の形態】防汚手段の実施に当たって留意し
なくてはならない条件は、防汚効果に加えて周辺環境へ
の弊害を最小限に抑える事である。環境二次汚染を避け
ることである。海水電解で生成する塩素ガスや銅といっ
た重金属イオン等の毒性イオンによる防汚は、防汚効果
よりも有用海生生物までも駆除し、また環境汚染の因に
なりやすい。このため、無毒性、無害及び無公害の防汚
方法が望まれ、その開発に拍車が懸かった。無公害防汚
塗料や塩素を発生させない電解防汚方法が開発された。
しかし、この方法においては上述した如くトータルコス
トの低減が大きな課題である。電解防汚にあっては、電
極素材、電極形状、施工手段または再生加工等安価で作
業性に優れ、期待寿命が長いことがポイントである。
【0016】電解防汚は、可溶性金属(例えば鉄鋼)の
アノード溶解を利用する方法と不溶性電極を用いた陽極
の海水電解による塩素または酸素ガスを発生させる方法
に大別される。
【0017】本発明は、不溶性陽極で海水電解を行い塩
素ガスを発生させないで酸素ガスによる防汚に焦点をし
ぼって施工コストの低減手段を図ったものである。
【0018】不溶性陽極を用いた海水電解で陽極面の主
たる電気化学反応は、 2Cl- →Cl2 +2e- ・・・・・・・・・・(1) 2H2 O→O2 +4H+ +4e-・・・・・・・・(2) で示される。
【0019】毒性を有する塩素ガスの発生を抑制するに
は、塩素が発生する電位より低い(卑)電位に維持しな
くてはならない。海水中では、この電位は水素電極基準
で1.37V(SCE[飽和甘汞電極基準]で1.13
V)である。塩分量の低い溶液にあっては、塩素発生限
界電位は多少高くなる。本発明の防汚では、電位を塩素
発生限界電位以下に抑制する必要がある。酸素発生限界
電位は海水のpHが低いほど高くなるが、pH6.5〜
8.5の範囲では0.87〜0.71V(SCEで0.
63〜0.47V)である。標準海水のpH8.2では
0.76V(SCEで0.52V)である。標準海水
(pH8.2)で考えると0.76V(SCEで0.5
2V)より高い電位で1.37V(SCEで1.13
V)より低い電位に保持すれば、陽極表面から酸素は発
生するが塩素の発生は抑制させることができる。陽極電
位は適用陽極電流密度の関数であり、電流密度が大きく
なると電位は上昇し、酸素の発生は通電量に比例して大
きくなる。言い換えると、海水中で陽極電位をSCEで
0.5〜1.1Vの範囲に制御すれば塩素の発生もなく
無公害な防汚が可能である。(2)式から陽極界面では
4モルの水素イオン(4H+ )が生成され、実測は不可
能であるが間接的に1〜3のpH範囲にあり高い酸性度
領域にあるので、これも付加的に海生生物の着生抑制に
寄与する。
【0020】陽極近傍は、通電により水素イオンの生
成、酸素の発生ある時は塩素イオンや塩素の発生があり
極めて強い酸化性の雰囲気に保持される。かかる環境で
長期に亘って陽極電流を流出しても消耗の少ない(無視
できる)不溶性電極は、酸化や塩素に対して強くて導電
性に優れた材質であることが必要である。炭素質を導電
材としたカーボン単体または導電塗料は、環境中の酸化
剤が界面から急速に拡散逃避するか、適用陽極電流密度
が小さくて(例えば数十mA/m2以下)数ヵ月から1
カ年位の短期使用と云った条件ならばともかく、大電流
や長期使用にあっては炭素質の酸化消耗が大きくなり不
向きである。ヴァルヴ金属として知られるチタンは、酸
化や塩素に対して優れているが、酸化皮膜が強く導電材
としてはこのままでは付加電圧が大きくなり、チタンの
破壊電圧は、約8Vであるから使用環境によっては適正
ではない。従って、電気化学工業ではチタン素材に白金
系金属或いはこれらの貴金属の酸化物触媒を被覆したも
のが使用されている。該触媒被覆チタン電極は、板状、
網状であれ、触媒被覆と言った製作処理工程があり加え
て高価な被覆であり現地作業や再生加工は容易ではな
い。
【0021】前述の特公平1−46595号公報は、ヴ
ァルヴ金属の表面に電気触媒(例えば、白金系金属或い
はこれらの貴金属酸化物を混合したもの等)を被覆した
該触媒被覆ヴァルヴ金属を陽極として電解し、塩素を発
生させないで酸素を発生させて防汚する技術が開示され
ている。これについては理論的効果はともかく実用に供
された例は、類似業者である本願出願人は見聞していな
い。例えばチタン製熱交換器の管板に白金系金属または
これらの貴金属酸化物を混合した電気触媒等の被覆は、
被覆処理すべき対象が大きく、高価な触媒処理手段は工
場製作でも大容量を必要とし、まして現場製作向きでは
なく再加工も容易でないなど、工程が複雑でトータルコ
ストの低減を図らない限り実用向きではない。
【0022】この点に鑑み本発明者らは、対象構造物が
チタン製を除いた該構造物(例えば、コンクリートまた
は鉄鋼など)の表面に容易にチタン等のヴァルヴ金属の
被覆が可能な手段及び上記の高価な貴金属系の電気触媒
に代わる触媒並びに触媒被覆方法について鋭意検討をお
こなった。
【0023】その結果、対象構造物の表面に火炎または
アークによるチタン溶射被覆を施し、該表面にコバルト
またはマンガン溶液、もしくはこれらの溶液にイリジウ
ムを混合した溶液を塗布し、空気乾燥後火炎または電熱
加熱励起で熱活性化処理して酸化コバルトまたは酸化マ
ンガンに変換させることによって達成される。対象が鉄
筋コンクリート構造物にしろ鉄鋼製構造物であれ表面を
ブラストまたは研磨した上に0.8〜3.2mmφのチ
タンワイヤーを用いて火炎またはアークで溶射被覆を行
う。被覆の厚さは、特に限定する事もないが50〜15
0μmの範囲にするのが実用的である。対象が金属構造
物の場合には、直接チタン溶射を施してもよいが、該構
造物の接水面に耐熱性と絶縁性を有する塗料などの前処
理被覆を施した上にチタン溶射を行うのがよい。チタン
溶射被覆面に硝酸コバルト溶液またはマンガン溶液もし
くはこれらの溶液にイリジウムを混合した溶液をスプレ
ーまたは刷毛で塗布する。塗布面は出来れば20〜30
分空気乾燥後、該被覆チタン溶射膜を陽極的に数十mA
/m2の電流で励起するか、火炎で炙ぶりコバルトまた
はマンガン酸化物に変換する。これによって、酸化コバ
ルトまたは酸化マンガンはチタン溶射皮膜面に活性で密
着性のある皮膜を形成する。チタン製構造物にあって
は、該チタン構造物の表面を清浄にしてから直接上記の
硝酸コバルト溶液または硝酸マンガン溶液、もしくはこ
れらの溶液にイリジウムを混合した溶液をスプレーまた
は塗布し、熱活性化処理を施すことにより電気活性触媒
皮膜が形成される。溶射皮膜に代えて構造物の表面に該
触媒皮膜を形成したチタン板条を工場で製作して現地に
運び常套手段で対象構造物の表面に取付けることも可能
である。いずれの方法であっても従来の白金系金属また
はこれらの貴金属酸化物皮膜の形成手段に比して素材、
装置、作業方法または全施工時間などは大幅に軽減さ
れ、1/5〜1/10にコスト低減が可能である。
【0024】陽極電極基板となるチタン材の性状は、対
象構造物がコンクリート(鉄筋コンクリートを含む)に
あってはチタン溶射被覆が、鉄鋼構造物にあってはチタ
ン溶射被覆或いはチタンの板条が使用される。
【0025】チタン金属被覆に塗布するコバルト溶液は
硝酸塩が好ましく、マンガンは硝酸塩または硫酸塩溶液
が好ましい。また、これらの溶液にイリジウムを添加す
ることによって、塗布後熱活性化処理による酸化コバル
トまたは酸化マンガンの下地チタンとの密着性強化や電
気触媒としての性能安定と寿命の延長が図れる。
【0026】対象構造物の表面に形成された該酸化コバ
ルトまたは酸化マンガン被覆チタンは、海水中で外部直
流電源の正極に接続して陽極とし、定電位装置を介して
飽和甘汞電極を照合基準電極として0.5〜1.1Vに
設定通電を行なう。陽極電流密度は、設定電位が1Vを
超えると電極皮膜の溶解と再生が繰返される頻度が激し
くなるので変動するがおよそ0.1〜1A/m2であ
る。本発明では塩素を発生させないで酸素のみを発生さ
せて防汚するのがポイントであるから、0.5〜1.1
Vの電位に保持することが肝要である。すなわち、電極
は電流の変動があっても陽極電位が上記の範囲に保持さ
れ、破損しにくく、損傷しても容易に再加工可能であ
り、本発明はこれを用いた防汚方法である。
【0027】
【実施例】試験例1(海水中におけるチタン、貴金属酸
化物触媒被覆チタンおよび酸化コバルト被覆チタンの陽
分極特性) チタン基板に貴金属酸化物触媒および酸化コバルト触媒
被覆した電極材を海水中で定電位陽極分極法によって試
験した。海水は常温(21〜23℃)であり、pHは
7.8であった。その結果を図1に示す。
【0028】図1の結果より次のことが分った。チタン
単体は、チタン表面に形成される酸化皮膜が強固のた
め、不動態化挙動を示し酸素発生領域の0.5〜1.1
Vでは、不動態化維持電流のみで僅かの変化で塩素の発
生電位である1.1Vを超え電極材として不適である。
貴金属酸化物触媒またはコバルト酸化物被覆チタンは、
それぞれの海水中での自然電位から僅かに電位が上昇し
ても電流の流出が見られる。しかも電位の上昇にともな
って電流の流出もほぼ比例して増加している。貴金属酸
化物触媒被覆の陽分極は、塩素発生電位に達するまでは
ほぼ直線的に上昇している。酸素発生電位の分岐点は明
確でない。コバルト酸化物被覆チタンにあっては、陽極
電位が0.5〜0.6V付近に分岐点があり、これが酸
素発生電位に対応している。すなわち、コバルト酸化物
被覆チタン電極の陽極電位を0.5Vから塩素発生電位
である1.1Vの間に保持することで電極面からは酸素
のみが発生する。
【0029】陽極電位が、0.9Vまではコバルト酸化
物被覆チタン電極の陽極電流密度が貴金属酸化物被覆チ
タン電極よりも大きく、それだけ酸素の発生量が多い。
0.9Vよりも高い(貴)電位では両者の電極は類似の
性能を有している。言換えると、コバルト酸化物被覆チ
タン電極はより低電位で酸素の発生が多いのでより環境
に優しい防汚が期待できる。適用陽極電流密度は、通電
時間とともに分極が進行するので明確ではないが、当初
は、0.1〜1.0A/m2であり時間の経過と共に低
い電流で上記電位内に維持されると判断できる。
【0030】試験例2(陽極設定電位で電極面から発生
するガスの成分量) 試験例1の結果に基づいてコバルト酸化物被覆チタンを
海水中で、0.9V及び1.15V(いずれもSCE基
準)の陽極電位に設定して該極面から発生するガスを採
集してガスクロマトグラフィで分析した。
【0031】その結果、0.9Vでは主成分は酸素であ
った。1.15Vでは約90%が塩素であり、残り10
%が酸素であった。すなわち、陽極の設定電位を塩素発
生電位より低く(卑)、酸素の発生しやすい高い(貴)
電位に設定することで塩素を発生させないで酸素による
無公害な防汚が期待できる。
【0032】試験例3 上記の試験結果に基づいて、コンクリートブロックの表
面にチタン溶射を施しさらに酸化コバルト被覆を形成
し、海水中に浸漬して陽極通電を行ない該被覆表面への
海生生物の付着状況を調査した。
【0033】該試験装置の概要を図2に示す。鉄筋コン
クリートブロック4として縦・横25cm、厚さ10c
mに直径12mmφ、長さ30cmの丸鋼4本#形に組
み、カブリが5cmになるように該コンクリート中に設
置してブロック4を製作した。該ブロックの片表面をサ
ンドブラスト後、1.2mmφのチタン線材をアーク溶
射を用いて約150μmの厚さになるように溶射被覆を
施した。溶射面以外は、タールエポキシ塗装後、シリコ
ーン系防汚塗料で防汚処理を行った。溶射面はコバル
ト、そのイリジウム含有溶液、またはマンガン含有溶液
を塗布した。コバルトおよびマンガンは、6水塩の硝酸
塩で260〜300g/Lである。一部コバルト塩溶液
に15〜20g/Lの塩化イリジウム(IrCl4 ・H
2 O)を添加した溶液を塗布した。塗布後、20〜30
分乾燥してからガス火炎で皮膜を加熱乾燥して、チタン
溶射に該酸化物被覆コンクリートブロック1を得た。
【0034】チタン溶射に該酸化物被覆コンクリートブ
ロック1は、東京湾の海水中にロープで吊下げて約7カ
月間ポテンショスタット5(照合電極SCE3)を用い
て4段階の陽極設定電位に保持して浸漬した。設定電位
は、0.7,0.8,0.9及び1.0Vである。別途
比較用に無処理のコンクリートブロック1を1個設置し
た。
【0035】約7カ月間の浸漬通電後、海生生物の付着
湿重量を測定し、防汚率を求めた。防汚率は次式で算出
した。 防汚率(%)=(ブランク供試体湿重量−試験体湿重
量)/ブランク湿重量 試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】陽極設定電位が高くなるほど防汚率が高く
0.9〜1.0Vでは海生生物の付着は実質的に無視で
きる。イリジウムの添加は、幾分防汚効果が高くなる傾
向が見られるが、他の被覆の効果と大同小異である。む
しろ効果の低下を抑制し、持続性があり下地との密着性
を高める。また仕上げ表面の均一灰黒色は見栄えが良
い。
【0038】付着した海生生物は、藻類、ヒドロ類で、
フジツボやイガイ類の大型海生生物は殆ど付着していな
かった。ブランクのコンクリートは、ムラサキイガイが
厚さ10〜15cmも付着し、シリコーン系防汚塗料面
も巻き込んで付着していた。
【0039】実施例1 予備的な試験結果に基づいて、実用コンクリート構造物
に適用した。電力会社の実用されている取水路のコンク
リート壁面に本発明の電解防汚装置を適用した。設置状
況の概要を図3に示す。図3(a)は斜視図であり、図
3(b)はその断面図である。スクリーン室のコンクリ
ー卜壁面41の2m×2mをマスキング11し、サンド
ブラストで汚れ除去後1.2mmφのチタン線材を用い
てアーク溶射で約150μm厚のチタン溶射を施した。
次いで、260g/LCo(NO32 ・6H2 O溶液
を該溶射チタン被覆面11に塗布した。水切り乾燥後ガ
ス火炎で加熱励起して活性化した。チタン溶射面11か
ら地上部のケーブル7結線部までチタンリボン12を導
電材とした。チタンリボン12とチタン溶射部11は、
チタン製のアンカーボルト13で面締結した。PVCチ
ューブ15に照合電極(SCE)31(不図示)を挿入
しコンクリート壁面41にPVCチューブ15を金具で
固定した。配線はPVCの配管15内を地上まで立ち上
げポテンショスタッド(定電位装置)51に接続した。
【0040】通電は、設定電位1.0Vで行い、約1年
間実施した。本発明の装置を設置していなかった該取水
路40のコンクリート壁面41はムラサキイガイ、フジ
ツボ、ボヤ或いは藻類等の海生生物が10cm以上の厚
さに付着していた。本装置を設置した壁面11は、部分
的にヒドロの付着が見られたが、取水路40の難敵であ
るイガイ等大型海生物の付着は見られなかった。
【0041】実施例2 チタン製管板、チューブを有する熱交換器の水室内管板
に本発明の電解防汚装置を適用した。
【0042】設置概要を図4に示す。チタン製熱交換器
7の管板面71をサンドペーパーで研磨して表面の汚れ
を除去した。実施例1と同様の260g/LCo(NO
32 ・6H2 O溶液を該研磨チタン管板の表面に塗布
した。次いでガスバーナーで熱活性化処理を施した。水
室72内に別途陰極73となるSUS316の40mm
φ×300mmLの丸棒73を水室72と絶縁して設置
した。照合電極は海水塩化銀電極32である。チタン製
管板面71の電位を1.0V(SCE換算)に設定して
通電した。夏場の4カ月の状況では本電解防汚装置を設
置した熱交換器7では管板71に海生生物の付着は見ら
れなかった。それに対して、未設置の管板71は、ヒド
ロ類が多量に付着しフジツボ類の付着もかなり見られ
た。
【0043】
【発明の効果】以上詳細に記したように、本発明の電解
防汚方法は、海水に接する構造物の海生生物の付着防止
にあたって、環境に優しく、長期に亘って防汚性を有し
加えて施工や補修が容易である。
【0044】また、本発明の電解防汚方法は、毒性の塩
素の発生を抑え、電解による酸素を主成分とした防汚で
あって、従来からの貴金属またはこれらの貴金属酸化物
触媒被覆に代わる安価な素材からなる酸化物触媒の利用
と施工や補修の容易性が確保できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 海水中におけるチタン、貴金属酸化物被覆チ
タン及び酸化コバルト被覆チタンの定電位陽分極特性。
【図2】 鉄筋コンクリートに酸化コバルトを被覆した
溶射チタンを陽極とした定電位通電試験装置を示す図。
【図3】 実取水路のコンクリート壁面の一部に本発明
を適用した概要図であり、(a)は斜視図、(b)はそ
の断面図。
【図4】 チタン製熱交換器管板に本発明の方法を適用
した概要図。
【符号の説明】
1;酸化コバルト被覆チタン溶射コンクリート、2;鉄
板(陰極)、3;照合電極(SCE)、4;ブランク
(鉄筋コンクリートブロック)、5;ポテンショスタッ
ト(定電位装置)、11;酸化コバルト被覆チタン溶射
コンクリート、12.チタンリボン、13;チタン製ア
ンカーボルト、14;ケーブル、15;PVC管、2
0;鉄筋、40;コンクリート製取水路、41;コンク
リート壁面、51;ポテンショスタット、61;海水、
7;熱交換器、71;チタン製管板、72;水室(ゴム
ライニング)、73;カソード(陰極)、74;冷却
管、32;照合電極、52;ポテンショスタット(定電
位直流電源)、62;海水。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶山 貴弘 埼玉県上尾市中新井417−16株式会社ナカ ボーテック技術開発研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海水に接するコンクリート構造物の接水
    面にチタン溶射皮膜を施し、もしくは該コンクリート構
    造物の接水面を板状または薄板状のチタン材で表面を覆
    い、その上にコバルトまたはマンガン含有溶液、もしく
    はこれらの溶液にイリジウムを混合した溶液を塗布し、
    熱活性化処理により酸化コバルトまたは酸化マンガン皮
    膜に変成させ、次いで該溶射皮膜またはチタン材を直流
    電源の正極に接続して陽極とし、該陽極を酸素発生電位
    内に保持し塩素発生限界電位により卑な電位で通電する
    ことを特徴とするコンクリート構造物海面に海生生物の
    付着を抑制または防止する方法。
  2. 【請求項2】 海水に接する鉄鋼構造物の接水面に絶縁
    性を有する塗料を塗布しその上にチタン溶射を施すか、
    または該鉄鋼構造物に絶縁性の塗料を塗布し板状若しく
    は薄板状チタン材で表面を覆い、さらにコバルトまたは
    マンガン含有溶液、もしくはこれらの溶液にイリジウム
    を混合した溶液を塗布し、熱活性化処理により酸化コバ
    ルト若しくは酸化マンガン皮膜に変成させ、次いで、該
    溶射皮膜またはチタン材を直流電源の正極に接続して陽
    極とし、該陽極を酸素発生電位内に保持し塩素発生限界
    電位により卑な電位で通電することを特徴とする鉄鋼構
    造物海生生物の付着を抑制または防止する方法。
  3. 【請求項3】 チタン材で覆われたコンクリート構造物
    または鉄鋼構造物、もしくはチタン製構造物のチタン材
    外面に、コバルトまたはマンガン含有溶液、もしくはこ
    れらの溶液にイリジウムを混合した溶液を塗布し、該塗
    布皮膜を陽極的に励起または火炎などによって熱活性化
    処理して酸化コバルトまたは酸化マンガン皮膜に変成さ
    せ、次いで、該チタン材を直流電源の正極に接続して陽
    極とし、該陽極を酸素発生電位内に保持し塩素発生限界
    電位により卑な電位で通電して該チタン材外面の海面に
    海生生物の付着を抑制または防止する方法。
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