JPH11302898A - 鋼板の表面処理方法、表面処理鋼板、および表面処理鋼板を用いた熱可塑性樹脂被覆鋼板 - Google Patents

鋼板の表面処理方法、表面処理鋼板、および表面処理鋼板を用いた熱可塑性樹脂被覆鋼板

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JPH11302898A
JPH11302898A JP12810998A JP12810998A JPH11302898A JP H11302898 A JPH11302898 A JP H11302898A JP 12810998 A JP12810998 A JP 12810998A JP 12810998 A JP12810998 A JP 12810998A JP H11302898 A JPH11302898 A JP H11302898A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 厳しい成形加工を施した後、高温の水蒸気
中でレトルト処理しても加工部の皮膜が十分な密着強度
を有する鋼板の表面処理方法、その表面処理を施した鋼
板、さらにその表面処理鋼板に熱可塑性樹脂を被覆して
なる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供する。 【解決手段】 鋼板をアルカリ脱脂し水洗し、次いで
酸洗し水洗した後、電解クロム酸処理を施し水洗した後
鋼板を乾燥し、その後シラン処理を施す。そしてこれら
の表面処理を施した鋼板に熱可塑性樹脂を被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、鋼板の表面処理
方法、その表面処理を施した鋼板、およびその表面処鋼
板に熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板
に関する。より詳細には、缶蓋、絞り缶などへの加工の
みならず、絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を
施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにし
ごき加工を施した缶などの厳しい加工が施される用途に
適し、さらに成形加工された缶に内容物を充填し、水蒸
気中で加熱殺菌処理(以下レトルト処理という)を施し
ても、被覆した熱可塑性樹脂が剥離することのない、皮
膜の密着性、特に加工密着性、および加工後の耐レトル
ト性が要求される鋼板に適した表面処理方法、またその
表面処理を施した鋼板、さらにまたその表面処理鋼板に
熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板に関
する。
【0002】
【従来の技術】 缶蓋、絞り缶、絞りしごき缶、絞り加
工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ
加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの成形加
工用途、および内容物を充填した後レトルト処理する缶
用途には、塗膜、熱可塑性樹脂フィルムなどの皮膜が被
覆された鋼板が用いられている。これらの皮膜の密着
性、特に加工密着性は、下地となる鋼板の表面処理の状
態に大きく影響される。そのため、鋼板と樹脂皮膜の密
着性を向上させることを目的とし、有機樹脂皮膜との密
着性に優れた電解クロム酸処理皮膜を鋼板に形成させた
電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチールまたはT
FS、以下TFSという)が、有機樹脂皮膜を被覆する
下地の鋼板として広く用いられている(特開平4−22
4936号公報など)。
【0003】 上記のTFSは、平板、缶蓋、絞り缶な
ど比較的軽度の加工が施される用途のみならず、絞りし
ごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加
工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した
缶などの厳しい加工が施される用途においても被覆皮膜
の加工密着性に優れている。TFSはこれらの缶の缶上
部に施される缶蓋を巻しめるための張り出した縁を設け
るためのフランジ加工や、缶上端の缶径を縮小させるた
めのネックイン加工を施しても、被覆皮膜が剥離するこ
とのない極めて優れた加工密着性を有しているが、これ
らの加工を施した缶に内容物を充填し、高温の水蒸気中
でレトルト処理した場合に、前記のフランジ加工やネッ
クイン加工を施した部分の皮膜が剥離することがあり、
極めて優れた加工密着性を有するTFSといえども、厳
しい加工を施した後の耐レトルト性は必ずしも満足の行
くものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する技術課題は、上記のような厳しい成形加工を施した
後、高温の水蒸気中でレトルト処理しても加工部の皮膜
が十分な密着強度を有する鋼板の表面処理方法、その表
面処理を施した鋼板、さらにその表面処理鋼板に熱可塑
性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼板をアルカ
リ脱脂し水洗し、次いで酸洗し水洗した後、電解クロム
酸処理を施し水洗し、さらにシランカップリング剤を用
いてシラン処理を施す一連の工程からなる鋼板の表面処
理方法において、前記電解クロム酸処理を施し水洗した
後鋼板を乾燥し、その後シラン処理を施すことを特徴と
する、鋼板の表面処理方法であり、前記シラン処理にお
いて、生成するシラン処理皮膜中に2〜6mg/m2
シリコンが生成するように処理することを特徴とし、ま
た前記電解クロム酸処理において、下層となる金属クロ
ム皮膜を30〜300mg/m2、上層となるクロム水
和酸化物皮膜を、クロムとして0〜20mg/m2、よ
り好ましくは0〜10mg/m2 形成させることを特徴
とする。また本発明は、上記のいずれかの鋼板の表面処
理方法を用いて、鋼板の少なくとも片面に、金属クロム
皮膜、その上層にクロム水和酸化物皮膜、さらにその上
層にシラン処理皮膜を形成させてなる表面処理鋼板も発
明の対象とし、前記の表面処理鋼板において前記電解ク
ロム酸処理および前記シラン処理により生成する表面処
理皮膜の表層に、シリコンが原子分率で50〜100%
含有していることを特徴とする。さらに、上記の表面処
理鋼板の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂皮膜を被覆し
てなる熱可塑性樹脂被覆鋼板も発明の対象とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明においては、鋼板をアルカ
リ脱脂し水洗し、次いで酸洗し水洗した後、電解クロム
酸処理を施し水洗し、さらにシランカップリング剤を用
いてシラン処理を施す一連の工程からなる鋼板の表面処
理方法において、前記電解クロム酸処理を施して一定量
の金属クロム皮膜とクロム水和酸化物皮膜を形成させた
鋼板を水洗し乾燥し、その後シラン処理を施し、鋼板上
に一定量のシリコンを含有するシラン処理皮膜を形成さ
せることにより、本発明の目的に適う優れた皮膜の加工
密着性と加工後の耐レトルト性が得られることが判明し
た。本発明において、その一層の向上を目的とする皮膜
の加工密着性と加工後の耐レトルト性は、電解クロム酸
処理により形成される皮膜中の金属クロム皮膜量、およ
びクロム水和酸化物皮膜量、さらにシラン処理により形
成される皮膜量により異なるが、単に皮膜量の多少だけ
ではなく、電解クロム酸処理を施し水洗した後の乾燥状
態が、その後に形成させるシラン処理皮膜の性状、引い
ては皮膜の加工密着性と加工後の耐レトルト性に大きな
影響を与える。すなわち、下地となる鋼板の金属クロム
による被覆が不十分で鋼の露出面積が大きい場合は加工
後の耐レトルト性が不良となり、一方、金属クロム皮膜
上にやや多めのクロム水和酸化物皮膜を形成させるよう
に電解クロム酸処理を施し、水洗した後に乾燥せず直ち
にシラン処理を施す場合、優れた耐レトルト性を得るた
めにはシラン処理皮膜を多量に形成させる必要がある
が、電解クロム酸処理を施し、水洗した後に乾燥してシ
ラン処理を施すと、形成されたシラン処理皮膜が少量で
あっても優れた耐レトルト性が得られる。この原因につ
いてはよく分からないが、同一量のシラン処理皮膜を形
成させた場合、乾燥後にシラン処理を施して生成したシ
ラン処理皮膜の方が、乾燥せずにシラン処理を施して生
成したシラン処理皮膜に比較して皮膜表層のシリコン原
子分率が高いことから、乾燥状態でシラン処理を施すこ
とにより、シラン処理皮膜の下層であるクロム水和酸化
物皮膜が最表層に露出する程度が少なくなり、このこと
が耐レトルト性に影響を与えているものと考えられる。
【0007】以上の事実に基づき、以下に本発明を詳細
に説明する。まず本発明に用いられる鋼板は、本発明の
目的とする絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を
施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにし
ごき加工を施した缶などの厳しい成形加工が可能な鋼板
であれば特に限定することはないが、コストおよび成形
加工性の点から缶の成形に広汎に用いられている板厚
0.15〜0.30mmの低炭素冷延鋼板が好ましい。
【0008】つぎに、本発明の鋼板の表面処理方法につ
いて説明する。本発明の鋼板は、カセイソーダなどのア
ルカリ水溶液中で脱脂し水洗し、硫酸や塩酸などの酸に
浸漬して酸洗脱錆し水洗し、次いで電解クロム酸処理を
施し、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物から
なる2層皮膜を形成させ水洗した後、直ちにシラン処理
を実施せず、洗浄水が付着した電解クロム酸処理を施し
た鋼板を、1対の絞りロールを用いて絞るなどして洗浄
水を除去する、あるいはさらに熱風を吹き付けるなどし
て残った水分を蒸発させて除去した後、シランカップリ
ング剤を用いてシラン処理を施すことを特徴とする。
【0009】まず鋼板表面を公知の方法を用いてアルカ
リ脱脂し水洗し、酸洗し水洗した後、無水クロム酸を主
体とし、助剤として少量の硫酸、硫酸塩、弗酸、弗化
物、硅弗化物、硼弗化物のうち1種以上を含む公知の処
理浴中で、鋼板を陰極として電解処理し、金属クロム皮
膜を得る。 この金属クロム皮膜上には、クロム析出過
程の中間還元生成物であるクロム水和酸化物が不可避的
に形成される。本発明においては通常のTFSとは異な
り、クロム水和酸化物皮膜量を20mg/m2 以下とす
ることが、優れた加工密着性および耐レトルト性を維持
する上で不可欠である。クロム水和酸化物皮膜の生成量
が20mg/m2 を越える場合は、クロム水和酸化物皮
膜量に応じてシラン処理皮膜量を増加させないと、絞り
加工後ストレッチ加工を施し、次いでフランジ加工やネ
ックイン加工を施す、といった極めて厳しい加工を施
し、さらに高温の水蒸気中でレトルト処理した場合に十
分な皮膜の密着性が得られず、高価なシラン処理剤を多
く必要とし、経済的ではない。好ましくは10mg/m
2 以下であり、より好ましくは5mg/m2 以下であ
る。クロム水和酸化物皮膜の生成を抑制する析出方法と
しては、経験的に下記の技術が知られており、容易に実
施可能である。 (1)浴組成 1)無水クロム酸濃度 通常のTFSの作成においては50〜300g/lで行
われるが、80〜300g/lのように、無水クロム酸
濃度が高めの方がクロム水和酸化物の生成は少ない。 2)助剤の種類および濃度 通常のTFSの作成における助剤の代表的なものとして
硫酸がある。他に弗酸、弗化物、硅弗酸、硼弗酸、およ
びそれらのアルカリ金属塩の単独添加、または硫酸との
併用添加も行われるが、一般に弗素系助剤の方が硫酸系
の助剤よりもクロム水和酸化物の生成は少ない。助剤の
添加量は種類により多少異なるが、無水クロム酸濃度の
1〜5%程度である。 (2)浴温 通常のTFSの作成においては30〜60℃で行われる
が、50〜60℃のように、浴温が高めの方がクロム水
和酸化物の生成は少ない傾向にある。 (3)陰極電流密度 通常のTFSの作成においては10〜100A/dm2
で行われるが、30〜100A/dm2 のように、陰極
電流密度が高めの方がクロム水和酸化物の生成は少ない
傾向にある。
【0010】上記の条件を選択し、さらに必要に応じて
金属クロムを析出させる電解の終了後、処理浴中に浸漬
保持するとクロム水和酸化物が溶解するので、クロム水
和酸化物皮膜量を20mg/m2 以下とすることは容易
に達成可能である。このようにして、水和酸化物皮膜の
生成を極力抑制させながら、金属クロムを鋼板上に析出
させる。金属クロムの析出量としては30〜300mg
/m2 析出させる。金属クロム皮膜量が 30mg/m2
未満の場合は下地の鋼板の露出面積が大きくなり、絞り
加工後ストレッチ加工を施し、次いでフランジ加工やネ
ックイン加工を施す、といった極めて厳しい加工を施
し、さらに高温の水蒸気中でレトルト処理した場合に十
分な皮膜の密着性が得られない。一方、 300mg/
2を越えて金属クロム皮膜を析出させても加工密着性
および耐レトルト性の向上効果が飽和し、経済的でなく
なる。好ましくは50〜200mg/m2 であり、より
好ましくは70〜150mg/m2である。
【0011】上記の様にして金属クロム皮膜およびクロ
ム水和酸化物皮膜を形成させ水洗して余剰の処理液を洗
浄除去した後、表面に付着した洗浄水を除去し乾燥す
る。余剰洗浄水の除去は、例えば1対の絞りロールなど
の除去手段を用いて水分を除去した後、そのまま放置し
て蒸発乾燥させる。あるいはまた除去手段を用いて水分
を除去した後、冷風、温風、または熱風を吹き付けるな
どの乾燥手段を用いて直ちに蒸発乾燥させる。梅雨期な
どの高温多湿時には、乾燥後に湿気が再び鋼板上に付着
するので、除去手段を用いて水分を除去し、次いで乾燥
手段を用いて蒸発乾燥させた後、直ちに次のシラン処理
を施す方が、安定した皮膜の加工密着性や加工後の耐レ
トルト性を得る上で好ましい。
【0012】上記の様にして金属クロムおよびクロム水
和酸化物からなる2層皮膜を形成させた鋼板の洗浄水を
乾燥し除去した後、2層皮膜の上層にシラン処理層を形
成させる。本発明のシラン処理においては、市販のシラ
ンカップリング剤を溶媒に希釈し、鋼板に塗布し乾燥す
る。溶媒としては水単独でも使用可能であるが、エタノ
ールと水の混合溶媒を用いることが好ましい。例えば、
水とエタノールの混合比率が水:エタノール=1:4〜
4:1、好ましくは1:2〜2:1の混合溶媒を用いる
と好結果が得られる。水に対するエタノールの混合割合
が1:4より多い場合はシランカップリング剤が混合液
中に十分均一に分散するが、エタノールが高価であり、
コスト面で有利ではなくなる。一方混合割合が4:1よ
り少ない場合はシランカップリング剤が混合液中に十分
均一に分散せず、また鋼板表面に塗布した後の乾燥に長
時間を要するようになる。シランカップリング剤の濃度
は前記混合溶液に対して 0.5〜20%の範囲が好まし
く、1〜10%の範囲がより好ましい。0.5 %未満で
は乾燥後の塗布状態が不均一となりやすく、十分な密着
性が得られない。20%を越えると密着性の向上の効果
が飽和し、コスト面で有利ではなくなる。処理液の温度
は室温〜90℃の範囲が好ましい。処理方法としては鋼
板を処理液に浸漬した後、絞りロールを用いて余剰の液
を絞り、次いで乾燥させる。浸漬時間は1〜15秒で十
分であり、3〜10秒の範囲がより好ましい。処理量は
シラン処理に先立つ電解クロム酸処理で生成するクロム
水和酸化物量にもよるが、シリコンとして 2〜6mg
/m2の範囲が、加工後の耐レトルト性および経済性の
点から好ましく、3〜5mg/m2 の範囲がより好まし
い。上記のようにしてシラン処理を施した後、乾燥して
本発明の表面処理鋼板とする。
【0013】このようにして金属クロム皮膜、クロム水
和酸化物皮膜、およびシラン処理皮膜からなる表面処理
皮膜を形成させた本発明の表面処理鋼板においては、表
面処理皮膜の表層にシリコンが原子分率で50〜100
%含有していることが好ましい。ここでいう原子分率と
は、ESCAを用い、本発明の表面処理鋼板を測定した
際の、クロムおよびシリコンのピーク面積の和に対する
シリコンのピーク面積を百分率で表したものである。ま
た、表層とは表面処理皮膜の最表面からESCAの検出
深さで数十オングストロームまでの深さの層を表す。前
述したようにシリコンとして 2〜6mg/m2のシラン
処理皮膜を形成させ、かつ表面処理皮膜の表層にシリコ
ンが原子分率で50〜100%含有することにより、本
発明の目的とする優れた皮膜の加工密着性と加工後の耐
レトルト性が得られる。表面処理皮膜の表層のシリコン
が原子分率で50%未満である場合は、加工密着性と加
工後の耐レトルト性が不十分となり、好ましくない。シ
ラン処理皮膜がクロム水和酸化物皮膜を完全に被覆する
場合は表層のシリコンは原子分率で100%となるの
で、これを上限とする。
【0014】本発明において、上記の表面処理を施した
鋼板に熱可塑性樹脂を被覆する場合、被覆される熱可塑
性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
エステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビ
ニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂の1種、2種
以上の共重合樹脂、または2種以上をブレンドした複合
樹脂があげられる。これらの熱可塑性樹脂は、耐熱性、
耐食性、加工性、接着性など、それぞれ異なる特性を有
しているが、目的とする用途に応じて選択されるべきで
ある。例えば、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さら
にしごき加工が施されるような特に厳しい成形加工され
る缶の用途には、ポリエステル、特にポリエチレンテレ
フタレート、エチレンテレフタレート単位を主体とした
共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を主
体としたポリエステル、およびこれらをブレンドした複
合樹脂からなるフィルムを被覆することが好ましく、こ
れらの樹脂の二軸配向したフィルムを用いることがより
好ましい。さらに、耐衝撃加工性が要求される場合は、
上記のポリエステルにビスフェノールAポリカーボネー
トをブレンドした複合樹脂からなるフィルム、または上
記の複合樹脂を上層とし、上記のポリエステルを下層と
した二層のフィルム、さらにまたは上記のポリエステル
を上層、および下層とし、上記のビスフェノールAポリ
カーボネートを中間層とした三層のフィルムを用いるこ
とが好ましい。
【0015】上記の熱可塑性樹脂層の厚さは、要求され
る特性に基づいて選択されるべきであるが、一般に5〜
50μmの範囲が好ましく、10〜25μmの範囲がよ
り好ましい。厚さが5μm未満の場合、表面処理を施し
た鋼板への被覆作業が著しく困難になるとともに、被覆
後、または成形加工後にピンホールが発生しやすく、十
分な耐食性が得られない。一方50μmを越えると塗料
を塗装した皮膜と比較し、コスト面で有利でなくなる。
【0016】上記の熱可塑性樹脂には必要に応じて、安
定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、滑剤、腐食防止
剤などの添加剤を添加しても差し支えない。
【0017】上記の熱可塑性樹脂の鋼板への密着性、特
に上記の厳しい加工を施した後の密着性が十分ではない
場合、または熱可塑性樹脂層単独では十分な耐食性が確
保できない場合は、熱硬化性樹脂からなる接着剤、例え
ばエポキシ−フェノール系接着剤を鋼板に塗布した後に
熱可塑性樹脂を被覆するか、または被覆する熱可塑性樹
脂の鋼板との接着面に予め前記接着剤を塗布しておき、
鋼板に被覆してもよい。
【0018】上記の熱可塑性樹脂は、樹脂を加熱溶融し
て直接鋼板上に押し出して積層する押出法、または熱可
塑性樹脂の二軸配向フィルムを樹脂の融点以上の温度に
加熱した鋼板に当接し、一対のロールで両者を挟み付け
て積層するフィルムラミネート法のいずれの方法を用い
ても被覆することが可能である。
【0019】以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説
明する。 (実施例)板厚 0.18mmの冷延鋼板の両面に、実施
例として定法を用いてアルカリ脱脂処理し水洗し、つい
で酸洗処理し水洗した。その後表1〜3に示す条件で電
解クロム酸処理を施し水洗した後、1対の絞りロールを
用いて鋼板に付着した洗浄水を絞り除去した。次いで直
ちに熱風乾燥機を用いて80℃の熱風を鋼板に吹き付
け、鋼板表面を乾燥した。その後直ちにシラン処理を施
した。また比較例として、電解クロム酸処理を施し水洗
した後、1対の絞りロールを用いて鋼板に付着した洗浄
水を絞り除去し、鋼板表面に薄い水膜が残存した状態で
直ちにシラン処理を施した試料も作成した。次いで上記
の様にして得られた表面処理鋼板の表面処理皮膜量を、
蛍光X線法を用いて測定した。表面処理皮膜の表層のシ
リコン原子分率を、ESCAにより、励起X線源として
Mg−Kα線を使用し、加速電圧15eV、真空度1.
0×10-8〜10-9Torr の測定条件で測定した。
測定結果を表1〜3に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】またこれらの表面処理が施された鋼板を2
40℃に加熱し、その両面にポリエチレンテレフタレー
ト88モル%、ポリエチレンイソフタレート12モル%
からなる共重合ポリエステルを二軸延伸し熱固定して得
られたフィルム(後述する缶に成形した後、缶内面とな
る面:厚さ25μm、缶外面となる面:厚さ15μm)
を同時に当接し、一対のロールでフィルムと鋼板を挟み
付けて積層し、直ちに水中に浸漬し急冷し、次いで乾燥
した。
【0024】上記のようにして得られたポリエステルフ
ィルム被覆鋼板の両面にパラフィン系ワックスを約50
mg/m2 塗布し、以下に示す成形加工を施した。まず
直径160mmのブランクに打ち抜いた後、絞り加工に
より缶径が100mmの絞り缶に成形した。次いで再絞
り加工により缶径が80mmの再絞り缶に成形した。こ
の再絞り缶を、ストレッチ加工としごき加工を同時に行
う複合加工により、缶径が66mmの絞りしごき缶に成
形した。この複合加工は、下記に示す条件で実施した。 缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部の間隔:20mm 再絞りダイスの肩アール:板厚の1.5倍 再絞りダイスとポンチのクリアランス:板厚の1.0倍 しごき加工部のクリアランス:元板厚の50% 次いで定法により、缶上端をトリミングし、ネックイン
加工、フランジ加工を施し、内容物を充填した後蓋を卷
き締め得る状態のポリエステルフィルム被覆絞りしごき
缶とした。
【0025】上記のようにして得られたポリエステルフ
ィルム被覆絞りしごき缶のネックイン加工部およびフラ
ンジ加工部のフィルム剥離の有無を肉眼観察し、以下に
示す基準で判定し、加工密着性を評価した。 ○:剥離無し ×:剥離有り 評価結果を表4に示す。
【0026】さらに、ポリエステルフィルム被覆絞りし
ごき缶のネックイン加工部の内外面に、缶の周方向にカ
ッターを用いて鋼板に達する疵を入れ、フィルムカット
部を設けた後、130℃の高温水蒸気中で30分間レト
ルト処理した。レトルト後の缶を肉眼観察し、フィルム
カット部を基点として生じたフィルム剥離部の周方向に
おける長さを以下に示す基準で判定し、成形加工後の耐
レトルト性を評価した。 ◎:剥離長さ 0mm ○:剥離長さ 0mmを越え、2mm未満 △:剥離長さ 2mmを越え、5mm未満 ×:剥離長さ 5mm以上 評価結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】試料番号2、4、6、8、10、12、
(実施例)は本発明の表面処理を施した鋼板にポリエス
テフィルムを被覆したフィルム被覆鋼板を絞りしごき缶
に成形加工したものであり、いずれも優れた加工密着
性、および優れた加工後の耐レトルト性を示す。一方、
試料番号1(比較例)は金属クロムの付着量が好適範囲
より少なく、成形加工後の皮膜の密着性に乏しい。また
試料番号14および18(比較例)はシラン処理皮膜量
が多く、クロム水和酸化物皮膜量も多い場合であり、耐
レトルト性に乏しい。試料番号15および16(比較
例)はシラン処理皮膜の量が好適範囲より少ない例であ
り、耐レトルト性に乏しい。試料番号3、5、7、9、
11、13、17(比較例)は電解クロム酸処理を施し
水洗した後、鋼板表面に水膜が残存した状態でシラン処
理を施した場合であり、成形加工後の皮膜の密着性は優
れているが、十分な耐レトルト性を得るためには乾燥状
態でシラン処理を施した場合よりも多くのシラン処理皮
膜量が必要であり、同程度のシラン処理皮膜量では乾燥
状態でシラン処理を施した場合よりも耐レトルト性に劣
る。試料番号19(比較例)は通常のTFSであり、成
形加工後の皮膜の密着性は優れているが、耐レトルト性
に乏しい。
【0029】
【発明の効果】本発明の表面処理を施した鋼板は皮膜の
加工密着性に優れている。本発明の表面処理を施した鋼
板に熱可塑性樹脂を被覆した熱可塑性樹脂被覆鋼板は、
絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工が
施されるような特に厳しい成形加工される缶に成形した
後も皮膜の剥離が生じず、優れた加工密着性を示す。さ
らに、成形加工した缶に内容物を充填し高温の水蒸気中
で加熱殺菌処理を施した後も皮膜の剥離が生じず、優れ
た耐レトルト性を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板をアルカリ脱脂し水洗し、次いで酸
    洗し水洗した後、電解クロム酸処理を施し水洗し、さら
    にシランカップリング剤を用いてシラン処理を施す一連
    の工程からなる鋼板の表面処理方法において、前記電解
    クロム酸処理を施し水洗した後鋼板を乾燥し、その後シ
    ラン処理を施すことを特徴とする、鋼板の表面処理方
    法。
  2. 【請求項2】 前記シラン処理において、生成するシラ
    ン処理皮膜中に2〜6mg/m2 のシリコンが生成する
    ように処理することを特徴とする、請求項1に記載の鋼
    板の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 前記電解クロム酸処理において、下層と
    なる金属クロム皮膜を30〜300mg/m2、 上層と
    なるクロム水和酸化物皮膜を、クロムとして0〜20m
    g/m2 形成させる形成させることを特徴とする、請求
    項1または2に記載の鋼板の表面処理方法。
  4. 【請求項4】 前記上層となるクロム水和酸化物皮膜
    を、クロムとして0〜10mg/m2 形成させることを
    特徴とする、請求項3に記載の鋼板の表面処理方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の
    表面処理方法を用いて、鋼板の少なくとも片面に、金属
    クロム皮膜、その上層にクロム水和酸化物皮膜層、さら
    にその上層にシラン処理皮膜を形成させてなる表面処理
    鋼板。
  6. 【請求項6】 前記電解クロム酸処理および前記シラン
    処理により生成する表面処理皮膜の表層に、シリコンが
    原子分率で50〜100%含有していることを特徴とす
    る、請求項5に記載の表面処理鋼板。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の表面処理鋼板の少なく
    とも片面に、熱可塑性樹脂皮膜を被覆してなる熱可塑性
    樹脂被覆鋼板。
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