JPH11302029A - リボン状ガラスの搬送方法および板ガラス製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】板ガラスの製造工程において、リボン状ガラ
ス、特に高温のリボン状ガラスと搬送用ロールとの接触
によって発生している欠点やトラブルの防止。 【解決手段】リボン状ガラス１と親水性多孔質カーボン
ロール５との間に蒸気の膜が存在し、該蒸気が親水性多
孔質カーボンロール５の内部に存在する液体の蒸発によ
って生成するリボン状ガラスの搬送方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、新規なリボン状ガ
ラスの搬送方法および該搬送方法を用いた板ガラス製造
方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】現在最も普及している板ガラス製造方法
は、所定原料を溶解窯の中で溶解して溶融ガラスとした
後溶融ガラスを溶融金属浴に導入し、機械的な外力を用
いて縦横方向に延展・移動させてリボン状ガラスとし、
その後徐冷窯に搬送して冷却し平滑表面を有する板ガラ
スを得る、いわゆるフロート法である。フロート法の採
用はそれ以外の板ガラス製造方法であるロールアウト法
等に比べ、板ガラス表面の平滑度を格段に向上させ、そ
れまで必須であった磨きの工程を不要にした。そのた
め、平滑で透明な板ガラスの製造方法の主流となってい
る。一方、ロールアウト法は溶融ガラスを上下一対の成
形用ロールの間に通してリボン状ガラスとし、その後徐
冷窯に搬送して冷却する板ガラス製造方法である。ロー
ルアウト法は、模様の入ったガラスや金属線や網などを
挟み込んだ耐火用ガラスの製造にもっとも適した方法と
して現在でも用いられている。

【０００３】フロート法においては、溶融金属浴内で成
形されたリボン状ガラスは溶融金属浴から引き出された
後ロールによって徐冷窯まで搬送される。ロールアウト
法においても、ロールアウト成形されたリボン状ガラス
はロールによって徐冷窯まで搬送される。また、リボン
状ガラスは徐冷窯においてもロールで搬送され、徐冷点
程度から常温近くまで冷却される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記方法には
いくつかの欠点や問題があり、改善が望まれている。す
なわちフロート法においては、溶融金属浴上で平滑化平
坦化された面性状を維持するために、成形されて溶融金
属浴から引出されたリボン状ガラスの温度は軟化点以下
でなければならない。一方、成形されたリボン状ガラス
は溶融金属浴から引出される際、溶融金属浴を構成する
耐火物槽の壁を越えなければならない。そのため溶融金
属浴の出口付近においては、成形されたリボン状ガラス
の温度は耐火物槽の壁を越える際に生じる変形を修復す
るためにガラス転移点以上でなければならない。

【０００５】溶融金属浴の出口付近における前記リボン
状ガラスの温度を高目すなわち軟化点程度に設定する
と、リボン状ガラスの固化が進まず、リボン状ガラスを
溶融金属浴から引き出して搬送する際にロールと接触し
て「ローラーインプリント」と呼ばれる欠点が発生す
る。この欠点は、ロール表面の凸凹がリボン状ガラスに
転写されたものである。逆に、溶融金属浴の出口付近に
おける前記リボン状ガラスの温度を低目すなわちガラス
転移点程度に設定すると、リボン状ガラスの固化が進み
すぎ、リボン状ガラスに亀裂が生じたり破断が生じやす
くなり、さらに、ロールとの接触によって傷が発生し、
後工程でのトラブルにつながることが多かった。従って
溶融金属浴の出口付近におけるリボン状ガラスやロール
の温度管理が非常に難しかった。

【０００６】また、ロールアウト法においても、本質的
にフロート法の場合と同様な、ロールとの接触に基づく
欠点やトラブルが発生しやすかった。さらに、徐冷窯内
でのロールとの接触に基づく欠点やトラブルも発生しや
すかった。本発明は、板ガラスの製造工程において、リ
ボン状ガラス、特に高温のリボン状ガラスと搬送用ロー
ルとの接触によって発生している問題を解決するために
なされたものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、リボン状ガラ
スをその軟化点以下の温度で搬送する方法であって、リ
ボン状ガラスと該リボン状ガラスを搬送時に支持する支
持体との間に蒸気の膜が存在し、該蒸気が該支持体内部
に存在する液体（以下蒸気膜形成剤という。）の蒸発に
よって生成するリボン状ガラスの搬送方法、フロート法
によって成形されたリボン状ガラスを、前記リボン状ガ
ラスの搬送方法を用いて溶融金属浴から引出し徐冷窯ま
で搬送する板ガラス製造方法、および、ロールアウト法
によって成形されたリボン状ガラスを、前記リボン状ガ
ラスの搬送方法を用いて徐冷窯まで搬送する板ガラス製
造方法、を提供する。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明において、温度が軟化点以
下であるリボン状ガラスはその支持体との間に存在する
蒸気の膜と接触し、前記支持体との直接接触がない状態
で搬送される。したがって、リボン状ガラスと支持体と
の接触にともなう欠点やトラブルが発生するおそれは少
ない。なお、リボン状ガラス搬送時の変形が問題となる
のでリボン状ガラスの温度は軟化点以下でなければなら
ない。

【０００９】前記蒸気は、前記支持体内部に存在する液
体（以下蒸気膜形成剤という。）の蒸発によって生成す
る。蒸気膜形成剤の蒸発は、支持体のリボン状ガラスに
近接する面（以下接触面という。）で起きてもよく、接
触面近傍の支持体内部で起きてもよい。蒸発のために必
要な熱量は高温のリボン状ガラスから供給される。この
観点からはリボン状ガラスの温度は高い方がよい。好ま
しくは３００℃以上、より好ましくはガラス転移点以上
である。

【００１０】前記蒸気膜形成剤は前記支持体内部に、蒸
気発生量とバランスするように供給される。蒸気膜形成
剤は高温のリボン状ガラスによる加熱によって蒸発する
物質であれば特に限定されず、有機、無機の各種液体を
使用できる。しかし、その蒸気がガラス品質を損なうほ
どにはガラスと化学的に反応せず、リボン状ガラス搬送
温度において熱的に安定であり、また不燃性であるもの
が好ましい。また、支持体への供給の操作性を低下させ
ないためには、蒸気膜形成剤の沸点は３００℃未満であ
ることが好ましく、より好ましくは２００℃未満であ
る。以上のような点を考慮すると、化学的に安定であ
り、毒性がなく、取り扱いが容易であり、また安価であ
る水もしくは水を主成分とするものを用いることが特に
好ましい。なお、支持体に供給する際の蒸気膜形成剤の
温度は沸点以下であれば特に限定されない。

【００１１】本発明におけるリボン状ガラスの支持体
は、リボン状ガラスおよび作業雰囲気に悪影響を与えな
ければ、特に限定されない。その内部を蒸気膜形成剤が
透過できるものが好ましい。支持体の材質は、蒸気膜形
成剤と親和性が高く、蒸気膜形成剤により湿潤し支持体
内部に充分な量の蒸気膜形成剤を包含できる材質である
ことが好ましい。支持体が蒸気膜形成剤を包含できる量
の大小が、蒸気発生量の大小を左右するからである。す
なわち、蒸気膜形成剤を包含できる量が小さすぎると、
一時的に蒸気発生量が過大になった場合支持体内部の蒸
気膜形成剤が一時的に枯渇し蒸気発生が途絶えるおそれ
がある。

【００１２】支持体材質としては、蒸気膜形成剤が適度
に透過でき、かつ蒸気膜形成剤を適度に包含できる多孔
質体が好適に用いられる。ここでいう多孔質体とは、そ
の内部に蒸気膜形成剤を包含でき、かつ蒸気膜形成剤を
適度に透過できる構造を有するものであり、繊維状構造
の隙間が実質的に孔になっているものも含まれる。蒸気
膜形成剤が適度に透過できるためには、多孔質体の孔の
直径は、好ましくは５ｍｍ以下、より好ましくは１ｍｍ
以下、特に好ましくは１００μｍ以下である。

【００１３】具体的な支持体材料として、たとえば、セ
ルロース、紙、木、竹等の天然物由来の高分子材料、ポ
リオレフィン等の合成高分子系材料、炭素系材料、が使
用できる。金属フィルタ等に使用されているＮｉ−Ｃｒ
−Ａｌ合金およびＦｅ−Ｃｒ−Ａｌ合金、その他の金属
材料も使用できる。また、酸化アルミニウム、酸化ジル
コニウム等の金属酸化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、
窒化ケイ素等の金属窒化物、を主成分とするセラミック
ス材料も使用できる。水を蒸気膜形成剤として使用する
場合、親水性処理を施した材料を使用することが好まし
い。なかでも、親水性多孔質カーボンが、水透過性、水
を包含できる量、機械的強度、等の点で支持体材質とし
て優れている。

【００１４】支持体表面は、支持体の孔または繊維状の
凹凸以外は非常に平滑であることが望ましいが、一般的
に工業的に安価に成形仕上げされる面であれば問題なく
使用できる。支持体としては、接触面が固定されない、
等の利点を有する回転可能なロールを使用することが好
ましい。

【００１５】本発明においては、リボン状ガラスとその
支持体との間に存在する蒸気の膜は蒸気の連続的供給に
より更新されていく。その結果、リボン状ガラスが接触
する蒸気の膜に不純物等が残留するおそれは少なく、表
面平滑性の良好な板ガラスが得られる。蒸気膜形成剤
は、支持体に液体状態で供給されるため、連続的な供給
が容易であり供給量も少量でよい。

【００１６】次に、本発明の実施形態を図面を用いて説
明する。図１はフロート法における本発明実施の一例で
あり、溶解窯で溶解された溶融ガラスは図の左方から溶
融金属浴３に供給され、溶融金属２の上で平滑化平坦化
されるとともに厚み調整されリボン状ガラス１に成形さ
れる。リボン状ガラス１は溶融金属浴３から引出され、
本発明のリボン状ガラス支持体である親水性多孔質カー
ボンロール５に乗る形で搬送される。リボン状ガラス１
と親水性多孔質カーボンロール５の間には、図示してい
ないが蒸気の膜が存在する。また、発生した蒸気が還元
性雰囲気に保たれている溶融金属浴内上部空間４に入り
込まないように遮蔽板６によって空間が仕切られてい
る。リボン状ガラス１はさらに徐冷窯７に搬送される。
なお本図で示した例において、親水性多孔質カーボンロ
ール５以外のものはフロート法において公知な材料、構
造であればよく、何ら限定されるものではない。

【００１７】図２は図１に示した例において使用される
親水性多孔質カーボンロール５の構造の一例を示したも
のである。８はロールシャフト、９は給水口、１０は排
水口である。ここでは、円筒状の親水性多孔質カーボン
でロール本体が作られ、蒸気膜形成剤としての水が供
給、排出されるようになっている。図示したものは最も
一般的で単純な構造の模式図であるが、液体状態の蒸気
膜形成剤が連続的に供給排出できるものであれば、何ら
限定されるものではない。

【００１８】図３はロールアウト法における本発明実施
の一例であり、溶解窯で溶解された溶融ガラス１１は成
形用ロール１２によって板状に成形されてリボン状ガラ
ス１となる。場合によっては型模様がリボン状ガラス１
の表面に施される。リボン状ガラス１は、本発明のリボ
ン状ガラス支持体である親水性多孔質カーボンロール５
に乗る形で搬送される。リボン状ガラス１と親水性多孔
質カーボンロール５の間には、図示していないが蒸気の
膜が存在する。リボン状ガラス１はさらに徐冷窯７に搬
送される。

【００１９】図１および図３において、本発明を成形直
後から徐冷窯に入るまでのリボン状ガラスの搬送に用い
る場合について述べたが、本発明はこれに限定されるも
のではなく、たとえば徐冷窯入口付近でのリボン状ガラ
スの搬送にも用いることができる。以上述べたように本
発明は、現在工業的に汎用されている板ガラスの代表的
製法であるフロート法やロールアウト法において、成形
直後の高温での搬送工程における搬送用ロールとリボン
状ガラスとの接触に起因する問題を解決する技術を提供
するものであり、板ガラスの工業的な製造に広く利用で
きる。

【００２０】

【発明の効果】本発明は、板ガラスの製造工程におい
て、リボン状ガラス、特に高温のリボン状ガラスと搬送
用ロールとの接触によって発生している種々の問題を解
決することができ、製造工程の安定およびガラス表面の
欠点減少にもとづく歩留り向上を通して大幅なコストダ
ウンを図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態を示す側断面図

【図２】本発明の親水性多孔質カーボンロールを示す図

【図３】本発明の他の実施の形態を示す側断面図

【符号の説明】

１：リボン状ガラス ２：溶融金属 ３：溶融金属浴 ４：溶融金属浴内上部空間 ５：親水性多孔質カーボンロール ６：遮蔽板 ７：徐冷窯 ８：ロールシャフト ９：給水口 １０：排水口 １１：溶融ガラス １２：成形用ロール

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】リボン状ガラスをその軟化点以下の温度で
   搬送する方法であって、リボン状ガラスと該リボン状ガ
   ラスを搬送時に支持する支持体との間に蒸気の膜が存在
   し、該蒸気が該支持体内部に存在する液体（以下蒸気膜
   形成剤という。）の蒸発によって生成するリボン状ガラ
   スの搬送方法。
2. 【請求項２】前記支持体はその内部を前記蒸気膜形成剤
   が透過できる材料からなる請求項１記載のリボン状ガラ
   スの搬送方法。
3. 【請求項３】前記支持体はロールである請求項１または
   ２記載のリボン状ガラスの搬送方法。
4. 【請求項４】前記蒸気膜形成剤は水である請求項１、２
   または３記載のリボン状ガラスの搬送方法。
5. 【請求項５】フロート法によって成形されたリボン状ガ
   ラスを、請求項１、２、３または４記載のリボン状ガラ
   スの搬送方法を用いて溶融金属浴から引出し徐冷窯まで
   搬送する板ガラス製造方法。
6. 【請求項６】ロールアウト法によって成形されたリボン
   状ガラスを、請求項１、２、３または４記載のリボン状
   ガラスの搬送方法を用いて徐冷窯まで搬送する板ガラス
   製造方法。