JPH11294102A - 蒸気タービン動翼 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】翼部にねじり戻り力が作用しても翼列ピッチの
変動を抑制するインテグラルシュラウドを持った動翼を
提供すること。 【解決手段】動翼の翼背側シュラウド部１に翼断面の長
手方向軸線にほぼ直交する方向に突出する先端が広がっ
たテーパ状の突起８を設け、この突起に対応して動翼後
縁部に溝１０を設ける。隣接する動翼は、突起８が溝１
０に嵌合することにより一体化されており、突起８の量
側面は、その基部から先端に向かうにつれて間隔が広が
る方向のテーパ面となっている。溝１０の形状も、突起
８のテーパに合わせて翼の腹側よりも背側の方が間隔が
広くなっており、溝に突起が嵌合した状態では、隣接す
るシュラウドは動翼の後縁部が互いに開く方向に変位し
ようとしても、その動きを拘束する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、蒸気タービンに関
わり、特に低圧段の長翼（最終段、及びその１段，２段
手前に配置された翼）における遠心力に起因するねじり
戻りを拘束して連結するため、翼と一体となったシュラ
ウドを備えた蒸気タービン動翼に関わる。

【０００２】

【従来の技術】一般にタービン動翼は、作動流体の流れ
及びその乱れ成分によって、広範囲な周波数範囲で絶え
ず励振されている。これらの励振力に対する翼構造の振
動応答は、各振動モードにおける固有振動数や減衰の大
きさが関連する。そこで、共振応答の大きい低次振動モ
ードの共振は避ける一方、共振応答の小さい高次振動モ
ードでは共振しても信頼性のおける翼構造を設計するた
めに、隣り合う翼をシュラウドなどで連結する手段が数
多く採用されている。隣り合う翼を連結すれば、翼構造
の剛性の増加と振動減衰の付加効果が期待できるからで
ある。

【０００３】図５に、シュラウドと翼を一体成形して造
ったタービン動翼に一例を示す。図５において、１は翼
背側シュラウド部、２は翼腹側シュラウド部、３は翼
部、４はタービンロータのディスク外周部をそれぞれ示
す。このタービン動翼はタービンロータのディスク外周
部４に設けられた溝に植え込まれ、かつ動翼先端部に設
けられたシュラウド１及び２により、隣り合う翼と周方
向に接触する。

【０００４】この動翼はタービン回転数に翼に作用する
遠心力によって、図中符号９で示す方向にねじり戻り
（アンツイスト）が生じることは良く知られており、隣
り合う翼のシュラウド部は接触面５でねじり戻りを拘束
し、互いの翼の翼連結作用を高める。このような構造を
持つ翼を以降、インテグラルシュラウド翼と呼ぶ。

【０００５】例えば、特開平3−26801号公報には、動翼
先端部に備えた動翼カバーが外周方向から見てＳ字を形
成し、互いに隣り合う翼の動翼カバーが互いにＳ字中央
で接触することが記載されている。この構造は、典型的
なインテグラルシュラウド翼である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述のような従来の方
法において、次のような課題がある。

【０００７】図６に従来例のシュラウド部の詳細図を示
す。図中、５は接触面、６は翼背側シュラウド部と翼腹
側シュラウド部の接触によりできる間隙、７は隣り合う
翼の翼間距離（以下、翼列ピッチと称す）である。図６
において、タービン回転中では、翼の製作公差及び組立
公差の影響で、各々の翼連結部において間隙６が一定と
ならない状態となってしまう。

【０００８】このため、各々の翼連結部における隣り合
う翼の翼列ピッチ７も一定とならない状態となってしま
う。この翼列ピッチ７は、タービン動翼の性能に最も影
響を与えるため、翼設計時において最適な翼列ピッチを
見出しても、実際には目標の翼性能が得られない結果を
招いてしまう。

【０００９】本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を
無くし、翼にねじり戻りが作用しても翼列ピッチを一定
に保持できる性能的に優れたインテグラルシュラウドを
持つ蒸気タービン動翼を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的は、一つのター
ビン動翼の翼背側シュラウド部に翼断面の長手方向の面
に対して略直角に突出するテーパ状の突起を設け、一方
該動翼の先端の後縁部に翼断面の長手方向の面に対して
略直角方向に延び、かつ上記の翼背側シュラウド部に設
けた突出するテーパ状の突起と合致する形状の溝を設
け、隣接するシュラウド部を一体化することにより達成
される。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図１〜
図４を用いて詳細に説明する。

【００１２】図１は本発明を取り入れた蒸気タービン動
翼の動翼先端部斜視図、図２は本発明を取り入れた蒸気
タービン動翼の外周側から見た構成図である。また、図
３は本発明を取り入れた蒸気タービン動翼の組立方を示
した図、図４は本発明を取り入れた蒸気タービン動翼の
最後の１本を埋設する組立図である。

【００１３】図１において、動翼３の背側シュラウド部
１にはテーパ状の突起８がシュラウド部１と一体に設け
られ、動翼３の先端の後縁部近くのシュラウド部にはテ
ーパ状の突起８と合致する形状の溝１０が、それぞれ翼
断面の長手方向の中心線に対して略直角になるように設
けられている。そして、この突起８及び溝１０を介して
隣接するシュラウドが一体化される。次に、図１の蒸気
タービン動翼をその外周側から見た平面図である図２に
ついて説明する。

【００１４】隣接する動翼は、突起８が溝１０に嵌合す
ることにより一体化されており、突起８の両側面１１及
び１２は、その基部から先端に向かうにつれて間隔が広
がる方向のテーパ面となっている。溝１０の形状も、突
起８のテーパに合わせて翼の腹側よりも背側の方が間隔
が広くなっており、溝に突起が嵌合した状態では、隣接
するシュラウドは動翼の後縁部が互いに開く方向に変位
しようとしても、その動きを拘束する。

【００１５】突起８の厚さ方向の寸法ｔは、シュラウド
１の厚さＴの約半分の厚さに設定されている。

【００１６】動翼３には、図２の矢印９で示すようなね
じり戻りが作用するが、この方向の変位は主として、シ
ュラウド部１と２との接触部５の接触力を強める方向の
力として作用するので、接触部５によりその動きが拘束
される。

【００１７】また万が一、タービン運転中において動翼
３に矢印９とは反対方向のねじり力が作用しても、その
力は突起８と溝１０との係合により拘束される。

【００１８】したがって、動翼３に作用するねじり戻り
力がいずれの方向であっても、接触面５と突起８及び溝
１０で拘束するので、運転中の翼列ピッチ７を一定に保
つことができる。

【００１９】図３及び図４は、本発明を実施した動翼３
をタービンロータのディスク外周部４に組み込む際の作
業手順を示したものである。図３に示すように、動翼の
基部に形成したフォーク部３１は、ディスク外周部４に
設けられた環状溝４１にタービンロータの半径方向から
挿入される。このとき、シュラウド部１の突起８がすで
にディスク外周部に取り付けられている動翼のシュラウ
ド部の溝１０に嵌合する。ディスク外周部４に組み込ま
れた翼は、固定ピン２０を打ち込んで固定される。

【００２０】動翼をディスク外周部４へ順次組み込み、
最後に組み立てられる動翼のシュラウド部には、図４に
示す如く両側に突起８及び８ａが形成されており、この
突起がすでに組み付けられている翼の溝１０及び１０ａ
に嵌合することによって全周１リングのシュラウドとな
る。

【００２１】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、翼に
ねじり戻りが作用しても翼列ピッチを一定に保持できる
性能的に優れたインテグラルシュラウドを持つ蒸気ター
ビン動翼が構成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施した動翼の斜視図。

【図２】図１の動翼を外周方向から見た平面図。

【図３】動翼をタービンロータに組み込む状況を示す斜
視図。

【図４】タービンロータに最後の一枚の動翼を組み込む
状況を示す斜視図。

【図５】従来の動翼の斜視図。

【図６】図５の動翼を外周方向から見た平面図。

【符号の説明】

１…翼背側シュラウド部、２…翼腹側シュラウド部、３
…動翼、４…ディスク外周部、５…接触部、６…間隙、
７…翼列ピッチ、８…突起、９…ねじり戻り方向、１０
…溝、１１，１２…テーパ面、２０…固定ピン、３１…
翼根元フォーク部、４１…タービンロータのディスク外
周溝部。

フロントページの続き (72)発明者 名村 清 茨城県日立市大みか町七丁目２番１号 株 式会社日立製作所電力・電機開発本部内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】翼と一体に成形され、翼先端の背側と腹側
   に一対あるシュラウド部により、遠心力によるねじり戻
   りを拘束して隣り合う翼を互いに連結してなるねじれ翼
   である蒸気タービン動翼において、一つのタービン動翼
   の翼背側シュラウド部に翼断面の長手方向の面に対して
   略直角に突出するテーパ状の突起を設け、一方該動翼の
   先端の後縁部に翼断面の長手方向の面に対して略直角方
   向に延び、かつ上記の翼背側シュラウド部に設けた突出
   するテーパ状の突起と合致する形状の溝を設け、隣り合
   う翼シュラウド部を一体化することを特徴とする蒸気タ
   ービン動翼。