JPH11279734A

JPH11279734A - 表面性状の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板

Info

Publication number: JPH11279734A
Application number: JP9815998A
Authority: JP
Inventors: Fukio Yoshizaki; 布貴男吉崎; Hideo Miyake; 日出男三宅; Minoru Saito; 実斉藤
Original assignee: Nisshin Steel Co Ltd
Current assignee: Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority date: 1998-03-27
Filing date: 1998-03-27
Publication date: 1999-10-12

Abstract

(57)【要約】【課題】表面性状の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａ
ｌ基めっき鋼板を提供する。【解決手段】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.002〜0.08％，好ましくは0.003〜0.05％，
Ｓｒ：0〜0.1％（無添加を含む）を含有し、残部がＡｌ
および不可避的不純物からなる溶融めっき層、または、
Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8％，Ｂｅ：0〜0.003％（無
添加を含む），Ｓｒ：0.07〜1.7％，好ましくは0.1〜1.
0％を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物からな
る溶融めっき層、または、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.003〜0.08％，好ましくは0.003〜0.05％，
Ｓｒ：0.1〜1.7％，好ましくは0.1〜1.0％を含有し、残
部がＡｌおよび不可避的不純物からなる溶融めっき層を
表面に有する、Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼
板。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、表面性状の優れた
Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】Ａｌ中にＳｉおよびＭｇを適量含有させ
ためっき浴に浸漬して得られる「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶
融Ａｌ基めっき鋼板」は、非常に優れた耐食性を示すこ
とが知られている。このめっき鋼板は、高耐食性めっき
鋼板として既に実用化されている「Ａｌ−９質量％Ｓｉ
めっき鋼板」と比較しても、特に切断端面の無めっき部
分での耐赤錆発生性に優れるなど、一層良好な耐食性を
示す。しかし、「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき
鋼板」は、その優れた耐食性にもかかわらず、未だ工業
製品として商品化されていない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系
溶融Ａｌ基めっき鋼板」の工業的普及が遅れているの
は、表面性状の良好なものを、通常の溶融めっきライン
で製造する技術が確立されていないからである。図１に
「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板」の典型的
な表面性状を表す外観写真を示す。この写真は、Ａｌ−
９質量％Ｓｉ−５質量％Ｍｇめっき浴を用いて得られた
溶融めっき鋼板の例であるが、「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶
融Ａｌ基めっき鋼板」の表面には通常このような「し
わ」状の表面欠陥が多発し、商品価値を損なっている。

【０００４】本発明の目的は、めっき浴表面が大気雰囲
気であるような通常の溶融めっきラインを用いて製造で
きる、表面性状に優れた「Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ
基めっき鋼板」を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的は、微量のＢｅ
またはＳｒを添加したＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ溶融めっき浴に
浸漬して得られるめっき鋼板によって達成される。すな
わち、請求項１の発明は、質量％で、Ｓｉ：3〜13％，
Ｍｇ：2〜8％，Ｂｅ：0.002〜0.08％，Ｓｒ：0〜0.1％
（無添加を含む）を含有し、残部がＡｌおよび不可避的
不純物からなる溶融めっき層を表面に有する、表面性状
の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板であ
る。

【０００６】ここで、溶融めっき層の化学組成は、めっ
き層をＮａＯＨ等の溶液中で溶解し、その溶液をＩＣＰ
発光分光分析法で分析することによって特定することが
できる。溶融めっき鋼板の製造においては、通常、鋼板
表面がめっき金属と反応してわずかに溶けるため、めっ
き層中には鋼板に由来する元素（Ｆｅなど）が若干含ま
れる。本発明ではそのような元素も不可避的不純物とし
て扱う。

【０００７】請求項２の発明は、請求項１の発明におい
て、特に溶融めっき層のＢｅ含有量を0.003〜0.05％に
規定したものである。

【０００８】請求項３の発明は、質量％で、Ｓｉ：3〜1
3％，Ｍｇ：2〜8％，Ｂｅ：0〜0.003％（無添加を含
む），Ｓｒ：0.07〜1.7％を含有し、残部がＡｌおよび
不可避的不純物からなる溶融めっき層を表面に有する、
表面性状の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき
鋼板である。

【０００９】請求項４の発明は、請求項３の発明におい
て、特に溶融めっき層のＳｒ含有量を0.1〜1.0％に規定
したものである。

【００１０】請求項５の発明は、質量％で、Ｓｉ：3〜1
3％，Ｍｇ：2〜8％，Ｂｅ：0.003〜0.08％，Ｓｒ：0.1
〜1.7％を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物か
らなる溶融めっき層を表面に有する、表面性状の優れた
Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板である。

【００１１】請求項６の発明は、請求項５の発明におい
て、特に溶融めっき層のＢｅ含有量を0.003〜0.05％に
規定し、かつＳｒ含有量を0.1〜1.0％に規定したもので
ある。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明では、Ｓｉ：3〜13質量
％，Ｍｇ：2〜8質量％を含むＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａ
ｌ基めっき鋼板を対象とする。

【００１３】Ｓｉを含有させる目的は、主としてめっき
層に加工性を付与することである。めっき層のＳｉ含有
量が3質量％未満ではＦｅ−Ａｌ合金層の成長が著し
く、良好な加工性が得られない。一方、Ｓｉ含有量が13
質量％を超えると塊状の析出物が析出し、却って加工性
を阻害するようになる。

【００１４】Ｍｇを含有させる目的は、主として当該め
っき鋼板の耐食性、特に大気暴露環境における切断端面
などの素地鋼露出部の耐赤錆発生性を向上させることで
ある。めっき層のＭｇ含有量が2質量％未満では耐赤錆
発生性の向上効果が充分ではない。一方、Ｍｇ含有量が
8質量％を超えても耐赤錆発生性は飽和し、また、溶融
めっき浴のＭｇ濃度が高くなることにより浴表面のドロ
スが発生し易くなり、めっき鋼板の表面性状を改善する
ことが難しくなる。

【００１５】Ｍｇをこのように多量に含むＡｌ−Ｓｉ−
Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板を製造しようとすると、前
述のように、通常、その表面性状は非常に悪いものとな
る。その原因は、めっき浴へのＭｇの添加により、溶融
金属表面上の酸化皮膜の成長が著しく促進され、その酸
化皮膜が溶融状態にある「めっき金属」の均一な「た
れ」を阻害するためであると考えられる。

【００１６】本発明者らは、Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融め
っき浴に、微量のＢｅまたはＳｒを添加することによっ
て、めっき鋼板の表面性状が著しく改善されることを知
見した。

【００１７】Ｂｅによる表面性状改善効果は、めっき層
中のＢｅ含有量が0.002質量％程度から急激に現れる。
そして、0.003〜0.05質量％の範囲において、最も良好
な表面性状が得られる。さらにＢｅ含有量が増すと表面
性状は再び徐々に劣化していく。ただし、Ｂｅ含有量が
0.05質量％を超えても、0.08質量％以下の範囲では表面
性状の改善効果は発揮され、従来のＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系
溶融Ａｌ基めっき鋼板と比較するとかなり良好な表面肌
のものが得られる。

【００１８】Ｓｒによる表面性状改善効果は、めっき層
中のＳｒ含有量が0.07質量％程度から現れる。そして、
0.1〜1.0質量％の範囲において、最も良好な表面性状が
得られる。さらにＳｒ含有量が増すと表面性状は再び徐
々に劣化していく。ただし、Ｓｒ含有量が1.0質量％を
超えても、1.7質量％以下の範囲では表面性状の改善効
果は発揮され、従来のＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基め
っき鋼板と比較するとかなり良好な表面肌のものが得ら
れる。

【００１９】ＢｅとＳｒは、それぞれ単独で添加して
も、複合で添加しても、上記の表面性状改善効果が得ら
れる。適量のＢｅまたはＳｒの添加によってめっき鋼板
の表面性状が著しく改善されるのは、めっき浴から出た
未凝固のめっき層表層において、Ｍｇよりも、Ｂｅまた
はＳｒの方が優先酸化されることによって、Ｍｇの酸化
が抑制されるためであると推測される。

【００２０】本発明では、めっきを施す素地鋼板として
種々のものが使用できるが、例えば、弱脱酸鋼，Ｔｉキ
ルド鋼等に適用するのが効果的である。

【００２１】

【実施例】連続溶融めっきシミュレータ（連続溶融めっ
き実験ライン）を用いてＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基
めっき鋼板を製造し、Ｂｅ，Ｓｒによる表面性状改善効
果を調べた。また、実用化されているＡｌ−９質量％Ｓ
ｉめっき鋼板との対比において耐食性を調査した。各実
験に共通するめっき条件は次のとおりである。・素地鋼板：冷延弱脱酸鋼（厚み：0.8mm，幅：60mm）・還元炉最高到達板温：700℃，露点：−35℃ ・通板速度：50ｍ／分・めっき浴温：650℃ ・浸漬時間：3秒・めっき後の冷却：大気中で放冷

【００２２】溶融めっき層の化学組成は、めっき浴組成
をほぼ反映したものとなる。そこで、本実施例ではめっ
き浴組成を種々変化させることによって、表面性状・耐
食性との関係を評価した。

【００２３】表面性状については、得られた溶融めっき
鋼板の表面外観を目視観察で４段階（◎，○，△，×）
にランク付けすることによって評価した。その評価基準
として、図２の写真に示すサンプルを用い、以下のよう
にランク付けした。・◎：図２の上段のサンプルと同等以上に良好な表面性
状を呈するもの。・○：図２の上段のサンプルより劣るが、図２の中段の
サンプルと同等以上に良好な表面性状を呈するもの。・△：図２の中段のサンプルより劣るが、図２の下段の
サンプルより良好な表面性状を呈するもの。下段のサン
プルに見られるような「しわ」状の表面欠陥が鋼板長手
方向の10％未満の領域に存在するものも含む。・×：図２の下段のサンプルに見られるような「しわ」
状の表面欠陥が鋼板長手方向の10％以上の領域に存在す
るもの。

【００２４】外装材などで外観を重視する用途に適用す
る場合、上記評価が○以上の良好な表面性状を呈するこ
とが望ましい。しかし、上記評価が△のものでも、従来
材と比較すると表面性状は大きく向上している。表面性
状より耐赤錆発生性の方を特に重視する用途も考えられ
ることから、「しわ」状の欠陥がわずかに存在している
ものであっても、商品価値を有する場合があり得る。こ
のため、上記評価が△のものも、耐食性が良好である限
り、本発明に含めることとした。

【００２５】耐食性については、得られた溶融めっき鋼
板を、既存のＡｌ−９質量％Ｓｉめっき鋼板とともに、
切断端面で素地鋼を露出させた状態にして２ヶ月間大気
暴露し、切断端面の赤錆の目立ちにくさを「耐赤錆発生
性」として評価した。暴露場所は大阪府堺市の臨海工業
地帯である。耐赤錆発生性は、目視観察でＡｌ−９質量
％Ｓｉめっき鋼板と対比して、以下のように３段階
（○，△，×）にランク付けした。・○：赤錆がＡｌ−９質量％Ｓｉめっき鋼板より目立ち
にくいもの。・△：赤錆がＡｌ−９質量％Ｓｉめっき鋼板と同等に目
立ちにくいもの。・×：赤錆がＡｌ−９質量％Ｓｉめっき鋼板より目立ち
やすいもの。

【００２６】〔実施例１〕めっき浴組成を、Ｓｉ：9質
量％，Ｍｇ：0〜5質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，残部
がＡｌおよび不可避的不純物とした。表１に、得られた
めっき鋼板の表面性状および耐赤錆発生性の評価結果を
示す。

【００２７】

【表１】

【００２８】〔実施例２〕めっき浴組成を、Ｓｉ：13質
量％，Ｍｇ：0〜5質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，残部
がＡｌおよび不可避的不純物とした。表２に、同様の評
価結果を示す。

【００２９】

【表２】

【００３０】〔実施例３〕めっき浴組成を、Ｓｉ：3質
量％，Ｍｇ：0〜8質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，残部
がＡｌおよび不可避的不純物とした。表３に、同様の評
価結果を示す。

【００３１】

【表３】

【００３２】〔実施例４〕めっき浴組成を、Ｓｉ：9質
量％，Ｍｇ：0〜5質量％，Ｓｒ：0〜1.5質量％，残部が
Ａｌおよび不可避的不純物とした。表４に、同様の評価
結果を示す。

【００３３】

【表４】

【００３４】〔実施例５〕めっき浴組成を、Ｓｉ：13質
量％，Ｍｇ：0〜5質量％，Ｓｒ：0〜1.5質量％，残部が
Ａｌおよび不可避的不純物とした。表５に、同様の評価
結果を示す。

【００３５】

【表５】

【００３６】〔実施例６〕めっき浴組成を、Ｓｉ：3質
量％，Ｍｇ：0〜8質量％，Ｓｒ：0〜1.5質量％，残部が
Ａｌおよび不可避的不純物とした。表６に、同様の評価
結果を示す。

【００３７】

【表６】

【００３８】〔実施例７〕めっき浴組成を、Ｓｉ：9質
量％，Ｍｇ：2〜5質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，Ｓ
ｒ：0〜1.5質量％，残部がＡｌおよび不可避的不純物と
した。表７に、同様の評価結果を示す。

【００３９】

【表７】

【００４０】〔実施例８〕めっき浴組成を、Ｓｉ：13質
量％，Ｍｇ：2〜5質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，Ｓ
ｒ：0〜1.5質量％，残部がＡｌおよび不可避的不純物と
した。表８に、同様の評価結果を示す。

【００４１】

【表８】

【００４２】〔実施例９〕めっき浴組成を、Ｓｉ：3質
量％，Ｍｇ：2〜8質量％，Ｂｅ：0〜0.06質量％，Ｓ
ｒ：0〜1.5質量％，残部がＡｌおよび不可避的不純物と
した。表９に、同様の評価結果を示す。

【００４３】

【表９】

【００４４】

【発明の効果】以上のように、本発明は、優れた耐食性
を示すにもかかわらず通常の溶融めっきラインでは表面
性状の良いものを造ることが困難であるという、Ａｌ−
Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板に特有の問題を、適
量のＢｅまたはＳｒを添加した溶融めっきを施すことに
よって解消したものである。特に、Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系
溶融Ａｌ基めっき中に、Ｂｅ：0.003〜0.05質量％、ま
たはＳｒ：0.1〜1.0質量％を含有させたとき、めっき鋼
板の表面性状は顕著に向上し、それらの数値範囲の臨界
性も前記の実施例（表１〜９）に示されているとおり明
確である。また、Ｍｇ含有量を2質量％以上とすること
によって、耐食性、特に切断端面の素地鋼露出部分で問
題となる耐赤錆発生性が、既存の高耐食材料であるＡｌ
−９質量％Ｓｉめっき鋼板を上回るようになることも確
認された。したがって、本発明は、Ａｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系
溶融Ａｌ基めっき鋼板の工業的普及に寄与するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来のＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼
板の表面写真。

【図２】表面性状の評価基準に用いためっき鋼板の表面
写真。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.002〜0.08％，Ｓｒ：0〜0.1％（無添加を
含む）を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物から
なる溶融めっき層を表面に有する、表面性状の優れたＡ
ｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。
【請求項２】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.003〜0.05％，Ｓｒ：0〜0.1％（無添加を
含む）を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物から
なる溶融めっき層を表面に有する、表面性状の優れたＡ
ｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。
【請求項３】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0〜0.003％（無添加を含む），Ｓｒ：0.07〜
1.7％を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物から
なる溶融めっき層を表面に有する、表面性状の優れたＡ
ｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。
【請求項４】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0〜0.003％（無添加を含む），Ｓｒ：0.1〜
1.0％を含有し、残部がＡｌおよび不可避的不純物から
なる溶融めっき層を表面に有する、表面性状の優れたＡ
ｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。
【請求項５】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.003〜0.08％，Ｓｒ：0.1〜1.7％を含有
し、残部がＡｌおよび不可避的不純物からなる溶融めっ
き層を表面に有する、表面性状の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍ
ｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。
【請求項６】質量％で、Ｓｉ：3〜13％，Ｍｇ：2〜8
％，Ｂｅ：0.003〜0.05％，Ｓｒ：0.1〜1.0％を含有
し、残部がＡｌおよび不可避的不純物からなる溶融めっ
き層を表面に有する、表面性状の優れたＡｌ−Ｓｉ−Ｍ
ｇ系溶融Ａｌ基めっき鋼板。