JPH11264063A - チタン装飾部材の硬化処理方法 - Google Patents

チタン装飾部材の硬化処理方法

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JPH11264063A
JPH11264063A JP10067999A JP6799998A JPH11264063A JP H11264063 A JPH11264063 A JP H11264063A JP 10067999 A JP10067999 A JP 10067999A JP 6799998 A JP6799998 A JP 6799998A JP H11264063 A JPH11264063 A JP H11264063A
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Masahiro Sato
雅浩 佐藤
Yoshitsugu Shibuya
義継 渋谷
Jiyunji Satou
佐藤  惇司
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明のチタン装飾部材の硬化処理方法は、
処理後の表面での着色や荒れを発生することなく、十分
な硬度を付与し、鏡面で傷の付きにくいチタン装飾部材
を可能とする。 【解決手段】 チタン装飾部材とその周辺に酸化物粉末
を配置し、減圧化の水素ガス雰囲気中で700〜800
℃の温度でチタン装飾部材と酸化物粉末を加熱すること
からなるチタン装飾部材の硬化処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面から任意の深
さが硬化処理されたチタン部材に関するものであり、特
に時計ケース、バンド、ベゼルといった時計外装用の装
飾部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、チタン及びチタン合金は軽い、錆
びない、メタルアレルギーを起こさないといった特徴を
利用して、様々な分野に用いられている。中でも上記の
特徴は時計材料としても非常に有効であることから、従
来から応用展開が図られてきた。 その一方で材質固有
の問題から、チタン及びチタン合金は表面が傷つきやす
いという欠点を有している。特に美観を伴うような面で
ある鏡面等を考えた場合、表面に付いた傷が目立ちやす
いという問題点から、従来はサンドブラスト処理等を行
い、傷を目立ちにくくしていた。そのため、一般の人々
にはチタン、チタン合金を用いた装飾部材は、表面が暗
い、という印象を与えていた。
【0003】傷が付きやすい、という現象は、部材が持
つ表面硬度の低さに由来するものであり、チタンに対す
る各種の硬化処理がこれまで行われてきた。チタンの表
面硬化処理には、大きく分けてチタン部材表面に硬質膜
を被覆する方法とチタン部材自体を硬化する方法があ
る。チタン部材表面に硬質膜を被覆する方法としては電
気メッキに代表されるウェットプロセスと真空蒸着、イ
オンプレーティング、スパッタリング、プラズマCVD
などに代表されるドライプロセスが公知であるが、いず
れも部材との密着性に難があり膜剥離問題に対しては完
全に解決するまでには至っていない。一方、金属部材自
体を硬化する方法としては、ガス酸化、イオン注入、イ
オン窒化、ガス窒化、ガス浸炭、ガス軟窒化などが知ら
れているが、処理時間が長く生産性に問題があり、また
処理温度が高いために、結晶粒が粗大化し、表面荒れを
生じ、外観品質が劣るという問題があり、使用範囲が限
定されていた。
【0004】一方、特公昭62−21865に、酸化マ
グネシウム或いは酸化アルミニウム粉末中で550〜8
50℃の処理温度で加熱処理するチタン材の硬化処理方
法が記載されている。部材内部の拡散元素が表面から傾
斜的な濃度を有するという点から膜剥離問題を生じるこ
とがない。よって、チタン部材の表面硬化処理方法とし
て有用であると考えられるが、チタン部材と粉末が接触
するために表面荒れ、変色といった美観上の問題或いは
チタン装飾部材と金属酸化物粉末の接触していない部分
の硬度が不十分となり硬度のムラを発生し、装飾部材の
硬化処理方法としての適用は困難であった。
【0005】外観品質の劣化、すなわち表面荒れと変色
の問題は、チタン表面で酸化アルミニウム或いは酸化マ
グネシウム等の金属酸化物粉末から供給される酸素が過
剰となり、着色に起因する化合物を形成することによる
ものであることが分かった。しかし上述の方法では、チ
タン装飾部材と金属酸化物粉末は接触していなければ、
チタン表面で酸素が拡散することはなく、表面硬度の上
昇は認められない。この結果、時計、眼鏡、宝飾などに
代表される装飾部材の美観を伴うような表面に対し、表
面荒れを生じさせず、更には化合物による表面の変色と
いった問題を発生することなく硬化処理をするようなこ
とはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これまでのチタン部材
自体を硬化する手法では、上述したような硬化処理後の
表面荒れ、変色の問題を解決することができなかった。
【0007】本発明の目的は、上記課題を解決して、硬
化処理後も外観品質の劣化がない、すなわち表面荒れが
小さくなり、無着色化更には硬度の均一化を可能とする
チタン装飾部材の硬化処理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のチタン装飾部材の硬化処理方法は、下記記
載の方法を採用する。
【0009】本発明は、チタン装飾部材の硬化処理方法
であって、真空排気装置及び加熱手段を備えた処理槽内
にチタン装飾部材と金属酸化物を所定の距離に配置し、
チタン装飾部材と金属酸化物を含む処理槽内を1×10
−5torr以下の高真空とする真空排気工程と減圧化
のアルゴン、ヘリウムといった不活性雰囲気中でチタン
装飾部材と金属酸化物を昇温加熱する昇温加熱工程と減
圧化の水素雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸化物を加
熱する第一硬化処理工程と減圧化のアルゴン、ヘリウム
といった不活性雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸化物
を加熱する第二硬化処理工程とチタン装飾部材と金属酸
化物を冷却する冷却工程からなるチタン装飾部材の硬化
処理方法及び上記記載の金属酸化物が酸化アルミニウ
ム、酸化マグネシウム或いは酸化モリブデンであること
を特徴としたチタン装飾部材の硬化処理方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下図面を用いて、本発明のチタ
ン装飾部材の硬化処理方法について説明する。図1は本
発明の実施形態におけるチタン装飾部材に対して硬化層
を形成するための処理工程を示す模式図であり、図2は
本発明のチタン硬化部材の表面を硬化する硬化処理装置
を示す概念図である。
【0011】図1は本発明の図であり、チタン装飾部材
2は試料台4上に配置し、酸化アルミニウム、酸化マグ
ネシウム或いは酸化モリブデンといった酸化物粉末6を
チタン装飾部材と接触することなく、5〜10mm程度
の距離に配置する。導入口10及び試料取り出し口20
を備えた処理槽8中に、加熱電源16より供給される加
熱手段14によって、試料台4上に配置されたチタン装
飾部材2及び酸化物粉末6の表面を加熱できるようにし
た装置を用いた。また真空排気装置18及びガス排気口
12を設けて、処理槽8内の真空排気を可能として、減
圧下の雰囲気で硬化処理できる様な構成とした。
【0012】図1は処理工程を概念的に示した硬化処理
方法であるが、チタン部材を700℃まで昇温するとき
に、チタンに不活性な雰囲気とする昇温工程24は、研
磨加工時にチタン部材表面に発生する加工歪み層の緩和
を目的として行なうものである。加工ひずみ層は研磨加
工時の応力が格子歪みとなって残っている状態で化学的
に不安定な状態である。昇温工程24が酸化性或いは窒
化性雰囲気になると研磨加工後のチタン装飾部材は、加
工歪み層のチタンと酸素或いは窒素との反応性が大きい
ために、表面に着色物質である酸化物或いは窒化物が形
成される。これらの着色物質が形成されると外観品質が
低下するため装飾部材として好ましい状態ではない。従
って本発明における第一硬化処理工程に入る前の昇温工
程は、不活性雰囲気とすることが必要であり、この昇温
工程により、化合物を形成せず、表面荒れを発生するこ
となく、第一硬化処理工程に移行することが可能とな
る。
【0013】第一硬化処理工程26は昇温工程24の
後、水素ガスと不活性ガスの混合ガスを処理装置内に導
入して、処理圧力を0.001〜10Torrの範囲内
に調整して処理することを特徴としている。不活性ガス
に対して微量な水素ガスを導入することにより、チタン
装飾部材2の周りの酸化物6が水素ガスにより還元さ
れ、酸素成分の活性なガスを発生する。発生した活性な
酸素成分ガスはチタン装飾部材2の周辺に均一に拡散
し、チタン装飾部材と反応することにより、表面に均一
な硬化層を形成する。
【0014】第二硬化処理工程28は、処理装置内で発
生した活性な酸素成分のガスを装置内から完全に排除す
るための工程を示している。すなわち、この後の冷却工
程30時に第一硬化処理工程時の酸素成分のガスが残存
していると雰囲気温度が低いためチタン装飾部材内部へ
の拡散が遅く、チタン装飾部材表面に酸化物を形成して
しまう。これらの化合物は上記と同様、表面荒れ及び外
観品質の低下の問題を引き起こし、チタン装飾部材とし
て好ましい状態ではない。また、この工程はチタン内部
に拡散した水素成分を除去するための脱水素の効果も含
んでいる。更には前工程において、結晶粒界で酸化物を
形成したときにも、この工程は固溶化させること、すな
わち化合物を形成しない状態を促進させる効果があり、
表面荒れを発生させないためには必要な工程である。
【0015】冷却工程30は、速やかにチタン部材を常
温まで冷却させ処理装置内部から取り出すため工程であ
る。冷却工程でも、その雰囲気はチタン部材に対して不
活性な雰囲気にすることが必須である。
【0016】
【実施例】(実施例1)本発明の第一の実施例について
図1を用いて説明を行う。チタン部材として、形状が2
5mm×25mmのJIS二種の純チタンを用いた。処
理面は研磨が施してあり、表面粗さは、最大高さRma
x値で50nm以下であった。未処理の結晶粒の大きさ
は10〜30μmの多結晶体の組織である。試料の配置
は、図2に示したように、チタン装飾部材2を試料台4
上に配置し、チタン装飾部材と接触することなく、チタ
ン装飾部材2から5mmの距離に酸化アルミニウム6粉
末を配置した。
【0017】まず、真空排気工程22では、処理槽8内
を真空排気装置18により排気し、1×10−5tor
r以下の真空雰囲気とした。ガス導入口10よりアルゴ
ン、ヘリウムといった不活性ガスを一定量導入し、導入
ガス量と排気量を調節して処理槽8内を0.25tor
rの圧力の不活性ガス雰囲気とした。そして昇温加熱工
程24で示した様に、チタン部材2を加熱手段14によ
り加熱し、硬化処理温度を650℃、700℃、800
℃、850℃と変えて昇温した。第一硬化処理工程26
においては、ガス導入口10から純アルゴンと水素ガス
の混合ガスを導入し、導入ガス量と排気量を調節して約
0.25torrの純アルゴンと水素の雰囲気とした。
ここでは、すべての温度について純アルゴンに対する水
素の割合は約10000ppmとした。そして、硬化処
理温度を一定に保ったまま、約3.0時間保持した。そ
の後、処理槽内を再び減圧下の不活性ガス雰囲気とし
て、約0.5時間保持し第二硬化処理工程を行った。そ
して、不活性雰囲気としたまま冷却し、約100℃以下
の温度に到達したら、処理を完了して試料を取り出し
た。
【0018】(実施例2)本発明の第二の実施例を図1
を用いて説明する。チタン部材として、JIS二種相当
の純チタン材の腕時計ケースを用いた。処理面は研磨が
施してあり、表面粗さは、最大高さRmax値で50n
m以下であった。未処理の結晶粒の大きさは10〜30
μmの多結晶体の組織である。試料の配置は、図2に示
したように、腕時計ケースのチタン装飾部材2を試料台
4上に配置し、チタン装飾部材2と接触しないように、
チタン装飾部材2から10mmの距離に酸化モリブデン
6粉末を配置した。
【0019】まず、真空排気工程22では、処理槽8内
を真空排気装置18により排気し、1×10−5tor
r以下の真空雰囲気とした。ガス導入口10よりアルゴ
ン、ヘリウムといった不活性ガスを一定量導入し、導入
ガス量と排気量を調節して真空槽8内を0.25tor
rの圧力の不活性ガス雰囲気とした。そして昇温加熱工
程24で示した様に、チタン装飾部材2を加熱手段14
により加熱し、硬化処理温度700℃まで昇温した。第
一硬化処理工程26においては、ガス導入口10から純
アルゴンと水素ガスの混合ガスを導入し、導入ガス量と
排気量を調節して約0.25torrの純アルゴンと水
素の雰囲気とした。純アルゴンに対する水素の割合は約
1000ppm、5000ppm、10000ppm、
20000ppm、30000ppmと変化させた。そ
して、硬化処理温度を一定に保ったまま、約3.0時間
保持した。その後、処理槽内を再び減圧下の不活性ガス
雰囲気として、約0.5時間保持し第二硬化処理工程を
行った。そして、不活性雰囲気としたまま冷却し、約1
00℃以下の温度に到達したら、処理を完了して試料を
取り出した。
【0020】上記硬化処理の実施後のチタン装飾部材の
評価方法として、耐傷性試験(砂落とし試験)、硬度、
結晶粒の大きさ、表面粗さを採用した。耐傷性試験は、
砂落とし試験後の光学顕微鏡による400倍の表面観察
結果から表面傷の発生度合いが50%以下のものに関し
て合格とした。硬度はビッカース硬さ試験機により、硬
化処理表面から10μm以内の深さのビッカース硬度が
Hv500以上あるものに関して合格とした。表面粗さ
に関しては、500μmの範囲の表面形状解析を行い、
鏡面に関しては最大高さRmaxで1000nm以下で
あるものに関して合格とした。測色試験に関しては、測
色計により分光反射率を測定し、400nm〜500n
mの光の波長領域で、光の吸収による反射率の低下が確
認されず、更にはL*a*b*表色系でa*及びb*が
共に負の値を示したものに関して無着色で合格とした。
総合評価結果は、耐傷性試験、硬度、表面粗さ、測色試
験が合格であるものに関して合格とした。
【0021】
【表1】
【0022】表1は、本発明の第一の実施例に相当して
いて、JIS二種純チタンを用いて、硬化処理する前、
処理温度650℃〜850℃まで変化させて本発明の純
アルゴンと水素を用いた硬化処理を行った後の耐傷性試
験、表面硬度、表面粗さ、測色試験について示した表で
ある。
【0023】表1のfより、従来例では、表面に着色化
合物を形成しており、表面荒れも、最大高さRmaxで
未処理のJIS二種純チタンaが50nm以下であるの
に対して、1200nmと大きくなっている。また、金
属酸化物粉末と接触した部分の硬度は大きかったが、そ
の周辺の金属酸化物粉末と接触していない部分は硬度が
低く、硬度ムラが確認された。一方、表1のc、dよ
り、本発明の実施による表面粗さは、最大高さで100
0nm以下であり、表面は無着色であった。また、硬度
も均一であり、硬度ムラは認められなかった。しかし、
bの650℃処理では十分な硬化層が得られず、eの8
50℃処理では表面が着色し、大きな表面荒れが確認さ
れた。また、表1の比較例より第一硬化処理工程の雰囲
気をArとしたときには、表面は処理前と何ら変化せ
ず、硬度の上昇が認められなかった。
【0024】従来例では、チタン装飾部材の表面に酸化
物粉末が接触しているために、酸素の供給が過剰とな
り、表面に着色及び表面荒れの増大を発生する化合物を
形成し、また硬度ムラも発生する。よって、上記の結果
から、表面荒れ及び着色を発生させず、必要硬度を付与
するためには、チタン装飾部材と接触することなく5〜
10mm酸化物粉末を配置させ、雰囲気を減圧下の水素
雰囲気とし、処理温度を700℃〜800℃に設定する
ことが必要である。
【0025】
【表2】
【0026】表2は、本発明の第二の実施例に相当して
いて、JIS二種純チタンを用いて、硬化処理する前、
及び硬化処理温度を700℃、時間3hr、圧力0.2
5torr一定とし、純アルゴンに対する水素の割合を
1000ppm、5000ppm、10000ppm、
20000ppm、30000ppmと変化させて硬化
処理を行った後の耐傷性試験、表面硬度、表面粗さ、測
色試験について示した表である。
【0027】表2のj、k、lから純アルゴンに対する
水素の割合を5000ppm、10000ppm、20
000ppmとした場合、表面荒れも小さく、着色も発
生しなかった。しかし、iの水素1000ppmでは十
分な硬度が得られず、mの30000ppmでは着色が
認められ、表面荒れも大きくなった。
【0028】上記の結果から、表面荒れ及び着色を発生
させず、必要硬度を付与するためには、純アルゴンに対
する水素の割合を5000ppm〜20000ppmと
することが重要である。これは、水素の濃度が低いと酸
化物粉末の還元が十分に行われず、活性な酸素成分ガス
の発生度合いが低い。よって、十分な硬化層が得られな
いものと考えられる。また、水素の濃度が高すぎると酸
化物粉末の還元が十分行われ、活性な酸素成分ガスの発
生が過剰となる。よって、チタン装飾部材の表面で過剰
の酸素成分ガスが反応して着色源となる化合物を形成し
てしまう。
【0029】図3は処理する前及び本発明の第一の実施
例によるチタン硬化部材及び従来例によるチタン硬化部
材を入射角0.5°で薄膜X線回折による解析を行った
結果である。この結果から分かるように、従来例による
チタン硬化部材は処理前のチタン部材とは明らかに異な
るピークが認められ、これは着色化合物である酸化チタ
ンである。一方、本発明のチタン硬化部材のピークはい
ずれもチタン部材と比較してほぼ同様の位置にピークが
認められていて、やや低角度側にシフトしている。これ
は、チタン部材に酸素が固溶した状態にあり、格子が歪
んでいることによって生じているためである。そのほか
のピークが認められないことから、化合物は形成されて
いないことが明らかである。
【0030】よって表面荒れを大きくしないこと及び着
色化を起こさないことにおいて重要なことは、表面に着
色化合物を形成しないことであり、そのためには本発明
の硬化処理方法が必要である。すなわち、チタン装飾部
材の周辺に酸化物粉末を配置させ、処理温度を700℃
〜800℃に設定すること及び純アルゴンに対する水素
の割合を5000ppm〜20000ppmとすること
が重要である。また、研磨等の加工により発生した加工
歪み層を結晶化させる不活性ガス雰囲気中での昇温加熱
工程と第二硬化処理工程と冷却工程が有効に作用する。
【0031】第一、二の実施例のチタン装飾部材として
JIS二種の純チタン部材を例にとって説明を行った
が、JIS一種純チタン部材及びJIS三種相当の純チ
タン部材にも適用可能である。また、JIS規格のチタ
ン合金60種、60E種にも適用可能である。第一、二
の実施例の処理面については研磨した鏡面について説明
したが、特に限定せず、ヘアーライン面、ホーニング処
理を行ったホーニング面、ショットピーニング面等の表
面のいずれも適用可能である。
【0032】本発明の実施例において、第一の実施例で
は板状のチタン硬化部材、第二の実施例では時計ケース
を用いて説明を行ったが、これらの部材に限らず、チタ
ン製の時計バンド、時計ベゼル、ピアス、イヤリング、
指輪、めがねのフレーム等の装飾用品に適用可能なもの
すべてを意味しており、ゴルフクラブのヘッド及びシャ
フト、自転車のフレーム等、チタン部材を応用した製品
であれば全てに適用可能である。
【0033】本発明の第一、二の実施例においては、昇
温加熱工程、第二硬化処理工程、冷却工程時において、
アルゴン、ヘリウムといった不活性ガス雰囲気中として
説明を行ったが、この工程間に上述したような酸化性ガ
スが導入されると表面に化合物を形成し、表面が荒れた
り、変色したりするため、これらのガスが影響を及ぼさ
ない雰囲気であれば良く、高真空雰囲気であっても良
い。
【0034】本発明の第一、二の実施例において、第一
硬化処理工程の時間はいずれも3.0時間で説明を行っ
たが、特に限定する必要性はない。表面に化合物を形成
しないことと必要硬度及び耐傷性を満たすように時間、
温度条件を設定することである。長時間の処理及び処理
温度の上昇は化合物形成に影響してくるため、多くとも
10時間以内の処理であれば任意の時間でよい。処理温
度も表面荒れの問題からなるべく低温度で処理すること
が好ましいが、700℃〜800℃の処理温度であれば
任意の温度でよい。
【0035】本発明の第一、二の実施例において、すべ
ての工程の処理圧力を0.25torrとして、説明を
行ったが、特に限定する必要性がなく、0.001〜1
0torrの任意の圧力において適用可能である。重要
なことは、水素ガス濃度と同様に、水素の分圧が低すぎ
ると酸化物粉末の還元が十分でなく、圧力を高くしすぎ
ると酸化物粉末の還元が十分に進行して、過剰な酸素成
分ガスが発生するためであり、その範囲内に設定するこ
とである。
【0036】また本発明の第一、二の実施例において、
第二硬化処理工程の時間として0.5時間として説明を
行ったが、特に限定する必要性はなく、冷却工程に入る
前の雰囲気が不活性となっていれば、任意の時間で良
い。
【0037】また本発明の第一、二の実施例において、
チタン装飾部材と酸化物粉末の配置関係は、接触するこ
となく5、10mmの距離としたが、特に限定すること
はなく、約100mm程度離れていても良い。更には酸
化物粉末とチタン装飾部材を接触させない専用の治具を
試料台上に配置するとなお良い。
【0038】
【発明の効果】本発明は、チタン装飾部材の硬化処理方
法であって、真空排気装置及び加熱手段を備えた処理槽
内にチタン装飾部材と金属酸化物を所定の距離に配置
し、チタン装飾部材と金属酸化物を含む処理槽内を1×
10−5torr以下の高真空とする真空排気工程と減
圧化のアルゴン、ヘリウムといった不活性雰囲気中でチ
タン装飾部材と金属酸化物を昇温加熱する昇温加熱工程
と減圧化の水素雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸化物
を加熱する第一硬化処理工程と減圧化のアルゴン、ヘリ
ウムといった不活性雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸
化物を加熱する第二硬化処理工程とチタン装飾部材と金
属酸化物を冷却する冷却工程からなるチタン装飾部材の
硬化処理方法及び上記記載の金属酸化物が酸化アルミニ
ウム、酸化マグネシウム或いは酸化モリブデンであるこ
とを特徴としたチタン装飾部材の硬化処理方法とするこ
とにより、硬度ムラを発生することなく表面硬度が付与
され、かつ表面荒れが小さく、着色が発生しなくなっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態におけるチタン硬化部
材に対して硬化層を形成するための処理工程を示す模式
図である。
【図2】図2は本発明の実施形態におけるチタン硬化部
材に対して硬化層を形成するための処理装置を示す模式
図である。
【図3】図5は処理する前及び本発明のチタン硬化部材
及び従来技術のチタン硬化部材の入射角0.5°で薄膜
X線回折による解析を行った結果である。
【符号の説明】
2 チタン硬化部材 4 試料台 6 酸化物粉末 8 処理槽 10 ガス導入口 12 ガス排気口 14 加熱手段 16 加熱電源 18 真空排気装置 20 試料取り出し口 22 真空排気工程 24 昇温加熱工程 26 第一硬化処理工程 28 第二硬化処理工程 30 冷却工程

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン装飾部材の硬化処理方法であっ
    て、真空排気装置及び加熱手段を備えた処理槽内にチタ
    ン装飾部材と金属酸化物を所定の距離に配置し、チタン
    装飾部材と金属酸化物を含む処理槽内を1×10−5t
    orr以下の高真空とする真空排気工程と減圧化のアル
    ゴン、ヘリウムといった不活性雰囲気中でチタン装飾部
    材と金属酸化物を昇温加熱する昇温加熱工程と減圧化の
    水素雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸化物を加熱する
    第一硬化処理工程と減圧化のアルゴン、ヘリウムといっ
    た不活性雰囲気中でチタン装飾部材と金属酸化物を加熱
    する第二硬化処理工程とチタン装飾部材と金属酸化物を
    冷却する冷却工程からなるチタン装飾部材の硬化処理方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の金属酸化物が酸化アルミ
    ニウム、酸化マグネシウム或いは酸化モリブデンである
    ことを特徴としたチタン装飾部材の硬化処理方法。
JP10067999A 1998-03-18 1998-03-18 チタン装飾部材の硬化処理方法 Pending JPH11264063A (ja)

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