JPH1122739A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

Info

Publication number
JPH1122739A
JPH1122739A JP19076297A JP19076297A JPH1122739A JP H1122739 A JPH1122739 A JP H1122739A JP 19076297 A JP19076297 A JP 19076297A JP 19076297 A JP19076297 A JP 19076297A JP H1122739 A JPH1122739 A JP H1122739A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bearing
rolling
content
lubricant
raceway
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP19076297A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoichi Matsumoto
洋一 松本
Takashi Nagato
孝 永戸
Kazuo Sekino
和雄 関野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP19076297A priority Critical patent/JPH1122739A/ja
Publication of JPH1122739A publication Critical patent/JPH1122739A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部から潤滑剤に水分が混入したり、潤滑剤
中の水分濃度の影響を受ける使用状況下でも十分なる軸
受寿命を安価にして得ることができるようにした。 【解決手段】 軌道輪材料及び転動体材料がNi、C
r、Moを含有し、転動体材料のNi含有率から軌道輪
材料のNi含有率を減じたNi含有率偏差ΔNiが、重
量%で、ΔNi≧+0.2%、且つ、転動体材料のCr
含有率及びMo含有率から軌道輪材料のCr含有率及び
Mo含有率を夫々減じたCr含有率偏差ΔCr及びMo
含有率偏差ΔMoが、重量%で、ΔCr≦−0.2%、
ΔMo≦−0.2%に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、
より詳しくは、潤滑剤に水分が混入することを想定した
使用環境下で使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受においては、一般に、潤滑剤
中に水分が混入するとその耐久性が大きく低下すること
が知られており、例えば、潤滑剤中に6%の水分が混入
した場合は、水分混入がない場合に比べ、軸受の転がり
疲れ寿命が数分の1から20分の1程度に低下すること
が報告されている(古村恭三郎、城田伸一、平川清:
「表面起点及び内部起点の転がり疲れについて」、NSK
Bearing Journal, No.636,pp. 1 - 10, 1977 ;以下
「文献1」という)。
【0003】水分の潤滑剤への混入は転がり軸受の寿命
特性(耐久性)に多大な影響を及ぼすことが上記文献1
からも明らかであり、従来より水分の潤滑剤への混入を
防止する技術が、前記転がり軸受の用途に応じて種々検
討され、開発されている。
【0004】潤滑剤に水分が浸入することを想定して使
用される転がり軸受としては、例えば、鉄鋼材料の圧延
機のワークロール用軸受がある。
【0005】該ワークロール用軸受は、従前においては
軸受を内有したチョック(軸受箱)に接触ゴムシールを
装着し、多量の圧延水がチョック内に浸入するのを防止
することにより軸受内部に封入されている潤滑剤に水分
が混入するのを防いでいたが、前記接触ゴムシールの劣
化や損傷が生じた場合はチョック内に水が浸入し、その
結果軸受内部の潤滑剤にも水分が混入し得る。このため
最近では軸受内部にも接触ゴムシールを装着することに
より、潤滑剤に水分が混入するのを回避しようとした技
術が提案されている(K. YAMAMOTO, M. YAMAZAKI, M. A
KIYAMA, K. FURUMURA : 「Introducing of Sealed Bear
ings for Work Roll Necks in RollingMills」、Procee
dings of the JSLE international Tribology Conferen
ce, pp.609 - 614, July 8 - 10, 1985, Tokyo, Japa
n;以下「第1の従来技術」という)。
【0006】該第1の従来技術によれば、軸受外部のチ
ョックに装着された接触ゴムシールと軸受内部に装着さ
れた接触ゴムシールとを併用することにより、前記チョ
ックに装着されたゴム接触シールのみで水分浸入を防い
でいた場合に比べ、潤滑剤中の水分濃度を40%から1
0%未満に減少することができ、また潤滑剤の消費量も
1/200に低減することができ、さらには毎年数回あ
った軸受の破損事故も皆無になったことが報告されてい
る。
【0007】また、上述したワークロール用軸受におい
て、潤滑剤への水分混入を防止する他の従来技術とし
て、圧搾空気をキャリアガスとして潤滑剤をチョックに
供給する技術も提案されている(NSK Technical Journa
l No. 654, pp. 54 - 56, 1992;以下「第2の従来技
術」という)。
【0008】該第2の従来技術においては、圧搾空気を
利用してチョック内の空気圧力を高く設定することによ
り、潤滑剤への水分混入を抑制することが可能となる。
【0009】また、潤滑剤中に水分が浸入し得る他の転
がり軸受の例としては、自動車エンジンの電装・補機用
軸受がある。自動車エンジンの電装・補機類用軸受と
は、オルタネータ用軸受、カークーラ電磁クラッチ用軸
受、アイドラプーリ用軸受、水ポンプ用軸受等、自動車
エンジンの外部にあるベルトにより駆動する補助機械用
の軸受を意味するが、これら電装・補機類用軸受は、路
面より跳ね上げられる泥水や雨水が軸受内部に浸入しや
すく、また水ポンプ用軸受についてはエンジン冷却用の
循環水が軸受内部に浸入し易い。
【0010】そこで、かかる観点から自動車エンジンの
電装・補機類用軸受においては、軸受内部における潤滑
剤への水分混入を防止する手段として、内蔵シールのシ
ール性を高性能化する技術が提案されている(NSK Tech
nical Journal No. 660, pp.15 - 22, 1995、同 No. 6
52, pp. 66 - 67, 1992;以下「第3の従来技術」とい
う)。
【0011】また、転がり軸受においては、一般に、振
動が負荷されたり、或いは軸受周りの剛性が弱い場合は
軸受の耐久寿命が大幅に低下することが報告されている
(村上保夫、武村浩道:「電装用軸受のフレーキング現
象の研究」、日本トライポロジ学会主催トライポロジ会
議予稿集(名古屋 1993年11月、pp. 295 - 298 ;以下
「文献2」という )。
【0012】すなわち、運転中に振動が負荷された場合
は軌道面と転動面との間の油膜形成が不十分となり接触
面に引張応力が負荷され、また回転軸と内輪とが強いし
ばりばめで嵌合されて軸受ハウジングの剛性が低下して
いる場合は軌道面に常時引張応力が作用し、その結果、
外部からの潤滑剤への水分混入がなくとも、潤滑剤に元
々含有されている水分の影響を受けて軸受の早期剥離を
招来し、軸受寿命Lの低下を来す虞がある。
【0013】しかるに、前記自動車エンジンの電装・補
機類用軸受は、振動の影響等を受けやすく、したがって
該振動により早期に剥離(フレーキング)が生じるのを
回避すべく、振動減衰効果に優れた緩衝剤のような作用
を奏するグリースを潤滑剤とし使用することが提案され
ている(NSK Technical Journal No. 657, pp. 49 -51,
1994;以下「第4の従来技術」という)。
【0014】また、潤滑剤中に水分が浸入し得るその他
の転がり軸受の例としては、自動車ホイール用軸受、鉄
鋼材料の連続鋳造設備のガイドロール用軸受や圧延機の
バックアップロール用軸受、更には製紙機ドライヤロー
ル用軸受等がある。
【0015】自動車ホイール用軸受においては、路面の
泥水や雨水の影響を受けて潤滑剤中に水分が浸入し易
い。また、鉄鋼材料の連続鋳造設備のガイドロール用軸
受や圧延機のバックアップロール用軸受についても、冷
却水や圧延水が潤滑剤中に浸入し易い。さらに、製紙機
ドライヤロール用軸受は、水分を含んだ湿った紙を乾燥
する乾燥工程で使用されるため、軸受内に水蒸気が浸入
し易く、したがって、潤滑剤中の水分濃度が増加して軸
受の早期破損を生じやすい(M.J.Culter:「Paper mach
ine bearing failure 」、Tappi Journal, Vol. 79, N
o. 2, pp. 157 - 167, 1996;以下「文献3」とい
う)。
【0016】そこで、自動車ホイール用軸受において
は、上記第1の従来技術と同様、軸受外部の接触ゴムシ
ールと軸受に内蔵された接触ゴムシールを併用したり、
或いは高性能シールを単独使用する技術が提案されてお
り(NSK Technical Journal No. 647, pp. 55 - 57, 19
87)、また、ガイドロール用軸受や圧延機のバックアッ
プロール用軸受についても、接触ゴムシールを使用して
潤滑剤中への水分浸入を防止することが行われている。
また、製紙機ドライヤロール用軸受についても、上記文
献3から明らかなように水蒸気が軸受中に浸入し易いた
め水分浸入防止のための対策を講じる必要があるが、該
製紙機ドライヤロール用軸受は一般に高温条件下で使用
されるため、ワークロール用軸受や自動車用ホイール用
軸受に使用される接触ゴムシールを適用することは耐熱
性を考慮すると難しく、このため十分な耐熱性を有する
特殊な高温用ゴムを使用して水分の浸入を防止すること
が考えられている。
【0017】すなわち、これら自動車ホイール用軸受等
その他の転がり軸受についても、第1の従来技術や第3
の従来技術と略同様、原理的には接触ゴムシールを使用
して軸受内部の潤滑剤への水分混入を回避しようとして
いる(以下、これらその他の転がり軸受についての従来
技術を「第5の従来技術」という)。
【0018】一方、転がり軸受が搭載された機械類や自
動車等が運転を停止している場合に軸受のハウジング内
部の温度が低下して露点に到達したときは、軸受周辺の
水分が凝縮し、その結果水滴となって軸受に付着したり
或いは潤滑剤中に混入し、これにより軸受寿命Lの低下
を招来することが報告されており(内田権一:NSK Tech
nical Journal No. 632, pp. 40 - 45, 1973;以下「文
献4」という)、また潤滑剤が酸化劣化すると水分が発
生し、該発生した水分が軸受に付着して軸受寿命Lの低
下を招来することが報告されている(関雅夫:転がり疲
れシンンポジウム予稿集、pp. 125 - 130, 1993 ;以下
「文献5」という)。
【0019】これら文献4及び文献5によれば、外部か
ら直接的に潤滑剤に水分が混入しなくとも、環境変化等
により潤滑剤中に水分が含まれる状況になる場合があ
り、したがって軸受寿命Lの低下を回避するためには、
潤滑剤への水分浸入対策として上述した接触ゴムシール
以外の手段も検討する必要がある。
【0020】そこで、かかる観点からは、軸受に使用さ
れる軸受材料としてマルテンサイト系ステンレス鋼(S
US440C)を使用することにより、軸受への水分付
着による錆の発生を防止し、耐久性が低下するのを回避
せんとしている(転がり軸受工学編集委員会編:転がり
軸受工学,pp. 71 - 72 、養賢堂(1976年);以下「第
6の従来技術」という)。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記第1の
従来技術は、上述の如く潤滑剤中の水分濃度を40%か
ら10%未満に減少させることが可能であり、また、潤
滑剤の消費量を低減させることができ、その後のワーク
ロール用軸受の使用実績を調査した結果、焼き付き事故
は激減していることが判明したが、剥離発生までの使用
時間、すなわち軸受寿命Lは余り向上していないことが
判った。これは、前記焼き付き事故の減少は軸受に内蔵
された接触ゴムシールにより潤滑剤の外部への流出が減
少したためであり、前記軸受寿命Lが向上していないの
は潤滑剤への水分の混入により、軸受の転がり疲れ強さ
が大幅に低下するためと考えられる。
【0022】すなわち、100ppm程度の微量の水分
が潤滑剤中に混入した場合であっても軸受材料の転がり
疲れ強さは32〜48%も低下することが報告されてお
り(P.Schatzberg, I.M.Felsen:「Effects of water a
nd oxygen during rolling contact lubrication」,wea
r, 12, pp. 331 - 342, 1968;以下「文献6」という)
、軸受外のチョックに装着された接触ゴムシールと軸
受に内蔵された接触ゴムシールとを併用した場合、潤滑
剤中の水分濃度が10%未満程度になるまでは抑制する
ことができるものの、潤滑剤への水分混入を完全には防
止することができず、文献6も指摘しているように軸受
材料の転がり疲れ強さが低下するのを避けることができ
ない。つまり、第1の従来技術では、潤滑剤への水分混
入を完全には防止することができないため、軸受材料の
転がり疲れ強さが低下し、所望の耐久性に優れた軸受寿
命Lを得ることができないという問題点がある。
【0023】また、第2の従来技術は、チョック内の空
気圧を高くすることにより水分の浸入を防止しているた
め、第1の従来技術のように接触ゴムシールの防水能力
には依存しないものの、潤滑剤中の水分濃度を100p
pm以下にするような略完璧に近い水分浸入防止を図る
のが困難であるという問題点がある。
【0024】また、第3の従来技術は、原理的には第1
の従来技術と同様、接触ゴムシールにより水分の浸入を
防止するものであり、上述したように潤滑剤中の水分濃
度を100ppm以下に抑制することは困難であり、所
望の耐久性を得ることができないという問題点がある。
【0025】また、第4の従来技術においても、近年の
自動車の高性能化により、電装・補機用軸受の使用温度
が高くなり、結果としてグリースが軟化して該グリース
の振動減衰能が低下するため、軸受の早期剥離を防止す
ることができず、上述した潤滑剤中への水分浸入と相俟
って軸受寿命低下の要因となり、所望の耐久性を得るこ
とができないという問題点がある。
【0026】また、第5の従来技術においても、原理的
には上記第1の従来技術と同様、接触ゴムシールを使用
したものであり、完璧な水分の浸入防止を図ることは困
難であるという問題点がある。
【0027】さらに、第6の従来技術については、ステ
ンレス鋼の熱伝導度が低合金鋼の熱伝導度に比べて低い
ため焼き付き破損が生じやすく、潤滑剤中に水分が混入
する上述のような潤滑条件の悪い転がり軸受への適用は
困難であるという問題点がある。また、前記ステンレス
鋼の耐食性は表面に生成される不動態皮膜により維持さ
れるものであるが、転がり軸受においては軌道輪の軌道
面と転動体の転動面とが接触すると前記不動態度皮膜が
破られ、その結果選択的に腐食が進行して孔(ピット)
が生成されるため、該孔を起点とした剥離破損が生じや
すいという問題点もある。さらに、軸受を製造する場合
においても、ステンレス鋼の場合は焼入温度が1010
〜1070℃と高く、加熱炉としては塩浴炉を使用する
必要があるため、生産設備の高騰化を招く虞があるとい
う問題点もある(日本鉄鋼協会編:鋼の熱処理 改訂5
版 pp. 563 - 568 (1989))。
【0028】さらに加えて、前記ステンレス鋼は上述し
たように熱伝導度が低いため、研削速度が低下し、研削
コストが高価なものとなり、さらには前記ステンレス鋼
は高合金鋼であるため素材コストの高騰化をも招来する
という問題点もある。
【0029】本発明はこのような問題点に鑑みなされた
ものであって、外部から潤滑剤に水分が混入したり、或
いは潤滑剤中の水分濃度の影響を受ける使用状況下であ
っても、十分なる軸受寿命を安価に得ることができる転
がり軸受を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】本願出願人は、潤滑剤中
に水分を含んだ潤滑条件下で使用しても、軸受部位の腐
食進行を防止することができる転がり軸受を得るべく、
鋭意研究をした結果、軌道輪の軌道面と非金属介在物と
の界面におけるFeを主成分とする金属素地(マトリッ
クス)側をアノード(陽極)とし、転動体の転動面上に
おける炭化物をカソード(陰極)として腐食形態を接触
腐食にすることが有効であるという知見を得た。
【0031】すなわち、潤滑剤中に水分が混入した場
合、その水分量が微量の場合であっても、軌道輪の軌道
面に形成される不可避的な非金属介在物(酸化物、硫化
物等)と金属素地との界面で局部腐食を起こし、該局部
腐食の進行により軸受部位に剥離が発生する。そして、
この場合、特に軌道輪には多量の水素が吸収されて腐食
が進行し、軸受寿命の低下を招来することが判明した。
【0032】したがって、軸受寿命の低下を回避するた
めには軌道輪への水素吸収量を抑制することが重要であ
り、これにより腐食を防止することができると考えられ
る。
【0033】そこで、本願出願人は、転がり軸受では転
動面と軌道面とが金属接触することに着目し、腐食形態
を上述した局部腐食から転動体と軌道輪との間の接触腐
食に変更することが軌道輪への水素吸収量を抑制するの
に効果的であることが判った。すなわち、前記界面にお
ける金属素地をアノードにし、転動体の転動面における
炭化物をカソードにして腐食形態を接触腐食にするのが
軌道輪の水素吸収量を抑制するのに効果的である。そし
て、転動面に存在する炭化物(以下「転動面炭化物」と
いう)を軌道面に存在する炭化物(以下「軌道面炭化
物」という)よりも電気化学的に貴とし、さらに転動面
の炭化物への電子供給効率を上げるため、転動面の金属
素地を軌道面の金属素地よりも電気化学的に貴とするこ
とにより、腐食形態を接触腐食とすることができる。
【0034】そして、上述の如く軌道輪の前記界面にお
ける金属素地をアノードとし、転動体の転動面における
炭化物をカソードとするためには、材料の成分組成を調
整して軌道輪材料と転動体材料の各金属素地、及び軌道
輪材料と転動体材料の各炭化物との間における電気化学
的な貴卑を明確にする必要がある。
【0035】しかるに、軸受材料としてNi、Cr、M
oを含有した低合金鋼を使用する場合、軸受材料に含有
される炭化物は一般式(Fe,M)3C(M=Cr、M
o)で示されるようにCr成分及びMo成分が炭化物中
に含まれる。また、金属素地にNi成分が含有されるの
はいうまでもない。したがって、Feに比べ化学的に不
安定なCr、Moの含有率を減少させることにより、炭
化物は通常の場合に比べ電気化学的に貴とすることが可
能となり、また、金属素地の主成分であるFeに比べ化
学的に安定なNiの含有率を増加させることにより金属
素地は通常の場合に比べ電気化学的に貴とすることが可
能となる。すなわち、転動体材料と軌道輪材料との間で
電気化学的に貴卑が明確になるようにCr、Mo、Ni
の含有率に差異を設けることにより、転動面炭化物を軌
道面炭化物よりも電気化学的に貴とすることができ、ま
た、転動面の金属素地を軌道面の金属素地よりも電気化
学的に貴とすることができる。そして、本願出願人の実
験結果から、具体的にはこれらの含有率偏差を0.2wt
%以上に設定することが必要であることが判明した。
【0036】本発明は斯かる知見に基づきなされたもの
であって、本発明に係る転がり軸受は、外輪と内輪とか
らなる軌道輪と、前記外輪と前記内輪との間に転動自在
に配設された転動体とを備えた転がり軸受において、前
記転動体材料のNi含有率から前記軌道輪材料のNi含
有率を減じたNi含有率偏差ΔNiが、重量%で、ΔN
i≧+0.2%、且つ、前記転動体材料のCr含有率及
びMo含有率から前記軌道輪材料のCr含有率及びMo
含有率を夫々減じたCr含有率偏差ΔCr及びMo含有
率偏差ΔMoが、重量%で、ΔCr≦−0.2%、ΔM
o≦−0.2%であることを特徴としている。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0038】上述の如く、潤滑剤中に水分を含んだ潤滑
条件下では軸受材料の転がり疲れ強さの低下を招くこと
が知られているが、その機構については定説がなく、水
分の潤滑剤への混入が転がり疲れ強さを低下させる理由
については不明とされている(E.Ioannides, B.Jacobso
n :「Dirty lubricants-reduced bearing life 」,Ba
ll Bearing Journal Special '89, pp. 22 - 27, 198
9)。
【0039】そこで、本願出願人はまず上記機構を理論
的に解明することに着手した。
【0040】水分が潤滑剤中に混入した場合は該水分量
が微量の場合であっても油膜の形成が困難となり、転動
体と軌道輪とはその転動面及び軌道面との間で金属接触
するが、転動体や軌道輪の表面状態は、不均一であり一
様でなく不可避的な酸化物や硫化物等の非金属介在物が
転動面や軌道面に形成されている。そして、潤滑剤中に
水分が混入している場合は、これら非金属介在物とFe
を主成分とする金属素地との界面に水が浸入すると、局
部電池を形成して局部腐食が発生する。すなわち、前記
界面近傍には転動体と軌道輪との接触部が必ず存在する
ため、軌道面や転動面に存在する非金属介在物と金属素
地との界面には必ず引張応力が負荷され、斯かる引張応
力下、非金属介在物と金属素地との界面に微小隙間が形
成される。そして、潤滑剤に水分が混入している場合
は、該水分が微量の場合であっても水分の粘度は潤滑剤
の粘度よりも低いため毛細管現象により該水分が前記微
小隙間に優先的に浸入し、その結果微小隙間内部で腐食
反応が起こる。また、内輪と回転軸とがしばりばめで嵌
合されているときは、軌道面には常時引張応力が作用す
るので、非金属介在物と金属素地との界面には更に大き
な引張応力が負荷され、該大きな引張応力下で隙間が形
成されることとなる。
【0041】この腐食反応は、腐食生成物が微小隙間の
入口を閉塞するため、表面から微小隙間への酸素供給が
困難となり、その結果、炭化物よりも電気化学的に卑で
ある金属素地をアノードとし、金属素地よりも電気化学
的に貴である炭化物をカソードとして化学反応式(1)
〜(4)に示すような水素発生型の腐食反応となる。
【0042】
【化1】 ここで、H(ads) は軸受材料の表面に吸着する水素原子
を示し、H(abs) は軸受材料の内部に吸収される水素原
子を示している。
【0043】すなわち、アノード(陽極)側では、化学
反応式(1)に示すように、Feが水分と反応して電子
を放出する酸化反応を呈する一方、カソード(陰極)側
では、微小隙間内部への酸素供給が困難となって化学反
応式(2)に示すように、軸受材料の表面に水素が吸着
し、次いで化学反応式(3)に示すように、該吸着した
水素の一部は軸受材料の内部に拡散して吸収され、前記
吸着した水素のその他は、化学反応式(4)に示すよう
に、軸受材料の表面に吸着された水素原子同士が結合し
て水素分子(ガス)を形成し該水素分子が外部に放出さ
れる。炭化物上では化学反応式(3)の進行は略無視で
きるため、主として化学反応式(4)の化学反応が進行
する。したがって、水素ガスが微小隙間から外部に容易
に放出可能な場合はたとえ腐食が生じても水素ガスの軸
受材料内部への吸収は生じないと考えられる。
【0044】しかしながら、水素ガスは外部に放出され
る途中で微小隙間内部の金属素地に吸着されやすく、さ
らに吸着された水素ガスは金属素地中に原子として解
離、吸着し、しかも該吸着した水素原子の一部は軸受材
料内部に吸収される。このように微小隙間内部で腐食反
応が生じた場合は水素が軸受材料の内部に吸収されるこ
ととなって軸受材料の水素脆化を招来し、その結果軸受
材料の転がり疲れ寿命の低下を来すと考えられる。
【0045】次に、本願出願人は、潤滑剤に水分が混入
した場合の軸受材料の剥離特性について検討した。
【0046】〔発明が解決しようとする課題〕の項でも
述べたように、潤滑剤中に水分が混入すると転がり軸受
が剥離するまでに要する時間、すなわち軸受寿命Lが低
下するが、剥離が発生する軸受の構成部位としては一般
には固定輪が最も顕著であり、次いで回転輪、転動体の
順に剥離の発生頻度は少なくなる。このように転動体に
おける剥離発生頻度が軌道輪における剥離発生頻度より
も少ないのは転動体の水素吸収量が軌道輪の水素吸収量
よりも少ないためと解されるが、その理由としては以下
のことが考えられる。
【0047】(1)一般に転がり軸受の自転速度は、転
動体の方が軌道輪よりも遙に速いため、たとえ転動体の
転動面に微小隙間が形成されても微小隙間に侵入した水
分は遠心力により弾き飛ばされ、その結果腐食反応の進
行が抑制され、材料内部に浸入する水素の吸収量が少な
い。
【0048】(2)転動体の鋳造素材(インゴット、ブ
ルーム、ビレット等)からの加工比は軌道輪の鋳造素材
からの加工比よりも大きいため、転動体の転動面に存在
する非金属介在物は軌道輪の軌道面に存在する非金属介
在物に比べて小さい。したがって、転動体においては非
金属介在物と金属素地との間の界面も小さく、しかも浅
いため、水素発生型の腐食反応の進行が抑制され、材料
内部への水素吸収量も少ない。
【0049】等の理由が考えられる。
【0050】また、軌道輪に関し、回転輪の方が固定輪
に比べて剥離発生頻度が少ないのは以下の理由による。
すなわち、回転輪においては、軌道面に形成された微小
隙間に水分が浸入しても弾き飛ばされ易いため固定輪に
比べて水素吸収量が少なく、したがって剥離発生頻度も
少なくなると考えられるからである。但し、内輪と回転
軸とがしばりばめにより嵌合されているときは、回転輪
の軌道面には常時引張応力が作用するため、内輪が回転
輪の場合であっても応力腐食が促進され、上述したカソ
ード反応(化学反応式(2)〜(4))が活発に進行し
て回転輪の水素吸収量も増加し、このため剥離の発生頻
度も多くなる。特に、締代が回転軸の軸径の7/100
00を超える場合やテーパ穴軸受をしばりばめで使用す
る場合は、回転輪の剥離発生頻度は固定輪の剥離発生頻
度と同等か、又は同等以上に多いものとなる。尚、内輪
が固定輪であって且つ該内輪と回転軸とがしばりばめに
より嵌合されている場合はすきまばめにより嵌合されて
いる場合に比べ、水素吸収量が多くなるのはいうまでも
ない。
【0051】いずれにしても転動体よりも軌道輪の方が
水素吸収量が多く、剥離発生頻度が多いことが判明した
ことから、軌道輪の水素吸収量を抑制して腐食が進行す
るのを防止することが軸受寿命Lの改善に寄与するもの
と考えられる。
【0052】そこで、本願出願人は、さらに鋭意研究を
重ねた結果、転がり軸受においては、転動体の転動面と
軌道輪の軌道面とが金属接触することに着目し、金属素
地と非金属介在物との界面に形成される微小隙間の金属
素地側をアノードとし、転動体の転動面における炭化物
をカソードとして腐食形態を局部腐食から接触腐食に変
更することが軸受寿命Lの向上に有効であることが判明
した。
【0053】これにより、アノード反応は界面の金属素
地側で起こる一方で、転動体の転動面における炭化物を
カソードにすることによりカソード反応は転動面の炭化
物上で起こり、しかも周囲から酸素を容易に供給するこ
とができるので、下記化学反応式(5)(6)に示すよ
うに、腐食反応は酸素消費型の腐食反応となり、軌道輪
内部への水素吸収が抑制されて水素脆化に伴う軸受寿命
の低下を防止することができる。
【0054】
【化2】 しかして、上述の如く前記微小隙間における金属素地側
をアノードとし、転動体の転動面における炭化物をカソ
ードとするためには、転動面炭化物を軌道面炭化物より
も電気化学的に貴とし、さらに転動面炭化物への電子供
給効率を上げるため、転動面の金属素地を軌道面の金属
素地よりも電気化学的に貴とする必要がある。
【0055】軌道輪の前記界面における金属素地をアノ
ードとし、転動体の転動面における炭化物をカソードと
するためには、材料の成分組成を調整して軌道輪材料と
転動体材料の各金属素地、及び軌道輪材料と転動体材料
の各炭化物との間における電気化学的な貴卑を明確にす
る必要がある。
【0056】ところで、〔発明が解決しようとする課
題〕の項でも述べたように、軸受材料としてステンレス
鋼(SUS440C)のような高合金鋼を使用して腐食
反応を抑制することは、技術的に困難であり、また経済
的にも不利であるため、軸受の素材鋼としては低合金鋼
を使用するのが好ましい。例えば、各軸受部位の素材鋼
としては、その化学成分が、例えば、C:0.10〜
1.10wt%、Si:0.75wt%以下、Mn:1.7
0wt%以下、Cr:2.0wt%以下、Mo:1.50wt
%以下、Ni:4.50wt%以下、Cu:0.30wt%
以下、Al:0.050wt%以下、残部:Fe及び不可
避不純物(O、S、Ti等)等からなる低合金鋼を使用
し、素材鋼に所望の熱処理を施すことにより所望の表面
硬さを有する軸受部位を得るのが効果的である。
【0057】そして、軸受材料として上述のようなN
i、Cr、Moを含有した低合金鋼を使用した場合、軸
受材料に含有される炭化物は一般式(Fe,M)3C(M
=Cr、Mo)で示されるようにCr成分及びMo成分
が該炭化物中に含まれる。また、金属素地にNi成分が
含有されるのはいうまでもない。したがって、Feに比
べ化学的に不安定なCr、Moの含有率を減少させるこ
とにより、通常の場合に比べ炭化物を電気化学的に貴と
することが可能となり、また、金属素地の主成分である
Feに比べ化学的に安定なNiの含有率を増加させるこ
とにより通常の場合に比べ金属素地を電気化学的に貴と
することが可能となる。すなわち、転動体材料と軌道輪
材料との間で電気化学的に貴卑が明確になるようにC
r、Mo、Niの含有率に差異を設けることにより、転
動面炭化物を軌道面炭化物よりも電気化学的に貴とする
ことができ、また、転動面の金属素地を軌道面の金属素
地よりも電気化学的に貴とすることができる。
【0058】そして、電気化学的な貴卑が明確となるよ
うにするためには、これらの含有率偏差を重量%で0.
2wt%以上に設定することが必要である。すなわち、転
動体材料のNi含有率から前記軌道輪材料のNi含有率
を減じたNi含有率偏差ΔNiが、重量%で、ΔNi≧
+0.2%、且つ、前記転動体材料のCr含有率及びM
o含有率から前記軌道輪材料のCr含有率及びMo含有
率を夫々減じたCr含有率偏差ΔCr及びMo含有率偏
差ΔMoが、重量%で、ΔCr≦−0.2%、ΔMo≦
−0.2%であることが必要である。尚、これら含有率
偏差ΔNi、ΔCr及びΔMoを過大にした場合は、電
気化学的な貴卑の増大により軌道面の溶解が顕著となっ
て反応生成物が潤滑剤を劣化させる虞があるが、本実施
の形態では上述した成分組成範囲の低合金鋼を使用して
いるため、ΔNi、ΔCr及びΔMoが過大となること
はない。
【0059】また、軌道輪材料の水素吸収を抑制するに
は、微小隙間内部で起こるアノード反応(化学反応式
(1))を抑制するのも有効な手段である。
【0060】上記アノード反応は、金属素地を電気化学
的により貴なものとし、炭化物をより卑なものとして金
属素地と炭化物との電気化学的特性を近づけることによ
り、その進行を抑制することができる。すなわち、アノ
ード反応は、炭化物と金属素地の界面における金属素地
側で起こるため、電気化学的に卑な金属素地を貴方向に
移行させ、電気化学的に貴な炭化物を卑方向に移行させ
ることにより、金属素地と炭化物との電気化学的特性を
近づけることができ、これによりアノード反応の進行を
抑制することができる。
【0061】そして、金属素地をより貴なものにするた
めには上述したようにFeに比べ化学的に安定したNi
の添加量を増加させることが有効であり、炭化物をより
卑なものにするためには炭化物に含有されるFeに比べ
て化学的に不安定なCr、Moの添加量を増加させるの
が有効である。具体的にはNi含有率が0.25wt%以
上、Cr含有率が0.7wt%以上、Mo含有率が0.2
5wt%以上に設定することにより、金属素地と炭化物と
の電気化学的特性を近づけることができ、その結果化学
反応式(1)のアノード反応が進行するのを抑制するこ
とができる。
【0062】また、軌道輪の内部への水素の吸収を抑制
して水素脆化が生じるのを回避するためには、上述した
化学反応式(2)に示す化学反応が進行するのを抑制す
るのも効果的である。
【0063】具体的には、潤滑剤の水素イオン濃度を下
げることによって、換言すると潤滑剤の水素イオン指数
pHを上げることによって、化学反応式(2)の反応速
度を低下させることができ、これにより水素脆化が生じ
るのを回避することができ耐久性向上を可能とする。こ
の場合の水素イオン指数pHの最適範囲は7〜13であ
る。
【0064】すなわち、水分は大気中に微量に含有され
る二酸化炭素を溶解し、その結果水素イオン指数が7以
下の酸性になることが多く、潤滑剤にアルカリ物質を添
加してゆくことにより水素イオン指数pHを上げて行く
ことができるが、化学反応式(2)の反応速度を低下さ
せて軌道輪材料への水素吸収の十分なる抑制を達成し、
これにより軸受寿命Lを改善するためには、水素イオン
指数pHを少なくとも7以上に設定することが必要であ
る。一方、水素イオン指数pHが13を超えるとアルカ
リ腐食により軌道面3や転動面5が摩耗し、転がり軸受
の駆動中における振動が次第に顕著となる。したがっ
て、本実施の形態では潤滑剤の水素イオン指数pHを7
〜13に限定した。
【0065】また、転動体の転動面の表面硬さ(以下
「転動面硬さ」という)と軌道輪の軌道面硬さ(以下
「軌道面硬さ」という)については、転動面硬さを軌道
面硬さよりも低く設定するのが望ましい。
【0066】転がり軸受においては、軌道輪の軌道面と
転動体の転動面には公転滑りや差動滑り等の滑りが必ず
生じるが、潤滑剤に水分が混入している場合や潤滑剤中
の水分濃度の影響を受けて良好な油膜を形成することが
できない場合(軸受の運転開始直後や運転停止直前を含
む低速回転運転時、使用温度が高く表面粗さの悪い場
合、振動を受けたり潤滑剤の分量が少ない場合等)にお
いては、転動面と軌道面とが接触すると転動面及び軌道
面のうちの表面硬さの低い方の面が摩耗する。このこと
は、使用後の軌道面や転動面の研磨目を観察したり、潤
滑剤中の鉄粉濃度の測定等により容易に確認することが
でき、実験室的な転がり軸受の使用を除き、多くの場合
転動面と軌道輪との接触を避けることができない。
【0067】したがって、転動面硬さが軌道面硬さより
も硬い場合は軌道面が摩耗することとなり、軌道面にお
ける非金属介在物と金属素地との密着性が低下し、該非
金属介在物と金属素地との間には潤滑剤よりも粘度の低
い水が優先的に浸入して腐食が生じ、その結果水素脆化
が発生する。
【0068】しかるに、上述の如く軌道輪の水素吸収量
を抑制することが軸受寿命の改善に寄与するため、軌道
面の摩耗を抑制するのも重要であり、そのためには上述
した転動体材料及び軌道輪材料のNi、Cr、Moの各
含有率偏差を確保した上で、転動面硬さを軌道面硬さよ
りも低く設定するのが望ましい。
【0069】尚、この場合、転動体の摩耗は避けられな
いこととなるが、転動体の激しい摩耗は避ける必要があ
り、そのためには転動面の金属組織が、マルテンサイト
及び必要に応じて残留オーステナイトや炭化物を加えた
組織(以下、この組織を「マルテンサイト組織」、この
組織を有する鋼を「マルテンサイト鋼」という。)で構
成する必要があり、転動面硬さもロックウェル表面硬さ
(以下「表面硬さ」という)HRCが55以上であるこ
とが望ましい。また、軌道輪硬さは、上述の如く、転動
面硬さよりも高く設定するのが望ましいが、該軌道輪硬
さを余りにも高く設定すると転動体の摩耗が顕著となる
ため、軸受材料として低合金鋼を使用した場合は表面硬
さHRCを66以下に設定するのが望ましい。
【0070】また、軌道輪における腐食反応は、非金属
介在物と金属素地との間に形成される微小隙間を起因と
して発生することから、該腐食を防止するためには非金
属介在物の生成を抑制するのも好ましく、そのためには
非金属介在物の構成成分である酸化物、硫化物やチタン
化合物の生成原因となる酸素、イオウ及びチタンの含有
率の総計を100ppm以下にするのが望ましい。さら
に、非金属介在物と金属素地との間の良好な密着性を得
て、前記界面における微小隙間を生成を回避するために
は、軸受材料の最終精錬法をESR法又はVAR法によ
り行うのが望ましい。
【0071】さらに、浸炭処理又は浸炭窒化処理を施す
場合は、処理工程中において水素が鋼中に浸入するた
め、浸炭処理後又は浸炭窒化処理後に不活性ガス、真空
中、大気中でA1 変態点より30〜150℃低い温度範
囲で脱水素のための焼鈍処理を実施するのが望ましい。
【0072】また、転がり軸受の内、特に鉄鋼圧延機の
ロールネック用軸受は、一般に、衝撃荷重を受ける環境
下で使用されるため、軌道輪は低炭素鋼(肌焼鋼)に浸
炭処理又は浸炭窒化処理を施して軌道面近傍の表面を硬
化させる一方、その芯部近傍の内部を柔らかくすること
により、転がり接触応力及び衝撃応力の双方に耐え得る
ように製造される。しかしながら、耐水素脆性を向上さ
せるためには軌道面における金属素地と非金属介在物と
の密着性を良好にして微小隙間への水分の浸入を防止す
ることが重要であり、そのためには軌道輪材料として炭
素含有率が0.10〜0.45wt%とされた低炭素鋼を
使用する必要がある。これは、内輪と回転軸の締代が軸
径の7/10000においても軌道面に確実に圧縮残留
応力を付与するためには、炭素含有率を0.45wt%以
下に設定する必要がある一方で、炭素含有率が0.10
wt%以上に設定すると浸炭又は浸炭窒化に要する処理時
間が長くなり、処理効率を考慮すると炭素含有率の上限
を0.10wt%に限定する必要がある。尚、転動体が中
実形状の場合は引張応力が表面には作用しにくいので、
ずぶ焼き鋼を使用してもよい。
【0073】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0074】本願出願人は、所定の熱処理を施した種々
の化学成分を有する軌道輪及び転動体を作製し、円錐こ
ろ軸受を組み立て、濃度偏差ΔN,ΔCr,ΔMoと軸
受寿命Lとの関係を測定した。
【0075】表1は本発明実施例の軸受材料(軌道輪及
び転動体)における化学成分を示しており、表2は比較
例の軸受材料(軌道輪及び転動体)における化学成分を
示している。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】 軌道輪中、比較例54は外輪及び内輪が異なる化学成分
で構成され、その他の軌道輪は外輪及び内輪は同一の化
学成分で構成されている。
【0078】また、表1及び表2中、ΔNi、ΔCr、
ΔMoは、転動体のNi、Cr、Moの各含有率から軌
道輪のNi、Cr、Moの各含有率を減算した含有率偏
差を示している。尚、内輪と外輪とで組成範囲の異なる
比較例54は、Niについては高い方の含有率を使用し
てΔNi含有率偏差を算出し、Cr及びMoはついては
低い方の含有率を使用してΔCr含有率偏差及びΔMo
含有率偏差を算出している。
【0079】また、S+Ti+Oは、軌道輪材料に含有
されるイオウ、チタン及び酸素の含有率の総計を示した
値であって、比較例54のように内輪と外輪とで含有率
の異なる場合は高い方の含有率を使用して(S+Ti+
O)の総計を算出した。
【0080】次に、上記組成範囲を有する軸受材料に熱
処理を施し、次いで熱処理された軌道輪及び転動体の表
面硬さHRC(軌道面硬さ及び転動面硬さ)を算出する
と共に、内輪を回転輪、外輪を固定輪として回転体に組
み込み、耐久寿命試験を行って寿命特性(耐久性)を評
価した。尚、保持器としては、冷間圧延鋼材(SPC
C)で形成されたプレス保持器を使用し、各軸受(実施
例1〜13及び比較例51〜54)毎に各々10個宛を
作製し、耐久寿命試験を行った。
【0081】軸受仕様は以下の通りである。 〔軸受仕様〕 呼び番号 : HR32017XJ 外輪の外径D : φ130mm 内輪の内径d : φ85mm 組立幅t : 29mm 基本動定格荷重C: 143000N 表3及び表4は、上述した実施例1〜実施例13及び比
較例51〜54の熱処理方法、表面炭素濃度、表面硬さ
HRC、硬さ偏差ΔHRC、グリースの水素イオン指数
pH、及び軸受寿命Lを示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】 軌道輪の熱処理は、所定の成分範囲を有する軌道輪素材
に対して全浸炭深さが1.2mmになるまで所定温度下、
浸炭処理を施した後、実施例12を除き、脱水素をする
ために直ちに窒素雰囲気下、加熱温度650℃、加熱時
間5時間の条件で等温焼鈍処理を施し、次いで、加熱温
度800〜860℃、加熱時間30分の条件下で焼入処
理を施し、その後加熱温度160〜180℃、加熱時間
2時間の条件下で焼戻処理を施すことにより行った。ま
た、焼入油は、80℃の油を使用した。上述した等温焼
鈍処理は、処理効率を向上させるために行ったものであ
り、浸炭処理後冷却し、その後650℃まで昇温して保
持する中間焼鈍法を施しても何ら差し支えない。
【0084】尚、実施例12は、焼鈍効果を調べるた
め、実施例1と同一組成の軌道輪材料に対して焼鈍処理
を行うことなく、浸炭処理した後は焼入・焼戻処理を施
して軌道輪材料を得ている。
【0085】一方、転動体の熱処理は、所定の成分範囲
を有する転動体素材に対して全浸炭深さが1.2mmにな
るまで所定温度下、浸炭処理を施し、次いで室温に到達
するまで放冷し、その後、加熱温度800〜850℃、
加熱時間30分の条件下で焼入処理を施し、その後加熱
温度160〜260℃、加熱時間2時間の条件下で焼戻
処理を施ことにより行った。すなわち、〔発明の実施の
形態〕の項で述べたように、潤滑剤に水分が混入してい
る場合であっても、転動体の場合は使用中における鋼中
への水素の吸収が殆どないため、脱水素のための焼鈍処
理を施す必要はなく、焼鈍処理は行わなかった。
【0086】軌道輪及び転動体の表面炭素濃度は、表3
及び表4から明らかなように、0.80〜1.10wt%
の範囲であった。
【0087】また、転動体及び軌道輪の表面硬さHRC
は、ロックウェル硬さ試験機のCスケールで5回測定
し、その平均値である平均表面硬さHavを算出し、数式
(1)を使用して算出した。
【0088】HRC=Hav+ΔH …(1) ここで、ΔHは円筒面の硬さを平面に換算する硬さ補正
値であって、数式(2)で表される。
【0089】 ΔH=(14.8/rx)×(1−Hav/160)2 …(2) (但し、x=a、b、c) ここで、rxは円筒面の曲率半径(mm)であって、図1
に示すように、転動体11が外輪12と内輪13との間
に転動自在に配設されている場合において、外輪軌道面
の平均半径をr1、内輪軌道面の平均半径をr2、転動
体11の平均半径をr3、軸芯と外輪軌道面との成す角
度をα1、軸芯と内輪軌道面との成す角度をα2とする
と、外輪軌道面の曲率半径ra、内輪軌道面の曲率半径
rb、転動体11の曲率半径rcは数式(3)〜(5)
で表される。
【0090】ra=−r1/cos α1 …(3) rb=r2/cos α2 …(4) rc=r3/cos {(α1−α2)/2}…(5) すなわち、外輪の表面硬さを算出する場合は、数式
(3)で算出された曲率半径raを数式(2)に代入し
て硬さ補正値ΔHを算出し、斯く算出された硬さ補正値
ΔHを数式(1)に代入して外輪の表面硬さHRCを算
出した。同様に、内輪の表面硬さを算出する場合は、数
式(4)で算出された曲率半径rbに基づき数式(1)
(2)を使用して内輪の表面硬さHRCを算出した。ま
た、転動体の表面硬さを算出する場合は、数式(5)で
算出された曲率半径rcに基づき数式(1)(2)を使
用して転動体の表面硬さHRCを算出した。
【0091】また、硬さ偏差ΔHRCは、転動体の表面
硬さから軌道輪の表面硬さを減算して算出した。内輪と
外輪とで表面硬さが異なるときは、低い方の値を用いて
ΔHRCを算出する。
【0092】尚、表面硬さHRCは、軌道面硬さや転動
面硬さの代わりに鏡面仕上げした垂直断面の0.1mm深
さ位置におけるビッカース硬さHvを測定荷重1kgf
で5回測定してその平均値を算出し、該平均値から換算
してもよいが、表面硬さの数値で重要なのは転動面硬さ
と軌道面硬さの絶対値ではなく、転動面硬さと軌道面硬
さの間の相対値にあるため同一軸受での各構成部位の硬
さ測定は同一方法で行う必要がある。
【0093】次に、耐久寿命試験について説明する。
【0094】図2は本実施例に使用した耐久試験装置の
要部断面図であって、外輪12をハウジング14に固定
すると共に、内輪13を回転軸15に嵌合し、1時間当
たり10ccの水を図2に示すように軸受内部に注入する
一方、アキシャル荷重Fs及びラジアル荷重Frを軸受
に負荷し、回転軸15を回転させながら耐久寿命試験を
行った。尚、外輪12とハウジング14とはすきまばめ
により組み込まれ、ハウジング14の内径は外輪12の
外径Dに比べて10〜15μmだけ大きく形成されてい
る。また、内輪13と回転軸15とはしばりばめにより
嵌合され、内輪13の内径dは回転軸15の軸径に比べ
て8〜15μmだけ小さく形成されている。
【0095】耐久寿命試験の試験条件は以下の通りであ
る。
【0096】 〔耐久寿命試験〕 ラジアル荷重Fr :71500N アキシャル荷重Fa :15680N 回転軸の回転数n :2500rpm 潤滑種 :特性グリース(表5、表6参照) グリース量 :60g 軸受内部に注入する水分量:10cc/hr 表5は、本耐久寿命試験(実施例6を除く。)に使用さ
れた潤滑剤としての特性グリースの仕様を示したもので
ある。すなわち、40℃での動粘度197mm2/sec の
鉱油を基油に使用し、リチウムセッケンを増稠剤として
12%添加したグリースを作製した。グリースのpH値
は、次の方法で測定した。すなわち、トルエンと2−プ
ロパノールと水が体積比でトルエン:2−プロパノー
ル:水=500:495:5に調整された溶剤を作製
し、25℃において前記グリース0.1gを前記溶剤5
0mgに溶かし、pHメータで水素イオン指数pHを測
定し、該水素イオン指数pHが7.0の特性グリースを
得た。
【0097】
【表5】 表6は、実施例6の耐久寿命試験に使用された特性グリ
ースの仕様を示したものであり、表5と同様の溶剤を使
用してグリースを作製し、pHメータで水素イオン指数
pHを測定したところ、該水素イオン指数pHが5.4
の特性グリースを得た。
【0098】
【表6】 耐久寿命試験は、実施例1〜13及び比較例51〜55
の各軸受を各10個宛行い、最初に剥離した軸受の運転
時間を軸受寿命Lとし、軸受の定格寿命L10と比較して
軸受の耐久寿命を評価した。
【0099】軸受の定格寿命L10とは、同一サイズの同
一ロットの軸受を同一条件で回転させたとき、その全数
のうちの90%の個数の軸受が転がり疲れによる剥離を
起こさないで回転させることができる総回転数に相当す
る計算時間をいい、円錐ころ軸受の場合、基本動定格荷
重C(N)、ラジアル荷重Fr(N)、回転軸15の回
転数n(rpm)から数式(6)で示されることが知ら
れている。
【0100】 L10=(C/Fr)10/3×106 /(60n)…(6) 素材鋼や加工に関する現代技術を利用して作製した軸受
は、転動体の転動面及び軌道輪の軌道面間に十分な油膜
が形成されているときは定格寿命L10以下の運転時間で
剥離することは皆無であると考えられている。
【0101】したがって、潤滑剤中に水分が混入してい
る場合の転がり軸受の耐久性評価としては少なくとも定
格寿命L10を満足する必要がある。すなわち、外部から
軸受内部に水分が混入した場合、或いは外部から軸受内
部に水分が混入しなくとも潤滑剤中の水分を大きく受け
る状況で使用される場合(例えば、低速回転時、潤滑剤
の粘度が低いとき、振動を受けるとき等転動体の転動面
と軌道輪の軌道面との間における油膜形成が不十分な場
合、回転軸と内輪が強いつばりばめで嵌合されているた
めや、ハウジングの剛性が低いために前記軌道面に常時
引張応力が作用する場合)は、定格寿命L10以下の運転
時間で剥離の発生することが多い。したがって、耐久性
評価としては剥離の発生する時間が少なくとも定格寿命
10以上である必要がある。本実施例の場合、基本動定
格荷重C=143000N、ラジアル荷重Fr=715
00N、回転軸15の回転数n=2500rpmである
から、数式(6)より軸受の定格寿命L10は67時間で
あり、剥離発生までの寿命時間が定格寿命L10を超える
か否かが基準となる。
【0102】次に、表4及び表5を参照しながら実験結
果について説明する。
【0103】比較例51は、転動体と軌道輪が同一の化
学組成を有する材料で形成されているため、軌道面の非
金属介在物と金属素地との界面に形成される微小隙間に
おいて金属素地をアノードとし、炭化物をカソードとし
た局部腐食が進行するため、軸受寿命Lは23時間であ
り、定格寿命L10(=67時間)に比べ、大幅に下回り
早期剥離による軸受破損を避けることができないことが
判る。また、比較例52は、Ni,Cr、Moの各含有
率に関して転動体と軌道輪との間で多少の含有率偏差を
設けてはいるが、転動体及び軌道輪における金属素地
間、炭化物間における電気的な貴卑が明確となるほどの
差異はなく、比較例51に比し軸受寿命Lは改善されて
いるものの、軸受寿命Lは52時間に留まり、定格寿命
10以下であるため所望の耐久性を得ることができな
い。
【0104】さらに、比較例53は、Cr含有率偏差Δ
Cr及びMo含有率偏差ΔMoは貴卑が明確となるよう
な差異を設けており、転動面の炭化物上でカソード反応
が進行して腐食形態は接触腐食となるものの、Ni含有
率ΔNiの値が小さいため転動面の炭化物への電子供給
効率が低く、したがって軸受寿命Lに関してかなりの改
善がみられたが、依然として定格寿命L10を上回ること
ができず、所望の耐久性を得ることができない。
【0105】また、比較例54は、軌道輪側の炭化物が
貴となる方向で材料中にCr及びMoが添加されてお
り、腐食形態としては局部腐食となるため軸受寿命Lは
極端に短くなり、到底耐久性を満足することができな
い。さらに、比較例55においても、Ni含有率及びC
r含有率は転動体と軌道輪とで大差なく、また、Mo含
有率も軌道輪と転動体との間で電気化学的な貴卑が明確
となる程の差異がないため、軸受寿命Lは極めて短いと
いう実験結果を得た。
【0106】これに対して、実施例1〜13は、いずれ
も各含有率偏差ΔNi、ΔCr、及びΔMoが、夫々Δ
Ni≧+0.2wt%、ΔCr≦−0.2wt%、ΔMo≦
−0.2wt%の範囲内にあり、いずれも定格寿命L
10(=67時間)を大幅に上回り、十分な耐久性を有す
る転がり軸受を得ることができることが判る。
【0107】また、実施例1〜13の中でも、特にNi
含有率が0.25wt%以上、Cr含有率が0.7wt%以
上、Mo含有率が0.25wt%以上であって且つ潤滑剤
のpHが7.0とされた実施例4、5、7〜11及び1
3は寿命時間Lが200時間を超え、定格寿命L10の3
倍以上の軸受寿命Lを有することが判った。
【0108】さらに、転動面硬さから軌道面硬さを減じ
た硬さ偏差ΔHRCがΔHRC<0とされた実施例1、
8〜11及び実施例13は、軸受寿命Lがいずれも30
0時間を超え、硬さ偏差ΔHRCがΔHRC≧0の場合
に比べ、更なる軸受寿命Lの向上を図ることができるこ
とが判る。
【0109】また、実施例1と実施例3とは材料成分の
組成範囲が同一であり、転動体の焼戻温度を異ならせる
ことにより硬さ偏差ΔHRCを異ならせたものである。
この実施例1及び実施例3の比較からも硬さ偏差ΔHR
CをΔHRC<0として転動体硬さを軌道輪硬さよりも
低くすることにより、軸受寿命Lの向上を図ることがで
きることが判る。
【0110】以上より、ΔNi≧+0.2wt%、ΔCr
≦−0.2wt%、ΔMo≦−0.2wt%を満足し、且つ
ΔHRC<0とすることにより、十分なる耐久性を得る
ことができ、さらに好ましくは、Ni≧0.25wt%以
上、Cr≧0.7wt%以上、Mo≧0.25wt%以上と
することにより、より軸受寿命Lの向上した転がり軸受
を得ることができる。
【0111】また、潤滑剤であるグリースの水素イオン
指数pHについては、実施例5及び実施例6に示すよう
に、同一組成成分からなる軸受材料に対して水素イオン
指数pHが7.0の場合と5.4の場合とで比較実験し
た結果、水素イオン指数pHが5.4の場合は水素イオ
ン指数pHが7.0の場合に比べ軸受寿命Lが低下する
ことが判った。また、軌道輪の焼鈍処理の有無の効果に
ついても実施例1と実施例12とで比較することができ
る。すなわち、該焼鈍処理による脱水素作用により、軌
道輪中の水素含有量を低減することができ、軸受寿命L
の向上に寄与することができる。
【0112】また、実施例13のようにO、S及びTi
の総量が0.01wt%(100ppm)を超えた場合
は、O、S及びTiの総量が0.01wt%以下の場合に
比べ、軸受寿命Lが低下することが判る。
【0113】本実施例から明らかなように、少なくとも
定格寿命L10以上とし、更なる軸受寿命Lの向上を図る
ためには、まず第1にΔNi≧+0.2wt%、ΔCr≦
−0.2wt%、ΔMo≦−0.2wt%であることが重要
であり、さらに必要に応じてNi≧0.25wt%以上、
Cr≧0.7wt%以上、Mo≧0.25wt%以上、ΔH
RC<0、O、S及びTiの総量が0.01wt%以下で
あるのが望ましい。
【0114】さらに、軌道輪に浸炭処理又は浸炭窒化処
理を施す場合は、これらの処理後に焼鈍処理を施して軌
道輪の脱水素を行うのが望ましいことも判った。
【0115】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る転がり
軸受は、外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外輪と前
記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを備えた
転がり軸受において、前記軌道輪及び前記転動体を形成
する軌道輪材料及び転動体材料が少なくともNi、Cr
及びMoを含有すると共に、前記転動体材料のNi含有
率から前記軌道輪材料のNi含有率を減じたNi含有率
偏差ΔNiが、重量%で、ΔNi≧+0.2%、且つ、
前記転動体材料のCr含有率及びMo含有率から前記軌
道輪材料のCr含有率及びMo含有率を夫々減じたCr
含有率偏差ΔCr及びMo含有率偏差ΔMoが、重量%
で、ΔCr≦−0.2%、ΔMo≦−0.2%であるの
で、軌道面の非金属介在物と金属素地との界面における
金属素地側をアノードとし、転動面の炭化物をカソード
とした接触腐食となり、潤滑剤に水分が混入した場合で
あっても軌道輪への水素吸収に起因した腐食が抑制さ
れ、したがって軸受の早期剥離を回避して転がり軸受の
耐久性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】軌道輪及び転動体と曲率半径の関係を説明する
ための図である。
【図2】耐久試験装置の要部断面図である。
【符号の説明】
11 転動体 12 外輪 13 内輪

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外
    輪と前記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを
    備えた転がり軸受において、 前記転動体材料のNi含有率から前記軌道輪材料のNi
    含有率を減じたNi含有率偏差ΔNiが、重量%で、 ΔNi≧+0.2%、 且つ、前記転動体材料のCr含有率及びMo含有率から
    前記軌道輪材料のCr含有率及びMo含有率を夫々減じ
    たCr含有率偏差ΔCr及びMo含有率偏差ΔMoが、
    重量%で、 ΔCr≦−0.2%、ΔMo≦−0.2% であることを特徴とする転がり軸受。
JP19076297A 1997-07-02 1997-07-02 転がり軸受 Pending JPH1122739A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19076297A JPH1122739A (ja) 1997-07-02 1997-07-02 転がり軸受

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19076297A JPH1122739A (ja) 1997-07-02 1997-07-02 転がり軸受

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1122739A true JPH1122739A (ja) 1999-01-26

Family

ID=16263312

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19076297A Pending JPH1122739A (ja) 1997-07-02 1997-07-02 転がり軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1122739A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3646467B2 (ja) 転がり軸受
JP3593668B2 (ja) 転がり軸受
US6848832B2 (en) Surface-treated rolling bearing and manufacturing method thereof
JP4423754B2 (ja) 転動軸の製造方法
US6409846B1 (en) Rolling bearing
US5403545A (en) Bearing steel
WO2015128973A1 (ja) 転がり軸受
JP6040700B2 (ja) 転がり軸受
JPH11236920A (ja) 転がり軸受
US6602360B2 (en) Rolling bearing
JP4114218B2 (ja) 転がり軸受
JP4998054B2 (ja) 転がり軸受
WO2001018273A1 (fr) Roulement a rouleaux
JP2000179559A (ja) 転がり軸受
JPH1122733A (ja) 転がり軸受
JPH1122739A (ja) 転がり軸受
JP2004176156A (ja) 転がり軸受
JP6015251B2 (ja) 転がり軸受
EP3677804B1 (en) Rolling component, rolling bearing, rolling bearing for automobile electrical auxiliary equipment, and rolling bearing for speed increasing/decreasing machine
JP2009236259A (ja) 電食防止用絶縁転がり軸受
JP2006045591A (ja) 円すいころ軸受
JP2010002032A (ja) トランスミッション用転がり軸受
JP2000257636A (ja) 転がり軸受
JP2007132520A (ja) 転がり軸受
JP2002242942A (ja) 転がり軸受