JPH11158200A - ヒト成長ホルモン・亜鉛複合体及びその用途 - Google Patents

ヒト成長ホルモン・亜鉛複合体及びその用途

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JPH11158200A
JPH11158200A JP10269389A JP26938998A JPH11158200A JP H11158200 A JPH11158200 A JP H11158200A JP 10269389 A JP10269389 A JP 10269389A JP 26938998 A JP26938998 A JP 26938998A JP H11158200 A JPH11158200 A JP H11158200A
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growth hormone
human growth
zinc
sustained
acid
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JP10269389A
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Yutaka Yamagata
豊 山縣
Masafumi Omae
雅文 御前
Susumu Iwasa
進 岩佐
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
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Takeda Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】封入率を高め、初期放出の抑制されたヒト成長
ホルモン含有徐放性製剤の提供。 【解決手段】ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.6
から約1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモン
・亜鉛複合体及び生体内分解性ポリマーを含有してなる
徐放性製剤。 【効果】本発明によれば、製剤操作が容易で、ヒト成長
ホルモンの封入率を高め、初期放出の抑制された安定し
た持続性を示すヒト成長ホルモン含有徐放性製剤が得ら
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト成長ホルモン
と亜鉛とを約1:1.6から約1:2.4のモル比で含有
するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体、該成長ホルモン・
亜鉛複合体と生体内分解性ポリマーとを含有してなる徐
放性製剤等に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒト成長ホルモン(以下、GHと略記す
ることがある)は、近年では遺伝子工学的手法により大
量に生産することが可能であり、医療分野において従来
の下垂体性小人症だけでなく、ターナー症候群、小児慢
性腎疾患、軟骨異栄養症や成人GH分泌不全症にも臨床
応用される等幅広く使用されている。また、高齢化社会
において顕著な骨粗鬆症や、更には鬱血性心疾患への適
用も期待されている。 GHは、その生体内での安定性を考慮して、従来より筋
肉内あるいは皮下への注射による反復投与が用いられて
おり、また長期に亘って投与されることが多い為、患者
の肉体的負担は非常に大きいという問題がある。例えば
下垂体性小人症の場合には、乳幼児あるいは若年患者に
対して、数カ月から10年以上という長期に亘る連日皮
下投与がなされているのが実情である。一方、数週間か
ら数カ月に一度の投与で十分な薬効を発揮するGH含有
徐放性製剤の開発が報告されている(S.T.P.Pha
rma.Sci., 4(6), 437−441頁, 199
4年;Nature Med., 2(7), 795−79
9頁, 1996年;J.Pharm.Exp.Ther.,
281, 1431−1439頁, 1997年;WO 9
4/12158;WO 95/29664;WO 97/
01331)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のGH含有徐放性
製剤では、主薬であるGHを水溶液(水相)とした後に
ポリマーを溶解した有機溶媒(油相)に添加して、いわ
ゆるW/Oエマルションを形成し、これを用いて徐放性
製剤を製造していたが、製造工程あるいは保管中におけ
るGHの変性が顕著であり、また十分な封入率及び徐放
性が得られない。一方、GH粉体をポリマーを溶解した
有機溶媒(油相)に直接添加し、分散させたいわゆるS
/O分散液を用いて徐放性製剤を製造する方法もある
が、S/O分散液を液体窒素中に噴霧することにより安
定性を確保することが必要であり、大量生産には不適当
である。また、GHは一般に粒径が大きく粉砕して用い
られるが、この粉砕時に大きな活性低下が生じるほか、
高GH含量の均一S/O型分散液の調製が困難であっ
た。 このように、製剤工程中でのGHの安定性の保持やGH
の活性低下の少ない微粒化は非常に困難であり、収率の
良い、しかも高GH含量の均一かつ安定した品質の徐放
性製剤をGHの活性を低下させることなく大量生産する
ことはきわめて困難であった。そこで、これらの困難を
克服した臨床上有用な長期に亘る安定した徐放性を示す
ヒト成長ホルモンの製剤及びこのような徐放性製剤を収
率良く大量に製造する方法が望まれる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは種々鋭意研
究を進め、GHと亜鉛とを約1:1.6から約1:2.4
のモル比で含有するGH・亜鉛複合体を初めて製造し、
この複合体が予想外にも、実質的に水溶性で、GHが活
性低下することなく、GH自体に比べて有利に粉体の微
粒化が可能であり、しかも得られる粒子径が小さいGH
・亜鉛複合体を用いて徐放性製剤を製造すると、製造工
程中にGHが変性することなく、GH封入率の向上及び
徐放性の改善した安定な品質の徐放性製剤を大量生産で
きること等を見出した。即ち、本発明は(1)ヒト成長
ホルモンと亜鉛とを約1:1.6から約1:2.4のモル
比で含有するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体、(2)水
溶性である上記(1)記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複
合体、(3)約10μm以下の平均粒子径を有する上記
(1)記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複合体、(4)上
記(1)記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複合体と生体内
分解性ポリマーとを含有してなる徐放性製剤、(5)生
体内分解性ポリマーが脂肪族ポリエステルである上記
(4)記載の徐放性製剤、(6)脂肪族ポリエステルが
乳酸/グリコール酸ポリマーである上記(5)記載の徐
放性製剤、(7)乳酸/グリコール酸ポリマーの組成比
(モル%)が100/0ないし約40/60である上記
(6)記載の徐放性製剤、
【0005】(8)脂肪族ポリエステルの重量平均分子
量が約3,000ないし約20,000である上記(5)
記載の徐放性製剤、(9)脂肪族ポリエステルが多価金
属との塩である上記(5)記載の徐放性製剤、(10)
多価金属が亜鉛である上記(9)記載の徐放性製剤、
(11)マイクロカプセルである上記(4)記載の徐放
性製剤、(12)マイクロカプセルが注射用である上記
(11)記載の徐放性製剤、(13)ヒト成長ホルモン
の初期放出率が約50%以下である上記(4)記載の徐
放性製剤、(14)ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:
1.6から約1:2.4のモル比で混合することを特徴と
するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体の製造方法、(1
5)ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.6から約
1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモン・亜鉛
複合体を形成し、粉砕することを特徴とする微粒化され
たヒト成長ホルモンの製造方法、(16)ヒト成長ホル
モンと亜鉛とを約1:1.6から約1:2.4のモル比で
含有するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体の、ヒト成長ホ
ルモン含有徐放性製剤製造のための使用、(17)ヒト
成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.6から約1:2.4の
モル比で含有するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体を、生
体内分解性ポリマーを含む油相に分散して得られたS/
O型分散液を水相に添加し、S/O/W型エマルション
として水中乾燥に付すことを特徴とする徐放性製剤の製
造法、(18)上記(1)記載のヒト成長ホルモン・亜
鉛複合体を含有することを特徴とする医薬製剤、及び
(19)上記(1)記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複合
体を含有することを特徴とする下垂体小人症の予防治療
剤等を提供する。
【0006】本発明で用いられるGHは、天然型(抽出
物等)あるいは遺伝子組換え型(Nature 281
巻,544頁(1979)、同293巻,408頁(1
981)、Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,80巻,397頁(1983)、Biotech
nol. 5巻,161頁(1981)等)のいずれでも
よいが、安全性及び品質の面から遺伝子組換え型GHが
好ましい。また、本発明では、GHとしてこれらのムテ
イン、誘導体、類縁体及び活性フラグメント(J.Bi
ol.Chem., 253巻,2679頁(1978)、
B.B.R.C. 92巻,511頁(1980)、End
ocrinol., 109巻,1301頁(198
1)、Protein Eng. 3巻,49頁(198
9)等)等を使用してもよい。本発明のGH・亜鉛複合
体は、最終的にGHと亜鉛とのモル比が約1:1.6か
ら約1:2.4になる限りは、如何なる合成法で合成さ
れていてもよく、例えば複合体一般に用いられる合成法
に従って合成されてもよい。通常、GHと例えば水溶性
亜鉛塩とを接触させること等で、本発明のGH・亜鉛複
合体を得ることができる。この接触(反応)は、溶媒特
に水性溶媒中で行うことが好ましい。接触時間は約1分
ないし約1時間で、接触温度は約4ないし約37℃(好
ましくは常温)で行うことができる。この反応に用いら
れる水溶性亜鉛塩としては、例えば亜鉛と無機酸との塩
あるいは亜鉛と有機酸との塩等が挙げられ、無機酸とし
ては例えば塩酸、硫酸、硝酸等が、有機酸としては脂肪
族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。ここ
において有機酸として用いられる脂肪族カルボン酸とし
ては、例えば脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン
酸、脂肪族トリカルボン酸等が挙げられる。これらの脂
肪族カルボン酸は、飽和あるいは不飽和のいずれであっ
てもよい。脂肪族カルボン酸は、好ましくは炭素数2な
いし9の脂肪族カルボン酸等である。
【0007】このような脂肪族モノカルボン酸として
は、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族モノカルボン
酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプ
ロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプ
リン酸等)及び炭素数2ないし9の不飽和脂肪族モノカ
ルボン酸(例えば、アクリル酸、プロピオール酸、メタ
クリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等)が挙げられ
る。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば炭素数2ない
し9の飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コ
ハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等)及び
炭素数2ないし9の不飽和脂肪族ジカルボン酸(例え
ば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸
等)が挙げられる。脂肪族トリカルボン酸としては、例
えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族トリカルボン酸(例
えば、トリカルバリル酸、1,2,3−ブタントリカルボ
ン酸等)が挙げられる。上記した脂肪族カルボン酸は、
水酸基を1又は2個有していてもよく、このような例と
しては、例えばグリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タ
ルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ
る。脂肪族カルボン酸としては、好ましくは脂肪族モノ
カルボン酸である。脂肪族カルボン酸は、更に好ましく
は炭素数2ないし9の脂肪族モノカルボン酸、特に好ま
しくは炭素数2又は3の飽和脂肪族モノカルボン酸であ
る。脂肪族カルボン酸の特に好ましい具体例としては、
例えば酢酸等が挙げられる。また、前記有機酸として用
いられる芳香族カルボン酸としては、例えば安息香酸、
サリチル酸等が挙げられ、好ましくは安息香酸である。
【0008】より具体的には、本発明のGH・亜鉛複合
体は、例えばGHと水溶性亜鉛塩とを水性溶媒(例え
ば、GH及び水溶性亜鉛塩の溶解度に影響を与えない程
度(例えば約1ないし10%(W/W))のエタノール又
はアセトンを含有していてもよい水溶液等、好ましくは
水等)中でGHと亜鉛が約1:1.6から約1:2.4、
好ましくは約1:1.8から約1:2.2の混合比(モル
比)になるように混合することにより製造される。該複
合体は、GHと亜鉛との分子間の結合により生じた化合
物(錯塩、複塩、塩、有機金属化合物等)又は結合様式
の異なる化合物の混在物であってもよい。GHと亜鉛と
の組成比(モル比)は約1:1.6から約1:2.4の範
囲、好ましくは約1:1.8から約1:2.2、より好ま
しくは約1:2がよい。また、本発明のGH・亜鉛複合
体は、約1:1.6から約1:2.4のモル比で含有され
るGHと亜鉛の総てが複合体を形成していることが好ま
しいが、GH及び/又は亜鉛の一部分が複合体を形成せ
ずに含まれていてもよい。上記混合時の水溶液のpH
は、GHの生物活性を損なわず、またGH及び亜鉛塩そ
れぞれの溶解性を大きく減少させないpHが採用され
る。混合操作は、通常蒸留水中で実施されるが、必要に
応じて弱酸性、中性あるいは弱アルカリ性(pH6ない
し9)に調整した水溶液中で実施してもよい。またGH
及び用いる水溶性亜鉛塩の水中における濃度は、それぞ
れ単独の溶解度範囲内であればいずれでもよい。このよ
うにして得られたGH・亜鉛複合体水溶液は、沈殿がほ
とんどみられず、実質的に水溶性である。本発明のGH
・亜鉛複合体が水溶性であるとは、例えば常温で水(p
H6ないし8)1mlに該複合体が約2mg以上溶解す
ればよい。このGH・亜鉛複合体水溶液は、真空乾燥あ
るいは凍結乾燥し粉末化した後、医薬製剤、好ましくは
徐放性製剤の製造用として用いられる。得られるGH・
亜鉛複合体の粉末は非常に嵩が低く、亜鉛を含まないフ
リーのGHの嵩高い粉末に比べて取り扱いが容易で、徐
放性製剤を大量生産する上できわめて有利である。具体
的には、GH・亜鉛複合体の平均粒子径は約10μm以
下、好ましくは約4ないし約7μmの粉末とすることが
できる。また後述する生体内分解性ポリマーを溶解した
有機溶媒液に分散させた時、その粒子径が小さい為、G
Hの封入率の向上及び徐放性の改善にもきわめて有利で
ある。具体的には、徐放性製剤において、GHの封入率
として約90%以上を、GHの徐放性として初期放出率
約50%以下を達成することができる。
【0009】本発明の徐放性製剤中、GH・亜鉛複合体
の含量は、一般的に約0.1ないし約40%(W/
W)、好ましくは約1ないし約20%(W/W)であ
る。生体内分解性ポリマーとしては、水に難溶又は不溶
である高分子重合物(ポリマー)、例えば脂肪族ポリエ
ステル〔例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例え
ば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、ヒドロ
キシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸等)、ヒドロキ
シトリカルボン酸(例えば、クエン酸等)等の1種以上
から合成された単独重合体(ホモポリマー)、共重合体
(コポリマー)、あるいはこれらの混合物〕、ポリ−α
−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例えば、
ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸等)が挙げられ
る。これらは、適宜の割合で混合して用いてもよい。重
合の形式はランダム、ブロック、グラフトの何れでもよ
い。生体内分解性ポリマーは、好ましくは脂肪族ポリエ
ステル〔例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例え
ば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、ヒドロ
キシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸等)、ヒドロキ
シトリカルボン酸(例えば、クエン酸等)等の1種以上
から合成されたホモポリマー、コポリマー、あるいはこ
れらの混合物〕である。上記した脂肪族ポリエステル
中、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール
酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)の1種以上から合成され
たホモポリマー、コポリマーが生体内分解性及び生体適
合性の観点から好ましい。脂肪族ポリエステルは、特に
好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリ
コール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)の1種以上から合
成されたコポリマーである。また、これらのコポリマー
は混合して使用されてもよい。
【0010】上記α−ヒドロキシカルボン酸類はD−
体、L−体、及びD、L−体の何れでもよいが、D−体
/L−体(モル/モル%)が約75/25ないし約25
/75の範囲のものが好ましい。D−体/L−体(モル
/モル%)は、更に好ましくは約60/40ないし約3
0/70である。上記α−ヒドロキシカルボン酸類のコ
ポリマーの例としてはグリコール酸と他のα−ヒドロキ
シ酸類との共重合体が挙げられ、該α−ヒドロキシ酸類
としては乳酸、2−ヒドロキシ酪酸等が好ましい。α−
ヒドロキシカルボン酸類のコポリマーは、好ましくは乳
酸−グリコール酸コポリマー、2−ヒドロキシ酪酸−グ
リコール酸コポリマー等であり、特に好ましくは乳酸−
グリコール酸コポリマー等である。
【0011】乳酸−グリコール酸ホモポリマー又はコポ
リマー(以下、両者を総称して単に乳酸−グリコール酸
ポリマー又はPLGAと称する)において、その組成比
(乳酸/グリコール酸比、以下L/Gと略記することが
ある)(モル/モル%)は約100/0ないし約40/
60が好ましい。該組成比は、更に好ましくは約90/
10ないし約45/55である。組成比は、特に好まし
くは約80/20ないし約45/55である。乳酸−グ
リコール酸ポリマーの重量平均分子量は約3,000な
いし約20,000、好ましくは約3,000ないし約1
6,000、更に好ましくは約6,000ないし約14,
000である。また、乳酸−グリコール酸ポリマーの分
散度(重量平均分子量/数平均分子量)は約1.2ない
し約4.0が好ましい。更に好ましくは、約1.5ないし
約3.5である。乳酸−グリコール酸ポリマーは、自体
公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に
記載の方法に従って合成できる。該ポリマーは無触媒脱
水重縮合で合成されたものが好ましい。2−ヒドロキシ
酪酸−グリコール酸コポリマーにおいて、グリコール酸
が約10ないし約75モル%、残りが2−ヒドロキシ酪
酸である場合が好ましい。更に好ましくは、グリコール
酸が約20ないし約75モル%の場合である。特に好ま
しくは、グリコール酸が約30ないし約70モル%の場
合である。2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸コポリマ
ーの重量平均分子量は、約2,000ないし約20,00
0が好ましい。2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸コポ
リマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は約
1.2ないし約4.0が好ましい。分散度は、特に好まし
くは約1.5ないし約3.5である。2−ヒドロキシ酪酸
−グリコール酸コポリマーは公知の製造法、例えば特開
昭61−28521号及び特開平5−112465号公
報に記載の方法に従って合成できる。該共重合体は無触
媒脱水重縮合で合成されたものが好ましい。上記α−ヒ
ドロキシカルボン酸類のホモポリマーの好ましい例とし
ては乳酸のホモポリマー(ポリ乳酸)が挙げられる。ポ
リ乳酸の重量平均分子量は約3,000ないし約20,0
00、好ましくは約3,000ないし約14,000であ
る。ポリ乳酸は、自体公知の製造法、例えば特開昭61
−28521号公報に記載の方法に従って合成できる。
該ホモポリマーは無触媒脱水重縮合で合成されたものが
好ましい。
【0012】上記した2−ヒドロキシ酪酸−グリコール
酸コポリマーは、更にポリ乳酸と混合して使用してもよ
い。該ポリ乳酸としては、D−体、L−体及びこれらの
混合物の何れでもよいが、D−体/L−体(モル/モル
%)が約75/25ないし約20/80の範囲のものが
好ましい。D−体/L−体(モル/モル%)は、更に好
ましくは約60/40ないし約25/75である。D−
体/L−体(モル/モル%)は、特に好ましくは約55
/45ないし約25/75である。該ポリ乳酸の重量平
均分子量は、約1,500ないし約20,000、好まし
くは約1,500ないし約10,000である。また、ポ
リ乳酸の分散度は約1.2ないし約4.0が好ましい。分
散度は、特に好ましくは約1.5ないし約3.5である。
ポリ乳酸の製造法については、乳酸の二量体であるラク
タイドを開環重合する方法と乳酸を脱水重縮合する方法
が知られている。本発明で使用する比較的低分子のポリ
乳酸を得るためには、乳酸を直接脱水重縮合する方法が
好ましい。該方法は、例えば特開昭61−28521号
公報に記載されている。2−ヒドロキシ酪酸−グリコー
ル酸コポリマーとポリ乳酸とを混合して使用する場合、
その混合比は例えば約10/90ないし約90/10
(重量%)である。混合比は、好ましくは約20/80
ないし約80/20である。混合比は、更に好ましくは
約30/70ないし約70/30である。
【0013】本明細書中、重量平均分子量とは、重量平
均分子量が120,000、52,000、22,00
0、9,200、5,050、2,950、1,050、5
80、162の9種類のポリスチレンを基準物質として
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で
測定したポリスチレン換算の分子量をいう。GPC測定
により数平均分子量も計算される。分散度は重量平均分
子量と数平均分子量とから計算される。GPC測定はG
PCカラムKF804L x 2(昭和電工製)、RIモ
ニターL−3300(日立製作所製)を使用し、移動相
としてクロロホルムを用いる。
【0014】上記した無触媒脱水重縮合で合成される共
重合体は、一般的に末端に遊離のカルボキシル基を有す
る。本発明において、生体内分解性ポリマーは、好まし
くは末端に遊離のカルボキシル基を有する。末端に遊離
のカルボキシル基を有する生体内分解性ポリマーとは、
GPC測定による数平均分子量と末端基定量による数平
均分子量とがほぼ一致する生体内分解性ポリマーであ
る。末端基定量による数平均分子量は、以下のようにし
て算出される。約1ないし3gの生体内分解性ポリマー
をアセトン(25ml)とメタノール(5ml)との混合
溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこ
の溶液中のカルボキシル基を0.05Nアルコール性水
酸化カリウム溶液で室温での撹拌下、速やかに滴定して
末端基定量による数平均分子量を次式で算出する。 末端基定量による数平均分子量 = 20,000 A/B A:生体内分解性ポリマーの質量 (g) B:滴定終点までに添加した0.05Nアルコール性水
酸化カリウム溶液 (ml) 例えば、1種類以上のα−ヒドロキシ酸類から無触媒脱
水重縮合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を
有するポリマーでは、GPC測定による数平均分子量と
末端基定量による数平均分子量とがほぼ一致する。これ
に対し、環状二量体から触媒を用いて開環重合法で合成
され、末端に遊離カルボキシル基を本質的には有しない
ポリマーでは、末端基定量による数平均分子量がGPC
測定による数平均分子量を大きく上回る。この相違によ
って末端に遊離のカルボキシル基を有するポリマーは末
端に遊離カルボキシル基を有しないポリマーと明確に区
別することができる。
【0015】末端基定量による数平均分子量が絶対値で
あるのに対してGPC測定による数平均分子量は各種分
析、解析条件(例えば移動相の種類、カラムの種類、基
準物質、スライス幅の選択、ベースラインの選択等)に
よって変動する相対値であるため、一義的な数値化は困
難であるが、例えばGPC測定による数平均分子量と末
端基定量による数平均分子量とがほぼ一致するとは、末
端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均
分子量の約0.5ないし約2倍の範囲内であることを意
味する。好ましくは、末端基定量による数平均分子量が
GPC測定による数平均分子量の約0.8ないし約1.5
倍の範囲内である。また、末端基定量による数平均分子
量がGPC測定による数平均分子量を大きく上回ると
は、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による
数平均分子量の約2倍を越える場合をいう。また、本発
明の生体内分解性ポリマーとしては、上記した生体内分
解性ポリマーの金属塩も好ましく用いられる。例えば、
WO 97/01331号公報に記載の各種生体分解性
ポリマーの多価金属塩、好ましくは二価金属塩、とりわ
け乳酸−グリコール酸共重合体の亜鉛塩が好ましく用い
られる。これら生体内分解性ポリマーはWO 97/0
1331号公報に記載の方法及びこれに準じる変法によ
り製造することができる。 また、生体内分解性ポリマーの多価金属塩が亜鉛の場合
には、生体分解性ポリマーと酸化亜鉛とを有機溶媒中で
反応させることによって製造することもできる。該製造
法においては、まず生体内分解性ポリマーと酸化亜鉛と
を有機溶媒中に共存させて、生体内分解性ポリマー・酸
化亜鉛複合体の有機溶媒溶液を製造する。この際、生体
内分解性ポリマーの溶液中濃度は分子量、有機溶媒等の
種類によって異なるが、例えば約0.1ないし約80%
(W/W)、好ましくは約1ないし約70%(W/
W)、更に好ましくは約2ないし約60%(W/W)で
ある。また添加する酸化亜鉛量は、有機溶媒の種類によ
って異なるが、例えば生体内分解性ポリマー量の約0.
001ないし約2%(W/W)、好ましくは約0.01
ないし約1.5%(W/W)、更に好ましくは約0.1
ないし約1%(W/W)である。有機溶媒への生体内分
解性ポリマー及び酸化亜鉛の添加順序は、生体内分解性
ポリマーの有機溶媒溶液に酸化亜鉛を粉末状であるいは
該有機溶媒に懸濁した状態で添加してもよく、逆に酸化
亜鉛の有機溶媒懸濁液中に生体内分解性ポリマーの有機
溶媒溶液を添加してもよい。また、両者を粉末状で混和
後、有機溶媒を添加してもよい。
【0016】PLGA・酸化亜鉛複合体等の生体内分解
性ポリマー・酸化亜鉛複合体の溶液を、生体内分解性ポ
リマーと酸化亜鉛とから製造する方法の条件は、用いる
生体内分解性ポリマーの種類、酸化亜鉛の粒子径、有機
溶媒の種類、これらの組成等により適宜変更されるが、
例えばポリマーとしてPLGAを用いる場合、通常、約
0ないし約30℃好ましくは約2ないし約25℃で、約
1ないし約168時間、好ましくは約12ないし約96
時間、更に好ましくは約24ないし約48時間反応させ
ることにより、PLGA・酸化亜鉛複合体を得ることが
できる。ここで、PLGA・酸化亜鉛複合体の生成は、
添加時には懸濁状態である酸化亜鉛が有機溶媒に溶解
し、澄明な溶液状態となることにより肉眼的に確認する
ことが可能であり、前記範囲に限定される事なく、目視
による液状の観察を指標として、反応時間を決定しても
よい。 同反応は、PLGAと酸化亜鉛とを単に有機溶媒中に共
存させることによっても進行するが、適当な撹拌、振と
う手段により、撹拌、振とう下で反応させることは、反
応時間短縮において有利である。また、同様に超音波照
射下で反応させることも好ましい。得られた生体内分解
性ポリマー・酸化亜鉛複合体は、本発明において好まし
くは有機溶媒溶液の状態で次工程に用いられるが、所望
によっては有機溶媒を除去し、一旦固体状としてもよ
い。
【0017】本発明の徐放性製剤は、GHと亜鉛とを約
1:1.6から約1:2.4のモル比で含有するGH・亜
鉛複合体(好ましくは粉末)を、生体内分解性ポリマー
(以下、生体内分解性ポリマーが金属塩の場合も含めて
「生体内分解性ポリマー」と略称する。)を溶解した有
機溶媒液(油相)に分散させた分散液(好ましくはS/
O型分散液)から溶媒を除去することにより製造され
る。その製造法としては、例えば水中乾燥法、相分離
法、噴霧乾燥法あるいはこれらに準ずる方法等が挙げら
れる。以下に、徐放性製剤として、例えばマイクロカプ
セルを製造する場合について記述する。(a)水中乾燥
法(S/O/W法):本方法においては、まず生体内分
解性ポリマーの有機溶媒溶液を作製する。本発明の徐放
性製剤の製造時に使用する有機溶媒は、沸点が120℃
以下であることが好ましい。該有機溶媒としては、例え
ばハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロ
ロホルム、四塩化炭素)、アルコール類(例えば、エタ
ノール、メタノール)、アセトニトリル等が挙げられ
る。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。有機
溶媒は、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリル、
特に好ましくはジクロロメタンが用いられる。生体内分
解性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、生体内分解性
ポリマーの分子量、有機溶媒の種類等によって異なる
が、一般的には約0.01ないし約80%(W/W)か
ら選ばれる。更に好ましくは約0.1ないし約70%
(W/W)、特に好ましくは約1ないし約60%(W/
W)である。
【0018】このようにして得られた生体内分解性ポリ
マーの有機溶媒溶液(油相)中に、GH・亜鉛複合体を
添加し分散させる。この際、GH・亜鉛複合体の添加量
は、生体内分解性ポリマーに対するGH・亜鉛複合体の
重量比の上限が約0.4まで、好ましくは約0.2までと
なるようにする。また、分散方法として、GH・亜鉛複
合体粉末として添加して均一分散させてもよく、また、
GH・亜鉛複合体の凍乾乾燥した塊を直接添加し、油相
中で粉砕・混合することにより均一分散させてもよい。
次いでこのようにして調製された有機溶媒分散液(S/
O型分散液)を更に水性溶媒(水相)中に添加して、タ
ービン型撹拌器あるいは超音波装置等を用いてS/O/
W型エマルションを形成させる。以後、油相溶媒を蒸発
させマイクロカプセルを製造する。この際の水相体積
は、一般的には油相体積の約1ないし約10,000倍
から選ばれる。更に好ましくは約5ないし約2,000
倍から選ばれる。特に好ましくは約10ないし約1,0
00倍から選ばれる。上記外水相中には、乳化剤を加え
てもよい。該乳化剤としては、一般的に安定なS/O/
W型エマルションを形成できるものであれば何れでもよ
い。乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、非
イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導
体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カ
ルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒア
ルロン酸等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて使
用してもよい。外水相中の乳化剤の濃度は、好ましくは
約0.001ないし約20%(W/V)である。更に好
ましくは約0.01ないし約10%(W/V)、特に好
ましくは約0.05ないし約5%(W/V)である。
【0019】このようにして得られたマイクロカプセル
は、遠心分離あるいは濾過操作により分取した後、マイ
クロカプセルの表面に付着している乳化剤等を蒸留水に
よる洗浄で除去し、再び蒸留水等に分散して凍結乾燥す
る。その後必要であれば、加温してマイクロカプセル中
の水分及び有機溶媒を更に除去する。減圧下に加温して
もよい。加温条件としては、用いた生体内分解性ポリマ
ーのガラス転移温度以上で、マイクロカプセルの各粒子
が互いに付着しない程度の温度で加熱乾燥する。好まし
くは、生体内分解性ポリマーのガラス転移温度からガラ
ス転移温度より約30℃高い温度の範囲で加熱乾燥す
る。ここにおいてガラス転移温度とは、示差走査熱量計
を用い、加温速度毎分約10ないし約20℃で昇温した
際に得られる中間点を云う。
【0020】(b)相分離法(コアセルベーション法) 本法においては、前記のS/O型分散液にコアセルベー
ション剤を撹拌下徐々に加えマイクロカプセルを析出、
固化させる。該コアセルベーション剤は、上記分散液の
約0.01ないし約1,000倍の体積量が加えられる。
更に好ましくは、約0.05ないし約500倍の体積量
である。特に好ましくは、約0.1ないし約200倍の
体積量である。コアセルベーション剤としては、生体内
分解性ポリマーを溶解する有機溶媒と混和する高分子
系、鉱物油系又は植物油系の化合物で使用した生体内分
解性ポリマーを溶解しないものであればよい。具体的に
は、例えばシリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿
実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサ
ン、n−ヘプタン等が用いられる。これらは2種以上混
合して用いてもよい。このようにして得られたマイクロ
カプセルを濾過分取した後、ヘプタン等により繰り返し
洗浄してコアセルベーション剤を除去する。更に、前記
(a)と同様に洗浄し、次いで凍結乾燥する。水中乾燥
法及びコアセルベーション法でのマイクロカプセルの製
造では、粒子同士の凝集を防ぐために凝集防止剤を加え
てもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトー
ル、ラクトース、ブドウ糖、デンプン類(例えば、コー
ンスターチ等)、ヒアルロン酸あるいはこのアルカリ金
属塩等の水溶性多糖、グリシン、フィブリン、コラーゲ
ン等の蛋白質、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム
等の無機塩類等が適宜用いられる。
【0021】(c)噴霧乾燥法 本法においては、前記S/O型分散液を、ノズルを用い
てスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内へ噴霧
し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発さ
せ、マイクロカプセルを製造する。該ノズルとしては、
例えば二流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型
等がある。この際所望により、上記の分散液と同時に、
マイクロカプセル粒子同志の凝集防止を目的として前記
凝集防止剤の水溶液を別ノズルより噴霧することも有効
である。このようにして得られたマイクロカプセルは、
前記(a)と同様にして洗浄し、必要であれば加温(要
すれば減圧下)により、水分及び有機溶媒を更に除去す
る。
【0022】本発明で用いられる徐放性製剤は微粒子状
であることが好ましい。なぜならば徐放性製剤は、皮下
あるいは筋肉内注射に通常使用される注射針を通して投
与される方が、患者に対し過度の苦痛を与えることがな
いからである。該徐放性製剤の粒子径は、例えば平均粒
子径として約0.1ないし約300μm、好ましくは約
1ないし約150μm、特に好ましくは約2ないし約1
00μmである。本明細書において、マイクロカプセル
とは薬物(GH・亜鉛複合体)とマイクロカプセル基剤
(生体内分解性ポリマー)とを含有する微粒子であれば
よく(マイクロスフィアとも称する)、その具体例とし
ては、例えば1個の粒子中に1個の薬物コアを含有する
マイクロカプセル、1個の粒子中に多数の薬物コアを含
有する多核マイクロカプセルが挙げられる。
【0023】本発明の徐放性製剤は、例えばマイクロカ
プセルとして、あるいはマイクロカプセルを原料物質と
して種々の剤形に製剤化し、非経口剤(例えば、筋肉
内、皮下、臓器等への注射剤又は埋め込み剤、鼻腔、直
腸、子宮等への経粘膜剤等)、経口剤(例えば、カプセ
ル剤(例えば、硬カプセル剤、軟カプセル剤等)、顆粒
剤、散剤等の固形製剤、懸濁剤等の液剤等)等として投
与することができる。本発明において、徐放性製剤は特
に注射用であることが好ましい。例えば、徐放性製剤が
マイクロカプセルである場合、マイクロカプセルを分散
剤(例えば、Tween 80(バイオラッド社)、H
CO−60(日光ケミカルズ)等の界面活性剤、カルボ
キシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒアル
ロン酸等の多糖類等)、保存剤(例えば、メチルパラベ
ン、プロピルパラベン等)、等張化剤(例えば、塩化ナ
トリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)
等と共に水性懸濁剤とすることにより実用的な注射用徐
放製剤が得られる。また、ゴマ油、コーン油等の植物油
あるいはこれにレシチン等のりん脂質を混合したもの、
あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、ミグリオ
ール812(Huls.A.G.))と共に分散して油
性懸濁剤として実際に使用できる徐放性注射剤とする。
【0024】徐放性製剤が例えばマイクロカプセルであ
る場合、マイクロカプセルの粒子径は、懸濁注射剤とし
て使用する場合には、その分散度、通針性を満足する範
囲であればよく、例えば平均粒子径として約0.1ない
し約300μmの範囲が挙げられる。粒子径は、好まし
くは約1ないし約150μm、特に好ましくは約2ない
し約100μmの範囲である。上記したマイクロカプセ
ルを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方
法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等
が挙げられるが、特に限定されない。
【0025】本発明の徐放性製剤は、低毒性で哺乳動物
(例えば、ヒト、牛、豚、犬、ネコ、マウス、ラット、
ウサギ等)に対して安全に用いることができる。本発明
の徐放性製剤は、成長ホルモン分泌不全症、ターナー症
候群、下垂体性小人症、慢性腎疾患、軟骨異栄養症、成
人性下垂体不全症、ダウン症候群、シルバー症候群、骨
形成不全症、骨粗鬆症、あるいは若年性慢性関節症、更
には鬱血性心不全症等の治療又は予防に有効である。徐
放性製剤の投与量は、放出の持続時間、対象疾患、対象
動物等により異なるが、GHの有効濃度が体内で保持さ
れる量であればよい。例えば、ヒト成長ホルモン徐放性
製剤で2週間型製剤を下垂体性小人症の患者に投与する
場合、有効成分として、通常約0.01ないし約5mg
/kg体重、好ましくは約0.03ないし約1mg/k
g体重の範囲から適宜選び、2週間に1回投与するのが
よい。本発明のGH・亜鉛複合体は、低毒性であり、原
末のままでもよいが、通常、医薬製剤用担体、例えば賦
形剤(例えば、炭酸カルシウム、カオリン、炭酸水素ナ
トリウム、乳糖、可溶性デンプン、コーンスターチ、結
晶セルロース、タルク、グラニュー糖、多孔性物質
等)、結合剤(例えば、デキストリン、ゴム類、アルフ
ァ化澱粉、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン等)、
増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体等)、
崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウ
ム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファ
化澱粉等)、溶剤(例えば、注射用水、生理食塩水、リ
ンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ゴマ
油、トウモロコシ油等)、分散剤(例えば、Tween
80、HCO60、カルボキシメチルセルロース、アル
ギン酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(例えば、ラウリル
硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム等)、溶解補助
剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリ
コール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノ
ール、トリスアミノメタン、トリエタノールアミン、炭
酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、無痛化剤(例
えば、ベンジルアルコール等)、緩衝剤(例えば、リン
酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等)、滑沢剤(例え
ば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウ
ム、タルク、澱粉、安息香酸ナトリウム等)、着色剤
(例えば、タール色素、カラメル、三二酸化鉄、酸化チ
タン、リボフラビン類等)、矯味剤(例えば、甘味類、
香料等)、安定化剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、アス
コルビン酸等)及び保存剤(例えば、パラベン類、ソル
ビン酸等)等の中から適宜、適量用いて、常法に従って
調製された医薬製剤として投与することもできる。前記
医薬製剤用担体を含んでいてもよい本発明の医薬製剤
は、前記徐放性製剤と同様に前記疾患を予防・治療する
のに、本発明のGH・亜鉛複合体の有効な量を適宜含有
する。本発明のGH・亜鉛複合体の医薬製剤中の含有量
は、通常、医薬製剤全体の約0.1ないし約100重量
%である。徐放性製剤は、常温あるいは冷所に保存され
るが、好ましくは冷所である。ここでいう常温あるいは
冷所とは日本薬局方において定義されるものである。即
ち、常温とは15℃ないし25℃、冷所とは15℃以下
を意味する。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に参考例、実施例、比較例及
び試験例を挙げて、更に具体的に説明するが、これらは
本発明を限定するものではない。また本発明の明細書に
おいてアミノ酸等の略号で表示する場合には、IUPA
C−IUB Commission on Bioche
mical Nomenclature による略号ある
いは当該分野における慣用略号に基づくものであり、そ
の例を下に示す。またアミノ酸に関して光学異性がある
場合は、特に明示しなければL−体を示す。 SDS : ドデシル硫酸ナトリウム Gly : グリシン Ala : アラニン Val : バリン Leu : ロイシン Ile : イソロイシン Ser : セリン Thr : スレオニン Cys : システイン Met : メチオニン Glu : グルタミン酸 Gln : グルタミン Asp : アスパラギン酸 Asn : アスパラギン Lys : リジン Arg : アルギニン His : ヒスチジン Phe : フェニルアラニン Tyr : チロシン Trp : トリプトファン Pro : プロリン Asx : Asp + Asn Glx : Glu + Gln
【0027】
【実施例】参考例1 T7プロモーターを用いたヒト成
長ホルモン(GH)発現ベクターの構築 GHの構造遺伝子はプラスミドpHGH107(特公平
6−12996に記載、寄託番号ATCC31538及
びATCC40011)からEcoRI及びEcoRV
で切断し約0.75kbの断片を単離した。一方、pE
T−3C〔Rosenberg et al.,ジーン
(Gene)、56巻、125頁(1987年)〕をN
deI及びBamHIで切断し、T7プロモーター及び
アンピシリン耐性遺伝子を有する約4.6kbの断片を
単離した。両断片をT4DNAポリメラーゼ(DNA
Blunting kit、宝酒造株式会社製)で平滑
末端とし、T4DNAリガーゼで連結したのち、大腸菌
JM109に導入し、アンピシリン耐性を指標として形
質転換体を選択した。出現したコロニーの中から12個
を拾い、これらからプラスミドを調製し制限酵素Pst
Iによる切断パターンを調べたところ、6個のコロニー
からのプラスミドにおいてGH遺伝子が正しい方向で挿
入されていることがわかった。この中の1株から得られ
たプラスミドをpTGA201と命名した。
【0028】参考例2 大腸菌でのMet−GHの発現 大腸菌JM109を、T7ファージのRNAポリメラー
ゼ遺伝子で組み換えられているラムダファージ(スチュ
ディエ、スプラ)で溶原化した。その後、参考例1で得
られたGH発現ベクターpTGA201をこの大腸菌J
M109(DE3)へ導入し、大腸菌JM109(DE
3)/pTGA201を得た。この形質転換細胞を、5
0μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(1%ペプ
トン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)1
リットルを含む2リットル容フラスコ中で30℃、16
時間振とう培養した。得られた培養液を、0.02%ニ
ューポールLB−625(消泡剤;三洋化成工業製)及
び50μg/mlのアンピシリンを含む20リットルの
LB培地を仕込んだ50リットル容発酵槽へ移植して、
37℃、6時間通気撹拌培養した。この培養液を360
リットルの主発酵培地(1.68%リン酸一水素ナトリ
ウム、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%塩化アン
モニウム、0.05%塩化ナトリウム、0.0246%硫
酸マグネシウム、0.02%ニューポールLB−62
5、0.0005%塩酸チアミン、1.5%ブドウ糖、
1.5%カザミノ酸)を仕込んだ500リットル容発酵
槽に移植して、37℃で通気撹拌培養を開始した。培養
液の濁度が約500クレット単位になった時点で、5.
95mg/リットル分のイソプロピル−β−D−チオガ
ラクトピラノシド(IPTG)を添加し、更に培養を続
け、4時間後に培養液を遠心分離して、約4.5kgの
湿菌体を得、−80℃に凍結保存した。上記の形質転換
大腸菌JM109(DE3)/pTGA201は、受託
番号FERM BP−5632として通商産業省工業技
術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託され、
また受託番号IFO 16001として財団法人発酵研
究所(IFO)に寄託されている。
【0029】参考例3 Met−GHの活性化 参考例2で得られた菌体2kgに50mMトリス/HC
l、8Mグアニジン塩酸塩溶液(pH8.0)6リット
ルを加えて菌体を溶解後、遠心分離(10000rp
m、120分間)を行った。得られた上澄液6リットル
に50mMトリス/HCl、0.28mMGSSG、1.
4mMGSH、0.7Mアルギニン(pH8.0)18リ
ットルを加えてpH8.0に調整した後、4℃で5日間
活性化を行った。
【0030】参考例4 Met−GHの精製 参考例3で活性化の終了した再生液をペリコンカセット
システム(PTGC膜、ミリポア社)で、20mMトリ
ス/HCl、2.5M尿素(pH8.0)を加えながら電
気伝導度が10mS以下になるまで脱塩、濃縮を行った
後、得られた濃縮液を遠心分離(10000rpm、6
0分間)し、濃縮液の上清5リットルを得た。ついでこ
の液を20mMトリス/HCl、2.5M尿素(pH
8.0)で平衡化したDEAE−トヨパール650Mカ
ラム(20cmφ×84cm、東ソー社)に吸着させ、
十分に洗浄した後、0ないし25%B(B=20mMト
リス/HCl、2.5M尿素、1M塩化ナトリウム、p
H8.0)の濃度勾配で100分間、300ml/分の
流速で溶出を行い、Met−GH画分として10リット
ルの溶出液を得た。更に、この溶出液をペリコンカセッ
トシステム(PTGC膜、ミリポア社)で濃縮、脱塩し
た。更に、高速液体クロマトグラフ法(ギルソンHPL
Cシステム、ギルソン社)により、この溶液をDEAE
−5PWカラム(21cm×30cm、東ソー社)に通
液吸着させた後、A=50mMトリス/HCl+2.5
M尿素(pH8.0)、B=50mMMES[2−(N
−モルホリノ)エタンスルホン酸]+2.5M尿素(p
H4.0)とによる70ないし85%BのpH勾配で、
70分間、320ml/分の流速で溶出を行い、Met
−GH画分6リットルを得た。この溶出液に2Mトリス
/HCl(pH7.8)溶液300ml加えてpH7.2
に調整し、ついでペリコンカセットシステム(PTGC
膜、ミリポア社)で濃縮、脱塩し、9,979ミリグラ
ムのMet−GHを得た。
【0031】参考例5 N末端Metの除去 参考例4で得たMet−GH溶液1650mlに2.5
Mグリオキシル酸、35mM硫酸銅、6Mピリジン溶液
413mlを加えよく撹拌した後25℃で60分間反応
させた。次いで、20mMトリス/HCl、2.5M尿
素(pH8.0)で平衡化したセファデックスG−25
カラム(11.3cmφ×125cm、ファルマシア
社)に3リットル/hの流速で通液し、平衡化と同じ緩
衝液を用いて展開し、溶出してきたMet−GHのジケ
トン体画分を、よく撹拌しながら直接4M酢酸、4M酢
酸ナトリウム、80mMo−フェニレンジアミン、3M
尿素溶液4リットル中に加えた。溶出終了後、この反応
溶液8リットルを4℃に3日間静置した。静置後、ペリ
コンカセットシステム(PTGC膜、ミリポア社)で4
リットルに濃縮し、20mMトリス/HCl、2.5M
尿素(pH8.0)で平衡化したセファデックスG−2
5カラム(11.3cmφ×140cm、ファルマシア
社)に3リットル/hの流速で通液し、GH画分4.7
リットルを集めた。更に、高速液体クロマトグラフ法
(ギルソンHPLCシステム、ギルソン社)により、こ
の溶液をDEAE−5PWカラム(21cm×30c
m、東ソー社)に通液吸着させた後、A=50mMトリ
ス/HCl+2.5M尿素(pH8.0)、B=50m
MMES[2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸]
+2.5M尿素(pH4.0)とによる70ないし85%
BのpH勾配で、70分間、320ml/分の流速で溶
出を行い、GH画分10リットルを得た。このGH画分
に2Mトリス/HCl(pH7.8)溶液を500ml
加えてpH7.2に調整後、ミニタンII(PTGC膜、
ミリポア社)で濃縮し、この濃縮液500mlを蒸留水
で平衡化したセファクリルS−100カラム(113.
cmφ×50cm、ファルマシア社)に2リットル/h
の流速で通液、展開しGH画分1651mlを得た。更
に、この溶液をミリパック60(ミリポア社)でろ過
し、GH溶液1487ml(3309mgのGH)を得
た。
【0032】参考例6 GHの性状確認 (a)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いた
分析 参考例5で得られたGHに100mMDTTを含むサン
プルバッファー[Laemmli, Nature,
27, 680(1970)]を等量加えてよく撹拌
し、95℃で2分間加熱後、マルチゲル10/20(第
一化学薬品)で電気泳動を行った。泳動後のゲルをクー
マシー・ブリリアント・ブルー(Coomassie
brilliant blue)で染色した結果、約2
2kdに単一バンドが認められたことから、精製GHは
ほぼ単一であることが確認された。
【0033】(b)アミノ酸組成分析 アミノ酸組成をアミノ酸分析計(L−8500A,日
立)を用いて決定した。その結果、得られたGHのアミ
ノ酸組成はcDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸
組成と一致した(表1)。
【表1】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1モル当たりの GHの塩基配列 アミノ酸 残基数 から予測される値 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Asx 20.2 20 Thr1) 10.0 10 Ser1) 16.7 18 Glx 27.0 27 Pro 8.1 8 Gly 8.2 8 Ala 7.6 7 Cys N.D.2) 4 Val 7.0 7 Met 3.0 3 Ile 7.7 8 Leu 27.9 26 Tyr 8.1 8 Phe 12.7 13 His 3.2 3 Lys 8.9 9 Arg 10.9 11 Trp 0.8 1 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酸加水分解(6N HCl−4%チオグリコール酸、1
10℃、24及び48時間加水分解の平均値) 1)0時間に外挿した値 2)未検出 約20μgを用いて分析を行った。
【0034】(c)N末端アミノ酸配列分析 N末端アミノ酸配列を気相プロテインシーケンサー(ア
プライドバイオシステムズ社、モデル477A)を用い
て決定した。その結果、得られたGHのN末端アミノ酸
配列はcDNAの塩基配列から推定されたGHのN末端
アミノ酸配列と一致した(表2)。
【表2】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 検出された GHの塩基配列 残基No. PTH1)−アミノ酸 から予測される (pmol) アミノ酸 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 Phe(949) Phe 2 Pro(404) Pro 3 Thr(422) Thr 4 Ile(744) Ile 5 Pro(283) Pro 6 Leu(514) Leu 7 Ser(136) Ser 8 Arg( 36) Arg 9 Leu(377) Leu 10 Phe(408) Phe 11 Asp( 77) Asp 12 Asn(230) Asn 13 Ala(435) Ala 14 Met(334) Met 15 Leu(398) Leu 16 Arg( 67) Arg 17 Ala(488) Ala 18 His( 30) His 19 Arg( 42) Arg 20 Leu(406) Leu −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1)フェニルチオヒダントイン 1nmolを用いて分析を行った。
【0035】(d)C末端アミノ酸分析 C末端アミノ酸をアミノ酸分析計(L−8500A,日
立)を用いて決定した。得られたGHのC末端アミノ酸
はcDNAの塩基配列から推定されたC末端アミノ酸と
一致した(表3)。
【表3】 気相ヒドラジン分解法(100℃,6時間)18nmo
lを用いて分析を行った。 (e)GHの活性測定 参考例5で得られた精製GHのNb2細胞〔ジャーナル
・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メ
タボリズム、51巻、1058頁(1980)〕に対す
る増殖促進効果は、標準品(ケミコンインターナショナ
ル社、Temecula,California,US
A)と同等であった。
【0036】実施例1 (1) GH・亜鉛複合体の製造 参考例5に準じて得られた遺伝子組換え型GH水溶液
(2mg/ml)120mlに、GH1モルに対する亜
鉛のモル比が1.8及び2.0となるような2種の濃度の
酢酸亜鉛水溶液0.5mlをそれぞれ添加し、凍結乾燥
して、GH・亜鉛複合体(約230mg)を得た。 (2) GH含有マイクロカプセルの製造 乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=5
0/50, ポリスチレン換算平均分子量=12,000,
粘度=0.145dl/g)1.89gをジクロロメタ
ン4mlに溶解し、更に酸化亜鉛10mgを添加後、2
5℃で撹拌(60rpm)し完全に溶解した。このポリ
マーの有機溶媒溶液に上記(1)で得られたGH・亜鉛複
合体100mgを添加しポリトロン(キネマチカ社)で
微粒化した。次いで得られたS/O分散液を0.1%ポ
リビニルアルコール水溶液800mlに添加し、ホモミ
キサーを用いて撹拌・乳化した。室温で2時間水中乾燥
した後、蒸留水で水洗し凍結乾燥することによりGH含
有マイクロカプセル(1.07g(1:1.8)、0.9
1g(1:2.0))を得た。
【0037】比較例1 (1) GH粉体の製造 参考例5に準じて作製した遺伝子組換え型GH水溶液
(2mg/ml)120mlに、GH1モルに対して亜
鉛のモル比が0, 3.0, 4.0, 5.0, 6.0となるよ
うに種々の濃度の酢酸亜鉛水溶液0.5mlをそれぞれ
添加し、凍結乾燥して、GH粉体(約230mg)を得
た。 (2) GH含有マイクロカプセルの製造 実施例1−(2)と同様の操作により、上記(1)記載のG
H粉体を用いてGH含有マイクロカプセル(0.95g
(1:0)、1.23g(1:3)、1.13g(1:
4)、1.28g(1:5)、1.27g(1:6))を
得た。
【0038】試験例1 実施例1−(2)及び比較例1−(2)で製造したマイクロ
カプセルを用いて以下の実験を実施した。 (1) GH含量 実施例1−(2)及び比較例1−(2)で製造したマイクロ
カプセル4mgにアセトニトリル300μlを添加し、基
剤である乳酸−グリコール酸共重合体を溶解し、更に
0.02%ウシ血清アルブミン−0.05%トリフルオロ
酢酸含有水溶液700μlを添加撹拌して、GHを抽出
した。遠心分離により得られた上清を、高速液体クロマ
トグラフィーに供してマイクロカプセル中のGH含量を
定量した。GH封入率は得られたマイクロカプセル中の
GH含量を添加したGH量から理論的に算出されるGH
含量で除して求めた。〔表4〕に結果を示す。 〔表4〕の結果より、GH1モルに対してモル比1.8
又は2.0の亜鉛を含有する本発明の複合体を用いた場
合において90%以上のGH封入率が得られた。これよ
り、本発明のGH・亜鉛複合体を含有する徐放性製剤が
優れたGH封入率を有することは明らかである。 (2) in vivo 放出性 免疫抑制SDラット(雄性,6週齢)に6mgGH/ラ
ットに実施例1−(2)及び比較例1−(2)で製造したマ
イクロカプセルを皮下投与し、経時的に採血し、その血
清中GH濃度をラジオイムノアッセイ・キット(Abビ
ーズHGH:栄研化学)により測定した。免疫抑制SD
ラットは、プログラフ(藤沢薬品)を、マイクロカプセ
ル投与3日前に0.4mg/ラット及び投与時、投与4,
7, 11, 14日後にそれぞれ0.2mg/ラット量を
皮下投与し作成した。血清中GH濃度推移より得られた
AUCとクリアランスを基に、マイクロカプセル投与後
1日までに放出されたGH量、及びそれ以降1−18日
までに放出されたGH量を算出した。初期放出率は、マ
イクロカプセル投与後1日までに放出されたGH量を投
与したGH量で除して求めた。〔表4〕に結果を示す。
〔表4〕の結果より、GH1モルに対する亜鉛のモル比
が1.8又は2.0の複合体を含有するマイクロカプセル
が、初期放出量(投与後1日(24時間)までの放出
量)が小さく(初期放出率:約30%以下)、その後の
放出量(投与後1日(24時間をこえ18日までの放出
量)が大きい結果となった。比較例1−(2)で製造され
たマイクロカプセルはいずれも初期放出量が大きく(初
期放出率:約50%以上)、従ってその後の放出量が小
さく、十分な徐放性が得られなかった。これより、本発
明のGH・亜鉛複合体を含有する徐放性製剤が優れた徐
放性を有するのは明らかである。
【表4】
【0039】試験例2 参考例5に準じて得られた遺伝子組換え型GH水溶液
(2mg/ml)2mlに、GH1モルに対する亜鉛の
モル比が0, 1.4, 1.6, 1.8, 2.0, 2.2, 2.
4, 3.0, 4.0, 5.0, 6.0となるように種々の濃
度の酢酸亜鉛水溶液50μlを添加し、凍結乾燥した。
得られた凍結乾燥粉末をジクロロメタン2ml中に分散
後、ボルテックスミキサーにより粉砕・微粒化しレーザ
ー回折式粒度分布測定装置(SALD2000A;島
津)を用いて粒度分布を測定した。結果を〔図1〕に示
す(図中、粒度(平均粒子径μm)は●で示す。)。
〔図1〕の結果に示すとおり、GH1モルに対する亜鉛
のモル比が1.6ないし2.4で含有するGH・亜鉛複合
体は5μm以下の平均粒子径を示した。これより、本発
明のGH・亜鉛複合体が微粒化されていることは明らか
である。
【0040】試験例3 参考例5に準じて得られた遺伝子組換え型GH水溶液
(2mg/ml)1mlに、GH1モルに対する亜鉛の
モル比が0, 1.0, 2.0, 3.0, 4.0, 5.0, 6.
0, 7.0, 8.0となるように種々の濃度の酢酸亜鉛水
溶液25μlを添加し、12,000回転/分で5分間
遠心分離した。得られた上清をフィルター(0.45μ
m)濾過した後、高速液体クロマトグラフィーによりG
H濃度を定量し、不溶性複合体形成率(不溶性複合体中
に含有されるGHのGH総添加量に対する比率(%))
を算出した。結果を〔図2〕に示す(図中、不溶性複合
体形成率を○で示す)。〔図2〕の結果より、GH1モ
ルに対する亜鉛のモル比が2.0以下の場合においては
共存する不溶成分が30%以下であり、本発明のGH・
亜鉛複合体が実質的に水溶性であることは明らかであ
る。これより、本発明のGH・亜鉛複合体が実質的に水
溶性であることは明らかである。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、ヒト成長ホルモンの封
入率を高め、初期放出の抑制された安定した持続性を示
すヒト成長ホルモン徐放性製剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GH・亜鉛複合体中のGHと亜鉛の組成比の変
化に併う、粒度分布の変動を示す。
【図2】GH・亜鉛複合体中のGHと亜鉛の組成比の変
化に併う、複合体の水溶解性の変動を示す。

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.6
    から約1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモン
    ・亜鉛複合体。
  2. 【請求項2】水溶性である請求項1記載のヒト成長ホル
    モン・亜鉛複合体。
  3. 【請求項3】約10μm以下の平均粒子径を有する請求
    項1記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複合体。
  4. 【請求項4】請求項1記載のヒト成長ホルモン・亜鉛複
    合体と生体内分解性ポリマーとを含有してなる徐放性製
    剤。
  5. 【請求項5】生体内分解性ポリマーが脂肪族ポリエステ
    ルである請求項4記載の徐放性製剤。
  6. 【請求項6】脂肪族ポリエステルが乳酸/グリコール酸
    ポリマーである請求項5記載の徐放性製剤。
  7. 【請求項7】乳酸/グリコール酸ポリマーの組成比(モ
    ル%)が100/0ないし約40/60である請求項6
    記載の徐放性製剤。
  8. 【請求項8】脂肪族ポリエステルの重量平均分子量が約
    3,000ないし約20,000である請求項5記載の徐
    放性製剤。
  9. 【請求項9】脂肪族ポリエステルが多価金属との塩であ
    る請求項5記載の徐放性製剤。
  10. 【請求項10】多価金属が亜鉛である請求項9記載の徐
    放性製剤。
  11. 【請求項11】マイクロカプセルである請求項4記載の
    徐放性製剤。
  12. 【請求項12】マイクロカプセルが注射用である請求項
    11記載の徐放性製剤。
  13. 【請求項13】ヒト成長ホルモンの初期放出率が約50
    %以下である請求項4記載の徐放性製剤。
  14. 【請求項14】ヒト成長ホルモンと亜鉛塩とを約1:
    1.6から約1:2.4のモル比で混合することを特徴と
    するヒト成長ホルモン・亜鉛複合体の製造方法。
  15. 【請求項15】ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.
    6から約1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモ
    ン・亜鉛複合体を形成し、粉砕することを特徴とする微
    粒化されたヒト成長ホルモンの製造方法。
  16. 【請求項16】ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.
    6から約1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモ
    ン・亜鉛複合体のヒト成長ホルモン含有徐放性製剤の製
    造のための使用。
  17. 【請求項17】ヒト成長ホルモンと亜鉛とを約1:1.
    6から約1:2.4のモル比で含有するヒト成長ホルモ
    ン・亜鉛複合体を、生体内分解性ポリマーを含む油相に
    分散して得られたS/O型分散液を水相に添加し、S/
    O/W型エマルションとして水中乾燥に付すことを特徴
    とする徐放性製剤の製造法。
  18. 【請求項18】請求項1記載のヒト成長ホルモン・亜鉛
    複合体を含有することを特徴とする医薬製剤。
  19. 【請求項19】請求項1記載のヒト成長ホルモン・亜鉛
    複合体を含有することを特徴とする下垂体小人症の予防
    治療剤。
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