JPH11152836A - 防音天井構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 低域共鳴透過による（重量源床衝撃音につい
ての）遮音性の低下を防ぐと同時に中高周波数帯域での
（軽量源床衝撃）騒音を低減できる。 【解決手段】 天井面の壁６に接する周囲のうち、少な
くとも四隅を含む一部にのみ吸音材５を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、例えばＲＣ構造
のマンション等の集合住宅、病院、学校、体育館、図書
館その他の建物に好適な防音天井構造に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の防音天井は、２重天井構造とし、
遮音性の向上を図る等の措置がなされていた。例えば、
従来の内装天井には、図１７に示すように、コンクリー
トスラブ等よりなる天井スラブ１００の下方に空気層１
０１を介して内装天井材１０２を設けてある。

【０００３】即ち、このような内装天井では、天井スラ
ブ１００から下方に突出するボルト１０３の下端に固定
されたハンガー１０４に野縁受け１０５を固定し、この
野縁受け１０５にクリップ１０６で野縁１０７を取り付
け、この野縁１０７に内装天井材１０２を取り付けてい
る。また、駆体壁１０８と内装天井材１０２との隙間は
廻り縁１０９で埋められている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
２重天井構造のものでは、図１８に示すように、中高周
波数帯域では遮音性が向上するが、低周波数帯域では逆
に遮音性が低下し、床衝撃音、特に重量源床衝撃音等が
悪化する場合がある。これは、２重天井内の密閉された
空気のばね成分と内装天井材のマス成分とが共振現象を
起こし、遮音性が悪化する（低域共鳴透過現象）ためと
思われる。

【０００５】そのため、駆体壁との間に隙間をあけ、空
気を密閉させないようにする構造のものが検討されてい
るが、この方法によると、低域共鳴透過現象は軽減でき
るものの、上階の床から発生する床衝撃音等は天井と駆
体壁との間の隙間から漏れてしまい、特に中高周波数帯
域での遮音性が低下してしまうことになる。このよう
に、従来の防音天井では、床衝撃音などに対し低周波数
帯域から高周波数帯域までカバーできる遮音特性を備え
ることが困難であった。

【０００６】そこで、この発明は、上記した事情に鑑
み、低域共鳴透過による（重量源床衝撃音についての）
遮音性の低下を防ぐと同時に中高周波数帯域での（軽量
源床衝撃）騒音を低減できる防音天井構造を提供するこ
とを目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】即ち、この請求項１に係
る発明は、コンクリートスラブ等よりなる天井スラブの
下方に天井材を設けた天井構造において、前記天井面の
壁に接する周囲のうち、少なくとも四隅を含む一部にの
み吸音材を設けたものである。

【０００８】また、この請求項２に係る発明は、吸音材
が一定の通気性と通気抵抗とを有する繊維集合体で構成
されたものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施例に
ついて添付図面を参照しながら説明する。図１はこの発
明の第１実施例にかかる防音天井構造の四隅の一つを示
すものであり、この第１実施例の防音天井構造は、集合
住宅（この他に、例えば病院、学校、体育館、図書館そ
の他の建物での適用が可能である）の天井に適用されて
いる。この第１実施例の防音天井構造では、コンクリー
トスラブ等の天井スラブ１に、アンカボルト（図略）で
吊り下げた吊り具２により、（空気層３を介して）内装
天井材４が一部設けてある。また、この内装天井材４を
配設してある部分以外の天井面には、全て吸音材５が設
置されている。

【００１０】内装天井材４は、天井面の吸音材５が配設
される部分以外、即ち図２の白抜き部分で示す４隅の部
分を除く周囲及び中央部分に（この実施例では全天井面
積に対する占有面積の割合が８０％）設けられている。
この実施例では厚さ１２ｍｍの石膏ボード（吉野石膏社
製の商品名プラスターボード ＰＢ１２ｔ）が使用され
ているが、勿論これに限定されない。コンクリートスラ
ブ１に吊り具２、野縁受け及び野縁（共に図略）を介し
て内装天井材４を設置してあるが、コンクリートスラブ
に直接内装天井材を取り付けた構成でもよい。

【００１１】吸音材５は、後述する繊維集合体を配設す
ることにより構成されており、図２で黒塗りの部分に示
すように、天井の四隅にのみ配設されているが、これ以
外に例えば、図３に示すように、この四隅と中央部分、
図４に示すように、四隅の他に、向かい合う一組の対辺
の中央部と天井面の中央部分の２か所でもよい。なお、
この吸音材はユニットとして構成してもよい。

【００１２】繊維集合体は、繊維状物質の集合体からな
る繊維成形体を所定の大きさに形成したものである。繊
維成形体としては、繊維径分布の中心が３０デニール以
下の短繊維を素材として平均見かけ密度０．０５５ｇ／
ｃｍ³ （この平均見かけ密度は０．０３〜０．１５ｇ／
ｃｍ³ であるのが好ましい）の繊維集合体に成形して成
る。なお、３０デニール以下の短い繊維を用いるととも
に見かけ密度を所定の範囲に収めることで繊維成形体内
部の通気抵抗を大きくして吸音特性を良好にする。ただ
し、空気層内の空気の圧縮により発生する低域周波数の
共鳴音が透過できる程度の通気性は確保してある。

【００１３】短繊維の材質としては、例えばポリエステ
ル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ビニロ
ン等の合成繊維の他に、羊毛、綿、麻等の天然繊維を使
用することもできる。これらの繊維を使用した布から開
繊した短繊維を使用することもできる。

【００１４】吸音材５は、コンクリートスラブ１の（天
井）面と壁面とに適宜の接着剤で取り付けてあるが、例
えば図５に示すように、コンクリート釘２１やピン等の
機械的手段を用いて取り付けるなど、適宜の手段で取り
付けることが可能である。また、この吸音材としては、
この繊維集合体に限定されるものではなく、ロックー
ル、グラスウール等の同様の効果を有するものでよい。
また、この吸音材を天井材で構成してもよい。

【００１５】従って、この第１実施例によれば、特に通
気性のある吸音材５を用いることにより、従来の二重天
井において密閉された空気層内の空気の圧縮により発生
する低域周波数の共鳴音が十分に透過でき、遮音性能の
低下が防止できる。例えば階上の床面で発生する重量源
床衝撃音等に起因した（空気層３のばね成分と内装天井
材４のマス成分の共振現象がもたらす）低域周波数の衝
撃音の騒音レベルを低減できるようになる。

【００１６】次に、この第１実施例の防音天井構造につ
いて、コンクリート素地の天井及び従来の天井（例えば
図１７に示すもの）との比較実験（全てスラブ厚さ１５
０ｍｍの残響室内で実施した）を行ってみたところ、軽
重量床衝撃音の遮断性能については、図６に示すような
結果が得られた。この実験結果によりＪＩＳ遮音等級に
ついて、コンクリート素地ではＬ−８０、従来の天井構
造ではＬ−６５、この実施例の防音天井構造では少なく
ともＬ−５５以上の遮音性能が得られることが確認でき
た。

【００１７】同様の実験を重量床衝撃音について行った
ところ、図７に示すような結果が得られた。この実験結
果によりＪＩＳ遮音等級について、コンクリート素地で
はＬ−５５、従来の天井構造ではＬ−６０、この実施例
の防音天井構造では少なくともＬ−５５以上の遮音性能
が得られることが確認できた。

【００１８】次に、この発明の第２実施例にかかる防音
天井構造について説明する。この第２実施例の防音天井
構造では、図８に示すように、天井面の周辺４辺（互い
に向かい合う２組の辺）のうち、一方側の組の辺全体に
亘り（黒塗りした領域で示す）吸音材５が配設される。
この吸音材５を配設してある部分以外の天井面には、全
て内装天井材４が設置される。この実施例でも、内装天
井材４や吸音材５の取り付け方法としては、先の第１実
施例と同様のものが用いられているが、特にこれに限ら
ない。また、これら内装天井材４及び吸音材５には先の
第１実施例と同様のものが使用されているが、勿論これ
に限らず適宜のものが使用可能である。

【００１９】なお、この吸音材５の配設態様としては、
勿論この第２実施例のものに限定されるものではなく、
例えば図９に黒塗り部分で示すように、一方側の組の対
辺全体の他に、同方向に沿って複数本（２本）平行に配
設したり、図１０に黒塗り部分で示すように、一方側の
組の対辺全体と、これらを中間部分で繋ぐように略Ｈ字
形に設けることも可能である。これらの態様において
も、黒塗り部分以外の白抜き部分は全て内装天井材４が
配設されている。

【００２０】次にこの発明の第３実施例にかかる防音天
井構造について説明する。図１１に示す第３実施例で
は、黒塗り部分で示すように、天井面の四隅を含む対角
線方向にＸ字形をなす２本の吸音材５を設けてある。ま
た、この吸音材５を配設してある部分以外の天井面に
は、全て内装天井材４が設置されている。なおこの実施
例でも、内装天井材４や吸音材５の取り付け方法として
は、先の第１実施例と同様のものが用いられているが、
特にこれに限らない。また、これら内装天井材４及び吸
音材５には先の第１実施例と同様のものが使用されてい
るが、勿論これに限らず適宜のものが使用可能である。

【００２１】さらに、これら第１実施例乃至第３実施例
では、吸音材５と天井スラブ１との間には空気層が形成
されていなかったが、これらの間に空気層を形成するよ
うな構成としても構わない。即ち、図１２に示すよう
に、天井スラブ１に取り付けたレール状の吊り部材２２
に吸音材５を嵌め込んだり、図１３に示すように、通常
のメッシュ状の下地２３（例えば軽天下地や木軸組下地
等）に吸音材５を載置したり、野縁受け（図略）に取り
付けるようにしてもよい。また、図１４に示すように、
天井スラブ１から吊り下げずに、周囲の壁面に適宜の取
付部材２４を取り付けてその取付部材２４に固定するよ
うにしてもよい。

【００２２】さらに、この発明に係る他の実施例につい
て説明する。図１５に示す防音天井構造では、天井スラ
ブ１に防振ゴム７を介して天井材４を支持してある。こ
のような構成とすることにより、図１６に示すように、
ＪＩＳ遮音等級について、コンクリート素地ではＬ−５
５、防振支持のない天井構造ではＬ−５５、この実施例
の防振支持天井構造でもＬ−５０の遮音性能が得られ
る。

【００２３】

【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によ
れば、ある程度通気性のある吸音材を使用するから、特
に二重天井構造のものにあっては、従来のような階上か
らの床衝撃の伝搬等による共振現象に起因した低周波数
帯域での（重量源）床衝撃音の発生や空気層内の空気の
圧縮による低域周波数の共鳴音の発生を有効に防止する
ことができる。

【００２４】また、同時にこの発明によれば、階上の床
衝撃音が階下の室内に漏れぬ程度の密度（密閉性）を有
する吸音材を使用しており、これによって特に二重天井
構造のものにあって、階上からの漏れによる中高周波数
帯域での（軽量）床衝撃音の発生も未然に防止すること
ができるから、換言すれば低周波数域から高周波数域ま
での広範囲に亘って床衝撃音等の騒音を効果的に低減す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係る防音天井構造を示す概略構成
図。

【図２】図１の天井の吸音材の配置を示す説明図。

【図３】吸音材の配置の変形例を示す説明図。

【図４】吸音材の配置の変形例を示す説明図。

【図５】吸音材の他の取り付け方法を示す断面図。

【図６】従来の天井構造等との軽量床衝撃音遮断性能の
比較を示すグラフ。

【図７】従来の天井構造等との重量床衝撃音遮断性能の
比較を示すグラフ。

【図８】他の天井構造での吸音材の設置状態を示す説明
図。

【図９】他の吸音材の配置を示す説明図。

【図１０】他の吸音材の配置を示す説明図。

【図１１】他の吸音材の配置を示す説明図。

【図１２】他の吸音材の設置状態を示す説明図。

【図１３】他の吸音材の設置状態を示す説明図。

【図１４】他の吸音材の設置状態を示す説明図。

【図１５】防振支持天井を示す断面図。

【図１６】図２２の遮音性能を示すグラフ。

【図１７】従来の天井構造を示す断面図。

【図１８】図１７に示す天井構造を使用した場合の遮音
性能を示すグラフ。

【符号の説明】

１ コンクリートスラブ ２ 吊り具 ３ 空気層 ４ 内装天井材 ５ 吸音材

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コンクリートスラブ等よりなる天井スラ
   ブの下方に天井材を設けた天井構造において、 前記天井面の壁に接する周囲のうち、少なくとも四隅を
   含む一部にのみ吸音材を設けたことを特徴する防音天井
   構造。
2. 【請求項２】 吸音材が一定の通気性と通気抵抗とを有
   する繊維集合体で構成されたことを特徴とする請求項１
   に記載の防音天井構造。