JPH1088690A - 内装用ボードの直貼り工法と遮音壁構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 内装用ボードとコンクリート躯体との間で伝
播される騒音を低減し、特に低周波数帯域から高周波数
帯域に至る広範囲で遮音性能を向上することができる内
装用ボードの直貼り工法を提供すること。 【解決手段】 躯体壁面２全体に、ここでは板厚30mm〜
40mmのグラスウール板からなる吸音材３を釘等によって
仮止めし、次いで、前記各孔４にモルタル系の接着剤５
を直径50mm程度のダンゴ状にして前記吸音材３の表面か
ら突出させて盛り付ける。そして、前記各孔４の大きさ
に合った樹脂成形板からなる防振材６を、吸音材３の表
面と同一平面になるまで定規等を用いて平滑にし、孔４
内に納める。次いで、平滑面にここでは石膏ボードから
なる内装用ボード８を当接して前記各防振材６のある位
置に木ねじ７を貫通して内装用ボード８と防振材６とを
相互に固定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、特に、建築物の
内装仕上げ工事に適用される内装用ボードの直貼り工法
（Gypsum Lining 工法）において、遮音性能に優れた内
装用ボードの直貼り工法と遮音壁構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、一般的に建物のコンクリート躯
体、ＡＬＣ版等の表面が粗い壁面を平滑にして内装仕上
げ面を形成するために、図４に示すように、躯体１の壁
面２にモルタル系の接着剤５をダンゴ状にして所定間隔
をあけて点付けし、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等
の内装用ボード６を直接接着剤５に押し付けて貼付する
ことにより壁厚を薄くして内部空間を有効に利用するよ
うにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の内装用ボードの直貼り工法にあっては、コ
ンクリート躯体表面に直接内装用ボードを貼り付けるだ
けの構成であったため、内装用ボードとコンクリート躯
体との間で騒音および振動が伝播し、壁体に十分な遮音
性能を与えることが難しいという問題があった。

【０００４】さらに、上記従来の構成によると、遮音で
きる周波数領域は接着剤の間隔と接着剤周囲の空気層の
固有振動数によって決まるため、広範囲の遮音特性を得
ることができず、特に、低周波数帯域において音響透過
損失が低下する遮音欠損を生じて遮音性能が著しく低下
するという問題があった。

【０００５】そこで、この発明は、このような従来の未
解決の課題に着目してなされたものであり、内装用ボー
ドとコンクリート躯体との間で伝播される騒音および振
動を低減し、特に低周波数帯域から高周波数帯域に至る
広い範囲で遮音性能を向上することができる内装用ボー
ドの直貼り工法を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】以上の諸問題を解決する
ために、請求項１に記載の発明は、躯体壁面に所定間隔
をあけて複数箇所に接着剤を塗布し、内装用ボードを前
記躯体壁面に貼り付ける内装用ボードの直貼り工法にお
いて、前記躯体壁面に前記接着剤の各塗布範囲に対応す
る大きさの防振材を貼り付けて各防振材の表面を相互に
同一平面に配置するととともに、前記防振材の表面に内
装用ボードを接合することを特徴とする内装用ボードの
直貼り工法を提供する。

【０００７】また、請求項２に記載の発明は、躯体壁面
に所定間隔をあけて複数箇所に接着剤が塗布され、この
接着剤の各塗布範囲に対応する大きさで、その表面が相
互に同一平面になるように前記接着剤に防振材が貼り付
けられ、さらに、前記防振材の表面に内装用ボードを接
合して保持してあることを特徴とする遮音壁構造を提供
する。

【０００８】従って、同一平面内に不陸調整された合
板、石膏ボード、ゴム板、金属板、樹脂成形板等からな
る各防振材によって内装用ボードを複数箇所で弾力的に
支持し、特に内装用ボードおよび躯体内部から伝播され
た固体伝播音による振動が絶縁される。

【０００９】また、接着剤の各塗布範囲に対応する大き
さとは、必ずしも接着剤の塗布範囲に合致する大きさに
限るものではなく、接着剤の各塗布範囲と多少の相違が
あるものを含めるものである。

【００１０】請求項３に記載の発明は、前記躯体壁面の
前記接着剤を塗布すべき位置に孔を備えた吸音板を貼付
するとともに前記各孔から露呈する前記躯体壁面に接着
剤を前記吸音板の表面から一部突出させるようにして盛
り上げて塗布し、前記吸音板の表面に前記内装用ボード
を接合することを特徴とする内装用ボードの直貼り工法
を提供する。

【００１１】請求項４に記載の発明は、所定間隔をあけ
て複数箇所に孔を備えた吸音板が躯体壁面に貼設してあ
り、前記各孔から露呈する前記躯体壁面に接着剤が塗布
されるとともに、前記接着剤に内装用ボードが接着して
あることを特徴とする遮音壁構造を提供する。

【００１２】これにより、所定間隔をあけて複数箇所に
配された接着剤周囲の空間にグラスウールボード、ロッ
クウール等の多孔質材料からなる吸音材が配され、内装
用ボードおよび躯体内部から接着剤周囲の空気層に伝播
される騒音のうち、比較的高周波数帯域の騒音が吸収さ
れる。

【００１３】請求項５に記載の発明によれば、請求項３
に記載の内装用ボードの直貼り工法において、前記接着
剤が塗布された各孔に対応する防振材を前記孔に収めて
各防振材の表面を相互に同一平面に配置するとととも
に、前記防振材表面に内装用ボードを接合することを特
徴とする内装用ボードの直貼り工法を提供する。

【００１４】請求項６に記載の発明によれば、請求項４
に記載の遮音壁構造において、前記接着剤が塗布された
各孔と対応して前記孔内に防振材を収めて接着するとと
もに、前記防振材表面に内装用ボードを接合してあるこ
とを特徴とする遮音壁構造を提供する。

【００１５】これにより、上記の防振材と吸音材を同時
に設けることにより、内装用ボードおよび躯体内部から
伝播される騒音が防振材および吸音材によって吸収され
て低周波数帯域から高周波数帯域に至る広範囲の騒音が
遮音される。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、この発明の内装用ボードの
直貼り工法と遮音壁構造の実施の形態について説明す
る。

【００１７】図１に示すように、１はコンクリート構造
物の躯体であり、この躯体の躯体壁面２を平滑に仕上げ
て内部空間の内装用の壁面を形成する。先ず、躯体壁面
２全体に、ここでは板厚30mm〜40mmのグラスウール板か
らなる吸音材３を釘等によって仮止めする。

【００１８】ここで、吸音材３には、予め、縦横に30cm
〜40cmの等間隔をあけて直径100mm〜150mm 程度の円形
からなる孔４が複数開設されており、従って、この孔４
から壁面２が露出するようにしてある。

【００１９】次いで、前記各孔４にモルタル系の接着剤
５を直径50mm程度のダンゴ状に形成して躯体壁面２に塗
布する。このとき、接着剤５を前記吸音材３の表面から
一部突出させる。

【００２０】そして、前記各孔４の大きさに合った円形
の樹脂成形板等からなる防振材６を孔４内に納める。こ
のとき、各防振材６の表面が前記吸音材３の表面と同一
平面になるまで定規等を用いて孔４内の接着材５を押圧
して潰すことにより、各吸音材３の表面を平滑になら
す。

【００２１】次いで、平滑面にここでは石膏ボードから
なる内装用ボード８を当接して前記各防振材６のある位
置に木ねじ７を貫通して内装用ボード８を防振材６に固
定することにより、遮音壁構造１０を形成する。

【００２２】なお、このように形成された遮音壁構造１
０は必ずしも上記直貼り工法の工程によって形成された
ものに限ることはなくあらゆる手順によって形成するこ
とができるのは勿論である。

【００２３】また、この実施の形態において、吸音材３
にはグラスウールが適用されたが、これに限るものでは
なく、これ以外にロックウール、フェルト、吸音ボー
ド、軟質繊維板、布、発泡樹脂材等の多孔質材料で構成
することもできる。

【００２４】また、ここでは防振材６にゴム板が適用さ
れたが、これ以外に合板、石膏ボード、金属板、樹脂成
形板等によって構成することもできる。さらに、内装用
ボード８には、石膏ボードが適用されたが、ケイ酸カル
シウム板やこれ以外の塗壁材料からなる板材で構成する
こともできる。

【００２５】また、孔４に配された防振材６と内装用ボ
ード８との間に段ボール等の緩衝材を配することによ
り、前記内装用ボード８と躯体との防振性能を一層向上
することができる。

【００２６】さらに、上記実施の形態においては、内装
用ボード８と各防振材６とを木ねじ７によって貫通して
相互に固定するようにしたが、必ずしも木ねじ７によっ
て固定することはなく接着剤等によって接合してもよ
い。

【００２７】また、この実施の形態において、接着材５
にはモルタル系の接着材を適用する場合について説明し
たが、これに限るものではなく粘性の高い合成樹脂系接
着材やゴム系接着材を適用することができのは勿論であ
る。

【００２８】このような内装用ボードの直貼り工法によ
って、予め、接着剤５を塗布すべき所定位置に孔４を備
えた吸音材３を躯体壁面に貼付することができ、これに
より接着剤５を塗布すべき位置が明確になり、接着剤５
の使用量を適切に定めることができるとともに、防振材
６の表面を平滑にならすことにより、内装用ボード８の
位置決めを容易に行うことができ、取付作業の簡略化を
図ることができる。

【００２９】さらに、前記内装用ボード８と躯体壁面２
との間に吸音材を配置することにより、内装用ボード８
と躯体壁面２との間隔を調整することなく一定に確保す
ることができる。

【００３０】また、多孔質材料からなる吸音材３によっ
て、比較的高周波数帯域の騒音を低減することができる
とともに、接着剤５周囲の空気層が充填され、空気層に
よる騒音の共鳴現象が抑止される。

【００３１】一方、孔４に配された接着剤５と防振材６
によって内装用ボード８を弾力的に支持することによ
り、躯体１内部または内装用ボード８を伝播してくる振
動が騒音として放射される固体伝搬音を絶縁し、特に低
周波数帯域における騒音を遮音する。従って、これら防
振材６および吸音材３によって、内部空間または外部で
発生する騒音が低周波数帯域から高周波数帯域に至る広
い範囲で遮断され、遮音性能を大幅に向上することがで
きる。

【００３２】なお、上記実施の形態において、躯体壁面
２に吸音材３を仮止めして孔４に接着材５を塗布し、防
振材６を配して内装用ボード８を防振材６に接合するよ
うにしたが、必ずしも、この工程順序によることはな
く、適宜変更することができるのは勿論である。

【００３３】また、簡易な方法として、図２に示すよう
に、吸音材３を躯体壁面２に配することなく、躯体壁面
２に所定間隔をあけて接着剤５を塗布し、各塗布面に防
振材６を貼付して各防振材６の表面を同一平面に配置す
るととともに、前記各防振材６の表面に内装用ボード８
を木ねじ７によって接合することにより、接着材５周囲
の空気層と防振材６とによって騒音を遮音する構成とし
てもよい。

【００３４】さらに、上記実施の形態にあっては、接着
剤５を壁面に点付けするように構成したが、これに限る
ことはなくあらゆる形態によって塗布することもでき
る。さらに、図３に示すように、前記躯体壁面２に吸音
材３を貼付し、前記各孔４に接着剤５を塗布して前記吸
音材３表面から一部突出させ防振材６を貼り付けること
なく、直接内装用ボード８を前記接着剤５に貼設接合す
ることもできる。

【００３５】なお、上記実施の形態においては、壁体を
コンクリートで構成する場合について説明したが、必ず
しもこれに限ることはなく、ＡＬＣ版や木質構造材料等
にも適用することができるのは勿論である。

【００３６】

【発明の効果】以上、説明したように、この発明の内装
用ボードの直貼り工法のうち、請求項１または２に記載
の発明によれば、防振材によって内装用ボードおよび躯
体内部に伝達された振動を弾力的に支持することにより
絶縁でき、特に低周波数帯域の騒音を吸収して遮音性能
を向上することができる。

【００３７】請求項３または４に記載の発明によれば、
躯体壁面の接着剤を塗布すべき位置に孔を備えた吸音板
を貼付することにより、従来にように、接着材周囲の空
気層によって騒音が反響したり、空気の共鳴現象を生じ
ることがなく遮音性能を向上することができる。

【００３８】請求項５または６に記載の発明によれば、
接着剤が塗布された各孔に、この孔の大きさに合った防
振材を収めて各防振材の表面を同一平面に調整するとと
ともに、前記防振材表面に内装用ボードを貼着すること
により、低周波数領域から高周波数帯域に至る広い範囲
で遮音性能を向上することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施の形態にかかる内装用ボードの
直貼り工法の施工手順を示す図であり、同図（ａ）は斜
視図、同図（ｂ）は側面図である。

【図２】図１の内装用ボードの直貼り工法の変形例を示
す斜視図である。

【図３】図１の内装用ボードの直貼り工法の変形例を示
す斜視図である。

【図４】従来の内装用ボードの直貼り工法を示す図であ
り、同図（ａ）は斜視図、同図（ｂ）は側面図である。

【符合の説明】

１……躯体 ２……躯体壁面 ３……吸音材 ４……孔 ５……接着材 ６……防振材 ７……木ねじ ８……内装用ボード ９……空気層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河原塚 透 東京都新宿区西新宿一丁目25番１号 大成 建設株式会社内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 躯体壁面に所定間隔をあけて複数箇所に
   接着剤を塗布し、内装用ボードを前記躯体壁面に貼り付
   ける内装用ボードの直貼り工法において、 前記躯体壁面に前記接着剤の各塗布範囲に対応する大き
   さの防振材を貼り付けて各防振材の表面を相互に同一平
   面に配置するととともに、前記防振材の表面に内装用ボ
   ードを接合することを特徴とする内装用ボードの直貼り
   工法。
2. 【請求項２】 躯体壁面に所定間隔をあけて複数箇所に
   接着剤が塗布され、この接着剤の各塗布範囲に対応する
   大きさで、表面が相互に同一平面になるように前記接着
   剤に防振材が貼り付けられ、さらに、前記防振材の表面
   に内装用ボードが接合してあることを特徴とする遮音壁
   構造。
3. 【請求項３】 躯体壁面に所定間隔をあけて複数箇所に
   接着剤を塗布し、内装用ボードを前記躯体壁面に貼り付
   ける内装用ボードの直貼り工法において、 前記躯体壁面の前記接着剤を塗布すべき位置に孔を備え
   た吸音板を貼付するとともに前記各孔から露呈する前記
   躯体壁面に接着剤を前記吸音板の表面から一部突出させ
   るようにして盛り上げて塗布し、前記吸音板の表面に前
   記内装用ボードを接合することを特徴とする内装用ボー
   ドの直貼り工法。
4. 【請求項４】 所定間隔をあけて複数箇所に孔を備えた
   吸音板が躯体壁面に貼設してあり、前記各孔から露呈す
   る前記躯体壁面に接着剤が塗布されるとともに、前記接
   着剤に内装用ボードが接着してあることを特徴とする遮
   音壁構造。
5. 【請求項５】 請求項３に記載の内装用ボードの直貼り
   工法において、前記接着剤が塗布された各孔に対応する
   防振材を前記孔に収めて各防振材の表面を相互に同一平
   面に配置するととともに、前記防振材表面に内装用ボー
   ドを接合することを特徴とする内装用ボードの直貼り工
   法。
6. 【請求項６】 請求項４に記載の遮音壁構造において、
   前記接着剤が塗布された各孔と対応して前記孔内に防振
   材を収めて接着するとともに、前記防振材表面に内装用
   ボードを接合してあることを特徴とする遮音壁構造。