JPH1088234A - 安定して高い磁束密度を有する方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

安定して高い磁束密度を有する方向性珪素鋼板の製造方法

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JPH1088234A
JPH1088234A JP8243599A JP24359996A JPH1088234A JP H1088234 A JPH1088234 A JP H1088234A JP 8243599 A JP8243599 A JP 8243599A JP 24359996 A JP24359996 A JP 24359996A JP H1088234 A JPH1088234 A JP H1088234A
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annealing
rolling
less
cold rolling
magnetic flux
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JP8243599A
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Inventor
Noritaka Takahashi
紀隆 高橋
Nobuo Yamagami
伸夫 山上
Yasushi Tanaka
靖 田中
Yoshihito Uemoto
好仁 上元
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】短時間焼鈍で安定したGoss組織を形成する
ことができ、磁束密度B8がばらつき少なく安定して1.
90T 以上にすることができる方向性珪素鋼板の製造方法
を提供すること。 【解決手段】特定組成の鋼塊を1000℃以上に加熱した
後、所定条件で中間焼鈍を挟んで3回の圧延を行い、さ
らに還元性雰囲気等において1000〜1300℃の温度で最終
焼鈍して結晶方位がGoss方位に集積した磁束密度の高い
珪素鋼板を製造するに際し、鋼中に含まれる不純物の量
を以下の式を満足する量とする。 0.013 ×[C] +0.004 ×[Mn]+0.08×[P] +0.40×[S]
×[Al]+0.008 ×[N]+0.0024×[Cr]+0.0022×[Ni]+
0.0010×[Cu]+0.5 ×[Sn]+[Nb]+0.25×[Ti] (ただし、各元素の量はppmである)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Goss方位に集
積した結晶方位を有する磁束密度の高い方向性珪素鋼板
を経済的に短時間で安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、主としてトランスの
鉄心として使用されている。Gossによる{110}
<001>方位を持つ珪素鋼板の製造方法の発明以来、
このようなGoss組織を有する方向性珪素鋼板の製造
方法が提案されている。これらの製造方法を大別すると
以下の3つに要約される。
【0003】第一の方法は、2回冷圧法と呼ばれる方法
である。この方法はGoss法を改良した方法であり、
製鋼段階でMn,Sb,S,Se等を添加し、これらの
元素およびその微細析出物による結晶粒成長抑制作用を
利用して2次再結晶を行なわせるものである。具体的に
は、C:0.02〜0.08wt%、Si:2.0〜
4.0wt%、Mn:0.2wt%程度、S:0.00
5〜0.05wt%の成分を持つ鋼塊を溶製し熱間圧延
によって板厚2.0〜3.0mmに圧延後、熱延板焼鈍
を施し、次いで圧延率70%程度の冷間圧延を施し、引
き続き850〜1050℃の中間焼鈍を施し、さらに圧
延率60〜70%で冷間圧延を施し、800〜850℃
で脱炭焼鈍後、1100℃以上の温度で5〜50時間焼
鈍して2次再結晶およびインヒビターの除去(純化焼
鈍)を行い、Goss粒を成長させる(例えば、特公昭
51−13469号公報)。
【0004】第二の方法は1回冷圧法と呼ばれる方法で
ある。この方法は冷間圧延回数を1回にした方法で、2
回冷圧法よりもGoss粒の集積度が高いことで知られ
ている。具体的には、C:0.02〜0.08wt%、
Si:2.0〜4.0wt%、Mn:0.2wt%程
度、N:0.01〜0.05wt%、Al:0.1wt
%程度の成分を持つ鋼塊を溶製し熱間圧延によって板厚
2.0〜3.0mmに圧延後、熱延板焼鈍を施してAl
N析出処理を施し、次いで圧延率80〜95%の冷間圧
延を行った後、脱炭焼鈍を施し、しかる後、1200℃
で20時間の高温焼鈍によって2次再結晶およびインヒ
ビターの除去(純化焼鈍)を行い、Goss粒を成長さ
せる(例えば、特公昭40−15644号公報)。
【0005】第三の方法は、インヒビターを用いずにG
oss組織を形成する方法である。この方法は、単純に
特定条件の圧延と熱処理とを組み合わせることによりG
oss粒を発達させるものである。
【0006】上記の方法のうち第一、第二の方法は脱炭
焼鈍、純化焼鈍が必須であるため、高温長時間の焼鈍が
不可欠である。このため製造コスト、設備コストが高く
なることが避けられない。
【0007】また、鉄損を低減するために最終板厚を
0.20mm以下にしようとすると2次再結晶現象が不
安定となり、全面Goss粒で占めることは困難とな
る。このため現状では板厚0.20mm程度のものが製
造限界となっている。
【0008】第三の方法は、脱炭焼鈍、純化焼鈍が不要
であるために製造コスト上は上記第一、第二の方法に比
べて有利である。しかし、Goss粒成長機構は極めて
不安定であるために、安定に製造することが困難である
と考えられていた。
【0009】そこで、本発明者らは、特開昭64−55
339号、特開平2−57635号、特開平7−767
34号の各公報に示すように、インヒビターを用いない
上記第三の方法を前提として、全面Goss粒で覆われ
れ、最終的に得られる磁束密度(B8;800A/m印
加時の磁束密度)が1.90T以上である方向性珪素鋼
板の製造方法を提案した。この方法は、基本的には3%
Si鋼板においてインヒビターを用ず冷間圧延を1回か
ら3回施し、最終焼鈍として雰囲気中の酸素濃度をコン
トロールし、{110}<001>に集積した方向性珪
素鋼板を製造するものであり、冷間圧延の組み合わせと
方位形成のための最終焼鈍条件(温度、雰囲気)を規定
し、従来の技術と異なるインヒビターを用いない方向性
珪素鋼板の製造を可能にするものである。また、連続焼
鈍法の適用可能性を生じさせるために最終焼鈍時間の短
時間化にも取り組み、10分間以内の焼鈍時間で安定し
たGoss組織を得ることができる製造方法についても
提案した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らがさらに検
討した結果、先願である特開昭64−55339号、特
開平2−57635号、特開平7−76734号の各公
報に開示されている方法では確かに磁束密度B8が1.
9T以上の珪素鋼板が得られるものの、材料特性の場所
によるばらつきが大きく、安定して製造することが困難
であり、実用上十分でないことが明らかとなった。
【0011】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであって、インヒビターを用いない製造方法を前提
とし、短時間焼鈍で安定したGoss組織を形成するこ
とができ、磁束密度B8がばらつき少なく安定して1.
90T以上にすることができる方向性珪素鋼板の製造方
法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Goss
組織形成をより安定化させ、最終の磁気特性のばらつき
を低減させるべく、鋼中の不可避不純物と考えられてき
た元素の量を低減させたときに最終焼鈍時の結晶粒界の
移動が促進されるか否かについて、さらなる詳細な試験
および考察を重ねた。そして、上記先願の出願時点では
Goss組織形成の安定化を阻害しないと考えられてい
た不純物についても考慮して、最終焼鈍を10分間以内
で終了させ、かつ1.90T以上の磁束密度B8を得る
ために許容される鋼中不純物全体の最大含有量を求める
べく検討した。
【0013】以上の試験および研究の結果、本発明者ら
は、従来不可避不純物として考えられてきた元素がその
許容範囲とされていた量においても粒界移動を抑制する
ことを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】すなわち、本発明は、C:0.01wt%
以下、Si:2.5〜7wt%、S:0.01wt%以
下、Al:0.01wt%以下、Cu:0.01wt%
以下、N:0.01wt%以下、Nb:0.0005w
t%以下、Sn:0.001wt%以下、Ti:0.0
02wt%以下である鋼塊を1000℃以上に加熱した
後、仕上がり温度が700〜950℃の熱間圧延を施
し、次いで、圧延率30〜85%の一次冷間圧延を施し
た後、600〜900℃の非酸化雰囲気中で焼鈍し、さ
らに圧延率40〜80%の二次冷間圧延を施し、その後
600〜900℃の非酸化雰囲気中で焼鈍し、さらに圧
延率50〜75%の三次冷間圧延を施した後、引き続き
還元性雰囲気もしくは酸素分圧が0.5Pa以下の非酸
化性雰囲気、または酸素分圧が0.5Pa以下の真空中
において1000〜1300℃の温度で最終焼鈍して結
晶方位がGoss方位に集積した磁束密度の高い珪素鋼
板を製造するに際し、鋼中に含まれる不純物の量を以下
の式を満足する量とすることを特徴とする、安定して高
い磁束密度を有する方向性珪素鋼板の製造方法を提供す
る。
【0015】0.013×[C]+0.004×[M
n]+0.08×[P]+0.40×[S]+0.02
1×[Al]+0.008×[N]+0.0024×
[Cr]+0.0022×[Ni]+0.0010×
[Cu]+0.5×[Sn]+[Nb]+0.25×
[Ti]≦13.5(ただし、各元素の量はppmであ
る)
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、本願発明における化学成分の限定理由につ
いて説明する。Cは製鋼段階でできるだけ低減しておく
ことが磁気特性上好ましい。Cが0.01wt%を超え
ると磁気特性が著しく劣化する。このためCの上限を
0.01wt%に規定する。
【0017】Siは、電気抵抗を高める作用と、2.5
wt%以上の含有により金属学的変態点をなくし鋼をα
単相にする作用を有している。また、6.5wt%付近
では磁歪がゼロとなるため極めて優れた軟磁気特性が得
られる。しかし、7wt%を超えると磁歪が再び増大し
磁気特性が悪化するとともに、極めて脆くなるため実用
的ではない。このためSiの含有量を2.5〜7wt%
の範囲に規定する。
【0018】S,Nは通常の鋼中に含まれる代表的な元
素であるが、これらの元素は、固溶した状態でも析出物
の形態を採った状態でも粒成長性を阻害するため、でき
る限り低減することが好ましい。但し、製鋼段階で極端
な低減を行うとコスト増の原因となるため、粒成長性を
阻害しない範囲としてこれらの含有量の上限をそれぞれ
0.01wt%に規定する。
【0019】Alはα鉄への固溶度が広く、かつ酸素と
の親和力が強い元素である。従って、最終的な熱処理に
よりGoss組織を形成する際に、熱処理雰囲気中の微
量酸素と反応して鋼板表面に酸化物層を形成してしまう
ため、表面エネルギーによる結晶粒成長が阻害されてし
まう。このため、Alの含有量をこのような不都合が生
じない0.01wt%以下に規定する。Al含有量のさ
らに好ましい範囲は0.005wt%以下である。Al
は脱酸剤として通常添加されるものであるため、特に厳
密に制御する必要がある。
【0020】Cuはα鉄への固溶度が小さな元素であ
り、最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶
粒成長を著しく阻害する元素である。また、Cuは製鋼
段階で0.05wt%程度含有される。従って、その含
有量を上述のような不都合が生じない0.01wt%以
下に減じることが必要である。好ましくは0.005w
t%以下である。ただし、Cuは融点が1083℃であ
り、1000℃程度以上の熱処理により揮発する成分で
あるため、0.01wt%よりも多く含有されていても
比較的長時間の熱処理により0.01wt%以下にする
ことが可能である。しかし、工程の効率化の観点からは
熱処理時間の延長は好ましくない。
【0021】Nb、Sn、Tiは通常不純物元素として
含有されるものであるが、いずれも最終焼鈍時のGos
s粒の粒成長を遅滞させる効果が強く、10分間以下の
短時間の最終焼鈍によりGoss組織をばらつきなく安
定して形成するためには、製鋼時成分調整後、Nb:
0.0005wt%以下、Sn:0.001wt%以
下、Ti:0.002wt%以下にする必要がある。
【0022】本発明では、このように個別的に各元素の
量を規定する他、C、Mn、P、S、Al、N、Cr、
Ni、Cu、Sn、Nb、Tiの総量についても規定す
る。すなわち、製鋼時成分調整後、これらの量が以下の
(1)式の範囲内にあることが必要である。
【0023】 0.013×[C]+0.004×[Mn]+0.08×[P]+0.40× [S]+0.021×[Al]+0.008×[N]+0.0024×[Cr] +0.0022×[Ni]+0.0010×[Cu]+0.5×[Sn]+[N b]+0.25×[Ti]≦13.5(ただし、各元素の量はppmである)… (1) この範囲を超え各種不純物が複合添加されると、最終焼
鈍時の粒成長を遅滞させる効果が強く、粒成長により短
時間でGoss組織をばらつきなく形成することができ
ず、また安定して磁束密度B8を1.90T以上にする
ことができなくなる。
【0024】すなわち、これらの元素は、通常不可避不
純物として極微量含まれるものである。したがって、各
種不純物が同時に微量含まれる場合においては、当然そ
の鋼かが重なるため単独の場合と異なる現象が生じる。
したがって、本発明では上記不純物元素が同時に含まれ
た場合のその合計量を規定しているのである。これらの
総量が上記(1)式の範囲内であれば最終焼鈍時の粒成
長を短時間でばらつきなく終了させることができる。
【0025】このような条件は当然ながら最終焼鈍時の
温度によっても大きく影響を受ける。最終焼鈍時の温度
が高ければ、微量元素の作用の仕方が温度によって異な
るため、より短時間で粒成長は終了する。本発明におい
ては後述するように、最終焼鈍温度を1000〜130
0℃と規定しており、この温度範囲において10分間以
下という短時間で最終焼鈍を終了させることができ、安
定して磁束密度B8を1.90T以上にすることができ
る。
【0026】本発明にて規定する成分範囲を満足させる
ためには、溶銑段階から十分な成分管理を行い、製鋼段
階においても投入するスクラップを厳密に管理すること
が肝要である。
【0027】次に、製造工程について説明する。上記組
成の溶解された鋼は、先ずインゴットに鋳造されるか或
いは連続鋳造法によりスラブとされ、次いで、このイン
ゴットまたはスラブは1000℃以上の温度に保持さ
れ、熱間圧延に供される。熱間圧延前の保持温度を10
00℃以上に規定したのは、粗圧延機あるいは仕上げ熱
間圧延機前段での熱延中の再結晶の促進と、700〜9
50℃の熱延仕上げ温度を確保するためである。なお、
熱間圧延は、インゴットまたはスラブを加熱炉にて10
00℃以上に加熱してから行ってもよいし、直接圧延に
より連続鋳造の後スラブ温度を1000℃以上に保持し
たまま行ってもよい。
【0028】また、熱間圧延の仕上温度は700〜95
0℃の範囲であることが必要である。仕上温度が700
℃未満では熱間圧延の圧延負荷が大きくなり過ぎ製造上
好ましくない上に、最終的なGoss粒の成長にも悪影
響を及ぼす。また、仕上温度を950℃超にするにはイ
ンゴット又はスラブの初期温度を高目に設定する必要が
あり、製造コスト上不利となる。
【0029】熱延板の板厚は最終製品の所望板厚によっ
て異なるが、概ね1.6mm程度から5.0mm程度と
なる。このようにして製造された熱延板は常法に従って
巻き取られるが、その巻取温度は560〜800℃とす
ることが好ましい。巻取温度が560℃未満では、熱延
終了後のランアウトテーブル上での冷却が実際上困難で
あるため実用性に欠け、一方、巻取温度が800℃を超
えると、巻取冷却中の表面酸化により酸洗性が悪化し、
実用的ではない。
【0030】なお、巻き取られた熱延コイルを、必要に
応じて連続炉或いはバッチ炉で熱延板焼鈍してもよい。
このときの熱延板焼鈍温度は700〜1100℃である
ことが好ましい。熱延板焼鈍温度が700℃未満では、
熱延時に形成された加工組織を消滅させることができな
いため、その効果が実質的に現われず、一方、熱延板焼
鈍温度が1100℃を超えると、操業上のコスト高の原
因となるために実用上問題となる。
【0031】このようにして作製された熱延板は常法に
従って一次冷間圧延される。このときの冷間圧延率は3
0〜85%とする。圧延率が30%未満の場合又は85
%を超える場合には、三次焼鈍の際の結晶粒の選択的粒
成長によるGoss粒の成長に好ましい集合組織が適切
に形成されず、最終焼鈍(三次焼鈍)後に十分成長した
Goss粒が得られない。この際の高い磁束密度を得る
ための最適冷間圧延率は、熱延板の仕上温度及び巻取温
度に応じて形成される熱延組織によって変化する。例え
ば、仕上温度が低め(750℃程度)の場合には、熱延
による圧延加工組織が発達しているために、一次圧延の
圧延率は低めでよい。一方、仕上げ温度が高め(850
℃程度)の場合には加工組織よりも再結晶組織のほうが
発達しているために、一次圧延の圧延率は高く設定され
る。なお、通常、冷間圧延は潤滑材を使用するが、潤滑
材を使用せず無潤滑で圧延を行っても同様の効果が得ら
れる。
【0032】一次冷延板は600〜900℃の温度で焼
鈍(一次焼鈍)される。焼鈍温度が600℃未満では、
焼鈍による完全再結晶を行わせることができない。一
方、焼鈍温度が900℃を超えると、再結晶は達成され
るが、焼鈍コストが不可避的に高くなってしまう。ま
た、短時間で再結晶を行わせ、かつ経済性をも確保する
には、特に680〜800℃の温度で焼鈍することが好
ましい。この焼鈍では、鋼板表面が若干酸化されたとし
ても、後に行われる冷間圧延前の酸洗によりその除去が
可能であるため、三次焼鈍(最終焼鈍)時の結晶方位の
Goss方位への集積を確保するという面では大きな問
題はない。しかし、酸化膜を過度に生成しないようにす
るという観点から、極力酸素分圧の低い非酸化性雰囲気
または真空中で行うことが好ましい。また、焼鈍時間は
通常2分以上であれば問題はない。このような焼鈍処理
は箱型炉によるバッチ焼鈍又は連続焼鈍にて実施するこ
とができる。
【0033】焼鈍処理における加熱条件は、連続焼鈍で
は加熱速度200〜500℃/分、保持時間が2〜5分
間程度が適当であり、バッチ焼鈍では加熱速度4〜20
℃/分、保持時間が1〜10時間が適当である。冷却速
度は、熱収縮による歪みが鋼板内に残留しない限りにお
いて、通常採用される冷却速度で構わない。例えば、6
00℃まで13.5℃/秒、300℃まで12℃/秒の
冷却速度が採用される。
【0034】上記一次焼鈍が施された鋼板は、圧延率4
0〜80%で二次冷間圧延される。圧延率が40%未満
あるいは80%超では、上述した一次冷間圧延の場合と
同様な理由で最終的なGoss粒の集積が十分でない。
この冷間圧延は、一次冷間圧延と同様、無潤滑、潤滑の
いずれでも実施可能である。
【0035】このようにして得られた二次冷延板は、再
び600〜900℃の温度で焼鈍される(二次焼鈍)。
焼鈍温度が600℃未満では、焼鈍による完全再結晶を
行わせることができない。一方、焼鈍温度が900℃を
超えると、再結晶は達成されるが、焼鈍コストが不可避
的に高くなってしまう。また、短時間で再結晶を行わ
せ、かつ経済性をも確保するには、特に680〜800
℃の温度で焼鈍することが好ましい。この二次焼鈍でも
一次焼鈍と同様の理由で鋼板表面の若干の酸化が許容さ
れるが、この場合も酸化膜を過度に生成しないようにす
るという観点から、極力酸素分圧の低い非酸化性雰囲気
または真空中で行うことが好ましい。この二次焼鈍時間
も一次焼鈍と同様に通常2分以上であれば問題はない。
この二次焼鈍処理も箱型炉によるバッチ焼鈍又は連続焼
鈍にて実施することができる。
【0036】なお、一次冷間圧延及び二次冷間圧延の後
に夫々実施される上述のような中間焼鈍の温度は、後述
する三次焼鈍後の鋼板の磁束密度特性に影響を与える。
従って、中間焼鈍としての一次焼鈍及び二次焼鈍の温度
を適切に規定する必要がある。
【0037】二次焼鈍が施された鋼板は、さらに圧延率
50〜75%で三次冷間圧延される。圧延率が50%未
満あるいは75%超では、上述した一次および二次冷間
圧延と同様な理由で最終的なGoss粒の集積が十分で
ない。この冷間圧延も、一次および二次冷間圧延と同
様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能である。
【0038】このようにして得られた三次冷延板は、さ
らに1000〜1300℃の温度で焼鈍される(三次焼
鈍)。これにより表面エネルギーを利用した結晶粒成長
が生じ、Goss粒が成長する。焼鈍温度が1000℃
未満では、表面エネルギーを利用した結晶粒成長の駆動
力が十分でないため所望のGoss組織を得ることはで
きない。一方、焼鈍温度が1300℃を超えると、実質
的にこのような高温加熱のために必要なエネルギーコス
トが大きくなり過ぎ、実用上の問題を生じる。
【0039】この三次焼鈍(最終焼鈍)は、水素が必要
量以上含まれている実質的に還元性を有する雰囲気中
か、実質的に窒素、Ar等の不活性ガスを主体とし酸素
分圧が0.5Pa以下の非酸化性雰囲気又は酸素分圧が
0.5Pa以下の真空中で行う必要がある。これは、結
晶方位のGoss方位への集積を阻害する鋼板表面に対
する酸化膜の形成を防止するためである。真空雰囲気中
又は不活性ガス雰囲気中に酸素分圧が0.5Paを超え
る程度に酸素が含有される場合には、鋼板表面に酸化膜
が形成され、上記のような効果は得られない。
【0040】上述したように、本発明に従って微量の不
純物元素、および製造条件、特に最終焼鈍温度を規定す
ることにより、10分間以下という短時間でも最終焼鈍
を終了させることができ、安定して磁束密度B8を1.
90T以上にすることができる。本発明においては、最
終焼鈍時間は特に規定するものではない。しかし、連続
焼鈍の適用を考慮すると10分間以下が好ましい。な
お、最終焼鈍時間の下限は特に存在せず、3分間程度で
も十分なGoss組織を形成することができる。
【0041】本発明の方法で得られた鋼板は上述のよう
に短時間の最終焼鈍でもGoss粒が十分に安定して成
長し、直流で800A/mの磁界を印加したときの磁束
密度B8が安定して1.9T以上と優れた磁気特性を示
す。最終的に得られる磁束密度B8が1.9T以上が好
ましい理由は、1.9T未満であると電気機器に適用し
た場合に鉄心が大型化し、また鉄損の増大を招くおそれ
があるからである。
【0042】
【実施例】表1に示す各種不純物を変化させかつこれら
を複合添加した化学成分を有する鋼を溶製した後スラブ
となし、仕上温度830℃にて板厚2.5mmまで熱間
圧延を行った。酸洗により表面のスケール層を除去した
後、板厚0.5mmまで冷間圧延を施し、さらに中間焼
鈍として窒素雰囲気中において800℃で2分間の熱処
理を行なった。その後、この鋼板に対して板厚0.3m
mまで冷間圧延を施し、中間焼鈍として窒素雰囲気中に
おいて800℃で2分間の熱処理を行ない、最後に板厚
0.1mmにまで冷間圧延を施し、最終焼鈍として露点
−50℃、酸素濃度1.5ppmの水素雰囲気中におい
て加熱速度200℃/分で1200℃、10分間の熱処
理を施した。
【0043】このようにして作成した試料を幅10mm
長さ100mmに切断し、切断歪みを除去するために窒
素雰囲気中において800℃で2分間の熱処理を施し、
磁気測定に供した。ここでは、反磁界補正後の800A
/mの直流磁場を印加した磁束密度B8を求めた。な
お、それぞれの試料につて30枚ずつ磁束密度B8を測
定した。表1に30枚の平均の値を併記する。
【0044】
【表1】
【0045】表1に示すように、鋼番号1〜13は、上
記(1)式を満たす本発明の範囲内の組成を有し、磁束
密度B8の平均値はいずれも1.9T以上であり、最終
焼鈍が10分間で十分高い磁束密度B8が得られること
が確認された。
【0046】鋼番号14〜21は比較例である。これら
比較例においては、C,Si,sol.Al,N,C
u,Sn,Nb,Ti量は、上記特開平7−76734
号公報において最終焼鈍が10分間以内で磁束密度B8
が1.90T以上となるように規定している範囲内であ
るが、特開平7−76734号公報においてはGoss
粒成長性に影響を及ぼさないと考えられていたMn、
P、Cr、Niの複合添加を行っており、上記(1)式
の左辺の値が13.5を超えている。したがって、これ
らの元素の影響によりGoss粒成長の遅延効果が強く
なり、10分間の最終焼鈍ではGoss粒成長が不十分
となるため、磁束密度B8の平均値が1.90T未満で
あった。
【0047】図1〜図4にそれぞれ鋼番号2,11,1
9,20における試料30枚の磁束密度B8の分布を示
す。図1,2から、鋼番号2および11は、(1)式の
左辺の値がそれぞれ6.1および11.2と本発明の範
囲内であり、ばらつきが少なく安定して良好な磁束密度
B8が得られることが確認される。
【0048】これに対して、鋼番号19は(1)式の左
辺の値が19.1と本発明の範囲外であり、図3に示す
ように、磁束密度B8が1.92Tと良好なものがある
ものの、その値は1.72〜1.92Tと大きくばらつ
いている。すなわち、磁束密度測定のための試験片採取
位置によってGoss粒の成長が異なり、Goss粒の
成長が不均一であって、安定して良好な磁束密度B8を
得ることができなかった。また、鋼番号20は(1)式
の左辺の値が21.3と本発明の範囲から大きく外れて
おり、磁束密度B8の値自体も低く、しかもそのばらつ
きも少ない。したがって、Goss粒成長が全く不十分
であることが確認された。
【0049】
【発明の効果】この発明によれば、インヒビターを用い
ない製造方法を前提とし、10分間以下の短時間焼鈍で
も安定したGoss組織を形成することができ、磁束密
度B8がばらつき少なく安定して1.90T以上にする
ことができる方向性珪素鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の範囲内である鋼番号2の磁束密度の分
布を示すグラフ。
【図2】本発明の範囲内である鋼番号11の磁束密度の
分布を示すグラフ。
【図3】比較例である鋼番号19の磁束密度の分布を示
すグラフ。
【図4】比較例である鋼番号20の磁束密度の分布を示
すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上元 好仁 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01wt%以下、Si:2.5
    〜7wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.01
    wt%以下、Cu:0.01wt%以下、N:0.01
    wt%以下、Nb:0.0005wt%以下、Sn:
    0.001wt%以下、Ti:0.002wt%以下で
    ある鋼塊を1000℃以上に加熱した後、仕上がり温度
    が700〜950℃の熱間圧延を施し、次いで、圧延率
    30〜85%の一次冷間圧延を施した後、600〜90
    0℃の非酸化雰囲気中で焼鈍し、さらに圧延率40〜8
    0%の二次冷間圧延を施し、その後600〜900℃の
    非酸化雰囲気中で焼鈍し、さらに圧延率50〜75%の
    三次冷間圧延を施した後、引き続き還元性雰囲気もしく
    は酸素分圧が0.5Pa以下の非酸化性雰囲気、または
    酸素分圧が0.5Pa以下の真空中において1000〜
    1300℃の温度で最終焼鈍して結晶方位がGoss方
    位に集積した磁束密度の高い珪素鋼板を製造するに際
    し、 鋼中に含まれる不純物の量を以下の式を満足する量とす
    ることを特徴とする、安定して高い磁束密度を有する方
    向性珪素鋼板の製造方法。 0.013×[C]+0.004×[Mn]+0.08
    ×[P]+0.40×[S]+0.021×[Al]+
    0.008×[N]+0.0024×[Cr]+0.0
    022×[Ni]+0.0010×[Cu]+0.5×
    [Sn]+[Nb]+0.25×[Ti]≦13.5
    (ただし、各元素の量はppmである)
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104299746A (zh) * 2014-09-17 2015-01-21 明光市锐创电气有限公司 一种变压器用的冷轧硅钢片
CN113710822A (zh) * 2019-04-23 2021-11-26 杰富意钢铁株式会社 取向性电磁钢板的制造方法

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CN104299746A (zh) * 2014-09-17 2015-01-21 明光市锐创电气有限公司 一种变压器用的冷轧硅钢片
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