JPH108202A - 鉄道用車軸およびその製造方法 - Google Patents
鉄道用車軸およびその製造方法Info
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- JPH108202A JPH108202A JP15731796A JP15731796A JPH108202A JP H108202 A JPH108202 A JP H108202A JP 15731796 A JP15731796 A JP 15731796A JP 15731796 A JP15731796 A JP 15731796A JP H108202 A JPH108202 A JP H108202A
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Abstract
車軸とその製造方法の提供。 【解決手段】(1)重量%で、C:0.3〜0.48
%、Si:0.05〜1%、Mn:0.5〜2%、C
r:0.5〜1.5%、Mo:0.15〜0.3%、N
i:0〜2.4%を含む鋼からなり、表面から内部にか
けて焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの領域を有
する車軸であって、車輪が嵌合される表面部においてビ
ッカース硬さ400以上である硬化層深さが1〜4.5
mmの範囲にあり、その内部に焼戻しマルテンサイトま
たはベイナイトの領域を有する高疲労強度の鉄道用車
軸。(2)熱間鍛造により所定の形状にし、焼入焼戻し
処理を行った後に、はめ合部に高周波焼入れを施す上記
(1)に記載する高疲労強度の鉄道用車軸の製造方法。
Description
において高疲労強度を示す鉄道用車軸およびその製造方
法に関する。
動力およびブレーキ力を伝達する機能を有する台車にお
ける最重要部品である。車軸の損傷は直接的に重大事故
に結びつくので高い信頼性が要求される。とくに車輪が
嵌合される部分(以後、“はめ合部”という)では車軸
と相手部材(車輪)との微小な相対すべりを原因とする
フレッティング疲労が生じ疲労強度が大幅に低下する。
この問題に対処する方法を提案した代表例として、車軸
に低温焼入れ処理を施すとはめ合部の疲労限度が著しく
向上するとする文献(西岡、西川、小松:日本機械学会
論文集,38(1972),p.933)がある。
ことなくキルド鋼を鍛造したJIS E4502-SFA 55あるいは
JIS E 4502-SFA 60がそのまま用いられる。しかし、新
幹線用車軸や機関車用車軸のようにより高い信頼性が要
求される台車の車軸は、上記したように、JIS機械構
造用鋼S38Cを素材として表面に高周波焼入れを施
し、疲労強度を向上させる対策がとられている(手塚:
鉄道技術,43(1986),p.205)。
海道新幹線の現在の営業速度270km/hを、最高で
450km/hに向上する計画が提案されている。走行
時には、車両重量から成る静荷重のみならず走行時の振
動、加速度による動荷重が車軸に負荷されるため、車軸
に負荷される荷重は走行速度とともに大きくなる。この
ため現行の耐久性を維持するためには、車軸の軸径を大
きくしはめ合部に発生する応力を低減する必要がある。
荷重が増加するため、車軸に負荷される荷重はさらに大
きくなり、結果としてはめ合部に発生する応力は増加す
る。したがって、高速化に対応するためには、車軸材料
または表面処理方法を改良しはめ合部の疲労強度を向上
させることが必要である。
材料および表面処理方法を改善し、現行車軸以上のはめ
合部の疲労強度を有する車軸およびその製造方法を提供
することにある。具体的には、現行の疲労強度(220
MPa以上)を20%向上させた疲労強度265MPa
以上とすることにある。
び(2)の鉄道用車軸およびその製造方法を要旨とす
る。
%、Si:0.05〜1%、Mn:0.5〜2%、C
r:0.5〜1.5%、Mo:0.15〜0.3%、N
i:0〜2.4%を含む鋼からなり、表面から内部にか
けて焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの領域を有
する車軸であって、車輪が嵌合される部分(はめ合部)
の表面部においてはビッカース硬さ400以上である硬
化層深さが1〜4.5mmの範囲にあり、その内部に焼
戻しマルテンサイトまたはベイナイトの領域を有する高
疲労強度の鉄道用車軸。 (2)熱間鍛造により所定の形状にし、焼入焼戻し処理
を行った後に、はめ合部に高周波焼入れを施す上記
(1)に記載する高疲労強度の鉄道用車軸の製造方法。
上記(1)において、鋼は上記の合金元素以外にA
l、Ca、Ti、Nb等の微量元素を含んでもよい。
よびその軸方向外側十数mmづつの両側の車軸表面部を
含む範囲とする。
ッカース硬さ400以上となる領域が、表面からの距離
0〜1mmの部分から表面からの距離0〜4.5mmの
部分の範囲内にあることを指す。ビッカース硬さ測定は
試験荷重1kgでの硬さ(HV1)とする。ビッカース
硬さ400以上の表層部を以後の説明において単に“硬
化層”という場合がある。
はベイナイトの領域は、ビッカース硬さ400以上の硬
化層と接していてもいなくてもよい。ビッカース400
以上の硬化層よりやや内部の、より硬さの低い高周波焼
入れ部分(高周波焼入れの裾の部分)に接して存在する
ほうが普通である。また、車軸の中心まで上記の焼戻し
マルテンサイトまたはベイナイトになっている必要はな
い。
トは、上記の高周波焼入れに先だって焼入焼戻しを行っ
て生じた組織が、表層近傍に効果が限定される高周波焼
入れによって変化せずに残存した内部の領域を指す。こ
の焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの領域は、後
記する高周波焼入れ後の低温焼戻しよりも高い温度で十
分焼戻されているので、十分な靭性を有し、かつ炭化物
は均一微細分散しているので引張強さも確保されてい
る。
ナイトの場合は、焼戻しによって大部分の炭化物を析出
するマルテンサイトと異なり“焼戻しベイナイト”と言
わないのが普通であり、本説明においても同様とする。
うとき、高周波焼入れに引き続いて150〜300℃程
度の低温焼戻しを行う場合も含めることとする。
る。
労強度は表面の硬さおよび残留応力に依存する。さらに
今回、丸棒試験片を用いた基礎的な高周波焼入れ試験に
より、つぎのことを定性的に確認した。
縮残留応力は、母材の成分に依存し母材強度とともに高
くなる傾向にある。
焼入れ後の硬化層のなかの最高硬さにも依存し、この最
高硬さが高いほど高くなる。しかし、むやみに硬さを高
くすると焼割れを発生するので最高硬さおよび硬化層深
さを適正な範囲にする必要がある。
成を調整することにより、母材強度および硬化層深さを
適正に設定することを目的に疲労強度に及ぼす成分の影
響を定量的に評価した。
示す一覧表である。
0℃焼入れ480℃焼戻し)後の引張強さが980MP
a級となるように、現行のS38Cに対しCrおよびM
oを増量したものをベースにした。これらの鋼の不純物
のうちPは0.018〜0.028%、Sは0.01〜
0.024%の範囲にあった。これらの鋼を熱間鍛造
し、さらに焼入焼戻し処理を行い、試験片を採取してつ
ぎの試験に供した。
軸(軸直径40mm)の形状をあらわす図面である。こ
の試験片について、数回の試行により表面の硬化層の深
さを3mmとする条件(シングルショット方式:電流2
00〜250A、電圧800〜900V、加熱時間10
〜20sec、冷却遅延時間0〜5秒、冷却時間10〜
20sec)を設定し、高周波焼入れを実施した。
る模擬車輪の形状をあらわす断面図および側面図であ
る。
験の試験装置を示す図面である。同図に示すように、疲
労試験は、片持ち回転曲げにて行った。
元素ごとに疲労強度に及ぼす影響を示した図面である。
ここで疲労強度とは、1×108 回の回転曲げ後にはめ
合部の表面に長さ0.1mm以上のき裂(磁粉探傷にて
検出できる限界のき裂に相当)が生じない限界の応力振
幅とした。
明の効果を上記の試験装置を用いて確認したうえで完成
されたものである。
以下に述べる。以下、[%]はいずれも重量%を示すも
のとする。
照)。
面の硬さを向上させる元素であり、図3に示すように、
Cの増加とともに疲労強度は単調に増加する。そこで疲
労強度が265MPaを超える0.3%を下限とする。
またCが過剰な場合には、表面の硬さが高くなりすぎて
研削ができなくなるとともに、焼入れ時あるいは研削時
に割れが発生する可能性がある。上記の調査では、図3
に示すように0.50%にて高周波焼入れにより焼き割
れが発生したため0.48%を上限とする。
えでも有効である。十分脱酸を行うためには、脱酸後凝
固した鋼中にSiが0.05%以上は残存していなけれ
ばならない。しかし1%を超えても疲労強度は向上せ
ず、むしろ靭性が著しく低下するため1%を上限とす
る。
くとも0.5%を含有しなければならない。しかし、過
剰に含有してもその効果は飽和するとともに靭性も劣化
するので2%を上限とする。
示すように0.5%以上にて疲労強度の目標を達成でき
るから、0.5%を下限とする。しかしながら1.5%
を超えて過剰に含有すると、高周波焼入れの際、硬化層
が過大になり所定の残留応力が得られず疲労強度が低下
するので、0.5〜1.5%とする。
に、母材の強度を高める作用が強い元素である。図3に
示すように疲労強度はMo量とともに増加するため、疲
労強度265MPaを超える含有量0.15%を下限と
する。また過剰に含むと、Crと同様な理由により疲労
強度は低下し、0.3%程度で目標値265MPaを下
回るので0.3%を上限とする。
のに効果的な元素であるが、高価であり、焼戻し脆
化を促進し、また、Niを添加しなくても疲労強度の
目標を達成できるからである。Niの増量につれて疲労
強度は向上するが、2.4%でほぼ飽和しているので
2.4%を上限とする。
介在物の形状制御を目的としてAl、Ca、Ti、Nb
等の合金元素を微量含有させることによりより一層の性
能の向上を図ってもよい。
焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの組織を有する
ものとする。これは、引張強さ980MPaを満足した
うえで十分な靭性を確保するためである。この組織が車
軸の中心まで存在している必要はなく、内部はフェライ
トとパーライトの混合組織であってもよい。靭性が要求
されるのは表面付近であり、また軸中心まで焼戻しマル
テンサイトまたはベイナイトでなくても車軸として引張
強さ980MPa級を満足することができるからであ
る。
以上の硬化層の深さを表層部1〜4.5mmの範囲内と
する。硬化層深さ1mm未満では疲労強度が十分向上し
ないからであり、一方、4.5mmを超える領域をビッ
カース硬さ400以上とすると遅れ破壊などを発生する
危険性が増大するので、硬化層の深さの範囲は1〜4.
5mmとする。
マルテンサイトまたはベイナイトの領域を有するのは、
車軸が十分な強度および靭性を確保するのに必要だから
である。この組織は後記する高周波焼入れを行う前は、
硬化層にも存在していたものである。高周波焼入れの
際、これら組織中に分散していた微細な炭化物は短時間
のうちに固溶し硬化層の硬さをビッカース硬さで400
以上とすることを補助する。
さ400以上の硬化層に接しないで、より硬さの低い、
より内部の高周波焼入れされた部分と接していてもよ
い。また、車軸の中心までこの組織である必要はない。
強度および靭性が問題となるのは、ほとんど例外なく表
面〜表面から数十mmの範囲に限定されるからである。
学組成を後記する製造条件で製造して硬化層深さ1〜
4.5mmの範囲としたとき、圧縮残留応力の最大値は
1200〜1000MPaとなり、残留応力が圧縮とな
る表面部分は、0〜3mmとなる。はめ合部の疲労強度
の向上に、この圧縮残留応力が大きな働きをするが、硬
化層深さが上記の範囲を満足すれば、圧縮残留応力の確
保も保証されるのである。
より粗成形した後、調質処理(焼入焼戻し)を施す。焼
入れ前の加熱温度はAc3 点〜950℃とするのが望ま
しい。上記の合金元素の中心値の鋼の場合のAc3 点は
800℃程度である。焼戻しは450〜675℃の範囲
とすることが望ましい。450℃未満では十分な靭性を
確保しにくく、また675℃を超えると上記したCr炭
化物やMo炭化物が凝集粗大化して、高周波焼入れの際
に十分固溶しなくなるので675℃以下とすることが望
ましい。
して高周波焼入れ前半仕上げ研削を行ったほうがよい。
上記の焼入焼戻しにより表面に脱炭層が生成する場合が
あり、そのときは高周波焼入れによって必要な硬さを得
にくいからである。
z)コイルにより急速加熱後、水噴射により急冷する。
このときの高周波加熱条件は、前記した条件:シングル
ショット方式、電流200〜250A、電圧800〜9
00V、加熱時間10〜20sec、冷却遅延時間0〜
5秒、冷却時間10〜20secの範囲でおこなうこと
が望ましい。
う場合もある。
圧入し使用に供する。
る。
の化学組成を示す一覧表である。
て溶解し、鋼塊に鋳込み、熱間鍛造により、図1に示す
模擬車軸の形状に厚さ15mmの余肉をつけた丸棒形状
(80mmφ)にした。これらの鋼の不純物のうちPは
0.018〜0.028%、Sは0.01〜0.024
%の範囲にあった。
0℃焼戻し)を施し、仕上げしろ約1mm(直径)を残
して高周波焼入れ前半仕上げ研削を行った。焼入焼戻し
処理の結果、はめ合部以外では表面から15mmまでが
焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの組織であり、
はめ合部では硬化層に接する部分から、当然のことであ
るが15mmまでが同じ組織であった。。
z)コイルにより急速加熱後、水噴射により急冷し、約
200℃にて焼戻しを行った。なお、誘導加熱条件は、
有効硬化層深さ(HV400以上の硬さを示す深さ)が
約2.5mmとなるよう各鋼ごとに調整した。高周波焼
入れ後、仕上げ研削を行い、図1(b)の車輪に相当す
るボスに圧入した。この試験体を図2に示す試験装置に
装着して疲労試験を行った。
スを抜き取り、はめ合部表面のき裂を観察することによ
り行った。疲労強度は、前記した試験と同様にはめ合部
に表面の長さ0.1mm以上のき裂(磁粉探傷にて検出
できる限界のき裂に相当)が生じない限界の応力振幅と
した。
度265MPa以上を達成しているのに対して、比較例
はいずれも目標性能を達成していない。すなわち、試験
番号11はCが低いために、13はMnが低いために、
14はCrが低いために、また16はMoが低いため
に、いずれも目標性能を達成することができない。逆に
試験番号12はCが高いために高周波焼入れにおいて焼
き割れを発生し、また15および17はそれぞれCrお
よびMoが過剰であるために、高周波焼入れにおいて必
要な硬化層深さとすることができずに目標とする疲労強
度を達成することができなかった。
はめ合部の疲労強度を現行の疲労強より20%以上高い
ものが得られることは明白である。
より、高度の安全性が要求される高速鉄道用車軸のはめ
合部の疲労強度を現行のものより20%以上向上させる
ことができる。輸送手段の基幹をなす高速鉄道のより速
い走行の成否を左右する重要な技術を提供するものであ
る。
車輪の断面図および側面図を表す。
表す。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%で、C:0.3〜0.48%、S
i:0.05〜1%、Mn:0.5〜2%、Cr:0.
5〜1.5%、Mo:0.15〜0.3%、Ni:0〜
2.4%を含む鋼からなり、表面から内部にかけて焼戻
しマルテンサイトまたはベイナイトの領域を有する車軸
であって、車輪が嵌合される表面部においてはビッカー
ス硬さ400以上である硬化層深さが1〜4.5mmの
範囲にあり、その内部に焼戻しマルテンサイトまたはベ
イナイトの領域を有することを特徴とする高疲労強度の
鉄道用車軸。 - 【請求項2】熱間鍛造により所定の形状にし、焼入焼戻
し処理を行った後に、車輪が嵌合される部分に高周波焼
入れを施すことを特徴とする請求項1に記載する高疲労
強度の鉄道用車軸の製造方法。
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