JPH10506194A - 含硫黄化合物の検出 - Google Patents
含硫黄化合物の検出Info
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- JPH10506194A JPH10506194A JP8511500A JP51150096A JPH10506194A JP H10506194 A JPH10506194 A JP H10506194A JP 8511500 A JP8511500 A JP 8511500A JP 51150096 A JP51150096 A JP 51150096A JP H10506194 A JPH10506194 A JP H10506194A
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Abstract
(57)【要約】
より一般的な含硫黄化合物、例えば、含硫黄アミノ酸のごとき天然化合物から特定の有機硫黄化合物を区別できる、特定の有機硫黄化合物の検出方法を提供する。痕跡量またはそれ以上のかかる化合物の測定は、環境、生物学および医学の分析の分野で特に重要である。
Description
【発明の詳細な説明】
含硫黄化合物の検出
本発明は、より一般的な含硫黄化合物、例えば含硫黄アミノ酸のごとき天然化
合物から特定の有機硫黄化合物を区別できる、特定の有機硫黄化合物の検出方法
に関する。好ましくは、痕跡量またはそれ以上のかかる化合物の測定は、環境、
生物学および医学の分析の分野で特に重要である。
ほとんどの場合にルミノールおよびペルオキシオキサレート反応(Robar
ds K.およびWordfold P.J.,Anal.Chim.Acta
,1992,266 147)を利用する無機および有機化合物の測定のために
、多数の液相化学ルミネセンス手法が開発させているが、他の化学ルミネセンス
反応も提案されており、例えば、ある化合物の有機硫黄化合物は化学ルミネセン
スを生じることが見い出されている(Lancaster J.S.およびWo
rsfold P.J.Anal.Proc.,1989,26 19)。
本発明は、システインおよびシスチンのごとき他の有機硫黄化合物から特定群
の有機硫黄化合物を区別できる方法を提供す
る。
マスタードガス、ビス−(2−クロロエチル)−スルフィド(化学戦で使用で
きる毒ガス)の測定は、戦闘シナリオにおいて、およびかかる薬剤の使用を規制
する国際法が犯されていないことを確認するために、特に重要である。チオジグ
リコールはマスタードガス製造の主要前駆体の1つであり(Lundis S.
J.「Verification of Dual−Use Chemical
s Under the Chemical Weapons Convent
ion: The Case of Thiodiglycol」1991 S
IPRI)、加水分解によるマスタードガスの主要な環境分解生成物であり(B
lack P.M.,Clarke R.J.,Read R.W.およびRe
id M.T.J.,J.Chromatogr.,1994,662 301
)、マスタードガスに害されているヒトの生物学的試料中に存在することが示さ
れている(Wils E.R.J.,Hulst A.G.,de Jong
A.L.,Verweij A.およびBoter H.L.,J.Anal.
Tox.,1985 9 254)。かくして、チオジグリコールおよび
マスタードガスの他の加水分解生成物、例えば、2−クロロ−2−ヒドロキシジ
エチルスルフィドを検出する能力は毒ガスが秘密に使用されたことを示すものと
して価値がある。
これらの化合物の信頼できる測定が必要なことから、ほとんどの場合、ガスク
ロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)またはGC−MS−MSの使用を含
めた、多数の精巧な機器方法が開発された。これらは、同定および定量のために
種々の様式のイオン化を用い、また、スクリーニング目的の特定イオンのモニタ
リング様式で検出器を使用するが、チオジグリコールの分析に誘導体化手法が必
要である。マスタードガスおよびその分解生成物は吸収特性に乏しく、電磁波ス
ペクトルの紫外線または可視領域で蛍光を発せず、従って、通常の液相方法によ
る検出は限界があり、再度しばしば誘導体化が必要である。マスタードガスおよ
びチオジグリコールのごとき含硫黄化合物の直接的測定に必要な所要の選択性を
与える感度のよい液相システムはいまだ利用できるに至っていない。
かかる化合物の毒性が高いことは、低レベルでの該化合物の検出が特に有用で
あることを意味する。本発明の方法は、0.2μgml-1(2×10-6M)の濃
度で試料中に存在する
チオジグリコールを検出できるが、該方法は、1μgml-1の濃度で試料中に存
在する有機硫黄化合物の検出においても使用できる。従って、該方法の感度は、
2−エチルチオフェノールの理論的検出限界を4×10-4Mと記載し、2×10-2
M以下の発光および5×10-3Mの非常に低い発光を示す例を与えるLanc
asterおよびWorsfoldによって記載された化学ルミネセンスを研究
する従前の方法よりもかなり良好である。
本発明の試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する少なく
とも1つの化合物の存在および/または量を測定する方法は、
i)酸化剤を試料に添加し、
ii)生じた化学ルミネセンスを測定し、
生じた化学ルミネセンスを、試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィド
に関連した化合物の存在および/または量に関連付ける工程よりなる。
検出される化合物は、ビス−(2−クロロエチル)−スルフィドの形成(例え
ば、反応体、副生成物)に関連するか、あるいは分解生成物であって、1,2−
ビス(2−クロロエチルチ
オ)エタン、ビス−(クロロエチルチオエチル)エーテルおよびチオジグリコー
ルを含む。
好ましい実施態様は、酸化剤を添加する前に試料を加水分解する工程を含み、
例えば、加水分解されてチオジグリコールとなり得る化合物、例えば、2−クロ
ロ−2−ヒドロキシジエチルスルフィドおよびビス−(2−クロロエチル)−ス
ルフィドの検出が可能となる。
さらに、好ましい実施態様は、化学ルミネセンスを測定した後に試料にチオジ
グリコールスルホキシドをチオジグリコールに還元できる還元剤を添加し、試料
の化学ルミネセンスを再度測定し、該還元剤の添加の前後における試料の化学ル
ミネセンスの差を、処理前の試料中に存在していたチオジグリコールスルホキシ
ドの量に関連付ける工程を含む。
より好ましくは、還元剤は四塩化チタンである。
試料の加水分解後に行われる測定は、存在するチオジグリコールおよびその加
水分解可能な前駆体の合計量を反映するであろう。前駆体の量は、加水分解の前
後に測定したシグナル間の差から決定できる。しかしながら、マスタードガスお
よびその分解生成物をスクリーニングする目的では、陽性という結果で
十分であって、定量的測定は必要でない。
増感剤、すなわち、化学ルミネセンスシグナルの強度を増加させることができ
る蛍光性化合物を、化学ルミネセンスを測定する前に試料に添加することもでき
る。かかる高度に蛍光性の化合物の化学ルミネセンス系への添加は、以下の式に
従う蛍光分子へのエネルギー移動を介して、比較的弱いシグナルを増強すること
が知られている。
A + B → P*
P* + F → F* + P
F* → F + hv
ここに、Fは蛍光分子を表し、AおよびBは最初の反応体であり、P*は電子的
に励起された状態の生成物である。
適当な増感剤は、キサンテン類およびそれらの誘導体および塩(例えば、ロー
ダミンB)フルオレセイン、ローズベンガルおよびカルセイン)を含む。アジン
類、例えば、フェノサフラニンおよびチアジン誘導体(Dictionary
of Analytical Regeants,Townsend A.,B
urns D.T.,Lobinski R.,Guilbault G.G.
Newman Ej,
Marnzenko Z.,Onishi H;774頁,(1993),Ch
apmanおよびHall,London,New York)も、フェナザチ
オゾニウム類およびそれらの誘導体を含めて適当な増感剤である。メチレンブル
ーが特に有用である。本発明の好ましい実施態様はローダミンBを利用して化学
シグナルを100倍以上も増強させる。
本発明の方法で使用する適当な酸化剤は、化学ルミネセンスの放出を干渉する
ことなく二価の硫黄を酸化できるものであって、その例は次亜塩素酸塩、例えば
、次亜塩素酸ナトリウムを含む。
化学ルミネセンスは、光検出器、例えば、光電子増倍管または固体フォトダイ
オードを用いて測定できる。適当には、化学ルミネセンスは550〜650nm
の間で測定する。本発明の1つの好ましい実施態様は、化学ルミネセンスが59
0〜600nmの間で測定する方法を提供する。
本発明の好ましい方法によれば、試料中の1μg ml-1のチオジグリコール
または前駆体を検出できる。より好ましい実施態様は、試料中の0.2μg m
l-1またはそれ以上のチオジグリコールまたは前駆体を検出できる。
本発明の好ましい方法は、増感剤および酸化剤が共に溶液中に存在するもので
ある。試料および酸化剤を2流注入系に導入するのが好都合であり、これにより
安価で容易なスクリーニング系の使用を提供する。有利には、酸化剤を酸化剤流
にて系に導入し、試料はキャリア流に導入し、好ましい実施態様では、キャリア
流はさらに増感剤を含む。好ましくは、キャリア流は非水性であり、例えば、ア
ルコール類およびケトン類、特に脂肪族アルコール類およびケトン類を使用でき
る。本発明の好ましい実施態様では、酸化剤流は低級アルキルアルコール類およ
びケトン類、例えば、メタノールおよびアセトンからなる。
酸化工程のための最適pHは、本方法を行う媒質のごとき因子に依存する。本
発明の特別の実施態様では、8〜12の間のpH値が好ましく、8.5〜11の
間のpH値がより好ましく、8.5〜10.5の間のpH値が最も好ましい。前
記した流動系を用いて本方法を行う場合、酸化剤流は、好ましくは8〜12の間
のpH値、より好ましくは8.5〜11の間の、最も好ましくは8.5〜10.
5の間のpH値を有する。
流れ注入系(flow system)を用いる場合、2つの流れが十分に混合されない
ため、結果の再現性はよくないであろう。界
面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤の該系への添加は、かかる問題を少
なくとも部分的に克服する。ポリエチレングリコール、特にポリオキシエチレン
エーテル類、例えば、
の目的に適した界面活性剤である。界面活性剤は、好ましくは、その臨界ミセル
濃度を超える濃度で添加する。界面活性剤または増感剤を使用する場合、キャリ
ア流に含有させるのが好都合である。
流れ注入系を用いる場合、2つの流れの混合比が得られる化学ルミネセンスシ
グナルの強度に影響するであろう。本発明の好ましい実施態様において、キャリ
ア流:酸化剤流の比は好ましくは1:1を超え、より好ましくは1:1〜2:1
の間であり、最も好ましくは1.3:1〜2:1の間である。流れ注入系を用い
る場合、系を介する流れを光検出器へ循環させるために、所望により、ポンプ装
置を使用することができる。
本発明は、さらに、酸化剤を試料に添加する手段、酸化剤の添加後に生じた化
学ルミネセンスを測定する手段、および測定した化学ルミネセンスを表示する手
段よりなる、試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する少な
くとも1
種の化合物の存在および/または量を測定するための装置を提供する。
好ましい実施態様において、本装置は試料を加水分解させるための手段を含む
。
本装置は便宜には携帯用である。化学ルミネセンスを測定するための手段は適
当にはシグナルを発生するものであり、シグナルの大きさが試料中の当該化合物
(類)の濃度に比例する。
さて、以下の非限定的実施例および図面を参照し、例を挙げて、本発明の方法
および装置を説明する。さらなる実施態様は、本明細書の記載から、当業者なら
ば自明であろう。
図面
図1は実施例1に記載した装置の模式図である。
図2はLog(化学ルミネセンスシグナルのピーク高)−Log[チオジグリ
コール濃度]のグラフを示す。
図3は、Log(化学ルミネセンスシグナルのピーク高)−Log[チオジグ
リコール濃度]のグラフの直線範囲を示す。
図4は化学ルミネセンスに対するローダミンB濃度の影響を示す。
の影響を示す。
図6はローダミンBと次亜塩素酸塩との反応に由来する化学ルミネセンスシグ
ナルを示す。
図7は3つの「ブランク」とチオジグリコール(1×10-2M)を添加したも
のの化学ルミネセンス減衰プロフィールを示す。
図8は増感または非増感系のpH依存性の比較を示す。
図9は化学ルミネセンス応答に対するポンプ設定の影響を示す。実施例1:硫黄化合物の検出
以下の実施例で使用した試薬は特に断りのない限り分析グレードのものであっ
た。使用した水は蒸留脱イオン水であった。すべての溶媒はHPLCグレードで
あって、使用前にヘリウムをパージすることによって脱気した。
メタノール中に5×10-4MローダミンB(Fluka,指示薬グレード、入
手したものをそのまま使用)および2.4×
キャリア組成物を調製した。水中に1.0M次亜塩素酸ナトリウム(BDH;G
PR;滴定法によって有効次亜塩素酸塩を測
定するために標準化したもの)からなる酸化剤組成物をpH10.0で調製した
。
以下の有機硫黄化合物の1×10-4Mメタノール溶液を調製した。2,2’−
チオジグリコール(Aldrich;99+%)、ジエチルスルフィド(Flu
ka)、3,3’−チオジプロピオン酸(Lancaster)、ジエチルスル
ホン(Aldrich)、ジビニルスルホン(Lancaster)、DL−シ
ステイン(Sigma)、DL−システイン(Sigma)、DL−メチオニン
(Sigma)および1,4−ジチアン(Lancaster)。
図1の流れ注入系は、蠕動ポンプ(Gilson Mini plus3)4
およびテフロンチューブ配管(0.5mm内径)を用いて、キャリア流1および
酸化剤流2をポリテトラフルオロエチレンT部品(T−piece)3に送給す
るように設定したものであった。
酸化剤流を0.60ml/分の速度にて直接T部品に流した。キャリア流を0
.90ml/分の速度にてT部品に流した。回転弁(Rheodyne 502
0)を用い、該T部品から170mmの所に位置した注入弁6を介して、有機硫
黄化合物
の50μl試料をキァリア流に注入した。
次いで、混合流を、該T部品から20mmの所に位置したコイル状ガラス流動
セル(330μl、1.5mm内径(図示せず))へと流した。耐光性領域(図
示せず)内の光電子増倍管5(Thorn EMI 9924B)を用いて、化
学ルミネセンス放射を検出した。光電子増倍管5は、安定な高電圧電源(Wal
lis Hivolt,PM2)から供した−900Vで作動させた。応答をチ
ャートレコーダー(KippおよびZonen, B.D. 111)で記録し
、得られた結果を、分子内の硫黄1モル当たりの、チオジグリコールに対する化
学ルミネセンス応答として表1に示す。
表1に示した結果は、本検出方法におけるチオジグリコールに対する選択性が
驚くべき高いことを示す。エチル−2−ヒドロキシエチルスルフィドおよび2−
クロロエチル−2−ヒドロキシエチルスルフィドは次に高い応答を示した。テス
トしたすべての他の化合物は10未満の相対的ピーク高を有していた(一方、2
,2’−チオジグリコールは100の相対的ピーク高を有していた)。DL−メ
チオニン、ジビニルスルホキシド、2−メルカプトエチルエーテル、2−エチル
チオフェノール、2−メルカプトエタノールを、スルフィドアニオンと同様に負
の応答を示した(メタノールのブランク注入に等しい)。スルフィドアニオンに
ついては化学ルミネセンス放射が分析標準物中に低レベルで存在するスルフィド
不純物の結果生じたものではないことをチェックするためにテストした。実施例2:各種濃度のチオジグリコールの検出
3×10-6M〜1.1×10-1Mの範囲のチオジグリコールの試料を調製し、
それらの化学ルミネセンスを実施例1に記載した方法により測定した。チオジグ
リコールの濃度(モル1-1)に対する化学ルミネセンス放射の平均ピーク高のl
og−logプロットを図2に示した。該プロットは、図3に示すご
とく、3×10-6M〜5×10-4Mの間で直線であることが判明した。該プロッ
トのこの部分から、本方法の以下の特徴が導き出された。
log(ピーク高)=1.2log[TDG]+7.4
r=0.9982(n=10)
検出限界=2×10-6M(50μl中≡100ピコモル)
(3×=最低応答の標準偏差)
%rsd=1.6%(n=10;[TDG]=4×10-5M)実施例3:チオジグリコールの化ルミネセンスに対する溶媒の影響
施例1に記載したごとき流れ注入系を調製した。チオジグリコールの1×10-2
M溶液の酸化からの化学ルミネセンスシグナルに対する溶媒の影響を調べるため
に、種々の溶媒を用いた。化学ルミネセンスシグナルを測定し、得られた結果を
後記表2に示す。使用した溶媒は、恐らくは流れ注入系中に他の酸化可能な化合
物、例えばキャリア溶媒が存在するため、最適化学ルミネセンス放射を得るため
に種々の濃度の次亜塩素酸塩を使用した。
実施例4:チオジグリコールの測定方法における界面活性剤の添加
キャリア系からローダミンBを省略して、実施例1に記載した流れ注入系を調
製した。混合プロセスをさらに助け且つ本方法の精度を改良するために使用でき
るか否かを確認するため
に添加した。アニオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、カチ
オン性界面活性剤の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)および非イ
オン性界面活性剤の
(cmcs)を超えて調製した。これらを、酸化剤流ではなく
むしろメタノール性キャリア流に添加して、次亜塩素酸塩溶液により界面活性剤
が前酸化される可能性を排除した。チオジグリコールの1×10-2M溶液の酸化
からの化学ルミネセンスシグナルに対する界面活性剤の影響を測定し、得られた
結果を以下の表3に示す。
これらの結果は、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび
することを示す。ドデシル硫酸ナトリウムを該系に添加した結果、T部品におい
て沈殿が形成され、閉塞を除去するために検出器を分解する必要があった。実施例5:チオジグリコールを測定する方法に対する種々の増感剤の添加
界面活性剤を含まないキャリア流を用いて、実施例1に記載したごとく流れ注
入系を調製した。種々の発蛍光団の水溶液を調製し(pH11.0炭酸塩緩衝液
中1×10-4M)、キャリア流がメタノール:水(50:50)を含有するよう
に、該キャリア系に添加した。チオジグリコールの1×10-2M溶液の酸化から
の化学ルミネセンスシグナルに対する増感剤の影響を測定し、得られた結果を以
下の表4に示す。
これらの結果は、リボフラビンを除いたすべての増感剤が化学シグナルを増強
させるが、ローダミンBおよびメチレンブル
ーのみがシグナル−ノイズ比を増加させたことを示す。実施例6:化学ルミネセンス放射に対するローダミンB濃度の影響の調査
添加すべき最適量を決定するために、増感剤(メタノール中)としてローダミ
ンBのみを使用するがその濃度を変化させて、実施例5に記載したごとき方法を
繰返した。得られた結果を図4に示す。これらの結果より、ローダミンBの最適
濃度、すなわち、最大ピーク高を与える濃度は5×10-4Mであることが判明し
た。実施例7:界面活性剤の存在下での増感剤を使用するチオジグリコールの検出
ローダミンB(5×10-4M)および種々の濃度のTrit
とき流れ注入系を調製した。チオジグリコールの1×10-5M溶液の酸化からの
化学ルミネセンスシグナルに対する界面活性剤の存在の影響を測定し、得られた
結果を図5に示す。メタノ
スシグナルを増強しなかったが、そのcmc以上添加した場合、注入間相対的標
準偏差(rsd)をほぼ3%(n=15)
まで大きく改良した。ほぼ25%のシグナルの降下が2.4×10-4M濃度のT
ritonX−100で観察され、2.4×10-3M濃度のTritonX−1
00では、シグナルの降下はほぼ70%であった。実施例8:静的化学ルミネセンス測定
バッチ式ルミノメーター(Berthold Biolumat LB 95
00T)を用いて、次亜塩素酸ナトリウム溶液を5×10-4メタノール性ローダ
ミンB溶液に注入し、生じた化学ルミネセンスを記録した。得られた減衰曲線を
図6に示す。1×10-2Mチオジグリコール溶液をメタノール性ローダミンB溶
液に添加し、化学ルミネセンスにおける実質的増加を記録した。この放射および
3つのブランクシグナル7、8および9の比較を図7に示す。実施例9:チオジグリコールの測定に対するpHの影響の調査
LancasterおよびWorsfoldによってなされた初期の業績は、
炭酸水素緩衝液を用いた非増感流れ注入系における次亜塩素酸塩溶液の最適pH
は11.0であると示した。非増感系から増感系にシフトすると、pHの変化が
しばしば認められた(Teckentrup J.およびKlockow
D.,Talanta,1981,28 653)。従って、pHを調整するの
に次亜塩素酸を用いてpHの影響を調べた。何故ならば、炭酸緩衝液はT部品中
に沈殿物質の形成を引き起こしたからである。2つの系の比較(増感系10およ
び非増感系11)を図8に示す。
ローダミンBを用いる増感系10の最適pH値はpH9.0であることが判明
した。しかしながら、10−13のpH値では、シグナルはほとんど一定であり
、最大値のほぼ75%であ
100を界面活性剤として使用してチオジグリコールを測定する方法の効率の点
での適当な値としてpH10.0を選択した。実施例10:化学ルミネセンスシグナルに対するキャリア流:酸化剤流の比率お よび酸化剤流の流速の影響の調査
得られた化学ルミネセンスシグナルに対する影響を調べるために、(全流速を
一定に維持しつつ)酸化剤流速に対するキャリア流速の比率を変更し、得られた
結果を以下の表5に示す。次いで、この流れの流速の変化が化学ルミネセンスシ
グナルに与える影響を調べるために、1.4:1(キャリア:酸化剤)の最適比
を用い、得られた結果を図9に示す。
化学ルミネセンスシグナルは、注入間精度はより悪化するものの、ポンプ速度
を増加させると増大することが判明し、これは、発光が、流れセルの単一部分で
再現可能には起こらないことを示唆する。これは、高流速で遭遇するポンプ脈動
問題の結果であろう。チオジグリコールの化学ルミネセンスを調べるには、5.
5(任意単位)のポンプ速度が最も適当であると考えられ、このポンプ速度は1
.5ml/分の全流速、すなわち、0.6ml/分の酸化剤流速および0.9m
l/分のキャリア流速に対応する。最適流速は使用した装置にも依存するであろ
う。実施例11:増感剤のさらなる調査
一連の蛍光性化合物の、流れ注入系に対する影響について調べた。
各化合物をメタノールに溶解させ(1×10-4M、界面活性剤不在)、得られ
た溶液をキャリア流として用いた。各化合物を使用する前に、「ブランク」メタ
ノールキャリア流を、バックグラウンドが各化合物の導入に際して記録できるよ
うに、当該系に流した。一旦バックグラウンドを記録してから(5分間にわたる
)、TDG(1×10-4M、メタノール中)を注入し、化学ルミネセンス放射を
記録した。結果より、各化合物についてのバックグラウンドに対するシグナルの
比率が得られた。これらのデータを表6に示すが、そこでは、「シグナル」は、
1×10-4Mのキャリア流増感剤濃度にて、TDG(1×10-4M)の注入から
生起したシグナルである。「バックグラウンド」は5分間にわたって平均したバ
ックグラウンドシグナルであって、「S/B」はバックグラウンドに対するシグ
ナル比である。
最高のS/Bはアジン系染料フェノサフラニンから得られた。チアジン系染料
メチレンブルーも高いS/Bを示したが、1×10-4Mよりも低いTDGの濃度
では、シグナルは光電子増倍管の暗電流ノイズ中に消失した。実施例12:界面活性剤のさらなる調査
TDG(メタノール中1×10-4M)を各界面活性剤を含有するローダミンB
(メタノール中5×10-4M)キャリア流に注入し、得られたCL放射をモニタ
ーすることによって、8種
の市販されている非イオン性界面活性剤を流れ注入化学ルミネセンス系でスクリ
ーニングした。界面活性剤はポリオキシエチレン(Tween)およびポリエチ
レングリコール(TritonおよびBrij)35型であった。
各界面活性剤の濃度は、各々につき最適濃度が評価できるように変化させた。
臨界ミセル濃度が各界面活性剤につき知られていなかったので、このプロセスを
行った。得られた結果の要約を表7に示し、(ローダミンB(5×10-4M)の
みを含有するキャリア流に対する)相対的CL強度として表す。
においてほぼ3倍の増加を生じることを示す。この界面活性剤についての最適濃
度は0.65mg ml-1であることが判明した。
図10を参照し、チオジグリコール8はチオジグリコールスルホキシド9およ
びチオジグリコールスルホン10まで酸化されることが示された。
現実の試料では、マスタードガスで土壌試料が汚染されてから4年が経過した
後、大部分の試薬は加水分解されてしまっている。加水分解によって生じたチオ
ジグリコールの半分以上がチオジグリコールスルホキシド9まで酸化されてしま
っている。非常に少量のチオジグリコールスルホキシドのみがさらにチオジグリ
コールスルホン10までさらに酸化されている。従って、還元工程を本方法に導
入し、チオジグリコールスルホキシド9をチオジグリコール8に変換することに
よって、化学ルミネセンス検出方法をさらに増強できる。四塩化チタンを使用す
ることによって、チオジグリコールスルホキシド9をチオジグリコール8に還元
するのは比較的容易である。チオジグリコールスルホン10をチオジグリコール
8まで還元するには、より厳し
い条件、例えば、水素化リチウムアルミニウムを要するが、非常に少量が生じる
に過ぎず、これは問題ではない。
もし提案された加水分解および還元的工程を共に本方法に含ませるならば、測
定は、マスタードガス、チオジグリコール8およびチオジグリコールスルホキシ
ド9のレベルについてのデータを提供することができる。最初の測定はチオジグ
リコールについてのデータを得るための何らの処理なくして行う。これに続き、
加水分解工程および引き続いて測定を行うべきである。最後に、還元的工程およ
び測定によりチオジグリコールスルホキシド9のレベルについてのデータが得ら
れる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 タウンシエンド,アラン
イギリス国、ハル・エイチ・ユー・6・
7・アール・エツクス、ザ・ユニバーシテ
イ・オブ・ハル、スクール・オブ・ケミス
トリー(番地なし)
(72)発明者 トレスウエイ,アンドリユー・ニコラス
イギリス国、ウイルトシヤー・エス・ピ
ー・4・0・ジエイ・キユー、ソールズベ
リー、ポートン・ダウン、シー・ビー・デ
イー・イー(番地なし)
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. 試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する少なくとも 1つの化合物の存在および/または量を測定する方法であって、 i)酸化剤を試料に添加し、 ii)生じた化学ルミネセンスを測定し、 生じた化学ルミネセンスを試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに 関連した化合物の存在および/または量に関連付ける工程よりなる方法。 2. ビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する化合物がチオジグリ コールである請求項1記載の方法。 3. ビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する化合物が1,2−ビ ス−(2−クロロエチルチオ)エタンである請求項1記載の方法。 4. ビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する化合物がビス−(2 −クロロエチルチオエチル)エーテルである請求項1記載の方法。 5. さらに、酸化剤を添加する前に試料を加水分解する工程 を含む請求項1記載の方法。 6. さらに、化学ルミネセンスを測定した後に、試料にチオジグリコールスル ホキシドをチオジグリコールに還元できる還元剤を添加し、試料の化学ルミネセ ンスを再度測定し、該還元剤の添加の前後における試料の化学ルミネセンスの差 を、処理前の試料中に存在していたチオジグリコールスルホキシドの量に関連付 ける工程を含む請求項1記載の方法。 7. 還元剤が四塩化チタンである請求項6記載の方法。 8. ビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する少なくとも1化合物 の化合物がチオジグリコールに加水分解され得る、チオジグリコールの前駆体で ある請求項5記載の方法。 9. 前駆体が2−クロロ−2−ヒドロキシジエチルスルフィドまたはビス−( 2−クロロエチル)−スルフィドである請求項8記載の方法。 10. 酸化工程および測定工程の前に増感剤を試料に添加する請求項1〜9の いずれか1項に記載の方法。 11. 増感剤がアジン系染料フェノサフラニンである請求項10記載の方法。 12. 添加する増感剤がキサンテンまたは誘導体からなる請 求項10記載の方法。 13. 添加する増感剤がローダミンB、フルオレセイン、ローズベンガル、カ ルセインおよびそれらの塩から選択される請求項10記載の方法。 14. 添加する増感剤がフェナザチオゾニウムからなる請求項10記載の方法 。 15. 添加する増感剤がメチレンブルーからなる請求項14記載の方法。 16. 酸化剤が次亜ハロゲン酸塩からなる請求項1〜15のいずれか1項記載 の方法。 17. 酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムである請求項16記載の方法。 18. 化学ルミネセンスを550〜650nmの範囲で測定する請求項1〜1 7のいずれか1項記載の方法。 19. 化学ルミネセンスを590〜600nmの範囲で測定する請求項18記 載の方法。 20. 試料および酸化剤を流れ注入系に導入し、酸化剤は酸化剤流にて該系に 導入され、試料はキャリア流にて該系に導入される請求項1〜19のいずれか1 項に記載の方法。 21. キャリア流がさらに増感剤を含む請求項20記載の方法。 22. キャリア流が非水性である請求項20または21記載の方法。 23. キャリア流がアルコールまたはケトンからなる請求項22記載の方法。 24. キャリア流がメタノールまたはアセトンからなる請求項23記載の方法 。 25. 酸化剤流が8〜12の間のpH値を有する請求項20〜24のいずれか 1項記載の方法。 26. 酸化剤流が8.5〜10.5の間のpH値を有する請求項24記載の方 法。 27. キャリア流がさらに界面活性剤を含む請求項20〜26いずれか1項記 載の方法。 28. 界面活性剤がポリエチレングリコールからなる請求項27記載の方法。 る請求項28記載の方法。 請求項28記載の方法。 31. キャリア流:酸化剤流の比が1:1、またはそれ以上である請求項20 〜30のいずれか1項記載の方法。 32. キャリア流:酸化剤流の比が1.3:1〜2:1の間である請求項31 記載の方法。 33. 実施例に記載した通りの請求項1〜32のいずれか1項記載の方法。 34. 試料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する少なくと も1種の化合物の存在および/または量を測定するための装置であって、酸化剤 を試料に添加する手段、酸化剤の添加後に生じた化学ルミネセンスを測定する手 段、および測定した化学ルミネセンスを表示する手段よりなる装置。 35. さらに、試料を加水分解する手段を含む請求項34記載の装置。 36. 装置が携帯用である請求項34または35記載の装置。 37. 測定された化学ルミネセンスを測定するための手段が、その大きさが試 料中のビス−(2−クロロエチル)−スルフィドに関連する化合物の濃度に関連 するシグナルを与える請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法。
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