JPH1045327A - 耐摩耗性ガイド材及びこれを用いたスレッドガイド - Google Patents

耐摩耗性ガイド材及びこれを用いたスレッドガイド

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JPH1045327A
JPH1045327A JP20262796A JP20262796A JPH1045327A JP H1045327 A JPH1045327 A JP H1045327A JP 20262796 A JP20262796 A JP 20262796A JP 20262796 A JP20262796 A JP 20262796A JP H1045327 A JPH1045327 A JP H1045327A
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JP
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film
diamond
layer
guide
base material
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Application number
JP20262796A
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English (en)
Inventor
Michihiko Koshida
充彦 越田
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Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】スレッドガイド1自体の耐摩耗性、摺動性を向
上し、繊維にダメージを与えにくくする。 【解決手段】セラミックス又はガラスを母材2とし、該
母材2の表面2aに、中間層3を介してダイヤモンド状
硬質炭素膜5を0.2〜1.5μmの厚みtで被覆す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種線状体を案内
するための耐摩耗性ガイド材及びこれを用いたスレッド
ガイドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、繊維関連の織機、巻き取り
機、延伸仮撚り機、精紡機等の各種繊維機械における繊
維用ガイド部材、釣糸ガイド、あるいはワイヤ等の金属
線を案内するガイド部材等が用いられており、本発明で
はこれらを総称してスレッドガイドと言う。
【0003】このスレッドガイドに求められる特性とし
ては、繊維の摺動に耐えうる耐摩耗性を有すること、
繊維自身を痛めないこと、の2点が上げられる。
【0004】上記要求特性を満足するために、スレッド
ガイドの材質として各種材料が用いられている。例え
ば、比較的硬度の低いチタニアセラミックスからなるも
のや、金属からなる母材の表面にクロムコーティングを
施し、球状結晶化させることで繊維との接触面積を低減
し、摩擦係数を低下したスレッドガイドが用いられてい
る。
【0005】また、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、
炭化珪素等の各種セラミックスやサーメット等の硬質材
料で形成することにより、耐摩耗性を向上したスレッド
ガイドが用いられている(特公昭63−41532号、
特公平3−6106号公報等参照)。さらに、金属又は
セラミックスからなる母材の表面に炭化タングステン、
炭化チタン、窒化チタン等の硬質膜を形成することによ
り耐摩耗性を向上したスレッドガイドも提案されている
(特開昭60−52658号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】近年の繊維関連業界に
あっては、生産の効率化に伴う機械の高速化が進み、ま
た、繊維の高付加価値化に伴う極細化・複合化・異形状
化が進んでいる。
【0007】例えば、繊維の高付加価値化の具体的な事
例として、生地に色彩と独特の光沢を与えるために繊維
形状を三角型や星型にしたり、あるいは繊維に硝子繊維
を織り込むことなどが行われている。
【0008】このような摺動速度の高速化と繊維の特殊
化により、これまでの仕様では見られなかった繊維ガイ
ド部材の摩耗が早く生じるようになってきた。その結
果、設備のメンテナンスやガイド部材の交換作業が頻繁
になり、生産の効率化が思うように進められないという
問題があった。
【0009】この様な状況の中、より耐摩耗性に優れる
ガイド材が求められているが、上述したスレッドガイド
ではこの要求特性を満足することができなかった。
【0010】例えば、クロムコーティングやチタニア系
セラミックス等からなるスレッドガイドでは硬度が低い
ために、ガイド自体が摩耗しやすく、上記摺動速度の高
速化に対応することができなかった。
【0011】また、アルミナ等のセラミックス製のスレ
ッドガイドや、炭化チタン等の硬質膜を形成したスレッ
ドガイドであっても、やはり硬度の点で不十分であり摩
耗が生じやすかった。そのため、スレッドガイドの摺動
面に摺動痕が生じて、繊維にダメージを与えたり、スレ
ッドガイド自体の寿命が短くなるという問題があった。
【0012】なお、耐摩耗性を向上するために、例えば
Al2 3 の単結晶体であるサファイアを用いることも
提案されているが(特開平1−321262号公報参
照)、サファイアは引き上げ法で製造するため、複雑形
状に対応することができず、しかも非常に高価なものに
なってしまうという不都合があった。
【0013】さらに、上記セラミックスや硬質膜を用い
たスレッドガイドは、繊維との摺動性が悪いため案内す
る繊維に傷を付けやすく、安定した品質の繊維を高速で
案内することができないという問題もあった。
【0014】上記問題を解決するためにセラミックス又
はガラスを母材としたスレッドガイドに直接ダイヤモン
ド状硬質炭素膜を被覆することが考えられるが、高速で
繊維が摺動するようなガイドに使用すると、ダイヤモン
ド状硬質炭素膜が剥離しやすいという問題があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、セラ
ミックス又はガラスを母材とし、この母材の表面に、中
間層を介してダイヤモンド状硬質炭素膜を0.2〜1.
5μmの厚みで被覆して耐摩耗性ガイド材を構成したこ
とを特徴とする。
【0016】また、本発明は、上記中間層として、母材
側より、Ti膜、Cr膜のいずれかから成る第1層と、
Siから成る第2層を形成したことを特徴とする。
【0017】さらに、本発明は、上記ダイヤモンド状硬
質炭素膜のを、中心線平均粗さ(Ra)0.03〜0.
20μmで、ボイド占有率2%未満としてスレッドガイ
ドを構成したことを特徴とする。
【0018】また、本発明は、上記母材の表面を、中心
線平均粗さ(Ra)0.4〜0.6μmとし、丸みを帯
びた結晶としてスレッドガイドを構成したことを特徴と
する。
【0019】
【作用】本発明によれば、セラミックス又はガラスより
成る母材とダイヤモンド状硬質炭素膜の間に中間層を備
えたことによって、高速で繊維等が摺動してもダイヤモ
ンド状硬質炭素膜の剥離を防止できる。しかも、ダイヤ
モンド状硬質炭素膜の潤滑効果により、摺動する繊維に
ダメージを与えにくくし、スレッドガイド自体の摩耗も
防止できる。
【0020】また、本発明で用いるダイヤモンド状硬質
炭素膜は導電性を有していることから、帯電せず、繊維
屑等の付着をなくすことができる。しかも、ダイヤモン
ド状硬質炭素膜は黒いため、案内する繊維等を視認しや
すくできる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明す
る。
【0022】図1に示すスレッドガイド1は、セラミッ
クス又はガラスからなる棒状の母材2の先端側の表面2
aにTi膜、Cr膜のいずれかより成る第1層3a、S
i膜より成る第2層3bを形成して中間層3とし、その
上にダイヤモンド状硬質炭素膜5を被覆したものであ
る。そして、このダイヤモンド状硬質炭素膜5の表面を
案内面5aとして、繊維6を案内し摺動するようになっ
ている。
【0023】この時、案内面5aが硬質で潤滑性の優れ
たダイヤモンド状硬質炭素膜5からなるため、繊維6が
高速で摺動しても、繊維6に傷をつけにくく、かつ案内
面5a自体1の摩耗を少なくすることができる。
【0024】しかも、上記中間層3を介在させることに
よって、繊維6を高速で摺動させてもダイヤモンド状硬
質炭素膜5の剥離を防止できる。
【0025】即ち、中間層3のうち第1層3aを成すT
i膜の熱膨張係数(40〜400℃、以下同じ)は8.
9×10-6/℃、又Cr膜の熱膨張係数は6.5×10
-6/℃であり、いずれも母材2を成すセラミックスやガ
ラスの熱膨張係数(2.5〜11.0×10-6/℃)と
の差が小さく、さらにこれらのTi膜やCr膜は物質へ
の拡散係数が大きい。そのため、第1層3aは母材2お
よびSi膜より成る第2層3bと強固に密着させること
ができる。
【0026】さらに第2層3bを成すSi膜は、ダイヤ
モンド状硬質炭素膜5を成す炭素(C)と同様に周期率
表4a属に属しており、またSi膜の構造及び熱膨張係
数(2.4×10-6/℃)はダイヤモンド状硬質炭素膜
5の構造及び熱膨張係数(3.2×10-6/℃)と近似
していることから、第2層3bとダイヤモンド状硬質炭
素膜5との密着性をより強固なものとすることができ
る。
【0027】したがって、上記第1層3a、第2層3b
からなる中間層3を介在させることによって、母材2、
中間層3、ダイヤモンド状硬質炭素膜5の互いの密着性
を強固にすることができ、繊維を高速摺動させても剥離
を防止できるのである。
【0028】なお、図1において、母材2の後端部2b
は繊維機械への取付部としてあり、中間層3、ダイヤモ
ンド状硬質炭素膜5は被覆していないが、この部分にも
同様に中間層3とダイヤモンド状硬質炭素膜5を被覆し
てもよい。
【0029】また、図1では棒状のスレッドガイド1を
示したが、本発明のスレッドガイド1は、この他に公知
のさまざまな形状とすることができる。
【0030】さらに、上記の例では繊維の案内用のもの
を示したが、本発明のスレッドガイド1は、釣糸の案内
や、ワイヤ等の金属線の案内などさまざまな線状体の案
内に用いることができる。
【0031】このような繊維用ガイド部材1の母材2を
成すセラミックスまたはガラスとしては、熱膨張係数が
2.5〜11.0×10-6/℃であるようなものが好ま
しい。これは、母材2の熱膨張係数を上記範囲としてお
けば、ダイヤモンド状硬質炭素膜5との差が小さく、剥
離を防止する効果が高くなるからである。
【0032】このような特性を満たすセラミックスとし
ては、例えば、99重量%以上のAl2 3 を主成分と
し、SiO2 、MgO、CaO等を焼結助剤として含有
するアルミナセラミックス、ZrO2 を主成分としてY
2 3 、MgO、CeO2 、Dy2 3 等の一種以上を
安定化剤として含むジルコニアセラミックス、SiCを
主成分としてAl2 3 、Y2 3 又はB、Cを焼結助
剤として含有する炭化珪素質セラミックス、Si3 4
を主成分としAl2 3 、Y2 3 等を焼結助剤として
含有する窒化珪素質セラミックス、AlNを主成分とし
周期律表第3a族元素酸化物等を焼結助剤として含有す
る窒化アルミニウム質セラミックス等を用いる。なお、
これらのセラミックスの熱膨張係数は表1に示す通りで
ある。
【0033】また、ガラスとしては、例えばケイ酸塩ガ
ラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、耐熱ガラス等
のうち、上記特性を満たすものを用いることが好まし
い。
【0034】さらに、この母材2を製造する場合は、所
定の原料粉末をプレス成形、射出成形等によって所定形
状に成形し、焼成することによって得ることができ、複
雑な形状であっても比較的容易に製造することができ
る。
【0035】
【表1】
【0036】次に中間層3を成す第1層3a、第2層3
bは、スパッタ法、CVD法、PVD法等によって形成
し、各層の厚みを0.15〜0.8μmの範囲とするこ
とが好ましい。これは、各層の厚みが0.15μm未満
では薄すぎるために均一な厚みの層を被覆することが困
難となり、一方各層の厚みが0.8μmを越えると内部
応力が大きくなって中間層3より剥離しやすくなるため
である。
【0037】なお、上記の例では、中間層3がTi膜又
はCr膜の第1層3aとSi膜の第2層3bから成るも
のを示したが、各層の間にさらにそれぞれの中間化合物
の層や、他の材質からなる層が存在していても良い。
【0038】また、中間層3は、母材2とダイヤモンド
状硬質炭素膜5との密着性を向上できるものであればど
のようなものでもよく、上記の例に限るものではない。
例えば、中間層3としてアモルファスSiCを形成した
1層構造としたり、中間層3として、母材2側よりT
i、TiN、TiCN、TiCの4層を形成した傾斜材
料層とすることもできる。
【0039】なお、これらの中間層3の存在は、最終的
なスレッドガイド1を切断、研削等により加工し、得ら
れた露出面より検出することができる。例えば、球状の
砥石を用いてスレッドガイド1の表面を研削すれば、中
間層3が同心円状に露出されることになり、この露出面
に対して、X線マイクロアナライザー分析(EPM
A)、エネルギー分散型X線分析等の分析手段を用い
て、中間層3の存在やその材質を確認することができ
る。
【0040】次に、ダイヤモンド状硬質炭素膜5は、プ
ラズマCVDに代表されるCVD、スパッタ、イオンプ
レーティング等に代表されるPVD等の薄膜形成手段で
得られる炭素膜の一種で、別名、合成疑似ダイヤモンド
薄膜、DLC膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、i−
カーボン膜等と呼ばれている。このダイヤモンド状硬質
炭素膜5は、ビッカース硬度(Hv)が2000〜50
00kg/mm2 と非常に高く、シート抵抗が102
105 Ω/□と低く、しかも自己潤滑性に優れたもので
ある。
【0041】そのため、ダイヤモンド状硬質炭素膜5の
表面で繊維6を摺動させれば、硬度が高いことから摩耗
しにくく、しかも潤滑性に優れることから繊維6にダメ
ージを与えにくくできる。さらにシート抵抗が低いこと
から静電気が溜まりにくく、繊維屑等の付着を防止で
き、しかも、ダイヤモンド状硬質炭素膜5は黒色である
ことから、案内する繊維6を視認しやすいという効果も
ある。
【0042】また、このダイヤモンド状硬質炭素膜5の
厚みtは0.2〜1.5μmの範囲とするが、これは厚
みtが0.2μm未満では母材2や中間層3が露出しや
すくなり、1.5μmを超えるとダイヤモンド状硬質炭
素膜5自体の内部応力のために剥離しやすくなるからで
ある。
【0043】ところで、このダイヤモンド状硬質炭素膜
5は、元素で言えばダイヤモンド等と共に炭素(C)と
して包括され、比重で言えば黒鉛や無定形炭素に近く、
硬度等物性的にはダイヤモンドに近似しているという特
徴を持つ。ゆえに、元素分析や比重、硬度、絶縁性、屈
折率等の測定による分類は困難とされている。
【0044】そのため、CVD法等で得られた膜の特定
が困難で、品質管理をしにくいという問題があった。そ
こで、本発明ではレーザーラマン分光分析法を用い、ラ
マンスペクトルを測定することによって、好ましい特性
を持ったダイヤモンド状硬質炭素膜5を特定するように
した。
【0045】なお、ダイヤモンド状硬質炭素膜5のレー
ザーラマン分光分析法による測定条件は、以下の通りと
した。
【0046】 装置 :日本分光社製 NR1800型レーザー
ラマン分光光度計 レーザー :コヒーレント社製 INNOVA70 レーザー波長:488.0nm 分光器配置 :F.シングル 検出器 :マルチチャンネル検出器 中心波数 :1400cm-1 露光時間 :1.0sec 積算回数 :500回 そして、本発明によれば、レーザーラマン分光分析法に
より分析した時のラマンスペクトルのピークが以下に示
す条件を満たすようにすれば良い。
【0047】即ち、図2(a)(b)に示すように、s
3 構造とsp2 構造より形成されるダイヤモンド状硬
質炭素膜5の主バンド(最大ピーク)は、1500〜1
600cm-1、ショルダーバンド(第2ピーク)は12
00〜1400cm-1に有する非対称なラマンバンドと
なっており、かつ上記最大ピークにおける強度IA の9
0%以上の範囲を頂部とした時、この頂部の幅dが10
cm-1以上となるような広いピークとなっていれば良い
のである。
【0048】次に、本発明のスレッドガイドの表面状態
について説明する。
【0049】つまり、繊維6にダメージを与えず摩擦係
数を低くするためには、スレッドガイド1の表面状態が
重要であり、本発明では種々実験の結果、以下の2つの
状態が好ましいことを見出した。
【0050】まず第1の状態は、母材2の表面2aを中
心線平均粗さ(Ra)0.03〜0.2μmの範囲と
し、そのボイド占有率を2%以下として、Ti膜、Cr
膜のいずれかより成る第1層3a、及びSi膜より成る
第2層3bをそれぞれ形成して中間層3とし、この上に
ダイヤモンド状硬質炭素膜5を被覆したものである。な
お、ここでは母材2の表面状態で述べたが、ダイヤモン
ド状硬質炭素膜5表面の案内面5aも上記と同じよう
に、中心線平均粗さ(Ra)0.03〜0.2μmで、
ボイド占有率が2%以下の範囲となる。
【0051】このように、極めて滑らかでボイドのない
表面とすることによって、摺動する繊維6の引っ掛かり
がなくなり、繊維にダメージを与えにくくできる。
【0052】一方、第2の状態は、母材2の表面2aを
中心線平均粗さ(Ra)0.4〜0.6μmの比較的粗
い範囲とし、その結晶を丸みを帯びたものとして、Ti
膜、Cr膜のいずれかより成る第1層3a、及びSi膜
より成る第2層3bをそれぞれ形成して中間層3とし、
この上にダイヤモンド状硬質炭素膜5を被覆したもので
ある。なお、ここでは母材2の表面状態で述べたが、ダ
イヤモンド状硬質炭素膜5表面の案内面5aも上記と同
じように、中心線平均粗さ(Ra)0.4〜0.6μm
で丸みを帯びた適度な凹凸が形成された状態となる。
【0053】このように、案内面5aに丸みを帯びた適
度な凹凸を形成することによって、繊維6が摺動する際
の接触面積を小さくし、摩擦係数を低下することができ
るのである。
【0054】なお、上記のように母材2の結晶を丸くす
るためには、例えば母材2をなすセラミックスを一度焼
成した後、この焼成温度と同程度の温度で再度熱処理
(アニール)することにより、粒成長とともに軟化さ
せ、丸くすればよい。
【0055】また、上述した第1の表面状態と第2の表
面状態を比較すると、第2の表面状態の方が摩擦係数を
低くできるが、その反面繊維6に若干ダメージを与えや
すくなる傾向がある。したがって、使用する繊維6の種
類や案内する条件等によっていずれか好ましい表面状態
としておけば良い。
【0056】以上のような本発明のスレッドガイド1
は、繊維関連の織機、巻き取り機、延伸仮撚り機、精紡
機等の各種繊維機械に使用できることはもちろん、釣糸
ガイド、ワイヤ等の金属線の案内等にも好適に使用する
ことができる。
【0057】
【実施例】実施例1 母材2として、Al2 3 含有量99.7%以上のアル
ミナセラミックスを用いた。このアルミナセラミックス
の特性は、平均結晶粒径2〜3μm、密度3.95g/
cm3 以上、平均ボイド占有率2%未満、ビッカース硬
度1700〜1800kg/mm2 、熱膨張係数は40
〜400℃で6.8×10-6/℃のものを用いた。形状
は、図1に示すピン形状で、直径6mm、長さ40mm
とした。
【0058】母材2の表面2aは、焼成後の状態で中心
線平均粗さ(Ra)0.3〜0.4μmのものを流体研
磨法により表面処理し、中心線平均粗さ(Ra)0.2
μm未満として上述した第1の表面状態とした。
【0059】この母材2上に、RF(高周波)スパッタ
法にてTi膜またはCr膜より成る第1層3a、Si膜
より成る第2層3bを形成して中間層3とした後、プラ
ズマCVD法にてダイヤモンド状硬質炭素膜5を被着さ
せた。ダイヤモンド状硬質炭素膜5の厚みtは、スレッ
ドガイド1を破断し走査電子顕微鏡で観察測定した結
果、平均厚みは0.3μmであった。また案内面5aも
中心線平均粗さ(Ra)0.2μm未満で、平均ボイド
占有率2%未満であった。
【0060】以上の工程を経て得られたスレッドガイド
1について、繊維6の案内を行い、動摩擦係数測定機に
より摩擦係数を測定するとともに、繊維6側及びスレッ
ドガイド1側の状態を観察した。
【0061】評価に用いた繊維6はポリエステル(SD
75−36)を使用した。摩擦係数測定では、摺動速度
を100m/minとし、動摩擦係数μは、スレッドガ
イド1への入力側の張力TIN(=20g)、出力側の張
力TOUT 、繊維6の巻付角度θによって、 μ={ln(TOUT /TIN)}/θ ・・・アモントンの法則式 により演算した。また、繊維6とスレッドガイド1の摩
耗評価は、繊維の摺動速度を2000m/minとし
て、1時間摺動させた後の状態を観察した。
【0062】一方比較例として、上記と同じ母材2のみ
からなるスレッドガイド、及び中間層を介在させずダイ
ヤモンド状硬質炭素膜5のみが母材2に被覆されたスレ
ッドガイドを用意し、上記と同じ測定を行った。
【0063】結果は表2に示す通りである。この結果よ
り、動摩擦係数にはほとんど差が認められなかったが、
比較例(No.3,4)では繊維6に毛羽が発生したの
に対し、本発明実施例(No.1,2)では繊維6に全
く変化がなかった。これは、本発明実施例ではダイヤモ
ンド状硬質炭素膜5が摺動性に優れるために、摺動する
繊維6にダメージを与えにくいことによるものである。
【0064】また、比較例のNo.3ではスレッドガイ
ドを成すアルミナセラミックスの表面に、繊維6との摺
動によりスジ状の跡が発生したり、比較例のNo.4で
は、ダイヤモンド状硬質炭素膜5が剥離したりしている
が、本発明実施例のNo.1,2では中間層3の存在に
より剥離を防止またビッカース硬度が高くなることから
全く変化がなく、スレッドガイド1側の摩耗も極めて少
ないことがわかる。
【0065】なお、上記摩擦係数において、本発明と比
較例の間に差がなかったのは、摩擦係数はスレッドガイ
ド1の表面粗さの影響が支配的であるためと考えられ
る。
【0066】
【表2】
【0067】実施例2 母材2として、Al2 3 含有量99.7%以上のアル
ミナセラミックスを用いた。このアルミナセラミックス
の特性は、平均結晶粒径2〜3μm、密度3.95g/
cm3 以上、平均ボイド占有率2%未満、ビッカース硬
度1700〜1800kg/mm2 、熱膨張係数は40
〜400℃で6.8×10-6/℃のものを用いた。形状
は、図1に示すピン形状で、直径6mm、長さ40mm
とした。
【0068】母材2の表面2aは、焼成後の状態で中心
線平均粗さ(Ra)0.3〜0.4μmのものを流体研
磨法により表面処理し、中心線平均粗さ(Ra)0.2
μm未満とした。この後、焼成温度よりも200℃高い
温度で再度熱処理を行った。この熱処理によって、粒成
長とともに結晶が軟化して球状化し、丸みを帯びた結晶
となるとともに表面2aの中心線粗さ(Ra)を0.5
〜0.6μmとして、上述した第2の表面状態とした。
【0069】この母材2上に、RF(高周波)スパッタ
法にてTi膜、Cr膜のいずれかより成る第1層3a、
Si膜より成る第2層3bを形成して中間層3とした
後、プラズマCVD法にてダイヤモンド状硬質炭素膜5
を被着させた。ダイヤモンド状硬質炭素膜5の厚みt
は、スレッドガイド1を破断し走査電子顕微鏡で観察測
定した結果、平均厚みは0.3μmであった。また、案
内面5aの中心線粗さ(Ra)も0.5〜0.6μmで
あった。
【0070】一方比較例として、上記と同じ母材2のみ
からなるスレッドガイド、及び中間層3を形成せずダイ
ヤモンド状硬質炭素膜5のみが母材2に被覆されたスレ
ッドガイドを用意し、上記と同じ測定を行った。
【0071】これらのスレッドガイドについて、実施例
1と同様にして、摩擦係数を測定し、摺動試験後の繊維
6及びスレッドガイド1の状態を観察した。
【0072】結果は表3に示す通りである。この結果よ
り、動摩擦係数にはほとんど差が認められなかったが、
比較例(No.7,8)では繊維6に若干毛羽が発生し
たのに対し、本発明実施例(No.5,6)では繊維6
に全く変化がなかった。これは、本発明実施例ではダイ
ヤモンド状硬質炭素膜5が摺動性に優れるために、摺動
する繊維6にダメージを与えにくいことによるものであ
る。
【0073】また、比較例のNo.7ではスレッドガイ
ドを成すアルミナセラミックスの表面に、繊維6との摺
動によりスジ状の跡が発生したり、比較例のNo.8で
はダイヤモンド状硬質炭素膜5が剥離したりしている
が、本発明実施例のNo.5,6では中間層3を備えた
ことにより剥離を防止し、またビッカース硬度が高くな
ることからスレッドガイド1側の摩耗も極めて少ないこ
とがわかる。
【0074】なお、上記摩擦係数において、本発明と比
較例の間に差がなかったのは、摩擦係数はスレッドガイ
ド1の表面粗さの影響が支配的であるためと考えられ
る。また、実施例2では実施例1に比べて大幅に摩擦係
数を低下することができたが、これは表面状態が丸みを
帯びた適度な凹凸状となっているためである。
【0075】
【表3】
【0076】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、セラミ
ックス又はガラスを母材とし、該母材の表面に、中間層
を介してダイヤモンド状硬質炭素膜を0.2〜1.5μ
mの厚みで被覆して耐摩耗性ガイド材を構成したことに
よって、ガイド材自体の耐摩耗性を向上できるだけでな
く、摺動性に優れるため繊維等を案内する際にダメージ
を与えにくくすることができ、また中間層の存在によっ
てダイヤモンド状硬質炭素膜の剥離を防止できる。
【0077】さらに本発明によれば、上記中間層を、母
材側からTi、Crのいずれかよりなる第1層と、Si
からなる第2層により形成したによって、一層ダイヤモ
ンド状硬質炭素膜の密着強度を高め、繊維等を高速案内
した場合でも剥離を防止することができる。
【0078】その結果、本発明の耐摩耗性ガイド材を用
いてスレッドガイドを構成すれば、各種繊維の品質を保
ったまま高速に案内、摺動することができるため、繊維
機械の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のスレッドガイドを示す斜視
図、(b)は(a)中のX−X線断面図、(c)は
(a)中のY部の拡大図である。
【図2】本発明のスレッドガイドに用いるダイヤモンド
状硬質炭素膜のラマン分光分析法によるピークーチャー
ト図である。
【符号の説明】
1 :スレッドガイド 2 :母材 2a:表面 2b:後端部 3 :中間層 3a:第1層 3b:第2層 5 :ダイヤモンド状硬質炭素膜 5a:案内面 6 :繊維

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラミックス又はガラスを母材とし、該母
    材の表面に、中間層を介してダイヤモンド状硬質炭素膜
    を0.2〜1.5μmの厚みで被覆したことを特徴とす
    る耐摩耗性ガイド材。
  2. 【請求項2】上記中間層は、母材側より、Ti膜、Cr
    膜のいずれかからなる第1層と、Si膜からなる第2層
    により形成したことを特徴とする請求項1記載の耐摩耗
    性ガイド材。
  3. 【請求項3】請求項1記載の耐摩耗性ガイド材における
    ダイヤモンド状硬質炭素膜の表面を、中心線平均粗さ
    (Ra)0.03〜0.2μmで、ボイド占有率2%未
    満としたことを特徴とするスレッドガイド。
  4. 【請求項4】請求項1記載の耐摩耗性ガイド材における
    ダイヤモンド状硬質炭素膜の表面を、中心線平均粗さ
    (Ra)0.4〜0.6μmで、結晶に丸みを帯びさせ
    たことを特徴とするスレッドガイド。
JP20262796A 1996-07-31 1996-07-31 耐摩耗性ガイド材及びこれを用いたスレッドガイド Pending JPH1045327A (ja)

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