JPH1044711A - 空気入りタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベルト層のエッジ部にベルトカバー層を設け
た空気入りタイヤにおいて、ベルト層のエッジ部におけ
る段差が大きくても、ベルト層の耐エッジセパレーショ
ン性を高め、ベルト耐久性を向上する。 【解決手段】 トレッド部１のカーカス層４外周側にベ
ルト幅の異なる複数のベルト層７を積層し、ベルト幅の
相違によりトレッド部表面１Ａ側に面してベルト層７の
エッジ部７ｘに生じる段差部７ｙを覆うようにベルトカ
バー層８を設けた空気入りタイヤにおいて、そのベルト
層エッジ部７ｘとベルトカバー層８との間に、短繊維を
２０〜４０重量％含有するゴム層９を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、空気入りタイヤに
関わり、更に詳しくは、ベルト層のエッジ部に設けたベ
ルトカバー層により、ベルト層の耐エッジセパレーショ
ン性を高めるようにした空気入りタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】タイヤ幅方向両端に補強コードの切断端
が位置しているベルト層は、走行時にその切断端に応力
が集中し、その端部で補強コードの張力が低下するた
め、エッジセパレーションが起こりやすい。そこで、上
記対策として、ベルト層の外周側に有機繊維コードをタ
イヤ周方向に配列したベルトカバー層を設け、ベルト層
のエッジ部を覆うようにした空気入りタイヤの提案があ
る。このようにベルト層のエッジ部を覆うことにより、
端部での補強コードの張力低下を抑制し、ベルト層の耐
エッジセパレーション性を高めて、ベルト耐久性を向上
するようにしている。

【０００３】ところで、上記のようなベルト層は、トレ
ッド部のカーカス層外周側に複数層積層して設けられて
いる。ベルト幅の相違によりベルト層のエッジ部に段差
が生じ、ベルトカバー層はその段差部を覆うように設け
られている。特に、ライトトラックやバス、普通トラッ
ク等の重荷重用車両に用いられる空気入りタイヤでは、
その段差が大きい。

【０００４】このようにベルト層エッジ部の段差が大き
い空気入りタイヤは、タイヤ成型後、ベルトカバー層と
ベルト層エッジ部との間にエアが残留する危険があり、
そのようにしてエアが残ると、ベルトカバー層とベルト
層エッジ部との密着性が低くなるため、ベルトカバー層
によるベルト層エッジ部の拘束力が低くなる。そのた
め、ベルト層の補強コードの張力低下により、耐エッジ
セパレーション性が低くなり、ベルト耐久性が悪くな
る。

【０００５】そこで、その対策として、ベルトカバー層
とベルト層エッジ部との間に、ゴム層を介挿する提案が
ある。このようにベルトカバー層とベルト層エッジ部と
の間のエアが残留する空間にゴム層を充填することで、
エア溜まりの発生を抑制するようにしている。しかし、
このようにゴム層を介設すると、このゴム層がクッショ
ンとして作用するため、ベルトカバー層の補強コードに
よりベルト層エッジ部を拘束するタガ効果を十分に発揮
させることができず、十分なベルト耐久性の改善効果を
得ることができないという問題があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ベル
ト層のエッジ部にベルトカバー層を設けた空気入りタイ
ヤにおいて、ベルト層のエッジ部における段差が大きく
ても、ベルト層の耐エッジセパレーション性を高め、ベ
ルト耐久性を向上することが可能な空気入りタイヤを提
供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、トレッド部のカーカス層外周側にベルト幅の異な
る複数のベルト層を積層し、ベルト幅の相違によりトレ
ッド部表面側に面してベルト層のエッジ部に生じる段差
部を覆うようにベルト層エッジ部外周側に補強コードを
配列したベルトカバー層を設けた空気入りタイヤにおい
て、前記ベルト層エッジ部と前記ベルトカバー層との間
に、短繊維を２０〜４０重量％含有するゴム層を配置し
たことを特徴とする。

【０００８】このようにベルト層エッジ部とベルトカバ
ー層との間にゴム層を設けるため、ベルト層エッジ部に
おける段差が大きくても、従来のゴム層を配置した場合
と同様に、ベルトカバー層とベルト層エッジ部との間の
エアが残留する危険がある空間をそのゴム層により埋め
ることができるので、エア溜まりの発生によるベルトカ
バー層とベルト層エッジ部との密着性が低くなることが
ない。

【０００９】また、エア溜まりの発生を抑制するゴム層
を短繊維が２０〜４０重量％含有するゴムから構成する
ので、従来の単にゴムのみから構成したゴム層よりも硬
度を大幅に高めることができる。そのため、短繊維で補
強したこのゴム層の押し潰される量を極力抑制し、その
ようにしたゴム層を介して、補強コードを配列したベル
トカバー層により、ベルト層エッジ部を拘束する高いタ
ガ効果を発揮させることができる。

【００１０】従って、ベルト層のエッジ部にベルトカバ
ー層を設けた空気入りタイヤにおいて、ベルト層のエッ
ジ部における段差が大きくても、そのベルトカバー層に
よりベルト層の耐エッジセパレーション性を高め、ベル
ト耐久性を改善することができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付
の図面を参照しながら詳細に説明する。図１は、本発明
の空気入りタイヤの一例を示し、１はトレッド部、２は
ビード部、３はサイドウォール部である。左右のビード
部２に連接してタイヤ径方向外側に左右のサイドウォー
ル部３が延設され、この左右のサイドウォール部３間に
タイヤ周方向に延在するトレッド部１が設けられてい
る。タイヤ内側にはカーカス層４が１層配設されてい
る。左右のビード部２には環状のビートコア５がそれぞ
れ埋設され、そのビートコア５の外周にはビードフィラ
ー６が設けられている。カーカス層４の両端部４Ａがビ
ードフィラー６を挟み込むようにしてビートコア５の周
りにタイヤ内側から外側に折り返されている。

【００１２】トレッド部１のカーカス層４外周側には、
補強コードをタイヤ周方向に対し傾斜して配列し、互い
に交差させた２層のベルト層７が埋設されている。この
２層のベルト層７は、ベルト幅が異なるように構成さ
れ、カーカス層４に隣接する内側の第１ベルト層７Ａの
ベルト幅の方が、その外側に積層された第２ベルト層７
Ｂのベルト幅よりも広く形成されている。この２層のベ
ルト層７Ａ，７Ｂのベルト幅の相違により、この２層か
らなるベルト層７の両エッジ部７ｘには、それぞれトレ
ッド部１の表面１Ａ側に面して段差部７ｙが生じてい
る。

【００１３】そのベルト層７の両エッジ部７ｘ外周側に
は、タイヤ周方向に沿って配列したナイロン繊維等から
なる補強コードをゴムに埋設して構成した環状のベルト
カバー層８が設けられている。このベルトカバー層８
は、ベルト幅の広い第１ベルト層７Ａのエッジ７ａから
段差部７ｙを覆うようにしてタイヤ幅方向内側に延在
し、両ベルト層７Ａ，７Ｂのエッジ部をその外周側から
カバーするようになっている。

【００１４】本発明では、上記のような構成の空気入り
タイヤにおいて、ベルト層７のエッジ部７ｘとベルトカ
バー層８との間に、短繊維を２０〜４０重量％含有する
ゴム層９が設けられている。この短繊維で補強されたゴ
ム層９は、ベルト層７の段差部７ｙを覆いながら、平面
視でベルトカバー層８と殆ど重複するようにして、ベル
ト層７Ａ，７Ｂのエッジ部外周側に積層されている。

【００１５】このようにベルト層エッジ部７ｘとベルト
カバー層８との間にゴム層９を介設することにより、ベ
ルト層エッジ部７ｘにおける段差が大きくても、そのゴ
ム層９がベルトカバー層８とベルト層エッジ部７ｘとの
間のエアが残留する恐れのある空間に埋められるように
なるので、エア溜まりの発生を抑えることができる。し
かも、ゴム層９を２０〜４０重量％の短繊維を含有する
構成とするため、従来の単にゴムのみから構成したゴム
層よりも硬度を大きく高めることができるので、この短
繊維補強のゴム層９を介して補強コードを配列したベル
トカバー層８によりベルト層エッジ部７ｘを拘束するタ
ガ効果を十分に発揮させることができる。従って、ベル
ト層７の耐エッジセパレーション性を高め、ベルト耐久
性を向上することができる。

【００１６】上記ゴム層９の短繊維の含有量が２０重量
％未満では、ゴム層９の硬度が低下するため、ベルトカ
バー層８によるタガ効果が不十分となる。逆に４０重量
％を越えると、ベルトエッジ部の段差を十分に充填する
ことができないという問題が生じる。上記ゴム層９は、
ＪＩＳ硬度が５５以上であり、また、粘弾性を示す２０
℃tan δが０．３８以下のゴムから構成することができ
る。ＪＩＳ硬度が５５未満であったり、２０℃tan δが
０．３８より大きくなると、短繊維で補強したゴム層９
の硬度が不十分となるため、ベルトカバー層８によるタ
ガ効果を十分に発揮させることが難しくなる。十分な充
填効果及び接着性の点からＪＩＳ硬度の上限値は６５、
２０℃tan δの下限値は０．０６にすることができる。

【００１７】上記ゴム層９に混入される短繊維として
は、無機或いは有機繊維の何れであってもよく、好まし
くは、有機繊維がよい。この有機繊維としては、例え
ば、ナイロン繊維を好ましく例示することができる。短
繊維の長さとしては、２０〜４０μｍ、その直径として
は、０．１５〜０．４５μｍにすることができる。好ま
しくは、短繊維の長さを略３０μｍ、直径を略０．３μ
ｍにするのがよい。

【００１８】上記実施形態では、ベルト層７のエッジ部
にのみその外周側にベルトカバー層８を設けた場合につ
いて説明したが、ベルト層７の外周側に該ベルト層全体
を覆うように設けたベルトカバー層であってもよく、上
記ベルトカバー層８は、少なくともベルト層のエッジ部
をカバーするようにしたベルトカバー層であればよい。

【００１９】また、本発明では、上記実施形態におい
て、ベルト層を２層設けた例について説明したが、それ
に限定されず、トレッド部表面側に面してベルト層エッ
ジ部に段差が生じる構成であれば、ベルト層を２層以上
設けたものであってもよいことは言うまでもない。本発
明は、特に、ベルト層エッジ部の段差が大きく、エアが
残留する恐れが大きい、ライトトラックやバス、普通ト
ラック等の重荷重用車両に用いられる空気入りタイヤに
好適に採用することができる。

【００２０】

【実施例】タイヤサイズを１９５／８５Ｒ１６で共通に
し、ベルトカバー層とベルト層エッジ部との間に短繊維
を含有するゴム層を配置した図１に示す構成の本発明タ
イヤと、図１において、短繊維で補強したゴム層を設け
ていない従来タイヤ１、及び図１において、短繊維で補
強したゴム層に代えて、ゴムのみからなるゴム層を設け
た従来タイヤ２とをそれぞれ作製した。

【００２１】本発明タイヤのゴム層の短繊維含有率は３
０重量％であり、また、そのゴム層は、ＪＩＳ硬度が５
７、２０℃tan δが０．３５のゴムから構成されてい
る。短繊維には６ナイロンが使用され、その直径は略
０．３μｍ、長さは略３０μｍである。これら各試験タ
イヤを以下に示す測定条件により、ベルト耐久性の評価
試験を行ったところ、表１に示す結果を得た。 ベルト耐久性 各試験タイヤをＪＡＴＭＡ標準リムに装着し、空気圧４
５０kPa にして、室内ドラム試験を行い、タイヤ（ベル
ト層のエッジ部）が破壊されるまでの耐久性を測定し、
その結果を従来タイヤ１を１００とする指数値で評価し
た。その値が大きい程、ベルト耐久性が優れている。

【００２２】

【表１】 表１から明らかなように、本発明タイヤは、高いベルト
耐久性を得ることができるのが判る。

【００２３】

【発明の効果】上述したように本発明は、ベルト層のエ
ッジ部にベルトカバー層を設けた空気入りタイヤにおい
て、ベルト層エッジ部とベルトカバー層との間に短繊維
を２０〜４０重量％含有するゴム層を配置したので、ベ
ルト層のエッジ部における段差が大きくても、ベルト層
の耐エッジセパレーション性を向上し、ベルト耐久性を
高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子
午線要部断面図である。

【符号の説明】

１ トレッド部 １Ａ トレッド部
表面 ４ カーカス層 ７ ベルト層 ７Ａ 第１ベルト層 ７Ｂ 第２ベルト
層 ７ｘ エッジ部 ７ｙ 段差部 ８ ベルトカバー層 ９ ゴム層

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トレッド部のカーカス層外周側にベルト
   幅の異なる複数のベルト層を積層し、ベルト幅の相違に
   よりトレッド部表面側に面してベルト層のエッジ部に生
   じる段差部を覆うようにベルト層エッジ部外周側に補強
   コードを配列したベルトカバー層を設けた空気入りタイ
   ヤにおいて、 前記ベルト層エッジ部と前記ベルトカバー層との間に、
   短繊維を２０〜４０重量％含有するゴム層を配置した空
   気入りタイヤ。
2. 【請求項２】 前記ゴム層を構成するゴムのＪＩＳ硬度
   を５５以上、２０℃tan δを０．３８以下にした請求項
   １記載の空気入りタイヤ。
3. 【請求項３】 前記短繊維を直径０．１５〜０．４５μ
   ｍ、長さ２０〜４０μｍの有機繊維から構成した請求項
   １または２記載の空気入りタイヤ。