JPH10341557A - 小型モータ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 整流子に対するブラシの押圧力を確保し、高
電流仕様のものにも充分対応できる小型モータを提供す
る。 【解決手段】 内周面に永久磁石を固着したハウジング
と、電機子と整流子とからなる回転子と、整流子と摺動
係合されるブラシを備えたブラシアームを固着してなる
エンドキャップとからなり、ハウジングとエンドキャッ
プとに設けられた軸受を介して回転子を回転自在に支持
してなる小型モータにおいて、ブラシアームを導電性弾
性材料からなる薄板により片持梁状に形成し、ブラシア
ームの自由端から所定の領域をｈ＞ｔ（ｈはブラシアー
ムの高さ、ｔはブラシアームの薄板の厚さ）なる剛性部
に形成し、この剛性部にブラシアームの一部の切起こし
により片持梁状の補助アームを形成し、この補助アーム
の自由端をエンドキャップに設けた支持部に摺動可能に
当接させると共に、補助アームと支持部との接触角を鋭
角に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車用ラ
ンバーサポート、電気ドリル等の駆動源として使用され
る小型モータに関するものであり、特に整流子に対する
給電用のブラシの追従性が良好であると共に、大電流を
安定して給電できる小型モータに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図７は従来の小型モータの例を示す要部
縦断面図である。図７において、１はハウジングであ
り、例えば軟鉄のような金属材料により、有底中空筒状
に形成され、その内周面に例えばアークセグメント状に
形成された永久磁石２を固着して固定子を形成する。次
に３はエンドキャップであり、例えば熱可塑性樹脂材料
によりまたはこれと金属材料との組合せによって、前記
ハウジング１の開口部に嵌着固定され得るように形成さ
れている。

【０００３】次に４は回転子であり、前記永久磁石２に
対向する電機子５と、この電機子５に近接して設けられ
かつ電機子５と電気的に接続されてなる整流子６とによ
って構成されており、ハウジング１の底部とエンドキャ
ップ３とに各々設けられた軸受７，８によって回転可能
に支持されている。

【０００４】９はブラシアームであり、例えば銅若しく
は銅合金のような導電材料により帯板状に形成され、自
由端に前記整流子６と摺動係合されるブラシ１０を備
え、エンドキャップ３内に設けられている。なおエンド
キャップ３内には、前記ブラシアーム９と電気的に接続
されてなる入力端子１１が設けられており、外部直流電
源にこの入力端子１１を接続することにより、ブラシア
ーム９、ブラシ１０および整流子６を介して電機子５に
電流を供給可能に構成されている。

【０００５】上記の構成により、電機子５に電流が供給
されると、ハウジング１の内周面に固着された永久磁石
２によって形成されている磁界中に存在する電機子５
に、フレミングの左手の法則により回転力が付与される
から、回転子４を回転させることができ、回転子４と連
結されてなる各種機器を駆動させることができるのであ
る。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記構成の小型モータ
においては、整流子６の摩耗、および例えばカーボン材
料からなるブラシ１０の摩耗に対応するために、ブラシ
アーム９にはばね性の高い材料を使用すると共に、ブラ
シアーム９のたわみを大きくする必要がある。

【０００７】一方、例えば電気ドリル用のもののように
回転数の大なるもの（１２０００ｒｐｍ以上）に使用さ
れる場合、ブラシアーム９の弾性によるブラシ１０の整
流子６に対する押圧力が不充分であると、整流子６を構
成する整流子片間の段差によってブラシ１０が跳ね上が
り、整流子６に対するブラシ１０の追従性が低下し、所
定の回転数が得られなくなる。また入力電流値にばらつ
きが発生し、回転むらが発生することもある。

【０００８】上記の要請に応え、かつ上記問題点を解決
するために、ブラシアーム９を構成する材料としては、
ばね限界値が大である例えばベリリウム銅、就中ベリリ
ウム含有率が1.８〜2.０重量％のもの（ＡＳＴＭ Ｃ１
７２００相当）が使用されていた。しかしこのようなベ
リリウム含有率の高いベリリウム銅は、ばね限界値は大
であるが、加工が困難であるのみならず、高価であるた
め、製造コストが高騰するという問題点がある。

【０００９】またばね限界値の大である上記材質のもの
は導電率が低いため、大電流を必要とする高出力モータ
の場合には、ブラシアーム９の固有抵抗に起因する発熱
を招来し、極端な場合にはブラシアーム９が溶断するこ
ともあるという問題点がある。一方このような溶断事故
を防止するために、横断面積の大なるブラシアーム９と
すると、加工が煩雑となり、製造コストを高騰させる要
因となるため好ましくない。

【００１０】なお従来技術として、例えば実開昭６２−
１７７２６８号公報に開示されるように、整流子６と摺
動するブラシアーム９の一片を長手方向に切起こして防
振ブラシ片を形成し、この防振ブラシ片を任意に配設し
たプレートに押圧当接させたものが提案されているが、
この考案はブラシアーム９の防振のみに着目しているの
であり、上記のような本発明の課題を解決することが困
難である。すなわち、上記構成のものでは、ブラシアー
ム９の断面係数および断面二次モーメントが減少して、
ブラシ１０の整流子６に対する押圧力が確保できないと
共に、ブラシアーム９の横断面積の減少により、ブラシ
アーム９の発熱を招来し、更には高電流仕様のものには
適用できないという問題点がある。

【００１１】本発明は、上記従来技術に存在する問題点
を解決し、整流子に対するブラシの押圧力を確保すると
共に、高電流仕様のものにも充分対応できる小型モータ
を提供することを課題とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明においては、内周面に永久磁石を固着して
なるハウジングと、電機子と整流子とからなる回転子
と、前記整流子と摺動係合されるブラシを備えたブラシ
アームを固着してなるエンドキャップとからなり、前記
ハウジングとエンドキャップとに設けられた軸受を介し
て前記回転子を回転自在に支持してなる小型モータにお
いて、ブラシアームを導電性弾性材料からなる薄板によ
り片持梁状に形成すると共に、ブラシアームの自由端か
ら所定の距離の領域をｈ＞ｔ（ｈはブラシアームの面と
直交方向の高さ寸法、ｔはブラシアームを形成する薄板
の厚さ寸法）なる剛性部に形成し、この剛性部にブラシ
アームの一部の切起こしにより片持梁状の補助アームを
形成し、この補助アームの自由端をエンドキャップに設
けた支持部に摺動可能に当接させると共に、補助アーム
と支持部との接触角を鋭角に形成し、ブラシの整流子に
対する押圧力を増大させるように構成する、という技術
的手段を採用した。

【００１３】本発明において、剛性部の横断面形状を略
Ｕ字形に形成することができる。また上記の発明におい
て、補助アームを反整流子側に設けることができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１は本発明の実施の形態を示す
要部縦断面図、図２は図１におけるエンドキャップの内
端面図であり、同一部分は前記図７と同一の参照符号で
示す。図１および図２において、１２は固定ピンであ
り、例えばばね鋼によりＵ字状に形成され、永久磁石
２，２間に介装させることにより、永久磁石２をハウジ
ング１内に位置決め固着するためのものである。１３は
ヨークであり、例えば鉄板のような強磁性材料によって
例えば略円筒状に形成されると共に、ハウジング１の外
側面に固着され、永久磁石２からの磁束を収束して磁路
を確保するためのものである。

【００１５】次にブラシアーム９は、例えばベリリウム
含有量が0.１〜0.７重量％のベリリウム銅（ＡＳＴＭ
Ｃ１７５１０相当）により、後述するように自由端から
所定の距離の領域を剛性部１４に形成すると共に、この
剛性部１４にブラシアーム９の一部の切起こしにより、
片持梁状の補助アーム１５を形成する。１６は支持部で
あり、エンドキャップ３の内周の一部に設けると共に、
補助アーム１５の自由端を摺動可能に当接させる。θは
接触角であり、補助アーム１５と支持部１６の表面との
間に形成され、鋭角に形成される。

【００１６】図３は図１および図２におけるブラシアー
ム９および入力端子１１を示す拡大説明図であり、
（ａ）は背面、（ｂ）（ｃ）は各々（ａ）におけるＡ方
向矢視およびＢ−Ｂ線拡大断面を示す。図３において、
ブラシアーム９はその剛性部１４の横断面形状を例えば
略Ｕ字状に形成されると共に、全体の形状を略Ｌ字状に
屈曲されて形成される。ブラシ１０はブラシアーム９の
自由端の近傍に設けられた取付穴１７に嵌着され、前記
図２に示すように整流子６の表面に押圧可能に形成され
る。このようなブラシアーム９は、例えばプレス加工に
よって折曲げ形成される。次に入力端子１１は、例えば
黄銅、洋白等の銅合金によって板状に形成され、前記ブ
ラシアーム９の基部と部分的に重合させ、例えばかしめ
手段、スポット溶接等によって一体に接合される。

【００１７】上記の構成により、剛性部１４の断面係数
若しくは断面二次モーメントを、ブラシアーム９の平板
状の部分より極めて大に形成することができ、たわみ量
を平板状の部分と比較して殆ど無視し得る程小になる。
従ってこの剛性部１４の中央部に、その長手方向の切起
こしによって片持梁状の補助アーム１５を設けても、ブ
ラシアーム９の曲げ強度には殆ど影響を及ぼすことはな
い。

【００１８】なおブラシアーム９を前記のようにＡＳＴ
Ｍ Ｃ１７５１０相当のベリリウム銅で形成した場合に
は、導電率（％ＩＡＣＳ ａｔ２０℃）が従来使用され
ているＡＳＴＭ Ｃ１７２００相当のベリリウム銅に比
較して略１／２となるが、前記ブラシアーム９に設ける
べき補助アーム１５の幅寸法をブラシアーム９の幅寸法
の１／２以下にすれば、従来のものと同等の導電率を確
保することができる。また上記Ｃ１７５１０相当のベリ
リウム銅はＣ１７２００相当のベリリウム銅と比較して
引張強度は１３０kg／mm² から８０kg／mm² に低下する
が、補助アーム１５を設けたことにより、整流子６に対
するブラシ１０の押圧力を従来のもの以上に増大させる
ことができるのである。

【００１９】図４は本発明の他の実施の形態におけるブ
ラシアームを示す説明図であり、（ａ）は側面、（ｂ）
（ｃ）は各々剛性部の拡大横断面を示し、同一部分は前
記図３と同一の参照符号で示す。図４（ａ）に示すよう
に、剛性部１４に設けるべき補助アーム１５は、前記図
３に示すものとその切起こし方向を逆に形成してもよ
い。この場合、補助アーム１５と支持部１６の表面との
間に形成される接触角θは、ブラシアーム９の自由端側
に形成される点で前記図３に示すものと相違するが、接
触角θが鋭角に形成される点は前記のものと同一であ
る。

【００２０】図４（ｂ）（ｃ）は各々剛性部１４の横断
面形状の変形例を示すものであり、前記図３（ｃ）のも
の以外にも種々のものを選択できることを示している。
本発明においては、要するに剛性部１４の高さ寸法ｈ
を、ブラシアーム９を形成する薄板の厚さ寸法ｔより大
に、すなわちｈ＞ｔに形成すればよい。なお剛性部１４
を形成するためのブラシアーム９の両端縁の曲げ方向
は、反整流子側とした方が、例えばカーボンブラシをブ
ラシアーム９に嵌着させる作業が容易であるが、上記と
逆方向に曲げても作用は同様である。

【００２１】図５は本発明の実施の形態における電圧と
電流および回転数との関係を示す図であり、（ａ）
（ｂ）は各々図２の状態における整流子６の回転方向が
各々時計方向および反時計方向の場合を示している。ま
た図６は従来の小型モータにおける電圧と電流および回
転数との関係を示す図であり、（ａ）（ｂ）は各々図５
（ａ）（ｂ）と対応するものである。まず図６に示す従
来のものにおいては、電流値の変動が大であると共に、
回転数にも若干の変動が認められる。これはブラシアー
ムに補助アームを欠如する構成であるため、整流子に対
するブラシの追従性が低下することに起因するものと認
められる。なお整流子が図２の状態において時計方向に
回転する場合（図６（ａ））は、ブラシアームに対して
長手方向に圧縮荷重が作用することにも起因して、ブラ
シアームの跳ね上がりが助長され、電流値の変動が大と
なって現れている。

【００２２】上記従来のものに対して本発明の実施の形
態のものにおいては、図５（ａ）（ｂ）に示すように、
電流値の変動が大幅に低減されていると共に、回転数の
変動もまた小であることがわかる。また図２におけるブ
ラシアーム９に対する整流子６の回転方向の差異に拘わ
らず安定しており、図６（ａ）（ｂ）間のような顕著な
相違は認められない。

【００２３】これは図２に示すようにブラシアーム９に
補助アーム１５を設けることにより、整流子６に対する
ブラシ１０の押圧力を増大するように構成したことに起
因して、整流子６に対するブラシ１０の追従性が向上し
たためであると認められる。この作用効果は、特に小型
モータの使用初期のように、整流子６を構成する整流子
片間の段差があり、ブラシ１０とのなじみが不足してい
る場合において特に有効である。

【００２４】上記の発明の実施の形態においては、ブラ
シアームおよび入力端子を特定の銅合金によって形成し
た例について記述したが、本発明はこれらのものに限定
されず、他の導電材料についても適用可能である。また
ブラシアームおよび入力端子の形状、寸法は、小型モー
タの仕様を勘案して適宜選定できることは勿論である。

【００２５】

【発明の効果】本発明は以上記述のような構成および作
用であるから、下記の効果を奏し得る。

【００２６】(1) ブラシアームに設けた補助アームによ
り、整流子に対するブラシの押圧力を所定の値に確保で
き、ブラシの追従性を向上させることができる。 (2) 電流値の変動を低減させ得ると共に、高電流仕様の
ものにも充分に対応でき、大電流を安定して給電でき
る。

【００２７】(3) 特に使用初期における整流子とブラシ
とのなじみが不足していても安定した回転が得られる。 (4) 補助アームはブラシアームの剛性部に設けるため、
ブラシアームの機械的強度には全く影響はない。

【００２８】(5) 例えばベリリウムの含有量の低い材料
を使用できるため、材料費の低減に加えて、加工が容易
であるため、製造コストの低減が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態を示す要部縦断面図であ
る。

【図２】図１におけるエンドキャップの内端面図であ
る。

【図３】図１および図２におけるブラシアーム９および
入力端子１１を示す拡大説明図であり、（ａ）は背面、
（ｂ）（ｃ）は各々（ａ）におけるＡ方向矢視およびＢ
−Ｂ線拡大断面を示す。

【図４】本発明の他の実施の形態におけるブラシアーム
を示す説明図であり、（ａ）は側面、（ｂ）（ｃ）は各
々剛性部の拡大横断面を示す。

【図５】本発明の実施の形態における電圧と電流および
回転数との関係を示す図であり、（ａ）（ｂ）は各々図
２の状態における整流子６の回転方向が各々時計方向お
よび反時計方向の場合を示す。

【図６】従来の小型モータにおける電圧と電流および回
転数との関係を示す図であり、（ａ）（ｂ）は各々図５
（ａ）（ｂ）と対応する。

【図７】従来の小型モータの例を示す要部縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１ ハウジング ３ エンドキャップ ９ ブラシアーム １４ 剛性部 １５ 補助アーム

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内周面に永久磁石を固着してなるハウジ
   ングと、電機子と整流子とからなる回転子と、前記整流
   子と摺動係合されるブラシを備えたブラシアームを固着
   してなるエンドキャップとからなり、前記ハウジングと
   エンドキャップとに設けられた軸受を介して前記回転子
   を回転自在に支持してなる小型モータにおいて、 ブラシアームを導電性弾性材料からなる薄板により片持
   梁状に形成すると共に、ブラシアームの自由端から所定
   の距離の領域をｈ＞ｔ（ｈはブラシアームの面と直交方
   向の高さ寸法、ｔはブラシアームを形成する薄板の厚さ
   寸法）なる剛性部に形成し、この剛性部にブラシアーム
   の一部の切起こしにより片持梁状の補助アームを形成
   し、この補助アームの自由端をエンドキャップに設けた
   支持部に摺動可能に当接させると共に、補助アームと支
   持部との接触角を鋭角に形成し、ブラシの整流子に対す
   る押圧力を増大させるように構成したことを特徴とする
   小型モータ。
2. 【請求項２】 剛性部の横断面形状を略Ｕ字形に形成し
   たことを特徴とする請求項１記載の小型モータ。
3. 【請求項３】 補助アームを反整流子側に設けたことを
   特徴とする請求項１若しくは２記載の小型モータ。