JPH10298068A - 医療用粘着剤及び当該医療用粘着剤を用いた医療用粘着シート、経皮吸収製剤並びに当該医療用粘着剤の製造方法 - Google Patents

医療用粘着剤及び当該医療用粘着剤を用いた医療用粘着シート、経皮吸収製剤並びに当該医療用粘着剤の製造方法

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JPH10298068A
JPH10298068A JP12341997A JP12341997A JPH10298068A JP H10298068 A JPH10298068 A JP H10298068A JP 12341997 A JP12341997 A JP 12341997A JP 12341997 A JP12341997 A JP 12341997A JP H10298068 A JPH10298068 A JP H10298068A
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JP
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sensitive adhesive
polymer
medical
pressure
graft
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Application number
JP12341997A
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English (en)
Inventor
Hidetoshi Kuroda
英利 黒田
Hitoshi Akemi
仁 明見
Saburo Otsuka
三郎 大塚
Takamitsu Muraoka
崇光 村岡
Keigo Inosaka
敬悟 井ノ阪
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粘着剤中の薬物安定性、薬物放出性や皮膚刺
激性に重大な影響を与える可能性のある極性モノマーや
反応性官能基を有するモノマーを用いることなく、ま
た、従来の化学的架橋剤を用いることなく、適度な凝集
力を有する医療用粘着剤を提供する。 【解決手段】 アクリル酸エステルモノマーと、芳香族
系ポリマーの片末端に重合性官能基を有するマクロマ
ー、より具体的には、芳香族系ポリマーの片末端にアク
リル酸がエステル結合したマクロマーを、グラフトポリ
マーに対しグラフト鎖の導入割合が5〜20重量%とな
るようにグラフト共重合させて得られる、アクリル系ポ
リマーを主体とする幹ポリマーに芳香族系ポリマーを主
体とするグラフト鎖が結合したグラフトポリマーから、
本発明に係る医療用粘着剤を構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療用粘着剤及び
当該医療用粘着剤を用いた医療用粘着シート、経皮吸収
製剤並びに当該医療用粘着剤の製造方法に関する。具体
的には、ヒト皮膚面に貼付して薬物を皮膚から生体内へ
連続的に投与する経皮吸収製剤やヒト皮膚面への貼付す
る医療用粘着シートに適した医療用粘着剤及び当該医療
用粘着剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、皮膚を通して経皮吸収用薬物を生
体内に投与するための経皮吸収製剤として、膏体や粘着
剤を用いたパップ剤やテープ製剤などの経皮吸収型の外
用貼付剤が種々開発されている。その中でも、投与作業
が容易で投与量を厳格に制御できることから、粘着剤中
に経皮吸収用薬物を含有させたテープ製剤が着目されて
いる。
【0003】このようなテープ製剤は、経皮吸収用薬物
を含有する粘着剤層を皮膚面に貼付して使用されるもの
であり、粘着剤中の薬物安定性(粘着剤中の薬物含量の
低下防止)、粘着剤中からの薬物放出性、皮膚面への密
着性(接着性)、皮膚面への糊残りをなくすための適度
な凝集性、皮膚に対する無刺激性など、数々の特性が要
求される。
【0004】従来から一般には、粘着剤の凝集力を向上
させるために、粘着剤を構成するポリマー(以下、「粘
着剤ポリマー」という。)中に極性モノマーを共重合す
る方法が取られている。凝集力を向上させるために用い
られる極性モノマーは反応性が高く、それ自身安定性に
欠け、含有する経皮吸収用薬物と反応して薬物含量の低
下を招いたり、望ましくない反応を引き起こして分解物
を生成する可能性がある。このため、薬物安定性の観点
から、粘着剤中に含有させることのできる薬物が制限さ
れ、数多くの種類の薬物が経皮吸収製剤として製剤化す
ることができなかった。
【0005】また、凝集力をより一層向上させるため
に、反応性官能基を持つモノマーを粘着剤ポリマー中に
共重合し、架橋剤を添加して前記モノマーの官能基に化
学的架橋処理を施すことがある。この架橋点となる反応
性官能基として、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、
アミド基、エポキシ基などが一般的に用いられるが、こ
れらの反応性官能基は皮膚刺激性が強い。このため、皮
膚面に適用される医療用粘着剤に用いる場合には、当該
モノマーの配合量が制限され、凝集力を十分に向上させ
ることができなかった。
【0006】さらに、遊離の塩基構造とすることによっ
て経皮吸収性が大きく向上する薬物が数多く知られてい
るが、これらの薬物が粘着剤中の反応性官能基と相互作
用を引き起こすと、薬物放出性に大きく影響を及ぼすこ
とが考えられる。
【0007】また、化学的架橋処理を施す場合には、架
橋点となる官能基に対し、当量以上の架橋剤を配合する
場合があり、時として反応性を考慮して大過剰量配合す
ることもある。しかし、架橋剤を過剰に配合しても、粘
着剤ポリマー中の反応性官能基が全て反応するとは考え
られず、反応性官能基が残存してしまう。この結果、残
存官能基と薬物とが相互作用を生じ、薬物安定性に悪影
響を与えたり、薬物放出性を低下させる、あるいは、皮
膚刺激を発現する可能性を生じるなどの問題があった。
【0008】さらには、皮膚への刺激など架橋剤自体の
安全性を考慮しなければならず、医療用粘着剤として用
いられる架橋剤についても自ずと制限があった。また後
述するその他の添加剤成分と架橋剤が反応する場合に
は、目的とする架橋反応が起こらないこともある。
【0009】一方で含有させる経皮吸収用薬物自体にも
架橋作用を有する場合があり、その場合、粘着剤ポリマ
ーとの反応による薬物含量の低下を招いたり、反応後の
副生成物が薬物安定性に影響を及ぼすことが考えられ
る。
【0010】本発明は叙上の従来例の欠点に鑑みてなさ
れたものであり、その目的とするところは、粘着剤中の
薬物安定性、薬物放出性や皮膚刺激性に重大な影響を与
える可能性のある極性モノマーや反応性官能基を有する
モノマーを用いなくても、また、従来の化学的架橋剤を
用いなくても、適度な凝集力を有する医療用粘着剤を提
供するととともに、薬物安定性や薬物放出性に優れた経
皮吸収製剤を提供することにある。
【0011】本願発明者らは、上記課題を解決するため
に鋭意研究を重ねた結果、粘着剤ポリマーとして、アク
リル系ポリマーを主体とする幹ポリマーに、芳香族系ポ
リマーを主体とするグラフト鎖が結合したグラフトポリ
マーを用いることで、これまでのように反応性官能基を
持つモノマーや極性モノマーを共重合させることなく粘
着剤の凝集力を改善し、経皮吸収製剤の薬物放出性、皮
膚刺激性、薬物安定性を飛躍的に向上させることを見い
出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1の医療
用粘着剤は、アクリル系ポリマーを主体とする幹ポリマ
ーに、芳香族系ポリマーを主体とするグラフト鎖が結合
したグラフトポリマーを含有することを特徴としてい
る。
【0013】また、本発明に係る第2の医療用粘着剤
は、アクリル酸エステルモノマーと芳香族系ポリマーを
主体とするマクロマーとのグラフトポリマーを含有する
ことを特徴としている。
【0014】当該医療用粘着剤は、後述するように経皮
吸収製剤あるいは医療用粘着テープの粘着剤層を構成す
る主成分となるものであって、アクリル系ポリマーを主
体とする幹ポリマーに、芳香族系のポリマーを主体とす
るグラフト鎖が結合したグラフトポリマー、すなわち、
芳香系族ポリマーを主体とするマクロマー、より具体的
には芳香族系ポリマーの片末端にアクリル酸がエステル
結合したマクロマーとアクリル酸エステルモノマーとの
グラフトポリマーを含有するものである。
【0015】一般に医療用粘着剤として用いられる粘着
剤ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリ
マー、シリコーン系ポリマーなどがあるが、本発明にお
いてはグラフト鎖導入反応において有利である点で、ア
クリル系ポリマーを幹ポリマーとして用いるのが望まし
く、ゴム系ポリマーやシリコーン系ポリマーにおいては
グラフト鎖導入反応における条件設定が困難であり、本
発明においては望ましいものではない。
【0016】また、当該アクリル系ポリマーとしては、
アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アル
キルエステルの重合体が好ましく、特に(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステルを主成分として共重合したアクリ
ル酸アルキルエステル系の共重合体を用いるのが望まし
い。なお、本発明において、「アクリル酸」とは広義の
アクリル酸を意味するものであり、「(メタ)アクリル
酸」はアクリル酸及びメタクリル酸の両者を含む概念と
して用いるものである。
【0017】具体的には、アルキル基がブチル、ペンチ
ル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、
ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどの直鎖アルキル
基もしくは分岐アルキル基である(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステルが挙げられ、これらの一種もしくは二種
以上を用いることができる。
【0018】また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステルと共重合するモノマーとしては、(メタ)アクリ
ル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エト
キシジエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコ
キシアルキルエステル、また、(メタ)アクリル酸テト
ラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸メト
キシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸
メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アク
リル酸メトキシプロピレングリコールエステルなどのア
ルコシキ基(側鎖にエーテル結合を有するアルコキシ基
を含む。)含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸
ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジ
ン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペ
ラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミ
ダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾー
ル、ビニルモルホリン、スチレン、α−メチルスチレン
ビニル系モノマーなどが用いられ、これら1種もしくは
2種以上を併用して共重合することができる。これら共
重合するモノマーは、薬物の溶解性の調整、得られる粘
着剤の接着力や凝集力の調整のために用いられ、共重合
させる比率は、目的に応じて任意に設定することができ
る。
【0019】上記アクリル系ポリマーに導入されるグラ
フト鎖は、芳香族系のポリマーを主体とするものであっ
て、幹ポリマーとなるアクリル系ポリマーと相溶性が低
い芳香族系のポリマーを主体とするものであれば、特に
限定されるものではないが、グラフト鎖のガラス転移点
(Tg)は、常温(0〜30℃)より低い場合、十分な
凝集力の改善効果を得られないため、273°K以上の
ものを用いるのが好ましい。このグラフト鎖は、芳香族
系モノマーを数個から数百個連結したポリマー(オリゴ
マーであってもよい。)であって、分子量がおおよそ1
万までのものであり、直鎖状のものだけでなく、分岐鎖
を有していてもよい。具体的にはスチレン(その誘導体
を含む)や芳香族アミド、芳香族ジカルボン酸などの各
種芳香族系ポリマーが主として挙げられ、ホモポリマー
に限られず、コポリマーを用いることもできる。特に、
分子量の調節しやすさや入手容易さの観点から、ポリス
チレンを用いるのが好ましい。
【0020】このように、本発明においてはアクリル系
ポリマーと芳香族系ポリマーとの相溶性が悪いので、幹
ポリマーとグラフト鎖は相分離構造を形成するようにな
る。この結果、粘着剤中で凝集したグラフト鎖によって
粘着剤ポリマー全体が疑似的に架橋されたようになり、
全体として凝集力が高くなる。したがって、官能性モノ
マーを導入することがなく、また、化学的架橋処理を施
すこともなく、粘着剤の凝集力を向上させることができ
る。
【0021】このグラフト鎖は、得ようとするグラフト
ポリマー自体の粘着力や経皮吸収製剤若しくは医療用粘
着シートの粘着性あるいは経皮吸収製剤に含有させる経
皮吸収用薬物の放出性によっても異なるが、得られるグ
ラフトポリマーの5〜20重量%の範囲となるように導
入するのが好ましい。この範囲はまた、幹ポリマーや導
入するグラフト鎖、つまり用いるマクロマー等の性質に
よっても異なるが、一般にグラフト鎖が5重量%より少
ない場合には、十分な凝集力を得ることができず、20
重量%を超えた場合には、ヒト皮膚面に対して適切な接
着力が得られない場合がある。
【0022】また、グラフト鎖の分子量やグラフト鎖の
導入割合及びグラフト鎖のガラス転移点(Tg)を調整
することにより、医療用粘着剤の凝集力を調整すること
も可能である。
【0023】一般に、グラフト鎖は次のようにして、幹
ポリマーに導入することができる。例えば、上記グラフ
ト鎖の末端にカルボキシル基や水酸基などの官能基を導
入したグラフト鎖導入用ポリマーを、予め作成しておい
た幹ポリマーに導入された官能基と反応させて導入する
方法や、グラフト鎖となる芳香族系ポリマーの片末端に
重合性官能基が導入されたマクロマーを、幹ポリマーを
構成するモノマーと一括共重合させる方法が考えられ
る。
【0024】これらの方法のうち、前者の方法ではグラ
フト鎖導入用ポリマーに導入した官能基と反応する官能
基を幹ポリマーに導入する必要があり、また、幹ポリマ
ーとグラフト鎖導入用ポリマーを反応させる工程が必要
である。この場合にあっては、幹ポリマー中の未反応の
官能基が経皮吸収用薬物と反応して、架橋剤を用いる場
合と同様に、薬物安定性や薬物放出性に影響を及ぼすこ
とが考えられ、本発明に適したものではない。
【0025】これに対し後者の方法によれば、一度の工
程で目的とするグラフトポリマーを得ることができ、ま
た、任意の割合でグラフト鎖の導入率を変化させること
が容易にできる。さらに、幹ポリマーに官能基を導入す
る必要がない点でも有利である。
【0026】このとき、グラフト鎖に導入する重合性官
能基としては、ビニル基、アセチル基、カルボキシル
基、シアノ基等の各種重合性官能基を用いることができ
る。特に、アクリル系ポリマーにグラフト鎖を導入する
観点からは、マクロマーとして、片末端に(メタ)アク
リル酸を有するもの、具体的に言うと、エステル残基が
上記各種芳香族ポリマーである(メタ)アクリル酸アル
キルエステルを用いるのが好適である。
【0027】これらのマクロマーと共重合させるアクリ
ル酸エステルモノマーには、上述したようにアルキル基
の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステ
ルを用いるのが好ましく、アルキル基がブチル、ペンチ
ル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、
ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどの直鎖アルキル
基もしくは分岐アルキル基である(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステルが挙げられ、これらの一種もしくは二種
以上を用いることができる、また、上述したように(メ
タ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルやアルコシ
キ基(側鎖にエーテル結合を有するアルコキシ基を含
む。)含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メ
タ)アクリロニトリルなどを、さらに共重合させること
にしてもよい。
【0028】これらのアクリル酸エステルモノマーとマ
クロマーは、通常の共重合体を得るのと同様にして共重
合される。例えば、酢酸エチルやトルエンなどの適当な
溶媒中に両者を溶解あるいは分散させた後、過酸化ベン
ゾイルやアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)など
の重合開始剤を添加して重合を開始させ、目的とするグ
ラフトポリマーを得ることができる。
【0029】このようにして得られたグラフトポリマー
はそれだけで、あるいは様々な添加剤を添加して医療用
粘着剤として用いることができる。
【0030】添加剤としては、経皮吸収用薬物はもちろ
んのこと、可塑剤や経皮吸収促進剤などその他の各種添
加剤、例えば酸化防止剤などを用いることができる。可
塑剤は、得られた医療用粘着剤を可塑化することによっ
て、これらのヒト皮膚面に対する接着力を調整できると
同時に、経皮吸収製剤あるいは医療用粘着シートにソフ
ト感を付与し、経皮吸収製剤等を皮膚面から剥離する際
の痛みや皮膚刺激を低減化することが期待できる点で有
効である。可塑剤として、例えば、ジイソプロピルアジ
ペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケートのよう
なものが例示され、これらの1種若しくは2種以上の可
塑剤を用いることができる。
【0031】経皮吸収促進剤としては、粘着剤層内での
薬物の溶解性や拡散性を良くする機能を有する化合物、
また、角質の保水能、角質軟化性、角質浸透性(ルーズ
化)、浸透助剤や毛孔開孔剤としての機能や皮膚の界面
状態を変える機能のような経皮吸収性を良くする機能を
有する化合物、さらに上記の各機能を合わせもつ化合
物、あるいは、これらの機能に加えて、経皮吸収用薬物
の薬効をさらに高める薬効促進機能を有する化合物など
が広く用いられる。
【0032】このような経皮吸収促進剤として、具体的
には次のような化合物を挙げることができる。例えば、
主に薬物溶解性を高める化合物として、エチレングリコ
ール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、
トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコールなどのグリコール類、主に薬物
拡散性を高める化合物として、オリーブ油、ヒマシ油、
スクアレン、ラノリンなどの油脂類、主に角質の保水能
を高める化合物として、尿素、アラントインなどの尿素
誘導体、主に角質透過性を高める化合物として、ジメチ
ルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、
ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソ
ルビトール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキ
シド、ジメチルホルムアミドのような極性溶剤、主に角
質軟化性を高めるサリチル酸、主に浸透助剤としてのア
ミノ酸、主に毛孔開孔剤としてのニコチン酸ベンジル、
主に皮膚の界面状態を変える機能があるラウリル硫酸ナ
トリウムなど、経皮吸収性が良好な薬物と併用するサロ
コールなどが挙げられる。
【0033】その他流動パラフィンのような炭化水素
類、各種界面活性剤、エトキシ化ステアリルアルコー
ル、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセ
リド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモ
ノエステル類、あるいはグリセリンジエステル、グリセ
リントリエステルまたはそれらの混合物、ラウリル酸エ
チル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソト
リデシルやパルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプ
ロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル
のような高級脂肪酸エステル、オレイン酸、カプリル酸
のような高級脂肪酸、その他N−メチルピロリドン、
1,3−ブタンジオールなどを挙げることができる。
【0034】これらの添加剤として、当該医療用粘着剤
は以下に述べるように、経皮吸収製剤等の製造過程にお
いて適当な支持体上に塗布される点や、ヒト皮膚面に対
する接着力を容易に調整できるなどの観点から液状のも
のを用いるのが好ましい。また、当該液状成分として
は、幹ポリマーと相溶し、かつグラフト鎖と相分離を起
こす性質を有するものであることが望ましく、グラフト
鎖と相溶性が高いと相分離構造が形成されず、得られた
医療用粘着剤の凝集力が低下する恐れがある。これらの
液状の添加剤は、得られた経皮吸収製剤等にソフト感を
与え、剥離時の角質損傷が少なく、貼り直しを可能にで
きるという点でも好都合である。特に、経皮吸収用薬物
を含有させる場合には、薬物の移行性を良好にできると
いう点でも有利である。
【0035】また、添加剤として液状成分を加える場合
には、配合量として、目的とする医療用粘着剤や液状成
分の性質にもよるが、得られる医療用粘着剤に対して、
1〜50重量%に設定するのが好ましい。1重量%より
も少ないと、液状成分の機能を果し得ず、液状成分が5
0重量%を超えると、ヒト皮膚面に対する十分な粘着力
を得ることができない。
【0036】本発明に係る医療用粘着シートは、少なく
とも上記医療用粘着剤を含有するシート状若しくはテー
プ状の粘着剤層を有するものである。
【0037】また、本発明に係る経皮吸収製剤は、少な
くとも上記医療用粘着剤に経皮吸収用薬物を含有させて
なる粘着剤層を有するものである。当該医療用粘着剤に
配合することができる経皮吸収用薬物としては、経皮吸
収性を有するものであれば特に限定されない。具体的に
は全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗てんかん薬、解熱鎮
痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、骨格筋弛緩薬、自律
神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン
薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収
縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、
循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化
膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生
性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用
薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬など
を用いることができ、必要に応じて2種以上併用しても
よい。これらの経皮吸収用薬物は、医療用粘着剤への均
一な分散性や経皮吸収性の点から、疎水性薬物が好まし
く、具体的には、常温における水に対する溶解性が、
0.4g/100ml以下のものが好都合である。
【0038】これらの経皮吸収用薬物の含有量は、薬物
種や投与目的に応じて適宜設定することができるが、通
常、粘着剤層中に2〜40重量%、好ましくは3〜30
重量%程度の範囲で配合するのがよい。含有量が2重量
%に満たないと、治療や予防に有効な量の薬物放出が期
待できない場合があり、40重量%を超えると、薬物を
増量したほどの効果が期待できない場合が多く、経済的
にも不利である。なお、本発明において、上記経皮吸収
用薬物は、粘着剤層中にその全てが溶解している必要は
なく、粘着剤層に対する溶解度以上の薬物量を含有さ
せ、未溶解状態で薬物が分散された状態であってもよ
い。
【0039】上記粘着剤層は、そのままシート状に形成
され、若しくは取扱い性の容易さなどからシート状又は
テープ状の支持体上に形成される。支持体は、粘着剤層
に含有される経皮吸収用薬物や液状成分が支持体を通っ
て背面から失われて含量低下を起こさないもの、即ちこ
れらの成分が不透過である材質のものを用いるのが望ま
しい。具体的には、ポリエチレン、ナイロン、サラン、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル
共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリ
テトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独
フィルムやシート、またはこれらのラミネートフィルム
などを用いることができる。
【0040】これらのうち、支持体と粘着剤層との間の
投錨力を向上させるために、公知の下塗り剤を用いた
り、支持体として上記材質からなる無孔シートと多孔フ
ィルムとのラミネートフィルムを用いて、多孔質側に粘
着剤層を形成するのが好ましい。このように多孔フィル
ム上に粘着剤層を形成した場合には、粘着剤層との投錨
力を向上させることができ、ヒト皮膚面からの剥離時に
糊残りを少なくできる。このような観点から、多孔フィ
ルムとしては、粘着剤層との間の投錨力を向上できれば
特に限定されず、例えば、紙、織布、不織布や上述した
フィルムシートに機械的に穿孔処理したものが挙げら
れ、特に通気性の観点からは紙、織布、不織布が好まし
い。また、多孔フィルムの厚さは、投錨力の向上や製剤
全体の柔軟性の観点から、20〜500μmとするのが
よく、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄
手の経皮吸収製剤の場合は、20〜200μmの範囲の
ものが好ましい。また、多孔フィルムとして織布や不織
布を用いる場合には、目付量を5〜30g/m2、好ま
しくは5〜20g/m2とするのが好ましい。
【0041】本発明に係る医療用粘着シートや経皮吸収
製剤は、このような支持体上に上記の医療用粘着剤から
なる粘着剤層が形成されたものであり、さらに、粘着剤
層を衛生的に保存できる点や、経皮吸収製剤等を積み重
ねたり、ロール状にして保管できる点から、粘着剤層上
にさらに剥離層を積層することが好ましい。この剥離層
として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、表面をポリマー処理した紙、あるいはその他のフィ
ルムやシートが例示される。
【0042】当該粘着剤層は、適度な溶媒によって粘度
が調整された医療用粘着剤を含む溶液を、剥離層上若し
くは支持体上に塗布した後、液状成分が上記範囲になる
ように乾燥させて得ることができ、こうして本発明に係
る医療用粘着シートあるいは経皮吸収製剤を作製でき
る。
【0043】こうして得られた粘着剤層は、ヒト皮膚面
に適当な接着力及び凝集力を有するものであって、最終
製品の接着力として、40〜400g/24mm程度と
なるように調整するのがよい。
【0044】
【実施例】次に、本発明に係る実施例である経皮吸収製
剤(若しくは医療用粘着シート)及び比較例である経皮
吸収製剤(若しくは医療用粘着シート)を作成し、以下
の評価項目についてそれぞれ評価を行ない、本発明の効
果を確かめた。なお、以下において、「部」及び「%」
は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0045】〔実施例1〕アクリル酸2−エチルヘキシ
ル(2−EHA)95部、ポリスチレンマクロマー(M
cS)(東亜合成社製、メタクリル酸2−ポリスチリル
エチル:数平均分子量=6000)5部、酢酸エチル1
00部を反応容器中にて攪拌しながら十分に窒素置換を
行ない、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.
2部を添加して重合反応を行なった。反応中は攪拌速度
を調整しながら、外浴冷却をし、さらに希釈溶媒として
酢酸エチルを滴下することによって、反応温度を58〜
60℃の温度域に制御し、1.5時間重合反応を行なっ
た。その後、約75〜80℃に昇温し、3時間攪拌を行
ない、ポリスチレン鎖が2−EHAポリマーにグラフト
された本発明に係る医療用粘着剤の粘稠溶液を得た。こ
の粘稠溶液を、75μm厚のポリエステルセパレーター
上に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、乾燥
して粘着剤層を形成した。このようにして得た粘着剤層
上に、支持体として2μm厚のポリエステルと目付量8
g/cm2の不織布の熱圧着ラミネートフイルムを貼り
合わせ、実施例1の医療用粘着シートを得た。
【0046】〔実施例2〕実施例1において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分90部にメトプロロール10
部を混合し、酢酸エチルによって粘度を調整した。こう
して得られた粘稠溶液を用い、実施例1と同様にして、
実施例2の経皮吸収製剤を得た。
【0047】〔実施例3〕実施例1において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分80部にメトプロロール20
部を混合し、酢酸エチルによって粘度を調整した。こう
して得られた粘稠溶液を用い、その後は実施例1と同様
にして、実施例3の経皮吸収製剤を得た。 〔実施例4〕アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EH
A)90部、ポリスチレンマクロマー(McS)(東亜
合成社製、メタクリル酸2−ポリスチリルエチル:数平
均分子量=6000)10部、酢酸エチル100部を反
応容器中にて攪拌しながら十分に窒素置換を行ない、ア
ゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を添加
して重合反応を行なった。反応中は攪拌速度を調整しな
がら、外浴冷却をし、さらに希釈溶媒として酢酸エチル
を滴下することによって、反応温度を58〜60℃の温
度域に制御し、1.0時間重合反応を行なった。その
後、約75〜80℃に昇温し、16時間攪拌を行ない、
ポリスチレン鎖が2−EHAポリマーにグラフト共重合
された本発明に係る医療用粘着剤の粘稠溶液を得た。こ
の粘稠溶液を用い、その後は実施例1と同様にして、実
施例4の医療用粘着シートを得た。
【0048】〔実施例5〕実施例4において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分90部にメトプロロール10
部を混合し、酢酸エチルによって粘度を調整した。こう
して得られた粘稠溶液を用い、実施例1と同様にして、
実施例5の経皮吸収製剤を得た。
【0049】〔実施例6〕実施例1において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分80部にメトプロロール20
部を混合し、酢酸エチルによって粘度を調整した。こう
して得られた粘稠溶液を用い、その後は実施例1と同様
にして、実施例6の経皮吸収製剤を得た。
【0050】〔実施例7〕アクリル酸2−エチルヘキシ
ル(2−EHA)80部、ポリスチレンマクロマー(M
cS)(東亜合成社製、メタクリル酸2−ポリスチリル
エチル:数平均分子量=6000)20部、酢酸エチル
120部を反応容器中にて攪拌しながら十分に窒素置換
を行ない、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
0.2部を添加して重合反応を行なった。反応中は攪拌
速度を調整しながら、外浴冷却をし、さらに希釈溶媒と
して酢酸エチルを滴下することによって、反応温度を5
8〜60℃の温度域に制御し、1.0時間重合反応を行
なった。その後、約75〜80℃に昇温し、12時間攪
拌を行ない、ポリスチレン鎖が2−EHAポリマーにグ
ラフトされた本発明に係る医療用粘着剤の粘稠溶液を得
た。この粘稠溶液を用い、その後は実施例1と同様にし
て、実施例7の医療用粘着シートを得た。
【0051】〔実施例8〕実施例4において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分75部にミリスチン酸イソプ
ロピル(IPM)25部を混合し、酢酸エチルによって
粘度を調整した。こうして得られた粘稠溶液を用い、実
施例1と同様にして、実施例8の医療用粘着シートを得
た。
【0052】〔実施例9〕実施例7において得た医療用
粘着剤の粘稠溶液の固形分60部にミリスチン酸イソプ
ロピル(IPM)40部を混合し、酢酸エチルによって
粘度を調整した。こうして得られた粘稠溶液を用い、そ
の後は実施例1と同様にして、実施例9の医療用粘着シ
ートを得た。
【0053】〔実施例10〕実施例7において得た医療
用粘着剤の粘稠溶液の固形分50部にミリスチン酸イソ
プロピル(IPM)30部及びメトプロロール20部を
混合し、酢酸エチルによって粘度を調整した。こうして
得られた粘稠溶液を用い、その後は実施例1と同様にし
て、実施例10の経皮吸収製剤を得た。
【0054】〔比較例1)窒素ガス雰囲気下、アクリル
酸2−エチルヘキシル(2−EHA)90部とアクリル
酸10部を、酢酸エチル100部中で共重合させて、2
−EHAのアクリル系ポリマーの溶液を得た。この溶液
の固形分90部にメトプロロール10部を混合し、酢酸
エチルを加えて粘度調整を行なった。この粘稠溶液を用
い、その後は実施例1と同様にして、比較例1の経皮吸
収製剤を得た。
【0055】〔比較例2〕比較例1において得た固形分
80部にメトプロロール20部を混合し、酢酸エチルを
加えて粘度調整を行なった。この粘稠溶液を用い、その
後は実施例1と同様にして、比較例2の経皮吸収製剤を
得た。
【0056】〔比較例3〕比較例1において得た固形分
50部にミリスチン酸イソプロピル(IPM)30部及
びメトプロロール20部を混合し、酢酸エチルを加えて
粘度調整を行なった。この粘稠溶液を用い、その後は実
施例1と同様にして、比較例3の経皮吸収製剤を得た。
なお、このものは凝集力が乏しく、糊残りを生じた。そ
のため、貼付を必要とする試験を行なうことができなか
った。
【0057】〔比較例4〕比較例1において得た固形分
50部にミリスチン酸イソプロピル(IPM)30部及
びメトプロロール20部を混合し、得られた粘稠溶液に
更に粘着剤固形分に対し、0.4部のアルミニウムキレ
ート剤(ALCH)を加え、酢酸エチルを加えて粘度調
整を行なった。この粘稠溶液を、75μm厚のポリエス
テルセパレータ上に乾燥後の厚みが50μmとなるよう
に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した。その後、実施
例1と同様にして支持体を貼り合わせて、比較例4の経
皮吸収製剤を得た。なお、架橋剤として多官能性イソシ
アナートを用いた場合には、架橋反応は進行せず、目的
とする経皮吸収製剤を得ることができなかった。
【0058】〔比較例5〕アクリル酸2−エチルヘキシ
ル(2−EHA)70部、ポリスチレンマクロマー(M
cS)(東亜合成社製、メタクリル酸2−ポリスチリル
エチル:数平均分子量=6000)30部、酢酸エチル
120部を反応容器中にて攪拌しながら十分に窒素置換
を行ない、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
0.2部を添加して重合反応を行なった。反応中は攪拌
速度を調整しながら、外浴冷却をして、反応温度を58
〜60℃の温度域に制御し、1.0時間重合反応を行な
った。その後、約75〜80℃に昇温し、3時間攪拌を
行ない、ポリスチレン鎖が2−EHAポリマーにグラフ
トされた医療用粘着剤の粘稠溶液を得た。この粘稠溶液
を、実施例1と同様にして比較例5の経皮吸収製剤を得
た。なお、この経皮吸収製剤は、ベークライト板に対し
ては粘着性を有していたが、ヒト皮膚面に対して粘着性
が弱く、脱落がみられたので、接着力試験以外の評価項
目については評価できなかった。
【0059】これら各実施例及び比較例の経皮吸収製剤
(若しくは医療用粘着シート)に於ける粘着剤層中の組
成を表1にまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】上記各実施例1〜10及び比較例1〜5の
経皮吸収製剤(若しくは医療用粘着シート)を室温下、
48時間放置した後、下記の評価項目について試験を行
なった。
【0062】(接着力試験)各実施例及び比較例の経皮
吸収製剤等を幅24mmの帯状に切断した各サンプル
を、ベークライト板に貼付し、荷重300gのローラを
1往復させて密着させた後、180°方向に300mm
/minの速度で剥離し、その際の接着力(g/24m
m幅)を測定した。
【0063】(薬物安定性試験)各実施例及び比較例の
経皮吸収製剤を40℃、75%R.H.にて保存し、6
0日経過後及び90日経過後の残存薬物量を測定した。
薬物の定量は、メトプロロールをメタノールで抽出した
後、高速液体クロマトグラフィにて行ない、保存前の含
有量に対する割合を算出した。
【0064】(ウサギ皮膚移行性試験)各実施例及び比
較例の経皮吸収製剤を直径30mmの大きさに切断した
各サンプルを、背部を除毛したウサギ6羽に12時間貼
付し、剥離後、各製剤の粘着剤層中に残存する薬物の定
量を行ない、薬物の皮膚移行率を求めた。薬物の定量
は、薬物安定性試験と同様に、メトプロロールをメタノ
ールで抽出した後、高速液体クロマトグラフィにて行な
った。
【0065】(皮膚刺激性試験)各実施例及び比較例の
経皮吸収製剤等を直径30mmの大きさに切断した各サ
ンプルを、健常人ボランティア6名の右上腕部内側に2
4時間貼付し、剥離6時間経過後の皮膚の状態を下記基
準に従い、目視にて判定し、それぞれ平均点を算出し
た。 〔判定基準〕 ・反応痕は認められなかった。 :0点 ・僅かな紅斑が認められた。 :0.5点 ・明らかな紅斑が認められた。 :1点 ・紅斑と丘疹あるいは浮腫が認められた。 :2点 ・紅斑と丘疹及び浮腫あるいは小水痘が認められた。 :3点 ・大水痘が認められた :4点
【0066】(糊残り性試験)各実施例及び比較例の経
皮吸収製剤等を直径30mmの大きさに切断した各サン
プルを、健常人ボランティア6名の皮膚面に8時間貼付
した後に剥離して、その際の凝集破壊による皮膚面への
糊残り性を下記基準に従い目視にて判定し、それぞれ平
均を評価した。 〔評価基準〕 ・糊残りがなかった。 :◎ ・糸引きが見られた。 :○ ・一部に凝集破壊があった。 :△ ・全面に凝集破壊があった。 :×
【0067】(試験結果)上記各試験結果について、表
2にまとめた。
【0068】
【表2】
【0069】表2から分かるように、まず経皮吸収用薬
物(メトプロロール)を含まない医療用粘着テープ(実
施例1,4,7,8,9)において、液状成分を含有さ
せなかった場合(実施例7を除く実施例1,4)は、5
00g/24mm以上の接着力を示し、良好な接着性を
示した。また、液状成分としてミリスチン酸イソプロピ
ルを加えた場合(実施例8,9)には、接着性が低いも
のの、十分実用的な接着力が得られた。
【0070】また、糊残りも非常に少なく、各比較例の
経皮吸収製剤と同様の凝集力が得られた。皮膚刺激性に
あっては、マクロマーの割合を多くした場合には、やや
皮膚刺激が見られたが、皮膚刺激性も少ないものであっ
た。特に、液状成分としてミリスチン酸イソプロピルを
加えた場合(実施例8,9)には、マクロマーの割合を
多くしても、皮膚刺激性が低減でき、液状成分の添加効
果を確かめられた。なお、実施例7の医療用粘着テープ
は、ベークライト板から剥がれてしまい接着力は測定で
きなかったが、ヒト皮膚面には良好に貼付でき、糊残り
や皮膚刺激性については良好であった。
【0071】次に経皮吸収用薬物を含有した経皮吸収製
剤(実施例2,3,5,6,10)において、液状成分
を含有させたもの(実施例10)を除いては、200g
/24mm以上の接着力を示し、実用上良好な接着性を
示した。また、液状成分としてミリスチン酸イソプロピ
ルを加えた場合(実施例10)にも、接着性が低くなっ
たものの十分実用的なものであった。
【0072】また、医療用粘着テープと同様に、糊残り
も非常に少なく、各比較例の経皮吸収製剤と同様の凝集
力が得られた。皮膚刺激についても、各比較例の経皮吸
収製剤と比べると、かなり低減することができた。
【0073】さらに、薬物安定性を比べると、比較例で
はよくても98%程度に留ったのに対し、実施例の経皮
吸収製剤ではいずれも、98%以上の残存率を示し、薬
物安定性が向上した。また、皮膚移行率においても、ア
ルミニウムキレート剤(ALCH)による化学的架橋処
理を施した場合(比較例4)には、皮膚移行率が高いも
のの、その他の比較例にあっては10%程度であり、実
施例の経皮吸収製剤ではそれぞれ、20%〜30%程度
の高い皮膚移行率を得ることができた。
【0074】
【発明の効果】本発明の第1の医療用粘着剤にあって
は、アクリル系ポリマーを主体とする幹ポリマーに、芳
香族系ポリマーを主体とするグラフト鎖が結合したグラ
フトポリマーを含有することを特徴としている。また、
本発明の第2の医療用粘着剤にあっては、アクリル酸エ
ステルモノマーと芳香族系ポリマーを主体とするマクロ
マーとのグラフトポリマーを含有することを特徴として
いる。
【0075】これらの医療用粘着剤は、無官能性の粘着
剤であって、極性モノマーや化学的架橋剤を含有してい
ないので、皮膚刺激性を低減し、経皮吸収用薬物の薬物
安定性や薬物放出性を向上することができる。
【0076】また、グラフトポリマー自体が相分離構造
を形成する性質を有しているので、無官能性でありなが
ら適度な凝集力を持ち、取扱い性に優れた剥離時の糊残
りの少ない医療用粘着シートや経皮吸収製剤を提供でき
る。
【0077】また、本発明の医療用粘着剤の製造方法に
あっては、芳香族系ポリマーの片末端にアクリル酸がエ
ステル結合したマクロマーとアクリル酸エステルモノマ
ーをグラフト共重合させることとしているので、幹ポリ
マーとなるアクリル系ポリマーに、マクロマーと重合さ
せるための重合性官能基を導入する必要がなく、一連の
工程でグラフト鎖を幹ポリマーに導入することができ
る。また、グラフト鎖の導入率を容易に制御できるとと
もに、未反応の重合性官能基が残存する可能性が少な
く、配合する経皮吸収用薬物との相互作用も少なくな
る。このように、当該製造方法にあっては、本発明に係
る医療用粘着剤を簡単に製造できる点で有利である。
【0078】さらに上記の方法で製造された医療用粘着
剤にあっては、従来使用されてきたカルボシキル基や水
酸基を持つモノマー成分を含有しないので、従来には使
用できなかったこのような官能基と反応を生じる不安定
な薬物や、メトプロロールのように遊離塩基の状態で含
有した場合に吸収効果が高い薬物など、従来の医療用粘
着剤には配合できなかった経皮吸収用薬物も新たに配合
することができ、経皮吸収製剤としての応用範囲を広げ
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村岡 崇光 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 井ノ阪 敬悟 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクリル系ポリマーを主体とする幹ポリ
    マーに、芳香族系ポリマーを主体とするグラフト鎖が結
    合したグラフトポリマーを含有する医療用粘着剤。
  2. 【請求項2】 グラフトポリマーに対し、5〜20重量
    %の割合となるようにグラフト鎖を導入したことを特徴
    とする請求項1に記載の医療用粘着剤。
  3. 【請求項3】 アクリル酸エステルモノマーと芳香族系
    ポリマーを主体とするマクロマーとのグラフトポリマー
    を含有する医療用粘着剤。
  4. 【請求項4】 芳香族系ポリマーと非相溶性の液状成分
    を、医療用粘着剤中に1〜50重量%含むことを特徴と
    する請求項1、2又は3に記載の医療用粘着剤。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の医療用
    粘着剤を含有する粘着剤層を少なくとも有する医療用粘
    着シート。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載の医療用
    粘着剤に、経皮吸収用薬物を含有させてなる粘着剤層を
    少なくとも有する経皮吸収製剤。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の医療用粘着剤の製造方
    法であって、芳香族系ポリマーの片末端にアクリル酸が
    エステル結合したマクロマーとアクリル酸エステルモノ
    マーをグラフト共重合させることを特徴とする医療用粘
    着剤の製造方法。
JP12341997A 1997-04-24 1997-04-24 医療用粘着剤及び当該医療用粘着剤を用いた医療用粘着シート、経皮吸収製剤並びに当該医療用粘着剤の製造方法 Pending JPH10298068A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008130529A (ja) * 2006-11-27 2008-06-05 Mie Univ 高イオン伝導性高分子固体電解質
WO2009154169A1 (ja) 2008-06-19 2009-12-23 学校法人近畿大学 ペプチド誘導体およびそれを含む涙液分泌促進組成物

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JP4701404B2 (ja) * 2006-11-27 2011-06-15 国立大学法人三重大学 高イオン伝導性高分子固体電解質
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