JPH10272592A - 耐熱鋼用ｔｉｇ溶接ワイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ｗが添加された耐熱鋼の溶接において、熱処
理後の室温強度、靱性及びクリープ強度が良好である溶
接金属を得ることができる耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤを
提供する。 【解決手段】 耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤは、重量％
で、Ｃ：０．０５乃至０．１５％、Ｓｉ：０．１乃至
１．０％、Ｍｎ：０．３乃至１．５％、Ｓ：０．００１
乃至０．０１％、Ｃｒ：１．７乃至３％、Ｍｏ：０．４
５乃至１％、Ｗ：０．１乃至１．２％及びＶ：０．１乃
至０．５％を含有し、Ｐが０．０１％以下、Ｎｉが０．
２５％以下、Ａｌが０．０１％以下、Ｏが０．０２％以
下、Ｎが０．０１５％以下に規制されていて、残部がＦ
ｅ及び不可避的不純物からなるものである。また、前記
Ｗの含有量を重量％で［Ｗ］、前記Ｍｏの含有量を重量
％で［Ｍｏ］としたとき、［Ｗ］／［Ｍｏ］が０．２乃
至２．６である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は火力発電プラントの
分野における超超臨界圧ボイラ等の高温部材の溶接に使
用されるＴＩＧ溶接ワイヤに関し、特に、得られる溶接
金属の特性を向上させることができる耐熱鋼用ＴＩＧ溶
接ワイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】近時、火力発電プラントの分野におい
て、設備の高効率操業を図るため、使用環境がより一層
高温高圧化される傾向にあり、その構造物の材料は操業
条件に応じて選択されている。例えば、低温低圧の条件
においては、主として２．２５％Ｃｒ−１％Ｍｏ鋼が使
用されており、高温高圧の条件においては、Ｖ等の炭化
物形成元素を添加して高強度化を図った９〜１２％Ｃｒ
鋼又はステンレス鋼等が使用されている。

【０００３】しかし、９〜１２％Ｃｒ鋼は中温度領域用
の鋼材としては原料コストが高くなるので、例えば、
２．２５％Ｃｒ−１％Ｍｏ鋼にＷを添加することによ
り、クリープ強度の向上を図った耐熱鋼が開示されてい
る（特開平２−２１７４３８号公報）。この耐熱鋼は、
ＭｏとＷとの複合添加効果によって、９〜１２％Ｃｒ鋼
と同等以上のクリープ強度を得ることができるものであ
ると共に、９〜１２％Ｃｒ鋼と比較して原料コストが低
くなる。従って、このような耐熱鋼は、今後の火力発電
プラントの分野における超臨界圧ボイラの中温から高温
用の部材として、適用される期待が高まってきている。

【０００４】一方、Ｗが添加された耐熱鋼を溶接するた
めの溶接材料として、クリープ強度が優れた耐熱鋼用溶
接材料が提案されている（特開平５−２６９５９０号公
報）。この溶接材料は、得られる溶接金属のクリープ強
度を高めるために、Ｗを１．３乃至２．５重量％含有す
るものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
５−２６９５９０号公報に記載されたＴＩＧ溶接ワイヤ
を使用して耐熱鋼を溶接した場合、得られる溶接金属は
Ｎｉ含有量が多いので、熱処理（ＳＲ）後、優れたクリ
ープ強度を得ることができないという問題点がある。ま
た、Ｗの添加量が過剰であるので、靱性が低くなると共
に不安定になりやすいという問題点も発生する。

【０００６】このように、従来においては、Ｗが添加さ
れた耐熱鋼の溶接において、高い性能を有する溶接金属
を得ることができる溶接材料は、未だ開発されていな
い。

【０００７】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、Ｗが添加された耐熱鋼の溶接において、熱
処理後の室温強度、靱性及びクリープ強度が良好である
溶接金属を得ることができる耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤ
を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明に係る耐熱鋼用Ｔ
ＩＧ溶接ワイヤは、Ｃ：０．０５乃至０．１５重量％、
Ｓｉ：０．１乃至１．０重量％、Ｍｎ：０．３乃至１．
５重量％、Ｓ：０．００１乃至０．０１重量％、Ｃｒ：
１．７乃至３重量％、Ｍｏ：０．４５乃至１重量％、
Ｗ：０．１乃至１．２重量％及びＶ：０．１乃至０．５
重量％を含有し、Ｐが０．０１重量％以下、Ｎｉが０．
２５重量％以下、Ａｌが０．０１重量％以下、Ｏが０．
０２重量％以下、Ｎが０．０１５重量％以下に規制され
ており、残部がＦｅ及び不可避的不純物からなるもので
あって、前記Ｗの含有量を重量％で［Ｗ］、前記Ｍｏの
含有量を重量％で［Ｍｏ］としたとき、［Ｗ］／［Ｍ
ｏ］が０．２乃至２．６であることを特徴とする。

【０００９】このＴＩＧ溶接ワイヤは、更に、Ｂ：０．
０００５乃至０．０１重量％を含有することが好まし
い。また、Ｎｂ：０．０５重量％以下及びＴｉ：０．０
５重量％以下からなる群から選択された少なくとも１種
の元素を含有することが望ましい。

【００１０】

【発明の実施の形態】本願発明者等が本発明の課題を解
決すべく、鋭意実験研究を重ねた結果、ＴＩＧ溶接ワイ
ヤの組成を適切な範囲に規定することにより、このＴＩ
Ｇ溶接ワイヤを使用して耐熱鋼を溶接した場合に、優れ
た特性を有する溶接金属を得ることができることを見い
出した。

【００１１】即ち、本発明においては、ワイヤ中のＣ及
びＣｒの含有量を調整すると共に、Ｎｉ含有量を規制す
ることにより、得られる溶接金属のクリープ強度の向上
を図っている。また、ワイヤ成分としてＭｏとＷとを複
合添加すると共に、Ｎｂ、Ｔｉ及びＢも添加している。

【００１２】更に、ワイヤ中のＷ含有量の上限を規制し
た状態で、Ｗ含有量とＭｏ含有量との比を規制すると共
に、ワイヤ中にＢを含有させることにより、溶接金属の
靱性の向上を図っている。このように、本発明において
は、ＴＩＧ溶接ワイヤの組成を調整しているので、この
ＴＩＧ溶接ワイヤを使用してＷが添加された耐熱鋼を溶
接した場合に、良好な室温強度、靱性及びクリープ強度
を有する溶接金属を得ることができる。

【００１３】以下、本発明に係る耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワ
イヤの組成限定理由について説明する。

【００１４】Ｃ：０．０５乃至０．１５重量％ Ｃは焼入れ性に大きく影響を与える元素であり、溶接金
属の室温強度及び靱性を確保するために添加されるもの
である。また、溶接金属中に炭化物を形成して、溶接金
属のクリープ強度を高めるために必要な成分でもある。
ワイヤ中のＣ含有量が０．０５重量％未満であると、こ
れらの性能が低下してしまう。一方、ワイヤ中のＣ含有
量が０．１５重量％を超えると、室温強度は向上する
が、靱性が低下する。また、溶接金属中の炭化物が凝集
して粗大化することにより、クリープ強度も低下する。
従って、ワイヤ中のＣ含有量は０．０５乃至０．１５重
量％とする。好ましくは、Ｃ含有量は０．０８乃至０．
１１重量％である。

【００１５】Ｓｉ：０．１乃至１．０重量％ Ｓｉはビードのなじみ性を改善する効果を有する。ワイ
ヤ中のＳｉ含有量が０．１重量％未満であると、ビード
のなじみ性を改善する効果が低下し、特に、裏波溶接時
において溶接作業性が低下する。一方、ワイヤ中のＳｉ
含有量が１．０重量％を超えると、不純物であるＰの粒
界への偏析が促進されるので、溶接金属の靱性及び耐焼
戻し脆化特性が低下する。従って、ワイヤ中のＳｉ含有
量は０．１乃至１．０重量％とする。好ましくは、Ｓｉ
含有量は０．２０乃至０．５０重量％である。

【００１６】Ｍｎ：０．３乃至１．５重量％ Ｍｎは溶接金属の靱性を向上させる効果を有する。ワイ
ヤ中のＭｎ含有量が０．３重量％未満であると、その効
果が低下して、靱性を十分に向上させることができな
い。一方、ワイヤ中のＭｎ含有量が１．５重量％を超え
ると、溶接金属のクリープ強度が低下して、不純物であ
るＰの粒界への偏析が促進されるので、耐焼戻し脆化特
性も低下する。従って、ワイヤ中のＭｎ含有量は０．３
乃至１．５重量％とする。好ましくは、Ｍｎ含有量は
０．５乃至１．０重量％である。

【００１７】Ｓ：０．００１乃至０．０１重量％ ＳはＳｉと同様にビードのなじみ性を改善する効果を有
する。ワイヤ中のＳ含有量が０．００１重量％未満であ
ると、その効果を十分に得ることができない。一方、ワ
イヤ中のＳ含有量が０．０１重量％を超えると、溶接金
属の靱性及び耐高温割れ性が低下する。従って、ワイヤ
中のＳ含有量は０．００１乃至０．０１重量％とする。
好ましくは、Ｓ含有量は０．００３乃至０．００７重量
％である。

【００１８】Ｃｒ：１．７乃至３重量％ Ｃｒは溶接金属の室温強度、耐酸化性及び高温耐食性を
向上させる効果を有する。ワイヤ中のＣｒ含有量が１．
７重量％未満であると、その効果を十分に得ることがで
きない。一方、Ｃｒが３重量％を超えて多量にワイヤ中
に添加されると、溶接金属中に比較的大きなＣｒ炭化物
が凝集して粗大化するので、溶接金属のクリープ強度が
低下する。従って、ワイヤ中のＣｒ含有量は１．７乃至
３重量％とする。

【００１９】Ｍｏ：０．４５乃至１重量％、Ｗ：０．１
乃至１．２重量％ Ｍｏ及びＷは固溶強化作用によって母材を強化する効果
を有する。また、Ｃｒ及びＦｅよりも炭化物形成傾向が
大きいので、両者をワイヤ中に複合添加することによっ
て、比較的大きなＣｒ炭化物及びセメンタイト等の析出
を抑制して、微細炭化物として溶接金属中に析出し、こ
れにより、溶接金属のクリープ強度を著しく向上させる
ことができる。ワイヤ中のＭｏ含有量が０．４５重量％
未満であるか、又はワイヤ中のＷ含有量が０．１重量％
未満であると、上述の効果を十分に得ることができな
い。一方、ワイヤ中のＭｏ含有量が１重量％を超える
か、又はワイヤ中のＷ含有量が１．２重量％を超える
と、溶接金属の靱性が著しく低下する。従って、ワイヤ
中のＭｏ含有量は０．４５乃至１重量％とし、Ｗ含有量
は０．１乃至１．２重量％とする。好ましくは、Ｍｏ含
有量が０．５乃至０．７重量％であり、Ｗ含有量が０．
３乃至０．７重量％である。

【００２０】Ｖ：０．１乃至０．５重量％ Ｖは微細な炭化物として溶接金属中に析出するので、溶
接金属のクリープ強度の向上に寄与する成分である。ワ
イヤ中のＶ含有量が０．１重量％未満であると、その効
果を十分に得ることができない。一方、ワイヤ中のＶ含
有量が０．５重量％を超えると、溶接金属の靱性が著し
く低下する。従って、ワイヤ中のＶ含有量は０．１乃至
０．５重量％とする。好ましくはＶ含有量は０．３乃至
０．４重量％である。

【００２１】Ｐ：０．０１重量％以下 Ｐは粒界に偏析して、溶接金属の靱性及び耐焼戻し脆化
特性を劣化させる元素である。ワイヤ中のＰ含有量が
０．０１重量％を超えると、所望の特性を有する溶接金
属を得ることができない。従って、ワイヤ中のＰ含有量
は０．０１重量％以下に規制する。好ましくは、Ｐ含有
量を０．００５重量％以下となるように規制する。

【００２２】Ｎｉ：０．２５重量％以下 本願発明者等はＮｉが０．２５重量％を超えてワイヤ中
に添加されていると、得られる溶接金属のクリープ強度
が著しく低下することを見い出した。従って、ワイヤ中
のＮｉ含有量は０．２５重量％以下に規制する。好まし
くは、Ｎｉ含有量を０．１重量％以下となるように規制
する。

【００２３】Ａｌ：０．０１重量％以下 本願発明者等はＡｌが０．０１重量％を超えてワイヤ中
に添加されていると、得られる溶接金属の室温強度が大
きくなって、靱性が低下することを見い出した。従っ
て、ワイヤ中のＡｌ含有量は０．０１重量％以下に規制
する。好ましくは、Ａｌ含有量を０．００５重量％以下
となるように規制する。

【００２４】Ｏ：０．０２重量％以下 本願発明者等はＯが０．０２重量％を超えてワイヤ中に
添加されていると、得られる溶接金属中において非金属
介在物が増加すると共に、他の成分の歩留まりが低下す
ることによって、溶接金属の室温強度、靱性及びクリー
プ強度がいずれも著しく低下することを見い出した。従
って、ワイヤ中のＯ含有量は０．０２重量％以下に規制
する。好ましくは、Ｏ含有量を０．０１重量％以下とな
るように規制する。

【００２５】Ｎ：０．０１５重量％以下 本願発明者等はＮが０．０１５重量％を超えてワイヤ中
に添加されていると、得られる溶接金属の室温強度及び
クリープ強度は向上するが、靱性が著しく低下すること
を見い出した。従って、ワイヤ中のＮ含有量は０．０１
５重量％以下に規制する。好ましくは、Ｎ含有量を０．
０１重量％以下となるように規制する。

【００２６】［Ｗ］／［Ｍｏ］：０．２乃至２．６ 前述の如く、本発明においては、ワイヤ中にＭｏ及びＷ
が複合添加されているので、溶接金属のクリープ強度が
著しく向上する。しかし、この効果を得るためには、Ｗ
含有量とＭｏ含有量との比を適切に規制する必要があ
る。ワイヤ中のＷ含有量を重量％で［Ｗ］とし、ワイヤ
中のＭｏ含有量を重量％で［Ｍｏ］としたとき、［Ｗ］
／［Ｍｏ］が０．２未満であると、溶接金属のクリープ
強度を向上させる効果を得ることができない。一方、
［Ｗ］／［Ｍｏ］が２．６を超えると、溶接金属の強度
が高くなりすぎて、靱性が著しく低下する。従って、
［Ｗ］／［Ｍｏ］は０．２乃至２．６とする。好ましく
は、［Ｗ］／［Ｍｏ］は０．５乃至１．５である。

【００２７】本発明においては、ワイヤ中の上記元素の
含有量及びＷ含有量とＭｏ含有量との比率を適切に規制
することによって、優れた特性を有する溶接金属を得る
ことができるが、このワイヤ中にＢを含有させるか、又
はＮｂ及びＴｉのいずれか一方又は両方を適切な量で添
加することにより、更に一層、得られる溶接金属の特性
を向上させることができる。以下、これらの元素の含有
量の好ましい範囲の限定理由について説明する。

【００２８】Ｂ：０．０００５乃至０．０１重量％ Ｂは焼入れ性を改善して、溶接金属の組織を微細化する
ことにより、溶接金属の靱性を向上させる効果を有する
元素である。Ｂはまた、微細な炭窒化物として溶接金属
中に析出するので、溶接金属の室温強度及びクリープ強
度の向上にも寄与する。ワイヤ中にＢを添加する場合、
その含有量が０．０００５重量％未満であると、添加効
果を十分に得ることができない。一方、ワイヤ中のＢ含
有量が０．０１重量％を超えると、溶接金属の強度が著
しく上昇し、靱性が低下すると共に、耐高温割れ性も低
下する。従って、ワイヤ中にＢを含有させる場合、その
含有量は０．０００５乃至０．０１重量％であることが
好ましい。より好ましくは、ワイヤ中のＢ含有量は０．
００２乃至０．００６重量％である。

【００２９】Ｎｂ：０．０５重量％以下、Ｔｉ：０．０
５重量％以下 Ｎｂ及びＴｉのいずれか一方又は両方をワイヤ中に添加
することにより、その量が微量であっても、これらが溶
接金属中に微細な炭窒化物として析出するので、溶接金
属の室温強度及びクリープ強度を更に一層向上させるこ
とができる。ワイヤ中にＮｂ又はＴｉを含有させる場
合、Ｎｂ含有量が０．０５重量％を超えるか、又はＴｉ
含有量が０．０５重量％を超えると、強度が高くなりす
ぎて、靱性が著しく低下する。従って、ワイヤ中にＮｂ
及びＴｉのいずれか一方又は両方を含有させる場合、ワ
イヤ中のＮｂ含有量は０．０５重量％以下、ワイヤ中の
Ｔｉ含有量は０．０５重量％以下であることが好まし
い。より好ましくは、Ｎｂ含有量は０．００５乃至０．
０３重量％であり、Ｔｉ含有量は０．００５乃至０．０
３重量％である。

【００３０】なお、本発明のＴＩＧ溶接ワイヤは、ノー
メッキのままでも、防錆性を付与するために、Ｃｕメッ
キを施してもよい。ワイヤ表面に防錆のためのＣｕメッ
キを施す場合には、ワイヤ中のＣｕ含有量とＣｕメッキ
量との総量を０．４重量％以下とする。

【００３１】

【実施例】以下、本発明に係る耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイ
ヤの実施例についてその比較例と比較して具体的に説明
する。

【００３２】図１は本実施例において使用する溶接母材
の形状を示す断面図である。図１に示すように、本実施
例においては、ＪＩＳ Ｚ３３１６に準じて溶接試験を
実施した。即ち、図１に示すように、溶接母材１はＶ形
状の開先を有し、このＶ形状の開先部の裏面には、溶接
母材１と同一の化学組成を有する裏当金２が配置されて
いる。本実施例においては、このＶ形状の開先角度を４
５°として、裏当金が配置されている部分のギャップ幅
を６ｍｍとした。また、溶接母材１の板厚を１６ｍｍと
した。

【００３３】先ず、下記表１及び２に示す化学組成を有
し、直径が１．６ｍｍであるソリッドワイヤを使用し、
下記表３及び４に示す化学組成を有する溶接母材を図１
に示す開先形状に加工して、下記表５に示す自動ＴＩＧ
溶接条件によって溶接することにより、開先部に溶接金
属を形成した。但し、ＴＩＧ溶接時においては、極性を
ＤＣＥＮとし、シールドガスとして１００％のＡｒガス
を使用した。また、ソリッドワイヤには、防錆のためＣ
ｕメッキを施した。ワイヤ中のＣｕ量とＣｕメッキ量と
の総量は、約０．１５重量％であった。

【００３４】次に、得られた溶接金属に７４０℃の温度
で１時間の熱処理を施した後、この溶接金属から種々の
機械的試験のための試験片を採取して、室温強度を評価
する室温引張試験、靱性を評価するシャルピー衝撃試験
及びクリープ強度を評価するクリープ破断試験の３種の
機械的試験を実施した。これらの試験片は下記表６に示
す形状とし、いずれも形成された溶接金属の板厚中央部
から採取した。

【００３５】これらの機械的試験の評価結果を下記表７
に示す。但し、下記表７において、室温引張強さについ
ては、６００（Ｎ／ｍｍ²）以上である場合を良好と判
断した。また、靱性については、０℃における吸収エネ
ルギーが２５０Ｊ以上である場合を良好と判断した。更
に、クリープ破断強度については、負荷応力を１９６
（Ｎ／ｍｍ²）とし、６００℃の試験温度でクリープ破
断試験を実施し、破断時間が１０００時間以上である場
合を良好と判断した。

【００３６】

【表１】

【００３７】

【表２】

【００３８】

【表３】

【００３９】

【表４】

【００４０】

【表５】

【００４１】

【表６】

【００４２】

【表７】

【００４３】上記表１、２及び７に示すように、実施例
Ｎｏ．１乃至８は、ワイヤの化学組成及びＷ含有量とＭ
ｏ含有量との比が適切に規制されているので、いずれの
溶接金属についても、優れた室温引張強さ、靱性及びク
リープ強度を有するものとなった。

【００４４】一方、比較例Ｎｏ．９は、ワイヤ中のＣ及
びＣｒ含有量が本発明範囲の下限未満であると共に、Ｏ
含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金属
の引張強度、靱性及びクリープ強度の全てが低下した。
比較例Ｎｏ．１０はワイヤ中のＳｉ及びＳ含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、ビード形状及びビードの
なじみ性が極めて悪くなり、アンダカットが多発した。
従って、機械的試験は実施しなかった。比較例Ｎｏ．１
１はワイヤ中のＭｎ含有量が本発明範囲の下限未満であ
ると共に、Ａｌ及びＮ含有量が本発明範囲の上限を超え
ているので、溶接金属の強度が過度に上昇して、靱性が
著しく低下した。

【００４５】比較例Ｎｏ．１２はワイヤ中のＳｉ、Ｍ
ｎ、Ｐ、Ｓ及びＣｒの含有量が本発明範囲の上限を超え
ているので、溶接金属の靱性が著しく低下すると共に、
クリープ強度も低いものとなった。比較例Ｎｏ．１３は
ワイヤ中のＮｉ含有量が本発明範囲の上限を超えている
と共に、Ｍｏ、Ｗ及びＶの含有量が本発明範囲の下限未
満であるので、溶接金属のクリープ強度が著しく低下し
た。比較例Ｎｏ．１４はワイヤ中のＣ及びＭｏの含有量
が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金属の強度
が過度に上昇して、靱性が著しく低下した。

【００４６】比較例Ｎｏ．１５はワイヤ中のＷ及びＶの
含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金属
の強度が過度に上昇して、靱性が著しく低下した。比較
例Ｎｏ．１６はワイヤ中にＮｂ、Ｔｉ及びＢが本発明の
好ましい範囲を超えて添加されているので、溶接金属の
強度が過度に上昇して、靱性が著しく低下した。比較例
Ｎｏ．１７は［Ｗ］／［Ｍｏ］が本発明範囲の上限を超
えているので、溶接金属の強度が過度に上昇して、靱性
が著しく低下した。比較例Ｎｏ．１８は［Ｗ］／［Ｍ
ｏ］が本発明範囲の下限未満であるので、溶接金属のク
リープ強度が低下した。

【００４７】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤの組成を適切に規定すると共
に、ワイヤ中のＷ含有量とＭｏ含有量との比を規定して
いるので、このＴＩＧ溶接ワイヤを使用して、Ｗが添加
された耐熱鋼を溶接した場合に、熱処理後の室温強度、
靱性及びクリープ強度が良好である溶接金属を得ること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本実施例において使用する溶接母材の形状を示
す断面図である。

【符号の説明】

１；溶接母材 ２；裏当金

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 武 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番１ 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 後藤 明信 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番１ 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｃ：０．０５乃至０．１５重量％、Ｓ
   ｉ：０．１乃至１．０重量％、Ｍｎ：０．３乃至１．５
   重量％、Ｓ：０．００１乃至０．０１重量％、Ｃｒ：
   １．７乃至３重量％、Ｍｏ：０．４５乃至１重量％、
   Ｗ：０．１乃至１．２重量％及びＶ：０．１乃至０．５
   重量％を含有し、Ｐが０．０１重量％以下、Ｎｉが０．
   ２５重量％以下、Ａｌが０．０１重量％以下、Ｏが０．
   ０２重量％以下、Ｎが０．０１５重量％以下に規制され
   ており、残部がＦｅ及び不可避的不純物からなるもので
   あって、前記Ｗの含有量を重量％で［Ｗ］、前記Ｍｏの
   含有量を重量％で［Ｍｏ］としたとき、［Ｗ］／［Ｍ
   ｏ］が０．２乃至２．６であることを特徴とする耐熱鋼
   用ＴＩＧ溶接ワイヤ。
2. 【請求項２】 更に、Ｂ：０．０００５乃至０．０１重
   量％を含有することを特徴とする請求項１に記載の耐熱
   鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤ。
3. 【請求項３】 更に、Ｎｂ：０．０５重量％以下及びＴ
   ｉ：０．０５重量％以下からなる群から選択された少な
   くとも１種の元素を含有することを特徴とする請求項１
   又は２に記載の耐熱鋼用ＴＩＧ溶接ワイヤ。