JPH10265944A - 硬質被膜とその製造法 - Google Patents

硬質被膜とその製造法

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JPH10265944A
JPH10265944A JP7147897A JP7147897A JPH10265944A JP H10265944 A JPH10265944 A JP H10265944A JP 7147897 A JP7147897 A JP 7147897A JP 7147897 A JP7147897 A JP 7147897A JP H10265944 A JPH10265944 A JP H10265944A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐磨耗性、摺動特性向上、長寿命化への硬質
被膜を提供する。 【解決手段】 4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元素から
選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物若しくは炭窒
化物の膜2を基材表面に形成する工程と、該膜2の表面に
イオンを注入処理する工程とを大気から遮断して交互に
繰り返す場合において、注入するイオンのエネルギーが
5keV以上80keV以下、前後するイオン注入処理の間に形
成する前記膜2の厚さが0.01μm以上1μm以下、全イオン
注入量の炭素原子換算数N(atoms/cm2)と製造した積層
された積層膜6の厚さd(μm)がN/dが1×1016atoms/cm2
μm以上1×1019atoms/cm2・μm以下である。注入するイ
オンが少なくとも炭素イオン、炭素クラスターイオン、
炭化水素イオン若しくは炭素を含む化合物イオンであ
る。そして、前記積層された積層膜6が、4a族、5a族、6
a族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物の膜の厚さ方向の少なくと
も一部を構成している硬質被膜も有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐磨耗性、摺動性及
び長寿命化が要求される工具、金型、機械部品などの表
面処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、工具、金型、機械部品などの耐磨
耗性、摺動性が要求される部材の表面処理には、各種の
PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vap
or Deposition)法が適用されている。PVD法には、アー
ク式イオンプレーティング法、ホロカソード型イオンプ
レーティング法、スパッタリング法、イオン注入蒸着法
などが、またCVD法には、熱CVD法、プラズマCVD法など
の手法があり、これらの手法によって被処理部材の基体
表面にTiN、TiCN、TiC、TiAlN、CrN、硬質炭素膜、MoS2など
のセラミックスコーティング処理を施す方法がとられて
いた。たとえば、株式会社総合技術センター発行(昭和
59年5月)の「セラミックコーティング」p129〜p142
に記述されている。
【0003】一方、半導体産業においては、不純物のド
ーピングを主目的とするイオン注入技術が開発され、工
業的に使用されている。このイオン注入技術は、金属材
料表面の機械特性の改善にも試みがなされており、硬さ
や靭性の改質のに関する報告がなされている(株式会社
ティー・アイ・シィ発行の「イオン・レーザーによる表面改質
・薄膜技術」p7〜p14参照)。
【0004】また、硬質のセラミックスコーティング膜
に対するイオン注入については、特開平7-310170号公報
に示されるように、AlをTiNコーティング膜に注入して
耐摩耗性を向上させる例がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】PVD法、CVD法による表
面処理を行なうと、未処理のものに比べ、数倍〜80倍程
度の寿命の向上が得られ、これらの処理は多くの分野で
工業的に盛んに用いられている。しかし、耐磨耗性及び
摺動性の向上、長寿命化への要求は一層厳しくなってい
る。
【0006】特に、新しい被加工材の開発にともなう従
来にない厳しい使用環境の出現、プラントや航空宇宙分
野など部品交換が困難な用途の拡大により、従来の表面
処理技術では対応しきれない要求が増大してきており、
より耐磨耗性の高い表面処理方法の開発が強く望まれて
いる。
【0007】また、摺動特性を向上させる目的で用いら
れる硬質炭素膜やMoS2に関しては、例えば前者は基板に
対する密着強度が低い問題、後者は摩擦係数の低減には
効果があるが耐摩耗性に関してはやや劣る点などが問題
となっている。
【0008】一方、イオン注入技術に関しても、金属材
料そのものよりは各種機械特性の向上はみられるが、Ti
NをはじめとするPVD、CVDセラミックスコーティングに置
き変わるほどの効果は認められていない。
【0009】TiNへのイオン注入についても、特開平7-3
10170号公報記載のTiN表層部にAlを注入する例はある
が、改質されるのが耐摩耗性のみゆえ、摺動性も含めて
大幅に特性向上させうるものではない。
【0010】上記従来の問題点に鑑み、最近の耐摩耗
性、摺動特性向上、長寿命化への高度な要求に応えるこ
とのできる表面処理方法を呈示することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】4a族、5a族、6a族、3b
族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒
化物若しくは炭窒化物のイオン未注入層から成る膜を基
材表面に形成する工程と、該膜の表面にイオンを注入処
理する工程とにおいて、注入するイオンのエネルギーが
5keV以上400keV以下であり、全イオン注入量の炭素原子
数への換算値が1×1015atoms/cm2以上1×1019atoms/cm2
以下とする。
【0012】また、前記二つの工程を大気から遮断して
交互に繰り返されて形成された積層膜に於いて、注入す
るイオンのエネルギーが5keV以上80keV以下、前後する
イオン注入処理の間に形成する前記膜厚が0.01μm以上1
μm以下、全イオン注入量の炭素原子換算数N(atoms/c
m2)と製造した積層された積層膜の厚さd(μm)がN/dが1
×1016atoms/cm2・μm以上1×1019atoms/cm2・μm以下
として硬質被膜を製造する。そして、注入するイオンが
少なくとも炭素イオン、炭素クラスターイオン、炭化水
素イオン若しくは炭素を含む化合物イオンである。
【0013】さらに、上記二つの工程を大気から遮断し
て繰り返すことによるイオン未注入層とイオン注入層の
積層された積層膜が、4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元
素から選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物若しく
は炭窒化物のイオン未注入層から成る膜の厚さ方向の少
なくとも一部を構成している硬質被膜で、その硬質被膜
は、イオンを注入されたイオン注入層と、4a族、5a族、
6a族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭
化物、窒化物若しくは炭窒化物から形成されたイオン未
注入層からなっている。このようにして形成された硬質
被膜が被覆されている硬質被膜被覆部材は、良好な耐摺
動性、耐磨耗性を備えている。
【0014】
【発明の実施の形態】図1には、例えば材料として超硬
合金や高速度鋼のような基材1の表面に、4a族、5a族、6
a族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物のイオン未注入層から成る
膜2が形成され、該炭化物、窒化物若しくは炭窒化物の
膜2の表面に、炭素イオン、炭素クラスターイオン若し
くは炭化水素イオンを注入するというものである。例え
ば、4a族元素であるTiの炭窒化物から成る膜2に炭素イ
オンを注入する場合や6a族元素であるCrの窒化物から成
る膜2に炭素イオン、炭素クラスターイオンであるC2
ラスターイオン、炭化水素イオンであるCH4イオン若し
くはC6H6イオンを注入する場合である。本発明の硬質被
膜5は、上記イオンの注入層4と未注入層から成る膜3と
から成り、前者が硬質被膜5の表面付近に存在すること
となる。
【0015】ここで、イオンのエネルギーは、5keV以上
400keV以下であり、1種類のエネルギーで注入処理を施
してもよいし、エネルギーをこの範囲において複数に分
けてエネルギー注入してもよい。全注入量は炭素原子の
数に換算して1×1015以上1×1019atoms/cm2以下、より
好ましくは5×1015以上1×1019atoms/cm2以下とする。
【0016】図1は、基材表面に形成された4a族、5a
族、6a族、3b族、4b族元素ら選ばれた少なくとも1種の
炭化物、窒化物若しくは炭窒化物からなるイオン未注入
層から成る膜2の表面に、炭素または炭化水素成分を注
入することで、表層にsp3結合を含む硬質炭素を主体と
した硬化相からなる硬質被膜5を形成する。
【0017】ここで、注入前の、基材表面に形成された
4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元素から選ばれた少なく
とも1種の炭化物、窒化物若しくは炭窒化物からなるイ
オン未注入層から成る膜2は、PVD法、CVD法、溶射、窒
化処理、炭化処理、湿式処理など公知の方法で処理され
たものを適用する。
【0018】イオン注入には、イオン源からイオンを質
量分離して導入する方法、イオン源からイオンを質量分
離せずに導入する方法、プラズマ中に配置した基材に直
接負の電位を印加して注入する方法などがある。
【0019】注入イオン種は、炭素イオン、炭素クラス
ターイオン、炭化水素イオンのいずれを使用してもよ
い。炭素クラスターイオンを使用すれば、注入時間が短
縮できる。炭化水素イオンの場合も2次以上の高次の炭
化水素ガスを原料に使用することで同様に注入時間が短
縮できる。
【0020】一方、単原子炭素イオンやメタンなどの低
次の炭化水素イオンを適用すれば注入深さを深くするこ
とが可能となる。またこれらのイオンが混合した状態で
あってもよい。炭化水素イオンをイオン源から質量分析
せずに照射する場合や、プラズマ中で基板に高電圧を印
加して注入を行なう場合には、水素イオンが混入してい
てもよい。
【0021】注入に適用するイオンのエネルギーは、5k
eV以上400keV以下が好ましい。下限の5keVは注入するの
に必要な最低のエネルギーであり、上限の400keVは工業
的に現在広く用いられているイオン注入設備の能力であ
る。
【0022】比較的低荷重で使用される機械部品などに
おいては、低エネルギーの注入で表層のみ改質すればよ
く、安価な処理となる。厚い改質層を必要とするとき
は、複数のエネルギーで多段注入を行なうとよい。
【0023】注入量に関しては、1×1015以上1×1019at
oms/cm2以下、より好ましくは5×1015以上1×1019atoms
/cm2以下が好ましい。1×1015未満では注入の効果が無
く、1×1019atoms/cm2以上越えると処理時間が長く経済
的にメリットが無くなるためである。しかし、経済的に
も有効であるならば、1×1019atoms/cm2を越えて注入し
てもよい。なお、特に5×1015以上1×1019atoms/cm2
下において注入の効果、すなわち、硬質被膜への耐磨耗
性、摺動性の効果が顕著になる。
【0024】本発明による硬質被膜は、一般のPVD、CVD
のみでイオン注入されていない膜にくらべ、耐摩耗性が
格段に向上する。これは、注入により表層に形成される
sp3結合を含む硬質炭素硬化相は、耐摩耗性が極めて高
く、摩擦係数を低減する効果があるためと考えられる。
しかも、イオン注入による改質されたイオン注入層は、
コーティング膜のように界面を持たないため剥離の心配
がなく、通常のPVD、CVDのみで得られる硬質炭素膜にな
い高い信頼性が得られる。
【0025】図2は、基材1の表面に、4a族、5a族、6a
族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物のイオン未注入層から成る
膜2を形成する工程と、該膜2の表面にイオンを注入する
工程を有し、炭化物、窒化物若しくは炭窒化物の膜2を
形成する工程と、イオンを注入する工程とが、大気にさ
らされることなく独立に交互に繰り返され、その結果、
本発明の硬質被膜6は、上記イオンの注入層4と未注入層
から成る膜3(図示せず)とが交互に繰り返された積層
された積層膜となる。注入されるイオン種は図1と同様
に、炭素イオン、炭素クラスターイオン若しくは炭化水
素イオンである。
【0026】ここで、注入されるイオンのエネルギーが
5keV以上80keV以下の範囲にあり、前後する注入処理の
間に形成される炭化物、窒化物若しくは炭窒化物の膜2
の厚さが0.01μm以上1μm以下とする。全注入量を炭素
原子の個数に換算してN(atoms/cm2)、積層された積層
膜6の全厚をd(μm)とすると、N/dが1×1017以上1×1019
atoms/cm2・μm以下とする。
【0027】図2は、基材1の表面に、4a族、5a族、6a
族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物のイオン未注入層から成る
膜2を形成する工程と、炭素イオン、炭素クラスターイ
オン若しくは炭化水素イオンを注入する工程とを、大気
にさらされることなく独立に交互に繰り返すことで、イ
オンの注入層4と未注入層とが交互に繰り返された積層
された積層膜6となる。膜2形成とイオン注入を繰り返す
という点で図1と異なり、繰り返しを多くすることで、
積層膜6の厚さ全域に多くの繰り返しを持たせることが
でき、積層膜6である硬質被膜の耐久性が格段に向上す
る。
【0028】ここで、膜2を形成する工程とイオンを注
入する工程は、同一の真空槽に設置されていてもよい
し、大気にさらされずに連続して搬送される別々の真空
槽に設置されていてもよい。大気にさらさないで連続処
理を行なうのは、酸素や水分など不純物の取り込みを押
さえる目的と、真空引きの時間を無くして処理能力を上
げ、処理コストを下げることを目的とする。
【0029】注入エネルギーに関しては、5keV以上80ke
V以下とする。5keV以上とするのは注入するのに必要な
最低のエネルギーが5keVであるためである。上限の80ke
Vに関しては、安価な処理とするためであり、同時にイ
オン源が小型となるため、成膜設備と複合化しやすいメ
リットもある。さらに安価で小型なイオン源を必要とす
る場合には40keV以下であることが好ましい。逆に処理
コストやイオン源の大きさが問題にならなければ、80ke
Vを越えた注入エネルギーを使用してもよい。
【0030】前後する注入処理の間に形成される炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物の膜イオン未注入層から成
る膜の厚さは、0.01μm以上1μm以下とする。0.01μm未
満では前後の注入処理による注入イオンの分布が必要以
上に重なり、重なった分だけその処理コストは不必要な
ものとなる。また、1μmを越すと前後の注入処理層が完
全に分離して未注入の領域が大きくなりすぎるためであ
る。
【0031】注入量に関しては、全注入量を炭素原子の
個数に換算してN(atoms/cm2)、前記積層された積層膜
の全厚をd(μm)とすると、N/dが1×1016以上1×10
19atoms/cm2・μm以下であることが好ましい。1×1016a
toms/cm2・μm未満では耐摩耗性に対する効果が小さ
く、1×1019atoms/cm2・μm以上では経済的なメリット
がなくなるためである。
【0032】なお、PVD法の一種に、イオン注入蒸着法
あるいはダイナミックミキシング法等と呼ばれる手法が
ある。これらは蒸着と注入を同時に行なうもので、本発
明は成膜と注入を個別に行なう点で異なる手法である。
【0033】図3は、基材1の表面の硬質被膜7の表面付
近では、上記図2のイオンの注入層4と未注入層とが交互
に繰り返され積層された積層膜6と、4a族、5a族、6a
族、3b族、4b族元素から選ばれた少なくとも1種の炭化
物、窒化物若しくは炭窒化物の膜からなるイオンの未注
入層から成る膜3からなる。すなわち、図3に示す硬質被
膜7の表面上部にのみ図2に示す処理が適用されている。
【0034】図3は、基材表面に被覆処理がなされる工
程において、図2による処理が硬質被膜の一部にのみ適
用されているものである。これは、イオン注入層4が外
表面部分のみに必要な場合に特に有効であるが、基材1
と硬質被膜7の界面付近や硬質被膜7の中央部にイオン注
入層4を設けることも、硬質被膜7の密着性の向上や内部
応力の緩和などが目的とされる場合に有効となる。
【0035】さらに、注入するイオン種を、炭素を含む
化合物イオンとするもので、さらに付加価値を高めるも
のとなる。例えば、有機金属のイオンのように金属を含
有する炭素化合物でもよく、あるいは四フッ化炭素(C
F4)イオンのように、軽元素の化合物でもよい。CF4イオ
ンを注入すればフッ化炭素系の化合物層が形成され、高
硬度で摺動特性が優れ、加えて撥水性が高くなるという
効果がある。
【0036】
【実施例】以下、本発明をどのように実施するかを具体
的に示した実施例を記載する。 (実施例1) 図1に対応する実施例を示す。すなわ
ち、超硬合金の基材1に、熱CVD法で膜厚1μmのTiCNを合
成し、これに、質量分離機構を備えたイオン注入装置に
て200keVでCイオンの注入量を変えて注入した。これら
の処理品に対し、ピン・オン・ディスク試験で摩擦係数
と摩耗深さを調べた。
【0037】ただし、相手材(ピン)は窒化硅素燒結
体、荷重1N、回転数500rpm、回転半径1mm、回転回数200
0回とした。ここで、摩擦係数は、回転回数100から200
回までの平均摩擦係数とし、摩耗深さは回転回数2000回
後に測定した。結果を表1(摩擦係数または摩耗量と注入
量との関係)に示す。表1の膜材質は、イオン未注入層
から成る膜である。
【0038】
【表1】
【0039】摩擦係数は、イオン注入量とともに低下す
る傾向にあり、1×1017atoms/cm2以上で0.2を下回る値
となる。摩耗深さに関しても、イオン注入量の増加とと
もに減少傾向が見られることが判る。
【0040】(実施例2) 図1に対応する別の実施例
を示す。すなわち、高速度綱に、ホロカソード型イオン
プレーティング法で膜厚1μmのCrNを合成し、注入イオ
ン種を変えて注入処理を行なった。用いたイオン種は、
Cイオン、C2クラスターイオン、CH4イオン、C6H6イオン
である。C、C2イオンは質量分離機構を備えたイオン注
入設備にて、CH4イオン、C6H6イオンは高周波加熱式の
イオン源から質量分離無しで注入を施した。
【0041】実施例1と同様の摩擦摩耗試験を行なった
が、いずれも摩擦係数は0.2以下で、摩耗量も未注入CrN
に比べ低く良好なる特性を示した。摩擦係数または摩耗
量と注入イオン種との関係を表2に示す。表2の膜材質
は、イオン未注入層から成る膜である。
【0042】
【表2】
【0043】(実施例3) 図2に対応する実施例を示
す。すなわち、基材1である超硬合金に、カソート゛アークイオンフ゜
レーティンク゛法でTiNを合成し、これにアーク放電型イオン源
により80keVでCイオンを注入するというサイクルを繰り
返し、C注入TiNの厚い積層された積層膜6の合成を行な
った。そして、得られた積層膜6に対して、ヌープ硬度
を測定した。それらの結果を表3(成膜と注入の繰り返し
によるTiNの硬度)に示す。得られた積層膜6は良好なヌ
ープ硬度の値を示す。表3のエネルギーは、イオン注入
エネルギー(keV)である。
【0044】
【表3】
【0045】(実施例4) 図2に対応する別の実施例
を示す。基材1である超硬チップにカソート゛アークイオンフ゜レーティンク
゛法によりHfNを0.1μm成膜し、これに加速エネルギー80
keVでCイオンを2×1016ions/cm2注入した。この工程を5
0サイクル繰り返し、約2μmの厚さのHfNの積層された積
層膜6を形成した。
【0047】比較のため、同じく超硬チップにイオンプ
レーティング法によりHfNを2μm成膜したものを準備し
た。これら2種類のチップで切削テストを行なったとこ
ろ、Cイオン注入HfN積層膜6は未注入HfN膜に比べて約4
倍の寿命であった。
【0048】(実施例5) 図3に対応する実施例を示
す。自動車エンジンのピストンリングにカソート゛アークイオンフ゜レ
ーティンク゛法によりCrNを7μm成膜した。その後、この膜2の
表面に同じくカソート゛アークイオンフ゜レーティンク゛法によるCrNを0.2μ
m及び60keVでCイオンを3×1017ions/cm2注入する工程を
10サイクル交互に繰り返して積層された積層膜6を形成
し、その結果として硬質被膜7を2μm形成した。
【0049】比較例としてイオン未注入のCrN膜を9μm
形成した部材を作成して比較とした。耐久試験では、イ
オン注入を行ったものは、未注入のものに対して12倍の
寿命があった。
【0050】(実施例6) 注入するイオン種を、炭素
を含む化合物イオンとするもので、CF4イオンの実施例
を示す。ダイス鋼製の樹脂金型にスパッタリング法でWC
を0.1μm成膜し、続いて80keVでCF4イオンを2×1016ion
s/cm2注入した。この工程を30回繰り返して硬質被膜6を
3μm形成した。本金型は、樹脂の溶着が起きにくく、ま
た溶着が起きても容易に除去でき、金型のメンテナンス
に要する時間が約1/40に縮小した。
【0051】
【発明の効果】本発明による硬質被膜は、耐摩耗性、耐
摺動性が格段に向上する。これは、イオン注入により形
成されるsp3結合を含むイオン注入層の耐摩耗性が極め
て高く、摩擦係数を低減する効果があるためと考えられ
る。しかも、注入層は、未注入層との界面を持たないた
め硬質被膜内の剥離の心配がなく、通常のPVD、CVDのみ
で得られる硬質被膜にない高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化物、窒化物若しくは炭窒化物のイオン未注
入層から成る膜に、炭素イオン、炭素クラスターイオン
若しくは炭化水素イオンを注入する方法と硬質被膜を示
す模式図である。
【図2】炭化物、窒化物若しくは炭窒化物のイオン未注
入層から成る膜を形成する工程と、炭素イオン、炭素ク
ラスターイオン若しくは炭化水素イオンを注入する工程
を交互に繰り返し積層された積層膜を形成する方法と該
積層膜を示す模式図である。
【図3】硬質被膜の厚さ方向の一部に、炭化物、窒化物
若しくは炭窒化物の膜の形成するイオン未注入層からな
る膜にイオン、炭素クラスターイオン若しくは炭化水素
イオンを注入する工程を交互に繰り返す表面処理方法と
該硬質被膜を示す模式図である。
【符号の説明】
1:基材 2、3:イオン未注入層から成る膜 4:イオン注入層 5、7:硬質被膜 6:イオン未注入層とイオン注入層の積層された積層膜

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元素から
    選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物若しくは炭窒
    化物のイオン未注入層から成る膜を基材表面に形成する
    工程と、少なくとも炭素イオン、炭素クラスターイオ
    ン、炭化水素イオン若しくは炭素を含む化合物イオンか
    らなるイオンを5keV以上400keV以下のエネルギーで前記
    イオン未注入層から成る膜の表面に注入処理する工程と
    において、全イオン注入量の炭素原子数への換算値が1
    ×1015atoms/cm2以上1×1019atoms/cm2以下であること
    を特徴とする硬質被膜の製造法。
  2. 【請求項2】 4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元素から
    選ばれた少なくとも1種の炭化物、窒化物若しくは炭窒
    化物のイオン未注入層から成る膜を基材表面に形成する
    工程と、少なくとも炭素イオン、炭素クラスターイオ
    ン、炭化水素イオン若しくは炭素を含む化合物イオンか
    らなるイオンを5keV以上80keV以下のエネルギーで前記
    膜の表面に注入処理する工程とを、大気から遮断して交
    互に繰り返すことにより形成されるイオン未注入層とイ
    オン注入層の積層された積層膜において、前後するイオ
    ン注入処理の間に形成するイオン未注入層から成る膜の
    厚さが0.01μm以上1μm以下、全イオン注入量の炭素原
    子換算数N(atoms/cm2)とイオン未注入層とイオン注入
    層の積層された積層膜の厚さd(μm)の比N/dが1×1016at
    oms/cm2・μm以上1×1019atoms/cm2・μm以下であり、
    前記イオン未注入層とイオン注入層の積層された積層膜
    が、4a族、5a族、6a族、3b族、4b族元素から選ばれた少
    なくとも1種の炭化物、窒化物若しくは炭窒化物のイオ
    ン未注入層から成る膜の厚さ方向の少なくとも一部を形
    成することを特徴とする硬質被膜の製造法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の製造法により
    製造された硬質被膜。
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