JPH10211184A - 医療用器具及び核磁気共鳴映像法と組み合わせて使用す る医療用器具 - Google Patents

医療用器具及び核磁気共鳴映像法と組み合わせて使用す る医療用器具

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JPH10211184A
JPH10211184A JP9019361A JP1936197A JPH10211184A JP H10211184 A JPH10211184 A JP H10211184A JP 9019361 A JP9019361 A JP 9019361A JP 1936197 A JP1936197 A JP 1936197A JP H10211184 A JPH10211184 A JP H10211184A
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典弘 山田
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浩二 下村
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義清 柴田
Seiya Takahashi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度、高加工性及び生体適合性に優れ、核
磁気共鳴の映像に影響のない医療用器具とする。 【解決手段】 磁化率が−160×10-6〜+160×
10-6( emu・mol -1) の範囲にある元素からなる
非晶質合金、例えば、一般式XaAlbYc( 式中、X
はZr、Ti、Mg、Hfより選ばれた1 以上の元素、
YはCu、Bより選ばれた1以上の元素であって、a、
b、cは原子%であり、50≦a≦80、5≦b≦8
0、0<c≦50)で示される組成を有する非晶質合金
によって、内視鏡等の処理部材を作製する。核磁気共鳴
の映像に影響のない範囲の磁化率であり、非晶質合金の
ため、高強度、高加工性を有している。生体適合性も良
好である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴(Ma
gnetic Resonance、以下、MRと記載
する。)に適合する医療用器具、さらに詳しくはMRに
適合性のある医療用器具に関する。
【0002】
【従来の技術】核磁気共鳴映像法(Magnetic
Resonance Imaging、以下、MRIと
記載する。)は原子核が強い磁気中で一定の周波数の電
磁波を吸収する現象である核磁気共鳴を利用したコンピ
ュータ断層撮影(Computed Tomograp
hy、以下CTと記載する。)法の一種である。このM
RIは磁気的な方法により体内の断層撮影を行うため、
他の代表的なCTであるX線CTのようにX線による被
爆が無く、脳のような軟質の組織でも高品質に描画でき
る利点がある。
【0003】MRIでは強力な磁場が用いられるので、
その磁場中にある物体は、その磁気的性質に応じて影響
を受け、或いは逆に、MRIで得られる映像に影響を及
ぼす。従って、MRIを使用する際には、その内部及び
周辺で使用される物体の磁気的性質に留意する必要があ
る。このときの磁気的性質の尺度として、特に外部磁場
の強度に対するその物質の磁気モーメントの割合である
磁化率が重要となる。一般に人体を構成する物質、例え
ば骨、血液などは負の磁化率を有し、その範囲は概ね−
1×10-5〜0(emu・mo1-1)である。従ってM
Rlに影響を及ぼさない医療器具などの磁化率はかかる
範囲を含む一定の範囲に限定される。
【0004】これに対して、正の磁化率、特にフェリ磁
性体(多くはステンレス鋼である。)からなる医療用器
具、例えば外科用のクリップ、ワイヤー、電極などがM
RI被検者の体内、または体表面に存在すると、MR映
像が得られなかったり、診断映像の歪み(アーチファク
ト)を生じ、正確な診断が不可能となる。さらには、こ
れらの医療器具がMRIの磁気により偏向し移動する場
合もある。
【0005】MR適合性のある金属材料としては、従来
より、りん青銅、ベリリウム銅等の銅合金や純チタンな
どが知られている。銅合金の磁化率は、−80〜−50
×l0-6(emu・mol-1)程度であり、純チタンの
磁化率は、153×10-6(emu・mo1-1)である
が、結晶方位によって異方性を示し、160〜147×
10-6(emu・mo1-1)の範囲で変動する。
【0006】又、ニッケルを含有する非磁性のハステロ
イ合金が一般の医療用器具として使用されているが、含
有されている強磁性元素であるニッケル含有量を調整す
ることにより、ハステロイ合金をMRに適合する医療器
具とする試みがなされている。例えば、特公平2−59
32号公報では、ニッケルを35重量%以上含む合金、
特に、ニッケルを49重量%含むハステロイ合金を用い
た吸引バイオプシー針がMRに適合する器具として記載
されている。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】MRに適合する以上
の素材の内、銅合金は機械的強度に問題があると共に、
特にベリリウム銅は極めて強い毒性があるため、生体適
合性がない。純チタンはステンレス鋼に比べ軟質(Hv
170程度の硬さ)で、機械加工が困難であり、棒状ま
たはパイプ状のような単純な部材以外は製造が難しい。
ハステロイ合金は機械加工に特殊な工具を必要とし、さ
らにニッケルを35重量%以上と多く含有するため、ア
レルギーを誘発し、生体適合性に問題がある。。また、
これら従来のMR適合の素材はすべて結晶質の合金であ
るため、引き抜きなど強力な塑性加工を行うと、結晶の
磁気的性質が変化し、MR適合性を失う問題を有してい
る。
【0008】本発明は、このような従来の問題を考慮し
てなされたものであり、高強度で、且つ加工が容易であ
り、生体適合性に優れると共に、MR適合性を有する医
療用器具を提供することを目的とする。又、本発明は、
MR適合性が問題とならない場合にも、高強度、加工容
易性及び良好な生体適合性を有し、使用上、便利な医療
用器具を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1〜5の発明は、MR適合性があり、核磁気
共鳴映像法と組み合わせて使用される医療用器具に係
り、請求項1の発明は、磁化率が−160×10-6〜+
160×10-6(emu・mol-1)の範囲にある元素
からなる非晶質合金を使用したことを特徴とする。
【0010】請求項2の発明は、請求項1の発明であっ
て、前記非晶質合金が、一般式XaAlb c (式中、
XはZr、Ti、Mg、Hfより選ばれた1 以上の元
素、YはCu、Bより選ばれた1以上の元素であって、
a、b、cは原子%であり、50≦a≦80、5≦b≦
80、0<c≦50)で示される組成を有することを特
徴とする。
【0011】請求項3の発明は、一般式Xd Ale f
g (式中、XはZr、Ti、Mg、Hfから選ばれた
1以上の元素、YはCu、Bから選ばれた1以上の元
素、ZはNi、Co、Feより選ばれた2以上の元素で
あって、d、e、f、gは原子%であり、50≦d≦8
0、5≦e≦80、0<f≦50、5≦g≦20)で示
される組成を有する非晶質合金を使用したことを特徴と
する。
【0012】請求項4の発明は、磁化率が−160×1
-6〜+160×10-6(emu・mol-1)の範囲に
ある元素からなる非晶質合金を処置部材に使用したこと
を特徴とする。
【0013】請求項5の発明は、一般式Xd Ale f
g (式中、XはZr、Ti、Mg、Hfから選ばれた
1以上の元素、YはCu、Bから選ばれた1以上の元
素、ZはNi、Co、Feより選ばれた2以上の元素で
あって、d、e、f、gは原子%であり、50≦d≦8
0、5≦e≦80、0<f≦50、5≦g≦20)で示
される組成を有する非晶質合金を処置部材に使用したこ
とを特徴とする。
【0014】請求項6〜9の発明は、MR適合性が問題
とならない場合にも、使用することができる医療用器具
に係り、請求項6の発明は、磁化率が−160×10-6
〜+160×10-6(emu・mol-1)の範囲にある
元素からなる非晶質合金を使用したことを特徴とする。
【0015】請求項7の発明は、一般式Xd Ale f
g (式中、XはZr、Ti、Mg、Hfから選ばれた
1以上の元素、YはCu、Bから選ばれた1以上の元
素、ZはNi、Co、Feより選ばれた2以上の元素で
あって、d、e、f、gは原子%であり、50≦d≦8
0、5≦e≦80、0<f≦50、5≦g≦20)で示
される組成を有する非晶質合金を使用したことを特徴と
する。
【0016】請求項8の発明は、磁化率が−160×1
-6〜+160×10-6(emu・mol-1)の範囲に
ある元素からなる非晶質合金を処置部材に使用したこと
を特徴とする。
【0017】請求項9の発明は、一般式Xd Ale f
g (式中、XはZr、Ti、Mg、Hfから選ばれた
1以上の元素、YはCu、Bから選ばれた1以上の元
素、ZはNi、Co、Feより選ばれた2以上の元素で
あって、d、e、f、gは原子%であり、50≦d≦8
0、5≦e≦80、0<f≦50、5≦g≦20)で示
される組成を有する非晶質合金を処置部材に使用したこ
とを特徴とする。
【0018】上述したように、MR適合性は、物質の磁
化率によって大きく影響される。本発明者が検討した結
果、医療用器具の磁化率が−160×10-6〜+160
×10-6(emu・mo1-1)の範囲内の場合には、M
R映像に問題となるような影響が見られなかった。本発
明では、磁化率が−160×10-6〜+160×10 -6
(emu・mo1-1)の範囲にある元素から構成される
非晶質合金であるため、MR適合性を有する医療用器具
とすることができる。
【0019】特に、液体急冷法により非晶質化した非晶
質合金は、金属間化合物による磁化率の変化や、結晶方
位、結晶粒界、偏析など結晶質に起因する磁気的異方性
を防止することができ、加工時においてもMR適合性を
失わない医療用器具とすることができる。
【0020】請求項2の発明に使用されるZfの磁化率
は122.24×10-6(emu・mo1-1)、Tiの
磁化率は152.73×10-6(emu・mo1-1)、
Mgの磁化率は6.32×10-6(emu・mo
-1)、Hfの磁化率は74.97×10-6(emu・
mol-1)、Cuの磁化率は−5.46×10-6(em
u・mol-1)、Bの磁化率は−6.70×10-6(e
mu・mol-1)、Alの磁化率は16.46×10-6
(emu・mol-1)である。従って、全ての元素が、
磁化率−160×10-6〜+160×10-6(emu・
mo1-1)の範囲内となっている(図5参照)。又、こ
れらの元素より構成される非晶質合金は、組織内に金属
間化合物を含む結晶構造を有していないため、磁気的異
方性が存在せず、MR適合性を発現する。
【0021】又、請求項2の非晶質合金は、明瞭なガラ
ス遷移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の温度
領城である過冷却液体城(△T=Tx−Tg)を有する
非晶質合金である。このような特性を有する非晶質合金
は、鋳造によりバルク状に成形でき、しかも過冷却液体
域に加熱されることにより、急激に粘性が低下するた
め、各種の成形加工が可能であり、医療用器具の製造に
好適となっている。
【0022】この非晶質合金の内、Zr60Cu30Al10
(添字は原子%)を使用できる。この非晶質合金組成で
は、Zr、Cu、A1がMR適合性を有する元素であ
り、機械加工も可能である。特に、Tg=402℃、T
x=465℃であるため、63℃の広い過冷却液体域を
有し、成形加工も容易である。一方、降伏強度1.0G
Pa、硬さ449Hvであり、焼き入れされたステンレ
ス鋼以上の機械的強度を示すと共に、高硬度材料が有し
ている破壊靱性の低さに対しては、非晶質合金特有の変
形機構からジュラルミン等のアルミニウム合金の3倍と
なっており、高い破壊靱性を有している。さらに、生体
適合性検査においても、組成金属元素の析出がなく、医
療用材料として十分な生体適合性を有している。
【0023】請求項3、5、7、9の発明に使用される
Ni、Co、Feは、強磁性元素である。強磁性元素を
含有している合金は、本来的には、合金全体の磁化率が
高くなり、MRに適合する磁化率の範囲を大きく逸脱す
ると考えられる。ところが、請求項3、5、7、9の組
成からなる非晶質合金は、上述した非晶質合金同様、M
R適合性を示すことを本発明者が見い出した。これは、
Ni、Co、Feの内、2つ以上の強磁性元素が同一の
合金内に存在すると、お互いの磁性が合金内で相殺され
ることにより、合金全体が低い磁化率となると推測され
る。又、これに加えて、各構成元素がランダムに配置さ
れている非晶質合金であることも、Ni、Co、Feの
磁性の相殺に効果があるものと推測される。
【0024】このような非晶質合金の内、Zr60Al15
Ni15Cu5 Co5 (添字は原子%)の合金組成を選択
することができる。この合金組成では、Tg=427
℃、Tx=500℃であるため、73℃の広い過冷却液
体域を有し、成形加工が容易である。又、降伏強度1.
2GPa、硬さ500Hvの機械的強度を示す。さら
に、NiとCoとを含有しているが、本発明者の実験に
よる裏付けでは、MR適合性を有する非晶質合金であ
り、生体適合性検査においても、組成金属元素の析出が
なく、医療用材料としての十分な生体適合性を有するこ
とが確認された。これらの非晶質合金を通常の機械加
工、液体急冷鋳造、若しくは過冷却液体域での成形加工
を用いることにより、MR適合性のある医療用器具を製
作することができる。
【0025】以上の請求項1〜9の非晶質合金は、その
高い機械的強度から、高い硬さが要求され、且つ操作時
に強い力が作用する内視鏡用処置具、手術用クリップ、
骨接合用プレート、歯列矯正用ワイヤー、各種インプラ
ント埋入体、注射針、ステント、吸引バイオプシー針の
中から選ばれたものに好適に用いることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)本実施の形態ではMR適合性を有する
非晶質合金からなる医療用器具として内視鏡用処置具を
例として説明する。図1は本実施の形態の内視鏡処置具
としての生体組織の切断を行う鋏鉗子1の全体を示す。
【0027】図1に示すように、鋏鉗子1は開閉可能な
一対の鋏2a、2bを処置部材として備えた鋏鉗子部3
を先端に有する円管パイプ状のシース4と、このシース
4の基端に設けられた操作ハンドル5とから構成されて
いる。この鉗子1は操作ハンドル5の各ハンドル部5
a,5bを回動自在に連結する枢軸5cを支点として回
動操作することでシース4の先端に設けられた鋏鉗子部
3の鋏2a、2bを遠隔的に開閉操作できるようになっ
ている。
【0028】具体的には、円管パイプ状のシース4内に
挿通される棒状の操作軸7の基端が操作ハンドル5のハ
ンドル部5aに揺動自在に連結されるとともに、操作軸
7の先端が鋏鉗子部3の鋏2a、2bを開閉動作させる
カム機構等の開閉機構に連結されている。
【0029】図2及び図3はこの開閉機構の詳細を示
す。操作軸7の先端に連結されたカム板31と、このカ
ム板31の両面に形成されたカム溝32、32と、鋏2
a、2bに突設されてカム溝32、32にぞれぞれ嵌合
するガイドピン33、33と、鋏2a、2bの開閉の支
点となる枢着ピン34と、シース4の先端に連結され枢
着ピン34の両端を支持する接続部材35等の部材によ
って構成されている。
【0030】カム溝32、32を両面に形成したカム板
31の一端側の筒状部36に対して、操作軸7の先端が
連結される。この連結は図3に示すように、操作軸7の
先端側の外周に小径部7aを形成し、この小径部7aを
埋めるように筒状部36が押圧成形され、この成形によ
って連結されている。
【0031】ガイドピン33,33は鋏2a、2bのそ
れぞれのカム板31と摺接する側に、一体的に植設され
ている。カム板31の各面のカム溝32,32は、この
ガイドピン33、33と対応しており、操作軸7の進退
によって鋏鉗子3が開閉するよう作用する。なお、鋏2
a、2bに植設されるガイドピン33、33は、鋏2
a、2bの機械加工の際に一体的に形成することもでき
る。
【0032】接続部材35は、二股状の鍔部37、37
を有しており、シース4の先端側に、その軸線方向に位
置決めされて連結されている。シース4と、接続部材3
5の連結は、シース4の先端側の外周に2段の小径部4
a、4bを形成し、小さい径側の小径部4bを埋め、且
つ大きい側の小径部4aによって密着嵌合するように、
接続部材35の基端側が押圧成形されると共に、シース
4の先端の端面と接続部材35の内側段部とが当接され
て行われ、これによりシース4と接続部材35とが軸線
方向の位置ズレがないように連結されている。
【0033】接続部材35の二股状の鍔部37、37の
間に挟まれる鋏2a、2bには、鋏鉗子3として開閉す
る際の支点となる位置に、それぞれ挿通孔38、38が
形成されている。この挿通孔38、38と二股状の鍔部
37、37のそれぞれに形成した挿通孔39、39との
間に、枢着ピン34が挿通されることにより、接続部材
35と鋏2a、2bとが組み立てられる。
【0034】この組み立ては、シース4と接続部材35
とを接続し、次いで操作軸7とカム板31とを接続し、
このカム板31の各カム溝32、32に鋏2a、2bの
ガイドピン33、33を係合させた後、鋏2a、2bの
一対を接続部材35の二股状の鍔部37、37内に嵌め
込んで、各挿通孔38、38、39、39を位置合わせ
する。そして、枢着ピン34を挿通孔38、38、3
9、39に挿通して枢着ピン34の端部を押圧成形して
変形させることにより行われる。
【0035】以上の組み立てにおいては、図3に示すよ
うに、接続部材35の外周面形状に対応した下端面を有
した筒状のガイド部材40内を用いる。このガイド部材
40の内部には、下端面が接続部材35の外周面形状に
対応した上側押し型41が配置される。この上側押し型
41の内部には、加熱用ヒータ(図示省略)が配置され
ており、上側押し型41の下端面を温度制御して加熱す
ることができるようになっている。
【0036】一方、下側受け台42によって枢着ピン3
4の皿部34aを支持し、ガイド部材40の下端面を接
続部材35の鍔部37に当接した状態で、鍔部37から
突出する枢着ピン34の上端部を、後述する非晶質合金
の過冷却液体域の温度まで上側押し型41により加熱し
た後、上側押し型41を下降して突出している枢着ピン
34を押圧する。この押圧によって枢着ピン34の上端
部が皿状に押し広げられて新たな皿部34bが形成さ
れ、図4に示すように、鋏2a、2bと枢着ピン34と
が回動自在に連結される。
【0037】同様に、シース4と接続部材35との押圧
による連結、カム板31の筒状部36と操作軸7との押
圧による連結においても、挿入側の部材を挿入した後、
被覆側の部材の端部を局部的に加熱し、連結部の外観形
状に対応した面形状を有した一対の成形型によって一体
的に連結することができる。
【0038】なお、ハンドル5では、図1に示すよう
に、ハンドル部5bの筒状部5dとシース4とが連結さ
れ、ハンドル部5aと操作軸7の端部とが揺動自在に連
結された後、ハンドル部5aとハンドル部5bとが枢軸
5cを介して回動自在に組み立てられる。この場合、枢
軸5cは硬質プラスチックによって成型されている。そ
して各ハンドル部5a、5bにより操作ハンドル5を枢
軸5cを支点として回動操作することにより、シース4
に対して操作軸7を前後にスライドさせる。これにより
操作軸7と連結されている上述した開閉機構が動作し
て、開閉機構と連結されている鋏2a、2bが開閉す
る。
【0039】このような鋏鉗子1では、処置部材として
の鋏2a、2b及び開閉機構を構成する各部材としてM
R適合性を有する非晶質合金Zr60Cu30Al10(添字
は原子%)を使用することにより製作した。各構成元素
の磁化率は図5に示す。同図において、縦軸は各元素及
び生体構成物質のモル磁化率、横軸はその原子番号であ
る。又、Aは本発明の磁化率の範囲である。
【0040】各構成元素の磁化率は、図5に示すよう
に、Zrの磁化率が122.24×10-6(emu・m
o1-1)、Cuの磁化率が−5.46×10-6(emu
・mo1-1)、Alの磁化率が16.46×10-6(e
mu・mol-1)であり、いずれも−160×10-6
+160×10-6(emu・mol-1)の範囲内となっ
ている。
【0041】以上のような非晶質合金からなる鋏2a、
2b及び開閉機構の各部材は液体急冷鋳造法により鋳造
することによって製造された直径5mm、長さ80mm
の素材を用い、通常の機械加工により所定の形状に加工
を行った。機械加工における非晶質合金の切削性はステ
ンレス鋼SUS303とSUS304の中間程度であっ
た。また、鋏2a、2bには手仕上げにより刃付けを行
った。なお、上述した非晶質合金からなる枢着ピン34
や各部材同士の押圧による連結は、非晶質合金が過冷却
液体域の温度領域で、約109P a・s程度の粘性流体
となって押圧成形可能となる特性を利用すると共に、過
冷却液体域の温度から非晶質合金の結晶化が始まる前
に、ガラス遷移温度以下に冷却することにより非晶質の
状態が維持される特性を利用するものである。
【0042】シース4は純チタンパイプ(ASTM D
T2相当)、操作軸7も同じく純チタン(ASTM D
T2相当)製のシャフトを用いた。シース4はパイプ状
であり、操作軸7は棒状であって、いずれも単純な形状
で、純チタンであっても製造可能なところから、純チタ
ンを採用したものである。これに対し、鋏2a、2bや
開閉機構を構成するカム板31、接続部材35は形状が
複雑であり、かつ硬さ、機械的強度が要求されるため、
またガイドピン33、枢着ピン34は硬さ、機械的強度
が要求されるため、非晶質合金でないと、高精度な製造
は極めて困難である。操作ハンドル5は強化プラスチッ
クにより製作した。強化プラスチック等のプラスチック
もMR適合性を有する材料である。
【0043】以上のような鋏鉗子1の全体をMRI評価
用の模型(ファントム)表面部に接着テープにより貼付
し、GE社製1.5Tesla MRスキャナ、SIG
NAによりMRスキャンを行った。実験の結果、MR映
像に歪みなどの影響は発生しなかった。また、鋏鉗子1
の処置部材としての一対の鋏2a、2bにより生体ダミ
ーサンプルの切断試験を行ったが、ステンレス鋼SUS
420J2からなる従来の鋏鉗子と同等以上の切断性能
を示した。
【0044】さらに、開閉機構の機械的耐久性、生体適
合性、および耐減菌(オートクレーブ)性も従来の鋏鉗
子と同等以上であった。本実施の形態では加工による非
晶質合金の結晶化は発生しなかった。なお、素材製造時
などにより非晶質合金内に結晶質が発生しても、50%
以内であれば、MR適合性および機械的性質に重大な問
題とはならないことが研究の結果、判明した。
【0045】以上のような本実施の形態によれば、MR
映像に影響を及ぼすこと無く、従来の鋏鉗子と同等以上
の機能を有する内視鏡処置具とすることができる。ま
た、本実施の形態で使用した非晶質合金Zr60Cu30
10(添字は原子%)は他の医療器、例えば手術用クリ
ップ、骨接合用プレート、歯列矯正用ワイヤー、各種イ
ンプラント埋入体、注射針、吸引バイオプシー針などに
も適用できる。
【0046】さらに、ZrをTiまたはMgまたはHf
に置換したもの、またはCuをBに置換し、または組み
合わせた非晶質材料、例えばTi55Cu30Al15や、Z
55Cu30Al105 (添字は原子%)なども同様に用
いることが出来る。
【0047】なお、以上の説明では、医療用器具として
の内視鏡用処置具は、MRIにおける磁場中での使用に
適用したが、この処置具はMRIにおける磁場中での使
用に限らず、MRIを使用しない一般の医療用として体
表面あるいは体腔内の手術等の切断時の医療用器具とし
ても使用できるものである。
【0048】(実施の形態2)本実施の形態ではMR適
合性を有する非晶質合金からなる医療用器具として内視
鏡用処置具を例として説明する。図6は本実施の形態の
内視鏡処置具の全体図、図7及び図8はその先端側の分
解図を、一部を断面にして示す斜視図である。図9は本
実施の形態の先端側の把持爪の成形工程を示す図であ
る。
【0049】本実施の形態の内視鏡処置具は生体組織を
把持する把持鉗子11である。図6に示すように、把持
鉗子11は開開可能な一対の把持爪12a、12bを処
置部材として備えた把持部13と、この把持部13を接
続部材35を介して先端に有する円管パイプ状のシース
14と、このシース14の手元側に連結された操作ハン
ドル15とを有している。操作ハンドル15はハンドル
部15a及び15bが枢軸15cを介して連結されてい
る。
【0050】この場合、シース14内に挿通される棒状
の操作軸17の基端が操作ハンドル15の一方のハンド
ル部15aに揺動自在に連結されるとともに、操作軸1
7の先端が把持部13の把持爪12a、12bを開閉動
作させるカム機構等の開閉機構に連結されている。
【0051】カム機構等の開閉機構は、図7に示すよう
に、実施の形態1と同様に、操作軸17の先端に連結さ
れたカム板31と、このカム板31の両面に形成された
カム溝32、32と、このカム溝32、32にそれぞれ
嵌合するガイドピン33、33と、把持部13の各把持
爪12a、12bの開閉支点となる枢着ピン34と、こ
の枢着ピン34の両端を支持する接続部材35等の部材
によって構成されている。従って、この実施の形態で
は、実施の形態1と基本的には同一であり、実施の形態
1の鋏鉗子部3の鋏2a、2bに対して、生体組織を把
持する把持爪12a、12bに変更されている点で異な
っている。なお、この把持爪12a、12bは生体組織
を把持し易くするため、概略鋸歯形状の凹凸面となって
いる。
【0052】このような把持鉗子11では処置部材とし
ての把持爪12a、12b及び開閉機構を構成する各部
材を、MR適合性を有する非晶質合金Zr60Al15Ni
15Cu5 Co5 (添字は原子%)で製作した。各構成元
素の内、Zrの磁化率は122.24×10-6(emu
・mo1-1)、Cuの磁化率は−5.46×10-6(e
mu・mol-1)、Alの磁化率は16.46×10-6
(emu・mol-1)であり、実施の形態1と同様にM
R適応性を有する磁化率−160×10-6〜160×1
-6(emu・mol-1)の範囲内となっている。この
非晶質合金は、ガラス遷移速度Tg=427℃、結晶化
温度Tx=500℃である。
【0053】この実施の形態で用いる非晶質合金元素の
内、Ni、Coは強磁性元素であり、これらの元素を添
加した場合、その合金の磁化率も極めて大きくなると考
えられた。確かにCoのみ、Niのみというように強磁
性元素が1種のみ含有した非晶質合金にはMR対応性は
ない。ところが、この実施の形態では、2種類以上の強
磁性元素を含有することにより、MR適合性が発現して
いる。これは2つ以上の強磁性元素が同一の合金内に存
在すると、お互いの磁性が合金内で相殺することにより
低い磁化率を示すと推測される。さらに各構成元素がラ
ンダムに配置されている非晶質合金であることも、上述
したNi、Coの磁性の相殺に効果があるものと推測さ
れる。
【0054】把持爪12a又は12bの製作方法として
は、液体急冷鋳造法によって非晶質合金を鋳造すること
で製造した直径3mm、長さ80mmの非晶質合金素材
を用い、図9に示すような断面形状を有する金型20、
21を用いて、非晶質合金の過冷却液体域での低い粘性
流動を利用した成形加工により製作した。金型20、2
1はキャビティ部20a、21aを有し、キャビティ部
20a、21aで把持爪12a又は12bの外形を成形
できる構造となっている。
【0055】把持爪12a、12bの製造は、所定の長
さに切断すると共に、枢着ピン34挿通用の孔を形成せ
ず、また、ガイドピン33を有しないときの容量の把持
爪用素材に対応させた非晶質合金素材22を用いる。こ
の非晶質合金22を加熱及び成形時に酸化しないよう
な、真空チャンバーを用い、この真空チャンバー内に金
型20、21を配置し、金型20、21に非晶質合金素
材22をセットする。そして、真空チャンバー内を真空
状態とした後に、図示しない放射加熱装置により金型2
0、21および非晶質合金素材22を過冷却液体域内の
450℃まで加熱する。この状態で金型20を押圧装置
により、押圧力50MPaで非晶質合金素材22を金型
20及び金型21間で押圧し、200秒間成形加工を行
う。この成形加工により、非品質合金素材22がキャビ
ティ部20a、21aの形状に成形され、把持爪12a
又は12b用の把持爪用素材となる。
【0056】この把持爪用素材に対して、図7に図示す
るように、枢着ピン34の挿通孔38を機械加工により
穿設すると共に、ガイドピン33を植設する部位に凹部
を形成し、この孔にガイドピン33を圧入して、把持爪
12a、12bを製作する。なお、この製造では、把持
爪用素材を成形した後に、上述した機械加工を施した
が、金型20、21に対して枢着ピンの挿通孔38を形
成する中子及びガイドピン33用の凹部を形成する中子
をそれぞれ配置することもでき、これにより機械加工を
要することなく、直接に把持爪12a、12bを製造で
きる。
【0057】把持爪12aと把持爪12bの形状が異な
る場合においては、各々の把持爪12a、12bの外形
に合わせてキャビテイ部20a、21aを製作すること
により、同様に把持爪12a、12bを製造できる。加
熱・成形時の非晶質合金22の酸化を防止するために、
真空チャンバー内の加工雰囲気は10-2Paの真空とす
ることが良好である。成形終了後、純度99.999%
のHeガスを真空チャンバー内に導入して、速やかに冷
却(冷却速度毎秒50℃以上)することにより非晶質合
金22の脆化を防止する。シース14は純チタンパイプ
(ASTM DT2相当)、操作軸17も純チタンの棒
状材を用いた。純チタン製の部材を用いたのは実施の形
態1と同じ理由による。 また、開閉機構を構成する非
晶質合金のカム板31、ガイドピン33、枢着ピン3
4、及び接続部材35は、機械加工によって所定の形
状、大きさに製作し、また操作ハンドル15は強化プラ
スチックによって製作した。
【0058】以上のような把持鉗子11の全体をMRI
評価用の模型(ファントム)表面部に接着テープで貼付
し、GE社製1.5Tesla MRスキャナ、SIG
NAによりMRスキャンを行った。実験の結果、MR映
像に歪みなどの影響は発生しなかった。また、把持鉗子
11の機械的耐久性、生体適合性、および耐滅菌(オー
トクレーブ)性も従来の把持鉗子と同等以上であった。
本実施の形態では、成形による非晶質合金22の結晶化
は発生しなかった。加熱、成形などにより結晶化が生じ
ても、非晶質合金22内の結晶質が50%以内であれ
ば、MR適合性および機械的性質に問題は生じることが
ない。
【0059】このような実施の形態では、実施の形態1
と同様の効果を有する他に、非晶質合金22の過冷却液
体域における粘性流動を利用した成形加工を用いるた
め、複雑形状を有する把持鉗子12a、12bなどを効
率よく製造することができる。また、本実施の形態で使
用した非晶質合金Zr60Al15Ni15Cu5 Co5 (添
字は原子%)は他の医療器具、例えば手術用クリップ、
骨接合用プレート、歯列矯正用ワイヤー、各種インプラ
ント埋入体、注射針、ステント、吸引バイオプシー針な
どにも適用できる。
【0060】さらに、ZrをTiまたはMgまたはHf
に置換したもの、CuをBに置換したもの、または2者
を組み合わせたもの、Ni、Co、Feの内、2つ以上
の組合せを変えた非晶質材料、例えばMg55Al25Ni
15Cu5 Co6 、 Zr55Al 15Ni15Cu5 Co
5 5 、 Zr60Al15Ni15Cu5 Fe5 (添字は原子
%)なども同様に用いることが出来る。
【0061】なお、上述した説明では、医療用器具とし
ての内視鏡用処置具は、MRIにおける磁場中での使用
において述べたが、この処置具は、MRIを使用しない
一般の医療用として体腔内患部等の生体組織の採取用に
も使用できるものである。
【0062】医療用器具としての内視鏡用処置具として
は、生体内の被検部位の患部から、患部の一部を採取す
る生検鉗子に対しても同様に適用することができる。図
8は、処置具における生検鉗子の先端側において、処置
部材として機能する一対のカップを一部断面で示す組み
立て分解図である。この先端側と接続されて、術者によ
り操作される操作ハンドル等の部材は、上述した把持鉗
子の構成と同様である。
【0063】図8において、一対のカップ45、45
は、それぞれ採取する患部を収納する凹部46が中央部
分に凹み状に形成されていると共に、この凹部46に収
納する患部を生体内で切断する刃部47が全周或いは先
端側に形成されている。なお、凹部45の底面の中央
は、底面を貫通する小孔を穿設した孔付生検鉗子として
も良い。
【0064】このようなカップ45、45を上述した非
晶質合金Zr60Al15Ni15Cu5Co5 (添字は原子
%)によって作製し、把持鉗子11と同様に組み立て
後、MRI評価用の模型(ファントム)の表面部に貼り
付けして、MRスキャンを行っても、MR映像に歪みな
どの影響が発生しなかった。このようなカップ45、4
5はMRIを使用しない状態での体腔内患部等の採取に
ついても同様に、確実に行うことができる。
【0065】上記各実施の形態では、開閉機構としてカ
ム機構を示したが、リンク機構であっても良い。図10
は、医療用器具としての生検鉗子にリンク機構を組み込
み、処置具として機能するカップを開閉するようにした
生検鉗子の先端側の組み立て分解図であり、図11は図
10の上方側の鍔部を除いた平面図である。
【0066】図10において、操作軸81の先端には、
連結板82が連結されている。この連結板82の板状部
分の両面には、それぞれ第1リンク板83、第2リンク
板84が、各リンク板83、84の一端側の挿通孔に挿
通された第1の連結ピン85を介して回動且つ摺接自在
に連結されている。又、第1リンク板83の他端側に
は、カップ86の基端側が、第2の連結ピン87を介し
て回動且つ摺接自在に連結されると共に、第2リンク板
84の他端側には、カップ88の基端側が第3の連結ピ
ン89を介して回動且つ摺接自在に連結されている。
【0067】さらに、各カップ86、88の基端側の中
央に穿設された各挿通孔94には、接続部材90の二股
状の鍔部91に設けた挿通孔93と共に貫通する枢着ピ
ン92が挿入され、この枢着ピン92の端部が上方側の
鍔部91に固着されている。
【0068】このような構造では、図10に示すよう
に、操作軸81を進退操作することにより、第1の連結
ピン85の位置が軸方向に進退し、第2及び第3の連結
ピン87、89が軸方向に直交する方向に移動するた
め、枢着ピン92を支点として一対のカップ86、88
が開閉動作することができる。このようなリンク機構に
おける各部材も、上述した非晶質合金材料によって作製
することにより、上述と同様な作用及び効果を奏するこ
とができる。
【0069】(実施の形態3)本実施の形態ではMR適
合性を有する非晶質合金からなる医療用器具として、内
視鏡用処置具を例として説明する。図12は本実施の形
態の内視鏡処置具の全体図で、図13は本実施の形態の
内視鏡処置具の先端側の電極の鋳造を示す図である。こ
の実施の形態の内視鏡処置具は生体組織の剥離に用いる
フック型高周波電極52である。
【0070】図12に示すように、フック型高周波電極
52は、先端に処置部材としてのフック型の生体組織の
剥離用の電極55と、この電極55が先端側に連結され
ると共に、体腔内に挿入するための絶縁性チューブ56
で覆われた断面円形の棒状の挿入部53と、術者がフッ
ク型高周波電極52を保持するための保持部54とを有
している。保持部54は絶縁性で且つMR適合性を有す
る硬質プラスチックにより成形されている。
【0071】フック型の処置部材としての電極55は、
先端側が細い棒状で屈曲され、この屈曲部分から基端側
に向かって徐々に径が大きくなり、基端側で挿入部53
の先端側の径と同一になるように形成されている。
【0072】図12に示すように、挿入部53の先端の
電極55は、導電性の挿入部53を介して保持部54内
に設けられた銅合金端子57と導通し、保持部54内に
挿通された導線58を介して保持部54の他端に設けら
れた銅合金端子を有するコネクター59に接続され、こ
のコネクター59を介して高周波電源コード(不図示)
に接続される。
【0073】このように構成されたフック型高周波電極
52では、挿入部53をMR適合性を有する非晶質合金
Zr60Al15Ni15Cu5 Co5 (添字は原子%、Tg
=427℃、Tx=500℃、降伏強度1.2Gpa、
硬さ500Hv)によって製作し、表面をPTFEから
なる絶縁性チューブ56により被覆した。また、被検部
位を処置する処置部材としての電極55を同じくMR適
合性を有する非晶質合金Zr55Cu30Al10(添字は原
子%、Tg=402℃、Tx=465℃、降伏強度1.
0GPa、硬さ449Hv)によって製作した。
【0074】製作は図13に示すような液体急冷鋳造法
により鋳造することにより行った。具体的には無酸素銅
によって電極55の形状を形成した鋳型60(2つの型
を組み合わせたときにキャビティの内面が電極55の形
状と対応する鋳型60)を製作する。又、先端部に直径
1mmの開口部61を有する内径16mm,肉厚5mm
の石英管62内に、上述した組成となるように秤量した
Zr、Cu、Alの各元素を合計約15g入れ、図示し
ない高周波電源に接続された高周波コイル63により、
10-2Paの真空中で1300℃まで高周波加熱する。
各元素が溶解後、図示しない石英管駆動機構により鋳型
60の湯口60aに石英管62の開口部61を当接し、
純度99.999%以上のArガスを図示しないガス導
入装置により、石英管62上部より、圧力15KPaで
5秒間ブローする。このブローによって、各元素を溶解
した溶湯64を鋳型内に導入して高圧鋳造を行う。
【0075】そして、鋳型60と共に溶湯64を直ちに
冷却し、鋳型60及び内部の非晶質合金をガラス遷移点
温度以下にした後、鋳型60を分解して鋳造された電極
52を取り出す。
【0076】挿入部53も同様の方法で無酸素銅によっ
て挿入部53の形状が転写された鋳型を製作し、上述と
同様の液体急冷鋳造法により直接、鋳造して製作する。
即ち、挿入部53を構成する元素Zr、Al、Ni、C
u、Coを秤量し、石英管内で加熱し、挿入部53の形
状を転写した鋳型で高圧鋳造することにより、挿入部5
3を製作する。
【0077】以上のように電極55と挿入部53を鋳造
で製作した後、それぞれの接合面を10-3Pa以下の真
空中で、両者を構成する非晶質合金の過冷却液体域の重
なる温度幅内(427℃〜465℃)の温度、具体的に
は447℃に放射加熱装置により加熱し、約40MPa
の押圧力で90秒間相互に押圧する。これにより、それ
ぞれの非晶質合金の過冷却液体域における粘性流動によ
り露出させた新生面を接触させることで接合を行った。
【0078】すなわち、電極55の太径側の基端側と挿
入部53の先端側とを、両者の重なる過冷却液体域で加
熱軟化させる際、鋳造後から加熱軟化までの間に両者の
接合面がさらに酸化して酸化膜が生じたり、埃等が付着
することにより、接合強度が低下する危惧があるが、押
圧による押圧力によって各接合面に粘性流動が生じ、こ
の流動によって非晶質合金の新生面が各当接面に発生す
るため、強固に接合できる。
【0079】以上のような接合後、保持部54から露出
する挿入部53に対して、絶縁のため挿入部53の全表
面を、PTFEからなる絶縁性チューブ56で被覆し
た。また保持部54は強化プラスチックで製作し、保持
部54の一端側の凹部に挿入部53の一端を差し込ん
で、差し込んだ挿入部53の外周面に、保持部54の側
面から 螺入した硬質プラスチック製のネジ65により
結合した。
【0080】以上のようにして作製されたフック型高周
波電極52をMRI評価用の模型(ファントム)表面部
に接着テープで貼付し、GE社製1.5Tesla M
Rスキャナ、SIGNAを用いてMRスキャンを行っ
た。スキャンの結果、MR映像に歪みなどの影響は発生
しなかった。また、フック型高周波電極52の機械的耐
久性、生体適合性、および耐減菌(オートクレーブ)性
も従来の把持鉗子に比べて同等以上であった。本実施の
形態では、電極55及び挿入部53の最大肉厚が5mm
以下のときは、非晶質合金の結晶化は発生しなかった。
鋳造条件などにより非晶質合金内に結晶化が発生して
も、結晶質が50%以内であれば、MR適合性及び機械
的性質に問題は生じないことを確認した。
【0081】以上のような、本実施の形態によれば、実
施の形態1、2の効果に加えて、液体急冷鋳造法を用い
ることにより、均一なMR適合性のある非晶質合金製の
内視鏡処置具の部品を高効率に製作することができる。
さらに過冷却液体域での粘性流動を利用した接合によ
り、異なった種類の非晶質合金であっても、強固に接合
することができる。
【0082】なお、上記各実施の形態で示した各種非晶
質合金やMR適合性を有するプラスチック材料、純チタ
ン、セラミックコーティング、非晶質合金の型による鋳
造、押圧成形、機械加工などによる製造方法などは、各
々の実施の形態を相互に、又は組み合わせて使用するこ
とができる。
【0083】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の医療用
器具によれば、MR映像に影響を及ぽすことなくMR適
合性の高い非晶質合金を、その処置部材、要部或いは全
体に用いるため、高強度で、且つ加工が容易であり、生
体適合性にも優れたものとすることができる。このよう
な医療器具を使用することにより、MRl環境下で高度
な検査や手術を行うことができるのみならず、医療器具
を常時、体内または体表面に装着している患者、例え
ば、インプラント埋入体を体内に挿入している患者が、
その部位付近に対して再びMRl診断を受けても、面像
に乱れを生じることなく診断することができる。
【0084】又、本発明の医療器具は、高強度、高加工
性、生体適合性を有しているため、MRIに限らず、一
般の手術、その他の処置にも使用することができ、汎用
性のある器具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を鋏鉗子に適用した場合の全体斜視図で
ある。
【図2】鋏鉗子の先端部分の分解斜視図である。
【図3】鋏鉗子の先端部分を組み立てる状態を示す断面
図である。
【図4】鋏鉗子の枢着ピンを組み付ける状態を示す断面
図である。
【図5】元素及び生体構成物質のモル磁化率の分布特性
図である。
【図6】本発明を把持鉗子に適用した場合の全体斜視図
である。
【図7】把持鉗子の先端部分の分解斜視図である。
【図8】本発明を生検鉗子に適用した場合の分解斜視図
である。
【図9】把持鉗子の把持爪を成形する操作を示す断面図
である。
【図10】リンク機構を組み込んだ生検鉗子の先端部分
の分解斜視図である。
【図11】リンク機構を組み込んだ生検鉗子の平面図で
ある。
【図12】本発明を生体組織の剥離に用いるフック型高
周波電極に適用した正面図である。
【図13】フック型高周波電極の電極を成形する操作を
示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋏鉗子 2a 2b 鋏 3 鋏鉗子部 4 シース 5 操作ハンドル 7 操作軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 典弘 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 下村 浩二 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 柴田 義清 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 高橋 誠也 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁化率が−160×10-6〜+160×
    10-6(emu・mol-1)の範囲にある元素からなる
    非晶質合金を使用したことを特徴とする核磁気共鳴映像
    法と組み合わせて使用する医療用器具。
  2. 【請求項2】 前記非晶質合金が、一般式Xa Alb
    c (式中、XはZr、Ti、Mg、Hfより選ばれた1
    以上の元素、YはCu、Bより選ばれた1以上の元素で
    あって、a、b、cは原子%であり、50≦a≦80、
    5≦b≦80、0<c≦50)で示される組成を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の医療用器具。
  3. 【請求項3】 一般式Xd Ale f g (式中、Xは
    Zr、Ti、Mg、Hfから選ばれた1以上の元素、Y
    はCu、Bから選ばれた1以上の元素、ZはNi、C
    o、Feより選ばれた2以上の元素であって、d、e、
    f、gは原子%であり、50≦d≦80、5≦e≦8
    0、0<f≦50、5≦g≦20)で示される組成を有
    する非晶質合金を使用したことを特徴とする核磁気共鳴
    映像法と組み合わせて使用する医療用器具。
  4. 【請求項4】 磁化率が−160×10-6〜+160×
    10-6(emu・mol-1)の範囲にある元素からなる
    非晶質合金を処置部材に使用したことを特徴とする核磁
    気共鳴映像法と組み合わせて使用する医療用器具。
  5. 【請求項5】 一般式Xd Ale f g (式中、Xは
    Zr、Ti、Mg、Hfから選ばれた1以上の元素、Y
    はCu、Bから選ばれた1以上の元素、ZはNi、C
    o、Feより選ばれた2以上の元素であって、d、e、
    f、gは原子%であり、50≦d≦80、5≦e≦8
    0、0<f≦50、5≦g≦20)で示される組成を有
    する非晶質合金を処置部材に使用したことを特徴とする
    核磁気共鳴映像法と組み合わせて使用する医療用器具。
  6. 【請求項6】 磁化率が−160×10-6〜+160×
    10-6(emu・mol-1)の範囲にある元素からなる
    非晶質合金を使用したことを特徴とする医療用器具。
  7. 【請求項7】 一般式Xd Ale f g (式中、Xは
    Zr、Ti、Mg、Hfから選ばれた1以上の元素、Y
    はCu、Bから選ばれた1以上の元素、ZはNi、C
    o、Feより選ばれた2以上の元素であって、d、e、
    f、gは原子%であり、50≦d≦80、5≦e≦8
    0、0<f≦50、5≦g≦20)で示される組成を有
    する非晶質合金を使用したことを特徴とする医療用器
    具。
  8. 【請求項8】 磁化率が−160×10-6〜+160×
    10-6(emu・mol-1)の範囲にある元素からなる
    非晶質合金を処置部材に使用したことを特徴とする医療
    用器具。
  9. 【請求項9】 一般式Xd Ale f g (式中、Xは
    Zr、Ti、Mg、Hfから選ばれた1以上の元素、Y
    はCu、Bから選ばれた1以上の元素、ZはNi、C
    o、Feより選ばれた2以上の元素であって、d、e、
    f、gは原子%であり、50≦d≦80、5≦e≦8
    0、0<f≦50、5≦g≦20)で示される組成を有
    する非晶質合金を処置部材に使用したことを特徴とする
    医療用器具。
  10. 【請求項10】 内視鏡用処置具、手術用クリップ、骨
    接合用プレート、歯列矯正用ワイヤー、各種インプラン
    ト埋入体、注射針、ステント、吸引バイオプシー針の中
    より選ばれた1つであることを特徴とする請求項1〜9
    のいずれかに記載の医療用器具。
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