JPH10186421A - 音響光学可変調フィルタ - Google Patents
音響光学可変調フィルタInfo
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- G02F1/116—Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics for the control of the intensity, phase, polarisation or colour based on acousto-optical elements, e.g. using variable diffraction by sound or like mechanical waves using an optically anisotropic medium, wherein the incident and the diffracted light waves have different polarizations, e.g. acousto-optic tunable filter [AOTF]
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Abstract
な分光測定を行うことができ、さらには単軸結晶材料の
使用量を増加させずに音響波と光波の干渉長を十分に確
保することができる音響光学可変調フィルタを提供す
る。 【解決手段】 ノン・コリニア型の音響光学可変調フィ
ルタにおいては、原光光線L1が結晶体1の表面に斜行
入射され、これにより結晶体内原光光線の断面が狭めら
れ、その結果受光開き角が大きくなり、結晶体1への集
光量が増加する。かくして、原光光線L1の光強度が微
弱な場合でも、高精度な分光測定を行うことができる。
また、原光光線L1を結晶体1の表面に斜行入射させる
ことにより、音響波の伝播に関与しない非干渉領域をな
くすことができ、これにより結晶体1における音響波と
光波の干渉長が十分に確保される。
Description
原光入射角でもって結晶体の表面に斜行入射されるよう
になっている音響光学可変調フィルタに関するものであ
る。
測定してスペクトルを得る分光測定には分光器ないしは
分光光度計が用いられるが、かかる分光器としては、従
来よりプリズム分光器あるいは回折格子分光器が広く用
いられていた。しかしながら、近年、かかる分光器とし
て、高速処理が可能でありかつ耐震性にも優れているこ
とから、音響光学可変調フィルタ(Acousto-Optic Tuna
ble Filter;略称AOTF)が普及しつつある。かかる
音響光学可変調フィルタにおいては、二酸化テルル(T
eO2)結晶等の単軸結晶材料からなる結晶体に音響波を
印加する一方、該結晶体に原光光線を照射し、原光光線
中の所定の波長成分のみを結晶体内で回折させて単色光
である回折光線を得るようにしている。ここで、回折光
線の波長は、結晶体に印加された音響波の周波数によっ
て定まるので、該音響波の周波数を変化させつつ、光強
度検出計を用いて回折光線の光強度を連続的に測定すれ
ば、原光光線のスペクトルが得られることになる。
における開発・進歩の経緯は、およそ次のとおりであ
る。すなわち、1967年には、音響波の進行方向と光
線の進行方向とが同一であるコリニア型(collinear ty
pe)の音響光学可変調フィルタが初めて実用化された。
しかしながら、最も実用的ないしは有用な音響光学可変
調フィルタは、I.C.チャング(I.C. Chang)によっ
て、TeO2が音響光学可変調フィルタをつくる上におい
てほぼ理想的な結晶材料であるということが発見される
とともに、音響波の進行方向と光線の進行方向とが交差
するノン・コリニア型(non-collinear type)の音響光
学可変調フィルタが提案された後で実現された。この2
0年間に、新規な音響光学可変調フィルタの開発につい
ての数百の特許と論文とが開示されているが、この期間
におけるほとんどすべての研究開発は、運動量整合条件
及び位相整合条件が一般的に受け入れられることができ
る、I.C.チャング並びにT.ヤノ及びA.ワタナベの初
期の理論的な研究に基づいている。
光学可変調フィルタの物理モデルは完全なものであった
が、その数学的な処理は常に近似手法に頼っていた。1
985年には、モ・フキン(Mo Fuqin)が平行接線条件
に関する初めての正確な数学的処理手法を提案した。1
987年には、エピキン(Epikhin)が、音響光学可変
調フィルタの開発に対して最も大きく貢献したものの1
つである、音響パラメータと光学パラメータとの間の正
確な関係を表現する一般的な数式の組み合わせを提案し
た。1991年には、ガス(Gass)が格別の根拠なしに
音波ベクトル方位角を−80.23°に設定して、該シ
ステムに対する最適パラメータを計算した。1992年
には、レン・クアン(Ren Quan)らがガスの報文の解析
手法をほぼ全面的に模倣して、格別の根拠なしに音波ベ
クトル方位角を105°に設定し、この特別な方位角に
対する1組のパラメータを計算した。
響光学可変調フィルタは急速に普及しかつ進歩しつつあ
るが、従来の音響光学可変調フィルタにおいては、まだ
まだ改良するべき問題点が多く、その1つとして次のよ
うな問題がある。すなわち、従来の音響光学可変調フィ
ルタにおいては、原光光線の光強度が微弱な場合、ある
いは原光光線中のある波長領域の光強度が微弱な場合に
は、分光測定の精度ないしは最終的に得られるスペクト
ルの精度が悪くなるといった問題がある。例えば、対象
物の吸収スペクトルを測定する分光分析においては、対
象物によって吸収される波長領域の光の強度を正確に測
定する必要があるが、この波長領域では該吸収により光
強度が微弱となっていることが多いので、音響光学可変
調フィルタを用いた場合、該分光分析の精度が悪くなる
といった問題が生じる。
弱な入射光のスペクトル分析システムで用いられる場合
においては、該音響光学可変調フィルタの受光開き角
が、分光分析の精度を左右する重要なパラメータとな
る。すなわち、受光開き角が大きくなればなるほど、多
くの入射光を結晶体に集光することができ、これに伴っ
てより高いS/N比を得ることができることになる。と
ころで、前記のモ・フキン、エピキンあるいはガスらに
よっても提案されているように、近年における音響光学
可変調フィルタの結晶体の位置決め手法ないしは成形手
法においては、一般に完全な運動量整合条件ないしは平
行接線条件が用いられている。そして、このように平行
接線条件を用いて設計された音響光学可変調フィルタシ
ステムにおいては、受光開き角が「最適値」となる。本
願発明者らは、完全な運動量整合条件についての数学的
研究により、受光開き角をほぼ「最大値」に到達させる
ことができることを見いだした。また、同一音響波周波
数に対する回折常光線の波長と回折異常光線の波長とが
ほぼ同一となる等価斜入射角を見いだした。しかしなが
ら、受光開き角をこのような「最適値」ないしは「最大
値」としても、なお原光光線の強度が微弱な場合には、
受光開き角は十分に大きいとはいえないといった問題が
ある。
いては、原光光線は結晶体表面に垂直入射(正入射)さ
れるように設計されているが、かかる音響光学可変調フ
ィルタにおいては、結晶体中に音響波の伝播には関与し
ない部分(以下、これを「非干渉領域」という)が生
じ、かかる非干渉領域は、結晶体内の原光光線の軸線と
結晶体光軸とがはさむ角で定義される入射光方位角を大
きい値に設定すればするほど大きくなるといった問題が
ある。すなわち、原光光線を結晶体表面に垂直入射させ
られるような形状に結晶体を形成(カッティング)する
場合、該形状は音響波が伝播する領域を完全に含み、か
つ結晶体表面が原光光線の光軸に垂直となるようなもの
としなければならないので、音響波が伝播する領域の形
状よりも必然的に大きくなり、その結果該結晶体内に音
響波の伝播に関与しない非干渉領域(遊休部分)が生じ
てしまうからである。
させるために、入射光方位角を等価斜入射角に設定しよ
うとすれば、該等価斜入射角はかなり大きい値(例え
ば、TeO2の場合はおよそ56°)であるので、結晶体
中の非干渉領域の割合が非常に多くなる。この場合、従
来と同量の単軸結晶材料しか用いないのであれば、音響
波の伝播領域が小さくなり、したがって結晶体内におけ
る音響波と光波の干渉長が短くなり、スペクトル解像度
が悪くなるといった問題が生じる。さりとて、音響波と
光波の干渉長を十分に確保しようとすれば、単軸結晶材
料の使用量が多くなるので、該音響光学可変調フィルタ
のコストアップを招くといった問題が生じる。
になされたものであって、原光光線の光強度あるいは原
光光線中のある波長領域の光強度が微弱な場合でも、高
精度な分光測定を行うことができ、さらには単軸結晶材
料の使用量をいたずらに増加させることなく音響波と光
波の干渉長を十分に確保することができる音響光学可変
調フィルタを提供することを解決すべき課題とする。
になされた本発明は、光透過性の単軸結晶材料からなる
結晶体と、該結晶体の音響波入力面に任意の周波数の音
響波を印加することができる音響波印加手段とが設けら
れ、光源から上記結晶体の表面に照射されて該結晶体内
に入射された原光光線が、上記結晶体内で該結晶体内を
伝播している音響波と交差し、該結晶体内の原光光線中
の入射常光線及び入射異常光線の音響波周波数に対応す
る波長成分が、それぞれ、上記結晶体内で回折されて単
色光である回折異常光線及び回折常光線として上記原光
光線から分離されるようになっているノン・コリニア型
の音響光学可変調フィルタにおいて、上記結晶体に照射
される所定の受光開き角の原光光線が、該原光光線の軸
線と結晶体表面の法線とがはさむ角で定義される原光入
射角が0°よりは大きく90°よりは小さい所定の角度
となるようにして、上記結晶体表面に斜行入射させられ
ることを特徴とするものである。ここで、単軸結晶材料
としては、例えば二酸化テルル(TeO2)結晶を用いる
のが好ましい。
原光入射角が、0°よりは大きく90°よりは小さい所
定の値に設定され、したがって原光光線が結晶体の表面
に斜行入射される。ここにおいて、例えば横断面が円形
である円錐状の原光光線が結晶体の表面に斜行入射され
た場合、すなわち原光光線が結晶体表面の法線に対して
傾斜して入射された場合、結晶体内ではその横断面が所
定の方向に短縮されて楕円形となるといった現象(以
下、これを「光線狭まり現象」という)が生じる。この
光線狭まり現象は、上記所定の方向における屈折特性
と、これと垂直な方向における屈折特性とが異なること
に起因して生じる。そして、かかる光線狭まり現象は、
原光入射角が大きくなればなるほど著しくなる。なお、
光線の狭まり度合いは、原光入射角のほか、偏光状態
と、光の波長とにも依存する。そして、この光線狭まり
現象を利用すれば、音響光学可変調フィルタの結晶体の
受光開き角を大きくすることができ、したがって結晶体
の集光量を多くすることができるので、原光光線の光強
度あるいは原光光線中のある波長領域の光強度が微弱な
場合でも、高精度な分光測定を行うことができる。
ては、原光光線を結晶体の表面に斜行入射させるように
しているので、原光入射角を好ましく設定すれば、従来
の音響光学可変調フィルタの場合のように原光光線を結
晶体表面に垂直入射させるための非干渉領域を設ける必
要はない。すなわち、結晶体の形状を音響波が伝播する
領域(以下、これを「干渉領域」という)とほぼ同様の
(若干大きい)形状とするだけでよいので、該結晶体に
は非干渉領域すなわち音響波の伝播に関与しない遊休部
分がほとんど生じない。したがって、単軸結晶材料の使
用量をいたずらに増加させることなく音響波と光波の干
渉長を十分に確保することができる。つまり、結晶体の
有効利用度が高められ、低コストでスペクトル解像度の
高い音響光学可変調フィルタを得ることができる。
タにおいては、上記結晶体内の原光光線の軸線と結晶体
光軸とがはさむ角で定義される入射光方位角が同一音響
波周波数に対して回折常光線の波長と回折異常光線の波
長とがほぼ同一となる等価斜入射角になるように、上記
原光入射角を設定するのが好ましい。このように、入射
光方位角が等価斜入射角に設定された場合は、受光開き
角をさらに大きくすることができるので、結晶体の集光
量をさらに多くすることができ、分光測定の精度を一層
高めることができる。なお、本願発明者の実験ないしは
解析によれば、TeO2結晶からなる結晶体を用いた音響
光学可変調フィルタの等価斜入射角はおよそ56°であ
るが、この等価斜入射角は回折光線の波長に対する依存
性が認められる。すなわち、回折光線の波長が0.5μ
m〜2.5μmの範囲内では、該波長が短いときほど等
価斜入射角は大きくなる。
射角となるように原光入射角を設定するようにした音響
光学可変調フィルタにおいては、結晶体表面の法線と結
晶体光軸とがはさむ角で定義される結晶体表面方位角
が、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性が
小さく、かつ等価斜入射角に対応する原光入射角が大き
くなるような所定の角度、例えば40°付近に設定され
ているのが好ましい。このように、入射光方位角を等価
斜入射角に設定する場合においては、結晶体表面方位角
が小さいときほど、原光入射角が大きくなり、光線狭ま
り現象及び結晶体有効利用度が高められる。しかしなが
ら、その反面、結晶体表面方位角が小さいときほど、等
価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性が大きく
なり、このため広い波長領域にわたって回折常光線波長
と回折異常光線波長とを同一にすることができなくな
る。
は、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性は
小さくなるものの、原光入射角が小さくなり光線狭まり
現象及び結晶体有効利用度が低くなる。つまり、結晶体
表面方位角が小さすぎると等価斜入射角を得るのが困難
になるといった不具合が生じ、他方結晶体表面方位角が
大きすぎると光線狭まり現象及び結晶体有効利用度が低
くなるといった不具合が生じることになる。そこで、こ
のような二律背反的な問題を解決するために、結晶体表
面方位角を、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する
依存性が比較的小さく、かつ原光入射角が比較的大きく
なる好ましい角度範囲、例えば40°付近に設定するの
が好ましい。
ては、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性
は、回折光線波長が長いときほど小さくなるので、上記
原光光線としては波長の長い光、例えば近赤外線を用い
るのが好ましい。さらに、上記音響光学可変調フィルタ
においては、結晶体の表面が、音響波の音波エネルギの
流れ方向と平行であるのが好ましい。この場合、結晶体
の形状が音響波が伝播する領域(干渉領域)とほぼ同様
の形状となるので、該結晶体には非干渉領域すなわち音
響波の伝播に関与しない遊休部分がほとんど生じない。
したがって、単軸結晶材料の使用量を低減しつつ音響波
と光波の干渉長が十分に確保される。なお、上記音響光
学可変調フィルタにおいては、結晶体の表面に、結晶体
外部から結晶体内部への光の透過率を高めるコーティン
グが施されているのがさらに好ましい。
的に説明する。図1に示すように、本発明にかかるノン
・コリニア型の音響光学可変調フィルタ(AOTF)に
おいては、二酸化テルル(TeO2)結晶からなる結晶体
1(AOTFセル)の音響波入力面(下端面)に、該結
晶体1内に音響波を印加(放射)するトランスデューサ
2が取り付けられ(接合され)、上記音響波入力面と反
対側に位置する結晶体端面(上端面)に、結晶体1内を
矢印A1で示すように伝播した音響波を吸収するアブソ
ーバ3が取り付けられている(接合されている)。な
お、トランスデューサー2は、コントロールユニット5
によって制御される可変調音響波ドライバ4によって駆
動され、任意の周波数の音響波を発生させることができ
るようになっている。
光源6から放射されたブロードバンドな白色光である原
光光線L1(入射光線)が斜行入射され、この原光光線
L1は、結晶体1内を透過する際に、0次光線L2と、回
折常光線L3(1次光線)と、回折異常光線L4(−1次
光線)とに分けられる。ここで、0次光L2は、原光光
線L1とほぼ同様のスペクトルのブロードバンドな白色
光であるが(原光光線L1から回折常光線L3と回折異常
光線L4とが除去されたもの)、回折常光線L3と回折異
常光線L4とは、それぞれ、原光光線L1の1次回折によ
って生じた、波長がλiとλi’の単色光である。
光線L1から音響波周波数に対応する波長の両回折光線
L3及びL4が分離されるゆえんは一般によく知られてい
るのでその詳しい説明は省略するが、該回折はおよそ次
のようなプロセスで惹起される。すなわち、結晶体1内
を音響波が矢印A1で示すように伝播しているときに
は、該音響波によってTeO2内に結晶格子の歪みが生
じ、これがグレーティングのような働きをする。原光光
線L1中の、音響波周波数に対応する波長成分が回折さ
れて回折光線L3及びL4(単色光)が分離され、この回
折光線L3及びL4が0次光L2とは異なる方向に進む。
なお、この場合、原光光線L1中の入射異常光線からは
回折常光線L3が惹起され、入射常光線から回折異常光
線L4が惹起される。
のようにも説明される。すなわち、量子論によれば、音
響波はその周波数に応じた運動量ないしはエネルギを有
するフォノン(音量子)と称される粒子であると考えら
れ、入射異常光線及び入射常光線は、それぞれ、その周
波数(ないしは波長)に応じた運動量ないしはエネルギ
を有するフォトン(光量子)と称される粒子であると考
えられる。ここで、フォトンは、エネルギ保存の法則な
いしは運動量保存の法則の範囲内で、フォノンと合体し
て新たなフォトンを形成することができ、あるいはフォ
ノンを放出して別の新たなフォトンを形成することがで
きる。かくして、結晶体1内では、入射常光線のフォト
ンはフォノンと衝突・合体してその進行方向が変化して
新たなフォトンとなり、このフォトンが回折異常光線と
なる。他方、入射異常光線のフォトンはフォノンを放出
してその進行方向が変化して新たなフォトンとなり、こ
のフォトンが回折常光線となる。
学可変調フィルタにおいては、例えば、音響波周波数を
変化させつつ、回折常光線の光強度を測定して原光光線
の分光測定を行う(原光光線のスペクトルを得る)よう
にしているが、かかる従来の音響光学可変調フィルタで
は、原光光線の光強度あるいは原光光線中のある波長領
域の光強度が微弱な場合には、高精度な分光測定を行う
ことができず、さらには音響波と光波の干渉長を十分に
確保することができないか、あるいは該干渉長を確保し
ようとすれば単軸結晶材料の使用量をいたずらに増加さ
せるなどといった問題があった。
変調フィルタでは、以下で説明するように、原光光線L
1の光強度あるいは原光光線L1中のある波長領域の光強
度が微弱な場合でも、高精度な分光測定を行うことがで
き、さらには単軸結晶材料の使用量をいたずらに増加さ
せることなく音響波と光波の干渉長を十分に確保するこ
とができるようになっている。以下、この音響光学可変
調フィルタの基本的な構造について説明する。
変調フィルタでは、基本的には、結晶体1に照射される
原光光線L1を、該原光光線L1の軸線と結晶体表面の法
線とがはさむ角で定義される原光入射角が0°よりは大
きく90°よりは小さい範囲内の所定の角度となるよう
にして、原光光線L1を上記結晶体の表面に斜行入射さ
せるようにしている。この場合、横断面が円形である円
錐状の原光光線L1が結晶体1の結晶体の表面に斜行入
射されるが、結晶体1内ではその横断面が所定の方向に
短縮されて楕円形となるといった光線狭まり現象が生じ
る。
1が結晶体1の表面に斜行入射されたときに、紙面に平
行な方向の原光光線断面径と紙面に垂直な方向の原光光
線断面径とが互いに異なる屈折特性でもって変化するの
に起因して、結晶体内原光光線L1’の断面が楕円形に
なるという現象を模式的に示している。なお、図2にお
いて、θ1は原光入射角、すなわち原光光線L1の軸線と
結晶体表面の法線Nとがはさむ角であり、θ2は結晶体
内原光光線L1’の軸線と結晶体表面の法線Nとがはさ
む角(以下、これを「原光屈折角」という)である。ま
た、θd1及びθd2はそれぞれ原光光線L1及び結晶体
内原光光線L1’の広がり角ないしは狭まり角であり、
n1及びn2はそれぞれ空気及び結晶体1の屈折率であ
る。
から結晶体1内に入射された場合においては、結晶体内
原光光線L1’の実際の広がり角ないしは狭まり角は、
結晶体1外における原光光線L1のそれよりも小さくな
る。そして、このような結晶体内原光光線L1’の断面
の開き角は、原光入射角θ1と、該光線の偏光状態(常
光線それとも異常光線か)と、光の波長とに依存する
(関数である)。ここで、かかる結晶体内原光光線の開
き角は、原光入射角θ1が大きくなればなるほど小さく
なり(図9参照)、また結晶体表面の法線と結晶光軸と
がなす角度である結晶体表面方位角θs(図3参照)が
大きくなるのに伴ってゆるやかに小さくなる(図10参
照)。なお、結晶体内原光光線の狭まり度合いが大きく
なればなるほど、換言すれば結晶体内原光光線が狭まれ
ば狭まるほど、原光光線L1の実際の開き角が大きくな
る。そして、この光線狭まり現象を利用すれば、音響光
学可変調フィルタの結晶体の受光開き角を大きくするこ
とができ、したがって結晶体の集光量を多くすることが
できるので、原光光線の光強度あるいは原光光線中のあ
る波長領域の光強度が微弱な場合でも、高精度な分光測
定を行うことができる。
に表現するために、光線あるいは音響波のベクトル的な
位置関係を示す。なお、以下で引用ないしは参照する式
あるいは図において、太字のアルファベットKは、数学
上の普通の表記例にしたがってベクトルをあらわしてい
るが、本明細書の本文中においては、表記上の制限(太
字は使用不可とされている)により、これらをvectorK
と表記することにする。図3において、vectorKiは原
光光線L1の光波ベクトルであり、vectorKioは結晶体
内原光光線L1’中の常光線の光波ベクトルであり、vec
torKieは結晶体内原光光線L1’中の異常光線の光波ベ
クトルである。また、θio及びθieは、それぞれ、光波
ベクトルvectorKio及び光波ベクトルvectorKieの結晶
体光軸Zに対する方位角である。なお、θ1は原光入射
角であり、θsは結晶体表面方位角である。
ては、原光光線L1を結晶体1の表面に斜行入射させる
ようにしているので、原光入射角θ1を好ましく設定す
れば、従来の音響光学可変調フィルタの場合のように原
光光線L1を結晶体表面に垂直入射させるための非干渉
領域を設ける必要はない。すなわち、結晶体1の形状を
干渉領域すなわち音響波が伝播する領域より若干大きい
形状とするだけでよいので、結晶体1には非干渉領域す
なわち音響波の伝播に関与しない遊休部分がほとんど生
じない。したがって、単軸結晶材料の使用量をいたずら
に増加させることなく音響波と光波の干渉長を十分に確
保することができる。つまり、結晶体1の有効利用度が
高められ、低コストでスペクトル解像度の高い音響光学
可変調フィルタを得ることができる。
るゆえんについて説明する。図4は、原光光線L1が結
晶体1の表面に垂直入射される従来の音響光学可変調フ
ィルタの模式図であり、図5は原光光線L1が結晶体1
の表面に斜行入射される本発明にかかる音響光学可変調
フィルタの模式図である。図4に示すように、一般に、
結晶体1の音響波入力面に音響波が入力された場合、該
音響波の位相が変化する方向すなわち位相速度方向Vp
と音響波のエネルギが流れる方向すなわち群速度方向V
gとが生じるが、両者は異なる方向となる。ここで、結
晶体1の音響波入力面は位相速度方向Vpと垂直でなけ
ればならない。したがって、該音響光学可変調フィルタ
において、位相速度方向Vpが設定されると、これに伴
って結晶体1の音響波入力面の方位角が定まるととも
に、群速度方向Vgも定まる。
の形状を示し、四角形ABCDは干渉領域すなわち音響
波が伝播する領域を示している。そして、三角形BEC
は原光光線L1を結晶体1の表面に垂直入射させるため
に設けられた第1非干渉領域である。また、三角形AD
Fは結晶体1の表面と該表面と反対側の結晶体端面とを
平行にするために設けられる第2非干渉領域である。ま
た、図4において、vectorKiとvectorKdとvectorKa
とは、それぞれ、入射光波ベクトルと回折光波ベクトル
と音波ベクトルとを示している。
ギ流れが結晶体端面に衝突すると、すなわち四角形AE
CFの辺EC又は辺AFが四角形ABCDと交差する
と、該音響波の反射波が生じ、該反射波によって音響光
学可変調フィルタの分光性能が低下する。したがって、
結晶体1においては、四角形ABCDは四角形AECF
の内部に存在することが必要である。例えば、仮に辺E
Cが破線E’C’で示す位置にあった場合は、GC’間
で音響波が反射し、分光性能が低下することになる。
直入射される従来の音響光学可変調フィルタにおいて、
結晶体1の形状はおよそ次のような手順で決定される。 (1)所望の回折条件を満足するような入射光波ベクト
ル方位角θi(結晶体光軸に対する方位角)と音波ベク
トル方位角θa(結晶体光軸に対する方位角)とを計算
により求める。 (2)θaに基づいて音響波入力面におけるAEの向き
を求めるともに、θiに基づいて結晶体の表面における
ECの向きを求める。 (3)音響波の位相速度方向Vpと群速度方向Vgのな
す角度を求める。 (4)音響波と光波の干渉長が所望の値となるような音
響波の幅(ABの長さ)と結晶体表面の長さ(ECの長
さ)とを計算するとともに、第1非干渉領域におけるB
Eの長さを求める。なお、第2非干渉領域におけるAF
はECと平行となるように設定する。かくして、結晶体
1の形状AECFが決定される。
は、音響波は、群速度方向VgにABの幅で伝播する。
すなわち、音響波は四角形ABCD内を伝播する。した
がって、四角形ABCDは音響波の伝播に関与する干渉
領域であるが、三角形BEC及び三角形ADFで示され
る第1、第2非干渉領域は音響波の伝播の関与しない遊
休部分である。つまり、従来の結晶体1においては、遊
休部分の割合ががかなり大きくなっている。
音響光学可変調フィルタの結晶体1においては、原光光
線L1が結晶体1の表面に斜行入射されるので、非干渉
領域は必要とされない。この場合は、原光入射角θ1を
任意に設定することができるので、該原光入射角θ
1を、所望の入射光波ベクトル方位角が得られるように
調整すればよい。具体的には、結晶体1の形状及び原光
入射角θ1は、次のような手順で決定される。 (1)所望の回折条件を満足するような入射光波ベクト
ル方位角θiと音波ベクトル方位角θaとを計算により求
める。 (2)θaに基づいて音響波入力面におけるABの向き
を求める。 (3)音響波の位相速度方向Vpと群速度方向Vgのな
す角度を求める。 (4)Vgに基づいて結晶体の表面におけるBCの向き
を求める。 (5)音響波と光波の干渉長が所望の値となるような音
響波の幅(ABの長さ)と結晶体の表面の長さ(BCの
長さ)とを計算する。なお、結晶体の表面と反対側の結
晶体端面におけるADはBCと平行となるように設定す
る。かくして、結晶体1の形状AECFが決定される。 (6)結晶体1の屈折率に基づいて、結晶体内原光光線
L1’が入射光波ベクトル方位角θiになるような原光入
射角θ1を計算する。 かくして、結晶体1の形状と原光入射角θ1とが決定さ
れる。
おいては、音響波は、結晶体1内(四角形ABCD内)
のほぼ全領域を伝播し、非干渉領域すなわち遊休部分は
実質的に生じない。このため、単軸結晶材料の使用量を
いたずらに増加させることなく音響波と光波の干渉長を
十分に確保することができる。つまり、結晶体1の有効
利用度が高められ、低コストでスペクトル解像度の高い
音響光学可変調フィルタを得ることができる。
ィルタにおいては、入射光波ベクトル方位角θi(入射
光方位角)が,同一音響波周波数に対して回折常光線の
波長と回折異常光線の波長とがほぼ同一となる等価斜入
射角になるように、原光入射角θ1を設定するのが好ま
しい。このように、入射光波ベクトル方位角θiが等価
斜入射角に設定された場合は、受光開き角をさらに大き
くすることができるので、結晶体1の集光量をさらに多
くすることができ、分光測定の精度を一層高めることが
できる。TeO2結晶からなる結晶体1においては、等価
斜入射角はおよそ56°である。
sが、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性
が小さく、かつ等価斜入射角に対応する原光入射角が大
きくなるような好ましい角度範囲、例えば40°付近に
設定されるのが好ましい。すなわち、結晶体表面方位角
θsが小さいときには、原光入射角θ1が大きくなって光
線狭まり現象及び結晶体有効利用度が高められる反面、
等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性が大き
くなって広い波長領域にわたって回折常光線波長と回折
異常光線波長とを同一にすることができなくなる。他
方、結晶体表面方位角θsが大きいときには、等価斜入
射角の回折光線波長変化に対する依存性は小さくなるも
のの、原光入射角θ1が小さくなり光線狭まり現象及び
結晶体有効利用度が低くなる。そこで、結晶体表面方位
角θsを、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依
存性が比較的小さくかつ原光入射角が比較的大きくなる
ような好ましい角度範囲、例えば40°付近に設定する
わけである。
ては、等価斜入射角の回折光線波長変化に対する依存性
は、回折光線波長が長いときほど小さくなるので、上記
原光光線としては波長の長い光、例えば近赤外線を用い
るのが好ましい。
斜入射角に設定した場合は、光源6から結晶体1に照射
される原光光線L1から分離された回折常光線L3の波長
λiと回折異常光線L4の波長λi’とが実質的に同一と
なる。したがって、波長が実質的に同一である回折常光
線L3と回折異常光線L4とを重ね合わせて重複回折光線
をつくり、この重複回折光線の光強度を検出するように
して上で、トランスデューサ2によって結晶体1に印加
される音響波の周波数を所定の周波数領域で変化させつ
つ、重複回折光線の光強度を連続的ないしは離散的に測
定して、原光光線L1の分光測定を行えば、原光光線L1
の光強度が微弱な場合、あるいは原光光線L1中のある
波長領域の光強度が微弱な場合でも、高精度な分光測定
を行うことができる。
ルタを設計する上における数学的な処理手法ないしは解
析手法と、該手法を用いて実際に行った処理ないしは解
析の結果とについて、さらに詳しく説明する。かかる手
法によって原光入射角θ1が設定された音響光学可変調
フィルタにおいては、結晶体内原光光線L1’の狭まり
現象により、従来の受光開き角の「最適値」よりも数十
パーセント大きい受光開き角が得られるものと考えられ
る。
の数式化>まず、図3と、図6〜図8とを参照しつつ、
音響光学可変調フィルタの状態ないしは挙動を、複数の
モデル式(数式)で表現する。なお、図6は原光光線が
結晶体の表面に垂直入射される従来の結晶体を示し、図
7及び図8は原光光線が結晶体の表面に斜行入射される
本発明にかかる結晶体を示している。これらの図中にお
いては、常光線と異常光線とについての単軸結晶の光波
ベクトル表面(断面)W1、W2が、それぞれ、おおむね
円と楕円とで描かれている。そして、Z軸は、該単軸結
晶の[001]結晶光軸をあらわしている。なお、両光
波ベクトル表面間には、ギャップδが存在する。
入射角がθ1である原光入射光波ベクトルであり、vecto
rKie及びvectorKioは、それぞれ、光軸に対する方位
角がθie及びθioである入射異常光波ベクトル及び入射
常光波ベクトルである。vectorKde及びvectorKdoは、
それぞれ、光軸に対する方位角がθde及びθdoである回
折異常光波ベクトル及び回折常光波ベクトルである。ve
ctorKaeo及びvectorKaoeは、それぞれ、光軸に対する
方位角がθaeo及びθaoeである音波ベクトルである。こ
こで、音波ベクトルvectorKaeoでもってその特性があ
らわされる音響波と、入射異常光波ベクトルvectorKie
でもってその特性があらわされる入射異常光線との相互
作用によって、回折常光波ベクトルvectorKdoでもって
その特性があらわされる回折常光線が惹起される。同様
に、音波ベクトルvectorKaoeでもってその特性があら
わされる音響波と、入射常光波ベクトルvectorKioでも
ってその特性があらわされる入射常光線との相互作用に
よって、回折異常光波ベクトルvectorKdeでもってその
特性があらわされる回折異常光線が惹起される。
率面は次の式1であらわされる。
示し、「io」は入射常光線を示している。また、図3に
も示されているように、θieとθioとは、それぞれ、異
常光波ベクトル又は常光波ベクトルと、結晶体の光軸と
がなす方位角である。そして、屈折率ne及びnoは、そ
れぞれ、TeO2の分散式である次の式3及び式4によっ
て決定される。
δは、次の式5であらわされる。
発明者は、サイン定理を用いて、結晶体1の表面が原光
光線L1と垂直でない場合における結晶体内での光線狭
まり現象について研究を行った。図2は、前記したとお
り、横断面が円形の原光光線L1が結晶体1の表面に斜
行入射されたときに、紙面に平行な方向の光線横断面径
と紙面に垂直な方向の光線横断面径とが互いに異なる屈
折特性でもって変化することに起因して、結晶体1内に
おける光線横断面が楕円形になるという現象を示してい
る。
いて、かかる光線狭まり現象を数学的に記述すれば、単
色光線の各方位角についての関係は、紙面と平行な断面
においては次の式6、式7のとおりであり、紙面と垂直
な断面においては次の式8、式9のとおりである。
式2から得られる。ここで、θ1は紙面中に示された断
面における光線L1の入射角であり、θio及びθieはそ
れぞれ結晶体1内において常光線及び異常光線と結晶軸
とがなす角度である。同様に、θp1は紙面と垂直な断面
における原光光線の入射角であり、θp2o及びθp2eはそ
れぞれ結晶体1内において常光線及び異常光線と結晶軸
とがなす角度である。なお、紙面と垂直な断面における
光線の挙動は、音響光学可変調フィルタの作用にさほど
影響を与えないので、以下ではこれについてはとくには
説明しないことにする。式6〜式9に対する解析解はな
いが、図9〜図11にはその数値解が示されている。
に、結晶体外における原光入射角が大きければ大きいほ
ど、円錐形の結晶体内原光光線の開き角が小さくなる。
ここにおいて、θd1は、空気中における原光光線L1の
広がり角の1/2であり、θd2o及びθd2eは、それぞ
れ、結晶体1内における常光線及び異常光線の広がり角
である。そして、図10に示すように、傾斜角がとくに
大きい場合には、結晶体表面方位角は光線狭まり現象に
さほど影響を与えない。図11から明らかなとおり、原
光光線L1が結晶体1の表面に垂直入射されない場合
は、常光線及び異常光線は離反する。
光光線L1は、ブルースター角では反射率が0となり、
したがって全部屈折光として結晶中に入るが、それより
大きい角度で入射すると反射率が高くなる。他方、紙面
と垂直な方向に偏向している原光光線L1については、
ブルースター角の問題はないが、入射角が大きすぎると
上記の場合と同様に反射率が高くなり、結晶体表面にコ
ーティングを施しても反射損失が大きくなる。かくし
て、TeO2結晶に対するブルースター角はおよそ66°
(arctan2.27)であるので、原光入射角を60°より
小さい値に設定することは、反射損失と結晶体内の原光
光線の狭まり度合いとをバランスさせる上において好ま
しいものである。したがって、原光入射角θ1を比較的
大きい値、例えば45°に設定することにより、垂直入
射の場合に比べて75%までビームを狭めることができ
る。
晶体1の入射光波ベクトル方位角が完全な運動量整合条
件を用いて計算されれば、音波ベクトル方位角は入射光
波ベクトル方位角から一義的に求められる。例えば、入
射光波ベクトル方位角θiが20°に設定された場合は
音波ベクトル方位角θaはおよそ100°である。ま
た、θi=35°に設定された場合はθaおよそ105°
である。さらに、入射光波ベクトル方位角θiが、両回
折光線の波長を同一にすることができる等価斜入射角に
設定された場合、すなわちθi=56°の場合はθaはお
よそ108°である。結晶体1の表面が原光光線L1と
垂直である場合は、計算によれば、上記の3つのケース
における、結晶体表面と音響波入力面(トランスデュー
サ接合面)とがなす角は、それぞれ、100°、110
°及び128°である。図6に示す従来の結晶体1のよ
うに、これらの2つの面のなす角が90°よりも大きい
場合は、音響波と光の干渉長は短くなるか、又は必要な
干渉長を確保するために大きな寸法の結晶体が必要とさ
れる。なぜなら、干渉長が長ければ長いほど、高いスペ
クトル解像度が得られるからである。ここで、音響光学
可変調フィルタが、原光光線L1を結晶体1の表面に斜
行入射させるようになっていれば、受光開き角を大きく
することができるとともに、上記問題をも解決すること
ができる。図7は、このように改良された本発明にかか
る結晶体1(AOTFセル)を示している。
クトル方位角θiを等価斜入射角に設定する場合、すな
わちθi=55.98°の場合は、等価斜入射角の等価特
性を決定するために、さらに計算が必要とされる。図8
は、このように、入射光波ベクトル方位角θiを等価斜
入射角に設定する場合におけるベクトル図を示してい
る。この場合、空気中の原光光線L1は、原光入射角θ1
でもって結晶体1の表面に入射され、結晶体1内で、該
光線の偏光状態に応じて、常光及び異常光の2つのビー
ムに分離される。図8から明らかなとおり、結晶体1内
における常光と異常光とは、もはや垂直入射の場合のよ
うな同一方向を向く(コリニア)ものではなく、これら
の光波ベクトルは図中にvectorKioとvectorKieとで示
されている。ここで、vectorKdo+vectorKaeo=vecto
rKioと、vectorKio+vectorKaoe=Kdeであらわされ
る2つの閉じたベクトル三角形に対して、等価条件を見
いだすための計算を行った。
ト)及び常光入力・異常光出力(oイン・eアウト)に
対する平行接線条件により決定される音波ベクトル方位
角θaeo及びθaoeと、音響波周波数faeo及びfaoeと
は、次の式10〜式13であらわされる。
得られるθio及びθieによって置換されるべきである。
そして、θdo及びθdeは、次の式14及び式15であら
わされる。
に、式11=式13とおくことにより、等価斜入射角を
計算することができる。この数値計算にはかなりの時間
を要するが、その計算結果によれば、音波ベクトル方位
角に基づいて計算された等価斜入射角と、音響波周波数
に基づいて計算された等価斜入射角の差が、θs=θi=
55.9となる垂直入射の場合よりも若干大きくなるこ
とを除けば、等価斜入射角が存在することを示してい
る。ここでは、かかる数値計算における概略的な傾向を
知るために、選択された数点についてのみ数値計算が行
われている。かくして、図12及び図13は、前記の図
9〜図11とともに、等価斜入射角が、結晶体表面方位
角θsと光の波長とに応じて変化するといった傾向を示
している。
れた等価斜入射角と、faoe=faeoに基づいて計算され
た等価斜入射角との間の偏差が、非常に小さいことを示
している。この場合、その偏差はおよそ0.025〜0.
09°であり、垂直入射の場合は該偏差はおよそ0.0
48〜0.063°である。互いに異なる波長の光につ
いて計算された等価斜入射角の偏差の波長に対する依存
性は、波長が短いときほど大きくなる。可視領域におい
ては、該偏差は4.5°程度であり、それゆえ等価斜入
射角はもはや存在しないといえる。近赤外領域において
は、λ=2.5μmに対する等価斜入射角と、λ=1.0
μmに対する等価斜入射角との間の偏差、およそ0.1
〜0.9°である。つまり、実際の光ビームの円錐角は
常に1°より大きいので、近赤外領域においては、等価
斜入射角が得られる。
合、例えばθs=35°の場合は、斜行入射角が大きく
なり、垂直入射(θs=55.9°)の場合に比べて65
%に狭められた結晶体内原光光線が得られるものの、等
価斜入射角の波長依存性が可視領域内で大きくなるとい
ったジレンマがある。また、結晶体表面方位角を小さく
した場合、該結晶体表面方位角が小さければ小さいほ
ど、ブルースター角θbに接近するといったもう1つの
問題が生じる。
合、例えばθs=53°の場合は、結晶体内原光光線の
狭まり度合い、結晶体1の有効利用度ないしはトランス
デューサ2の取り付けの容易さ等の利点はさほど顕著な
ものではない。 (d)したがって、結晶体表面方位角を中間的ないしは
妥協的な値、例えばθsを40°あるいはその付近に設
定するといった対応がなされるのが好ましい。この場
合、原光入射角は、およそ次のような手順で概略的に推
算されることができる。すなわち、等価斜入射角はおよ
そ55.9°であるので、図3又は図8によれば、結晶
体内原光光線の原光屈折角は55.9−θsである。ここ
で、図11に示されたグラフを用いれば、該グラフの縦
軸の値が55.9°−40°=15.9°となる点に対応
する横軸の値が38°であることがわかる。したがっ
て、原光入射角θ1がおよそ38°であることがわか
る。このような原光入射角38°は、ブルースター角か
らうまくはずれており、反射損失を低減するために表面
コーティングの実施を容易にする。
ステム構成を示す模式図である。
面に斜行入射された場合において、結晶体内原光光線の
断面が狭められて楕円形になった状態を示す図である。
る、入射光波ベクトルと、回折光波ベクトルと、音波ベ
クトルとの間の関係を、極座標で示した図である。
の結晶体の形状と、光波及び音響波の挙動とを示す模式
図である。
明にかかる結晶体の形状と、光波及び音響波の挙動とを
示す模式図である。
い従来の結晶体における、音響波と光の干渉状態を示す
模式図であり、原光光線が結晶体表面に垂直入射された
状態を示している。
い本発明にかかる結晶体における、音響波と光の干渉状
態を示す模式図であり、原光光線が結晶体表面に斜行入
射された状態を示している。
表面と音響波入力面とがなす角が小さい本発明にかかる
結晶体内での、音響波と光の干渉状態を示す模式図であ
り、原光光線が結晶体表面に斜行入射された状態を示し
ている。
入射角に対する変化特性を、原光光線の開き角をパラメ
ータとして示した図である。
光入射角に対する変化特性を、結晶体表面方位角をパラ
メータとして示した図である。
を、光線波長及び偏光状態をパラメータとして示した図
である。
位角と原光入射角とに対する変化特性を示す図である。
いに異なる場合における等価斜入射角の偏差の結晶体表
面方位角に対する変化特性を示す図である。
4 可変調音響波ドライバ、5 コントロールユニッ
ト、6 光源。
Claims (8)
- 【請求項1】 光透過性の単軸結晶材料からなる結晶体
と、該結晶体の音響波入力面に任意の周波数の音響波を
印加することができる音響波印加手段とが設けられ、 光源から上記結晶体の表面に照射されて該結晶体内に入
射された原光光線が、上記結晶体内で該結晶体内を伝播
している音響波と交差し、該結晶体内の原光光線中の入
射常光線及び入射異常光線の音響波周波数に対応する波
長成分が、それぞれ、上記結晶体内で回折されて単色光
である回折異常光線及び回折常光線として上記原光光線
から分離されるようになっているノン・コリニア型の音
響光学可変調フィルタにおいて、 上記結晶体に照射される所定の受光開き角の原光光線
が、該原光光線の軸線と結晶体表面の法線とがはさむ角
で定義される原光入射角が0°よりは大きく90°より
は小さい所定の角度となるようにして、上記結晶体表面
に斜行入射させられることを特徴とする音響光学可変調
フィルタ。 - 【請求項2】 上記結晶体内の原光光線の軸線と結晶体
光軸とがはさむ角で定義される入射光方位角が同一音響
波周波数に対して回折常光線の波長と回折異常光線の波
長とがほぼ同一となる等価斜入射角となるように、上記
原光入射角が設定されていることを特徴とする、請求項
1に記載された音響光学可変調フィルタ。 - 【請求項3】 結晶体表面の法線と結晶体光軸とがはさ
む角で定義される結晶体表面方位角が、等価斜入射角の
回折光線波長変化に対する依存性が小さく、かつ等価斜
入射角に対応する原光入射角が大きくなるような所定の
角度に設定されていることを特徴とする、請求項2に記
載された音響光学可変調フィルタ。 - 【請求項4】 上記結晶体表面方位角が40°付近に設
定されていることを特徴とする、請求項3に記載された
音響光学可変調フィルタ。 - 【請求項5】 上記原光光線が近赤外線であることを特
徴とする、請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載さ
れた音響光学可変調フィルタ。 - 【請求項6】 上記単軸結晶材料が二酸化テルル結晶で
あることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか
1つに記載された音響光学可変調フィルタ。 - 【請求項7】 上記結晶体の表面が、音響波の音波エネ
ルギの流れ方向と平行であることを特徴とする、請求項
1〜請求項6のいずれか1つに記載された音響光学可変
調フィルタ。 - 【請求項8】 上記結晶体の表面に、結晶体外部から結
晶体内部への光の透過率を高めるコーティングが施され
ていることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれ
か1つに記載された音響光学可変調フィルタ。
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