JPH101375A - リン酸カルシウム系多孔質複合体及びその製造方法 - Google Patents

リン酸カルシウム系多孔質複合体及びその製造方法

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JPH101375A
JPH101375A JP8175659A JP17565996A JPH101375A JP H101375 A JPH101375 A JP H101375A JP 8175659 A JP8175659 A JP 8175659A JP 17565996 A JP17565996 A JP 17565996A JP H101375 A JPH101375 A JP H101375A
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康之 水嶋
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光史 岡田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リン酸カルシウム系の被膜が剥離し難く、ま
た、基材の溶出等のない、リン酸カルシウム系の多孔質
複合体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 細孔を有する金属、セラミックス等から
なる基材の表面及び細孔の内表面に、Si、Ti、Al
等の元素、又はそれらの酸化物、窒化物などからなる中
間層を設ける。そして、この中間層の表面に、カルシウ
ムを含む塩、リンを含む化合物、及びカルシウムイオン
とリンイオンの少なくとも一方に配位するキレート化
剤、或いはリンを含むキレート化剤とカルシウムを含む
塩、又はカルシウムを含むキレート化合物とリンを含む
キレート化合物、又はカルシウム及びリンのアルコキシ
ド等を用いて、水溶液又はゾルを調製し、必要に応じて
熱処理し、焼成することにより、基材と中間層とリン酸
カルシウム系セラミックス層とからなる多孔質複合体を
得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の細孔を有す
る基材の表面、及び細孔の内表面に、金属元素又はそれ
らの酸化物、窒化物等からなる薄層を設け、更にその表
面にリン酸カルシウム系の被膜を設けたリン酸カルシウ
ム系多孔質複合体及びその製造方法に関する。本発明の
多孔質複合体は、特に、上記基材が金属、セラミックス
等からなる生体内硬組織代替部材である場合に有用であ
り、優れた強度と生体活性とを併せ有する人工骨、人工
歯根、人工関節等を得ることができる。
【0002】
【従来の技術】リン酸カルシウム化合物は生体活性に優
れ、その焼結体は生体の骨と化学的に結合、又は骨に置
換される材料であることが知られている。しかし、生体
内硬組織代替材料としては、その強度、靱性、耐摩耗性
等が十分ではない。一方、アルミナ、ジルコニア、チタ
ン、ステンレス鋼等、セラミックス或いは金属材料も生
体内硬組織代替部材として使用されている。これらは強
度等は優れるものの、生体不活性である。そのため、チ
タン等からなる生体内硬組織代替部材の表面に、リン酸
カルシウム系の被膜が形成された、強度、生体活性とも
に優れた生体内硬組織代替部材が開発されている。
【0003】しかし、現在使用されている上記の高強度
の素材は、強度を高めるため、金属基材では所要の添加
剤、セラミックスでは特定の焼結助剤が配合されてい
る。そして、これらの添加剤、焼結助剤には、クロム、
バナジウムなどの生体に対して毒性を有するものが含ま
れている場合も多い。また、この金属基材等の表面に設
けられたアパタイト、第三リン酸カルシウム等からなる
被膜は、生体内で徐々に溶解し、剥離してしまうことも
知られている。そのため、長期にわたって埋植される生
体内硬組織代替部材では、被膜がすべて剥離してしまっ
て、金属基材等が生体内に溶出し、炎症を起こすことが
ある。一方、ステンレス鋼等では、基材が体液によって
腐食されてしまうという問題もある。
【0004】上記のように、金属、セラミックス等から
なる基材の表面に、リン酸カルシウム系の被膜を形成す
る方法としては、プラズマ溶射法、ガラス融着法及びゾ
ルゲル法により得られるスラリーを、基材に塗布し、焼
成する方法等が挙げられる。しかし、プラズマ溶射法で
は、高温で操作されるため、基材及び被膜の劣化、分解
等を生ずることがある。一方、ゾルゲル法でも、スラリ
ーを塗布した後の焼成工程において、基材表面の酸化劣
化を生ずる等、それぞれ問題がある。
【0005】尚、特開平6−154257号公報には、
チタン合金等からなる基材層の表面に、例えばチタンの
粗い粒子と微細な粒子とを交互にプラズマ溶射するなど
して、150〜350μmの径の気孔を含む凹凸被膜を
形成し、この気孔内面に、生体活性物質としてバイオガ
ラスをコーティングしたインプラント部材が開示されて
いる。そして、この凹凸被膜は、プラズマ溶射時に完全
に融解するチタンの微細粒子が接着剤として作用し、被
膜が外力によって脱落するのが防止されるとしている。
【0006】しかし、特に基材層と被膜を構成する材料
が異なる場合など、また、たとえ同一或いは類似の材料
であっても、基材そのものが細孔を有する場合と比べれ
ば、強度的に不十分であることは否めない。基材そのも
のが細孔を有する場合、細孔部分のみが剥がれてしまう
などということはないが、上記公報に記載のインプラン
ト部材では、より小さい外力によってこれら基材層と凹
凸被膜との間で剥離してしまうことがあり得る。また、
凹凸被膜の形成は上記のような複雑な方法を必要とし、
製造方法の点においても不利である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するものであり、基材とリン酸カルシウム系セラ
ミックス層(以下、CP系セラミックス層という。)と
の間に、緻密で、腐食され難く、且つ生体に溶出せず、
毒性のない中間層を設けることを特徴とする。それによ
って、CP系セラミックス層が剥離し難く、また、チタ
ンのように表面に酸化物、窒化物等が生成し易い金属基
材であっても、劣化することがない。更に、CP系セラ
ミックス層が剥離した場合も、基材中の有害成分の溶
出、基材の腐食等を生ずることがない。本発明は、この
ような種々の特性を備えたリン酸カルシウム系多孔質複
合体及びその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1発明のリン酸カルシ
ウム系多孔質複合体は、細孔を有する基材、該基材の表
面及び該細孔の内表面に設けられた中間層、並びに該中
間層の表面に設けられたCP系セラミックス層からな
り、上記細孔の直径は10μm〜1mmであり、上記基
材の表面における上記中間層及び上記CP系セラミック
ス層の厚さは、それぞれ0.05〜5μmであり、上記
細孔の内表面における上記中間層及び上記CP系セラミ
ックス層の厚さは、それぞれ0.05μm以上であるこ
とを特徴とする。
【0009】尚、細孔の直径は、この種の多孔質体の細
孔径測定の常法である水銀圧入法等によって特定するこ
とができる。また、中間層及びCP系セラミックス層の
厚さは、複合体の破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)
によって観察して測定することができる。更に、この厚
さは、これら各層を気相法によって形成する場合は、堆
積速度から算出することもできる。
【0010】上記「細孔を有する基材」としては、各種
の金属基材又はセラミックス等を使用することができ
る。金属基材としては、チタン、チタン合金、ステンレ
ス鋼等からなる基材が挙げられる。セラミックスとして
は、アルミナ、ジルコニア等を用いることができる。こ
の基材は、第3発明のように、予め人口骨、人口歯根、
人口関節等、所定の形状に成形された「生体内硬組織代
替部材」であることが好ましい。また、生体内硬組織代
替部材の場合、金属としては、生体に対する毒性がな
く、且つ耐腐食性に優れるチタン及びチタン合金が好ま
しい。
【0011】上記「中間層」は、第2発明のように、
「Si、Ti、Al、Ge、Mg、Zr、W及びTa」
のうちの少なくとも1種の元素によって形成することが
できる。また、これら元素の、「酸化物、複合酸化物、
窒化物、酸窒化物、炭窒化物、炭化物及び硼化物」のう
ちの少なくとも1種によって構成することもできる。こ
れらの元素のうち、Siは骨形成を促進する作用がある
と考えられるため好ましい。更に、Al、Zr及びTa
の酸化物は非常に安定であって、複合体を生体内硬組織
代替部材等として使用する場合に、変質等の恐れがない
ため好ましい。
【0012】基材の表面及び細孔の内表面における中間
層の厚さが0.05μm未満では、上記「CP系セラミ
ックス層」の剥離を確実に防止することができない。ま
た、CP系セラミックス層が剥離した場合に、基材の有
害成分等の溶出を十分に防止することができない。更
に、CP系セラミックス層の厚さが0.05μm未満で
は、優れた生体活性が長期に渡って維持されない。尚、
基材の表面における中間層及びCP系セラミックス層の
厚さは5μm、更には3μmであれば十分に所要の効果
が奏され、それ以上厚くする必要はない。
【0013】上記の中間層及びCP系セラミックス層の
厚さは、いずれも特に0.1μm以上、更には0.5μ
m以上とすることが好ましい。各層が、これ以上の厚さ
であれば、CP系セラミックス層の剥離が抑えられ、ま
た、CP系セラミックス層が剥離した場合にも、基材成
分の溶出が十分に防止される。更に、CP系セラミック
ス層による生体活性の効果も長期に渡って維持される。
しかも、チタンなどの酸化等され易い基材の、酸化、窒
化等も十分に抑えられる。
【0014】基材の上記「細孔」は外部へ連通している
必要がある。そして、その直径が10μm未満では、有
効な厚さの中間層及びCP系セラミックス層を形成した
場合に、CP系セラミックス層によって細孔内に形成さ
れる小孔の径が過少となって、新生生体組織の侵入が難
しくなる。細孔の直径が1mmを越えると、小孔内に侵
入し、固着した新生生体組織が脱落し易くなる。細孔の
直径は20〜500μm、特に50〜300μm程度が
好ましい。細孔の直径がこの範囲であれば、相対的に薄
層である中間層及びCP系セラミックス層の厚さによら
ず、新生生体組織の形成に適した径を有する小孔が形成
される。
【0015】尚、細孔内において、CP系セラミックス
層によって、その表面が形成された小孔の直径が数μm
未満である場合は、新生生体組織の小孔内への侵入が困
難となる。この小孔の直径は、細孔の直径と細孔内の中
間層及びCP系セラミックス層の厚さとを考慮しつつ、
20〜500μm、特に50〜300μm程度とするこ
とが好ましい。小孔の直径がこの範囲であれば、新生生
体組織は小孔の内部に容易に侵入することができ、小孔
内の生体活性の高いCP系セラミックス層に強固に固着
され、容易に脱落することがない。
【0016】第4発明のリン酸カルシウム系多孔質複合
体の製造方法は、細孔を有する基材の表面及び該細孔の
内表面に中間層を形成し、その後、該中間層の表面にリ
ン酸カルシウム系セラミックス層を形成して、リン酸カ
ルシウム系多孔質複合体を製造する方法であって、上記
リン酸カルシウム系セラミックス層は、カルシウムを含
む塩、リンを含む化合物、及びカルシウムイオンとリン
イオンのうちの少なくとも一方に配位可能なキレート化
剤を溶媒に溶解し、溶液を調製する工程、該溶液を上記
中間層の表面に塗布する工程、及びその後の焼成工程を
もって形成されることを特徴とする。
【0017】この中間層は、第8発明のように、Zr
(OC4 9 4 等の化合物を適宜の溶媒、この場合は
ブタノールに溶解して溶液とし、この溶液中に基材を浸
漬し、取り出した後、乾燥し、酸化雰囲気下、500〜
800℃の温度で焼成して酸化物とするゾル−ゲル法に
よって形成することができる。また、CVD法及び基材
そのものを酸化物等とする方法によって形成することも
できる。CVD法では、例えばSi(OC2 5 4
を昇華させ、300〜500℃程度に調温されたチャン
バ内に基材を置き、酸素ガスを流通させて、基材の表面
及び細孔内表面に上記の化合物等を堆積させて中間層を
形成する。
【0018】更に、基材そのものに中間層を形成する上
記元素が含まれる場合には、基材を酸化雰囲気、窒素雰
囲気等において加熱し、上記元素の酸化物層又は窒化物
層等として中間層を形成する。尚、この中間層は、操作
上、やや難しい面もあるが、スパッタ法によって形成す
ることもできる。スパッタ法では、例えばW等のターゲ
ットをスパッタし、300〜500℃程度の加熱した基
材の表面及び細孔内表面に堆積させ、必要に応じて酸素
ガスを吹き付けて酸化物とすることにより中間層を形成
する。
【0019】また、第5、第6及び第7発明は、それぞ
れCP系セラミックス層を形成するための原料が第4発
明とは異なっている。第5発明では、(1) リンを含むキ
レート化剤(カルシウムイオンとリンイオンのうちの少
なくとも一方に配位可能な化合物)とカルシウムを含む
塩、(2) カルシウムを含むキレート化合物(キレート化
剤がカルシウムに配位して生成する化合物)とリンを含
むキレート化合物若しくはそれらの無機塩、(3) カルシ
ウムを含むキレート化合物若しくはその無機塩とリンを
含む化合物、及び(4) リンを含むキレート化合物若しく
はその無機塩とカルシウムを含む塩、のうちのいずれか
を使用する。また、第6及び第7発明では、カルシウム
を含む塩又はカルシウムを含むアルコキシドと、リンを
含むアルコキシドを用いる。尚、第6発明では溶液を、
第7発明ではゾルを調製する。
【0020】上記「カルシウムを含む塩」としては、下
記の各種の無機塩及び有機塩を使用することができる。
無機塩としては、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、
塩素酸塩、亜塩素酸塩、亜硝酸塩及び亜硫酸塩等が挙げ
られる。また、有機塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、
乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、イソ酪酸
塩及びマレイン酸塩等を用いることができる。更に、上
記「リンを含む化合物」としては、塩及びエステル等が
挙げられ、塩としては、上記のカルシウムの場合と同様
の各種塩を使用することができる。尚、カルシウムを含
む塩、リンを含む塩、いずれの場合も炭酸塩、硫酸塩等
の水などの溶媒に溶け難い塩ではキレート化反応が遅
く、好ましくない。
【0021】また、チタン等からなる酸化され易い中間
層の場合は、カルシウムを含む塩として、非酸化性の塩
を用いることが好ましい。この非酸化性の塩としては、
上記の各種塩のうち、硝酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、
亜硝酸塩及び亜硫酸塩等の酸化性の塩を除いたものなど
が挙げられる。リンを含む化合物として塩を使用する場
合も、同様に上記の酸化性の塩以外のものを使用するこ
とが好ましい。尚、これら酸化性の塩の中でも、硝酸塩
類を使用した場合はより酸化を生じ易く好ましくない。
ここで非酸化性とは、中間層の酸化劣化を促進させる作
用を有さないとの意味である。例えば、チタンなどは、
NOx、オゾン等によって酸化され易く、そのような酸
化剤を生成するような塩は使用しないほうがよい。
【0022】上記「キレート化剤」としては、「カルシ
ウムイオンとリンイオンのうちの少なくも一方に配位可
能」なものを使用することができる。例えば、ジメチル
グリオキシム、ジチゾン、オキシン、アセチルアセト
ン、グリシン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及
びニトリロ三酢酸等が挙げられる。これらのキレート化
剤の中では、溶解度が高く、反応性に優れるEDTAが
好ましい。
【0023】CP系セラミックス層を形成するための原
料として、第5発明において使用する上記「リンを含む
キレート化剤」としては、例えば1−ヒドロキシエタン
−1,1−ビスホスホン酸、メチレンジホスホン酸、メ
チルホスホン酸、プロパン−1,2−ジホスホン酸、ニ
トリロ−トリ−(メチレンホスホン酸)、ブタン−1,
4−ジホスホン酸、N−(カルボキシメチル)イミノビ
ス−(メチルホスホン酸)及びN−エチルイミノビス−
(メチルホスホン酸)等のホスホン酸類が挙げられる。
【0024】更に、ホスホノメチルイミノジ酢酸、N−
2−ホスホノエチルイミノジ酢酸、リン酸−1−グルコ
ース、リン酸水素フルクトース及びリン酸−1−グリセ
ロール等を用いることもできる。この他、2以上のリン
原子を含む複合リン化合物なども、リンを含むキレート
化剤であれば、いずれも使用することができる。また、
第5発明では、各種の「カルシウムを含むキレート化合
物」及び「リンを含むキレート化合物」を使用すること
ができる。更に、それらキレート化合物のアルカリ金属
塩、アルカリ土類金属塩などの「無機塩」を用いること
もでき、特に限定はされない。尚、カルシウムを含む塩
及びリンを含む化合物としては、第4発明において記載
したものを同様に使用することができる。
【0025】CP系セラミックス層を形成するための原
料として、第6及び第7発明において使用する上記「カ
ルシウムアルコキシド」としては、例えば、カルシウム
メトキシド、カルシウムエトキシド等、低級のアルコキ
シドを使用することができる。このカルシウムアルコキ
シドを使用した場合も、カルシウムを含む塩の場合とま
ったく同様の操作によって容易にリン酸カルシウム系セ
ラミックスを製造することができる。しかし、カルシウ
ムを含む塩では、濃度をより高くして操作しても何ら問
題がないため、アルコキシドよりも塩の使用がより好ま
しい。
【0026】上記「リンを含むアルコキシド」として
は、例えば、リン酸メトキシド、リン酸エトキシド、リ
ン酸プロポキシド及びリン酸ブトキシド等、低級のアル
コキシドを用いることができる。この第6発明の混合系
では、リンを含むアルコキシドの反応性が低く、通常の
条件ではリンとカルシウムとが反応して沈殿を生ずるこ
とはないため、均一な溶液とすることができる。一方、
第7発明では、これらアルコキシドを水に添加し、加水
分解させて「ゾル」を調製する。
【0027】第4〜6発明において、上記「溶媒」とし
ては、各成分が容易に溶解するものを用いることができ
る。例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げら
れ、特にアルコール類が好ましい。これら有機溶媒は表
面張力が小さく、中間層に対して濡れ易い。そのため、
中間層に塗布した場合に、特に、その表面の凹凸が激し
い場合であっても、均一な厚さのCP系セラミックス層
が形成される。また、一般に沸点が低く、中間層に塗布
した後、加熱、乾燥することにより、容易に気化し、除
去することができる。
【0028】溶媒としては水を使用することもできる。
水の場合も同様に容易にキレート化し、安定なキレート
化合物が生成する。また、キレート化合物は有機溶媒の
場合と同様に速やかに溶解する。しかし、水は上述の有
機溶媒に比べて一般に中間層に対して濡れ難く、塗布し
た場合に、特に角部などでCP系セラミックス層が厚く
なったり、不均一となったりすることがある。また、比
較的沸点が高いため、乾燥、除去に、より高温、長時間
の加熱を要する。尚、EDTAなどの有機溶媒に溶け難
いものを使用する場合は、水を使用することになる。
【0029】上記「溶液」は、溶媒に各成分を溶解して
調製されるが、各成分の添加順序は特に限定はされな
い。どのような添加順序であっても、容易にキレート化
合物が生成し、又はキレート化合物は速やかに溶解し、
カルシウム分等の沈殿はまったくなく、均質、透明な溶
液となる。この溶液を中間層に塗布して製膜し、必要に
応じて乾燥、熱処理をした後、焼成することにより、C
P系セラミックス層を形成することができる。
【0030】溶液又はゾル中のカルシウムとリンとの原
子比(Ca/P)は、1.4〜1.75とすることが好
ましい。原子比をこの範囲として、600〜1300℃
の温度範囲で焼成する。これにより、水酸アパタイト相
(HAp:Ca/P=1.67)が得られ、またリンの
量比が高い場合は、第三リン酸カルシウム相(TCP:
Ca/P=1.5)が生成する。このカルシウムとリン
との原子比は、出発原料のCa/P比によって容易に制
御することができ、HApとTCPとの混合相とするこ
ともできる。
【0031】また、溶液又はゾル中のカルシウムとリン
との合計モル濃度は、0.25モル/リットル未満とす
ることが好ましい。このモル濃度が0.25モル/リッ
トルを越えると、溶液の場合、調製時には透明な溶液が
得られるものの、濃縮した場合に、結晶が析出したり、
表面が白濁したりすることがある。これは焼成工程にお
ける不純物相生成の原因となるため好ましくない。この
ような現象は上記のモル濃度が0.25モル未満であれ
ば生ずることはない。本発明では、このカルシウムとリ
ンとの合計モル濃度は、さらに低濃度、例えば実施例に
あるように0.05モル/リットル程度であってもよ
い。
【0032】尚、第5発明では、リンを含むキレート化
剤、カルシウムを含むキレート化合物及びリンを含むキ
レート化合物を使用しており、カルシウムとリンとの組
成比の制御が極めて容易である。そして、溶液から、溶
媒及びキレート化剤等に含まれる有機分を除去して得ら
れるリン酸カルシウム化合物は、均質性に優れ、且つ高
純度である。また、通常使用されているキレート化剤、
例えばEDTAなどに比べて有機分が少なく、比較的低
温、短時間で除去することができるため、中間層がチタ
ンなどである場合にも、酸化され難く好ましい。
【0033】更に、上記のキレート化剤及びキレート化
合物には、そのものにリン酸カルシウム化合物を構成す
る元素が含まれており、この点においても有利である。
また、操作性にも優れ、特殊な装置、操作等を要するこ
ともなく、不純物層のない均質なCP系セラミックス層
を容易に形成することができる。
【0034】尚、EDTA等の従来より使用されている
キレート化剤を使用する場合、上記溶液のpHを4以上
に保持することが好ましい。pHが4以上であれば、安
定な溶液状態が維持される。しかし、pHが4未満にな
ると溶液から結晶が析出することがある。この析出する
結晶はEDTA等であるが、pHが低い場合は、錯体の
安定度が低下するため析出するものと考えられる。溶液
のpHは、アルカリ性側へはアンモニア水、酸性側へは
塩酸を加えることにより、容易に調整することができ
る。
【0035】中間層に対する溶液又はゾルの「塗布」
は、流延、噴霧、浸漬、スピニング等の通常の方法によ
って実施することができる。尚、得られる溶液をそのま
ま塗布してもよいが、数倍、例えば5〜15倍程度に濃
縮した後、塗布することもできる。このように濃縮した
場合は、CP系セラミックス層が厚くなり、また緻密に
なるため好ましい。この濃縮は、100〜150℃で加
熱、又は40〜90℃で加熱しながら減圧し、溶媒を徐
々に除去することにより行うことができる。このように
して濃縮すれば、溶液に沈殿を生ずることはなく、粘度
は上昇してやや粘稠とはなるものの、透明な溶液が得ら
れる。
【0036】上記「焼成」の条件は第8発明に記載の
「熱処理」の有無によって適宜設定する。熱処理工程を
別途設けない場合は、有機分を除くためもあって、空気
等、酸化雰囲気下に、600〜1300℃、特に700
〜1000℃の温度で、30分間から2時間程度焼成す
る必要がある。この方法では、酸化雰囲気下、高温に晒
されるため、中間層が酸化等を受け易く、劣化によって
初期の機能を果たすことができなくなることもあり、そ
のような場合、この方法は適用することができない。
尚、特に熱処理をしない場合は、焼成の前に、適宜条件
で塗膜を乾燥し、予め溶媒を除去しておいてもよい。
【0037】熱処理を施した場合は、焼成は酸化雰囲気
である必要がないため、中性又は還元性雰囲気下に実施
する。中性雰囲気とは、アルゴン等、不活性ガス雰囲
気、窒素ガス雰囲気及び高真空雰囲気などである。ま
た、還元性雰囲気とは、この中性雰囲気中に、通常、2
〜5%程度の水素を混在させた雰囲気である。焼成の温
度は600〜1300℃、特に600〜1000℃の範
囲が好ましい。また、焼成の時間は5〜30分、特に1
0〜20分程度でよく、これによってリン酸カルシウム
化合物を十分に焼結させることができる。
【0038】第8発明の熱処理は、中間層に溶液又はゾ
ルを塗布した後、焼成に先立って、酸化雰囲気下、加熱
して実施する。この熱処理は、昇温過程の早い段階で溶
媒を除去し、その後、キレート化合物等を含む残分か
ら、炭素等の有機分を除いて、リン酸カルシウム化合物
を生成させる工程である。酸化雰囲気とは、通常、空気
雰囲気である。
【0039】また、熱処理の温度は、基材及び中間層を
構成する素材の耐熱性等を考慮し、適宜設定すればよ
い。通常は250〜550℃、特に450〜550℃の
範囲とすることが好ましい。処理温度が250℃未満で
は、有機分を十分に除去できないことがあり好ましくな
い。中間層の劣化等が問題とならなければ、上記の上限
を越えて高温において熱処理することもできる。しか
し、有機分は上記の温度の上限の範囲内で十分に除くこ
とができ、上限を越えて高温とする必要はない。
【0040】尚、上記の熱処理において、昇温速度を7
℃/分未満、特に5℃/分以下とすることが好ましい。
昇温速度をこのような範囲とすることは、特に有機分が
除去される温度範囲において重要である。有機分の燃焼
除去の工程における昇温速度が7℃/分以上である場合
は、CP系セラミックス層に発泡の痕跡が認められ、1
0℃/分以上であると、中間層表面に部分的に被覆され
ていない箇所を生ずることがある。昇温速度を5℃/分
以下とすれば、平滑で、且つ緻密なCP系セラミックス
層とすることができる。
【0041】リン酸カルシウム化合物を含む溶液又はゾ
ルを塗布してCP系セラミックス層を形成する場合、通
常、一度の塗布では、数百nm程度の薄膜しか得られな
い。しかし、生体硬組織代替部材の用途では、このよう
な薄膜では、新生生体組織が構成される前にCP系セラ
ミックス層がすべて溶けてしまう可能性がある。この場
合、溶液又はゾルの塗布及び熱処理の操作を数回繰り返
し、その後、焼成を実施することにより、所定厚さのC
P系セラミックス層とすることができる。また、濃縮溶
液を使用すれば、塗布及び熱処理の繰り返し回数を減ら
すことができ、実用上、特に効果が大きい。
【0042】チタン、チタン合金、ステンレス鋼等の金
属、又はアルミナ、ジルコニア等のセラミックスなどか
らなる生体硬組織代替部材は、強度が大きく、毒性もな
いが、生体活性に乏しい。一方、リン酸カルシウム系化
合物からなる生体硬組織代替部材は、強度は小さいが、
生体活性に優れる。従って、上記のようなCP系セラミ
ックス層を形成すれば、強度、生体活性ともに優れた生
体硬組織代替部材が得られる。本発明の方法では、特に
リンを含むキレート化剤、カルシウム又はリンを含むキ
レート化合物等を用いて、均質且つ安定な溶液などを得
ることができる。そのため、均一な厚さのCP系セラミ
ックス層を容易に形成することができ、優れた性能の生
体硬組織代替部材を得ることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を詳
しく説明する。 実施例1 (1) 中間層の形成 細孔(直径;50〜500μm)を有するステンレス鋼
の平板からなる基材を、シリコンのアルコキシドを加水
分解して調製した水溶液に浸漬し、取り出した後、乾燥
し、700℃で焼成してシリカからなる中間層(厚さ;
0.1μm)を形成した。
【0044】(2) CP系セラミックス層の形成 蒸留水1リットル中に、硝酸カルシウムを3.125×
10-2モル溶解した溶液に、EDTAのアンモニウム塩
を等モル量添加し、30分間攪拌し反応させた。この反
応溶液にリン酸アンモニウムを1.875×10-2モル
加え(カルシウムとリンとの合計モル濃度;0.05モ
ル/リットル)、透明溶液となるまで更に攪拌した。そ
の後、120℃に加熱して溶媒を徐々に除去し、10倍
に濃縮した後、pHを4.0に調整した。この濃縮溶液
中に、上記の中間層を設けた基材を浸漬し、取り出した
後、空気雰囲気下、昇温速度5℃/分で500℃まで昇
温して熱処理した。この製膜と熱処理とを繰り返し行っ
て所定厚さとした後、アルゴン雰囲気下、600〜11
00℃で10分間焼成してCP系セラミックス層(厚
さ;1μm)を形成した。
【0045】(3) 形成されたCP系セラミックス層の評
価 形成されたCP系セラミックス層をSEMによって観察
したところ、焼成温度の高低にかかわりなく、クラック
等は認められず、中間層との剥離もなく、その表面は平
滑であった。また、CP系セラミックス層により表面が
形成された直径約50〜500μmの多数の小孔が観察
された。尚、図1は、800℃で焼成した場合のCP系
セラミックス層のX線回折の結果である。それによれば
結晶相は分解生成物、基材及び中間層との反応生成物等
の不純物相のないHAp単相であることが分った。更
に、ビッカース圧子埋入試験を行ったが、CP系セラミ
ックス層の剥離は認められず、密着性は良好であった。
【0046】実施例2 基材を細孔(直径;20〜300μm)を有するチタン
の平板とし、焼成温度を800℃とした他は、実施例1
と同様にして中間層(厚さ;0.1μm)を形成し、同
様にして中間層の表面にCP系セラミックス層(厚さ;
1μm)を形成した。形成されたCP系セラミックス層
をSEMによって観察したところ、クラック等は認めら
れず、中間層との剥離もなく、その表面は平滑であっ
た。また、CP系セラミックス層により表面が形成され
た直径約20〜300μmの多数の小孔が観察された。
更に、このCP系セラミックス層の結晶相は分解生成
物、基材及び中間層との反応生成物等の不純物相のない
HAp単相であることがX線回折により確認された。
尚、ビッカース圧子埋入試験を行ったが、CP系セラミ
ックス層の剥離は認められず、密着性は良好であった。
【0047】実施例3 基材を実施例2の場合と同じチタンの平板とし、この基
材を、窒素雰囲気下、500℃で30分間加熱して表面
及び細孔内表面に窒化チタンからなる中間層(厚さ;
0.2μm)を形成した。また、硝酸カルシウムに代え
て塩化カルシウムを用い、焼成温度を800℃とした他
は、実施例1と同様にして中間層の表面にCP系セラミ
ックス層(厚さ;1μm)を形成した。形成されたCP
系セラミックス層をSEMによって観察したところ、ク
ラック等は認められず、中間層との剥離もなく、その表
面は平滑であった。また、CP系セラミックス層により
表面が形成された直径約20〜300μmの多数の小孔
が観察された。更に、このCP系セラミックス層の結晶
相は分解生成物、基材及び中間層との反応生成物等の不
純物相のないHAp単相であることがX線回折により確
認された。尚、ビッカース圧子埋入試験を行ったが、C
P系セラミックス層の剥離は認められず、密着性は良好
であった。
【0048】実施例4 (1) 中間層の形成 細孔(直径;100〜700μm)を有するコバルト−
クロム合金の平板からなる基材を用い、MO−CVD法
によって、その条件を適宜調整して製膜し、700℃で
60分間熱処理して、酸化ジルコニウムからなる中間層
(厚さ;0.5μm)を形成した。
【0049】(2) CP系セラミックス層の形成 蒸留水1リットル中に、塩化カルシウムを3.125×
10-2モル溶解した溶液に、EDTAのアンモニウム塩
を等モル量添加し、30分間攪拌し反応させた。この反
応溶液にリン酸アンモニウムを2.00×10-2モル加
え、透明溶液となるまで更に攪拌した。その後、120
℃に加熱して溶媒を徐々に除去し、10倍に濃縮した
後、pHを4.0に調整した。この濃縮溶液中に、上記
の中間層を設けた基材を浸漬し、取り出した後、空気雰
囲気下、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温して熱処
理した。この浸漬と熱処理とを繰り返し行って所定厚さ
とした後、アルゴン雰囲気下、800℃で10分間焼成
してCP系セラミックス層(厚さ;1μm)を形成し
た。
【0050】(3) 形成されたCP系セラミックス層の評
価 形成されたCP系セラミックス層をSEMによって観察
したところ、クラック等は認められず、中間層との剥離
もなく、その表面は平滑であった。また、CP系セラミ
ックス層により表面が形成された直径約100〜700
μmの多数の小孔が観察された。更に、このCP系セラ
ミックス層の結晶相は分解生成物、基材及び中間層との
反応生成物等の不純物相のないTCP単相であることが
X線回折により確認された。尚、ビッカース圧子埋入試
験を行ったが、CP系セラミックス層の剥離は認められ
ず、密着性は良好であった。
【0051】実施例5 スパッタ法によって製膜し、500℃、60分の熱処理
をして、タンタルからなる中間層(平均厚さ;0.1μ
m、厚さがやや不均一であったため平均厚さとした。)
を形成した他は、実施例4と同様にして中間層の表面に
CP系セラミックス層(厚さ;1μm)を形成した。形
成されたCP系セラミックス層をSEMによって観察し
たところ、クラック等は認められず、基材との剥離もな
く、その表面は平滑であった。また、CP系セラミック
ス層により表面が形成された直径約100〜700μm
の多数の小孔が観察された。更に、このCP系セラミッ
クス層の結晶相は分解生成物、基材及び中間層との反応
生成物等の不純物相のないTCP単相であることがX線
回折により確認された。尚、ビッカース圧子埋入試験を
行ったが、CP系セラミックス層の剥離は認められず、
密着性は良好であった。尚、このスパッタ法では、タン
タルプラズマの直進性が大きいため、基材をプラズマに
対して種々方向に傾けることにより、細孔内表面へのタ
ンタルの堆積を可能な限り均一なものとした。
【0052】実施例6 基材を細孔(直径;50〜70μm)を有するチタン合
金(Ti6Al4V)の平板とし、CVD法によって製
膜し、650℃、60分の熱処理をして、酸化タングス
テンからなる中間層(厚さ;0.2μm)を形成した他
は、実施例4と同様にして中間層の表面にCP系セラミ
ックス層(厚さ;1μm)を形成した。形成されたCP
系セラミックス層をSEMによって観察したところ、ク
ラック等は認められず、基材との剥離もなく、その表面
は平滑であった。また、CP系セラミックス層により表
面が形成された直径約50〜70μmの多数の小孔が観
察された。更に、このCP系セラミックス層の結晶相は
分解生成物、基材及び中間層との反応生成物等の不純物
相のないTCP単相であることがX線回折により確認さ
れた。尚、ビッカース圧子埋入試験を行ったが、CP系
セラミックス層の剥離は認められず、密着性は良好であ
った。
【0053】実施例7 (1) 中間層の形成 実施例1の場合と同じステンレス鋼の平板からなる基材
を、アルミニウムのアルコキシドを部分加水分解して調
製した水溶液に浸漬し、取り出した後、乾燥し、800
℃で焼成してアルミナからなる中間層(厚さ;0.3μ
m)を形成した。
【0054】(2) CP系セラミックス層の形成 亜リン酸トリエチル0.1モルをエタノールに溶解さ
せ、乾燥雰囲気下、更にカルシウムエトキシドをCa/
Pが1.67となるように0.167モル添加した。そ
の後、このエタノール溶液中に、上記の中間層を設けた
基材を浸漬し、取り出した後、空気雰囲気下、昇温速度
5℃/分で500℃まで昇温して熱処理した。この浸漬
と熱処理とを繰り返し行って所定厚さとした後、アルゴ
ン雰囲気下、600℃で10分間焼成して、CP系セラ
ミックス層(厚さ;1μm)を形成した。
【0055】(3) 形成されたCP系セラミックス層の評
価 形成されたCP系セラミックス層をSEMによって観察
したところ、クラック等は認められず、中間層との剥離
もなく、その表面は平滑であった。また、CP系セラミ
ックス層により表面が形成された直径約50〜70μm
の多数の小孔が観察された。更に、このCP系セラミッ
クス層の結晶相は分解生成物、基材及び中間層との反応
生成物等の不純物相のないHAp単相であることがX線
回折により確認された。尚、ビッカース圧子埋入試験を
行ったが、CP系セラミックス層の剥離は認められず、
密着性は良好であった。
【0056】
【発明の効果】第1発明では、金属、セラミックス等か
らなる細孔を有する基材とCP系セラミックス層との間
に、特定の中間層を設けている。この中間層は、特に、
第2発明の金属元素又はその酸化物、窒化物等からなる
ものが好ましく、緻密で、腐食され難く、且つ生体に溶
出せず、毒性のない中間層が形成される。それによっ
て、基材の酸化、基材中の有害成分の溶出等が防止さ
れ、また、CP系セラミックス層が剥離することもな
い。従って、基材が、第3発明のように、生体内硬組織
代替部材である場合、強度が大きく、生体活性が高く、
且つ長期に渡ってその優れた性能が維持される生体内硬
組織代替部材を得ることができる。
【0057】また、上記のように基材の酸化劣化等が防
止されるため、基材の選択の幅が広がり、また、得られ
る複合体の用途等の制約も少なくなる。更に、リン酸カ
ルシウム系セラミックスと熱膨張係数の異なる基材を使
用する場合など、その熱膨張係数が両者の中間にある材
料からなる中間層とすることにより、基材とCP系セラ
ミックス層との間に発生する応力を緩和することもでき
る。これによってもCP系セラミックス層の剥離が抑え
られる。
【0058】第4〜7発明では、上記のCP系セラミッ
クス層を形成するための原料として、カルシウムを含む
塩、リンを含む塩、及びEDTA等の通常のキレート化
剤の他、リンを含むキレート化剤、カルシウムを含むキ
レート化合物及びリンを含むキレート化合物、又はカル
シウム若しくはリンを含むアルコキシド等を使用してい
る。そのため、これら原料が溶解した均質な水溶液等を
容易に調製することができる。それによって、中間層と
の密着性に優れ、且つ均質なCP系セラミックス層が形
成され、上記の優れた性能の生体内硬組織代替部材等を
容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における、シリカの表面に形成された
HAp相のX線回折の結果を表すチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 28/04 C23C 28/04

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細孔を有する基材、該基材の表面及び該
    細孔の内表面に設けられた中間層、並びに該中間層の表
    面に設けられたリン酸カルシウム系セラミックス層から
    なり、上記細孔の直径は10μm〜1mmであり、上記
    基材の表面における上記中間層及び上記リン酸カルシウ
    ム系セラミックス層の厚さは、それぞれ0.05〜5μ
    mであり、上記細孔の内表面における上記中間層及び上
    記リン酸カルシウム系セラミックス層の厚さは、それぞ
    れ0.05μm以上であることを特徴とするリン酸カル
    シウム系多孔質複合体。
  2. 【請求項2】 上記中間層は、Si、Ti、Al、G
    e、Mg、Zr、W及びTaのうちの少なくとも1種の
    元素、又は該元素の、酸化物、複合酸化物、窒化物、酸
    窒化物、炭窒化物、炭化物及び硼化物のうちの少なくと
    も1種からなる請求項1記載のリン酸カルシウム系多孔
    質複合体。
  3. 【請求項3】 上記基材は、生体内硬組織代替部材であ
    る請求項1又は2記載のリン酸カルシウム系多孔質複合
    体。
  4. 【請求項4】 細孔を有する基材の表面及び該細孔の内
    表面に中間層を形成し、その後、該中間層の表面にリン
    酸カルシウム系セラミックス層を形成して、リン酸カル
    シウム系多孔質複合体を製造する方法であって、上記リ
    ン酸カルシウム系セラミックス層は、カルシウムを含む
    塩、リンを含む化合物、及びカルシウムイオンとリンイ
    オンのうちの少なくとも一方に配位可能なキレート化剤
    を溶媒に溶解し、溶液を調製する工程、該溶液を上記中
    間層の表面に塗布する工程、及びその後の焼成工程をも
    って形成されることを特徴とするリン酸カルシウム系多
    孔質複合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 細孔を有する基材の表面及び該細孔の内
    表面に中間層を形成し、その後、該中間層の表面にリン
    酸カルシウム系セラミックス層を形成して、リン酸カル
    シウム系多孔質複合体を製造する方法であって、上記リ
    ン酸カルシウム系セラミックス層は、(1) リンを含むキ
    レート化剤とカルシウムを含む塩、(2) カルシウムを含
    むキレート化合物とリンを含むキレート化合物若しくは
    それらの無機塩、(3) カルシウムを含むキレート化合物
    若しくはその無機塩とリンを含む化合物、及び(4) リン
    を含むキレート化合物若しくはその無機塩とカルシウム
    を含む塩、のうちのいずれかを溶媒に溶解し、溶液を調
    製する工程、該溶液を上記中間層の表面に塗布する工
    程、及びその後の焼成工程をもって形成されることを特
    徴とするリン酸カルシウム系多孔質複合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 細孔を有する基材の表面及び該細孔の内
    表面に中間層を形成し、その後、該中間層の表面にリン
    酸カルシウム系セラミックス層を形成して、リン酸カル
    シウム系多孔質複合体を製造する方法であって、上記リ
    ン酸カルシウム系セラミックス層は、カルシウムを含む
    アルコキシド又はカルシウムを含む塩と、リンを含むア
    ルコキシドと、を溶媒に溶解し、溶液を調製する工程、
    該溶液を上記中間層の表面に塗布する工程、及びその後
    の焼成工程をもって形成されることを特徴とするリン酸
    カルシウム系多孔質複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 細孔を有する基材の表面及び該細孔の内
    表面に中間層を形成し、その後、該中間層の表面にリン
    酸カルシウム系セラミックス層を形成して、リン酸カル
    シウム系多孔質複合体を製造する方法であって、上記リ
    ン酸カルシウム系セラミックス層は、水に、カルシウム
    を含むアルコキシド又はカルシウムを含む塩と、リンを
    含むアルコキシドと、を添加し、加水分解させながらゾ
    ルを調製する工程、該ゾルを上記中間層の表面に塗布す
    る工程、及びその後の焼成工程をもって形成されること
    を特徴とするリン酸カルシウム系多孔質複合体の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 上記中間層は、(1) Si、Ti、Al、
    Ge、Mg、Zr、W及びTaのうちの少なくとも1種
    の元素を含む化合物を含有する溶液に、上記基材を浸漬
    し、該基材を該溶液から取り出した後、乾燥し、焼成す
    る方法、(2)上記元素又は上記化合物を用いた化学的蒸
    着法、及び(3) 上記基材を酸化雰囲気又は窒素雰囲気に
    おいて加熱し、該元素の酸化物層又は窒化物層を形成す
    る方法、のうちの一つの方法によって形成される請求項
    4乃至7のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム系多
    孔質複合体の製造方法。
  9. 【請求項9】 上記焼成工程の前に熱処理工程を設けた
    請求項4乃至8のいずれか1項に記載のリン酸カルシウ
    ム系多孔質複合体の製造方法。
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