JPH10127796A - 建築構造物の避難用ハッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 建築構造物の避難用ハッチにおいて、防犯性
能を確保しつつ、緊急時に下蓋を下階から簡単に開放操
作できるようにする。 【解決手段】 ハッチ函体の開口部に上蓋を枢支し、一
対の側板の一端部をハッチ函体の下面開口縁部に揺動自
在に枢支し、該側板には下蓋を枢支する。上蓋と側板と
は左右一対のリンク機構で連結し、側板を上蓋の開放動
作に連動させる一方、側板と下蓋とは下階からロック解
除操作可能なロック機構によってロックし、ロック解除
時に下蓋のみの開放を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はマンションのベラ
ンダや上階フロアに設置される建築構造物の避難用ハッ
チに関し、特に下階からの侵入に対する防犯性能を確保
しつつ、緊急時には下階からハッチを開放できるように
した構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、高層マンション等の建築構造物
では火災発生時等の緊急時に住人等が上階から下階に迅
速に避難し、最終的に安全に屋外に逃げられるようにす
べく、ベランダや上階フロア等に避難用ハッチを設置す
ることが要請されている。

【０００３】通常、かかる避難用ハッチにはハッチ内に
折り畳み式の梯子を内蔵した梯子内蔵方式と、梯子をハ
ッチの下方に延びて固定した梯子固定方式とがあるが、
いずれの場合も耐火区画を形成して火災発生時の延焼を
防止するとともに、通常時にハッチからの人の落下を防
止すべく、ハッチに上蓋を設けて封鎖しておく必要があ
る。

【０００４】また、避難用ハッチを設置する場合、泥棒
等の侵入者が梯子を利用して下階からハッチ直下まで昇
ることができると、上階に簡単に侵入でき、防犯上好ま
しくない。特に、後者の梯子固定方式の場合には梯子が
常に固定されてハッチ下方まで容易に昇ることができる
ので、その対策が必要である。

【０００５】そこで、ハッチに下蓋を設け、上蓋と下蓋
とをリンク機構で連結し、上蓋を開放操作すると下蓋が
連動して開き、緊急時には迅速に避難できる一方、下階
からは下蓋を開放操作できないようにした構造が広く採
用されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、火災発生時
等の緊急時には消防隊員や救助隊員が下階から上階に行
くのに避難用ハッチを利用するしか適当な通路が確保で
きないことがあるが、従来の避難用ハッチでは防犯上、
下階からは下蓋を開けれない構造が採用されているの
で、避難用ハッチの蓋を破るしか方法がなかった。

【０００７】本発明は、かかる問題点に鑑み、防犯性能
を確保しつつ、緊急時には下蓋を簡単に開放操作できる
ようにした建築構造物の避難用ハッチを提供することを
課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明に係る建
築構造物の避難用ハッチは、緊急時に開放されて建築構
造物の上階から下階に避難するために用いられる避難用
ハッチにおいて、上階床面に形成された開口内側面に固
定され、上面及び下面が開口したハッチ函体と、該ハッ
チ函体の上面開口をほぼ封鎖する形状をなし、一方の端
部が上記ハッチ函体の開口部に開閉自在に枢支された上
蓋と、上記ハッチ函体の下面開口縁に沿って相互に対向
して延び、その一端部が上記ハッチ函体の下面開口縁部
に揺動自在に枢支された一対の側板と、上記ハッチ函体
の下面開口をほぼ封鎖する形状をなし、その一方の端部
が上記一対の側板に枢支され、上記ハッチ函体の下面開
口を開閉する下蓋と、上記側板と下蓋とをロック可能で
かつ下階からロック解除操作可能に設けられ、ロック解
除時に上記ハッチ函体の下面開口に対する下蓋のみの開
放を可能とするロック機構と、上記上蓋と上記一対の側
板との間に設けられ、上記上蓋の開放動作に連動して上
記側板を下方に揺動させる左右一対のリンク機構とを備
えたことを特徴とする。

【０００９】ハッチ函体は緊急時に避難者がそこを通っ
て逃げる通路であるので、少なくとも避難者が通れる大
きさであることが前提であるが、その形状は特に限定さ
れず、円形状や多角形状（但し、四角形状、五角形状、
六角形状等が好ましい）を採用できる。

【００１０】このハッチ函体の上階開口への固定方法は
特に限定されないが、避難用ハッチは建築構造物の建築
時に設置されるのが一般的であり、コンクリート建築物
の場合にはコンクリート床面への埋め込みが好ましい。
ここに、上階床面とはベランダの床面や上階の室内床面
をいう。

【００１１】上蓋はその１つの機能が転落防止であるの
で、ハッチ函体の上面開口をほぼ封鎖する形状であれば
よく、しかも全面又は一部を格子状又は網状としてもよ
いが、他の機能である火災発生時の延焼防止を考慮する
と、ハッチ函体の上面開口を完全に封鎖する形状で、し
かも火炎を遮断する１枚の板状とするのが好ましい。

【００１２】この上蓋はハッチ函体の開口上縁部に枢支
してもよく、開口内側面から延びる取付アーム先端に枢
支してもよく、請求の範囲にいう「一方の端部が上記ハ
ッチ函体の開口部に開閉自在に枢支された」とはかかる
枢支方法を全て含む。

【００１３】側板は下蓋とともにハッチ函体の下面開口
を開閉するので、ハッチ函体の開口縁に沿って相互に対
向して延び、その一端部がハッチ函体の下面開口縁部に
揺動自在に枢支されることが重要である。

【００１４】下蓋はその機能が下階からの侵入防止であ
るので、ハッチ函体の上面開口をほぼ封鎖する形状であ
ればよい。この下蓋は上蓋のような転落防止及び延焼防
止という機能を有さないので、その全面又は一部を格子
状又は網状としてもよく、又１枚の板状としてもよい。
下蓋は側板の任意に部位に枢支すればよいが、避難用ハ
ッチにおける広い避難通路を確保する上で側板の枢支部
位近傍、好ましくは側板と共枢支するのがよい。

【００１５】ロック機構は側板と下蓋とを下階から解除
操作可能にロックするものであれば特に構造は限定され
ないが、下記実施形態のように側板と下蓋とに形成され
た両ロック穴に挿通されるロックプレートから構成され
るのがよい。このロック機構は緊急時に消防隊員や救助
隊員によって下階からロックが解除操作される必要があ
る。そこで、消防隊員や救助隊員が携帯するキーハンド
ルのみによってロックが解除されるように構成するのが
好ましい。

【００１６】リンク機構は上蓋の開放動作に連動して側
板を下方に揺動させる機構であれば特に限定されず、下
記実施形態に示されるような機構を採用できる。

【００１７】本発明の特徴は防犯性能を確保しつつ必要
な時に下蓋を開放できるようにした避難用ハッチにあ
る。従って、梯子については特に限定されず、ハッチ函
体内に折り畳み式の梯子を更に内蔵してもよいが、ハッ
チ函体内に梯子を折り畳んて内蔵しておくと、必要な時
に梯子に銹が発生してスムーズに梯子を伸ばせないこと
が懸念されるので、固定式梯子と組み合わせるのが好ま
しい。

【００１８】即ち、ハッチ函体の開口内側面の上方部位
に梯子の上端を固定し、梯子を下蓋とハッチ函体開口縁
との間の隙間を通って下方に延設し、その下方部位を建
築構造物の縦壁面に固定するのが好ましい。

【００１９】

【作用及び発明の効果】本発明によれば、ロック機構を
解除していない場合、上階において上蓋を開くと、リン
ク機構によって側板が下蓋とともに開放されるので、火
災発生時等の緊急時には迅速に避難できる。

【００２０】他方、消防隊員や救助隊員が避難用ハッチ
を通って下階から上階に行く場合、下階からロック機構
のロックを解除操作すると、下蓋が側板から外れて枢支
点の回りに開放できるので、消防隊員や救助隊員は上蓋
を開いて通路を迅速に確保できる。特に、特定のキーハ
ンドルのみによってロック解除操作をできるようにする
と、泥棒等の侵入者にはロックを解除できず、防犯性能
を保証できる。

【００２１】

【発明の実施の形態】以下、本発明を実施形態に基づい
て詳細に説明する。図１ないし図５は本発明の好ましい
実施形態を示す。図１ないし図３に示すように、高層マ
ンション（建築構造物）の上階のベランダ（上階床面）
１０には避難用ハッチ２０が、該避難用ハッチ２０の下
方には梯子３０が下階に向けて延びて設置されている。

【００２２】避難用ハッチ２０において、ベランダ１０
の床面には開口が形成され、該開口にはステンレス鋼製
のハッチ函体２１が嵌め込み固定され、該ハッチ函体２
１は上面及び下面が開口した全体として直方体状をな
し、ハッチ函体２１の上面開口縁には上蓋２２の一端部
が枢支されている。

【００２３】上蓋２２はハッチ函体２１の上面開口を封
鎖しうる四角形状のステンレス鋼板を用いて製作され、
ハッチ函体２１の上面開口を封鎖した時に耐火区画を形
成するようになっている。また、上蓋２２の裏面にはコ
字状の把手２３が固定されている。

【００２４】ハッチ函体２１の下面開口縁には左右一対
のステンレス鋼板製の側板２４、２４が下面開口両側縁
に沿って延び、側板２４、２４の上蓋２２の枢支側に対
して反対側の端部がハッチ函体２１に対して枢支されて
いる。この側板２４、２４には図４に示すようにステン
レス鋼板製の下蓋２５が共枢支さられ、該下蓋２５は図
１に示すようにハッチ函体２１の上蓋２２枢支側の下面
開口縁との間に所定の隙間を残してハッチ函体２１の下
面開口をほぼ覆う四角形状をなしている。

【００２５】また、図４に示すように、側板２４、２４
及び下蓋２５の両側部には両者の重なり合う部位にロッ
ク穴４１、４１が形成され、下蓋２５の裏面には一対の
ロックプレート４２、４２が左右方向にスライド自在に
かつロック穴４１、４１を挿通しうるように支持されて
いる。このロックプレート４２、４２の内方端部には図
５の(a) に示すようにギア部４３、４３が上下に対向し
て形成され、該上下のギア部４３、４３間にはホイール
ギア４４が噛合され、該ホイールギア４４には六角形状
のキー穴４５が形成され、該キー穴４５には消防隊員や
救急隊員が携帯するキーハンドル５０（図５の(b) 参
照）の六角形状の先端キー部５１が下蓋２５の穴を介し
て挿入されてロック・アンロック操作できるようになっ
ており、以上のロック穴４１、ロックプレート４２、ホ
イールギア４４によって側板２４と下蓋２５とをロック
するロック機構４０が構成されている。

【００２６】さらに、上蓋２２の両側部分と側板２４、
２４との間には４本のリンク（但し、上から２本目のリ
ンクは断面Ｌ字状をなして上下のリンクを下方から支え
るようになっている）からなるリンク機構６０、６０が
設けられ、上蓋２２を開放操作した時にこれと連動して
側板２４、２４が下方揺動されるようになっている。な
お、リンク機構６０自体は従来公知のものであるので、
その詳細な説明は省略する。

【００２７】また、ハッチ函体２１の開口内面には上蓋
２２の枢支側上方部位に上記梯子３０の上端部が固定さ
れ、該梯子３０は下蓋２５とハッチ函体２１下面開口縁
との間の隙間を通って下方に延び、下階のベランダ１１
近くまで延びてその下端部が下階の縦壁面に固定されて
いる。

【００２８】通常時には上蓋２２は閉じられ、これと連
動する側板２４、２４も下面開口両側に沿った位置にあ
り、側板２４、２４にロックされた下蓋２５はハッチ函
体２１の下面開口を閉じている。かかる状態において、
侵入者が固定梯子３０を登ってきても下蓋２５が側板２
４、２４にロックされているので、下蓋２５を開けて上
階に侵入することはできない。

【００２９】火災発生時等の緊急時には、上階のベラン
ダ１０において上蓋２２を開くと、リンク機構６０、６
０の作用によって側板２４、２４がその枢支点回りに下
方に揺動されて下蓋２５とともに開放される。従って、
住人は避難用ハッチ及び固定梯子３０を介して下階のベ
ランダ１１に迅速に避難できる。

【００３０】他方、消防隊員や救助隊員が避難用ハッチ
を通って下階ベランダ１１から上階ベランダ１０に行く
場合、下階からキーハンドル５０の先端キー部をホイー
ルギア４４のキー穴４５に差し込み、これを回転させる
とロックプレート４２、４２が内方に没入して側板２
４、２４と下蓋２５とのロックが解除され、下蓋２５が
その自重によって開くので、消防隊員や救助隊員は固定
梯子３０を登って上蓋２２を開いて通路を迅速に確保で
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の避難用ハッチの好ましい実施形態を
示す側面断面構成図である。

【図２】 上記避難用ハッチを示す正面断面構成図であ
る。

【図３】 上記避難用ハッチを示す概略斜視図である。

【図４】 上記避難用ハッチにおけるロック機構及びキ
ーハンドルを示す図である。

【図５】 上記避難用ハッチにおける側板、下蓋及びロ
ック機構の関係を示す斜視図である。

【符号の説明】

１０ 上階ベランダ（上階床面） １１ 下階ベ
ランダ ２０ 避難用ハッチ ２１ ハッチ
函体 ２２ 上蓋 ２４ 側板 ２５ 下蓋 ３０ 固定梯
子 ４０ ロック機構 ４１ ４２ ロックプレート ４３ ギア部 ４４ ホイールギア ４５ キー穴 ５０ キーハンドル ５１ キー部 ６０ リンク機構

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 緊急時に開放されて建築構造物の上階か
   ら下階に避難するために用いられる避難用ハッチにおい
   て、 上階床面に形成された開口内側面に固定され、上面及び
   下面が開口したハッチ函体と、 該ハッチ函体の上面開口をほぼ封鎖する形状をなし、一
   方の端部が上記ハッチ函体の開口部に開閉自在に枢支さ
   れた上蓋と、 上記ハッチ函体の下面開口縁に沿って相互に対向して延
   び、その一端部が上記ハッチ函体の下面開口縁部に揺動
   自在に枢支された一対の側板と、 上記ハッチ函体の下面開口をほぼ封鎖する形状をなし、
   その一方の端部が上記一対の側板に枢支され、上記ハッ
   チ函体の下面開口を開閉する下蓋と、 上記側板と下蓋とをロック可能でかつ下階からロック解
   除操作可能に設けられ、ロック解除時に上記ハッチ函体
   の下面開口に対する下蓋のみの開放を可能とするロック
   機構と、 上記上蓋と上記一対の側板との間に設けられ、上記上蓋
   の開放動作に連動して上記側板を下方に揺動させる左右
   一対のリンク機構とを備えたことを特徴とする建築構造
   物の避難用ハッチ。
2. 【請求項２】 上記ハッチ函体の開口内側面の上方部位
   に梯子の上端が固定され、該梯子が上記下蓋とハッチ函
   体開口縁との間の隙間を通って下方に延び、かつその下
   方部位が建築構造物の縦壁面に固定されている請求項１
   記載の建築構造物の避難用ハッチ。
3. 【請求項３】 上記ロック機構が特定形状のキー部を有
   するキーハンドルの操作のみによってロック解除可能と
   なっている請求項１記載の建築構造物の避難用ハッチ。