JPH10121201A - 耐遅れ破壊性に優れた高強度ばね - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れた高強度ばね

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JPH10121201A
JPH10121201A JP27103096A JP27103096A JPH10121201A JP H10121201 A JPH10121201 A JP H10121201A JP 27103096 A JP27103096 A JP 27103096A JP 27103096 A JP27103096 A JP 27103096A JP H10121201 A JPH10121201 A JP H10121201A
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delayed fracture
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strength spring
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Masaki Shimotsusa
正貴 下津佐
Nobuhiko Ibaraki
信彦 茨木
Takenori Nakayama
武典 中山
Takashi Iwata
多加志 岩田
Hiroshi Kakou
浩 家口
Shigenobu Nanba
茂信 難波
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼入れ焼戻し後の素材硬さでHRC50以上
に高強度化・高応力化しても非常に優れた耐遅れ破壊性
を発揮する高強度ばねを提供する。 【解決手段】 焼入れ焼戻し処理後の硬さがHRC50
以上である焼戻しマルテンサイト組織を有する高強度ば
ねにおいて、オージェ装置のチャンバー内で破壊させ当
該装置で測定された旧オーステナイト粒界のP偏析量を
3.0at%以下に制御するするものであり、鋼成分と
しては、強度及び靭性の観点からC :0.3〜0.7
%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%
を含有すると共に、Ti:0.001〜0.5%及び/
又はNb:0.001〜0.5%を含有することが望ま
しい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用の懸架ば
ねや内燃機関の弁ばね等に使用される高強度ばねに関
し、詳細にはばねの要求特性として重要な耐遅れ破壊性
に優れた高強度ばねに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ばねを製造するにあたっては、JIS
(G 3565〜3567及び4801等) に規定されているばね用鋼
に熱間圧延を施すことにより線材とした圧延材を用い
て、これを所定の線径まで引抜加工しオイルテンパー処
理を行ってからばね加工する方法(冷間成形)を採用す
るか、或いは上記圧延材に引抜加工を施した後に加熱し
てばね成形し次いで焼入焼戻しを行う方法(熱間成形)
等を採用することが一般的である。
【0003】近年では、各種部材の軽量化の要望を背景
にして、ばねに関しても単位重量当りの高応力化が求め
られており、例えば焼入焼戻し後の強度で1800MP
a以上の高強度ばね用鋼が要望されている。但し、ばね
用鋼の強度が高まり硬度が上昇するとばね表面に欠陥が
発生し易くなり、しかも欠陥感受性が高まり周囲からの
悪影響も受け易くなる。特に腐食環境下では、表面欠陥
に起因して表面に腐食ピットが形成されるとこれが応力
集中源となり、更に腐食反応において生成される水素を
吸蔵することにより素材が脆化し易くなり、それに伴い
粒界において遅れ破壊が生じ早期切損を招くという問題
が指摘されていた。
【0004】この様な遅れ破壊を防止する方法として
は、水素による脆化防止を目的として結晶粒を微細化す
ることや、微細な化合物を析出させる等の方法が有効で
あることから、炭窒化物形成元素を添加することが考え
られる。
【0005】しかしながら、炭窒化物形成元素を添加す
ることにより、巨大な介在物が出現し易く、ばねの要求
特性である耐久性を劣化させる傾向があり、また腐食環
境で用いられる懸架ばねにおいては、特性改善に大きな
効果が認められず、ばねの高応力化は期待される程進ん
でいないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、焼入れ焼戻し後の素材硬
さでHRC50以上に高強度化・高応力化しても非常に
優れた耐遅れ破壊性を発揮する高強度ばねを提供しよう
とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明の高強度ばねとは、焼入れ焼戻し処理後の硬さがHR
C50以上である焼戻しマルテンサイト組織を有する高
強度ばねにおいて、オージェ装置のチャンバー内で破壊
させ当該装置で測定された旧オーステナイト粒界のP偏
析量が3.0at%以下であることを要旨とするもので
あり、鋼成分としては、強度及び靭性の観点からC :
0.3〜0.7%、Si:0.1〜3.0%、Mn:
0.1〜2.0%を含有すると共に、Ti:0.001
〜0.5%及び/又はNb:0.001〜0.5%を含
有することが望ましい。
【0008】また耐遅れ破壊性の向上を目的として、V
を1.0%以下添加することが推奨され、或いはTa:
0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以
下よりなる群から選択される1種以上を含有させても良
い。
【0009】更に鋼成分としてCr:5.0%以下を含
有させれば、耐食性の向上に有効である。また、Ni:
3.0%以下、Mo:3.0%以下、Cu:1.0%以
下よりなる群から選択される1種以上を含有させれば、
強度上昇及び耐食性向上に有効である。
【0010】更に、耐へたり性の向上を目的としてAl
を1.0%以下含有させても良く、或いは焼入性の向上
の為にBを50ppm以下の範囲で含有させても良い。
また、強度や耐食性の向上を目的として、Coを5.0
%以下添加しても良く、Wを1.0%以下含有させても
良い。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、腐食環境における
耐久性の向上を目的として、腐食により発生する水素に
対する抵抗力の強い懸架ばね用鋼の研究を鋭意重ねてき
た。その結果、焼入れ焼戻し処理後の素材の硬さがHR
C50以上である焼戻しマルテンサイト組織を有する鋼
の耐遅れ破壊性を向上させるには、Tiなどの炭窒化物
形成元素を含有させることにより微細な炭窒硫化物を分
散して析出させるだけでは十分ではなく、Pの粒界偏析
を積極的に防止して粒界の強度を高めることによっては
じめて実現できることを突き止め、本発明に想到した。
【0012】水素による脆性破壊は腐食反応により発生
した水素が鋼中に侵入して、旧オーステナイト粒界を拡
散することにより、粒界の結合エネルギーを弱めること
が大きな要因である。本発明ではTi等の炭窒化物形成
元素を添加することにより、炭窒化物を微細に析出させ
水素のトラップサイトとして作用させることにより耐遅
れ破壊性の改善を図るものである。但し、本発明では拡
散性水素に対する上記炭窒硫化物のトラップ効果を有効
に発揮させる上で、粒界の強度を高めることが不可欠で
ある。粒界強度を低下させる原因のひとつは、Pの粒界
偏析であると言われており、Pを多く含む鋼の、延性や
靭性が低く、焼戻し脆性を誘発し易いのは、粒界にPが
偏析することに関係があると考えられている。
【0013】しかしながら、従来の方法では必ずしも明
確な相関関係が明らかにされていなかった。その理由
は、従来の方法では、粒界のP含有量を測定するにあた
ってはX線回折で分析することが一般的であって、粒界
に偏析するPのみを測定することは困難であり、結晶粒
内のPまでも測定することに起因するものと考えられ
る。
【0014】そこで本発明者らは、オージェ装置のチャ
ンバー内で焼入焼戻を行った鋼に水素を吸蔵させて破壊
する粒界破壊を行った後、旧オーステナイト粒界のP量
を求めるという方法により定量的に評価し、鋼中のP量
が遅れ破壊に及ぼす影響と、旧オーステナイト粒界(以
下、単に粒界という)のP偏析量が遅れ破壊に及ぼす影
響について調べた。その結果、遅れ破壊感受性は、鋼中
全体のP量とは相関が乏しく、粒界のPの偏析量が遅れ
破壊感受性に本質的に悪影響を及ぼすことを見出した。
図1に、後述する実施例において用いたばね用鋼No.
1,2,3について粒界P偏析量を変化させて遅れ破壊
寿命を調べた結果を示す。
【0015】粒界P偏析量が3.0at%以下にするこ
とにより耐遅れ破壊性を高めることが可能であることが
分かる。粒界P偏析量は2.0at%以下が望ましく、
1.0at%以下であればより望ましい。特に、C量が
多い鋼等であって素材靭性が低い鋼においては、Pの粒
界偏析量が1.0at%以上でその傾向は顕著になる。
尚、破壊形態はいずれも旧オーステナイト粒界における
粒界破壊であった。
【0016】本発明は、Pの粒界偏析量を制御する方法
を限定するものではないが、以下の方法を組み合わせる
ことで達成可能である。Pの粒界偏析量は、成分組成と
共に、結晶粒の大きさによっても左右される。
【0017】鋼中のP量は必ずしも耐遅れ破壊性と相関
しないが、Pの粒界偏析量を少なくする上で全体のP量
を低減しておくことは有効であり、製鋼段階で鋼中のP
量を低減しておくことが推奨される。具体的には製鋼段
階における鋼中のP量を0.030重量%以下とするこ
とが望ましく、0.015重量%以下に制御することが
より望ましい。
【0018】また結晶粒径が小さくなるほど、Pの粒界
偏析量が大きくなっても遅れ破壊をおこしにくく、一方
結晶粒径が大きい場合には、Pの粒界偏析量が少ない場
合でも遅れ破壊が起こり易い。従って、旧オーステナイ
ト結晶粒径は50μm以下であることが望ましく、20
μm以下であればより望ましい。また、焼入温度が高く
なり過ぎると旧オーステナイト結晶粒径が大きくなり、
しかもPの粒界偏析量も大きくなって遅れ破壊を起こし
易くなる。従って焼入温度は1000℃以下のオーステ
ナイト化温度域とすることが望ましい。
【0019】また、熱間圧延時やばね製造時のオーステ
ナイト化温度を1000℃以下にすることで、Pの粒界
偏析は防止できる。また、これによってオーステナイト
結晶粒径が粗大にならず、結果的に粒界強度の低下を防
止することができる。次に、本発明に係る高強度ばね用
鋼における化学成分の限定理由を説明する。
【0020】C:0.3〜0.7% Cは焼入焼戻後の強度(硬さ)を確保するために不可欠
な元素であり、0.3%以上必要であり、0.35%以
上であると好ましい。但し、多量に添加すると焼入れ焼
戻し後の靭性・延性が劣化するのみならず、耐食性にも
悪影響を及ぼすことになるので、上限を0.7%とし
た。0.55%以下が好ましく、0.5%以下であると
より好ましい。
【0021】Si:0.1〜3.0% Siは固溶強化元素であり、少な過ぎるとマトリックス
の強度が不十分になるので、0.1%以上必要であり、
1.0%以上であると好ましい。しかしながら、過剰に
添加すると、焼入れ加熱時に炭化物の溶け込みが不十分
となるので、均一にオーステナイト化させるには高温度
域での加熱が必要になり、結果として、表面に過度の脱
炭が生じてばねの疲労特性が悪くなる。従ってSi添加
量は3.0%以下であることが必要であり、2.5%以
下であると望ましく、2.0%以下であるとより好まし
い。
【0022】Mn:0.05〜2.0% Mnは焼入れ性を向上させる元素であるので、0.05
%以上添加することが必要である。多過ぎると、焼入れ
時に残留オーステナイトが多量に出現して所定の強度及
び硬度を得られなくなるので2.0%を上限とした。更
に、Mnは遅れ破壊を助長する傾向があるので、特にC
やSi等の元素を多く含む場合(高強度・高硬度の場
合)は、1.0%以下とすることが好ましく、0.5%
以下であればより望ましい。
【0023】Ti:0.001〜0.5% Nb:0.001〜0.5% Ti及びNbは、粒内や粒界に超微細な炭窒化物を多量
に析出させる炭窒化物形成元素であり、Pの粒界偏析が
少ない場合には遅れ破壊性に有害な拡散性水素のトラッ
プサイトとして作用することにより、耐遅れ破壊性を格
段に向上させることができる。更に上記炭窒化物によっ
て結晶粒の微細化が図れ、素材の靭性を向上することが
可能であり、しかもばねの耐へたり性を改善できる。こ
のような効果は0.001%以上の添加で認められる
が、より顕著な効果を発揮させるためには、0.005
%以上添加することが望ましい。
【0024】但し、添加量が多過ぎる場合には凝固過程
で粗大な炭窒化物が生成し、粗大な炭窒化物が多量に形
成されると、ばねの疲労特性は著しく劣化する。従っ
て、0.5%以下にすることが必要であり、0.3%以
下とすることが好ましく、0.1%以下であればより望
ましい。
【0025】V :1.0%以下(0%を含まない) Ta:0.1%以下(0%を含まない) Zr:0.1%以下(0%を含まない) Hf:0.1%以下(0%を含まない) V,Ta,Zr,Hfはいずれも、耐遅れ破壊性に対し
て同様の作用効果を発揮するものであり、0.001%
以上添加することが望ましく、0.005%以上の添加
がより望ましい。但し、上限値は元素の種類に応じて設
定されるべきであり、Vの場合には、比較的多量に添加
することにより効果は発揮されるので、その添加量は、
1.0%以下の範囲であれば、疲労折損に有害な粗大且
つ多量な介在物を生成することなく、上記効果を得るこ
とができる。また、Ta,Zr,Hfに関しては、多過
ぎると粗大な炭窒化物が生成されることにより疲労特性
が損なわれるので上限値を0.1%以下に設定すること
が望ましい。更に、本発明では、Cr,Ni,Mo,C
u,Al,B,Co,W等の元素を添加することによっ
て耐疲労破壊性以外の特性の向上も可能である。
【0026】Cr:5.0%以下(0%を含まない) Crは耐食性向上作用を有すると共に、上記Mnと同
様、焼入れ性の向上に寄与する元素である。この様な作
用を有効に発揮させるには0.05%以上を添加するこ
とが望ましい。但し、多過ぎると焼入れ加熱時に炭化物
が溶け込みにくくなり、かえって強度・硬さが低下する
こととなるので、5.0%以下にすることが必要であ
る。またCrは素材靭性を低下させる作用も有している
ので、上限は1.5%とすることが推奨される。Ni,
Mo,Cuは強度上昇及び耐食性向上を目的として添加
しても良い。
【0027】Ni:3.0%以下(0%を含まない) Niは焼入れ焼戻し後の素材靭性および耐食性を向上さ
せる作用を有すると共に、ばね特性として重要なへたり
特性を大幅に改善する作用も有する。これらの作用を有
効に発揮させるには、0.05%以上の添加が好まし
い。但し、添加量が多過ぎても焼入性が増大し、圧延後
に過冷組織が出現し易くなるので、上限は3.0%とす
ることが望ましく、1.0%以下がより好ましい。
【0028】Mo:3.0%以下(0%を含まない) Moは焼入性を向上させると共に、腐食溶解時にモリブ
デン酸イオンを形成して耐食性を高める元素である。ま
た、粒界強度を高めて耐遅れ破壊性を改善する効果も認
められる。焼入性及び耐遅れ破壊性を向上させるために
は少なくとも0.05%以上の添加が必要となる。3.
0%以上添加してもその効果は飽和するばかりでなく、
高価な元素であるため、3.0%以下とした。
【0029】Cu:1.0%以下(0%を含まない) Cuは電気化学的に鉄より貴な元素であり、生成錆を緻
密化して耐食性を高める作用を有する。この様な作用は
0.01%以上の添加により有効に発揮されるが、1.
0%を超えて含有させてもそれ以上の効果は得られず、
むしろ熱間圧延時に素材の脆化を招く恐れがあるので、
1.0%以下の範囲で添加することが推奨される。更
に、本発明のばね用鋼では、Al,B,Co,Wを以下
の範囲内で添加しても良い。
【0030】Al:1.0%以下(0%を含まない) Alは、結晶粒を微細化して耐力比を向上させ、耐へた
り性の向上に寄与する元素である。その様な効果は0.
005%以上の添加により有効に発揮される。但し、
1.0%を超えて添加してもそれ以上の効果は得られ
ず、むしろ酸化物系介在物(Al23等)が多量に生成
して粗大化してしまい、かえって遅れ破壊寿命は短くな
るので上限は1.0%とすることが望ましい。
【0031】B:50ppm以下(0ppmを含まな
い) Bは微量添加により焼入性を向上させ、しかも粒界強度
を高める元素であるので、1ppm以上含有させること
が推奨される。尚、50ppm以上添加しても、焼入性
向上効果は飽和するので、添加量は50ppm以下で良
い。
【0032】Co:5.0%以下(0%を含まない) Coは焼入れ焼戻し後の強度・硬さを向上させ、しかも
生成錆を緻密化して耐食性を向上させる元素であるの
で、0.01%以上添加することが望ましい。但し、多
過ぎても効果は飽和すると共に、高価な元素でもあるの
で添加量は5.0%以下とすることが好ましい。
【0033】W:1.0%以下(0%を含まない) Wは焼入れ焼戻し後の強度・硬さを向上させると共に、
腐食溶解時にタングステン酸イオンを形成して耐食性を
高める元素であるので、0.01%以上添加することが
好ましい。但し、過度に添加すると素材靭性を低下させ
る傾向があるので1.0%以下とすることが好ましい。
【0034】以下本発明を実施例によってさらに詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変
更して実施することはいずれも本発明の技術的範囲に含
まれるものである。
【0035】
【実施例】表1に示す種々の化学成分からなる鋼を真空
溶製炉で溶製した。
【0036】
【表1】
【0037】得られた鋼を熱間鍛造し、HRCが50以
上となる様に焼入れ焼戻しを行った後、機械加工によ
り、板状の4点曲げ試験片(65mm×15mm×1.5 mm)を作
製した。得られた試験片を陰極チャージ環境下で4点曲
げ試験を行うことにより破断するまでの時間を測定し
た。
【0038】一方、粒界のP偏析量の測定は4点曲げ試
験片から切り出して、予め陰極チャージにより水素を多
量に吸蔵させることにより、オージェ装置のチャンバー
内で粒界破壊させ、その粒界に偏析しているP量を測定
するという方法でPの粒界偏析量を測定した。焼入焼戻
し後の硬さ,鋼中P含有量,粒界P偏析量,遅れ破壊寿
命の結果を表2及び表3に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】No.1a〜1d、No.2a〜2d、N
o.3a〜3dは夫々P含有量以外は、同一成分であ
る。表2の結果から遅れ破壊寿命は鋼中P含有量より
は、粒界のP偏析量との相関が高いことが分かる。
【0042】表3におけるNo.4〜14は本発明例で
あり、焼入れ焼戻し後の硬さがHRCで50以上である
と共に、耐遅れ破壊性に優れている。No.15,16
は従来例(JIS SUP7,SAE9254) であり、遅れ破壊寿命が
短いことが分かる。No.17,19,21は、Tiま
たはNbを含有していない比較例であり、遅れ破壊寿命
が短い。No.18,20,22は、C,Si,Mn量
が少な過ぎる場合の比較例であり、所定の硬さが得られ
ない。No.23〜26は、Mn,Ni,Cr,Mo量
が高過ぎる場合の比較例であり、多量の残留オーステナ
イトの生成により、HRCが50未満であり、所定の強
度が得られなかった。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、焼入れ焼戻し後の素材硬さでHRC50以上に高強
度化しても非常に優れた耐遅れ破壊性を発揮する高強度
ばねが提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ばね用鋼の粒界P偏析量と遅れ破壊寿命の関係
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩田 多加志 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 家口 浩 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 難波 茂信 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼入れ焼戻し処理後の硬さがHRC50
    以上である焼戻しマルテンサイト組織を有する高強度ば
    ねにおいて、 オージェ装置のチャンバー内で破壊させ当該装置で測定
    された旧オーステナイト粒界のP偏析量が3.0at%
    以下であることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強
    度ばね。
  2. 【請求項2】C :0.3〜0.7%(質量%、以下
    同じ)、 Si:0.1〜3.0%、 Mn:0.1〜2.0%を含有すると共に、 Ti:0.001〜0.5%及び/又はNb:0.00
    1〜0.5%を含有する鋼からなる請求項1に記載の高
    強度ばね。
  3. 【請求項3】 前記鋼が、更にV :1.0%以下(0
    %を含まない)を含有する請求項2に記載の高強度ば
    ね。
  4. 【請求項4】 前記鋼が、更にTa:0.1%以下(0
    %を含まない)、 Zr:0.1%以下(0%を含まない)、 Hf:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から
    選択される1種以上を含有する請求項2または3に記載
    の高強度ばね。
  5. 【請求項5】 前記鋼が、更にCr:5.0%以下(0
    %を含まない)を含有する請求項2〜4のいずれかに記
    載の高強度ばね。
  6. 【請求項6】 更に、 Ni:3.0%以下(0%を含まない)、 Mo:3.0%以下(0%を含まない)、 Cu:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から
    選択される1種以上を含有する請求項2〜5のいずれか
    に記載の高強度ばね。
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