JPH0988740A - 燃料気化装置及び燃料気化用ヒータ - Google Patents

燃料気化装置及び燃料気化用ヒータ

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JPH0988740A
JPH0988740A JP7249878A JP24987895A JPH0988740A JP H0988740 A JPH0988740 A JP H0988740A JP 7249878 A JP7249878 A JP 7249878A JP 24987895 A JP24987895 A JP 24987895A JP H0988740 A JPH0988740 A JP H0988740A
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JP
Japan
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fuel
temperature
heating surface
heating
coating layer
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Application number
JP7249878A
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English (en)
Inventor
Kazuhisa Takimoto
和寿 滝本
Takayoshi Takano
孝義 高野
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱面における燃料液滴の最大蒸発率点を高
温側にシフトさせることを可能とし、これにより加熱面
の設定温度を高くして燃料の気化を促進させ、燃費の向
上及び排気ガスの清浄化を図る。 【解決手段】 ガソリンエンジン1の燃焼室2と吸気バ
ルブ3を介して接続されたインテークマニホールド4内
には、フューエルインジェクタ5の噴射ノズル5aの噴
射域に燃料気化用のヒータ6が配置されている。ヒータ
6は通電発熱部材により加熱されるとともに、基材とし
ての金属板7の上面にジルコニア(ZrO 2 )を溶射し
てセラミック被覆層9が形成された加熱体10を備えて
いる。噴射ノズル5aから噴射されて300℃に加熱さ
れたセラミック被覆層9の表面に付着した燃料液滴との
界面温度は、セラミック被覆層9が低熱伝導率のジルコ
ニアからなることから、局所的にガソリンがライデンフ
ロスト現象を起こす温度より低い温度に維持されるよう
になっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フューエルインジ
ェクタより噴射された燃料液滴を燃焼室へ送られるまで
に加熱してその気化を促進させる燃料気化装置及び燃料
気化用ヒータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガソリンエンジンの燃費を向上させ、排
気ガスの清浄化を図るためには、燃焼室でほぼ完全燃焼
が実現されることが好ましい。そのためには燃焼室へ送
る燃料が充分に霧化(微粒化)もしくは気化されている
ことが望ましい。
【0003】例えば、特開平5−26130号公報に
は、フューエルインジェクタから噴射されるガソリン等
の燃料の霧化を効率良く行えるように、燃料を噴射前に
予め暖めることができるヒータ付きのフューエルインジ
ェクタが開示されている。
【0004】また、特開昭49−120023号公報に
は、燃料の気化器の底部を形成する加熱面(金属製)を
排気ガスの余熱を利用して加熱し、気化器内で微粒化し
切れていない燃料を加熱面の熱にて気化させることによ
り燃料の完全気化(霧化を含む)を実現する燃料気化装
置が開示されている。この燃料気化装置では、加熱面温
度を燃料が核沸騰状態となる温度に設定している。核沸
騰とは液滴中に多数の気泡が発生して液滴表面だけでな
く液滴内部からも気化が進行する沸騰状態をいい、核沸
騰状態とすることにより燃料の蒸発速度が大きくなって
短時間で燃料を気化させることができる。さらに特開昭
49−120023号公報には、この構成に加えて加熱
面に電熱ヒータを備えたものも開示されている。
【0005】また、インテークマニホールドに噴射ノズ
ルが設けられている場合は、その噴射域に加熱面を配置
するようにヒータを設け、噴霧により十分微粒化(霧
化)し切れなかった燃料液滴を加熱面上に付着させるこ
とにより燃料の気化の促進を図る燃料気化装置もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図8は加熱面温度と燃
料の蒸発速度との関係を示したグラフである。同図の蒸
発速度曲線Lから分かるように、加熱面温度が比較的低
いうちは燃料の液滴表面から気化が進行し(自然対流
域)、温度が上昇して燃料の飽和温度を超えるとともに
液滴中に気泡が発生しだし、さらに温度が上昇するとそ
の気泡の数が多くなりいわゆる核沸騰状態となって蒸発
速度が極めて大きくなる。そして、燃料の蒸発速度は最
大蒸発率点と呼ばれる温度で最大に達する。この核沸騰
域より加熱面温度が高くなると、大きくなった気泡によ
り加熱面と液滴との接触面積が減って加熱面から液滴に
熱が伝達され難くなるため、液滴の蒸発速度が次第に低
下する(遷移沸騰域)。そして、その接触面積が著しく
小さくなると、ついには液滴が加熱面から浮き上がる
(ライデンフロスト現象)膜沸騰状態となる(膜沸騰
域)。
【0007】気泡が大きくなるにつれて、加熱面から液
滴に熱が伝達され難くなるため蒸発速度が著しく低下す
る。よって、液滴の蒸発速度が最大となる最大蒸発率点
が存在し、加熱面温度を燃料液滴が核沸騰する温度より
高くしても気化率を向上できないことから、ここに気化
率の向上を図るうえでの限界があった。
【0008】このことは特開昭49−120023号公
報でも触れられており、ライデンフロスト現象のため、
ヒータ温度を上げ過ぎると返って逆効果であると述べら
れている。つまり、ライデンフロスト現象の発生が、蒸
発速度をそれ以上(核沸騰状態のとき以上)に引き上げ
ることができない大きな原因となっていた。尚、図8に
示すように、加熱面温度を膜沸騰域においてさらに上げ
続けていけば蒸発速度が核沸騰状態のときより大きくな
るところはあるが、そのような高温では混合気の充填率
が著しく低下してしまう。
【0009】ところで、従来装置では燃料噴射されても
その吸気タイミング時期に気化されきれず加熱面上に燃
料液滴の一部がそのまま残存することがあり、噴射され
た燃料が次の燃焼時期までに全て燃焼室に供給されてい
た訳ではなかった。そして、燃料の必要量が燃焼室に供
給できるように、加熱面上で気化し切れない燃料分を考
慮してフューエルインジェクタからの噴射量を多めに調
節して対処していた。そのため、1回当たりの燃料の噴
射量が多くなり燃費が悪化するという問題があった。
【0010】また、加熱面温度が経時的にばらついたり
加熱面において温度のむらができると、その温度が遷移
沸騰域の高温側から膜沸騰域に相当する温度となること
も起こり得る。この場合、ライデンフロスト現象のため
加熱面から浮き上がった微粒化され切れていない液滴が
吸入空気とともに燃焼室へ供給されることになる。この
微粒化され切れていない液滴は未燃焼燃料やHC等の原
因となるため、このような液滴が燃焼室に供給されるこ
とにより燃費の向上や排気ガスの清浄化を図ることがで
きなかったという問題があった。
【0011】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであって、その目的は、燃料液滴の最大蒸発率
点を高温側にシフトさせることにより、加熱面温度を一
層高温に設定することを可能として燃料の気化を促進さ
せ、ひいては燃費の向上及び排気ガスの清浄化を図るこ
とができる燃料気化装置及び燃料気化用ヒータを提供す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
め請求項1に記載の発明では、ガソリンエンジンの燃焼
室に繋がる燃料供給通路内において燃料噴射装置の噴射
ノズルの噴射域に加熱面を配置する加熱体と、前記加熱
面が設定温度となるように前記加熱体を加熱するための
熱供給手段とを備えた燃料気化装置であって、前記加熱
体は、金属もしくは高熱伝導率のセラミックからなる基
材と、該基材の表面に前記加熱面を形成すべく被覆され
た低熱伝導率のセラミックからなるセラミック被覆層と
を備えた。
【0013】請求項2に記載の発明では、前記セラミッ
ク被覆層はジルコニアからなる。請求項3に記載の発明
では、前記セラミック被覆層の厚みは100〜500μ
mの範囲である。
【0014】請求項4に記載の発明では、前記セラミッ
ク被覆層の表面には10〜50μm径相当の凹凸部が形
成された。請求項5に記載の発明では、前記セラミック
被覆層の表面には10〜50μm径相当の凹凸部が形成
され、前記加熱面の設定温度は140℃〜440℃の範
囲内に設定された。
【0015】請求項6に記載の発明では、前記加熱面の
設定温度は220℃〜370℃の範囲内に設定された。
請求項7に記載の発明では、前記燃料供給通路は、前記
燃焼室に繋がるインテークマニホールドと該インテーク
マニホールドに繋がるとともに前記噴射ノズルが設けら
れた気化室とを備え、前記加熱体は前記気化室内におい
て前記噴射ノズルの噴射域に前記加熱面を配置するよう
に設けられた。
【0016】請求項8に記載の発明では、前記請求項1
〜請求項7のいずれか一項に記載の前記加熱体を備えて
燃料気化用ヒータを構成した。従って、請求項1に記載
の発明によれば、ガソリンエンジンの燃焼室に繋がる燃
料供給通路内において加熱体の加熱面は熱供給手段から
の熱により設定温度に加熱される。燃料噴射装置の噴射
ノズルから噴射された燃料のうち霧化(微粒化)され切
れなかった燃料は液滴となって加熱面上に付着する。こ
の設定温度は例えば一般に燃料の金属面上における最大
蒸発率点よりも高く設定される。加熱面に付着した燃料
液滴は、セラミック被覆層の表面から伝達される熱によ
り加熱されて蒸発する。燃料液滴が付着した瞬間、その
液滴との界面温度が急激に低下し、この温度勾配をなく
すように降温したその界面に回りから熱が伝導される。
しかし、セラミック被覆層は低熱伝導率のセラミックか
らなるためその熱の移動速度が比較的遅く、温度勾配が
十分回復し切らないうちにその界面部から液滴に伝達さ
れる熱の移動速度との間で一種の平衡状態に達し、液滴
蒸発中は界面温度がライデンフロスト現象を起こさない
温度に維持される。このため、液滴には付着初期にライ
デンフロスト現象を起こす程度の高い設定温度の加熱面
上であっても速やかに核沸騰を維持しながら蒸発が進行
する。その結果、加熱面上での燃料液滴の蒸発速度が高
められるため、燃料の気化率の向上を図ることが可能と
なる。
【0017】請求項2に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層をセラミックの中でも比較的熱伝導率が低いジ
ルコニアで形成することにより、加熱面に付着した液滴
との界面付近に比較的大きな温度勾配を形成することが
可能となり、加熱面の設定温度を液滴が膜沸騰するよう
な事態を招くことなく最大蒸発率点を高温へシフトさせ
ることが可能となる。そして、設定温度を高く設定でき
る分だけ蒸発速度が短縮される。
【0018】請求項3に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の厚みが100μm未満であると、ほぼ設定温
度の基材からの熱の影響を受けて界面付近に適度な温度
勾配ができ難くなり従来の金属加熱面に比較してさほど
設定温度を高く設定できなくなるため液滴の蒸発速度の
短縮を図り難くなる。そのため、液滴の蒸発速度の短縮
を図るべく液滴との界面付近に適度な温度勾配を形成す
るうえでセラミック被覆層の厚みを100μm以上確保
するとよい。また、セラミック被覆層の厚みが500μ
mを超えると液滴気化後に加熱面の設定温度への回復に
時間を要し、次の燃料噴射時期までに加熱面が設定温度
に回復されない事態となる。この場合、燃料液滴が噴射
される度に液滴の付着後の加熱面の界面温度が下がり続
けてしま、蒸発速度が低下してしまう。そのため、液滴
の高い蒸発速度を維持するうえでセラミック被覆層の厚
みを500μm以下にするとよい。
【0019】請求項4に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の表面に形成された10〜50μm径相当の微
細な凹凸部がその表面に付着した液滴中における気泡の
核となり、液滴中に温度の割りに多数の気泡が発生して
液滴の表面積が事実上増大して蒸発速度が高められる。
また、多数の微細な凹凸部により液滴と加熱面との接触
面積が広く確保されるため加熱面から液滴へ伝達される
単位時間当たりの熱量が増大し、その分蒸発速度が一層
高められる。
【0020】請求項5に記載の発明によれば、表面に1
0〜50μm径相当の凹凸部が形成されたジルコニアか
らなるセラミック被覆層で被覆された加熱面によると、
請求項2の作用と請求項4の作用とによりその設定温度
を140℃〜440℃の範囲内で設定することにより液
滴の蒸発速度を金属加熱面による最大蒸発速度よりも高
めることが可能となる。
【0021】請求項6に記載の発明によれば、表面に1
0〜50μm径相当の凹凸部が形成されたジルコニアか
らなるセラミック被覆層で被覆された加熱面によると、
請求項2の作用と請求項4の作用とによりその設定温度
を220℃〜370℃の範囲内で設定することにより液
滴の蒸発速度を金属加熱面による最大蒸発速度に対して
約5割高めることが可能となる。
【0022】請求項7に記載の発明によれば、燃焼室に
繋がるインテークマニホールドに予め気化した燃料のみ
を送るように気化室を備えた構成であっても、気化室に
設けられた加熱体の噴射ノズルの噴射域に配置された加
熱面がセラミック被覆層で被覆されることにより気化が
促進される。そのため、噴射ノズルから噴射された燃料
とほぼ同量の気化燃料がその燃焼サイクルにインテーク
マニホールドを介して燃焼室に供給される。未気化燃料
の発生を考慮して燃料噴射量の多めの調節をする必要が
なくなる。
【0023】請求項8に記載の発明によれば、請求項1
〜請求項7のいずれか一項に記載の作用を得る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した燃料気
化装置を図1〜図4に基づいて説明する。図1に示すよ
うに、ガソリンエンジン1の燃焼室2には吸気バルブ3
を介して燃料供給通路としてのインテークマニホールド
4が繋がって配置されている。インテークマニホールド
4内には、吸気バルブ3より所定距離だけ上流側に燃料
噴射装置としてのフューエルインジェクタ5がそのノズ
ル5aをインテークマニホールド4内に突出させた状態
に設けられている。燃料気化装置を構成する燃料気化用
のヒータ6はインテークマニホールド4内にフューエル
インジェクタ5の噴射指向先と対応する位置に配置され
ている。
【0025】図2に示すように、ヒータ6は、基材とし
てのSUS(ステンレス鋼)よりなる金属板7の上面に
結合材8を介して低熱伝導率のセラミックとして知られ
るジルコニア(ZrO2 )からなるセラミック被覆層9
を被覆して形成された加熱体10と、この加熱体10の
裏面側に配置された熱供給手段を構成する通電発熱部材
11とを備えている。
【0026】通電発熱部材11は温度制御回路13を介
してバッテリ電源12と接続されている。温度制御回路
13には金属板7の側面に接触してその温度を検出する
ための温度センサ14が接続されており、この温度セン
サ14からの検出信号に基づき温度制御回路13により
通電発熱部材11を流れる電流値が制御されてセラミッ
ク被覆層9の表面が所定温度(本実施の形態では約30
0℃)に保持されるようになっている。
【0027】セラミック被覆層9は、ジルコニア(Zr
2 )が溶射法(例えばプラズマ溶射法)により溶射さ
れて形成されている。セラミック被覆層9の層厚Tz は
100〜500μmの範囲にある。また、SUSからな
る金属板7の表面へのジルコニア(ZrO2 )の結合力
を高める目的から結合材8を介してセラミック被覆層9
を被覆させている。本実施の形態では結合材8としてニ
ッケルクロム・アルミ・コバルト・イットリア複合体
(第1メテコ株式会社製;461NS又は、365−
2)を使用している。また、ジルコニア(ZrO2 )は
比較的粒径の粗いもの(第1メテコ株式会社製;201
BNS又は204)を使用している。
【0028】セラミック被覆層9は金属板7の表面全体
に形成されており、セラミック被覆層9の表面面積(す
なわち溶射面積)は、噴射ノズル5aから噴射される燃
料の照射域がその面上に全て収まる広さに設定されてい
る。
【0029】また、セラミック被覆層9の表面粗度は、
約10〜50μmの範囲にある。これは溶射法によりセ
ラミック被覆層9を形成する場合、その溶射粉末の粒度
に応じた径を有する微小な凹凸部がその表面に形成され
るためで、本実施の形態では比較的粗いジルコニア粉末
を溶射粉末として使用しているため約10〜50μmの
径を有する微小な凹凸部がその表面に形成されたことに
よる。フューエルインジェクタ5の噴射ノズル5aから
噴射される燃料の液滴径が数百μmオーダにあることか
ら、その微小な凹凸部は液滴径に比較して十分小さいも
のである。尚、本実施の形態では、低熱伝導性のセラミ
ックとしてジルコニア(ZrO2 )を使用しているが、
低熱伝導性のセラミックとして知られるその他のセラミ
ック材料にて被覆層を形成することもできる。
【0030】次に、燃料気化装置の作用を説明する。イ
グニションキーがオンされてエンジン1が駆けられる
と、温度制御回路13により通電発熱部材11が通電さ
れて加熱体10が加熱されるとともに、フューエルイン
ジェクタ5の噴射ノズル5aから燃料の噴射が開始され
る。加熱面温度は300℃まで速やかに達してその温度
で保持される。通電発熱部材11の通電は継続されてエ
ンジン1の駆動中は加熱面温度が300℃に保持され
る。
【0031】噴射ノズル5aから噴射された燃料は霧状
に噴霧される。このとき、十分に霧化されなかった液滴
Fは噴射の勢いでヒータ6の加熱面S上に付着する。特
に、噴射域中心部は燃料が霧化され難いため、その多く
が液滴Fとして加熱面S上に付着する。完全燃焼に寄与
し得る臨界液滴径より大きな液滴Fは少なくとも全て加
熱面S上に付着する。
【0032】この液滴付着前は、セラミック被覆層9の
表面温度は300℃に保持されている。セラミック被覆
層9はその層厚Tz が100〜500μmと非常に薄い
膜であるため、加熱面温度が300℃の設定温度に達し
ていればその層内は300℃の均一な温度になってい
る。セラミック被覆層9の表面に付着した燃料の液滴F
は、その界面から伝達される熱により加熱されて気化す
る。
【0033】すなわち、図3に示すように、セラミック
被覆層9の表面(以下、加熱面という)Sに付着した液
滴Fは、その液滴Fとセラミック被覆層9との接触界面
Pを介してセラミック被覆層9側から伝達された熱によ
り沸騰して気化する。
【0034】まず液滴Fが加熱面Sに付着すると、低温
の液滴と接触すること、及びこれに引き続き接触面にお
いて液が局部的に蒸発してセラミック被覆層9から熱が
急激に奪われることにより、液滴Fの付着直前までその
表面温度Ta が300℃になっていたセラミック被覆層
9の表面温度が瞬間的に温度Tb に低下する。その後、
温度Tbまで降温した低温部にその回りから熱が供給さ
れることにより、その瞬間的にできた大きな温度勾配が
小さくなる。
【0035】ここで、セラミック被覆層9は、その材質
が低熱伝導率のジルコニア(ZrO 2 )からなることか
ら、低温部に回りから供給される単位時間当たりの熱量
が、金属等のような高熱伝導性の材質のものに比較して
かなり小さい。一方、加熱面側から液滴F側へその界面
Pを介して熱伝達による熱の流出があるため、この熱流
出と、界面付近の低温部への熱伝導による熱の流入との
間で一種の平衡状態に達する。そして、金属等の高熱伝
導率の材質のものに比較して初期にできた大きな温度勾
配が十分回復し切らないうちに、その界面温度が初期温
度Ta(=300℃)に比較してかなり低い温度Tc で
平衡状態に達し、その平衡状態を保って液滴Fの蒸発が
進む。
【0036】加熱面Sを形成する材質が金属等のように
熱伝導率の高い材質であれば、温度勾配はさほどできず
界面温度Tcはほぼ300℃のままとなる。しかし、セ
ラミック、特にその中でも熱伝導率の比較的小さな材質
であるジルコニア(ZrO2)であるため、セラミック
被覆層9中には、図3に示すように接触界面P近傍の極
く表層領域に、界面温度Tcから温度Ta(=300
℃)までの連続的な大きな温度勾配を示す領域R(二点
鎖線で囲まれた領域)ができる。尚、同図中の斜線部分
が液滴蒸発中における温度Ta (=300℃)温度領域
となる。
【0037】つまり、液滴Fの付着直前まで300℃に
加熱されていても、液滴Fが付着してその液滴Fが蒸発
し続けている間は、その界面Pの温度Tc が300℃よ
り十分低く保持される。この温度Tc は最大蒸発率点付
近となる。
【0038】そして、その界面温度Tc が金属加熱面で
の最大蒸発率点付近にまで抑えられれば、液滴Fは加熱
面S上で核沸騰して短時間のうちに気化し、従来技術で
述べたように加熱面で液滴Fが十分に気化し切れず残っ
たりすることはない。また、加熱面温度が従来金属加熱
面の場合にはライデンフロスト現象が起きると言われて
いるライデンフロスト点TL より100℃近くも高い
が、セラミック被覆層が設けられているとライデンフロ
スト現象が起こらないため臨界液滴径以上の微粒化され
ていない液滴Fがそのまま燃焼室2に吸入される事態に
は至らない。こうして燃焼室2には完全燃焼に寄与し得
る霧化もしくは気化した燃料のみが供給されることにな
り完全燃焼が実現される。しかも、噴射された燃料はそ
の燃焼サイクルで全て燃焼室2に供給されるため、未気
化分を考慮して噴射量を多めに調節する必要がなくな
り、燃費の向上を図ることが可能となる。また、臨界液
滴径以上の液滴Fが燃焼室2に供給されることが無くな
るので不完全燃焼は回避され排気ガスの清浄化にも寄与
する。
【0039】ここで、セラミック被覆層9の層厚Tz を
100〜500μmとしており、層厚Tz が100μm
以上確保されているので、母材の金属(SUS)の影響
を受けることなく温度勾配領域Rに適度な温度勾配が形
成される。その結果、加熱面温度Ta は十分な高温に設
定でき、その分液滴Fの蒸発速度を高めることが可能と
なる。また、層厚Tz を500μm以下に抑えたので、
液滴気化後の加熱面温度Ta を次の燃料噴射時期までに
その設定温度300℃に確実に回復させることが可能と
なる。そのため、セラミック被覆層9の表面温度が30
0℃に回復しないうちに次の燃料噴射が行われこれが繰
り返されて界面温度Tc が核沸騰域の温度より低くなっ
てしまい蒸発速度の向上が図れなくなる事態を回避する
ことが可能となる。もし、このような事態を回避できな
くなると燃料の一部が加熱面上に残存することになり燃
費の向上を図れなくなる。尚、加熱面温度が300℃と
従来装置より高くなるが、吸入空気の熱膨張による減少
はさほど起こらず必要な吸入空気量は十分確保される。
【0040】次に、セラミック被覆層9が最大蒸発率点
の高温側へのシフトに寄与することを示す実験結果を図
4に示す。アルミニウム(Al),SUS(ステンレス
鋼),及びSUSを基材としてその表面に細かいジルコ
ニア(ZrO2 ),粗いジルコニア(ZrO2 ),細か
いアルミナ(Al2 3 ),粗いアルミナ(Al
2 3 )を溶射してそれぞれの被覆層を形成したものと
の合計6種類の固体面試料を加熱面として用いた。図4
は、各固体面試料について、初期加熱面温度Taに対す
るその加熱面上に滴下したガソリン液滴の寿命(蒸発時
間)を示した実験結果からのグラフである。
【0041】熱電対により加熱面温度Ta が定常状態に
達した後、マイクロシリンジで針状先端部に付着させた
ガソリン2.85μlを振動させて加熱面S上に滴下し
た。蒸発時間は高速ビデオカメラを用いて測定し、1se
c.以上の測定は目視によりストップウォッチで行った。
【0042】図4のグラフから分かるように、金属(A
l,SUS)の加熱面の最大蒸発率点は210℃付近に
あり、これを超える温度では蒸発時間が長くなってい
る。このことからヒータの加熱面を金属とする従来装置
ではその加熱面温度を約210℃を超えると返って液滴
寿命が低下することが分かる。
【0043】一方、セラミックを被覆した加熱面による
と、金属加熱面の最大蒸発率点である約210℃を超え
ても寿命(蒸発時間)は短く維持される。特にZrO2
は、金属加熱面の最大蒸発率点である約210℃を超え
た広い温度範囲で寿命が比較的短く維持される。
【0044】細かいジルコニア(ZrO2 )では約21
0℃〜約390℃の温度範囲でその寿命(蒸発時間)を
金属の最短寿命(約300msec. )よりも僅かながら短
できることが分かる(温度約310℃で最短寿命約24
0msec. )。また、粗いジルコニア(ZrO2 )では約
140℃〜約460℃の温度範囲でその寿命(蒸発時
間)を金属の最短寿命(約300msec. )よりも短くで
きることが分かる。特に粗いジルコニアでは約220℃
〜約370℃の温度範囲でその寿命が約200msec. と
なっており、これはガソリンの液滴寿命を金属加熱面の
最短寿命に対して約2/3にできることを意味する。
【0045】また、ジルコニアは広い温度範囲で寿命が
短く維持されている。これは加熱面温度が多少ばらつい
て例えば高温側にシフトしてもライデンフロスト現象が
起こらないことを意味している。これに対し金属加熱面
(Al)では加熱面温度が210〜220℃の範囲で液
滴寿命が著しく増加しており、加熱面温度を最大蒸発率
点(約210℃)に設定しても僅かな温度の上昇により
液滴寿命が長くなって臨界液滴径以上の微粒化されない
液滴燃料が燃焼室2に供給される事態となる。また、ジ
ルコニアの最大蒸発率点は、このグラフからの把握は難
しいが、おおよそ300℃前後にあるものと推察され
る。尚、粗いジルコニアは本実施の形態のセラミック被
覆層9の溶射原料に使用したものと同じものである。
【0046】粗いジルコニアが液滴寿命の短縮に効果が
ある原因の一つとして、溶射により形成されたセラミッ
ク被覆層9の表面に約10〜50μm径の微細な凹凸部
が形成されていることが挙げられる。これは微細な凹凸
部が沸騰時に発生する気泡の核となって低温域から気泡
の発生を促進し、その内部にできた多数の気泡による液
滴表面積の増大が気化を促進させるためである。また、
適度に微細な径を有する凹凸部が加熱面上に多数あるこ
とにより液滴と加熱面との接触面積を広く確保すること
ができ、加熱面から液滴へ伝達される単位時間当たりの
熱量が増大することも挙げられる。これらの要因から粗
いジルコニアでは測定した全ての温度範囲において液滴
寿命が各試料の中で最短となったものと推察される。
【0047】このように加熱面Sをセラミック被覆層9
で被覆して形成することにより、金属加熱面を有する従
来ヒータに比較してガソリン液滴の蒸発速度を約1.5
倍にできれば、加熱面Sに付着した燃料の液滴Fのほぼ
全てをその吸気タイミング時期中に気化させることが可
能となる。その結果、燃焼室2では臨界液滴径未満に微
粒化された燃料だけが供給されて完全燃焼が実現される
とともに、噴射ノズル5aからの燃料噴射量も多めに調
節する必要がなくなるため、燃費も向上及び排気ガスも
清浄化を図ることが可能となる。
【0048】従来技術で述べたように吸気タイミング時
期に加熱面上の液滴が十分気化し切れず必要な供給燃料
量を確保するため噴射ノズルからの噴射量を多めに設定
して燃費が悪くなることが回避される。また、加熱面温
度が経時的にばらついたり加熱面に温度のむらができて
も、図4のグラフから分かるように広い温度範囲におい
て液滴寿命短縮の効果が認められるので、多少温度が高
温側にばらついたとしてもライデンフロスト現象が発生
して蒸発速度が低下することがない。その結果、従来技
術で述べたように、気化される前にライデンフロスト現
象により浮き上がった液滴が吸入空気とともに燃焼室に
供給されてしまうこともないため、従来装置のように燃
焼室に供給されてしまった臨界液滴径以上の大きな液滴
により不完全燃焼がもたらされ燃焼室内でカーボンとし
て残ったりHC等が不完全燃焼ガスの一部として排気さ
れることが防止される。
【0049】以上詳述したように本実施の形態のヒータ
6によれば、以下に列記する効果が得られる。 (a)ヒータ6の加熱面Sを低熱伝導性のセラミック被
覆層9で被覆したことにより、燃料液滴Fの最大蒸発率
点を、事実上、高温側へシフトすることことができる。
そのため、加熱面温度Ta を300℃としても、燃料液
滴Fがライデンフロスト現象を起こすことがなく、吸気
タイミング時期中に加熱面S上に噴射された燃料液滴F
のほぼ全てを気化させることができる。その結果、加熱
面S上に未気化燃料が残ることがないうえ、微粒化され
ていない燃料液滴が燃焼室2に供給されてしまうことも
ないので、燃費の向上及び排気ガスの清浄化を図ること
ができる。
【0050】(b)セラミック被覆層9の材質をジルコ
ニア(ZrO2 )としたので、最大蒸発率点の高温側へ
のシフト量を大きくして設定温度を十分高温側に設定す
ることができるので、加熱面S上での燃料液滴Fの寿命
(蒸発時間)を短くして気化率を十分高めることができ
る。
【0051】(c)セラミック被覆層9の層厚Tz を1
00〜500μmの範囲としたので、界面近傍に適度な
温度勾配領域Rを形成して加熱面温度(設定温度)Ta
を、十分高めに設定することができるとともに、加熱面
温度の設定温度への迅速な温度回復も実現できる。
【0052】(d)粗いジルコニアを溶射原料粉末とし
て使用してセラミック被覆層9の表面(加熱面S)に1
0〜50μm径相当の微細な凹凸部を多数形成したの
で、この微細な凹凸部が気泡の核となって気泡が多数発
生して液滴表面積を増大させることができるうえ、微細
な凹凸部により液滴Fと加熱面との接触面積が増加して
加熱面から液滴への単位時間当たりの熱伝達量を増加さ
せることができる。その結果、液滴の蒸発速度を増加さ
せて気化率の向上を図ることができる。また、粗いジル
コニアによる溶射被覆層によれば広い温度範囲で液滴寿
命短縮の効果が認められることから、設定温度(加熱面
温度Ta )が多少高温側にばらついてもライデンフロス
ト現象が起きず臨界液滴径以上の燃料液滴Fが燃焼室2
に送られる事態を回避することができる。
【0053】(e)加熱面温度Ta (設定温度)を22
0〜370℃の温度範囲内である300℃に設定したの
で、ガソリン液滴Fの寿命(蒸発時間)を金属加熱面で
の最短寿命の約2/3に短縮することができる。
【0054】尚、本発明は上記実施の形態に限定される
ものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば次
のように構成することもできる。 (1)図5に示すように、SUS(ステンレス鋼)等の
金属からなる通電発熱部材21の上面に結合材8を介し
てジルコニア(ZrO2 )からなるセラミック被覆層9
を形成し、通電発熱部材が基材を兼ねた構成としてもよ
い。この構成によればヒータ6の構造が簡単で済むう
え、通電発熱部材21に結合材8のみを介してほぼ直接
的にセラミック被覆層9を結合させているので、加熱面
Sの温度応答性を良好とすることができる。
【0055】(2)図6に示すように、PTCセラミッ
クからなる通電発熱部材22の上面にジルコニア(Zr
2 )からなるセラミック被覆層9を直接形成した構成
としてもよい。この場合、PTCセラミック22のキュ
ーリ温度を140℃〜440℃の範囲に設定すれば、金
属加熱面よりもガソリン液滴Fの寿命を短くすることが
でき、特にキューリ温度を220℃〜370℃の範囲に
設定すれば金属加熱面での最大寿命に対してガソリン液
滴Fの寿命を約2/3とすることができる。よって、キ
ューリ温度を220℃〜370℃の範囲に設定すること
が特に望ましい。この構成によれば、前記(1)の構成
に加え、温度制御が不要となり温度制御回路13や温度
センサ14等を無くすことができる。
【0056】(3)図7に示すように、燃料をインテー
クマニホールド4を介して燃焼室2に送る前に予め気化
させるための気化室23を備えた燃料供給装置24に本
発明を適用してもよい。ガソリンGを蓄えた燃料タンク
25に接続されたフューエルインジェクタ5の噴射ノズ
ル5aは気化室23に突出しており、この噴射ノズル5
aが指向する気化室23内の底面にヒータ6は配置され
ている。ヒータ6はPTCセラミックからなる通電発熱
部材26にジルコニア(ZrO2 )からなるセラミック
被覆層9が被覆されて形成されている。通電発熱部材2
6はそのキューリ温度が約300℃に設定されており、
バッテリ電源12からの電流により発熱するようになっ
ている。気化室23はパイプ27を介してインテークマ
ニホールド4と接続されており、パイプ27に設けられ
た電磁バルブ28の開閉制御により気化室23からイン
テークマニホールド4側への気化燃料の供給量がコント
ロールされる。この構成によれば、噴射ノズル5aから
所定タイミングで加熱面Sに噴射された燃料を電磁バル
ブ28が開くタイミング時期までにそのほぼ全てを気化
させることができ、燃焼室2に必要な気化燃料を確保す
るため噴射ノズル5aの噴射量を多めに設定する必要が
なくなるため燃焼の消費量を低減することができる。ま
た、いつも噴射量に応じた一定濃度の気化燃料を確保す
ることができる。
【0057】(4)図2のヒータ6の設定温度は300
℃に限定されず、220℃〜370℃の範囲のその他の
温度に設定してもよい。この構成によってもガソリン液
滴の蒸発速度を金属加熱面のときの最大蒸発速度の約
1.5倍とすることができる。また、設定温度を140
〜440℃の範囲としてもよい。この構成によればガソ
リン液滴の蒸発速度を金属加熱面のときの最大蒸発速度
より良くすることができる。
【0058】(5)図2のヒータ6において、通電発熱
部材11に替えてPTCセラミックを用いて金属板7を
加熱する構成とし、温度制御回路13や温度センサ14
を無くしてもよい。
【0059】(6)セラミック被覆層9の材質をジルコ
ニア(ZrO2 )以外の低熱伝導率を有するその他のセ
ラミックとしてもよい。例えばジルコンを用いてもよ
い。また、ジルコニアを部分安定化ジルコニアや安定化
ジルコニアとしてもよい。
【0060】(7)セラミック被覆層9の形成方法は溶
射法に限定されない。例えば反応性イオンプレーティン
グ法,活性化反応性蒸着法(ARE法),ホローカソー
ド放電法(HCD法)等によりセラミック被覆層9を形
成してもよい。
【0061】(8)焼結して得られたジルコニアの薄板
をロー付け等の手法により基材上に結合してセラミック
被覆層9としてもよい。 (9)熱供給手段は、通電発熱部材を熱源とする構成に
限定されない。例えば、排気ガスの余熱を利用して加熱
体10を加熱する構成としてもよい。特開昭49−12
0023号公報に開示された燃料気化装置の加熱板上に
例えばジルコニアのセラミック被覆層を形成し、燃料の
蒸発速度の向上を図ってもよい。または、排ガスの余熱
を利用して加熱体10を加熱し、設定温度に満たない場
合は通電発熱部材による熱の補給をする構成としてもよ
い。
【0062】(10)基材の材質を金属板7のような金
属に代えて、高熱伝導率を有するセラミックとしてもよ
い。例えばSiC,Si3 4 等を用いてもよい。 (11)燃料はガソリンに限らず、メタノールなどその
他の液体燃料を使用するガソリンエンジンに本発明を適
用してもよい。
【0063】前記実施の形態から把握され、特許請求の
範囲に記載されていない発明を、その効果とともに以下
に記載する。 (イ)請求項1〜請求項7のいずれか一項において、前
記セラミック被覆層は溶射法により形成された。溶射原
料粉末の粒度を適宜に選定することにより表面に10〜
50μmの微細な凹凸部を有するセラミック被覆層を簡
単に形成することができる。
【0064】(ロ)請求項1〜請求項7のいずれか一項
において、前記熱供給手段はPTCセラミックからなる
通電発熱部材を備えた。この構成によれば、温度制御を
しなくて済む。
【0065】(ハ)前記(ロ)において、前記PTCセ
ラミックのキューリ点は220℃〜370℃の範囲内に
ある。この構成によれば、加熱面温度を220℃〜37
0℃とすることができ、この広い温度範囲内において液
滴寿命を金属加熱面での最短寿命の約2/3とすること
ができる。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1に記載の発
明によれば、加熱体の加熱面を高熱伝導率の基材に低熱
伝導率のセラミックからなるセラミック被覆層で被覆し
て形成し、その設定温度を金属加熱面の最大蒸発率点よ
りも高く設定できるようにしたので、加熱面に噴射され
た燃料の気化率を高めることができる。その結果、噴射
ノズルから噴射された燃料を一層多く気化燃料としてそ
の燃焼サイクルに燃焼室に供給することができ燃費の向
上を図ることができる。また、加熱面を金属加熱面の最
大蒸発率点よりも高く設定しても燃料液滴がライデンフ
ロスト現象を起こすことが抑えられ燃料が液滴のまま燃
焼室に供給されてしまうことがないので、HC等が発生
し難く排気ガスの清浄化を図ることもできる。さらに冬
期等での低温始動性を向上させることもできる。
【0067】請求項2に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層をセラミックの中でも特に低熱伝導性に属する
ジルコニアとしたので加熱面の設定温度を金属加熱面の
最大蒸発率点よりも十分高く設定することでき、また広
い温度範囲で燃料の気化率を一層高めることができる。
請求項3に記載の発明によれば、セラミック被覆層の
厚みを100〜500μmの範囲としたので、設定温度
を金属加熱面の最大蒸発率点より適度に高く設定できる
うえ、加熱面の温度回復も速やかとなるので、燃料の気
化率の効果的な向上を図ることができる。
【0068】請求項4に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の表面を10〜50μm径相当の微細な凹凸部
を有するように形成し、気泡発生の核となる微細な凹凸
部により気泡発生数を促進させ液滴表面積を増加させる
とともに、微細な凹凸部により液滴と加熱面との接触面
積を増加させ単位時間当たりの熱伝達量を増加させたの
で、燃料液滴の気化率を一層高めることができる。
【0069】請求項5に記載の発明によれば、ジルコニ
アからなるセラミック被覆層の表面を10〜50μm径
相当の微細な凹凸部を有するように形成し、その加熱面
の設定温度を140℃〜440℃の範囲内に設定したの
で、燃料液滴の蒸発速度を金属加熱面を用いたときの最
大蒸発速度よりも高めることができる。
【0070】請求項6に記載の発明によれば、請求項5
の発明における設定温度を特に220℃〜370℃の範
囲内に限定したことにより、液滴の蒸発速度を金属加熱
面を用いたときの最大蒸発速度に対して約5割高めるこ
とができる。
【0071】請求項7に記載の発明によれば、燃焼室に
繋がるインテークマニホールドに予め気化した燃料のみ
を送るように気化室を備えた構成であっても、気化室に
設けられた加熱体の加熱面に噴射された燃料の気化が促
進されて未気化分を考慮して多めに噴射量を設定する分
が不要もしくは少なくて済むので、燃料の消費量を低減
することができる。
【0072】請求項8に記載の発明によれば、請求項1
〜請求項7のいずれか一項に記載の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒータを備えるガソリンエンジンの部分側断面
図。
【図2】燃料気化装置の概略側断面図。
【図3】燃料液滴の気化メカニズムを説明するための模
式断面図。
【図4】加熱面温度に対する液滴寿命を示すグラフ。
【図5】別例の燃料気化装置の概略側断面図。
【図6】図6と異なる別例の燃料気化装置の概略側断面
図。
【図7】別例の燃料供給装置の模式側断面図。
【図8】蒸発速度曲線のグラフ。
【符号の説明】
1…ガソリンエンジン、2…燃焼室、4…燃料供給通路
としてのインテークマニホールド、5…燃料噴射装置と
してのフューエルインジェクタ、5a…噴射ノズル、6
…燃料気化装置を構成するとともに燃料気化用ヒータと
してのヒータ、7…基材としての金属板、9…セラミッ
ク被覆層、10…加熱体、11,21,22…熱供給手
段を構成する通電発熱部材、12…熱供給手段を構成す
るバッテリ電源、13…同じく温度制御回路、14…同
じく温度センサ、23…燃料供給通路としての気化室、
S…加熱面,Tz …層厚。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガソリンエンジンの燃焼室に繋がる燃料
    供給通路内において燃料噴射装置の噴射ノズルの噴射域
    に加熱面を配置する加熱体と、前記加熱面が設定温度と
    なるように前記加熱体を加熱するための熱供給手段とを
    備えた燃料気化装置であって、 前記加熱体は、金属もしくは高熱伝導率のセラミックか
    らなる基材と、該基材の表面に前記加熱面を形成すべく
    被覆された低熱伝導率のセラミックからなるセラミック
    被覆層とを備えた燃料気化装置。
  2. 【請求項2】 前記セラミック被覆層はジルコニアから
    なる請求項1に記載の燃料気化装置。
  3. 【請求項3】 前記セラミック被覆層の厚みは100〜
    500μmの範囲である請求項1又は請求項2に記載の
    燃料気化装置。
  4. 【請求項4】 前記セラミック被覆層の表面には10〜
    50μm径相当の凹凸部が形成された請求項1〜請求項
    3のいずれか一項に記載の燃料気化装置。
  5. 【請求項5】 前記セラミック被覆層の表面には10〜
    50μm径相当の凹凸部が形成され、前記加熱面の設定
    温度は140℃〜440℃の範囲内に設定された請求項
    2に記載の燃料気化装置。
  6. 【請求項6】 前記加熱面の設定温度は220℃〜37
    0℃の範囲内に設定された請求項5に記載の燃料気化装
    置。
  7. 【請求項7】 前記燃料供給通路は、前記燃焼室に繋が
    るインテークマニホールドと該インテークマニホールド
    に繋がるとともに前記噴射ノズルが設けられた気化室と
    を備え、前記加熱体は前記気化室内において前記噴射ノ
    ズルの噴射域に前記加熱面を配置するように設けられた
    請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の燃料気化装
    置。
  8. 【請求項8】 前記請求項1〜請求項7のいずれか一項
    に記載の前記加熱体を備えた燃料気化用ヒータ。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102007054813A1 (de) 2007-11-16 2009-05-20 Robert Bosch Gmbh Verfahren und Vorrichtung zur Bestimmung der Zusammensetzung eines Kraftstoffgemischs
WO2014016920A1 (ja) * 2012-07-25 2014-01-30 トヨタ自動車株式会社 燃料噴射装置
US8935079B2 (en) 2010-03-19 2015-01-13 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Fuel supply system for internal combustion engine
CN114738149A (zh) * 2022-04-24 2022-07-12 潍柴动力股份有限公司 一种甲醇燃料发动机进气结构及其控制方法

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