JPH0978448A - 編地の製造法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ループ長が大きく、より多くの弾性繊維が編
み込まれた、伸長性の高い編地の製造法を提供する。 【解決手段】 弾性繊維をもちいる編地の製造法におい
て、弾性繊維と共に水溶性繊維を一緒に用いて編地を編
成し、ついで該編地中の上記水溶性繊維を溶解除去する
編地の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は弾性繊維を用いる編
地の製造法に関する。さらに詳しくは、伸長性の高い編
地、特にパンティストッキング等に好適な編地の製造法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】弾性繊維を用いる編地の代表的なものと
してパンティストッキングがある。従来、伸長性の高い
パンティストッキングを得るには、パンティストッキン
グに使用する弾性繊維を芯糸とするカバリング糸、例え
ばシングルカバリング糸、ダブルカバリング糸におい
て、弾性繊維のデニールを大きくしたり、カバリング糸
デニールを小さくする、またカバリング条件変更によ
り、カバリング糸の伸度を高くする、さらに編機の設定
条件を変更して度目を大きくし、編地のループ長を大き
くすること等が効果的であると考えられてきた。

【０００３】特に、パンティー部の伸長性が求められ
る、いわゆるワンピース型パンティストッキング、すな
わち、レッグ部からパンティー部、さらにレッグ部へと
連続的に編成するパンティー部に縫目のないものは、前
記したカバリング条件の変更、編成条件の設定変更が行
われている。しかし、弾性繊維に他の繊維をカバリング
した糸は、編成の際、張力が加えられ、実際には、伸び
切った状態で編み目をつくるため、カバリング条件を変
更した伸度の高いカバリング糸を使用しても、かえって
編み込まれるカバリング糸量すなわち弾性繊維の量は減
ってしまうこと、また同様の理由により、編成条件を変
更しても、ループ長があまり大きくならないことから、
伸長性にはあまり効果 がみられていない。

【０００４】従って、従来のカバリング条件、編成条件
の変更による製造法では、伸長性の高い編地、ワンピー
ス型パンティストッキング、パンティストッキングを製
造することは難しかった。

【０００５】

【発明が解決しょうとする課題】本発明の目的は、伸長
性の高い編地の製造法を提供しようとすることにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、弾
性繊維を用いる編地の製造法において、上記弾性繊維と
共に水溶性繊維を一緒に用いて編地を作成し、次いで上
記編地中の上記水溶性繊維を溶解除去することを特徴と
する編地の製造法、である。本発明で弾性繊維と共に水
溶性繊維を一緒に用いるということは、弾性繊維と水溶
性繊維とによって一つの編み目をつくることをいう。

【０００７】本発明の編地の製造法は、弾性繊維が弾性
繊維１００％の他、非水溶性繊維と複合した糸、例え
ば、弾性繊維のカバリング糸、コアヤーン、噴射加工
糸、などの複合した糸であってもよい。本発明の編地の
製造法は、弾性繊維と水溶性繊維とを編機上で別々に供
給しても、編機上で引揃えても給糸しても、予め、撚糸
又はカバリング糸および引揃糸など複合した形態の糸に
して給糸しても、弾性繊維と共に水溶性繊維を一緒に用
いる方法に特に制限はない。

【０００８】なお、複合した形態の糸は、弾性繊維もし
くは、シングルカバリング糸、ダブルカバリング糸など
の弾性繊維と非水溶性繊維を含む糸と、水溶性繊維を撚
糸した糸、また、弾性繊維もしくは、シングルカバリン
グ糸、ダブルカバリング糸などの弾性繊維と非水溶性繊
維を含む糸と、水溶性繊維の引きそろえ、またシングル
カバリング糸において、弾性繊維と水溶性繊維の引きそ
ろえに、非水溶性繊維をカバリングした糸、ダブルカバ
リング糸において、芯糸を弾性繊維に、下撚に水溶性繊
維、上撚に非水溶性繊維をカバリングした糸、逆に下撚
に非水溶性繊維、上撚に水溶性繊維をカバリングした糸
などがある。

【０００９】ただし、実際には、弾性繊維もしくは、シ
ングルカバリング糸、ダブルカバリング糸などの弾性繊
維と非水溶性繊維を含む糸と、水溶性繊維の引きそろ
え、またシングルカバリング糸において、弾性繊維と水
溶性繊維の引きそろえなど、弾性繊維を含む糸と水溶性
繊維を引きそろえた糸はビリが生じやすく編立性に劣
る。 また、現在、パンティストッキングの製造法は、
シングルカバリング糸、ダブルカバリング糸などの弾性
繊維と非水溶性繊維を含む糸とナイロン糸などとの交
編、シングルカバリング糸のみ、ダブルカバリング糸の
みを用いることが主流であるが、シングルカバリング、
ダブルカバリング装置を用いて製造された複合した形態
の糸を用いることが実際の工程上およびコスト面から好
ましい。

【００１０】したがって、本発明の編地の製造法は、ダ
ブルカバリング装置にて複合した糸で、弾性繊維を芯糸
とし、水溶性繊維を下撚糸とし、非水溶性繊維を上撚糸
としたダブルカバリング糸、又は、逆に非水溶性繊維を
下撚糸とし、水溶性繊維を上撚糸としたダブルカバリン
グ糸の、水溶性繊維を含んだ複合した形態の糸を用いる
ことがが好ましい。

【００１１】なお、本発明の編地の製造法は、上記２種
類のダブルカバリング糸のうち、水溶性繊維を下撚糸と
し、非水溶性繊維を上撚糸としたダブルカバリング糸を
用いる方が、編成時には水溶性繊維による弾性繊維の拘
束力が大きく、また、水溶性繊維の溶解後は、非水溶性
繊維が弾性繊維をゆるくカバリングしているため、編地
の置き寸、伸び寸ともに大きくなり、より好ましい。

【００１２】本発明でいう弾性繊維とは、エステル系や
エーテル系のポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステ
ル系の弾性糸およびゴム糸などをいい、また、非水溶性
繊維とは、ナイロン、ポリエステル、などの合成繊維の
他、レーヨン、綿など水に溶解しないその他各種繊維を
いう。 水溶性繊維とは、例えば水溶性のＰＶＡ繊維な
どのように水に容易に溶解するものをいう。

【００１３】なお、本発明の編地の製造法では、弾性繊
維、水溶性繊維、非水溶性繊維のデニール、フィラメン
ト数は特に限定されるものではないが、デニールが３〜
７５ｄ、フィラメント数が１〜１５０であることが好ま
しい。また、芯糸もしくは引揃糸を製造する際の、弾性
繊維のドラフト率、また水溶性繊維、非水溶性繊維のカ
バリング数などのいわゆるカバリング条件および撚糸条
件も、特に限定されるものではないが、弾性繊維のドラ
フト率は２．０〜３．０倍、水溶性繊維、非水溶性繊維
のカバリング数は５００〜２０００回／ｍ程度であるこ
とが好ましい。

【００１４】本発明で複合した形態の糸を用いる場合、
水溶性繊維は、編成時に一時的に、弾性繊維の伸縮性を
殺すことを目的として用いられ、かつ、途中工程上にお
いて溶解除去され、編地、例えば最終製品のパンティス
トッキング、を構成しないため、水溶性繊維を除いた糸
により、編地、パンティストッキングの構成が可能であ
ることが必須である。

【００１５】従って、本発明の編地の製造法は、通常一
般にパンティストッキングで用いられる複合した形態の
糸と水溶性繊維とを一緒に用いることが好ましい。本発
明の編地の製造法は、前記水溶性繊維を含む複合した形
態の糸を用いることが好ましく、所望のパンティストッ
キング編機を用いて水溶性繊維により、一時的に弾性繊
維の伸縮性を殺した状態で、編成して編地とし、ループ
長を大きく、かつ、より多くの弾性繊維を編み込んだの
ち、水溶性繊維を溶解除去することにより、伸長性の高
い編地、パンティストッキングを容易に得ることができ
る。

【００１６】本発明に用いる編機は、特に限定されない
が、パンティストッキング編機では、一般的な通常の１
シリンダーの編機が用いられ、口径、針本数は任意に設
定できる。度目（編機における針の引き込み量）は任意
であるが、カム位置下げまたはシンカー位置引きにより
最大度目に設定した時、最高伸長の編地とすることがで
きる。

【００１７】本発明の編地の製造法は、水溶性繊維の溶
解除去を、編地、パンティストッキングの編成後にリラ
ックスし、染色するなどの後加工工程として行ってもよ
いし、特に別工程を設けて行ってもよい。以上、本発明
の編地の製造法を、パンティストッキングの例を主にし
て説明したが、パンティストッキング以外、例えばガー
ドル等インナー、ファンデーション等広い分野の弾性繊
維を用いる編地の製造法として利用することができる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の編地の製造法をパ
ンティストッキングの例で詳しく説明する。なお、評価
方法は次の通りに行った。 （１）置き寸 編地を平面に置いた状態での、パンテイ部のマチ部組織
を除いた天竺組織部分の中心の編地緯方向の長さ（ｃ
ｍ）。 （２）伸び寸 編地を両手で持って両方に伸ばしたときの編地緯方向の
長さ（ｃｍ）。

【００１９】測定方法は、編地のマチ部組織を除いたパ
ンテイ部の中心位置の天竺組織部分の一端ともう一端と
を、両手の親指と他の指の爪の先で、端の限りなく極小
部分を掴み、弾性繊維が伸びきるまで、又は編地ループ
が破壊される寸前まで伸ばして測定する。

【００２０】

【実施例１〜２、比較例１】弾性繊維としてスパンデッ
クス１５ｄを、ドラフト率３．０倍で芯糸にして用い、
水溶性繊維として、４０ｄ／１７ｆの水溶性のＰＶＡ繊
維をカバリング数１２００回／ｍで下撚し、非水溶性繊
維として、３０ｄ／２４ｆのナイロン６６を下撚とは逆
撚でカバリング数８００回／ｍで上撚したダブルカバリ
ング糸１を作成した（実施例１）。

【００２１】また、非水溶性繊維としてナイロン６６を
カバリング数８００回／ｍで下撚し、水溶性繊維として
ＰＶＡ繊維をカバリング数１２００回／ｍで下撚と逆方
向に上撚した以外は実施例１と同様にしてをカバリング
したダブルカバリング糸２を作成した（実施例２）。釜
径４インチ、針本数４００本のパンティストッキング編
機を使用し、得られたダブルカバリング糸を、パンティ
ー部で最大度目となるよう、度目を変化させて、ワンピ
ース型パンティストッキングに編成した。

【００２２】なお、トウ先は５０ｄ／１７ｆのナイロン
６６捲縮加工糸、レッグ部はスパンデックス１５ｄにナ
イロン６６の１０ｄ／４ｆをシングルカバリングした糸
を用いた。得られたワンピース型パンティストッキング
の生機のウエストバンド部、トウ先を縫製し、ついでリ
ラックスし、染色し、ヒートセットを行った 。

【００２３】生機と、ＰＶＡ繊維溶解後の製品の、マチ
部を除いた天竺組織のパンティー部の置き寸（編地をフ
リーで置いた状態での編地横巾）と、製品のパンティー
部伸び寸（編地中、弾性繊維が伸びきるまでの編地横
巾）の評価を行った。更に比較例１として、上記のドラ
フト率２．５のスパンデックス１５ｄに３０ｄ／２４ｆ
のナイロン６６を８００回／ｍでシングルカバリングし
た糸を用いた以外は実施例１、２と同様に行ってワンピ
ース型パンティストッキングに編成した。

【００２４】比較例１のシングルカバリング糸に比べ
て、実施例１、２のダブルカバリング糸１、２は、とも
に置き寸が大きく、すなわち、ループ長が大きく、カバ
リング糸をより多く編み込んだ編地となっている。した
がって、伸び寸も大きい。また、ダブルカバリング糸を
用いた、本発明の編地の製造法による実施例１、２のパ
ンティストッキングは、比較例例１より置き寸が大きい
ことから、商品見栄えが良く、かつ脱着がしやすい。

【００２５】ＰＶＡ繊維を下撚にカバリングした実施例
１のダブルカバリング糸１の方が、実施例２に比べて、
編成時のスパンデックスの拘束力が大きく、さらにＰＶ
Ａ繊維溶解後、製品は、ナイロン６６がスパンデックス
をゆるくカバリングしているため、置き寸、伸び寸とも
に大きい。

【００２６】

【実施例３〜５、比較例２】ＰＶＡ繊維４０ｄ／１７ｆ
を、芯糸のシングルカバリング糸（スパンデックス１５
ｄ、ナイロン６６ ３０ｄ／２４ｆ、ドラフト率２．
５、カバリング数８００回／ｍ）に、イタリー撚糸機を
用いて、シングルカバリング糸の撚り方向と逆方向に８
００回／ｍ（実施例３）、１４００回／ｍ（実施例
４）、２０００回／ｍ（実施例５）撚糸した。

【００２７】パンティストッキング編機（釜径４イン
チ、針本数４００本）を使用し、トウ先はナイロン６６
捲縮加工糸（５０ｄ／１７ｆ）、レッグ部はシングルカ
バリング糸（スパンデックス１５ｄ、ナイロン６６ １
０ｄ／４ｆ）、そしてパンティー部は、上記の撚糸した
糸を、パンティー部にて最大度目となるよう、度目を変
化させて、ワンピース型パンティストッキングに編成し
た。ついでウエストバンド部、トウ先を縫製し、リラッ
クスし、染色し、ヒートセットした。

【００２８】生機と水溶性ＰＶＡ繊維の溶解後である製
品の、マチ部を除いた天竺組織のパンティー部の置き寸
（編地をフリーで置いた状態での編地横巾）と、製品の
パンティー部伸び寸（編地中、弾性繊維が伸びきるまで
の編地横巾）の評価を行った。比較例２として、上記の
シングルカバリング糸（スパンデックス１５ｄ、ナイロ
ン６６の３０ｄ／２４ｆ、ドラフト率２．５、カバリン
グ数８００回／ｍ）をパンティー部に用いた以外は実施
例３〜５と同様に行ってワンピース型パンティストッキ
ングに編成した。

【００２９】比較例２のシングルカバリング糸に比べ
て、ＰＶＡ繊維を上撚りした糸を用いた実施例３〜５の
ものは、置き寸が大きく、すなわちループ長が大きく、
カバリング糸をより多く編み込んだ編地となっている。
したがって、伸び寸も大きい。また、本発明の実施例３
〜５のパンティストッキングは、比較例２に比べて、い
ずれも置き寸が大きいことから、商品見栄えが良く、か
つ脱着しやすい。

【００３０】

【表１】

【００３１】

【表２】

【００３２】

【発明の効果】本発明の編地の製造法は、従来のものに
比べて、ループ長が大きく、かつより多くの弾性繊維が
編み込まれた、伸長性の高い編地が得られる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 弾性繊維を用いる編地の製造法におい
   て、上記弾性繊維と共に水溶性繊維を一緒に用いて編地
   を作成し、次いで上記編地中の上記水溶性繊維を溶解除
   去することを特徴とする編地の製造法。