JPH0940604A - クエン酸の精製方法 - Google Patents

クエン酸の精製方法

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JPH0940604A
JPH0940604A JP19682995A JP19682995A JPH0940604A JP H0940604 A JPH0940604 A JP H0940604A JP 19682995 A JP19682995 A JP 19682995A JP 19682995 A JP19682995 A JP 19682995A JP H0940604 A JPH0940604 A JP H0940604A
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citrate
calcium
disproportionation
hydrogen
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JP19682995A
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Yoshihisa Oda
喜久 織田
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 クエン酸水素塩を有機溶媒中において不
均化させてクエン酸とクエン酸塩とする。 【効果】 副原料がほとんど消費されず、廃棄物がほと
んど生成せず、操作が容易であり、操作条件の可変範囲
が広く、高純度化しやすい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クエン酸の精製方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クエン酸の精製法としてクエン酸カルシ
ウムを経由する方法がある。これは、粗クエン酸と水酸
化カルシウムからクエン酸カルシウムの塩を沈殿させて
不純物を除去し、硫酸で塩を分解して精製クエン酸を得
るものである。
【0003】クエン酸1水素カルシウムを経由する方法
もある。これは、粗クエン酸とクエン酸カルシウムから
クエン酸1水素カルシウムを生成させて不純物を除去
し、硫酸で1水素塩を分解して精製クエン酸を得るもの
である。
【0004】クエン酸1水素カルシウムを経由するもう
一つの方法として、特開平6−48979号公報にクエ
ン酸の精製方法が記載されている。これは、水相で粗ク
エン酸をクエン酸カルシウムと反応させてクエン酸1水
素カルシウムとし、次いでクエン酸1水素カルシウムを
水溶液中で不均化させてクエン酸を遊離させるというも
のである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】先行技術の方法は工業
生産に適用するにあたってはいくつかの改善すべき問題
がある。
【0006】クエン酸カルシウムを経由する方法は、
(1)副原料として多量の水酸化カルシウムと硫酸を必
要とし、(2)それらの副原料から多量の硫酸カルシウ
ムの廃棄物が生成するだけでなく、(3)クエン酸カル
シウムの生成と分解がバッチ処理になりしかも長時間が
必要である、という問題がある。クエン酸1水素カルシ
ウムを硫酸で分解するという方法はクエン酸カルシウム
を経由する方法よりも副原料の使用量と廃棄物発生量の
削減効果はあるがクエン酸カルシウムを経由する方法の
問題は残されている。
【0007】これらに対して、特開平6−48979号
公報に記載の方法は、原理的に副原料由来の塩類廃棄物
が生成しにくいので優れた方法である。問題点として
は、(1)遊離したクエン酸は水溶液となっているがカ
ルシウム塩が存在すること、(2)2回目の処理により
カルシウム塩の混入を減少させることができるが操作が
繁雑になり結果として処理時間が長くなること、(3)
クエン酸1水素カルシウムを経由する場合にのみ有効で
あること、(4)水溶液の濃縮のために多量のエネルギ
ーが必要と考えられること、が挙げられる。
【0008】クエン酸に混在するカルシウムは、クエン
酸の純度に意外と大きな影響を及ぼすものである。カル
シウムの原子量40に対してクエン酸の分子量は192
である。不純物のカルシウムの大部分がクエン酸2水素
カルシウムの形態で存在していると考えるとクエン酸2
水素カルシウムの量はカルシウムの量の約10倍に相当
する。そのため特開平6−48979号公報に記載の方
法で1回の処理で直接得られる真のクエン酸の純度は以
外と低いものである。特に、反応時間を短くした場合は
クエン酸1水素カルシウムからは8〜9%のカルシウム
を含むクエン酸が得られた(本発明の参考例)。クエン
酸の(見かけの)純度は、91〜92%になるが、組成
上はほぼクエン酸2水素カルシウムに相当するものであ
り改善されるべき問題である。
【0009】したがって、本発明の目的は、(1)副原
料をほとんど消費しない、(2)廃棄物をほとんど生成
しない、(3)操作が容易である、(4)操作条件の可
変範囲が広い、(5)高純度化しやすい、などの利点を
もつクエン酸の精製方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来技術の
もつ欠点を解決するクエン酸の精製方法について鋭意検
討した。その結果、クエン酸水素塩が有機溶媒中で効果
的に不均化することを見出だし、本発明を完成するに至
った。
【0011】すなわち、本発明は、有機溶媒を用いるク
エン酸水素塩の不均化工程を経由することを特徴とする
クエン酸の精製方法により達成することができる。
【0012】よって、本発明の特徴部分は、クエン酸水
素塩を不均化してクエン酸を製造する工程にあり、本発
明の方法では原理上は不純物以外の物質は容易に回収さ
れ再利用できるので先に記した利点(1)〜(5)が達
成できる。
【0013】なお本明細書において使用する「不均化」
という用語は、有機多塩基酸水素塩として存在する化学
種が相互に水素イオンや金属イオンなどの授受を行って
有機多塩基酸と有機多塩基酸塩とを生成する化学変化を
示すものとする。クエン酸は、有機多塩基酸の一つであ
ることは自明のことである。
【0014】
【発明の実施の態様】本発明の不均化によればクエン酸
水素塩から遊離のクエン酸を得ることができる。クエン
酸水素塩を有機溶媒中で不均化させて遊離のクエン酸を
製造するという新規性がある工程を含むものである。な
お、本明細書においてクエン酸水素塩とは、クエン酸1
水素塩、クエン酸2水素塩またはそれらの混合物をい
う。
【0015】本不均化法は、固体のクエン酸水素塩を有
機溶媒で処理することを特徴とするものである。不均化
処理条件において見られる液相は顕微鏡的にも有機溶媒
相のみであり、二液相間の分配を利用した通常の抽出法
とは異なるものである。
【0016】本方法は有機酸と有機酸塩の混合物から有
機酸を回収・精製する方法とも異なるものである。すな
わちそのような混合物においては固形状態や溶液状態な
どの存在状態にかかわらず常に化学量論的に有機酸が存
在している。そのような混合物からの有機酸の回収や精
製は物理変化を起こさせるものである。本方法は有機酸
水素塩の化学変化を効果的に行わせるものであり通常の
分離法とは本質的に異なるものである。
【0017】以下、本発明の好ましい実施の態様つき、
図面を用いて詳細に説明する。
【0018】まず、塩基類またはクエン酸塩をクエン酸
と反応させてクエン酸水素塩とする工程(クエン酸水素
塩の調製工程)と、クエン酸水素塩製造工程で得られた
クエン酸水素塩を有機溶媒中において不均化させてクエ
ン酸とクエン酸塩を得る工程(クエン酸水素塩の不均化
工程)とからなるものであり、図1は、この精製方法の
一実施態様として各工程の流れを簡単に表した概略工程
図である。
【0019】(I)クエン酸水素塩の調製工程 本工程(I)の操作自体は、よく知られているものであ
り特に新規なものではないが簡単に説明する。図1よ
り、所望するクエン酸水素塩(クエン酸1水素塩、クエ
ン酸2水素塩ないしそれらの混合物)は、(1)原料の
粗クエン酸水溶液を適当量のクエン酸塩と反応させるほ
か、(2)原料の粗クエン酸水溶液を適当量の金属酸化
物、水酸化物あるいは炭酸塩などで中和する、などの方
法により得られる。
【0020】原料とする粗クエン酸は、発酵法、酵素
法、抽出法、合成法などいずれの方法で調製されたもの
でもよい。この調製工程で得られるクエン酸水素塩に洗
浄、結晶化、再結晶等の操作を適用することにより原料
の粗クエン酸中の不純物を除去する。
【0021】工業生産上はクエン酸水素塩のうちカルシ
ウムを陽イオンとして含むものが特に使用しやすいと考
えられる。実際、先行するクエン酸精製法においては、
中間物質としてクエン酸カルシウムやクエン酸1水素カ
ルシウムというカルシウムの塩が用いられている。
【0022】ところで、クエン酸とカルシウムからはク
エン酸2水素カルシウムを形成させることが可能であ
る。本発明はもちろん先行発明の類似法においてクエン
酸2水素カルシウムが使用できれば反応率や廃棄物など
の点で工業的な利点は多いはずである。それにもかかわ
らずクエン酸2水素カルシウムが利用されなかったのは
取扱いが難しかったためである。すなわちクエン酸2水
素カルシウムは水溶性が大きく、しかも水溶液から再結
晶させにくいだけでなく、水溶液は加熱や希釈などによ
り分解しやすい。本発明者は、クエン酸2水素カルシウ
ムの製造についても検討した。
【0023】クエン酸2水素カルシウム水溶液は、クエ
ン酸カルシウム、あるいは水酸化カルシウム、酸化カル
シウムまたは炭酸カルシウムなどを粗クエン酸と水中で
反応させて調製することができる。この水溶液に有機溶
媒を急速に加えることによりクエン酸2水素カルシウム
を晶析させることができる。ここで調製するクエン酸2
水素カルシウム水溶液は希薄であると分解しやすくなる
ので濃度を10%以上とすることが好ましく、20%以
上とすることがより好ましい。クエン酸2水素カルシウ
ムの晶析に用いる有機溶媒は水溶性が大きく、クエン酸
やクエン酸水素塩類と化学反応を起こさないものであれ
ば使用可能である。その例としてメタノールやエタノー
ルなどのアルコール類、ジオキサンやDMEなどのエー
テル類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなど
のニトリル類などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、
クエン酸2水素カルシウム水溶液の液量に対して0.5
倍〜5倍が実用的であるが、より好ましくは1〜3倍で
ある。クエン酸2水素カルシウムは分解しやすいので、
クエン酸2水素カルシウムを晶析させ分離する過程はで
きる限り低温でしかも速やかにする必要がある。実施例
においては分離したクエン酸2水素カルシウムを洗浄し
ているが、不純物の性質や存在量によっては洗浄操作を
省き収量(収率)を上げることができる。晶析・分離操
作を的確に行わないとクエン酸2水素カルシウムが分解
することがあるが、そのような分解物を含有するクエン
酸2水素カルシウムであっても次に述べる不均化工程に
十分使用できる。
【0024】クエン酸2水素カルシウム調製法において
は、有機溶媒が晶析母液中に残る。有機溶媒は蒸留など
の既知の方法により若干の水を含む有機溶媒として回収
できる。本調製法に使用する有機溶媒は、若干の水を含
んでいても問題がないので回収した有機溶媒は再利用可
能である。
【0025】(II)クエン酸水素塩の不均化工程 本工程(II)が本発明の核となるものである。図1に示
すように、先述の工程(I)で得られたクエン酸水素塩
を有機溶媒中で処理することによりクエン酸が生成する
(式1)。また、別法により調製したクエン酸水素塩も
本工程(II)に使用できる。
【0026】 クエン酸1水素塩 → クエン酸 クエン酸2水素塩 → クエン酸 (式1) 上記式1に関連した反応として有機酸水素塩の水溶液に
おいては平衡反応により有機酸が生成することは広く知
られていることである。ただし、有機酸水素塩水溶液を
濃縮すると再び有機酸水素塩が形成され、遊離の有機酸
を得ることができないことが普通である。そのために有
機酸水素塩の水溶液を不均化させて遊離の有機酸を調製
することは困難と信じられてきた。幸運な例外として、
(1)L−リンゴ酸水素カルシウム水溶液が60℃で不
均化するという記載(広川書店、化学大辞典)が見られ
る(再現することは難しかった)、(2)クエン酸1水
素カルシウムの水相における不均化による遊離のクエン
酸の調製(特開平6−48979号公報)、(3)これ
らに関連して本発明者はDL−リンゴ酸水素カルシウム
水溶液を加熱すると不均化することを認めた、というこ
とがみられるのみである。
【0027】本不均化工程(II)は、有機溶媒中でクエ
ン酸水素塩を処理するという点に特徴がある。したがっ
て、本不均化方法は、従来困難とされてきた汎用的・効
果的な有機酸水素塩の不均化を可能とし、容易に分離で
きる状態で有機酸を生成させるものである。この点で水
溶液中の平衡反応による有機酸の生成とは質的に異なる
ものである。
【0028】本発明の不均化法は、種々のクエン酸水素
塩、すなわち各種のクエン酸1水素金属塩およびクエン
酸2水素金属塩に適用可能である。得られるクエン酸
は、有機溶媒溶液となっているので濃縮が容易であるこ
とや塩類不純物含有率が低いことなど特開平6−489
79号公報の方法よりもさらに利点が多い。以下に発明
の核心たる不均化工程(II)を詳細に説明する。
【0029】〔有機溶媒〕本発明の不均化工程(II)に
おいては有機溶媒を用いている。有機溶媒は、不均化処
理の温度においてクエン酸を溶解し不均化処理中の変質
が問題とならないものであればどのようなものでも使用
可能である。ただし実際の操作を考えると不均化処理の
温度条件においてクエン酸を5重量%以上溶解する有機
溶媒が好ましい。有機溶媒の沸点は、有機溶媒の使用範
囲を直接制限するものではないが回収再使用の容易さの
点では気化・凝縮をおこさせやすい方が好ましい。この
点からいうと好ましくは有機溶媒の沸点が1気圧下にお
いて160℃以下であり、より好ましくは1気圧下にお
ける沸点が120℃以下である。より一層好ましい有機
溶媒の具体例は、アセトン、2−ブタノン(MEK)な
どのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、
1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジオキサン、ジ
グリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)など
のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノー
ル、ペンタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニト
リル(AN)などのニトリル類、酢酸エチルなどのエス
テル系溶媒、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒など
である。
【0030】これらの有機溶媒は、混合して用いること
も可能である。少量の物質を添加して不均化を促進する
ことも可能である。特に不均化条件で水溶液相を出現さ
せない範囲で少量の水を含有することあるいは水を添加
することは効果的である。この状態では固体のクエン酸
水素塩類(水素塩および正塩)は有機溶媒に懸濁してい
る。
【0031】〔不均化の温度と時間〕不均化工程(II)
における不均化反応に温度や時間は影響する。不均化は
高温のほうが進行しやすい。不均化の温度を高く設定す
れば時間は短く設定できる。不均化の速度は、用いるク
エン酸水素塩の粒度にも依存するので、後述する実施例
では50℃、1時間の不均化処理条件を多用している。
ただし不均化処理条件は実施例に例示した温度や時間に
限定されるものではない。不均化処理条件は用いる有機
溶媒、クエン酸水素塩中の水素イオン、クエン酸水素塩
中の金属イオン、クエン酸水素塩の状態により不均化操
作やそれに続く分離操作に困難をきたさない範囲で自由
に設定可能である。
【0032】〔クエン酸水素塩〕本不均化法は、種々の
クエン酸水素塩に適用可能である。調製工程(I)以外
の方法で調製したクエン酸の水素塩にも適用可能であ
る。不均化工程に使用するクエン酸水素塩中の陽イオン
として様々なものが利用できる。例えば、アンモニウム
イオンやリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウム
イオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオ
ン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウ
ムイオンなどのアルカリ土類金属イオンやその他亜鉛な
ど種々の金属イオンなどが使用可能である。実用的には
カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイ
オン、亜鉛イオンの使用が好ましく、カルシウムイオン
は特に好ましい。
【0033】不均化工程(II)に使用するクエン酸水素
塩は、無水塩に限定されるものではない。すなわちクエ
ン酸水素塩に結晶水や吸着水・付着水が含まれていても
本不均化法は適用可能である。
【0034】〔クエン酸水素塩の粒子の大きさと不均化
操作中の攪拌〕本不均化法を効果的に適用できる条件で
は有機溶媒中にクエン酸水素塩の粒子が懸濁している。
該粒子の大きさが小さいと不均化が速く進行するので有
利である。ただし、不均化反応の進行に伴い粒子が崩壊
することが見られるので処理時間を長くし、攪拌を強く
すれば大きな粒子でも不均化処理できる。
【0035】〔クエン酸水素塩と有機溶媒の混合比率〕
クエン酸水素塩と有機溶媒の混合比率は、クエン酸水素
塩中の水素イオンのモル数にもとづき表示すると水素イ
オン1ミリモルに対して有機溶媒を0.1〜50mlと
するのが実用的である。好ましくはクエン酸水素塩の水
素イオン1ミリモルに対して有機溶媒0.5〜10ml
である。
【0036】〔不均化操作後の処理〕本不均化工程(I
I)においては、不均化反応後に固体状態のクエン酸塩
類とクエン酸の有機溶媒溶液を分離する。これらの両者
の分離(固液分離)は、濾過法、遠心分離法、デカンテ
ーションなど一般的に行われている分離法が適用でき
る。不均化処理後に温度を変化させて放置すると不均化
率が変化するので、クエン酸塩類とクエン酸の有機溶媒
溶液の分離は速やかに行うことが好ましい。
【0037】分離したクエン酸の有機溶媒溶液は、有機
溶媒を蒸留あるいは蒸発させる処理をして有機溶媒とク
エン酸をそれぞれ分離回収する。この分離回収法は一般
的な方法である。ここで回収した有機溶媒は、図1に示
すように不均化工程(II)内で循環させることで再使用
できる。本不均化工程(II)においては、純度が高いク
エン酸を容易にしかも短時間で回収することが可能であ
る。
【0038】本発明の精製方法で得られるクエン酸中の
不純物で重要なものは、クエン酸水素塩に由来する金属
である。金属としてカルシウムを用いた場合、カルシウ
ム量は、用いる有機溶媒によって異なるが、0.03%
〜0.07%以下である。すなわち、本発明の精製方法
を用いれば、最終的に得られるクエン酸の純度を99.
93〜99.97%以上に容易に精製できる。
【0039】また、図1に示すように、本不均化工程
(II)でクエン酸塩類は、固体状態で回収される。回収
されたクエン酸塩類は、クエン酸水素塩の調製工程
(I)においてクエン酸水素塩の製造原料として循環使
用することができる。この操作により最初にクエン酸水
素塩の調製に用いた金属酸化物、水酸化物、炭酸塩ある
いはクエン酸塩に由来する塩基成分を回収再利用でき
る。
【0040】さらに、本不均化工程(II)においては、
回収されたクエン酸塩類は、図1で示すものとは別の実
施態様として、再び不均化処理し残存しているクエン酸
水素塩からクエン酸を遊離させることができる。回収し
たクエン酸塩類に対して不均化処理を繰り返すことによ
り最終的にはクエン酸水素塩をすべて不均化させること
も必要に応じて可能である。
【0041】以上説明したように、本発明に係る精製方
法においては、副原料として使用した塩基成分や有機溶
媒をほぼ完全に再利用できる。その結果、こうした副原
料をほとんど消費せず、従って副原料由来の廃棄物をほ
とんど発生させずにクエン酸を精製することが可能であ
る。
【0042】
【実施例】以下、実施例を参照しながら本発明をさらに
具体的に説明する。なお、本発明においては、特にクエ
ン酸とカルシウムからなる塩類を多用している。それら
の塩類の呼称と化学式についてクエン酸根(citric acid
group) をcitと略して特に記述すると、クエン酸カ
ルシウムは、Ca3 cit2 、クエン酸1水素カルシウ
ムはCaHcit、クエン酸2水素カルシウムはCa
(H2 cit)2 である。以下の、実施例ならびに比較
例において記載したモル数はこれらの化学式に従ったも
のである。また、ここで「不均化率」とは、以下に示す
式2
【0043】
【数1】
【0044】で表される値である。
【0045】式2における水素イオンの量はクエン酸水
素塩あるいはクエン酸を水溶液とし水酸化ナトリウムで
中和滴定を行うことにより測定できる。滴定誤差を小さ
くするために水素イオン濃度(pH)をpHメーターで
測定し加えた水酸化ナトリウムあたりのpH変化が最大
となる時点を中和点として水素イオン量を求める。この
方法では中和点のpHは、以下に示す式3の酸解離定数
(pKa3 )よりも概ね2〜3高いものであり滴定誤差
は0.2%以下である。
【0046】
【化1】
【0047】(1)粗クエン酸を原料とした純クエン酸
1水素カルシウムの合成 クエン酸1水和物21.0g(0.1モル)にグルコー
ス6.4gを加えたものを使用した。この粗クエン酸を
50mlの水に溶解し、クエン酸カルシウム49.8g
(0.1モル、すなわち、Ca0.3モルとクエン酸根
0.2モルを含む)の水懸濁液(水150ml含有)と
0℃で混合した。得られた沈殿は分離し、冷水100m
lずつで3回洗浄した。真空下に乾燥し、61.9g
(0.269モル、理論値に対する収率90%)のクエ
ン酸1水素カルシウムの固体を得た。クエン酸1水素カ
ルシウム中のグルコース含有率は0.02%未満であ
り、クエン酸を生成させる工程に使用できるものであっ
た。
【0048】(2−a)クエン酸1水素カルシウムの不
均化−その1− 上記で得た691mg(3.00ミリモル)のクエン酸
1水素カルシウムに有機溶媒3mlを加え50℃で1時
間攪拌した。濾過して有機相を分離し残渣は有機溶媒1
mlずつで2回洗った。有機相と洗液は合わせて濃縮し
クエン酸を得た。用いた有機溶媒と結果を表1にまとめ
た。
【0049】
【表1】
【0050】(2−b)クエン酸1水素カルシウムの不
均化−その2− 上記で得た691mg(3.00ミリモル)のクエン酸
1水素カルシウムにDME5mlを加え50℃で1時間
攪拌した。濾過して有機相を分離し、残渣はDME1m
lずつで2回洗った。有機相と洗液は、合わせて濃縮し
クエン酸70.1mg(0.365ミリモル、反応率3
7%)を得た。反応温度を80℃とした場合についても
検討したがクエン酸67.9mg(0.354ミリモ
ル、不均化率35%)が得られた。これらのクエン酸の
カルシウム含有量は0.03%以下であった。
【0051】(2−c)クエン酸1水素カルシウムの不
均化−その3− 上記で得た460mg(2.00ミリモル)のクエン酸
1水素カルシウムにジグリム4mlを加え50℃で1時
間攪拌した。濾過して有機相を分離し、残渣はジグリム
1mlずつで2回洗った。有機相と洗液中のクエン酸は
80.4mg(0.419ミリモル、不均化率63%)
であった。反応温度を120℃とした場合についても検
討したがクエン酸33.5mg(0.174ミリモル、
不均化率26%)が得られた。
【0052】(2−d)クエン酸1水素カルシウムの不
均化−その4− さらに同様に、691mg(3.00ミリモル)のクエ
ン酸1水素カルシウムにメタノール5mlを加え50℃
で1時間攪拌した。濾過して有機相を分離し、残渣はメ
タノール1mlずつで2回洗った。有機相と洗液は合わ
せて濃縮しクエン酸107.7mg(0.561ミリモ
ル、不均化率56%)を得た。このクエン酸のカルシウ
ム含有量は0.07%以下であった。
【0053】実施例2 (1)粗クエン酸を原料としたクエン酸2水素カルシウ
ムの合成 クエン酸1水和物8.4g(40ミリモル)にグルコー
ス2.6g(グルコース含有率24%に相当)を加えた
ものを使用した。この粗クエン酸を水30mlに溶解
し、クエン酸カルシウム4.98g(10ミリモル、す
なわち、Ca30ミリモルとクエン酸根20ミリモルを
含む)の水懸濁液(水10ml含有)と室温(25℃)
で混合した。クエン酸カルシウムは溶解し透明な溶液が
得られた。この溶液を0℃に冷却し0℃のアセトン10
0mlを急速に混合した。生成した白色の沈澱を分離
し、含水アセトン(アセトン:水=2.5:1)20m
lで洗い乾燥した。得られたクエン酸2水素カルシウム
は、9.6g(理論値に対する収率は76%)、グルコ
ース含有率は2%であり、不均化に十分使用できるもの
であった。
【0054】(2−a)クエン酸2水素カルシウムの不
均化−その1− 上記で得た323mgのクエン酸2水素カルシウム試料
(317mg、0.75ミリモルのクエン酸2水素カル
シウムを含有)に有機溶媒3mlを加え50℃で1時間
攪拌した。濾過して有機相を分離し残渣は有機溶媒1m
lずつで2回洗った。有機相と洗液は合わせて濃縮しク
エン酸を得た。用いた有機溶媒と結果を表2にまとめ
た。
【0055】
【表2】
【0056】(2−b)クエン酸2水素カルシウムの不
均化−その2− 上記で得た317mg(0.75ミリモル)のクエン酸
2水素カルシウムにDME3mlを加え80℃で1時間
攪拌した。濾過して有機相を分離し、残渣はDME1m
lずつで2回洗った。有機相と洗液は合わせて濃縮しク
エン酸146mg(0.76ミリモル、不均化率76
%)を得た。このクエン酸のカルシウム含量は0.03
%以下であった。
【0057】比較例1 本比較例は特開平6−489798号公報に記載の方法
ないしその類似法に則して行ったものである。
【0058】(1)粗クエン酸を原料とした純クエン酸
1水素カルシウムの合成 実施例1と同様にしてクエン酸1水素カルシウムを合成
した。
【0059】(2)クエン酸1水素カルシウムの不均化 691mg(3.00ミリモル)のクエン酸1水素カル
シウムに水3mlを加え50℃で1時間攪拌した。濾過
して水相を分離し、残渣は水1mlずつで2回洗った。
水相と洗液を分析したところカルシウム11.3mg
(0.282ミリモル)、クエン酸根0.578ミリモ
ル(クエン酸として111mg)が検出された。反応に
用いる水を5mlとした場合についても検討したが処理
後に水溶液としてカルシウム14.9mg(0.372
ミリモル)、クエン酸根0.860ミリモル(クエン酸
として165mg)が検出された。これらの結果は得ら
れたクエン酸中にカルシウムが重量比で8〜9%存在し
ていることを示すものであった。クエン酸とカルシウム
のモル比から判断するとクエン酸1水素カルシウムを水
中で1時間処理した場合はクエン酸2水素カルシウムの
水溶液が得られると考えたほうが妥当なようであった。
【0060】比較例2 本比較例も特開平6−489798号公報に記載の方法
ないしその類似法に則して行ったものである。
【0061】(1)粗クエン酸を原料とした純クエン酸
2水素カルシウムの合成 実施例2と同様にしてクエン酸2水素カルシウムを合成
した。
【0062】(2)クエン酸2水素カルシウムの不均化 317mg(0.75ミリモル)のクエン酸2水素カル
シウムに水3mlを加え50℃で1時間攪拌した。濾過
して水相を分離し、残渣は水1mlずつで2回洗った。
水相と洗液を分析したところカルシウム14.3mg
(0.359ミリモル)、クエン酸根1.104ミリモ
ル(クエン酸として212mg)が検出された。この結
果は得られたクエン酸中にカルシウムが重量比で6%存
在していることを示すものであった。
【0063】各実施例並びに比較例での不均化で得られ
るクエン酸中のカルシウム含有率を分析した結果、カル
シウム含有率は低く、従来技術に対し本発明の優位性が
確認された。さらに、クエン酸カルシウムの溶解度につ
いては、50℃ではおおよそ0.2g/dl水(50m
gCa/dl)の溶解度があるのに対し、比較例ではカ
ルシウムの溶解度がもっと高いことが示唆されたが、こ
れは共存するクエン酸の影響によるものであり、実質的
にはクエン酸2水素カルシウムになっているためではな
いかと考えられる。なお、含水アセトンや含水DMEの
クエン酸カルシウムの溶解度に関しては、50℃では2
mg/dl溶液溶媒(0.5mgCa/dl)以下であ
ることが確認された。
【0064】
【発明の効果】本発明に係るクエン酸の精製方法では、
クエン酸水素塩の不均化工程を経由することにより、
(1)副原料をほとんど消費しない、(2)廃棄物をほ
とんど生成しない、(3)操作が容易である、(4)操
作条件の可変範囲が広い、(5)高純度化しやすい、と
する利点をもつので、クエン酸を容易かつ効率的に、副
原料消費や廃棄物生成の問題なしに精製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る精製方法の一実施態様を表した
工程図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶媒を用いるクエン酸水素塩の不均
    化工程を経由することを特徴とするクエン酸の精製方
    法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114711432A (zh) * 2022-04-27 2022-07-08 云南莱德福科技有限公司 水溶钙及其制备方法和钙剂及水溶钙的应用

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114711432A (zh) * 2022-04-27 2022-07-08 云南莱德福科技有限公司 水溶钙及其制备方法和钙剂及水溶钙的应用

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