JPH093633A - イオンビーム蒸着装置およびイオンビーム蒸着方法 - Google Patents

イオンビーム蒸着装置およびイオンビーム蒸着方法

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JPH093633A
JPH093633A JP15801995A JP15801995A JPH093633A JP H093633 A JPH093633 A JP H093633A JP 15801995 A JP15801995 A JP 15801995A JP 15801995 A JP15801995 A JP 15801995A JP H093633 A JPH093633 A JP H093633A
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JP
Japan
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ion beam
metal
vapor deposition
source
coil
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Application number
JP15801995A
Other languages
English (en)
Inventor
Yusuke Tanaka
裕介 田中
Yasunori Wada
恭典 和田
Yasuyuki Yamada
保之 山田
Taiji Onishi
泰司 大西
Natsuki Ichinomiya
夏樹 一宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 蒸発源からのマクロパーティクル・マクロド
ロップレットが基材表面に付着することを可及的に防止
し、しかも、イオン量と蒸発金属量を幅広い範囲で変更
でき、種々のイオンビーム蒸着条件下において均一で高
品質なミキシング層を生産性よく形成することが可能な
イオンビーム蒸着装置および方法を提供する。 【構成】 真空容器内に、アーク放電によってターゲッ
ト金属から蒸気を発生させて基材表面に蒸着させる1個
以上の金属蒸発源と、イオンビームを発生させて該基材
表面に照射するイオンビーム源を有するイオンビーム蒸
着装置において、金属蒸発源のターゲット金属蒸発面
と、前記基材との間に励磁可能なコイルを配置し、該コ
イルの励磁によって生じる磁力線が前記中心軸からみて
外向に発散する距離の位置に前記蒸発面を位置させた。
該コイルを励磁することによって、蒸発面からの溶融粒
子の混入を防ぐと共に、基材に到達する金属蒸気量を制
御することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基材表面に金属や化合
物の蒸着を行うと共に、イオンを照射して、基材の表面
改質を行うことができるイオンビーム蒸着装置および該
装置を用いるイオンビーム蒸着方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、基材表面の改質を行うためにイオ
ンビーム蒸着手段が用いられ始めてきた。イオンビーム
蒸着装置としては、図2に示したような、金属蒸気を発
生させるための蒸発源31と、イオンビームを発生させ
るイオンビーム源2を備え、真空容器10内において基
材11に対して蒸着を行うと共にイオン照射を行うこと
ができるダイナミックミキシング装置1が知られてい
る。ダイナミックミキシング装置を用いると、得られる
膜が緻密で硬質のものとなるという利点があり、また蒸
着源の金属とイオンビーム源の金属との合金薄膜の形成
や反応性ガスを用いたセラミック薄膜の形成も可能であ
る。さらに、イオンビームスパッタリングやイオン注入
を行うこともでき、真空蒸着、スパッタリング、イオン
プレーティング、イオン注入等を1つの装置で行えると
ころに特徴を有する。
【0003】上記従来のダイナミックミキシング装置に
おける金属蒸発源は、るつぼ内に入れた金属に電子ビー
ムをあてて金属を溶融し蒸発させる電子ビーム加熱式蒸
発源が用いられることが多かった。またイオン源として
は、図3に示した様に、金属蒸気発生炉7で生成した金
属蒸気をプラズマ生成室8でイオン化し、加速して大電
流のイオンビームを引き出すフリーマン型イオンビーム
源が用いられている。ダイナミックミキシング装置内で
は、電子ビーム加熱式蒸発源から発生した蒸発金属と、
イオンビーム源から引き出された金属イオンビームの金
属が、基材表面で混合されて基材表面に注入または蒸着
され、目的とする薄膜が形成されて基材の表面改質が行
われている。
【0004】ところが、前記電子ビーム加熱式蒸発源
は、高融点金属を溶融および蒸発させるには大電流を必
要とするため効率が悪く、また、蒸発源金属を溶融状態
でるつぼ内に収容させなければならないため、常に真空
容器の下方(基材の下方)に設置する必要があり、装置
内での配置が著しく限定されるという問題があった。
【0005】一方、フリーマン型金属イオンビーム源
は、金属蒸気発生炉の特性に見合った蒸発温度である金
属塩化物を挿入するかあるいは塩素ガスと共に金属片等
を炉内に入れて金属蒸気を発生させ、この金属蒸気をプ
ラズマ生成室に送り込んでイオン化しているが、このと
き生成する塩素ガス等の反応性残留物がプラズマ発生用
フィラメント(図3中の9)を侵すため、フィラメント
の寿命が短いという問題があった。また、引き出された
イオンビームには数種類のイオンが混在するので、目的
のイオンを選択するためには質量分離用磁場を併設しな
ければならないが、質量分離用磁場発生システムはかな
り大型なものであって真空容器への取付け位置が制約さ
れるため、イオンビーム蒸着装置の装置の自由度が極端
に狭まり、複雑な形状の基材に対して、均一な注入や蒸
着が困難であった。
【0006】従来のダイナミックミキシング装置の上記
問題を改良した装置として、電子ビーム加熱式蒸発源に
代えて、カソードにしたターゲット金属とアノードとの
間のアーク放電によりターゲットから金属蒸気を発生さ
せるアーク放電式の金属蒸発源を用い、さらにフリーマ
ン型イオン源の代わりに、アーク放電を用いて金属をイ
オン化し、この金属イオンを加速電極にて加速して、高
エネルギーのイオンビームとして基材に照射するダイナ
ミックミキシング装置(特開平6−2118号)や、該
アーク放電式金属蒸発源と基材の間に、金属蒸気を部分
的に通過させる開口部を有する絞り部材を設け、真空容
器内の金属蒸気量(A)とイオン源からのイオンビーム
量(I)の比I/Aを大きくし、生成する皮膜の特性を
向上し得るダイナミックミキシング装置(特開平7−5
4147号)が本願と同一出願人によって既に開示され
ている。
【0007】これらの改良型ダイナミックミキシング装
置は、真空容器に対する金属蒸発源および金属イオンビ
ーム源の取り付け位置の制約が少なく、複雑な形状を有
する基材であっても均一に注入および蒸着処理が可能で
あり、しかも装置全体がコンパクトであるという利点を
有するものである。
【0008】しかし、上記改良型装置において用いられ
ているアーク放電式の金属蒸発源にも次の様な問題が起
こっている。すなわち、カソードであるターゲット表面
からカソード金属の溶融粒子が発生する問題である。こ
の溶融粒子は、ターゲット金属から発生するイオンやプ
ラズマ粒子より大きいため、マクロパーティクルあるい
はマクロドロップレットと呼ばれるが、これらが基材上
のイオンミキシング層に混入すると、蒸着皮膜が均一に
イオンミキシングされなくなり、皮膜表面粗度の悪化や
密着力の低下が引き起こされる。
【0009】また、アーク放電によって金属や化合物を
蒸着しながらイオンミキシングを行う場合、金属蒸気量
とイオンビーム量とのバランスが取りにくいという問題
が依然として存在している。イオンビーム量はイオン化
効率等の問題から、金属蒸気量に比べてどうしても少な
くならざるを得ないのが現状であるが、アーク放電を用
いて蒸着を行うと、安定して行えるアーク放電値の範囲
が限られていて、特にその下限値が高いため、金属蒸気
量の下限値が高くなり、イオンビーム中のイオン量
(I)と金属蒸気量(A)の比:I/Aが小さく、所望
特性の膜を得ることができない。このため、前記特開平
7−54147号では、アーク放電式蒸発源と基材の間
に金属蒸気の一部のみを通過させる開口部を有する絞り
部材を設け、I/Aのコントロールを図ったが、やはり
I/Aは最大でも0.5程度であった。しかもこの方法
では、絞り部材により絞られて基材に到達しない蒸発物
も同時に発生することになるので、基材に到達させるべ
き蒸着量に比べて、カソード表面で発生させる蒸発量が
多く必要となるため、経済性が悪い。
【0010】さらに従来のダイナミックミキシング法で
は、蒸着に適している真空度に比べ、イオンビーム注入
に適している真空度が高真空側にあり、重なり合う真空
度の範囲が少なく、イオンミキシングの行える条件が非
常に狭いという問題もあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした事情
に着目してなされたものであって、真空容器に対する取
付け位置の制約が少なく装置全体をコンパクトにするこ
とができる蒸発源およびイオンビーム源を利用して、複
雑な形状を有する基材であっても均一に注入ならびに蒸
着処理が行えるイオンビーム蒸着装置および方法の提供
を前提とし、特に本発明では、蒸発源からのマクロパー
ティクル・マクロドロップレットが基材表面に付着する
ことを可及的に防止し、しかも、I/Aを幅広い範囲で
変更でき、種々のイオンビーム蒸着条件下において均一
で高品質なミキシング層を生産性よく形成することが可
能なイオンビーム蒸着装置および方法を提供することに
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明のイオンビーム蒸着装置とは、真空容器内に、アー
ク放電によってターゲット金属から蒸気を発生させて基
材表面に蒸着させる1個以上の金属蒸発源と、イオンビ
ームを発生させて該基材表面に照射するイオンビーム源
を有するイオンビーム蒸着装置において、金属蒸発源の
ターゲット金属蒸発面と、前記基材との間に励磁可能な
コイルを配置し、該コイルの励磁によって生じる磁力線
が前記中心軸からみて外向きに発散する距離の位置に前
記蒸発面を位置させたところに要旨を有する。また本発
明の方法は、上記イオンビーム蒸着装置を用いて、アー
ク放電によって発生するプラズマは前記磁力線に沿って
コイル内真空空間を通過させ、基材に到達する金属蒸気
量を制御するところに要旨を有する。
【0013】
【作用】本発明者らは前記目的を達成するイオンビーム
蒸着装置を製作する検討を重ねた。その結果、アーク蒸
発源の蒸発面と基材の間にコイルを配置し、コイルを励
磁することによって、蒸発面からの溶融粒子の混入を防
ぎつつI/Aをコントロールし、さらに蒸着とイオンミ
キシングの行える真空度範囲を広げることに成功し、本
発明を完成させた。
【0014】本発明のイオンビーム蒸着装置の金属蒸発
源は、アノードと、蒸着させるべき金属をターゲットと
して取付けたカソードとの間のアーク放電を利用したも
のである。アーク放電式蒸発法は、カソードである固体
金属がアーク放電により局部的に溶融して気化するもの
であり、単位面積あたりのエネルギーを高くすることが
でき、高融点金属の金属蒸気を得る場合でも電子ビーム
に比べてかなり小電流で済む。また、ターゲット固体金
属からの直接放電を使用するため、電子ビーム加熱式蒸
発源を使用する場合のように装置下方にるつぼを設置す
る必要もない。従って、金属蒸発源の取付け位置に関し
ては制限がなく、基材の配置も自由に選択できる等、装
置自体の設計の自由度が高まり、複合組成や多層皮膜等
を形成するために複数の金属蒸発源を使用することも容
易である。
【0015】本発明の最大の特徴は、アーク放電式蒸発
源のターゲット金属蒸発面と、前記基材との間に励磁可
能なコイルを配置し、該コイルの励磁によって生じる磁
力線が前記中心軸からみて外向きに発散する距離の位置
に前記蒸発面を位置させるところにある。コイルを励磁
すると、蒸発面の中心軸線方向に磁力線が発生し、コイ
ルから離れるにつれてこの磁力線は中心軸線からみて外
向きに発散していく。アーク蒸発源の蒸発面を、磁場が
外向きに発散していくところに位置させておくと、アー
ク放電で生成したプラズマ中の金属イオンは磁力線に導
かれコイル内を通過して基材に到達する。しかし、中性
である溶融粒子には磁場の作用が働かないために、基材
に到達しにくい。従って、不都合を起こす溶融粒子を基
材に付着させることなく、効率的に金属イオンを基材に
付着させることができる。
【0016】またアーク蒸発源から蒸発した金属イオン
のみを磁力線によって真空容器内に導くことができるた
め、プラズマのロスが少ない。しかもアーク放電の安定
性を左右することなく、コイルにより発生する磁場の大
きさを変化させるだけで真空容器内に導入する蒸発イオ
ン(金属蒸気)量を調節できるため、従来のアーク放電
式蒸着法を用いるイオンミキシング装置に比べて、金属
蒸気量をより広い範囲で変化させることができる。従っ
て、真空容器内でイオンミキシングが行われる時の金属
蒸気量(A)とイオン源からのイオンビーム量(I)の
比I/Aを、非常に広範囲に取ることができる。
【0017】さらにコイルを用いたアーク放電式蒸着法
を採用した場合、従来よりも高真空度側で安定なプラズ
マ形成が可能であることが見出された。従って、アーク
放電式蒸着を安定に行える真空度領域が広くなり、高真
空で行わなければならないイオンミキシングと共通する
真空度領域が広範囲になり、従来のダイナミックミキシ
ング装置に比べ、ミキシング条件の選択度が広がること
となった。
【0018】なお、本発明のイオンビーム蒸着装置のイ
オンビーム発生源としては、特に限定されるわけではな
いが、アノードとカソードとのアーク放電により気化し
たカソード構成金属イオンをイオンビームとして引き出
すアーク放電式イオンビームが推奨される。この方式
は、数mA以上のビーム電流を比較的容易に得ることが
でき、ビームサイズも外径150mm程度と大きく、さ
らにイオン源が固体金属であるため、真空容器の上方な
らびに左右の適宜方向に配置可能であり、装置設計の自
由度が増し、複雑な形状の基材にも均一にイオン照射で
き装置全体もコンパクトにすることが可能である。
【0019】本発明によれば、真空容器内の金属蒸気量
の制御範囲が広く、金属蒸気に対するイオンビーム量
(I/A)を幅広い範囲で調節可能であるが、さらにI
/Aの範囲を広げるために、アーク蒸発源と基材の間
に、金属蒸気通過量を調整することが可能な開閉自在の
絞り機構を設置しても良い。
【0020】
【実施例】次に本発明の実施例を示すが、本発明はもと
より下記実施例によって制限を受けるものではなく、前
後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施
することも勿論可能であり、いずれも本発明の技術的範
囲に含まれる。
【0021】実施例1 図1には、本発明のイオンビーム蒸着装置1の一実施例
を示した。図1において10は真空容器であり、図中左
下の排気口を通じて真空ポンプに接続されている。該真
空容器10の下方には基材11が回転可能な回転台12
上に載置されている。回転台12は真空容器10外のバ
イアス電源13に接続され、基材11には回転台12を
介して負のバイアス電位が印加される。
【0022】真空容器10の左側にはアーク放電式のイ
オンビーム源2が取り付けられており、カソードである
金属イオン源21とアノードである真空容器10との間
でアーク放電を起こす様に構成されている。アーク放電
の結果、イオン源のカソード金属は蒸発・イオン化し、
生成した金属イオンが電極22によって加速され、高エ
ネルギーのイオンビームとなって真空容器内に注入され
る。アーク放電型イオンビーム方式は、数mA以上のビ
ーム電流を比較的容易に得ることができ、ビームサイズ
も外径150mm程度と大きいため、均一に広範囲なイ
オン照射を行うことができる。
【0023】真空容器10の右側および上方には、励磁
可能なコイル32を有するアーク放電式蒸発装置3,3
が取付けられている。アーク放電式蒸発装置3は、蒸着
させようとする金属からなるカソード蒸発源31とアノ
ードである真空容器10との間でアーク放電を起こし、
カソードを構成する金属を蒸発・イオン化(プラズマ
化)する。基材11は、蒸発源31,31の蒸発面に相
対して配置されており、基材11と蒸発面の間に磁場が
形成される様にコイル32,32が配置されている。
【0024】上記金属蒸発装置3は、カソードである固
体金属がアーク放電により局部的に溶融して気化するも
のであり、単位面積あたりのエネルギーを高くすること
ができ、高融点金属の金属蒸気を得る場合でも電子ビー
ムに比べてかなり小電流で済む。また、ターゲット固体
金属からの直接放電を使用するため、電子ビーム加熱式
蒸発源を使用する場合のように装置下方にるつぼを設置
する必要もない。従って、金属蒸発源の取付け位置に関
しては制限がなく、基材の配置も自由に選択できる等、
装置自体の設計の自由度が高まり、複合組成や多層皮膜
等を形成するために複数の金属蒸発源を使用することも
容易である。
【0025】アーク放電によって生成する金属蒸気の大
部分は、放電で生じた熱電子との衝突によりイオンとな
っているが、一部中性の溶融粒子(マクロパーティク
ル)も発生している。コイル32を励磁させると、コイ
ル32内では蒸発面の中心軸線方向の磁力線33が発生
する。この磁力線33は、コイル32から離れるにつれ
て中心軸線方向から外向きに発散していく。アーク蒸発
源の蒸発面を磁力線が外向きに発散していく位置とする
ことにより、生成したプラズマ中の金属イオンは磁力線
に導かれてコイル内を通過し、選択的に真空容器中央へ
導かれ、基材11に到達する。しかし中性である溶融粒
子には磁力が働かないため、このような選択的誘導効果
が働かず、結果的に基材上に到達する溶融粒子が低減さ
れる。また、コイルの前方に開閉自在の絞り機構4を設
置して、真空容器中央へ導入される蒸発粒子をさらに減
少させることもできる。
【0026】従来のアーク蒸発源とイオンビーム発生源
を用いたイオンビーム蒸着装置を用いてダイナミックミ
キシングを行う場合は、真空度バランスやイオン化効率
に差があるために、真空容器内のイオン量に比べ、金属
蒸気量が多くなる。このためミキシング時のイオン量が
不充分となって、所望組成の膜を基材上に形成すること
が難しかった。前述の様に、特開平7−54174号で
は、アーク放電式蒸発源と基材の間に、一部の金属蒸気
のみ通過させる開口部を有する絞り部材を設け、真空容
器内の金属蒸気量(A)とイオンビーム量(I)の比I
/Aを大きくすることを試みている。しかしこの方法で
は、絞り部材によって絞られる蒸気のロスが大きいと共
に、アーク放電が安定して行えるアーク電流範囲に限界
があって金属蒸気量(A)を所定量より下げることがで
きず、結果的にI/Aを0.5以上にすることができな
かった。
【0027】これに対し、本発明では励磁したコイルで
磁場を発生させ、アーク蒸発源から蒸発したイオンおよ
びプラズマのみを磁力線によって真空容器内に導くこと
ができるため、イオンやプラズマのロスが少ない。しか
もアーク放電の安定性を左右することなく、コイルによ
り発生する磁場の大きさを変化させるだけで真空容器内
に導入する金属蒸気量を調節できるため、従来のアーク
放電式蒸着法を用いるイオンミキシング装置に比べて、
金属蒸気量をより広い範囲で変化させることができる。
従って、真空容器内でイオンミキシングが行われる時の
金属蒸気量(A)とイオン源からのイオンビーム量
(I)の比I/Aを、非常に広範囲に取ることができ
る。
【0028】アーク放電式のイオンビーム源および蒸発
源は、イオン源および蒸発源が固体金属であるため、い
ずれも真空容器の任意の位置に任意個数を配置すること
が可能であり、基材の形状に応じて均一にミキシング等
が行えるように設置位置を選択することができる。従っ
て、装置設計の自由度が増すと共に装置全体をコンパク
トにすることが可能である。また、本実施例のようにア
ーク蒸発源を複数個設置することにより、合金や多層皮
膜の形成を行うことができる。
【0029】セラミックス等の化合物皮膜を形成するた
めには、ガスイオン源を用いる他、真空容器内に窒素や
酸素等の反応ガスをバルブと流量調節装置を備えた反応
ガス供給部5から直接供給してもよい。この場合、供給
された反応ガスは真空容器内で金属イオンと反応し、セ
ラミックス皮膜が基材上に堆積される。
【0030】以上の作用により、カソードであるターゲ
ット表面から発生するカソードターゲット材料の溶融粒
子、すなわちイオンやプラズマ粒子よりも大きいマクロ
パーティクル・マクロドロップレットが基材上のイオン
ミキシング層に混入することが可及的に防止でき、I/
Aを広範囲に設定できると共に、蒸着とイオンミキシン
グを行える真空度領域が広がったため、種々のイオンビ
ーム蒸着条件を選択することができる様になった。この
ため、皮膜表面粗度の悪化や密着力の低下を起こすこと
なく、蒸着皮膜を充分イオンミキシングすることがで
き、均一で高品質な、しかも多種多様なミキシング層や
蒸着皮膜を得ることができる。
【0031】さらに、本発明によれば、アーク蒸発源の
蒸発面と基材との間にコイルを配置するだけで上記の効
果が得られるため、例えば真空アーク蒸発源と基材との
間に直角に曲げられたソレノイドによってプラズマを選
別する装置のように、装置自体が大がかりになることが
なく、金属イオンビーム源ならびに金属蒸発源の取付け
位置に関しても制限されることはない。
【0032】本発明では、イオンビーム源から高いエネ
ルギーのイオンが照射できるので、蒸着前の基材のスパ
ッタクリーニングや蒸着中のスパッタを行うこともで
き、より緻密で高品質な皮膜を密着性良く形成すること
ができる。また基材に負のバイアス電位を印加すること
により、これらの効果をより高めることができる。
【0033】実施例2 実施例1に示した装置を用いてイオンビーム蒸着実験を
行い、生成皮膜の表面性状および耐食性を検討した。基
材には表面を鏡面研磨した寸法100mm×60mm×
8mmのS50C材を用い、アーク放電式イオンビーム
源ならびにアーク蒸着源のカソードにはチタンを用い
た。装置内を400℃に加熱した後、表1に示す種々の
条件で、基材をスパッタクリーニングした後、同じく表
1に併記した種々の条件でチタンを蒸着またはイオンミ
キシング蒸着を行い、3μmのチタン皮膜を形成した。
【0034】イオンビームでスパッタクリーニングを行
う場合は70kVの加速電圧を用い、蒸着時のイオンミ
キシングの際には40kVの加速電圧を用いた。アーク
蒸着源によりスパッタクリーニングを行うときは、基材
に−1200Vのバイアス電位を印加し、蒸着時には−
150Vのバイアス電位とした。また、コイルを励磁す
る場合と励磁しない場合の効果を比較した。
【0035】得られた被覆部材の皮膜表面粗さを触針式
の粗さ計で測定したときの最大粗さを表1に併記した。
また30日間の大気暴露試験を行い、錆の発生した面積
比から被覆部材の耐食性を調べ、結果を表1に併記し
た。
【0036】
【表1】
【0037】表1から明らかなように、コイルを励磁し
ない従来のアーク蒸発源を用いてスパッタクリーニング
および蒸着を行った従来例1では、皮膜中に溶融粒子が
混入したため皮膜表面が粗い。この従来例1では、混入
した溶融粒子が起点となって欠陥やピンポールが発生し
たため、錆発生面積比が高く耐食性が悪かったと考えら
れる。コイルを励磁したアーク蒸発源によるスパッタ後
に、イオンミキシングを行わずコイル励磁アーク蒸着を
行った従来例2では、溶融粒子の混入がなく皮膜表面は
滑らかであったが、皮膜の密着性が悪く耐食性が劣る。
No.3はイオンビームによるスパッタ後に、コイルを
励磁しないアーク蒸着法とイオンミキシングを用いた場
合の比較例であり、皮膜中に溶融粒子が混入するため皮
膜表面が粗く、耐食性が劣ることがわかる。
【0038】これらに対して、コイル励磁アーク蒸着と
同時にイオンミキシングを行った本発明実施例4、5で
は、蒸発前のスパッタクリーニングがアーク蒸発源によ
る場合、イオンビームによる場合のいずれにおいても、
得られた皮膜表面が滑らかで密着性も良好であり優れた
耐食性を示した。また、蒸着時にイオンミキシングは行
わなかったが、予めイオンビームによるスパッタを行っ
た実施例6においても同様な結果が得られた。
【0039】実施例3 実施例1に示した装置を用いてイオンビーム蒸着実験を
行い、生成皮膜の結晶構造および硬さについて検討し
た。基材には表面を鏡面研磨した寸法12mm×12m
m×5mmのK種超硬チップを用い、アーク放電式イオ
ンビーム源ならびにアーク蒸着源のカソードにはチタン
を用いた。装置内を400℃に加熱した後、Arガスを
50mmTorr導入し、基材に−600Vのバイアス
電位を印加してスパッタクリーニングした。その後、窒
素ガスを2mmTorr導入し基材に−150Vのバイ
アス電位を印加しながら、表2に示す種々の条件を用い
て、蒸着またはイオンミキシング蒸着を行い、基材表面
に5μmのTiN皮膜を形成した。
【0040】得られた皮膜の結晶構造を調べるために、
X線回折を行い、TiNの回折ピークのうち、(11
1)面と(200)面のX線回折強度比I(111)/
I(200)を測定し、その結果を表2に併記した。ま
た、得られた皮膜の硬さをマイクロヴィッカース硬度計
を用いて荷重20gにて測定し、その結果を同じく表2
に併記した。
【0041】
【表2】
【0042】表2から明らかなように、コイルを励磁し
ない従来のアーク蒸発源を用いて蒸着のみを行った従来
例7や、イオンミキシング蒸着を行った従来例8では、
面心立方構造をもつTiN結晶の最稠密面であり耐摩耗
性が良好とされる(111)面への配向性が小さく皮膜
硬さも低い。これは蒸着時のスパッタが充分に行われな
いため緻密な皮膜が形成されないことによると考えられ
る。イオンビームを使用して蒸着時にイオンアシストを
行い、コイルを励磁しない従来のアーク蒸発源を用いて
イオンミキシング蒸着を行う場合は(比較例9)、イオ
ンビームスパッタは行われるが、溶融粒子が混入し、蒸
着される粒子のイオン化率が低いため(111)面への
配向性が小さく皮膜硬さも低い。これらに対して、本発
明実施例である10、11は(111)面への配向性が
非常に高く、硬さも2400以上と優れており、緻密な
皮膜が形成されていることが明らかである。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
マクロパーティクル・マクロドロップレットが基材上の
イオンミキシング層に混入することが可及的に防止で
き、I/Aを広範囲に設定できると共に、蒸着とイオン
ミキシングを行える真空度領域が広がったため、種々の
イオンビーム蒸着条件を選択することができる様になっ
た。このため、皮膜表面粗度の悪化や密着力の低下を起
こすことなく、蒸着皮膜を充分イオンミキシングするこ
とができ、均一で高品質な、しかも多種多様なミキシン
グ層や蒸着皮膜を密着性良く得ることができる。本装置
および本方法は、耐摩耗性膜や超硬膜やその他種々の特
性を有する皮膜を、特に複雑な形状の部材に被覆する際
に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダイナミックミキシング装置を示す説
明図である。
【図2】従来のダイナミックミキシング装置を示す説明
図である。
【図3】イオンビーム源の拡大説明図である。
【符号の説明】
1 ダイナミックミキシング装置 2 イオンビーム源 3 アーク放電式蒸発装置 10 真空容器 11 基材 32 コイル 33 磁力線
フロントページの続き (72)発明者 大西 泰司 兵庫県明石市魚住町金ケ崎西大池179番1 株式会社神戸製鋼所明石工場内 (72)発明者 一宮 夏樹 兵庫県明石市魚住町金ケ崎西大池179番1 株式会社神戸製鋼所明石工場内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器内に、アーク放電によってター
    ゲット金属から蒸気を発生させて基材表面に蒸着させる
    1個以上の金属蒸発源と、イオンビームを発生させて該
    基材表面に照射するイオンビーム源を有するイオンビー
    ム蒸着装置において、 前記金属蒸発源のターゲット金属蒸発面と、前記基材と
    の間に励磁可能なコイルを配置し、該コイルの励磁によ
    って生じる磁力線が前記中心軸からみて外向きに発散す
    る距離の位置に前記蒸発面を位置させたことを特徴とす
    るイオンビーム蒸着装置。
  2. 【請求項2】 真空容器内に、アーク放電によってター
    ゲット金属から蒸気を発生させて基材表面に蒸着させる
    1個以上の金属蒸発源と、イオンビームを発生させて該
    基材表面に照射するイオンビーム源を有するイオンビー
    ム蒸着装置を用いて行うイオンビーム蒸着方法におい
    て、 金属蒸発源のターゲット金属蒸発面と、前記基材との間
    に励磁可能なコイルを配置し、該コイルの励磁によって
    生じる磁力線が前記中心軸からみて外向きに発散する距
    離の位置に前記蒸発面を位置させ、アーク放電によって
    発生するプラズマは前記磁力線に沿ってコイル内真空空
    間を通過させ、基材に到達する金属蒸気量を制御するこ
    とを特徴とするイオンビーム蒸着方法。
JP15801995A 1995-06-23 1995-06-23 イオンビーム蒸着装置およびイオンビーム蒸着方法 Pending JPH093633A (ja)

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