JPH093184A - 熱硬化性組成物、モールド材、およびモールド材成形体の分解処理方法 - Google Patents

熱硬化性組成物、モールド材、およびモールド材成形体の分解処理方法

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JPH093184A
JPH093184A JP14880495A JP14880495A JPH093184A JP H093184 A JPH093184 A JP H093184A JP 14880495 A JP14880495 A JP 14880495A JP 14880495 A JP14880495 A JP 14880495A JP H093184 A JPH093184 A JP H093184A
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貴彦 寺田
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芳和 山縣
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 廃棄時の分解処理が容易なモールド材および
その分解処理方法を提供することを目的とする。 【構成】 少なくとも不飽和ポリエステル、付加重合性
モノマー、開環重合性モノマーおよび脂肪族ポリエステ
ルからなる熱硬化性組成物をバインダーとして含み、開
環重合性モノマーが、環状ケテンアセタールおよびメチ
レンジオキソラン誘導体よりなる群から選択される少な
くとも1種であるモールド材。また、不飽和ポリエステ
ル、付加重合性モノマーおよび脂肪族ポリエステルをバ
インダーとして含み、さらに水酸化アルミニウムなど分
解によって結晶水を放つような化合物を含むモールド
材。前者のモールド材成形体は、塩基と1価アルコール
とジメチルスルホキシドを含有する分解溶液に浸漬する
ことにより、また後者のモールド材は、水酸化アルミニ
ウムなどの分解温度まで加熱することで分解処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱硬化性組成物、同組
成物を用いたモールド材、およびその成形体の分解処理
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】不飽和ポリエステルと付加重合性モノマ
ーを骨格とする熱硬化性組成物は、単独で用いられるこ
ともあるが、多くは複合系材料として用いられ、生産量
の約80%は繊維強化プラスチック(FRP)として使
用されている。この熱硬化性組成物は、無機質などの充
填材、添加剤の配合、繊維による強化が容易なことか
ら、成形材料、積層板、接着剤、塗料等に応用されてい
る。一方、これら樹脂は硬化反応により3次元化し、一
般的には不溶不融の固体となるため、従来から分解処理
は困難であり、再生処理、再使用には適合し難いもので
あるとされ、廃棄するしかなかった。また、モールド材
は、バインダーである樹脂に、ガラス繊維、炭酸カルシ
ウム、タルク、シリカ等の無機材料やパルプ、木材等の
有機系材料を充填した成形材料である。そして、前記の
ような充填材の添加により、比強度、比剛性の大きい材
料となるので、工業分野、民生分野に様々な用途に応用
されている。
【0003】このモールド材は、複合材料であるため、
一般に使用後の再資源化のための処理が困難である。さ
らに、バインダ−樹脂が熱硬化性樹脂であれば、硬化反
応により3次元化し、一般的には不溶不融の固体となる
ため、従来から分解処理は困難であり、再生処理、再利
用には適合し難いものであるとして廃棄するしかなかっ
た。ところが最近、廃棄物問題が注目されるにつれて、
再利用・再資源化技術開発が必要とされ、熱分解による
原料化などが検討され始めた。しかし、これら熱硬化性
樹脂あるいはモールド材は、その有する硬さ、強度の大
きさ、耐熱性、難燃性、耐薬品性といった利点が、廃棄
物処理を技術的な面から困難なものにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】廃棄物問題はますます
深刻さを増し、廃棄された熱硬化性組成物、あるいはモ
ールド材成形品の減容化技術、再利用のための処理技術
などの開発が急がれる。特に、繊維強化された不飽和ポ
リエステル樹脂は、漁船、タンク、あるいは住宅機材な
ど大型製品の製造に多用されているため、廃棄物の分
解、再生処理が深刻である。また、熱硬化性樹脂をバイ
ンダーとするモールド材の多くは、その強度的な大きさ
などから構造材として使われることが多く、金属などそ
の他の素材を包含している場合も多々見受けられる。金
属などは樹脂材料よりも高価な有価物であり、その再生
及び再利用の可能性を阻んでいるという点は、より大き
な問題となっている。つまりモールド材成形品に対して
従来の構成、処理方法では、廃棄物問題を解決できてい
ないのが現状である。本発明は、この課題に対し、廃棄
されたときの処理が容易な熱硬化性組成物およびモール
ド材を提供することを目的とする。また、本発明は、モ
ールド材成形体の簡易な分解処理方法を提供することを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の熱硬化性組成物
は、少なくとも不飽和ポリエステル、付加重合性モノマ
ー、および開環重合性モノマーを含み、前記開環重合性
モノマーが、環状ケテンアセタールおよびメチレンジオ
キソラン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1
種である。この熱硬化性組成物は、さらに、脂肪族ポリ
エステルを含むことが好ましい。本発明のモールド材
は、少なくとも不飽和ポリエステル、付加重合性モノマ
ー、開環重合性モノマー、および脂肪族ポリエステルか
らなる熱硬化性組成物をバインダーとして含み、前記開
環重合性モノマーが、環状ケテンアセタールおよびメチ
レンジオキソラン誘導体よりなる群から選択される少な
くとも1種である。
【0006】また、本発明のモールド材は、不飽和ポリ
エステル、付加重合性モノマー、および脂肪族ポリエス
テルをバインダーとして含み、さらに水酸化アルミニウ
ム、硝酸アルミニウム水和物、硫酸カルシウム水和物、
ホスホン酸カルシウム水和物、燐酸2水素カルシウム水
和物、シュウ酸カルシウム水和物、水酸化マグネシウ
ム、燐酸水素マグネシウム水和物、燐酸マグネシウム水
和物、シュウ酸マグネシウム水和物、および燐酸亜鉛水
和物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むも
のである。このモールド材は、さらに塩基を含有するこ
とが望ましい。
【0007】上記の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ
カプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリ乳酸、ポ
リグリコール酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレ
ンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエ
チレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ
カプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオー
ル、および3ーヒドロキシアルカノエートの共重合体よ
りなる群から選択される少なくとも1種であることが望
ましい。
【0008】本発明のモールド材成形体の分解処理方法
は、少なくとも不飽和ポリエステル、付加重合性モノマ
ー、および脂肪族ポリエステルをバインダーとして含む
モールド材の成形体を、少なくとも塩基と1価アルコー
ルとジメチルスルホキシドを含む分解溶液に浸漬する工
程を有する。前記分解溶液における1価アルコールとジ
メチルスルホキシドの混合比は、体積比で40/60以
下であることが望ましい。
【0009】さらに、本発明のモールド材成形体の分解
処理方法は、少なくとも不飽和ポリエステル、付加重合
性モノマー、および脂肪族ポリエステルをバインダーと
して含むモールド材の成形体を、少なくとも塩基と1価
アルコールとジメチルスルホキシドを含む分解溶液に浸
漬した状態に保持する保持工程、分解溶液中に不溶の固
形分を濾過する濾過工程、前記濾過後の濾液に水または
1価アルコールを注入する注入工程、前記注入後に固形
分を濾過する第2濾過工程、および前記注入後の溶液分
から水または1価アルコールを留去する留去工程を有す
る。
【0010】
【作用】本発明の熱硬化性組成物は、不飽和ポリエステ
ル、付加重合性モノマー、および開環重合性モノマーを
含み、開環重合性モノマーが、環状ケテンアセタールお
よび/またはメチレンジオキソランであるから、硬化成
形後においては、不飽和ポリエステルと付加重合性モノ
マーと開環重合性モノマーとの共重合によって、主鎖だ
けでなく、架橋鎖にもエステル結合を有する3次元架橋
構造が形成される。このため、熱分解処理、加溶媒分解
処理等を施した場合の分解が速やかであり、かつ分解の
程度も大きい。
【0011】また、上記の熱硬化性組成物が、更に脂肪
族ポリエステル含有していれば、その硬化成形後におい
ては、3次元構造中に脂肪族ポリエステルが分散した状
態にある。このため硬化成形後の熱硬化性組成物を、少
なくとも塩基と加溶媒分解性溶媒を含む分解溶液に浸漬
することによって、脂肪族ポリエステルの存在のため
に、分解溶液が室温でも組成物中に速やかに浸透すると
共に、脂肪族ポリエステルが加溶媒分解される。また、
組成物骨格を構成する不飽和ポリエステル樹脂中のエス
テル結合、および、環状ケテンアセタールまたはメチレ
ンジオキソランの開環重合によって生成した架橋鎖中の
エステル結合の中にも加溶媒分解を受けるものが現れ、
3次元構造を失い、熱硬化性組成物は崩壊する。
【0012】不飽和ポリエステル、付加重合性モノマ
ー、脂肪族ポリエステル、および開環重合性モノマーを
バインダーとして含み、開環重合性モノマーが環状ケテ
ンアセタールおよび/またはメチレンジオキソランであ
るモールド材は、その硬化成形後においては、不飽和ポ
リエステルと付加重合性モノマーと開環重合性モノマー
との共重合によって、主鎖にも架橋鎖にもエステル結合
を有する3次元架橋構造が形成され、3次元構造中に脂
肪族ポリエステルが分散した状態にある。このため硬化
成形後のモールド材を、少なくとも塩基と加溶媒分解性
溶媒を含む分解溶液に浸漬することによって、前記脂肪
族ポリエステルの存在のために分解溶液が組成物中に速
やかに浸透すると共に、脂肪族ポリエステルが加溶媒分
解され、次いで組成物骨格を構成する不飽和ポリエステ
ル樹脂中のエステル結合、および、環状ケテンアセター
ルまたはメチレンジオキソランの開環重合によって生成
した架橋鎖中のエステル結合の中にも加溶媒分解を受け
るものが現れ、バインダー樹脂は3次元構造を失い、モ
ールド成形体は崩壊する。
【0013】また、上記構成において、脂肪族ポリエス
テルが、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、
ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアジペー
ト、ポリブチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジ
ペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサク
シネート、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラ
クトントリオール、3ーヒドロキシアルカノエートの共
重合体でなる群から選択される少なくとも1種であるこ
とにより、少なくとも塩基と加溶媒分解性溶媒を含む分
解溶液に対する親和性、加溶媒分解性が高く、従ってこ
れらを含有するモールド材は、少なくとも塩基と親水性
溶媒を含む分解溶液に浸漬した場合の分解溶液の浸透、
バインダーである不飽和ポリエステル樹脂架橋構造の加
溶媒分解が、より効率良く効果的に進行する。
【0014】また、不飽和ポリエステル、付加重合性モ
ノマー、および脂肪族ポリエステルをバインダーとして
含み、さらに、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム
水和物、硫酸カルシウム水和物、ホスホン酸カルシウム
水和物、燐酸二水素カルシウム水和物、シュウ酸カルシ
ウム水和物、水酸化マグネシウム、燐酸水素マグネシウ
ム水和物、燐酸マグネシウム水和物、シュウ酸マグネシ
ウム水和物、燐酸亜鉛水和物の少なくとも1つを含む構
成のモールド材は、その硬化成形後においては、不飽和
ポリエステルと付加重合性モノマーとの共重合により形
成される3次元架橋構造中に脂肪族ポリエステルが分散
し、しかも上記の金属化合物が充填されている状態にあ
る。このため硬化成形後のモールド材を、少なくとも充
填されている無機化合物の分解点まで加熱することによ
って、これら金属化合物は分解すると同時に水を放つた
め、加熱条件とあいまって、脂肪族ポリエステルが加水
分解され、次いで組成物骨格を構成する不飽和ポリエス
テル樹脂中のエステル結合のエステル結合の中にも加水
分解を受けるものが現れ、バインダー樹脂は3次元構造
を失い、モールド成形体は崩壊する。また、上記構成に
おいて、モールド材が更に塩基を含有していれば、硬化
成形後の加熱、金属化合物からの水の放出によるバイン
ダー樹脂の加水分解反応における触媒となり、分解を促
進するため、分解処理をより速やかになすことができ
る。
【0015】さらに、上記構成において、脂肪族ポリエ
ステルが、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクト
ン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアジペ
ート、ポリブチレンアジペート、ポリテトラメチレンア
ジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサ
クシネート、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロ
ラクトントリオール、および3ーヒドロキシアルカノエ
ートの共重合体よりなる群から選択される少なくとも1
種であると、加熱時における水に対する親和性、加水分
解性が高く、無機化合物の放出する水によって容易に分
解されると共に、バインダー樹脂相への水の浸透を促進
し、その結果、不飽和ポリエステル樹脂架橋構造の加水
分解が、より効率良く効果的に進行する。
【0016】また、本発明のモールド材成形体の分解処
理方法に用いる分解溶液は、少なくとも塩基と1価アル
コールとジメチルスルホキシドを含んでいる。この分解
溶液は、脂肪族ポリエステルに対する親和性、加溶媒分
解能が高く、モールド材中に速やかに浸透すると共に、
塩基と1価アルコールの作用による加溶媒分解反応をジ
メチルスルホキシドが促進するため、モールド材の3次
元構造を速やかに消失させ、崩壊させる。さらに、上記
構成において、1価アルコールとジメチルスルホキシド
との混合体積比が40/60以下であれば、分解溶液の
モールド材成形体への浸透、バインダーの加溶媒分解が
最も速やかに行われ、モールド材成形体は効率良く効果
的に崩壊する。
【0017】また、本発明のモールド材成形体の分解処
理方法によると、分解処理後のモールド材成形体、およ
び分解溶液は分別され、廃棄すること無く、本発明のモ
ールド材、および分解処理方法を含めた各用途に再利用
できる。
【0018】
【実施例】本発明に用いられる不飽和ポリエステルは、
不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸とグリコール類とを
公知の方法で重縮合することにより得られる。不飽和多
塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸、シトラコン酸などが挙げられる。飽和多塩基酸とし
ては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ア
ジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メ
チルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラ
ヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタ
ル酸などが挙げられる。グリコール類としては、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリ
コール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコ
ール、1−3ブタンジオール、1−6ヘキサンジオー
ル、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピ
レンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコール
などが挙げられる。
【0019】好適な不飽和ポリエステルとしては、(化
1)で表されるようなイソフタル酸およびフマル酸とネ
オペンチルグリコールとの共重合体、(化2)で表され
るような無水フタル酸および無水マレイン酸とプロピレ
ングリコールとの共重合体、(化3)で表されるような
イソフタル酸および無水マレイン酸とプロピレングリコ
ールとの共重合体などが挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】上記の式において、n1〜n3は、各々独立
して1〜30である。上記不飽和ポリエステルは、実用
上、重合性モノマーに溶解した溶液状製品として提供さ
れる。本発明に用いられる付加重合性モノマーとして
は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、
メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ジアリルフタレー
ト、ジアリルイソフタレート、ジアリルテトラブロムフ
タレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロ
キシエチルアクリレート、1−6ヘキサンジオールジア
クリレートなどが挙げられる。さらに、付加重合性末端
を有する脂肪族ポリエステルも使用され得る。硬化性、
粘度制御の簡便性、コストなどを考慮すると、スチレン
が好ましい。上記付加重合性モノマーは、上記不飽和ポ
リエステル100重量部に対して好ましくは25〜15
0重量部、さらに好ましくは40〜100重量部の範囲
で含有される。
【0024】本発明に用いられる脂肪族ポリエステル
は、熱可塑性飽和ポリエステルである。 脂肪族ポリエ
ステルの中でも、以下の式(4)で表されるポリカプロ
ラクトン、ポリプロピオラクトンのようなラクトンの開
環重合により得られる重合体;式(5)で表されるポリ
乳酸、式(6)で表されるポリグリコール酸のようなヒ
ドロキシ酸の重合体;ポリエチレンアジペート、ポリブ
チレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポ
リエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートの
ような式(7)で表されるグリコールと脂肪族ジカルボ
ン酸とからなる共重合体;式(8)で表されるポリカプ
ロラクトンジオール、式(9)で表されるポリカプロラ
クトントリオールのような末端に官能基を有する重合
体;式(10)で表されるような末端アクリル変性ポリ
カプロラクトン;3−ヒドロキシプロピオナート、3−
ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレート、3
−ヒドロキシオクタノエートのような微生物の発酵によ
り得られるポリエステルなどを用いることが望ましい。
これらポリエステルは、後述の分解溶液に対して非常に
優れた分解性を有する。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】ここで、n4〜n10、l1〜l2、およびm1
〜m3は、各々独立して10〜2000であり、R1およ
びR2は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基で
ある。上記脂肪族ポリエステルは、上記不飽和ポリエス
テル100重量部に対して好ましくは1〜100重量
部、さらに好ましくは2〜50重量部用いられる。本発
明のモールド材は、硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤としては、過酸化ベンゾイル、tーブチルパーベ
ンゾエート、tーブチルパーオキシベンゾエート、tー
ブチルパーオキシラウレート、tーブチルパーオキシ−
2−エチルヘキサノエート、tーブチルパーオクトエー
トなどが挙げられる。上記硬化剤は、上記不飽和ポリエ
ステル100重量部に対して好ましくは0.1〜5重量
部、さらに好ましくは0.2〜4重量部の範囲で用いら
れる。
【0028】〈実施例1〉本発明の熱硬化性組成物の好
適な第1の実施例について説明する。本発明の熱硬化性
組成物は、不飽和ポリエステル、付加重合性モノマー、
および開環重合性モノマーを含む熱硬化性組成物であっ
て、開環重合性モノマーが、環状ケテンアセタールおよ
びメチレンジオキソランよりなる群から選択される少な
くとも一種である。本発明に用いられる開環重合モノマ
ーは、式(11)で示される環状アセタールの2位およ
び4位にエキソメチレン基を導入した式(12)で示す
環状ケテンアセタール、式(13)で示すメチレンジオ
キソラン誘導体である。環状アセタールは環の員数によ
り、2ーメチレンー1,3ージオキサンや2ーメチレン
ー1,3ージオキセパンなどと呼ばれる。これらモノマ
ーは、ラジカルにより開環し、直鎖上にエステル結合を
導入することができる。上記開環重合性モノマーは、上
記不飽和ポリエステル100重量部に対して好ましくは
1〜150重量部、さらに好ましくは1〜100重量部
の範囲で用いられる。
【0029】
【化6】
【0030】ここで、n11〜n12は、各々独立して1〜
10である。なお、これらモノマーは、ここで示した構
造に限らず、各炭素にアルキル基、フェニル基などのラ
ジカル安定基などを導入した構造であっても良い。次
に、本発明の熱硬化性組成物を実際に試作した例を示
す。
【0031】[試作例1](化3)で示される不飽和ポ
リエステル(日本触媒(株)製、商品名:エポラック)
55重量部に対して、付加重合性モノマーであるスチレ
ンを35重量部、環状ケテンアセタールである2−メチ
レンー1,3ージオキセパンを9重量部、さらに硬化剤
第3級ブチルパーオキシベンゾエイト(日本油脂(株)
製、商品名:パーブチルZ)を1重量部それぞれ加えて
良く混合し、熱硬化性組成物を得た。この組成物を、1
30℃で1時間の硬化によって1mm厚の板状に成形し
た。
【0032】[比較例1](化3)で示される不飽和ポ
リエステル55重量部に対して、付加重合性モノマーで
あるスチレン44重量部および硬化剤第3級ブチルパー
オキシベンゾエイト1重量部を加えて良く混合し、熱硬
化性組成物を得た。この組成物を、130℃で1時間の
硬化によって1mm厚の板状に成形した。
【0033】上記の試作例1および比較例1の成形体
は、成形性、強度などの基本物性においては、ほとんど
変わりなかった。次に、これら2種の熱硬化性組成物成
形体を用いて、グリコリシスによる分解処理を行った。
グリコリシスは、試作例1および比較例1の熱硬化性組
成物成形体を、従来法に基づき、触媒である酢酸亜鉛を
混入したエチレングリコール溶媒に浸漬し、200℃、
30気圧の条件で行った。分解処理の結果、比較例1の
熱硬化性組成物の板状成形体は、劣化は認められるもの
の、形状は維持していた。これに対して、試作例1の熱
硬化性組成物成形体は、崩壊の程度が激しく、いくつか
の片に分かれ、もはや形状は維持していない様子が観察
された。
【0034】また、試作例1の熱硬化性組成物成形体を
分解処理した後のエチレングリコール液における溶解物
および沈澱物の分析から、不飽和ポリエステルを構成す
る飽和酸であるフタル酸、プロピレングリコール、およ
びスチレンとマレイン酸の付加反応物が検出された。一
方、比較例1の熱硬化性組成物成形体における同様の分
析においては、フタル酸しか検出されず、プロピレング
リコールは確認できなかった。比較例1の場合、2種類
存在するエステル結合のうち、フタル酸とプロピレング
リコールの関与するエステル結合しか分解されておら
ず、架橋鎖に近いマレイン酸とプロピレングリコールか
らなるエステル結合は分解不可能であった。一方、試作
例1では、環状ケテンアセタールである2−メチレンー
1,3ージオキセパンの存在により、硬化組成物におい
ては、主鎖のみならず架橋鎖中にもエステル結合が生成
する。そのため、グリコールシスによる架橋鎖の分解が
可能であり、また、架橋鎖の分解が、架橋部に近いマレ
イン酸とプロピレングリコールのエステル結合の分解も
可能にした結果、グリコールも検出された。以上のよう
に、不飽和ポリエステル、付加重合性モノマー、および
開環重合性モノマーを含む熱硬化性組成物の成形体は、
グリコーリシスにおける分解処理の容易な熱硬化性組成
物である。
【0035】なお、本実施例では、グリコーリシスによ
る分解処理の例について説明したが、その他、加溶媒分
解法、熱分解法によっても、従来品よりも容易に分解処
理することができる。また、本実施例では、環状ケテン
アセタールである2−メチレンー1,3ージオキセパン
の例をもって説明したが、その他の環状ケテンアセター
ルや、メチレンジオキソランを用いても同様の効果を得
ることができる。また、熱硬化性組成物の構成および製
造方法は、本実施例に限定されることはなく、例えば、
炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸
化アルミニウム、タルク、マイカなどのフィラーや、ガ
ラス繊維、炭素繊維などの強化剤、その他、増粘剤、離
型剤、着色剤などを混入していてももちろん良い。な
お、本実施例では、板状に成形した例を用いたが、これ
に限定されることなく、その他の形状を有する成形体、
および塗料、パテ、接着剤などであっても良い。
【0036】〈実施例2〉本発明の熱硬化性組成物の好
適な第2の実施例について説明する。不飽和ポリエステ
ル(日本触媒(株)製、商品名:エポラック)51重量
部に対して、付加重合性モノマーであるスチレン32重
量部、脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトン
(分子量4万、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プ
ラクセル)6重量部、環状ケテンアセタールである2−
メチレンー1,3ージオキセパン10重量部、および硬
化剤第3級ブチルパーオキシベンゾエイト(日本油脂
(株)製、商品名:パーブチルZ)1重量部を加え、良
く混合し、熱硬化性組成物を得た。
【0037】この組成物を、130℃、1時間の硬化に
よって1mm厚の板状に成形した。次に、この板状の成
形体を、水酸化ナトリウム1重量部、水15重量部、お
よびエタノール15重量部からなる溶液に室温で浸漬し
た。浸漬50時間後において、この成形体は50wt%
の重量減少を示した。このとき、成形体は完全に形を失
い、各破片においても強度は極端に低下し、容易に形状
を崩せる状態であり、成形状態を保持できなくなってい
た。さらに、環状ケテンアセタールを混入した本実施例
の熱硬化性組成物では、硬化成形により、不飽和ポリエ
ステル樹脂の3次元架橋構造における架橋鎖中にもエス
テル結合が導入されると共に、3次元架橋構造中にポリ
カプロラクトンが分散した状態になる。このため、塩基
と1価アルコールを含む溶液の浸透性が向上し、ポリカ
プロラクトンと不飽和ポリエステル樹脂、さらには架橋
鎖も、塩基と1価アルコールを含む溶液により加溶媒分
解を受け、3次元構造はより細かく切断され、熱硬化性
組成物は完全に分解した。以上のように、環状ケテンア
セタールを有する熱硬化性組成物成形体は、塩基とメタ
ノールと水を含む溶液に浸漬することによって、室温で
も完全に分解することができる処理容易な熱硬化性組成
物である。
【0038】なお、本発明における熱硬化性組成物は、
本実施例の組成、配合比に限定されるものではない。ま
た、本実施例では、環状ケテンアセタールである2−メ
チレンー1,3ージオキセパンの例をもって説明した
が、その他の環状ケテンアセタールや、メチレンジオキ
ソランを用いても同様の効果を得ることができる。ま
た、本発明の熱硬化性組成物成形体を浸漬し、分解処理
した溶液は、本実施例の組成、配合比に限定されず、少
なくとも塩基と加溶媒分解性溶媒を含有するものであれ
ばよい。塩基としては、本実施例で示した水酸化ナトリ
ウム以外にも、水酸化カルシウム、水酸化カリウムのよ
うな金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カルシウムの
ような金属酸化物、ナトリウムエトキシド、カリウムt
−ブトキシドのような金属アルコキシドなどが挙げられ
る。これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用
され得る。また、加溶媒分解性溶媒としては、本実施例
使用のエタノール、水以外にも、メタノール、エチレン
グリコール、アンモニア、酢酸、ヒドラジンなどを使用
することができる。
【0039】また、本実施例使用の溶液中には、加溶媒
分解性溶媒以外にも、ジエチルエーテル、ジオキサン、
テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアミンなどの親水性有機溶媒を、1種ある
いは2種以上を混合しても使用され得る。なお、本実施
例では、板状に成形した例を用いたが、これに限定され
ることなく、その他の形状を有する成形体、および塗
料、パテ、接着剤などであっても良い。
【0040】〈実施例3〉本発明のモールド材の好適な
第1の実施例について説明する。本発明のモールド材
は、不飽和ポリエステル、付加重合性モノマー、脂肪族
ポリエステル、および開環重合性モノマーをバインダー
として含むモールド材であって、開環重合性モノマー
が、環状ケテンアセタールおよびメチレンジオキソラン
よりなる群から選択される少なくとも1種である。本発
明に用いられる開環重合性モノマーは、式(12)で示
す環状ケテンアセタール、式(13)で示すメチレンジ
オキソラン誘導体である。これらモノマーは、ラジカル
により開環し、直鎖上にエステル結合を導入することが
できる。上記開環重合性モノマーは、上記不飽和ポリエ
ステル100重量部に対して好ましくは1〜150重量
部、さらに好ましくは1〜100重量部の範囲で用いら
れる。本発明のモールド材は、必要に応じて、充填材、
増粘剤、離型剤、ワックス、着色剤などを添加し得る。
【0041】充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸マ
グネシウムのような炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリ
ウム、亜硫酸カルシウムのような(亜)硫酸塩、クレ
ー、マイカ、ガラスバルーン、モンモリロナイト、ケイ
酸、カオリン、タルクのようなケイ酸塩類、シリカ、珪
燥土、酸化鉄、軽石バルーン、酸化チタン、アルミナの
ような酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウ
ムのような水酸化物、グラファイト、ガラス繊維、炭素
繊維、アスベスト繊維などの無機充填材;ならびに、木
粉、もみ殻、木綿、紙細片、ナイロン繊維、ポリエチレ
ン繊維、木材、パルプ、セルロースなどの有機充填材な
どが挙げられる。上記充填材は、熱硬化性組成物100
重量部に対して好ましくは5〜600重量部、さらに好
ましくは20〜500重量部の範囲で添加される。この
ような範囲で充填材を添加することにより、モールド材
の機械的強度が向上する。
【0042】増粘剤としては、酸化ベリリウム、酸化マ
グネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水
酸化カルシウム、酸化亜鉛、安息香酸、無水フタル酸、
テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸などが挙げ
られる。離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸
亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。ワッ
クスとしては、ヘキストワックス、カルナバワックス、
パラフィンなどが挙げられる。着色剤としては、チタン
ホワイト、酸化クロム、カーボンブラックなどが挙げら
れる。
【0043】次に、本発明のモールド材の第1の実施例
について、実際に試作し、成形した例を説明する。 [試作例2]不飽和ポリエステル(日本触媒(株)製、
商品名:エポラック)15.6重量部に対して、付加重
合性モノマーであるスチレンを10.5重量部、脂肪族
ポリエステルであるポリカプロラクトン(分子量4万、
ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセル)を
1.8重量部、環状ケテンアセタールである2−メチレ
ンー1,3ージオキセパンを2.1重量部、さらに硬化
剤第3級ブチルパーオキシベンゾエイト(日本油脂
(株)製、商品名:パーブチルZ)を0.3重量部加
え、良く混合してバインダーとなる組成物を得た。次
に、充填材である炭酸カルシウム57重量部、離型剤で
あるステアリン酸亜鉛2重量部、および増粘剤の酸化マ
グネシウム1重量部をニーダに移し、乾式混合した。約
5分間混合後、均一に混ったこの乾式混合物に、先に混
合しておいたバインダー組成物を徐々に加えて混練し、
均一なペースト状のものを得た。更に、このペースト状
物に、10重量部のガラス繊維をまんべんなく分散させ
ながら、極力短時間で添加し、ガラス繊維が濡れて均一
に分散したところで混練を終了して、モールド材を得
た。
【0044】こうして得られたモールド材は、バルク状
であるので、通常BMC(Bulk Molding Compound)
と呼ばれる成形材料の1種であり、スチレンを含むにも
かかわらず、非粘着状態である。このモールド材をトラ
ンスポットに入れ、金型温度150℃、注入圧力150
kg/cm2でトランスファー成形を行い、板状の成形
体を得た。この成形体を、通常工業的によく使用される
不飽和ポリエステル樹脂からなるFRP(繊維強化プラ
スチック)と比較した場合、成形性、硬化性(硬化時
間、ゲル化時間)、強度などに関してはほぼ同等であ
り、寸法安定性に関してはより優れていることがわかっ
た。ただ、スパイラルフロー長さが幾分短くなるが、成
形上問題になるようなものではない。従って、本発明に
よるモールド材は、通常FRP材料が使用されるような
用途へは十分応用できる。
【0045】[比較例2]不飽和ポリエステル15.6
重量部に対して、スチレン12.6重量部、ポリカプロ
ラクトン(分子量4万)1.8重量部、さらに硬化剤第
3級ブチルパーオキシベンゾエイト0.3重量部を加え
てバインダーとなる組成物を得た。この組成物に、炭酸
カルシウム57重量部、ステアリン酸亜鉛2重量部、酸
化マグネシウム1重量部、さらにガラス繊維10重量部
を加えてモールド材を得た。なお、作製方法は、試作例
2と同様である。このモールド材をトランスポットに入
れ、金型温度150℃、注入圧力150kg/cm2
トランスファー成形を行い、板状の成形体を得た。
【0046】[比較例3]不飽和ポリエステル15.6
重量部に対して、スチレン12.6重量部および硬化剤
第3級ブチルパーオキシベンゾエイト0.3重量部を加
えて得られるバインダーとなる組成物に、炭酸カルシウ
ム57重量部、ステアリン酸亜鉛2重量部、酸化マグネ
シウム1重量部、およびガラス繊維10重量部を加え、
モールド材得た。なお、作製方法は、試作例2と同様で
ある。このモールド材をトランスポットに入れ、金型温
度150℃、注入圧力150kg/cm2でトランスフ
ァー成形を行い、板状の成形体を得た。
【0047】これら3種のモールド材の組成を表1に記
す。
【0048】
【表1】
【0049】次に、試作例2、および比較例2、3のモ
ールド材を用いた板状成形体を、水酸化ナトリウム1重
量部、水3重量部、およびメタノール21重量部からな
る溶液に室温で浸漬した。溶液浸漬時間25、50およ
び100時間後におけるモールド成形体の重量変化率を
表2に示した。比較例2のモールド材による成形体は、
100時間後に15wt%の重量減少を示した。このと
き、強度は極端に低下し、容易に形状を崩せる状態であ
り、成形状態を保持できなくなっていた。
【0050】
【表2】
【0051】試作例2のモールド材による成形体は、さ
らに分解の程度が大きく、100時間後において約40
wt%の重量減少を示しており、バインダー樹脂は完全
に形を失い、粒子などの充填物が分解溶液中に沈澱して
いるのが確認された。一方、比較例3のモールド材によ
る成形体は、100時間後においても形状の変化は観察
できず、また、重量変化や強度の劣化も認められなかっ
た。比較例3のモールド材は、従来使用されている組成
のモールド材であり、ここに用いたような塩基と1価ア
ルコールを含む溶液によっても処理することはできな
い。
【0052】しかし、脂肪族ポリエステルであるポリカ
プロラクトンを混入した組成を有する比較例2のモール
ド材では、硬化成形により、不飽和ポリエステル樹脂の
3次元架橋構造中にポリカプロラクトンが分散した状態
になるため、塩基と1価アルコールを含む溶液の浸透性
が向上し、モールド材のバインダーであるポリカプロラ
クトンと不飽和ポリエステル樹脂が、加溶媒分解を受け
るため、モールド成形体はもはや形状を維持できなくな
り、崩壊した。さらに、環状ケテンアセタールを混入し
た試作例2のモールド材では、硬化成形により、不飽和
ポリエステル樹脂の3次元架橋構造における架橋鎖中に
もエステル結合が導入されるため、塩基と1価アルコー
ルを含む溶液により、架橋鎖も加溶媒分解を受け、バイ
ンダー樹脂3次元構造はより細かく切断され、モールド
成形体は、充填物質を放出しつつ分解した。以上のよう
に、バインダー中に環状ケテンアセタールを有するモー
ルド材は、現FRP材料と同等に応用できる成形材料で
あると共に、塩基とメタノールを含む溶液に浸漬するこ
とによって、室温でも分解することができる処理容易な
モールド材である。
【0053】なお、本発明におけるモールド材は、本実
施例の組成、配合比に限定されるものではない。また、
本発明のモールド材成形品を浸漬し、分解処理した溶液
は、本実施例の組成、配合比に限定されず、少なくとも
塩基と加溶媒分解性溶媒を含有するものであればよい。
塩基としては、本実施例で示した水酸化ナトリウム以外
にも、水酸化カルシウム、水酸化カリウムのような金属
水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カルシウムのような金
属酸化物、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキ
シドのような金属アルコキシドなどが挙げられる。これ
らは単独で、あるいは2種以上を混合して使用され得
る。また、加溶媒分解性溶媒としては、本実施例使用の
メタノール、水以外にも、エタノール、エチレングリコ
ール、アンモニア、酢酸、ヒドラジンなどを使用するこ
とができる。
【0054】また、本実施例使用の溶液中には、加溶媒
分解性溶媒以外にも、ジエチルエーテル、ジオキサン、
テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアミンなどの親水性有機溶媒を、1種、あ
るいは2種以上が混合しても使用され得る。なお、本実
施例ではモールド材成形時にトランスファー成形を用い
たが、圧縮成形、射出成形などによっても良い。また、
本実施例では、バルク状のモールド材について説明した
が、バルク状以外にも、シート状のSMC(sheet mol
ding compound)や、粒状のPMC(petletized type
molding compound)であってもよい。なお、本実施
例では板状の成形品について説明したが、このモールド
材から得られる最終成形品は、これ以外に、浴槽、便
槽、貯水槽、洗面台のような建設資材;椅子、机、家具
のような家庭用品;タイル、人工大理石、パイプのよう
な土木資材;船舶、自動車、鉄道、航空機のような輸送
機器のボディや部品;住宅機器;化粧板;装飾品などの
様々な分野で使用され得る。
【0055】〈実施例4〉本発明のモールド材の好適な
第2の実施例について説明する。本発明のモールド材
は、不飽和ポリエステル、付加重合性モノマー、および
脂肪族ポリエステルをバインダーとして含むと共に、水
酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム水和物、硫酸カル
シウム水和物、ホスホン酸カルシウム水和物、燐酸2水
素カルシウム水和物、シュウ酸カルシウム水和物、水酸
化マグネシウム、燐酸水素マグネシウム水和物、燐酸マ
グネシウム水和物、シュウ酸マグネシウム水和物、燐酸
亜鉛水和物の少なくとも1つを含む。これら金属化合物
は、それぞれ特定温度に分解点を有し、分解点において
分解すると同時に、結晶水を放出する特性をもってい
る。各金属化合物の分解点を表3に記した。
【0056】
【表3】
【0057】次に、本発明のモールド材の第2の実施例
について、実際に試作し、成形した例を説明する。 [試作例3]不飽和ポリエステル20.6重量部に対し
て、スチレン16.6重量部、ポリカプロラクトン(分
子量4万)2.4重量部、および硬化剤第3級ブチルパ
ーオキシベンゾエイト0.4重量部を加えてバインダー
となる組成物を得た。この組成物に対して、離型剤ステ
アリン酸亜鉛1.5重量部、ホスホン酸カルシウム水和
物58重量部、および増粘剤酸化マグネシウム0.5重
量部を混ぜ、良く練りペースト状物を得た。ガラス繊維
をカッターで切断したチョップドストランドを、ポリエ
チレンフィルム上に散布し、そのガラス繊維に先のペー
スト状物を含浸させることによってモールド材を得た。
含浸を終えたモールド材は、必要長さを巻き取って熟成
させ、必要な稠度にまで増粘させた。この結果、ペース
ト状物100重量部に対して、約30重量部のガラス繊
維が配合されたことになる。こうして得られたモールド
材は、シート状であるので、通常SMCと呼ばれる成形
材料の1種であり、スチレンを含むにもかかわらず、非
粘着状態である。
【0058】[試作例4]不飽和ポリエステル20.6
重量部に対して、スチレン16.6重量部、ポリカプロ
ラクトン(分子量4万)2.4重量部、および硬化剤第
3級ブチルパーオキシベンゾエイト0.4重量部を加え
てバインダーとなる組成物を得た。この組成物に対し
て、離型剤ステアリン酸亜鉛1.5重量部、ホスホン酸
カルシウム水和物58重量部、増粘剤酸化マグネシウム
0.5重量部、および塩基である水酸化カルシウム2重
量部を混ぜ、良く練りペースト状物を得た。ガラス繊維
をカッターで切断したチョップドストランドを、ポリエ
チレンフィルム上に散布し、このガラス繊維に先のペー
スト状物を含浸させることによってモールド材を得た。
含浸を終えたモールド材は、必要長さを巻き取って熟成
させ、必要な稠度にまで増粘させた。この結果、ペース
ト状物100重量部に対して、約30重量部のガラス繊
維が配合されたことになる。
【0059】[比較例4]不飽和ポリエステル20.6
重量部に対して、スチレン16.6重量部、ポリカプロ
ラクトン(分子量4万)2.4重量部、および硬化剤第
3級ブチルパーオキシベンゾエイト0.4重量部を加え
てバインダーとなる組成物をえた。この組成物に対し
て、離型剤ステアリン酸亜鉛.5重量部、炭酸カルシウ
ム58重量部、および増粘剤酸化マグネシウム0.5重
量部を混ぜ、良く練りペースト状物を得た。ガラス繊維
をカッターで切断したチョップドストランドを、ポリエ
チレンフィルム上に散布し、このガラス繊維に先のペー
スト状物を含浸させることによってモールド材6を得
た。含浸を終えたモールド材は、必要長さを巻き取って
熟成させ、必要な稠度にまで増粘させた。この結果、ペ
ースト状物100重量部に対して、約30重量部のガラ
ス繊維が配合されたことになる。
【0060】これら3種のモールド材の組成を表4に示
した。
【0061】
【表4】
【0062】次に、試作例3、試作例4、および比較例
4のモールド材をそれぞれ平板状の型に入れ、型を閉じ
ることによって100kg/cm2の圧力をかけ、温度
150℃で圧縮成形し、それぞれ板状成形体を得た。試
作例3、および試作例4のモールド材の成形体を、通常
工業的によく使用される不飽和ポリエステル樹脂から成
るFRPと比較した場合、成形性、硬化性(硬化時間、
ゲル化時間)、強度などに関してはほぼ同等であること
から、通常FRPが使用されているような用途へは十分
応用できる。
【0063】次に、これら3種のモールド材からなる板
状成形体を、200℃まで加熱した。比較例4のモール
ド材の成形体は、バインダー樹脂の酸化による分解のた
め、若干強度が低下する傾向が見られるにとどまった。
一方、試作例3のモールド材の成形体については、充填
されているホスホン酸カルシウム水和物が分解挙動によ
って放つ結晶水が、バインダーである不飽和ポリエステ
ル樹脂の3次元骨格および脂肪族ポリエステルであるポ
リカプロラクトンのエステル結合を加水分解するため、
バインダーによって保たれていた形状をもはや維持する
ことはできず、モールド材成形体は崩壊した。試作例4
のモールド材の成形体は、試作例3のモールド材の構成
に加えて含有する水酸化カルシウムが、ホスホン酸カル
シウム水和物の分解によって放出する結晶水による、バ
インダー樹脂の加水分解反応の触媒となるため、モール
ド材成形体の崩壊がより速やかに完結した。
【0064】以上のように、不飽和ポリエステル、スチ
レン、およびポリカプロラクトンをバインダーとして含
み、ホスホン酸カルシウム水和物を充填したモールド材
の成形体は、200℃まで加熱すれば、ホスホン酸カル
シウム水和物の分解で放たれる結晶水によるバインダー
樹脂の加水分解によって崩壊するため、分解処理容易な
モールド材である。さらに、水酸化カルシウムを混入し
たモールド材は、ホスホン酸カルシウム水和物の分解で
放たれる結晶水によるバインダー樹脂の加水分解を加速
するために、より速やかに分解処理することのできるモ
ールド材である。
【0065】なお、本実施例では、ホスホン酸カルシウ
ム水和物を用いたモールド材についてのみ説明したが、
その他、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム水和
物、硫酸カルシウム水和物、燐酸二水素カルシウム水和
物、シュウ酸カルシウム水和物、水酸化マグネシウム、
燐酸水素マグネシウム水和物、燐酸マグネシウム水和
物、シュウ酸マグネシウム水和物、または燐酸亜鉛水和
物を充填したモールド材についても、表3に示すそれぞ
れの分解温度まで加熱することによって、本実施例と同
様の効果を得ることができる。ただし、成形時の温度が
各金属化合物の分解点を超えないように注意する必要が
ある。また、モールド材に混入する塩基は、本実施例で
用いた水酸化カルシウム以外にも、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウムのような金属水酸化物、酸化ナトリウ
ム、酸化カルシウムのような金属酸化物、ナトリウムエ
トキシド、カリウムt−ブトキシドのような金属アルコ
キシドなどを使用することができる。
【0066】なお、本発明のモールド材は、本実施例の
組成に限定されることはない。必要に応じて、充填材、
増粘剤、離型剤、ワックス、着色剤などをさらに添加し
得る。また、本実施例では、シート状のモールド材につ
いて説明したが、シート状以外にも、バルク状のBMC
や、粒状のPMCであってもよい。なお、本実施例では
板状の成形品について説明したが、このモールド材から
得られる最終成形品は、これ以外に、浴槽、便槽、貯水
槽、洗面台のような建設資材;椅子、机、家具のような
家庭用品;タイル、人工大理石、パイプのような土木資
材;船舶、自動車、鉄道、航空機のような輸送機器のボ
ディや部品;住宅機器;化粧板;装飾品などの様々な分
野で使用され得る。
【0067】〈実施例5〉本発明のモールド材の分解処
理方法の好適な第1の実施例について説明する。本発明
のモールド材の分解処理方法は、少なくとも不飽和ポリ
エステル、付加重合性モノマー、および脂肪族ポリエス
テルをバインダーとして含むモールド材の成形体を、少
なくとも塩基と1価アルコールとジメチルスルホキシド
とを含む分解溶液に浸漬するものである。まず、不飽和
ポリエステル、付加重合性モノマー、および脂肪族ポリ
エステルをバインダーとして含むモールド材を、次のよ
うに構成した。すなわち、不飽和ポリエステル14.7
重量部に対して、スチレン5.0重量部および硬化剤第
3級ブチルパーオキシベンゾエイト0.3重量部を加え
てバインダーとなる組成物を得た。この組成物に、炭酸
カルシウム68重量部、ステアリン酸亜鉛1重量部、酸
化マグネシウム1重量部、およびガラス繊維10重量部
を加え、モールド材を得た。なお、作製方法は、実施例
3の試作例2と同様である。
【0068】このモールド材をトランスポットに入れ、
金型温度150℃、注入圧力150kg/cm2でトラ
ンスファー成形を行い、1mm厚の板状の成形体を得
た。この成形体を、塩基である水酸化カリウム1g、1
価アルコールであるメタノール20g、およびジメチル
スルホキシド55gからなる分解溶液に80℃で浸漬し
たところ、20時間後にはバインダーである樹脂の3次
元構造は、ほぼ完全に分解され、充填材である炭酸カル
シウムなどは分解溶液中に沈澱しているのが観察され
た。すなわち、本実施例のモールド材からなる成形体
は、完全に分解処理された。以上のように、不飽和ポリ
エステルと、スチレンと、ポリカプロラクトンを、バイ
ンダーとして含むモールド材の成形体は、塩基である水
酸化カリウムと、1価アルコールであるメタノールと、
ジメチルスルホキシドからなる溶液に浸漬することによ
って、容易に、しかも完全に分解処理することができ
る。
【0069】なお、本発明の分解処理方法が対象とする
モールド材は、実施例で用いた組成のものに限定されな
いし、また、必要に応じて、充填材、増粘剤、離型剤、
ワックス、着色剤などを充填していても良い。また、分
解溶液の組成も本実施例の組成、配合比に限定されず、
例えば、塩基としては、本実施例で示した水酸化カリウ
ム以外にも、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムのよ
うな金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カルシウムの
ような金属酸化物、ナトリウムエトキシド、カリウムt
−ブトキシドのような金属アルコキシドなどが挙げられ
る。これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用
され得る。1価アルコールは、本実施例使用のメタノー
ル以外にも、エタノール、プロパノールなどを使用する
ことができる。また、分解された樹脂成分の一部は沈澱
しており、分解溶液をろ過することによって、充填剤成
分、樹脂成分を回収することができる。
【0070】〈実施例6〉本発明のモールド材の分解処
理方法の好適な第2の実施例について説明する。不飽和
ポリエステル、付加重合性モノマー、および脂肪族ポリ
エステルをバインダーとして含むモールド材は、実施例
5のモールド材を例として用いた。このモールド材をト
ランスポットに入れ、金型温度150℃、注入圧力15
0kg/cm2でトランスファー成形を行い、1mm厚
の板状の成形体を得た。次に、1価アルコールであるメ
タノールとジメチルスルホキシドを異なる体積比で混合
した溶媒100mlに対して、塩基である水酸化カリウ
ム1g溶かした7種類の分解溶液を調製した。それぞれ
の構成比については、表5に示した。
【0071】
【表5】
【0072】これら7種の分解溶液に、モールド材の板
状成形体を80℃で浸漬し、5、10、および15時間
後における重量変化を測定した。その結果を表6に示し
た。
【0073】
【表6】
【0074】メタノールとジメチルスルホキシドの混合
体積比が、40/60を境に分解溶液の分解能は大きく
異なり、40/60以下でモールド材成形体の重量変化
が大きく、より速やかに分解反応が起こっている。すな
わち、この範囲の混合比をもった溶媒を含む分解溶液に
よる分解処理方法が好ましいといえる。以上のように、
不飽和ポリエステル、スチレン、およびポリカプロラク
トンをバインダーとして含むモールド材の成形体を、水
酸化カリウム、メタノール、およびジメチルスルホキシ
ドを含む分解溶液に浸漬する分解方法において、メタノ
ールとジメチルスルホキシドの体積混合比は、40/6
0以下であることが望ましい。
【0075】なお、本発明のモールド材成形体の分解処
理方法が対象とするモールド材成形体は、本実施例の組
成に限定されない。また、分解溶液の組成も本実施例の
組成、配合比に限定されず、例えば、塩基としては、本
実施例で示した水酸化カリウム以外にも、水酸化カルシ
ウム、水酸化ナトリウムのような金属水酸化物、酸化ナ
トリウム、酸化カルシウムのような金属酸化物、ナトリ
ウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドのような金属
アルコキシドなどが挙げられる。これらは単独で、ある
いは2種以上を混合して使用され得る。1価アルコール
は、本実施例使用のメタノール以外にも、エタノール、
プロパノールなどを使用することができる。なお、分解
処理時の温度も、もちろん本実施例の値に限定されな
い。
【0076】〈実施例7〉本発明のモールド材成形体の
分解処理工程の好適な実施例について図1を用いて説明
する。分解槽1は、少なくとも塩基と1価アルコールと
ジメチルスルホキシドを含む分解溶液を収容し、モール
ド材の成形体をこの分解溶液に浸漬した状態に保持する
保持手段である。分解溶液およびこれに浸漬されたモー
ルド材の成形体は、次に濾過槽2に移される。この濾過
槽において、分解溶液に不溶の固形分が濾過され、分離
される。一方、濾液は、注入槽3に移動され、ここで水
または1価アルコールを注入され、第2濾過槽4に移さ
れる。ここで、水または1価アルコールの注入によって
生成する固形分を濾過する。濾液は留去槽5において、
溶液からら水または1価アルコールが留去される。
【0077】以下、本実施例によるモールド材成形体の
分解処理の結果を説明する。マレイン酸、イソフタル
酸、プロピレングリコールの重縮合からなる不飽和ポリ
エステル34重量部に対して、スチレン23重量部、ポ
リカプロラクトン(分子量4万)3重量部、および硬化
剤第3級ブチルパーオキシベンゾエイト1重量部を混合
し、更に粒径50μmの炭酸カルシウム30重量部、お
よび直径0.5mm、長さ20mmのガラス繊維10重
量部を混練してモールド材を得た。次に、このモールド
材を150kg/cm2の加圧下に120℃で約30分
間硬化させてモールド材成形体を得た。次に、この成形
体の分解処理を本実施例の分解処理装置にて行った。こ
の分解処理装置は、前述したように、モールド材成形体
を浸漬保持の後、濾過、注入、留去の組み合わせからな
る作業を行う。
【0078】このモールド材成形体100gを、塩基で
ある水酸化カリウム50g、メタノール200ml、お
よびジメチルスルホキシド800mlからなる分解溶液
を満たした分解槽1に80℃で浸漬保持したところ、1
00時間以内に成形体は完全に崩壊し、分解溶液中には
炭酸カルシウムやガラス繊維などの充填剤、および樹脂
成分の一部が沈澱しているのが確認された。次に、この
分解槽1の内容物を濾過槽2に移し、濾液と固形分に分
離した。この固形分は、ガラス繊維、炭酸カルシウム、
および分解樹脂残差残さ分からなる。これらを比重差な
どを利用した分離方法によって各成分に分離すれば、充
填剤を含めた各用途に再利用できる。
【0079】濾過層2で濾過して得られた濾液を注入層
3に移動し、メタノール300mlを注入した。この注
入手段後、濾液は白濁し、沈澱物を生じた。続いて、注
入槽の内容物を第2濾過槽4に移し、濾液と沈澱物に分
離した。この沈澱物は、モールド材におけるバインダー
樹脂分解生成物であり、分解溶液中に溶解していたの
が、過剰量のメタノールの注入によって不溶となり、析
出したものである。この沈澱物は、不飽和ポリエステル
を構成していたフタル酸のエステルや、プロピレングリ
コールなどであり、不飽和ポリエステル樹脂などの原料
として再利用可能である。第2濾過槽で得られた濾液
を、留去槽5に移動させ、メタノールを留去した。その
結果、メタノールに溶解していた水酸化ナトリウムが析
出し、濾液はジメチルスルホキシドのみとなった。水酸
化カリウム、メタノール、ジメチルスルホキシドは、本
分解方法における分解溶液を構成する物質であり、最適
組成に調製することによって、再び分解溶液として使用
できる。
【0080】以上のように、モールド材成形体の分解処
理装置は、モールド材の成形体を、少なくとも塩基と1
価アルコールとジメチルスルホキシドを含む分解溶液に
浸漬した状態に保持する保持工程と、分解溶液中に不溶
の固形分を濾過する濾過工程と、前記濾過後の濾液に水
または1価アルコールを注入する注入工程と、前記注入
後の固形分を濾過する第2濾過工程と、前記注入後の溶
液分から水または1価アルコールを留去する留去工程を
施すことによって、モールド材成形体を分解処理すると
共に、分解処理後のモールド材成形体、および分解溶液
を各成分に分別する。また、各分別された物質は、本発
明によるモールド材や、その分解処理方法、およびその
他の用途に再利用することができる。なお、分解装置の
各構成や装備は、本実施例で示したものに限定されず、
例えば、モールド材成形体の分解処理を加速するため
に、分解槽1に攪拌子などを導入することもできる。ま
た、いくつかのモールド材成形体を分解処理した後、こ
の分解処理液全部を一度に分別しても良いし、分解処理
液の一部を連続的にモールド材成形体を浸漬保持する系
外に導き、濾過、注入、留去による分別を施し、分別さ
れたものを取り除いてから、分解溶液をモールド材成形
体を保持する系へ戻すような連続循環系であっても良
い。
【0081】また、分解装置は、本実施例で示した手段
のみを有するのではなく、その他の手段を有しても良
い。例えば、濾過槽2の濾液を注入槽3に導く前に、留
去手段を設置し、メタノールを留去しても良い。この場
合、水酸化カリウムが沈澱するため、濾過手段をも併設
すれば、水酸化カリウムを分離できると共に、溶媒がジ
メチルスルホキシドのみからなる濾液が得られるため、
この濾液を注入槽に導き、水を加えることによってバイ
ンダー樹脂分解生成物を沈澱分離することができる。ま
た、分解溶液中に存在する物質の一部分離の目的である
なら、上記の分解処理装置の一部のみを用いるだけでも
良い。なお、モールド材成形体、およびその分解処理溶
液の組成、配合比、分量なども、本実施例に限定される
ものではない。
【0082】
【発明の効果】以上のように、本発明の熱硬化性組成物
は、不飽和ポリエステル樹脂架橋鎖中にもエステル結合
を含むよう構成したので、熱分解処理、加溶媒分解処理
などの廃棄処理時における分解が速やかであり、かつ分
解の程度が大きい。また、本発明のモールド材は、その
成形体が使用後において廃棄されたときには、少なくと
も塩基と1価アルコールまたは水を含む分解溶液に浸漬
するか、充填化合物の分解温度まで加熱することによっ
て、バインダー樹脂を容易に分解させることができるの
で、容易に崩壊することができる。本発明の分解処理方
法によれば、モールド材を容易に崩壊させることがで
き、さらに、モールド材成形体および分解溶液を分別し
て各成分を再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるモールド材成形体の
分解処理工程を示す図である。
【符号の説明】
1 分解槽 2 濾過槽 3 注入槽 4 第2濾過槽 5 留去槽

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも不飽和ポリエステル、付加重
    合性モノマー、および開環重合性モノマーを含み、前記
    開環重合性モノマーが、環状ケテンアセタールおよびメ
    チレンジオキソラン誘導体よりなる群から選択される少
    なくとも1種である熱硬化性組成物。
  2. 【請求項2】 さらに、脂肪族ポリエステルを含む請求
    項1記載の熱硬化性組成物。
  3. 【請求項3】 脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラク
    トン、ポリプロピオラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコー
    ル酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペー
    ト、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンサク
    シネート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラク
    トンジオール、ポリカプロラクトントリオール、および
    3ーヒドロキシアルカノエートの共重合体よりなる群か
    ら選択される少なくとも1種である請求項2記載の熱硬
    化性組成物。
  4. 【請求項4】 少なくとも不飽和ポリエステル、付加重
    合性モノマー、開環重合性モノマー、および脂肪族ポリ
    エステルからなる熱硬化性組成物をバインダーとして含
    み、前記開環重合性モノマーが、環状ケテンアセタール
    およびメチレンジオキソラン誘導体よりなる群から選択
    される少なくとも1種であるモールド材。
  5. 【請求項5】 不飽和ポリエステル、付加重合性モノマ
    ー、および脂肪族ポリエステルをバインダーとして含
    み、さらに水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム水和
    物、硫酸カルシウム水和物、ホスホン酸カルシウム水和
    物、燐酸2水素カルシウム水和物、シュウ酸カルシウム
    水和物、水酸化マグネシウム、燐酸水素マグネシウム水
    和物、燐酸マグネシウム水和物、シュウ酸マグネシウム
    水和物、および燐酸亜鉛水和物よりなる群から選択され
    る少なくとも1種を含むことを特徴とするモールド材。
  6. 【請求項6】 さらに、塩基を含む請求項5記載のモー
    ルド材。
  7. 【請求項7】 少なくとも不飽和ポリエステル、付加重
    合性モノマー、および脂肪族ポリエステルをバインダー
    として含むモールド材の成形体を、少なくとも塩基と1
    価アルコールとジメチルスルホキシドを含む分解溶液に
    浸漬する工程を有するモールド材成形体の分解処理方
    法。
  8. 【請求項8】 前記分解溶液における1価アルコールと
    ジメチルスルホキシドの混合比が、体積比で40/60
    以下である請求項7記載のモールド材成形体の分解処理
    方法。
  9. 【請求項9】 少なくとも不飽和ポリエステル、付加重
    合性モノマー、および脂肪族ポリエステルをバインダー
    として含むモールド材の成形体を、少なくとも塩基と1
    価アルコールとジメチルスルホキシドを含む分解溶液に
    浸漬した状態に保持する保持工程、分解溶液中に不溶の
    固形分を濾過する濾過工程、前記濾過後の濾液に水また
    は1価アルコールを注入する注入工程、前記注入後に固
    形分を濾過する第2濾過工程、および前記注入後の溶液
    分から水または1価アルコールを留去する留去工程を有
    するモールド材成形体の分解処理方法。
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