JPH09307267A - 電磁波散乱吸収体及び電磁波散乱吸収方法 - Google Patents

電磁波散乱吸収体及び電磁波散乱吸収方法

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JPH09307267A
JPH09307267A JP12055896A JP12055896A JPH09307267A JP H09307267 A JPH09307267 A JP H09307267A JP 12055896 A JP12055896 A JP 12055896A JP 12055896 A JP12055896 A JP 12055896A JP H09307267 A JPH09307267 A JP H09307267A
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wave scattering
electromagnetic waves
electromagnetic
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健一 原川
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俊夫 斉藤
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健一 海野
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義輝 岩佐
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信義 村井
Katsuya Okada
克也 岡田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量かつ簡単な構成で電磁波による各種の障
害や不都合を低減でき、配設部位の光透過性が確保され
るように配設することも可能とする。 【解決手段】 磁波散乱吸収ガラス10はガラス板12内に
エレメント14が多数設けられて構成されている。各エレ
メント14は単位長さ当りの電気抵抗値が、電波吸収性能
が最大となる所定値(導体よりも高く、絶縁体よりも低
い値)に一致するように、複数の原料の種類、配合率、
製造方法、断面積等が定められている。また各エレメン
ト14は、z軸方向に対しx軸方向及びy軸方向に蛇行し
ながら長手方向がおおよそz軸方向に沿うように中間部
の各部分が屈曲されており、y軸方向に沿って複数のエ
レメント14が所定の間隔を空けて並ぶように、ガラス板
12内に封入されており、各エレメント14には、z軸方向
に平行な部分及びz軸方向に非平行な部分が各々存在し
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁波散乱吸収体及
び電磁波散乱吸収方法に係り、特に、到来した電磁波を
吸収すると共に散乱させる電磁波散乱吸収体、及び該電
磁波散乱吸収体を用いて電磁波を吸収すると共に散乱さ
せる電磁波散乱吸収方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】現在、
電磁波(電波)はラジオ、TV、無線通信等を始めとし
て様々な分野で利用されているが、これらの電磁波が他
の電波の妨害を受けることにより種々の不都合が生ずる
所謂電波障害は従来より問題となっている。この電波障
害の原因となる電磁波としては、ビルディングや鉄塔等
の建築物で反射された電磁波や、電気・電子機器から放
射される不要電磁波等が挙げられる。このうち、特にV
HFやUHF等のTV周波数帯域の電磁波が建築物で反
射し、受信アンテナに局から直接到来した電磁波(直接
波)と建築物の外壁で反射された電磁波(反射波)とが
各々入射する等により生ずるゴースト等の受信障害は、
近年の高層ビルディングの増加に伴って社会問題となっ
ている。
【0003】このため、建築物の外壁で反射される電磁
波の低減を目的として、フェライト等の磁性体から成る
パネルを建築物の外壁に貼設又は埋設し、建築物に到来
した電磁波を前記パネルにより吸収させることが従来よ
り提案されている(例えば実開昭53-11501号公報、特公
昭55-49797号公報等参照)。しかし、フェライトのパネ
ルは、広い周波数帯域の電磁波に対し高い吸収性能を示
す好ましい特性を備えてはいるものの、高価かつ重量が
大きいという問題がある。また、フェライトは光透過率
が殆ど0であり、建築物の窓部等に適用することは不可
能であった。また、フェライト等のパネルに代えてカー
ボンチップ等を混入させたコンクリートにより建築物の
外壁を形成することも行われているが、この種のコンク
リートでは充分な電磁波吸収性能が得られないという問
題がある。
【0004】本発明は上記事実を考慮して成されたもの
で、軽量かつ簡単な構成で電磁波による各種の障害や不
都合を低減することができ、配設部位の光透過性が確保
されるように配設することも可能な電磁波散乱吸収体を
得ることが目的である。
【0005】また本発明は、電磁波による各種の障害や
不都合を簡易な方法によって低減することができる電磁
波散乱吸収方法を得ることが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】例えば建築物の壁を構成
している鉄筋コンクートに電磁波が到来すると、到来し
た電磁波は鉄筋コンクリートの鉄筋から再輻射される
が、この電磁波の再輻射は、コンクリート内に埋設され
ている各鉄筋のうち、到来した電磁波の偏波面に略平行
な方向に沿って延びている鉄筋に起電力が発生して電流
(交流電流)が誘起され、誘起された電流が前記鉄筋を
流れることにより前記鉄筋の各部分で発生し、より詳し
くは、前記鉄筋の各部分から、偏波面が前記鉄筋の延び
る方向に略平行な電磁波、すなわち壁に到来した電磁波
と偏波面の方向が同一の電磁波が、前記鉄筋に垂直に放
射される。従って、再輻射される電磁波の偏波面の方向
及び放射方向は、到来した電磁波によって誘起される交
流電流の流れる方向に依存する。
【0007】本願発明者等は、上記事実に基づき、到来
した電磁波によって誘起される電流の流れる方向を変化
させれば、再輻射される電磁波の偏波面の方向及び放射
方向を、到来した電磁波の偏波面の方向及び入射方向と
異ならせ、再輻射される電磁波を散乱させることができ
ることに想到し、本発明を成すに至った。
【0008】このため請求項1記載の発明に係る電磁波
散乱吸収体は、電流が互いに異なる方向に沿って流れる
ように配置された複数の導電部分から成るエレメントを
備えている。
【0009】請求項1記載の発明では、エレメントが、
電流が互いに異なる方向に沿って流れるように配置され
た複数の導電部分から構成されている。これは、例えば
エレメントとして長尺状の導電体を用い、この長尺状の
導電体の長手方向に沿った各部分(導電部分)の向き
が、隣り合う導電部分と互いに異なる向きになるよう
に、長尺状導電体を蛇行或いは湾曲させて配設する、と
いう簡単な構成により実現できる。また、平面上或いは
立体内に、上述の長尺状の導電体を蛇行或いは湾曲させ
て配設した場合と等価な導電パターン(これも本発明の
エレメントに含まれる)を形成することによっても実現
できる。
【0010】上記により、本発明に係る電磁波散乱吸収
体に電磁波が到来すると、前記エレメントのうち、前記
電流の流れる方向が到来した電磁波の偏波面に略平行な
導電部分に起電力が発生して電流が誘起されるが、誘起
された電流はエレメントに沿って、電流の流れる方向が
異なる他の導電部分にも流れる。電流が流れることによ
りエレメントの各導電部分から再輻射される電磁波の偏
波面の方向及び放射方向についても、前記と同様に前記
各導電部分における電流の流れる方向に依存するので、
電流の流れる方向が互いに異なる導電部分から再輻射さ
れる電磁波の偏波面の方向及び放射方向は互いに異なる
ことになり、本発明に係る電磁波散乱吸収体に到来した
電磁波のうち再輻射される電磁波は、偏波面の方向及び
放射方向が互いに異なる複数種類の電磁波として散乱さ
れることになる。
【0011】電磁波による受信障害等の各種の障害や不
都合は、特定の箇所に到来する特定の偏波方向の電磁波
の電界強度が比較的高い場合に生ずるが、請求項1の発
明によれば、電磁波散乱吸収体に到来した電磁波のうち
再輻射される電磁波は、偏波面の方向及び放射方向が互
いに異なる複数種類の電磁波として散乱されるので、電
磁波による各種の障害や不都合を大幅に低減することが
できる。また、上記では単にエレメントを設けることに
より電磁波による各種の障害や不都合を低減できるの
で、フェライトパネル等の高価かつ重量の嵩む部材を用
いる必要はなく、軽量かつ構成を簡単にすることができ
る。
【0012】また、請求項3に記載したように、エレメ
ントを所定面内の全面に亘って複数配設すれば、電磁波
が到来する所定面内の各箇所から再輻射される電磁波を
各々散乱させることができるが、本発明に係る電磁波散
乱吸収体は、前述のように、再輻射される電磁波を散乱
させることにより、電磁波による各種の障害や不都合を
大幅に低減することができるので、例えば光透過性を有
していないエレメントを用い、該エレメントを所定面内
の全面に亘って複数配設する場合であっても、請求項3
に記載したように複数のエレメントを互いに間隔を空け
て配設する、すなわちエレメントを配設した部位の光透
過性が確保されるように配設することも可能である。
【0013】一方、本願発明者等は電磁波が照射される
環境下に置かれた長尺状の物体の単位長さ当りの電気抵
抗値を変化させた場合に電磁波が反射/吸収/透過する
割合がどのように変化するかを確認する実験(シミュレ
ーション)を行った。シミュレーションの結果を図1に
示す。このシミュレーションは、解析モデルとして、直
径0.4mm のエレメントが30cm間隔で無限に配置された平
板を用い、この平板に100MHz の平面波の電磁波を照
射し、エレメントの導電率を変化させながら電磁波の吸
収、透過、反射の割合の変化を確認したものである。
【0014】図1より明らかなように、エレメントの導
電率が 10000S/m付近の値であるときには照射した電
磁波が最大で40%も吸収されている。エレメントの導電
率が10000S/mのときのエレメントの単位長さ当りの
電気抵抗は10-4Ω・mであるので、金属等の一般的な導
体(導電率が 1000000S/m以上)と比較すると明らか
に高く、ゴム等の一般的な絶縁体と比較すると明らかに
低い。従って、単位長さ当りの電気抵抗が導体よりも高
く絶縁体よりも低い所定範囲内の値となるように調整さ
れたエレメントを用いれば、高い電磁波吸収性能が得ら
れることが理解できる。
【0015】上記に基づき請求項2の発明は、請求項1
の発明において、エレメントの導電部分は、電流が流れ
る方向に沿った単位長さ当りの電気抵抗が導体よりも高
く絶縁体よりも低い所定範囲内の値となるように調整さ
れていることを特徴としている。
【0016】請求項2記載の発明では、エレメントの導
電部分の電流が流れる方向に沿った単位長さ当りの電気
抵抗が、導体よりも高く絶縁体よりも低い所定範囲内の
値となるように調整されているので、到来電磁波の偏波
面に略平行な導電部分に誘起されてエレメントの各導電
部分を流れる電流がエレメント内部で熱エネルギーに変
換されることにより、エレメントからの電磁波の再輻射
が抑制され、良好な電磁波吸収性能が得られる。そし
て、エレメントから再輻射される電磁波は、前述したよ
うに偏波面の方向及び放射方向が互いに異なる複数種類
の電磁波として散乱されるので、電磁波による各種の障
害や不都合を更に低減することができる。
【0017】請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求
項3の何れかの発明において、エレメントが、複数の導
電部分の何れかにおける電流の流れる方向が、到来する
電磁波の偏波面に略平行となるように配設されているこ
とを特徴としている。
【0018】例えば、水平偏波(偏波面の方向が水平)
の電磁波が到来する場合には、複数の導電部分の何れか
における電流の流れる方向が略水平となるようにエレメ
ントを配設すればよい。また、垂直偏波(偏波面の方向
が垂直)の電磁波が到来する場合には、複数の導電部分
の何れかにおける電流の流れる方向が略垂直となるよう
にエレメントを配設すればよい。また、水平偏波の電磁
波及び垂直偏波の電磁波が各々到来する場合、或いは斜
め偏波(偏波面の方向が水平及び垂直方向に対して傾
斜)の電磁波や円偏波(偏波面の方向が回転)の電磁波
が到来する場合には、電流の流れる方向が略水平な導電
部分及び電流の流れる方向が略垂直な導電部分が各々生
ずるようにエレメントを配設すればよい。
【0019】請求項4の発明によれば、到来する電磁波
の偏波面の方向に応じてエレメントを配設するので、電
磁波が到来するとエレメントの複数の導電部の何れかで
確実に電流が誘起され、電磁波の散乱(及び吸収)が行
われるので、電磁波による各種の障害や不都合を確実に
低減することができる。
【0020】ところで、本発明に係る電磁波散乱吸収体
は、電磁波が到来すると、エレメントのうち電流の流れ
る方向が電磁波の偏波面に略平行な導電部分に起電力が
発生して電流が誘起される。電流の流れる方向が到来電
磁波の偏波面に略平行な導電部分が単一のエレメントに
複数存在している場合、前記複数の導電部分に各々起電
力が発生するが、図2(A)に示すように、起電力が発
生する導電部分(起電力発生部)の間隔(一対の起電力
発生部によって挟まれている導電部分の長さ)が小さ
く、かつエレメントに対して逆向きの起電力が一対の起
電力発生部に発生すると、前記各導電部分に発生した起
電力により誘起される電流(交流電流)による電荷の移
動範囲が重なり、前記各導電部分に発生した起電力によ
って誘起される電流が影響し合うことにより、電磁波が
到来しても実質的にエレメントに電流が流れないのと等
価な状態となり、到来した電磁波の散乱(及び吸収)が
行われないことが考えられる。
【0021】このため、請求項5記載の発明は、請求項
1乃至請求項4の何れかの発明において、エレメント
が、電流が互いに同一の方向に沿って流れるように配置
された一対の導電部分によって挟まれている導電部分の
長さが所定長さ以上となるように配設されていることを
特徴としている。
【0022】請求項5の発明では、電流が互いに同一の
方向に沿って流れるように配置された一対の導電部分に
よって挟まれている導電部分の長さが所定長さ以上とな
るようにエレメントを配設しているので、エレメントの
うち電流の流れる方向が到来電磁波の偏波面に略平行な
複数の導電部分に各々発生した起電力によって各々誘起
される電流が影響し合うことを防止することができ、到
来電磁波の偏波面に略平行な複数の導電部分が各々独立
して存在している場合と同様に、到来した電磁波の散乱
(及び吸収)を行わせることができる。
【0023】なおエレメントとして、請求項2に記載の
単位長さ当りの電気抵抗が導体よりも高く絶縁体よりも
低い所定範囲内の値となるように調整したエレメントを
用いれば、図2(B)にも示すように、電流の流れる方
向が到来した電磁波の偏波面に略平行な複数の導電部分
に各々発生した起電力によって各々誘起される電流がエ
レメント内部で熱エネルギーに変換されることにより、
前記電流の減衰率が高くなるので、起電力発生部の間隔
を小さくすることができる。
【0024】請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求
項5の何れかの発明において、前記エレメントは、到来
した電磁波により誘起される電流の流れる方向に沿った
長さが、吸収すべき電磁波の周波数に対応する長さとさ
れていることを特徴としている。
【0025】請求項6記載の発明では、エレメントの電
流の流れる方向に沿った長さを、吸収すべき電磁波の周
波数に対応する長さとしているので、吸収すべき周波数
の電磁波が到来すると、該電磁波によりエレメントに定
在波が生じ、吸収すべき周波数の電磁波を効率良く散乱
(及び吸収)することができる。なお、上述したエレメ
ントの長さは、例えば吸収すべき電磁波の波長の1/2
の長さに対し、更に波長短縮率を考慮して若干短くした
長さとすることができる。
【0026】なお、複数種類の周波数の電磁波を各々散
乱(及び吸収)したい場合には、請求項7にも記載した
ように、互いに異なる複数種類の吸収すべき電磁波の周
波数に対応して、電流の流れる方向に沿った長さの互い
に異なる複数種類のエレメントを各々設ければ、吸収す
べき複数種類の周波数の電磁波に対して各々高い電磁波
散乱(及び吸収)性能が得られる。
【0027】ところで、到来した電磁波によりエレメン
トに電流が誘起されると、この電流により右ねじの法則
に従って磁界が誘起される。この磁界は交流磁界である
ので、本発明に係る電磁波散乱吸収体から電磁波が再輻
射される原因となる。
【0028】このため請求項8記載の発明は、請求項1
乃至請求項7の何れかの発明において、エレメントの周
囲又は近傍に磁性材料が配置されていることを特徴とし
ている。
【0029】なお、磁性材料としては、例えば磁性体リ
ング等の磁性材を適用することができる。磁性体リング
を配置した場合、誘起された磁界が磁性体リングに取り
込まれ、磁界のエネルギーが磁性体リングの有する透磁
率の虚数成分によって熱エネルギーに変換されることに
より磁界が吸収される。
【0030】また、磁性材料として、磁性流体又は磁性
粉又は磁性流体及び磁性粉の少なくとも一方を含む混合
物を適用してもよい。磁性流体又は磁性粉又は前記混合
物を配置した場合、この磁性体又は磁性流体又は磁性粉
又は混合物は、誘起された磁界により磁化されると共
に、磁化の状態が磁界の周期的な変化に応じて周期的に
変化する。これにより、磁界は前記磁性流体又は磁性粉
又は混合物の透磁率の虚数成分により熱エネルギーに変
換されて吸収されたり、磁界により前記磁性体又は磁性
流体又は磁性粉又は混合物が物理的に振動することによ
り熱エネルギーに変換されて吸収される。
【0031】このように、請求項8の発明では、磁性材
料を配置することにより、エレメントに誘起された交流
電流によって誘起される磁界が熱エネルギーに変換され
て吸収されるので、電磁波散乱吸収体から再輻射される
電磁波が低減され、電磁波散乱吸収体の電磁波吸収性能
を更に向上させることができる。
【0032】請求項9記載の発明に係る電磁波散乱吸収
方法は、請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の電磁
波散乱吸収体を、電磁波が到来する箇所に、エレメント
の複数の導電部分の何れかにおける電流の流れる方向
が、到来する電磁波の偏波面に略平行となるように配設
する。
【0033】請求項9の発明では、先に説明した電磁波
散乱吸収体を、エレメントの複数の導電部分の何れかに
おける電流の流れる方向が、到来する電磁波の偏波面に
略平行となるように電磁波が到来する箇所に設けるのみ
で、到来する電磁波を散乱・吸収することができ、かつ
先に説明した電磁波散乱吸収体は何れも極めて簡単な構
造であるので配設も容易であり、到来した電磁波を簡易
な方法で散乱・吸収することができる。
【0034】なお、電磁波散乱吸収体を設ける位置は、
建築物の外部や内部等に限定されるものではなく、例え
ば電磁波放射源を備えた電気・電子機器や車両等に電磁
波散乱吸収体を設けてもよい。これにより、電磁波放射
源から放射された電磁波が電磁波散乱吸収体によって吸
収されると共に、電磁波散乱吸収体から再輻射される電
磁波が散乱されるので、電気・電子機器の電磁波放射源
や車両等から放射される電磁波による各種の障害や不都
合を低減することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態の一例を詳細に説明する。なお以下では、建設部
材の一種であるガラス板を、本発明に係る電磁波散乱吸
収体を含んで構成した形態を例に説明する。
【0036】〔第1実施形態〕図3には、第1実施形態
に係る電磁波散乱吸収ガラス10が示されている。電磁
波散乱吸収ガラス10は、ガラス板12内に、本発明に
係る電磁波散乱吸収体のエレメント14が多数設けられ
て構成されている。各エレメント14は、各々導電率が
異なる複数の原料が配合されて成る材料を用い、該材料
が線状(長尺状)に成型されて構成されている。なお、
前記複数の原料としては、例えば、金属、合金、カーボ
ン、各種の有機物等を用いることができる。
【0037】各エレメント14は、単位長さ当りの電気
抵抗値が、電波吸収性能が最大となるように実験的に求
められた所定値(導体よりも高く、絶縁体よりも低い所
定範囲内の値)に一致するように、複数の原料の種類及
び配合率、前記材料の製造方法、断面積等が定められて
いる(材料の導電率は原料の種類及び配合率や製造方法
等によって変化し、単位長さ当りの電気抵抗値は材料の
導電率や断面積等によって変化する)。
【0038】また各エレメント14は、図3のz軸方向
に対し図3のx軸方向及びy軸方向に蛇行しながら長手
方向がおおよそz軸方向に沿うように中間部の各部分が
屈曲されており、y軸方向に沿って複数のエレメント1
4が所定の間隔を空けて並ぶように、ガラス板12内に
封入されている。上記により、各エレメント14には、
z軸方向に平行な導電部分及びz軸方向に非平行な導電
部分が各々存在していることになる。
【0039】次に本第1実施例形態の作用を説明する。
電磁波散乱吸収ガラス10は窓ガラスとして建築物に配
設されるが、このとき、z軸方向が前記建築物に到来す
る電磁波の偏波面の方向と略平行となる向き(例えば水
平偏波の電磁波が到来する場合には、z軸方向が水平方
向に一致する向き)で配設される。
【0040】上記のように建築物に配設された状態で建
築物に電磁波が到来すると、各エレメント14には、電
磁波の偏波面に略平行な導電部分、すなわちz軸方向
(水平方向)に略平行な導電部分に起電力が発生し、各
エレメント14に沿って流れる交流電流が誘起される。
これに対し、エレメント14の単位長さ当りの電気抵抗
は所定値(導体よりも高く、絶縁体よりも低い所定範囲
内の値)とされているので、各エレメント14に誘起さ
れた交流電流の一部はエレメント14の内部で熱エネル
ギーに変換される。変換された熱エネルギーはエレメン
ト14からの電磁波の再輻射に寄与しないので、各エレ
メント14からの電磁波の再輻射が抑制され、電磁波散
乱吸収ガラス10の全面に亘って良好な電磁波吸収性能
が得られる。
【0041】また、エレメント14の各部分を交流電流
が流れると、該交流電流のうち熱エネルギーに変換され
なかった交流電流のエネルギーは、エレメント14の各
部分から電磁波として再輻射されるが、再輻射される電
磁波の偏波面の向き及び放射方向は、エレメント14の
各部分における電流の流れる方向(各部分におけるエレ
メント14の向き)に依存する。このため、エレメント
14の各部分から再輻射される電磁波は、図3にも示す
ように、偏波面の方向及び放射方向が互いに異なる複数
種類の電磁波として散乱されることになる。
【0042】このように、本第1実施形態に係る電磁波
散乱吸収ガラス10では、偏波面がz軸方向に略平行な
電磁波が到来すると、到来した電磁波の一部は熱エネル
ギーに変換されて吸収されると共に、再輻射される電磁
波は偏波面の方向及び放射方向が互いに異なる複数種類
の電磁波として散乱されるので、電磁波による受信障害
等の各種障害や不都合等を低減することができる。
【0043】また各エレメント14は、y軸方向に沿っ
て所定の間隔を空けて並んでいるので、各エレメント1
4の間隙を光が透過し、建築物の窓ガラスに要求される
光透過性も確保される。
【0044】〔第2実施形態〕次に本発明の第2実施形
態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分
には同一の符号を付し、説明を省略する。図4に示すよ
うに、本第2実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラス18
は、第1実施形態で説明した電磁波散乱吸収ガラス10
に対し、新たにエレメント20が設けられている。
【0045】エレメント20はエレメント14と同様
に、単位長さ当りの電気抵抗値が、電波吸収性能が最大
となるように実験的に求められた所定値(導体よりも高
く、絶縁体よりも低い所定範囲内の値)に一致するよう
に、複数の原料の種類及び配合率、前記材料の製造方
法、断面積等が定められている。またエレメント20
は、図4のy軸方向に対し図4のx軸方向及びz軸方向
に蛇行しながら長手方向がおおよそy軸方向に沿うよう
に中間部の各部分が屈曲されており、x軸方向に沿って
複数のエレメント20が所定の間隔を空けて並ぶよう
に、ガラス板12内に封入されている。上記により、各
エレメント20の中間部には、y軸方向に平行な導電部
分及びy軸方向に対して非平行な導電部分が各々存在し
ている。
【0046】次に本第2実施形態の作用を説明する。本
第2実施例形態に係る電磁波散乱吸収ガラス18も、例
えばz軸方向が水平方向に一致する向きで配設される。
建築物に配設された状態で、偏波面が略水平な電磁波が
建築物に到来した場合には、第1実施形態と同様に、エ
レメント14のz軸方向(水平方向)に略平行な導電部
分に起電力が発生して各エレメント14に沿って流れる
交流電流が誘起され、この交流電流の一部はエレメント
14の内部で熱エネルギーに変換されて吸収されると共
に、エレメント14の各部分から再輻射される電磁波
は、偏波面の方向及び放射方向が互いに異なる複数種類
の電磁波として散乱される。
【0047】一方、図4に示すように、偏波面が略垂直
な電磁波が到来した場合には、各エレメント20の電磁
波の偏波面に略平行な導電部分、すなわちy軸方向(垂
直方向)に略平行な導電部分に起電力が発生して、各エ
レメント20に沿って流れる交流電流が誘起される。こ
れにより、第1実施形態と同様に、各エレメント20に
誘起された交流電流の一部はエレメント20の内部で熱
エネルギーに変換される。変換された熱エネルギーはエ
レメント20からの電磁波の再輻射に寄与しないので、
各エレメント20からの電磁波の再輻射が抑制される。
【0048】また、エレメント20の各部分を交流電流
が流れると、該交流電流のうち熱エネルギーに変換され
なかった交流電流のエネルギーは、エレメント20の各
部分から電磁波として再輻射されるが、このとき再輻射
される電磁波の偏波面の向き及び放射方向も、エレメン
ト20の各部分における電流の流れる方向(各部分にお
けるエレメント20の向き)に依存するので、エレメン
ト20の各部分から再輻射される電磁波は、図4にも示
すように、偏波面の方向及び放射方向が互いに異なる複
数種類の電磁波として散乱されることになる。
【0049】また、偏波面が水平方向及び垂直方向に対
して傾斜している斜め偏波の電磁波が到来した場合、或
いは偏波面が回転する円偏波の電磁波が到来した場合に
は、偏波面に略平行なエレメント14及びエレメント2
0の所定部分に各々交流電流が誘起され、上記と同様に
して電磁波の吸収及び再輻射される電磁波の散乱が行わ
れることになる。
【0050】このように、本第2実施形態に係る電磁波
散乱吸収ガラス18では、到来した電磁波の偏波面の方
向に拘らず、電磁波の吸収及び再輻射される電磁波の散
乱を行うことができ、電磁波による受信障害等の各種障
害や不都合等を低減することができる。
【0051】〔第3実施形態〕次に本発明の第3実施形
態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施
形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略す
る。図5に示すように、本第3実施形態に係る電磁波散
乱吸収ガラス24は、第2実施形態で説明した電磁波散
乱吸収ガラス18の各エレメント14の一方の端部がガ
ラス板12の端部まで延設された電磁波散乱吸収ガラス
26を一対備えており、一対の電磁波散乱吸収ガラス2
6の延設された双方のエレメント14が、互いに接続さ
れて構成されている。また、一対の電磁波散乱吸収ガラ
ス26はガラス接合材により接合されている。なお、ガ
ラス接合材により接合されている部分は露出させてもよ
いが、窓枠等により覆うことが美観上好ましい。
【0052】次に本第3実施形態の作用について説明す
る。第3実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラス24が配
設された建築物に、偏波面が図5のz軸方向に略平行な
電磁波が到来すると、エレメント14には交流電流が誘
起される。この交流電流によるエレメント14内におけ
る電荷の移動範囲は到来した電磁波の周波数に依存する
が、本第3実施形態では、一対の電磁波散乱吸収ガラス
26の双方のエレメント14を負荷抵抗を介して接続し
ているので、物理的なエレメント14の長さが長い。
【0053】従って、窓のサイズが小さい、又は散乱吸
収すべき電磁波の波長の最大値が大きい(周波数が低
い)等の理由により、第2実施形態に係る電磁波散乱吸
収ガラス18では散乱吸収すべき電磁波の波長に対しエ
レメント14の長さを充分に長くすることができない場
合にも、第3実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラス16
を用いれば、電荷の移動範囲が前記接続されたエレメン
ト14の全長よりも短ければ、エレメント14に誘起さ
れた交流電流は一対の電磁波散乱吸収ガラス26の双方
のエレメント14に亘って流れることにより、エレメン
ト14の端部における電流の反射は生じない。
【0054】これにより、エレメント14の端部におけ
る不必要な電磁波の再輻射が発生することを防止するこ
とができるので、第2実施形態の電磁波散乱吸収ガラス
18と比較して、電磁波吸収性能が向上する。また、上
記では電磁波散乱吸収ガラス26の接合部にもエレメン
ト14が配設されているので、前記接合部を透過する電
磁波も低減することができる。
【0055】なお、上記では一対の電磁波散乱吸収ガラ
ス26のエレメント14を接続していたが、3枚以上の
複数枚の電磁波散乱吸収ガラスのエレメントを各々接続
するようにしてもよい。また、上記では電磁波散乱吸収
ガラスがz軸方向に沿って連続するように接合した例を
説明したが、これに限定されるものではなく、y軸方向
に沿っても連続するように接合してもよい。
【0056】〔第4実施形態〕次に本発明の第4実施形
態について説明する。なお、第1実施形態乃至第3実施
形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略す
る。図6に示すように、本第4実施形態に係る電磁波散
乱吸収ガラス30は、各々長さの異なる複数種類のエレ
メント32がガラス板12の全面に亘って多数配設され
て構成されている。エレメント32は、エレメント1
4、20と同様に、単位長さ当りの電気抵抗値が、電波
吸収性能が最大となるように実験的に求められた所定値
(導体よりも高く、絶縁体よりも低い所定範囲内の値)
に一致するように、複数の原料の種類及び配合率、前記
材料の製造方法、断面積等が定められている。
【0057】なお、複数種類のエレメント32は各々吸
収すべき複数種類の周波数の電磁波に対応しており、複
数種類のエレメント32の各々の長さは、吸収すべき複
数種類の周波数の電磁波の波長の1/2の長さに対し、
更に波長短縮率を考慮して若干短くした長さとされてい
る。また本第4実施形態では、吸収すべき複数種類の周
波数の電磁波の各々の偏波面の向きが予め明らかとなっ
ており、吸収すべき複数種類の周波数の電磁波に対応し
て各々長さが異なる各種エレメント32は、各々吸収す
べき周波数の電磁波の偏波面に略平行な部分(例えば前
記電磁波の偏波面で水平である場合は略水平な部分)
と、前記偏波面に対して非平行な部分と、が存在するよ
うに配置されている。
【0058】この電磁波散乱吸収ガラス30は、先に説
明した電磁波散乱吸収ガラス10、18、24と同様
に、到来した電磁波により誘起された交流電流がエレメ
ント32を流れることにより、到来した電磁波が吸収さ
れると共に再輻射される電磁波が散乱されるが、特定周
波数の電磁波が到来した場合には該特定周波数の電磁波
に対応する長さとされたエレメント32に定在波(電
流)が生じる。これにより、エレメント32において、
前記特定周波数の電磁波が効率良く吸収及び散乱される
ことになる。これは、吸収すべき他の周波数の電磁波が
到来した場合も同じであるので、吸収すべき複数種類の
周波数の電磁波を各々効率良く吸収及び散乱させること
ができる。
【0059】なお、吸収すべき電磁波の周波数が1種類
である場合には、前記周波数に応じて長さを揃えたエレ
メントをガラス板12の全面に配設すればよい。
【0060】〔第5実施形態〕次に本発明の第5実施形
態について説明する。なお、第1実施形態乃至第4実施
形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略す
る。図7に示すように、本第5実施形態に係る電磁波散
乱吸収ガラス36には、ガラス板12の面内におけるエ
レメント38の密度が略均一となり、かつ曲率半径が所
定値以上となるように巻回された1本の長いエレメント
38が設けられている。
【0061】なお、エレメント38の中間部が交差して
いる箇所は互いに絶縁されている。またエレメント38
は、エレメント14、20、32と同様に、単位長さ当
りの電気抵抗値が、電波吸収性能が最大となるように実
験的に求められた所定値(導体よりも高く、絶縁体より
も低い所定範囲内の値)に一致するように、複数の原料
の種類及び配合率、前記材料の製造方法、断面積等が定
められている。
【0062】次に本第5実施形態の作用を説明する。本
第5実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラス36が配設さ
れている部位に電磁波が到来すると、エレメント38の
うち到来した電磁波の偏波面に略平行な複数の部分(導
電部分)に起電力が発生して交流電流が誘起されるが、
エレメント38は曲率半径が所定値以上となるように巻
回されているので、図2にも示すように、前記偏波面に
略平行な複数の部分(起電力発生部)の間には、前記偏
波面に非平行な部分が所定長さ以上介在している。
【0063】このため、図2に示すように、エレメント
38の前記偏波面に非平行な部分を挟んで隣り合ってい
る一対の起電力発生部に、エレメント38に対して逆向
きの起電力が各々発生したとしても、一対の起電力発生
部で各々発生した起電力によって誘起される電流が各々
干渉し合うことはなく、起電力発生部が各々独立してい
る場合と同様に、エレメント38の各部分に各々電流が
流れる。これにより、到来した電磁波が熱エネルギーに
変換されて吸収されると共に、再輻射される電磁波は偏
波面の方向及び放射方向が各々異なる複数種類の電磁波
として散乱されることになる。
【0064】なお、本発明に係る電磁波散乱吸収体のエ
レメントは、絶縁性を有する材料に対し導電性を有する
イオンを注入する等により、層状或いは長尺状或いは任
意の形状のエレメントを形成することも可能である。
【0065】また、上記では本発明に係る電磁波散乱吸
収体を、建築物の窓ガラスとして用いられるガラス板に
配設した例を説明したが、上記に限定されるものではな
く、本発明に係るエレメントを、例えば石膏ボード、コ
ンクリート、木、プラスチック、シリコン等の電磁波透
過性を有する材料で覆うことにより、電磁波散乱吸収パ
ネルとしてパネル化するようにしてもよい。また、カー
テン等の織物に織り込んだり、建設工事で用いられる養
生シート等のシート材に貼着するようにしてもよい。な
お、エレメントをコンクリートに埋設する等の際に、エ
レメントの周囲に存在する物質により経時的にエレメン
トの腐食等が生ずる恐れがある場合には、エレメントの
表面をコーティングする等により腐食防止の対策を施し
た後に埋設すればよい。
【0066】また、上記のような電磁波散乱吸収パネル
を用いて建築物を構築する場合、電磁波散乱吸収パネル
を建築現場で製造することは煩雑な作業であるので、電
磁波散乱吸収パネルは工場で製造することが望ましい。
これにより、製造したパネルの周波数特性等の検査を行
った後に出荷することも可能となるので、電磁波散乱吸
収パネルの品質の確保が容易になる。
【0067】また、上記の実施形態では、建設部材の一
種であるガラス板を、本発明に係る電磁波散乱吸収体を
含んで構成した形態を例に説明したが、外壁パネル、内
壁パネル、手摺り、ブラインド等の各種の建設資材に上
記で説明した電磁波散乱吸収体を配設することが可能で
ある。例えば予め電磁波散乱吸収体を配設した外壁パネ
ルを用いて建築物の外壁を構築するか、又は建築物の施
工時に外壁内に電磁波散乱吸収体を埋設すれば、外部か
ら電磁波が到来することにより建築物の外壁から再輻射
される電磁波を低減することができ、建築物の周囲にお
ける受信障害等の電波障害が発生することを防止するこ
とができる。
【0068】また予め電磁波散乱吸収体を配設した内装
パネルを用いて建築物の内壁を構築するか、または建築
物の施工時に内壁内に電磁波散乱吸収体を埋設すれば、
建築物の内部に電磁波放射源が配設されていたとして
も、建築物の外部への漏洩を低減することができる。
【0069】また、建築物内の特定の部屋の壁面、床面
及び天井面に、各々電磁波散乱吸収体を配設すれば、前
記特定の部屋からの電磁波の漏洩や外部から前記特定の
部屋への電磁波の侵入を低減することができ、前記特定
の部屋を所謂電波暗室として利用することも可能とな
る。
【0070】特に、室内においてミリ波等の周波数帯域
の電磁波を用いて通信を行うLAN(所謂ミリ波LA
N)等の無線通信を利用する場合、送信先に直接到達す
る直接波と壁面等に反射して到達する間接波とが干渉す
ることにより、室内に強電界領域及び微弱電界領域が生
じ、強電界領域では電磁波が人体に悪影響を及ぼす可能
性があり、微弱電界領域では電磁波の受信が困難となる
ことも考えられる。これに対し、ミリ波LAN等の無線
通信を利用する室内の壁面等に電磁波散乱吸収体を配置
すれば、壁面等に照射された電磁波の一部が吸収される
と共に壁面から再輻射される電磁波が散乱されるので、
電磁波の干渉により室内に電界強度が大きく異なる領域
が生ずることを防止することができる。
【0071】また、無線通信を利用している室内のドア
が電磁波を反射する材料で構成されている場合には、ド
アが開放されているか閉止されているかによって間接波
が変化し、直接波と間接波が干渉している領域にフェー
ジング(電磁波が伝搬する空間の状態変化により、電界
強度が時間の経過と共に変動する現象)が発生し、無線
通信によりデータ等を転送している場合には、データ誤
りが発生する原因となる。この場合にも、ドアに電磁波
散乱吸収体を配設することにより、フェージングの発生
を防止することができる。
【0072】更に、室内に設置されたCRTから放射さ
れる電磁波が外部に漏洩すると、この電磁波を受信して
テンペスト等の技術を適用すればCRTに表示されてい
る画像を再現することは可能であり、また室内で利用し
ている無線通信の電磁波が外部に漏洩した場合にも、通
信内容を傍受することは可能である。従って、室内から
漏洩する電磁波の種類によっては機密等が漏洩する虞れ
があるが、このような場合にも、本発明に係る電磁波散
乱吸収体を配設することにより、電磁波を吸収すること
で外部へ漏洩する電磁波を低減できると共に、外部へ漏
洩する電磁波を散乱させることによって、CRT表示画
像の再現や通信内容の傍受を目的とした電磁波の受信を
困難とすることができる。
【0073】更に、上記で説明した電磁波散乱吸収体
を、例えば格子、網戸、窓ガラス、サッシ、カーテン、
ブラインド、室内に設置されているパーティションや家
具等のうちの少なくとも複数箇所に多重に配設すれば、
多重に配設した電磁波散乱吸収体の電磁波吸収性能及び
電磁波散乱性能が総合され、単一の電磁波散乱吸収体を
設けた場合と比較して、電磁波による各種の障害や不都
合を大幅に低減することができる。
【0074】また、エレメントの周囲又は近傍に、磁性
体リング等の磁性材、磁性流体、磁性粉、磁性流体及び
磁性粉の少なくとも一方を含む混合物等の磁性材料を配
設するようにしてもよい。これは、例えば図3乃至図7
に示した実施形態では、エレメントの表面に磁性材料を
塗布したり、磁性材料を添加する等により磁性損失を生
ずるように形成されたガラスによってガラス板12を構
成することにより実現できる。これにより、エレメント
に誘起された交流電流により誘起される磁界が、上述し
た磁性材料により熱エネルギーに変換されて吸収される
ので、電磁波散乱吸収体の電磁波吸収性能を更に向上さ
せることができる。
【0075】また、上記で説明した電磁波散乱吸収体
を、建設作業等において、到来する電磁波と作業員との
間に配設されるシート材、例えば養生シートや落下防止
ネット等に貼着するようにしてもよい。これにより、到
来する電磁波の電界強度が高い領域で作業する作業者
を、到来する電磁波から保護することができる。
【0076】更に、本発明に係る電磁波散乱吸収体は、
建設部材に適用することに限定されるものではない。例
えば軍用機等の航空機の翼の先端部等のように、到来し
た電磁波を再輻射することにより各種の障害や不都合等
が生ずる物体に対し、本発明に係る電磁波散乱吸収体を
取付ければ、前記物体から再輻射される電磁波を低減
し、かつ再輻射される電磁波を散乱させることができ
る。
【0077】また、一般に高周波電流を扱う電気・電子
機器、或いは電磁波放射源を備えた電気・電子機器(ブ
ラウン管を備えた機器や電子レンジ等)からは、微弱で
はあるが電磁波が放射されている。このような電気・電
子機器に上記で説明した電磁波散乱吸収体を設ければ、
該電気・電子機器から放射される電磁波を低減すること
ができ、放射される電磁波が人体に及ぼす影響を低減で
きると共に、放射される電磁波による電波障害も低減す
ることができる。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の発明
は、軽量かつ簡単な構成で電磁波による各種の障害や不
都合を低減することができ、配設部位の光透過性が確保
されるように配設することも可能になる、という優れた
効果を有する。
【0079】請求項2記載の発明は、上記効果に加え、
到来した電磁波の一部を吸収することにより、電磁波に
よる各種の障害や不都合を更に低減することができる、
という効果を有する。
【0080】請求項3記載の発明は、上記効果に加え、
電磁波が到来する所定面の光透過性を損なうことなく、
前記所定面内の各箇所で再輻射される電磁波を各々散乱
させることができる、という効果を有する。
【0081】請求項5記載の発明は、上記効果に加え、
電流の流れる方向が到来電磁波の偏波面に略平行な導電
部分が単一のエレメントに複数存在している場合にも、
前記複数の導電部分が各々独立して存在している場合と
同様に、到来した電磁波の散乱(及び吸収)を行うこと
ができる、という効果を有する。
【0082】請求項6記載の発明は、上記効果に加え、
吸収すべき周波数の電磁波を効率良く散乱(及び吸収)
することができる、という効果を有する。
【0083】請求項7記載の発明は、上記効果に加え、
吸収すべき複数種類の周波数の電磁波に対して各々高い
電磁波散乱(及び吸収)性能が得られる、という効果を
有する。
【0084】請求項8記載の発明は、上記効果に加え、
電磁波散乱吸収体から再輻射される電磁波を低減させ、
電磁波散乱吸収体の電磁波吸収性能を更に向上させるこ
とができる、という効果を有する。
【0085】請求項9記載の発明は、電磁波による各種
の障害や不都合を簡易な方法によって低減することがで
きる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項2の発明の作用を説明するための線図
(本願発明者等が行ったシミュレーションの結果)であ
る。
【図2】請求項5の発明の作用を説明するための、
(A)は電流が流れる方向が到来する電磁波の偏波面と
略平行な一対の導電部分の間隔が小さい場合、(B)は
前記間隔を大きくした場合を各々示す概念図である。
【図3】第1実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラスを示
す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラスを示
す斜視図である。
【図5】第3実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラスを示
す斜視図である。
【図6】第4実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラスを示
す斜視図である。
【図7】第5実施形態に係る電磁波散乱吸収ガラスを示
す斜視図である。
【符号の説明】
10 電磁波散乱吸収ガラス 14 エレメント 18 電磁波散乱吸収ガラス 20 エレメント 24 電磁波散乱吸収ガラス 30 電磁波散乱吸収ガラス 32 エレメント 36 電磁波散乱吸収ガラス 38 エレメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩佐 義輝 千葉県印西市大塚1丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 村井 信義 千葉県印西市大塚1丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 岡田 克也 千葉県印西市大塚1丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電流が互いに異なる方向に沿って流れる
    ように配置された複数の導電部分から成るエレメントを
    備えた電磁波散乱吸収体。
  2. 【請求項2】 前記エレメントの導電部分は、電流が流
    れる方向に沿った単位長さ当りの電気抵抗が導体よりも
    高く絶縁体よりも低い所定範囲内の値となるように調整
    されていることを特徴とする請求項1記載の電磁波散乱
    吸収体。
  3. 【請求項3】 前記エレメントが、所定面内の全面に亘
    り、互いに間隔を空けて複数配設されていることを特徴
    とする請求項1又は請求項2記載の電磁波散乱吸収体。
  4. 【請求項4】 前記エレメントは、前記複数の導電部分
    の何れかにおける電流の流れる方向が、到来する電磁波
    の偏波面に略平行となるように配設されていることを特
    徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の電磁
    波散乱吸収体。
  5. 【請求項5】 前記エレメントは、電流が互いに同一の
    方向に沿って流れるように配置された一対の導電部分に
    よって挟まれている導電部分の長さが所定長さ以上とな
    るように配設されていることを特徴とする請求項1乃至
    請求項4の何れか1項記載の電磁波散乱吸収体。
  6. 【請求項6】 前記エレメントは、電流の流れる方向に
    沿った長さが、吸収すべき電磁波の周波数に対応する長
    さとされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5
    の何れか1項記載の電磁波散乱吸収体。
  7. 【請求項7】 互いに異なる複数種類の吸収すべき電磁
    波の周波数に対応して、電流の流れる方向に沿った長さ
    の互いに異なる複数種類のエレメントが各々設けられて
    いることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1
    項記載の電磁波散乱吸収体。
  8. 【請求項8】 前記エレメントの周囲又は近傍に磁性材
    料が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求
    項7の何れか1項記載の電磁波散乱吸収体。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至請求項7の何れか1項記載
    の電磁波散乱吸収体を、電磁波が到来する箇所に、前記
    エレメントの前記複数の導電部分の何れかにおける電流
    の流れる方向が、到来する電磁波の偏波面に略平行とな
    るように配設する電磁波散乱吸収方法。
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