JPH09297118A - 金属材質の腐食測定装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 金属材質の腐食測定を安定して正確に行ない
得るようにする。 【解決手段】 腐食作用を得る試料溶液１４と、測定対
象の金属試料からなる試料電極および白金電極からなる
対極３２と、試料電極にキャピラリー状先端部４２ａを
対向させたルギン管４２とを少なくとも備えて構成する
金属材質の腐食測定装置において、試料電極に対するル
ギン管４２のキャピラリー状先端部４２ａの対向位置を
Ｘ、Ｙの２次元方向および／またはＸ、Ｙ、Ｚの３次元
方向に調整可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属材質の腐食測
定に適用される腐食測定装置に関し、さらに詳しくは、
腐食測定方法としての電気化学的試験法を実施可能にし
た金属材質の腐食測定装置に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から、金属材質の腐食測定には、い
わゆる電気化学的試験法が広く採用されている。即ち、
一般に水溶液中における金属材質の腐食は、電気化学反
応によって進行することが知られており、この電気化学
反応を利用した電気化学的な腐食速度の測定に関して
は、（ａ）短時間での測定が可能であること、（ｂ）腐
食速度の定量化が容易であること、（ｃ）腐食速度の瞬
間値が得られることなどの優れた種々の特長を有し、極
めて実際的且つ効果的な腐食測定手法である。ここで、
該電気化学的な腐食速度は、例えば、配置される各電極
間の分極特性を測定することで容易に求められる。

【０００３】図６（ａ）、（ｂ）は、前記電気化学的試
験法を採用した従来例による金属材質の腐食測定装置の
概要を模式的に示す構成説明図（同図（ａ））および外
観斜視図（同図（ｂ））であり、また、図７は、同上腐
食測定装置を用いて定電位法による分極特性測定をなす
場合の概要を説明するブロック図である。

【０００４】これらの図６（ａ）、（ｂ）および図７に
示す装置構成において、腐食測定装置は、上方開口部を
蓋部材１０２で密封閉塞可能にし、内部の試料室内に腐
食作用を得るための試料溶液１０３を収容した耐腐食性
の電解槽１０１を有している。そして、前記蓋部材１０
２には、先端部に測定対象の金属試料からなる試料電極
１１２を露出保持した試料電極ホルダー１１１と、先端
部の対極室１２３内に白金電極からなる対極１２２を封
止保持した対極ホルダー１２１と、キャピラリー状先端
部１３１ａを形成したルギン管１３１とがそれぞれに貫
通支持されており、ここでは、前記露出された試料電極
１１２および封止された対極１２２を前記試料溶液１０
３中に浸漬できるようにすると共に、試料電極１１２に
所定間隔を隔ててルギン管１３１のキャピラリー状先端
部１３１ａを対向させてある。

【０００５】また、別に設けられてＫＣｌ溶液１４２を
収容した中間槽１４１には、照合電極１５１及び前記ル
ギン管１３１から取り出したガラス管からなる接続管１
３２の端部がそれぞれに浸漬されており、該接続管１０
２内を通した液橋で電気的接続が保たれている。さら
に、前記前記電解槽１０１内に対しては、ガス送入管１
６１によって脱酸素ガスが送入され、且つガス排出管１
６２は水封されている。なお、図中、１７１は前記試料
溶液１０３の温度確認のために備えられる温度計であ
る。

【０００６】そして、前記構成の腐食測定装置を用いて
腐食測定を行なうためには、この場合、図７から明らか
なように、前記各電極、つまり試料電極１１２と対極１
２２と照合電極１５１とに定電位電解装置１８１を接続
させ、且つこれを制御操作して、よく知られているよう
に、腐食系の測定に適した定電位法により、その分極特
性を測定する。

【０００７】即ち、本腐食測定装置においては、前記対
極１２２およびルギン管１３１が配置されている電解槽
１０１内に試料溶液１０３を収容した状態で、腐食作用
を得るための温度および雰囲気などの測定条件が整えら
れた後に、該試料溶液１０３中に試料電極１１２を挿入
且つ浸漬させて、直ちに自然腐食電位の測定を開始す
る。引続き、該自然腐食電位が定常状態に達した時点
で、カソード分極特性、次いでアノード分極特性を順次
に測定するのである。

【０００８】而して、前記測定された分極特性によって
所期の腐食速度を得るのには、比較的広い電位域の分極
特性から腐食速度を求めるターフェル線外挿法、および
微少分極時の分極特性から腐食速度を求める分極抵抗法
により、腐食電流密度ｉ_corrを算出すればよい。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ここで、この種の腐食
測定装置の場合、試料電極１１２に対するルギン管１３
１でのキャピラリー状先端部１３１ａの対向関係、具体
的には、対向間隔（前後Ｘ方向の間隔）と対向位置（左
右Ｙ方向および上下Ｚ方向の各位置）との関係が正確な
腐食測定を行なう上で極めて重要であるが、上記構成に
よる従来の腐食測定装置においては、この試料電極１１
２に対するキャピラリー状先端部１３１ａの対向位置が
一定の態様に固定されており、個々の相互に異なる試料
電極に対応した対向位置の調整ができないために、その
腐食測定を必ずしも的確且つ効果的に行ない得ないとい
う不都合を有するものであった。

【００１０】また一方では、試料電極ホルダー１１１に
対する試料電極１１２の保持態様が特定されておらず、
該試料電極１１２と電極端子との間に接続不良を生じ易
いという問題点もあった。

【００１１】本発明は、このような従来の実情に鑑み、
これらの問題点を解消するためになされたもので、その
目的とするところは、金属材質の腐食測定を安定して正
確に行ない得るようにした金属材質の腐食測定装置を提
供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明に係る請求項１に記載の発明は、腐食作用を
得る試料溶液と、測定対象の金属試料からなる試料電極
および白金電極からなる対極と、前記試料電極にキャピ
ラリー状先端部を対向させたルギン管とを少なくとも備
えて構成する金属材質の腐食測定装置において、前記試
料電極に対する前記ルギン管のキャピラリー状先端部の
対向位置をＸ、Ｙの２次元方向および／またはＸ、Ｙ、
Ｚの３次元方向に調整可能にしたことを特徴とする金属
材質の腐食測定装置である。

【００１３】本請求項１の腐食測定装置では、試料電極
に対するルギン管のキャピラリー状先端部の対向位置を
Ｘ、Ｙの２次元方向および／またはＸ、Ｙ、Ｚの３次元
方向に調整可能にしてあるために、個々の各試料電極に
対応したキャピラリー状先端部の対向位置を容易且つ的
確に設定し得る。

【００１４】また、本発明に係る請求項２に記載の発明
は、前記請求項１の金属材質の腐食測定装置において、
前記試料電極としての金属試料が、押圧スプリングを介
して電極端子に接続されていることを特徴とするもので
ある。

【００１５】本請求項１の腐食測定装置では、試料電極
に対する接続を確実になし得る。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る金属材質の腐
食測定装置の実施態様例につき、図１ないし図３を参照
して詳細に説明する。

【００１７】図１（ａ）、（ｂ）は、本実施態様例を適
用した腐食測定装置の概要構成を一部欠截して模式的に
示す全体正面図（同図（ａ））および要部平面図（同図
（ｂ））である。また、図２は、同上試料電極ホルダー
における試料電極の保持状態と該試料電極に対するルギ
ン管のキャピラリー状先端部の配置位置との関係を拡大
して示す縦断面図であり、図３は、同上試料電極ホルダ
ーの詳細構造を分解して示す斜視図である。

【００１８】これらの図１（ａ）、（ｂ）ないし図３に
示す装置構成において、本実施態様例による腐食測定装
置は、内部に試料溶液１４を収容する蓋部材１２付きの
耐腐食性電解槽１１と、測定対象の金属試料片からなる
試料電極２２を保持する試料電極ホルダー２１と、白金
電極からなる対極３２を保持する対極ホルダー３１と、
ルギン管４２を後述する如く上下Ｚ方向に保持するルギ
ン管ホルダー４１とをそれぞれに有しており、さらに、
前記電解槽１１に組み合せて内部にＫＣｌ溶液５３を収
容する中間槽５１と、照合電極６１とを設ける。

【００１９】前記電解槽１１は、取り扱い操作を容易に
するために上方内部を内径一杯に開口した上で、上方外
周に締付け鍔部１１ａを周設した実質的に広口ガラス瓶
を用いており、その上方開口部には、締付け鍔部１１ａ
を含んで蓋部材１２が被蓋され、且つ該蓋部材１２を締
付け具１３により周囲複数箇所で密封可能なように閉塞
にする。また、前記蓋部材１２には、前記試料電極ホル
ダー２１と対極ホルダー３１とが貫通して着脱自在に取
付けられると共に、前記ルギン管ホルダー４１が同様に
貫通された上で、前記試料電極ホルダー２１に対して後
述する如くＸ、Ｙの２次元方向に位置調整可能に取付け
られており、別に従来の場合と全く同様に、脱酸素ガス
のガス送入嘴７１およびガス排出嘴７２が設けられ、さ
らに、温度計８１が配置されている。

【００２０】前記試料電極ホルダー２１は、図２および
図３に示されているように、下部側に保持部材２４を固
定したホルダー本体２３を有しており、該ホルダー本体
２３の所要位置には、前記蓋部材１２の所定部分に取付
けビス２６で着脱自在に取り付けるためのフランジ基板
２５が設けられている。ここで、前記保持部材２４に対
しては、接触圧を得るためのスプリング２７ａ、該スプ
リング２７ａによって押圧されるコンタクトピン２７、
該コンタクトピン２７を保持する押えネジ環２８、前記
試料電極２２の周辺部を表裏でシールする１組のパッキ
ン２２ａ、これらを押止保持する中心開口２９ａを形成
した取付けキャップ部材２９を順次着脱自在に組み上げ
ることで全体を一体化させ、且つ前記スプリング２７ａ
の基部側からホルダー本体２３内を通して電極端子３０
を取り出してある。そして、このようにして組み上げた
状態では、取付けキャップ部材２９の中心開口２９ａ内
に試料電極２２が露出されて、前記試料溶液１４中に浸
漬されることになり、且つこの場合には、取付けキャッ
プ部材２９の嵌脱操作によって各測定毎に試料電極２２
を容易に交換し得るのである。

【００２１】前記対極ホルダー３１は、従来の場合と同
様に、ホルダー本体３３の下部側に区分した対極室３４
内に前記対極３２を封止保持して前記試料溶液１４中に
浸漬されると共に、該ホルダー本体３３を通して電極端
子３６を取り出してあり、さらに、本ホルダー本体３３
についても、所要位置に設けたフランジ基板３５によっ
て前記蓋部材１２の所定部分に取り付け固定される。

【００２２】前記ルギン管ホルダー４１は、保持位置調
節用の押えビス４５によって前記ルギン管４２を上下方
向（Ｚ方向）位置調節自在に保持するホルダー本体４３
を有しており、該ホルダー本体４３には、前記蓋部材１
２の所定部分に取付けビス４５で取付け固定するための
フランジ基板４４を設けてある。ここで、前記フランジ
基板４４は、止めビス４５による取付け孔の形状、大き
さなどを考慮することにより、前記試料電極ホルダー２
１の取付け位置に対して前後方向（Ｘ方向）および左右
方向（Ｙ方向）の位置調節自在に取付け得るようになっ
ている。

【００２３】また、前記ルギン管４２からは、継手部材
４６を介してテフロン管などの可撓性を有して液橋を形
成する接続管４７を取り出してある。この場合、該接続
管４７には、従来の接続管相当部材が非可撓性のガラス
管であるのに比較して、テフロン管などの可撓性を有す
る部材を用いているために、腐食測定時の取り扱い操作
性が頗る良好に改善される。

【００２４】そして、前記ルギン管ホルダー４１におけ
るＸ方向およびＹ方向の位置調節自在な取付けと、Ｚ方
向の位置調節自在な保持とにより、前記試料電極ホルダ
ー２１での試料電極２２の露出面に対し、該ルギン管ホ
ルダー４１に保持されているルギン管４２のキャピラリ
ー状先端部４２ａの対向間隔ならびに対向位置を常に正
確に設定し得るのである。

【００２５】従って、上記実施態様例の構成による腐食
測定装置においても、従来の場合と全く同様に金属材質
の腐食測定を実施できる。

【００２６】本実施態様例の腐食測定装置を使用して、
ここではＪＩＳ・Ｇ０５７に準拠したＳＵＳ３０４の２
０ｗｔ％および５ｗｔ％硫酸溶液中におけるアノード分
極曲線を測定した結果を図４および図５のグラフに示
す。従来装置の場合は、測定時間３ｈｒで、該測定操作
に相応の熟練を必要としているが、本発明装置において
は、２０ｗｔ％、５ｗｔ％の何れの場合にも、測定時間
１ｈｒでＪＩＳ記載の測定結果を簡単且つ容易に再現で
きることが確認された。

【００２７】

【発明の効果】以上、実施態様例によって詳述したよう
に、本発明装置によれば、腐食作用を得る試料溶液と、
測定対象の金属試料からなる試料電極および白金電極か
らなる対極と、試料電極にキャピラリー状先端部を対向
させたルギン管とを少なくとも備えて構成する金属材質
の腐食測定装置において、試料電極に対するルギン管の
キャピラリー状先端部の対向位置をＸ、Ｙの２次元方向
および／またはＸ、Ｙ、Ｚの３次元方向に調整可能にし
てあるために、測定対象となる個々の各試料電極に対応
して、該各試料電極に対するキャピラリー状先端部の対
向位置を的確に設定できることになり、結果的に良好且
つ効果的な腐食測定を極めて容易に行ない得るという実
用上優れた特長がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施態様例を適用した腐食測定装置の
概要構成を一部欠截して模式的に示す全体正面図（同図
（ａ））および要部平面図（同図（ｂ））である。

【図２】同上装置の試料電極ホルダーにおける試料電極
の保持状態と該試料電極に対するルギン管のキャピラリ
ー状先端部の配置位置との関係を拡大して示す縦断面図
である。

【図３】同上試料電極ホルダーの詳細構造を分解して示
す斜視図である。

【図４】同上実施形態例による腐食測定装置を使用して
ＳＵＳ３０４の２０ｗｔ％硫酸溶液中におけるアノード
分極曲線を測定した結果を示すグラフである。

【図５】同上実施形態例による腐食測定装置を使用して
ＳＵＳ３０４の５ｗｔ％硫酸溶液中におけるアノード分
極曲線を測定した結果を示すグラフである。

【図６】従来例による電気化学的試験法を採用した金属
材質の腐食測定装置の概要を模式的に示す構成説明図
（同図（ａ））および外観斜視図（同図（ｂ））であ
る。

【図７】同上腐食測定装置を用いて定電位法による分極
特性測定をなす場合の概要を説明するブロック図であ
る。

【符号の説明】

１１ 電解槽 １１ａ 締付け鍔部 １２ 蓋部材 １３ 締付け具 １４ 試料溶液 ２１ 試料電極ホルダー ２２ 試料電極 ２２ａ パッキン ２３ ホルダー本体 ２４ 保持部材 ２５ フランジ基板 ２６ 取付けビス ２７ コンタクトピン ２７ａ スプリング ２８ 押えネジ環 ２９ キャップ部材 ２９ａ 中心開口 ３０ 電極端子 ３１ 対極ホルダー ３２ 対極 ３３ ホルダー本体 ３４ 対極室 ３５ フランジ基板 ３６ 電極端子 ４１ ルギン管ホルダー ４２ ルギン管 ４２ａ ルギン管のキャピラリー状先端部 ４３ ホルダー本体 ４４ Ｚ方向位置調節用の押えビス ４５ フランジ基板 ４６ Ｘ、Ｙ方向位置調節用の取付けビス ４７ 継手部材 ４８ 液橋を形成する可撓性の接続管 ５１ 中間槽 ５２ 栓部材 ５３ ＫＣｌ溶液 ６１ 照合電極 ７１ ガス送入嘴 ７２ ガス排出嘴 ８１ 温度計

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 腐食作用を得る試料溶液と、測定対象の
   金属試料からなる試料電極および白金電極からなる対極
   と、前記試料電極にキャピラリー状先端部を対向させた
   ルギン管とを少なくとも備えて構成する金属材質の腐食
   測定装置において、 前記試料電極に対する前記ルギン管のキャピラリー状先
   端部の対向位置をＸ、Ｙの２次元方向および／または
   Ｘ、Ｙ、Ｚの３次元方向に調整可能にしたことを特徴と
   する金属材質の腐食測定装置。
2. 【請求項２】 前記試料電極としての金属試料が、押圧
   スプリングを介して電極端子に接続されていることを特
   徴とする請求項１に記載の金属材質の腐食測定装置。