JPH09252674A - アグロバクテリウム属の微生物による遺伝子導入方法及び形質転換植物の作出方法 - Google Patents

アグロバクテリウム属の微生物による遺伝子導入方法及び形質転換植物の作出方法

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JPH09252674A
JPH09252674A JP8070584A JP7058496A JPH09252674A JP H09252674 A JPH09252674 A JP H09252674A JP 8070584 A JP8070584 A JP 8070584A JP 7058496 A JP7058496 A JP 7058496A JP H09252674 A JPH09252674 A JP H09252674A
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JP
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plant
genus
culture medium
brassica
tissue
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JP8070584A
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Tsuyoshi Takasaki
剛志 高崎
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SAISHIYU JITSUYOU GIJUTSU KENK
SAISHIYU JITSUYOU GIJUTSU KENKYUSHO KK
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SAISHIYU JITSUYOU GIJUTSU KENK
SAISHIYU JITSUYOU GIJUTSU KENKYUSHO KK
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ブラシカ属の植物の組織片を組織片培養
培地で前培養した後、アグロバクテリウム属の微生物を
含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を前記組織片培養
培地で共存培養し、次いで、共存培養後の組織片からカ
ルスを誘導し、得られたカルスを再分化することによ
り、ブラシカ属の形質転換植物を作出する方法におい
て、組織片培養培地のpHを特定範囲とすること、組織
片培養培地にフィーダーセルを添加すること、又は、感
染液への浸漬時間、共存培養時の温度、及び共存培養期
間の3者を特定の値とすること、を特徴とするブラシカ
属の形質転換植物の作出方法。 【効果】 アグロバクテリウム属の微生物を用いて、効
率的にブラシカ属の植物に遺伝子を導入し、形質転換植
物を作出する方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アグロバクテリウ
ム属の微生物を用いて、効率的にブラシカ属の植物に遺
伝子を導入し、形質転換植物を作出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】バイオテクノロジーが急速に進展する中
で、組織培養、葯培養、細胞培養などのバイオテクノロ
ジー技術を利用して、多様な特性を有する品種が育成さ
れてきた。更に組換えDNA技術の発達により通常交配
不可能な他の生物種の遺伝子を導入することにより、従
来期待し得なかった特性を有する品種が育成されてい
る。
【0003】アメリカでは既に、日持ちの良いトマトと
してポリガラクツロナーゼ遺伝子のアンチセンスを導入
したトマト(フレバーセーバー)が市場に出回ってい
る。また、BT-Toxinを導入した耐虫性バレイショ、トウ
モロコシ、除草剤耐性遺伝子を導入したワタ、大豆、ウ
ィルスの外被タンパク質を導入したカボチャが、いずれ
も食品としての安全性が認可され、実用化の段階にあ
る。
【0004】カナダでは除草剤耐性のナタネが安全評価
を終え、実用化の段階にある。これら組換えDNA技術
を利用した作物の商品化は今後ますます進む傾向にあ
る。組換えDNAを利用した品種の作出には優良な遺伝
子の単離と植物への遺伝子導入技術が必要とされる。植
物への遺伝子導入方法にはアグロバクテリウム法、エレ
クトロポレーション法、パーティクルガン法などがあ
る。アグロバクテリウム法はナス科、ウリ科の植物では
高率で形質転換植物を作出できるが、アブラナ科の植物
では成功率が低く、効率的な遺伝子導入技術及び再分化
技術の開発が急がれている。特にアブラナ、ハクサイ、
カブ、ツケナなどを含むブラシカ・ラパ(Brassica rap
a)は組織片からの再分化能が低いため、遺伝子を導入
した細胞を個体レベルにまで分化できたという報告は少
ない(Radke et al, Plant CellRep (1992) 11:499-50
5, Mukhopadhyay et al, Plant Cell Rep (1992) 11: 5
06-513, Jun et al. Plant CellRep. (1995) 14: 620-6
25))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アグ
ロバクテリウム属の微生物によるブラシカ属の形質転換
植物の効率的な作出方法を提供すると共に、組換えDN
A技術を利用したブラシカ属の植物の品種作出方法を提
供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意検討を重ねた結果、組織片培養培地のp
Hを特定の値とすること、又は組織片培養培地にフィー
ダーセルを添加することにより遺伝子導入率が著しく向
上することを見出し、また、感染液への浸漬時間、共存
培養時の温度、共存培養期間の3つのパラメーターが密
接に関連し、これらを特定の値とすることにより、形質
転換植物の作出効率が著しく向上することを見出し、こ
れらの知見に基づき本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、ブラシカ属の植物の組織
片を組織片培養培地で前培養した後、アグロバクテリウ
ム属の微生物を含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を
前記組織片培養培地で共存培養することにより、ブラシ
カ属の植物に遺伝子を導入する方法において、組織片培
養培地のpHを5.0〜6.9とすることを特徴とする
ブラシカ属の植物の遺伝子導入方法である。
【0008】また、本発明は、ブラシカ属の植物の組織
片を組織片培養培地で前培養した後、アグロバクテリウ
ム属の微生物を含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を
前記組織片培養培地で共存培養することにより、ブラシ
カ属の植物に遺伝子を導入する方法において、組織片培
養培地がフィーダーセルを含むことを特徴とするブラシ
カ属の植物の遺伝子導入方法である。
【0009】さらに、本発明は、ブラシカ属の植物の組
織片を組織片培養培地で前培養した後、アグロバクテリ
ウム属の微生物を含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片
を前記組織片培養培地で共存培養し、次いで、共存培養
後の組織片からカルスを誘導し、得られたカルスを再分
化することにより、ブラシカ属の形質転換植物を作出す
る方法において、下記の式 82 < x/10+(y−19)2 +z < 145 〔但し、xは感染液に浸漬する時間(分)、yは共存培
養時の温度(℃)、zは共存培養の期間(時)〕を満た
すようにx、y、zの値を設定することを特徴とするブ
ラシカ属の形質転換植物の作出方法である。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
遺伝子導入方法は、ブラシカ属の植物の組織片を組織片
培養培地で前培養した後、アグロバクテリウム属の微生
物を含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を前記組織片
培養培地で共存培養することにより、ブラシカ属の植物
に遺伝子を導入する。また、本発明の形質転換植物の作
出方法は、前記方法により遺伝子を導入した組織片から
カルスを誘導し、得られたカルスを再分化することによ
り、ブラシカ属の形質転換植物を作出する。
【0011】ここで用いるブラシカ属の植物は、ブラシ
カ属に属する限り、どのような種でもよく、例えば、ブ
ラシカ・ラパ、ブラシカ・オレアシア等を用いることが
できる。これらの種の中でもブラシカ・ラパを好ましい
種として例示できる。ブラシカ・ラパに属する植物の中
でもハクサイ(B. rapa ssp. pekinensis )、カブ(B.
rapa ssp. rapa )、ツケナ(B.rapa ssp. chinensis
)を特に好ましい植物として例示できる。好ましい品
種としては、ツケナでは、友好菜(カネコ(株))、紅
菜苔((株)サカタのタネ)、おそめ(タキイ種苗
(株))、カブでは本紅大丸カブ(渡辺採種場
(株))、日野菜カブ(タキイ種苗(株))、聖護院カ
ブ(タキイ種苗(株))、ハクサイでは、ストロングC
R(渡辺採種場(株))、郷風((株)サカタのタネ)
等を例示できる。
【0012】前培養に用いる植物の組織片は、遺伝子導
入後、個体レベルにまで分化できる能力を有するもので
あればどのようなものでもよく、例えば、花茎、葉、子
葉片、胚軸などを用いることができる。
【0013】組織片培養培地は、植物の組織片の培養に
必要な成分、例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、固形
剤、植物ホルモン等を含むものであればどのようなもの
でもよい。炭素源としては、例えば、スクロース、グル
コース等を用いることができ、無機塩類としては、MS
無機塩、B5無機塩等を用いることができ、固形剤とし
ては、寒天、ゲルライト等を用いることができ、植物ホ
ルモンとしては、2,4−D、α−ナフタレン酢酸(N
AA)、ベンジルアデニン(BA)、ゼアチン(Zeati
n)等を用いることができる。また、組織片培養培地
は、フィーダーセルを含むことが好ましい。フィーダー
セルにより、ブラシカ属の植物の遺伝子導入率が向上す
る。フィーダーセルとしては、例えば、タバコ、トマト
のサスペンジョン等を用いることができる。組織片培養
培地中のフィーダーセルの濃度は1.5 ml/90cm シャーレ
程度とするのが好ましい。組織片培養培地のpHは、
5.0〜6.9とするのが好ましく、5.2〜5.8と
するのが更に好ましい。培地のpHをこのような範囲と
することにより、ブラシカ属の植物の遺伝子導入率が向
上する。前培養時の温度は、植物の組織片に悪影響を及
ぼさない範囲であれば特に制限はないが、20〜28℃
とするのが好ましい。
【0014】用いるアグロバクテリウム属の微生物は、
特に制限はないが、アグロバクテリウム・トメファシエ
ンス(Agrobacterium tumefaciens )が好ましく、特
に、CIB542/A136 系統、又はEHA101系統のものが好まし
い。アグロバクテリウムEHA101系統は、バイナリーベク
ターpIG12Hm を有する。このベクターのT−DNA領域
を図1に示す。図1が示すように、このベクターはレポ
ーター遺伝子となるGUS遺伝子のほか、選抜マーカー
遺伝子となるカナマイシン耐性遺伝子(KmR)及びハ
イグロマイシン耐性遺伝子(HygR)を有する。感染
液中のアグロバクテリウム属の微生物の濃度は、特に制
限はないが、1.2×108cells/ml 程度が好ましい。
【0015】感染液に植物の組織片を浸漬する時間、共
存培養時の温度、及び共存培養の期間は、遺伝子導入
率、及びその後の再分化率に大きな影響を与える要素で
ある。遺伝子導入率の向上を図るという観点からは、浸
漬時間及び共存培養期間を長くし、共存培養時の温度を
高くすることが好ましい。但し、浸漬時間及び共存培養
期間を長くし、共存培養時の温度を高くすることによ
り、遺伝子を導入した組織片の再分化率が低下する。従
って、形質転換植物の作出効率を向上させるためには、
浸漬時間、培養温度、培養期間を総合的に勘案し、好適
な範囲に定める必要がある。具体的には、浸漬時間をx
分、培養温度をy℃、培養期間をz時間とした場合に、
x、y、zを下式 82 < x/10+(y−19)2 +z < 145 を満たすように設定するのが好ましく、 98 ≦ x/10+(y−19)2 +z ≦ 113 を満たすように設定するのがより好ましい。浸漬時間、
培養温度、培養期間は、上記の式を満たす限り、任意の
値をとり得るが、浸漬時間は10〜30分とするのが好
ましく、培養温度は20〜30℃とするのが好ましく、
培養期間は24〜72時間とするのが好ましい。
【0016】遺伝子を導入した組織片は、カルスを誘導
した後、不定芽、シュート等を経由して最終的に個体レ
ベルにまで分化させる。このような再分化は常法に従っ
て行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
【0018】
【実施例】最初に、実施例及び試験例において使用する
培地の組成を下記に示す。
【0019】<播種培地>MS無機塩、塩酸ピリミジ
ン:50μg/L 、ニコチン酸:50μg/L 、グリシン:
200μg/L 、フィトアガー:0.6%、pH5.8 <組織片培養培地>MS無機塩、ミオイノシトール:1
00mg/L、塩酸チアミン:1.3mg/L、KH2 PO4
200mg/L、2,4−D:1mg/L、スクロース:3%、
フィトアガー:0.6%
【0020】<カルス誘導培地>B5無機塩、B5ビタ
ミン、2,4−D:1mg/L、スクロース:3%、フィト
アガー:0.6%、pH5.8 <不定芽形成培地>B5無機塩、B5ビタミン、BA:
3mg/L、ゼアチン:1mg/L、スクロース:1%、フィト
アガー:0.6%、pH5.8 <不定芽成熟培地>B5無機塩、B5ビタミン、スクロ
ース:1%、フィトアガー:0.6%、pH5.8
【0021】<発根培地>B5無機塩、B5ビタミン、
スクロース:1%、フィトアガー:0.6%、IBA:
2mg/L、pH5.8 <YBE培地>バクトペプトン:5g/L 、イーストエキ
ストラクト:1g/L 、ビーフエキストラクト:5g/L 、
MgCl2 :0.5g/L 、スクロース:5g/L 、バクト
アガー:1.5%
【0022】〔試験例1〕アグロバクテリウム属の微生
物の遺伝子導入率は、この微生物のVir遺伝子発現に大
きく依存する。Vir遺伝子の発現は低pH、単糖類の添
加、アセトシリンゴン(Acetosyringone)などのフェノ
ール化合物の添加等により更に高められることが知られ
ている。そこで、組織片培養培地のpHを変え、また、
培地に糖、アセトシリンゴン、又はフィーダーセルを加
え、遺伝子導入率に与える影響を調べた。
【0023】まず、組織片培養培地のpHを5.8又は
5.2に調整し、また、培地中にグルコース、アセトン
シリンゴン、又はフィーダーセルを添加した。グルコー
スは培地中の濃度が0.1M に、アセトシリンゴンは培
地中の濃度が100μM になるように添加した。また、
フィーダーセルはタバコ(BY−2)を使用し、培地中
のフィーダーセルの濃度1.5 ml/90cm シャーレ になるよ
うにした。
【0024】次に、コマツナ品種(おそめ)の播種後6
−7日目の実生から5−10mmの胚軸を採取し、これ
を、上記のようにpH及び成分を調整した組織片培養培
地に置床し、1日間、前培養した。前培養した後の胚軸
は、アグロバクテリウムEHA101(pIG121Hm )を含む感染
液に10分間浸漬した。この感染液は、アグロバクテリ
ウムEHA101(pIG121Hm )をYBE液体培地で一晩培養
し、培養液の濁度がOD680 =1.0となったものを組
織片培養培地で10倍に希釈することにより調製した。
感染液に浸漬した胚軸は、前培養した培地に戻し、25
℃で2日間共存培養した。
【0025】バイナリーベクターpIG121HmはGUS遺伝
子を有するので、遺伝子導入が起こった場合には、その
胚軸はGUS活性が陽性となる。そこで、GUS活性を
指標として遺伝子導入が生じたかどうかを判断した。結
果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】表1が示すように、培地のpHは5.8よ
りも5.2とした方が、遺伝子導入率が相対的に高かっ
た。また、培地へフィーダーセルを添加することによっ
ても遺伝子導入率が向上した。なお、培地への糖の添加
は遺伝子導入率に影響を及ぼさなかった。
【0028】〔試験例2〕共存培養の温度・期間、及び
感染液への胚軸の浸漬時間を変え、遺伝子導入率に与え
る影響を調べた。試験例1と同様の胚軸を、フィーダー
セル(タバコ〔BY−2〕)を添加し、pHを5.2に
調製した組織片培養培地に置床し、1日間前培養した
後、試験例1と同様にして調製した感染液に、前培養後
の胚軸を10分又は30分浸漬した。浸漬後、胚軸を組
織片培養培地に戻し、1〜3日共存培養を行った。共存
培養時の温度は25℃又は28℃とした。共存培養後の
GUS活性を試験例1と同様に調べた。結果を表2に示
す。
【0029】
【表2】
【0030】アグロバクテリウムの遺伝子導入率は共存
培養温度28℃の方が25℃よりも高い傾向にあった。
また、共存培養期間を1日間から3日間に延ばすに従っ
て遺伝子導入率は向上した。感染液への浸漬時間を30
分間にすることによって更に遺伝子導入率は向上した。
アグロバクテリウム属の微生物の培養は一般に28℃、
24時間で行われる。28℃はアグロバクテリウムの増
殖に最適温度であると思われる。遺伝子導入率はアグロ
バクテリウムの増殖率に比例して、増加する傾向にある
と考えられる。
【0031】〔試験例3〕試験例2に示すように、感染
液の浸漬時間を30分、共存培養を28℃、3日間する
ことにより、感染率は74.5%まで増加させることが
できた。しかし、共存培養中のアグロバクテリウム属の
微生物の増殖により、胚軸からの再分化率が低下する可
能性があり、最終的な形質転換効率は低下するかもしれ
ない。そこで、高い遺伝子導入率をを示した6つ感染条
件における形質転換植物の作出率を調べた。結果を表3
に示す。
【0032】
【表3】
【0033】共存培養温度を25℃とした場合は、アグ
ロバクテリウム属の微生物の増殖は胚軸からの再分化に
影響を及ばさなかった。遺伝子導入率の増加に従い、得
られるカナマイシン耐性カルスとシュート数は増加し、
感染液への浸漬時間30分、共存培養期間3日の場合に
は、5%の形質転換体作出率が得られた。
【0034】一方、共存培養温度を28℃とした場合
は、アグロバクテリウム属の微生物の増殖が胚軸からの
再分化に大きく影響を及ぼした。感染率の増加に伴い、
褐変枯死する胚軸の数が急増し、得られるカナマイシン
耐性カルスとシュート数は減少する傾向が見られた。
【0035】以上のように、共存培養温度を高くした場
合には遺伝子導入率は向上するが、再分化率が低下する
ため、最終的な作出率はあまりよくない。逆に共存培養
温度を低くした場合には再分化率は向上するが、遺伝子
導入率が低下し、やはり作出率はあまりよくない。そこ
で、共存培養温度のほか、遺伝子導入率及び再分化率に
影響を与える、感染液への浸漬時間及び共存培養期間の
3つのパラメーターの和を一定の範囲内に設定すること
により、作出率を向上させることができると考えられ
る。但し、浸漬時間は遺伝子導入率及び再分化率に与え
る影響が最も少ないので10で割り、また、培養温度は
他のパラメータの比べ変化の割合が小さいので、アグロ
バクテリウム属の微生物の増殖が低下する19℃からの
上昇温度とするため19で引き、さらに2乗することに
し、下記の式を設定した。
【0036】浸漬時間〔分〕/10+(培養温度〔℃〕
−19)2 +培養期間(時)表3が示すようにこの式値
が82より大きく、145より小さい場合に、形質転換
植物の作出効率が高くなる。
【0037】〔実施例1〕B. rape ssp. chinensisの一
品種「おそめ」(タキイ種苗(株))の種子を70%エ
タノールに2分間浸漬し、その後、Tween 20を1滴添加
した1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液で15−20分間
滅菌し、滅菌水で3回洗浄した。滅菌操作が終わった種
子は、播種培地の入ったアグリポットに15粒ずつ播種
し、25℃、45−55μE 、16時間日長下で6−7
日間育成した。
【0038】播種後6−7日目の4−5cmに育った実生
から5−10mmの胚軸を切り出し、組織片培養培地に並
べた(胚軸 50本/シャーレ)。予め、組織片培養培
地には、4日前に継代したタバコ(BY−2)の懸濁培
養液を1.5mLを分注し、その上に滅菌ろ紙を敷いてお
いた。。シャーレ(9cm)は、サージカルテープ(3M
社:Micropore)でシールし、25℃、暗黒下で24時
間前培養した。
【0039】アグロバクテリウムEHA101(pIG121Hm) グ
リセロールストックからYBE培地に移し、28℃、3
日間、インキュベートした。アグロバクテリウムEHA101
の単一コロニーをカナマイシン及びハイグロマイシンを
含むYBE液体培地(Km50mg/L, Hyg50mg/L )
に懸濁し、濁度がOD680 =1.0になるまで、28
℃, 200rpm 、18−24時間振盪培養した。pHを
5.2に調整した組織片培養培地を13.5mLを分注し
た9cmシャーレに、前記微生物懸濁液1.5mLを加え、
感染液を作成した。感染液に胚軸を浸漬させ(200本
/シャーレ)、室温, 40rpm,30分間振盪した。ピペ
ットマンで感染液を吸い取った後、滅菌キムタオルに胚
軸を移し、余分な感染液を除いた。胚軸を組織片培養培
地に戻し、シャーレをパラフィルムでシールし、25
℃, 暗所, 3日間、共存培養した。
【0040】共存培養後、アグロバクテリウム属の微生
物の除菌のためカルベニシリン500mg/Lを含むカルス
誘導培地に胚軸を移植した( 40胚軸/シャーレ)。以
後、シャーレはサージカルテープでシールした。25
℃、45−55μE 、16時間日長下で7日間培養し
た。
【0041】胚軸をカルベニシリン500mg/L, カナマ
イシン10mg/Lを含む不定芽形成培地に移植し(30胚
軸/シャーレ)、25℃、45−55μE 、16時間日
長下で2週間培養した。不定芽が形成されるまで胚軸を
カルベニシリン500mg/L,カナマイシン10mg/Lを含
む不定芽形成培地に2週間ごとに継代を繰り返した。約
6−8週間でカナマイシン耐性シュートが形成された。
【0042】得られたカナマイシン耐性シュートをカル
ベニシリン500mg/L, カナマイシン50mg/Lを含む不
定芽成熟培地に移植した。25℃、45−55μE 、1
6時間日長下で3−4週間培養した。カナマイシン耐性
遺伝子の導入されていないシュートは白く色が抜ける。
【0043】成熟したカナマイシン耐性シュートをカル
ベニシリン250mg/L, カナマイシン50mg/Lを含む発
根培地を入れたアグリポットに移植し、発根を誘導し
た。25℃、45−55μE 、16時間日長下で3−4
週間培養した。十分発根した幼植物をポット(バーミキ
ュライト:育苗培土1:1)に移植する。滅菌水を十分
にかけて、ビニール袋を掛けておいた。20℃、45−
55μE 、12時間日長下で育成させた。徐々にビニー
ル袋に穴をあけて馴化させた。
【0044】〔実施例2〕実施例1と同様の方法で、ツ
ケナ品種友好菜、紅菜苔、カブ品種本紅大丸カブ、日野
菜カブについて遺伝子導入植物を作出した。各品種の作
出率等を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】〔参考例1〕GUS遺伝子をプローブとし
たサザンブロット解析により、形質転換体における導入
GUS遺伝子及び導入遺伝子数を調べた。実施例1で得
られたコマツナ品種「おそめ」の6個体から葉を採取
し、これからMurray and thompson(1980) Nucl. Acids
Res. 8:4321-4325記載の方法によりDNAを抽出した。
次いで、DNAを、制限酵素BamHI又はHindIIIで処理
し、GUS遺伝子をプローブとしてサザンハイブリダイ
ゼーションを行った。
【0047】BamHIで処理した場合を図2に、HindIIIで
処理した場合を図3にそれぞれ示す。図中のCは非形質
転換体の「おそめ」(コントロール)を示し、1〜6は
形質転換体の「おそめ」の個体番号を示す。図2が示す
ように、供試した6個体すべてにGUS遺伝子断片(4.
0kb)が組み込まれていることを確認できた。また、図
3が示すように組み込まれた遺伝子数は1−3で個体に
よって様々であった。これらの形質転換体は正常な生育
を示し、形態的にも種子由来の対照品種と同様であった
(図4)。また、花粉稔性も正常で自殖種子を得ること
ができた。
【0048】〔参考例2〕アグロバクテリウム属の微生
物はナス科、ウリ科の植物では高い遺伝子導入率を示す
が、アブラナ科植物に対しては一般的に低いので、宿主
範囲の広いアグロバクテリウムの系統を使用が望まれ
る。そこで、5系統のアグロバクテリウム属の微生物を
用いて遺伝子導入率を調べた。試験例1と同様の胚軸
を、フィーダーセル(タバコ〔BY−2〕)を添加し、
pHを5.2に調整した組織片培養培地に置床し、1日
間前培養した。
【0049】一方、 LBA4404(pLBA4404)、 C58C1Rif(pM
90) 、 C58C1Rif(pGV2260)、 CIB542/A136(pCIB542) 、
EHA101 (pEHA101)の5系統のアグロバクテリウム属の
微生物をYBE液体培地で一晩培養し、得られた培養液
を組織片培養培地で10倍に希釈し、感染液を調製し
た。これら5種類の感染液に、前培養後の胚軸を10分
間浸漬し、再び組織片培養培地に戻し、25℃で2日間
共存培養した。共存培養後の胚軸GUS活性を試験例1
と同様に調べた。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】表2が示すように、CIB542/A136 、 EHA10
1は、それぞれ45%、48.5%の高い遺伝子導入率
を示した。これらの系統は共にアグロバクテリウム野生
株 A281に由来するTiプラスミドを有する系統であり、
広い宿主範囲を示す。なお、ナス科、ウリ科で一般的に
用いられるLBA4404では感染は認められなかった。
【0052】
【発明の効果】本発明は、アグロバクテリウム属の微生
物を用いて、効率的にブラシカ属の植物に遺伝子を導入
し、形質転換植物を作出する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】バイナリーベクターpIG121HmのT−DNA領域
を示す図
【図2】BamHIで処理したDNAのサザンブロッテイン
グの結果を示す図
【図3】HindIIIで処理したDNAのサザンブロッテイ
ングの結果を示す図
【図4】形質転換植物の生物の形態を示す写真
【手続補正書】
【提出日】平成8年4月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブラシカ属の植物の組織片を組織片培養
    培地で前培養した後、アグロバクテリウム属の微生物を
    含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を前記組織片培養
    培地で共存培養することにより、ブラシカ属の植物に遺
    伝子を導入する方法において、組織片培養培地のpHを
    5.0〜6.9とすることを特徴とするブラシカ属の植
    物の遺伝子導入方法。
  2. 【請求項2】 ブラシカ属の植物の組織片を組織片培養
    培地で前培養した後、アグロバクテリウム属の微生物を
    含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を前記組織片培養
    培地で共存培養することにより、ブラシカ属の植物に遺
    伝子を導入する方法において、組織片培養培地がフィー
    ダーセルを含むことを特徴とするブラシカ属の植物の遺
    伝子導入方法。
  3. 【請求項3】 ブラシカ属の植物の組織片を組織片培養
    培地で前培養した後、アグロバクテリウム属の微生物を
    含む感染液に浸漬し、浸漬後の組織片を前記組織片培養
    培地で共存培養し、次いで、共存培養後の組織片からカ
    ルスを誘導し、得られたカルスを再分化することによ
    り、ブラシカ属の形質転換植物を作出する方法におい
    て、下記の式 82 < x/10+(y−19)2 +z < 145 〔但し、xは感染液に浸漬する時間(分)、yは共存培
    養時の温度(℃)、zは共存培養の期間(時)〕を満た
    すようにx、y、zの値を設定することを特徴とするブ
    ラシカ属の形質転換植物の作出方法。
JP8070584A 1996-03-26 1996-03-26 アグロバクテリウム属の微生物による遺伝子導入方法及び形質転換植物の作出方法 Pending JPH09252674A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100335618C (zh) * 1998-02-26 2007-09-05 嘉吉有限公司 粒子轰击转化芸苔属植物
JP2010259378A (ja) * 2009-05-08 2010-11-18 Hitachi Plant Technologies Ltd 細胞培養方法、細胞培養システム

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JPH07501446A (ja) * 1991-11-15 1995-02-16 イー・アイ・デユポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 植物からのβ−ケトアシル−ACPシンテターゼ11遺伝子

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