JPH09237700A - 高周波加減速器、および、その使用方法 - Google Patents

高周波加減速器、および、その使用方法

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JPH09237700A
JPH09237700A JP8043572A JP4357296A JPH09237700A JP H09237700 A JPH09237700 A JP H09237700A JP 8043572 A JP8043572 A JP 8043572A JP 4357296 A JP4357296 A JP 4357296A JP H09237700 A JPH09237700 A JP H09237700A
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ion
gap
deceleration
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博 藤澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構成が簡単で、入射エネルギに対するアクセ
プタンスが広い高周波加減速器を提供する。 【解決手段】 高周波加減速器27は、内部に空洞2が
形成された略円筒上のタンク1を備えている。当該空洞
2内のイオンビームの通路には、第1および第2の電極
3・4が配される。これにより、イオンビームの入射側
および出射側のタンク1内壁と各電極3・4との間に
は、3つのギャップ2a・2b・2cが形成される。ま
た、各電極3・4は、それぞれ、第1コイル5あるいは
第2コイル6によって、タンク1の底面1bへ接続され
ている。電力入力部8は、第2コイル6近傍に配された
電力用プレート9を介して高周波を印加し、両電極3・
4は、同位相あるいは逆位相で励振する。高周波加減速
器27が2つの共振モードを持つので、同期エネルギE
sが2つ設けられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、イオン注
入装置などに供され、イオン粒子など、荷電粒子を加減
速する高周波加減速器、および、その使用方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】現在、半導体を用いた集積回路は、電子
機器をはじめ、様々な分野で広く使われている。これら
の集積回路を製造する半導体プロセスにおいて、デバイ
スの特性を決定する不純物を任意の量および深さに制御
性良く注入できることから、イオン注入装置は、重要な
装置になっている。
【0003】上記イオン注入装置は、拡散したい不純ガ
スをイオン化した後、所定の加速電圧で引き出し、磁界
を用いた質量分析法により選択的に取り出してイオンビ
ームとする。さらに、加減速器にて、加速あるいは減速
してイオン照射対象物に所望の速度で照射する。これに
より、イオン照射対象物へイオンを制御性良く打ち込む
ことができる。
【0004】この加減速器としては、例えば、電極に直
流電位を印加して形成した静電界によって、イオンを加
減速する静電加減速器が挙げられる。ところが、上記静
電加減速器では、イオンビームへ与えるエネルギを高く
するために、電極の電位を高くする必要があり、直流加
速用電位の使用が困難になるという問題がある。例え
ば、半導体材料に深くイオン注入する際には、200万
電子ボルトにもおよぶエネルギを必要とする。したがっ
て、静電加減速器のみを用いて、加速する場合、100
KVを越える直流電圧を印加する必要がある。この結
果、加減速器の大きさ、ビーム電流量、取り扱い、操作
性能などの点で問題が生じる虞れがある。
【0005】このような場合には、高周波を電極へ印加
する高周波加減速器が使われることが多い。図9に示す
ように、上記高周波加減速器50は、例えば、金属など
の導電体を略円筒状に形成したタンク51と、タンク5
1内部の空洞52において、イオンビームの進路上に配
された電極53とを備えている。これにより、イオンビ
ームの入射側の内壁と電極53との間には、第1ギャッ
プ52aが形成され、電極53と出射側の内壁との間に
は、第2ギャップ52bが形成される。また、上記電極
53は、コイル55を介して、タンク51の底面51b
に接続されている。したがって、上記コイル55のイン
ダクタンスと、第1ギャップ52a間および第2ギャッ
プ52b間の静電容量によって共振回路50aが形成さ
れる。該共振回路50aには、タンク51の外部に設け
られた電力入力部58から、空洞52内の電力用プレー
ト59を介して、電力が供給される。当該電力入力部5
8が供給するRF波の周波数は、上記共振回路50aの
共振周波数になるように設定される。また、コイル55
を伸長したときの長さLは、RF波の波長をλとする
と、下式(1)に示すように、 L≒λ/4 ・・・(1) に設定される。
【0006】正の電荷を持つイオン粒子が第1ギャップ
52aにあるとき、該イオン粒子は、電極53の電位が
タンク51の入射側の内壁に比べて低い場合に進行方向
へ加速される。また、第2ギャップ52bにあるとき
は、電極53の電位がタンク51の出射側の内壁に比べ
て高いときに加速される。したがって、イオン粒子が第
1ギャップ52aにあるときに、電極53の電位を低く
し、該イオン粒子が進行して、第2ギャップ52bへ移
った場合に、電極53の電位が高くなるように、電極5
3を励振させることによって、イオン粒子を加速でき
る。
【0007】したがって、イオンビームの進行方向に沿
って、第1ギャップ52aの中心と第2ギャップ52b
の中心との距離をdgとすると、以下に示すように、 dg=(1/2)・β・λ ・・・(2) となる。なお、上式(2)において、βは、イオン粒子
の速度をv、光の速度をcとしたとき、β=v/cで表
される。また、λは、RF波の波長を示している。
【0008】また、あるイオンの同期エネルギEは、以
下のように、 E=(1/2)・m・β2 2 ・・・(3) で表される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構
成の高周波加減速器50では、共振モードが1つである
ため、共振周波数、すなわち、波長λが限定される。し
たがって、イオンの同期エネルギEが単一になり、入射
エネルギに対する高周波加減速器50のアクセプタンス
が制限されるという問題を生じている。
【0010】そこで、従来では、互いに異なる入射エネ
ルギのイオンビームを加速する場合には、高周波加減速
器50自体を交換したり、ギャップ間距離dgを機械的
に変えるなどの操作を行っている。高周波加減速器50
自体を交換する場合には、イオンビームの入射エネルギ
に合わせて、複数の高周波加減速器50…を用意する必
要がある。一方、ギャップ間距離dgを機械的に調整す
る場合、高周波加減速器50の構造が複雑になり、高周
波加減速器50が大型になる虞れがある。さらに、調整
時の操作が煩雑になる。
【0011】本発明は、上記の問題点を鑑みてなされた
ものであり、その目的は、構成が簡単で、入射エネルギ
に対するアクセプタンスが広い高周波加減速器を提供す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る高
周波加減速器は、上記課題を解決するために、内部に空
洞が形成された導電体の容器を含む共振回路と、該共振
回路へ電力を供給する駆動手段とを有する高周波加減速
器において、以下の手段を講じたことを特徴としてい
る。
【0013】すなわち、上記共振回路は、上記空洞内に
配され、上記駆動手段からの電力により励振する複数の
駆動用電極を備えており、上記空洞内の荷電粒子の通路
上には、上記駆動用電極によって、3つ以上のギャップ
が形成されている。
【0014】上記構成では、上記駆動用電極は、駆動手
段からの電力によって、隣接する駆動用電極と同位相あ
るいは逆位相で励振できる。これにより、上記共振回路
には、複数の共振モードが設けられる。
【0015】ある共振モードにて、駆動手段が共振回路
を励起しているとき、互いに逆位相で励振している駆動
用電極間のギャップには、イオンなどの荷電粒子を加速
あるいは減速するための電場が形成され、該ギャップに
ある荷電粒子が加減速される。また、各駆動用電極は、
励振しているので、上記ギャップ間に形成される電場
は、周期的に変化しており、その向きは、半周期毎に反
転する。なお、互いに同位相にて励振している駆動用電
極間のギャップには、加減速用の電場は形成されない。
したがって、該ギャップ間の荷電粒子は、当初の速度の
まま通過する。
【0016】加減速用の電場が形成されているギャップ
へ、荷電粒子が進入した場合、該荷電粒子は、加減速さ
れながら当該ギャップを通過する。荷電粒子の入射エネ
ルギが高周波加減速器の同期エネルギと同一であれば、
荷電粒子がギャップ間を通過するタイミングと駆動用電
極の駆動周期とが同期している。したがって、各ギャッ
プ間を通過する際、該ギャップに形成されている電場の
向きは、常に一定となる。これにより、高周波加減速器
は、同期エネルギと同一の入射エネルギを持つ荷電粒子
を高効率で加減速できる。
【0017】なお、荷電粒子の入射エネルギと、高周波
加減速器の同期エネルギとが一致していない場合は、各
ギャップを通過する際に形成されている電場の向きが統
一されないので、高周波加減速器は、該荷電粒子を効率
良く加減速できない。
【0018】また、各駆動用電極が励振しており、各ギ
ャップに形成されている電場の強さや向きが変化してい
る。したがって、荷電粒子が高周波加減速器へ入射する
タイミングに応じて、荷電粒子へ加わる力が変化する。
例えば、ギャップに形成される電場が時間と共に強くな
っている期間では、該ギャップへ先に入射した荷電粒子
よりも、後で入射した荷電粒子の方がより強く加減速さ
れる。この結果、荷電粒子が高周波加減速器へ入射する
タイミングに応じて、荷電粒子の出射速度が変化する。
したがって、高周波加減速器へ入射した荷電粒子流は、
所定の空間(ドリフト空間)を通過した時点で集群(バ
ンチング)される。
【0019】上記高周波加減速器は、荷電粒子の進路上
に、複数の駆動用電極を配して、3つ以上のギャップを
形成しており、その構成を機械的に変位させることな
く、複数の共振モードにて運転できる。したがって、高
周波加減速器の同期エネルギは、共振モードに対応して
複数設けられる。この結果、複数の互いに異なる入射エ
ネルギを持つ荷電粒子であっても、加減速あるいはバン
チングでき、入射エネルギに対する高周波加減速器のア
クセプタンスを従来に比べて広げることができる。
【0020】また、従来の高周波加減速器に比べて、容
器の数に対するギャップの数の割合を高くすることがで
きる。したがって、同じ数のギャップを設ける場合、容
器や当該容器を駆動する駆動手段、あるいは、該容器を
支持する支持部材などの数を削減でき、構成を簡略にで
きる。
【0021】加えて、ギャップの数が同じであれば、駆
動用電極間に設けられる容器の壁の数を削減できる。し
たがって、高周波加減速器へ入力する電力に対する加減
速電圧の比を従来に比べて高くでき、高周波加減速器の
効率をさらに向上できる。
【0022】また、請求項2の発明に係る高周波加減速
器は、請求項1記載の発明の構成において、上記駆動手
段は、上記共振回路の各共振モードの基本周波数にて、
当該共振回路を駆動することを特徴としている。
【0023】それゆえ、共振回路は、イオンの加減速に
有利な低い共振周波数にて、共振することができる。こ
の結果、高周波加減速器において、イオンの加減速に有
利な同期エネルギを従来より多く設けることができる。
【0024】一方、請求項3の発明に係る高周波加減速
装置の使用方法は、請求項1記載の高周波加減速器を複
数直列に配し、初段は、荷電粒子をバンチングさせるバ
ンチング部として動作させ、次段以降は、荷電粒子を加
減速する加減速部として動作させることを特徴としてい
る。
【0025】上記構成では、同じ構成の高周波加減速器
を用いて、荷電粒子をバンチングした後、加減速でき
る。それゆえ、バンチング部と加減速部とが同じ構成で
あり、同じ部材を使用できる。この結果、別の構成のバ
ンチング手段を設ける場合に比べて、バンチング部も含
めた装置の製造および管理が容易になる。
【0026】また、高周波加減速器の同期エネルギを調
整する場合、すなわち、加減速部の共振モードを変更す
る場合でも、加減速部と同様の操作をすることにより、
バンチング部の共振周波数を加減速部の共振周波数へ一
致させることができる。この結果、同期エネルギ調整時
における高周波加減速装置の操作性が向上する。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態について図1
ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。本
実施形態に係る高周波加減速器は、例えば、半導体製造
装置や、表面改質用照射装置など、高エネルギイオン注
入装置に供され、イオンをバンチングして加減速するた
めに用いられている。
【0028】図2に示すように、上記イオン注入装置2
1は、イオン源物質をイオン化するイオン源22と、該
イオン源22から引き出された所定のエネルギを持つイ
オンを質量分析する分析電磁石23と、該分析電磁石2
3にて形成されたイオンビームを加速する静電加速器2
4と、加速後のイオンビームを集束する集束系25と、
集束したイオンビームを集群(バンチング)させるバン
チャー(バンチング部)26とを備えている。さらに、
互いに直列に接続され、バンチングされたイオンビーム
をさらに加速する高周波加減速器(加減速部)27と、
入射されるイオンビームにて、シリコンウェハなど、収
納したイオン照射対象物を加工するエンドステーション
28とが設けられている。また、イオン注入装置21の
運転中、イオンビームの通路は、図示しない真空ポンプ
などによって高真空に保たれる。なお、本実施形態で
は、バンチャー26および高周波加減速器27は、同じ
構成のものを用いており、双方が特許請求の範囲に記載
の高周波加減速器に対応している。
【0029】上記イオン源22は、例えば、高周波放電
型や電子衝突型などのイオン源であり、例えば、BF3
やPH3 などのイオン種ガス、あるいは、PやAsなど
の固体のイオン源物質をオーブンにて気化して、イオン
源22内に導入する。その後、内部のイオン種ガスをプ
ラズマ化して、イオン引出電極系により所定のエネルギ
で引き出し、B+ やP+ などのイオンとして分析電磁石
23へ与えることができる。
【0030】また、分析電磁石23は、例えば、60°
型や90°型の扇形磁石が用いられており、質量分析す
ることによって、所望のイオンからなるイオンビームを
形成できる。
【0031】さらに、分析電磁石23の後段に配された
静電加速器24は、例えば、コックロフト型の静電加速
器であり、イオンビームの上流になる分析電磁石23側
と、下流になる集束系25側との電位差により発生する
静電界により、入射されるイオンビームを加速する。し
たがって、イオン注入装置21の運転中、分析電磁石2
3およびイオン源22は、集束系25など、他の回路に
比べて、極めて高電位に保たれる。また、使用者や他の
回路を保護するために、分析電磁石23およびイオン源
22は、他の回路と電気的に絶縁された高電圧キャビネ
ット29内に収納されている。
【0032】本実施形態に係るイオン注入装置21は、
静電加速器24の後段に高周波加減速器27を設けてい
る。したがって、エンドステーション28にて必要とす
るイオンビームのエネルギに比べて、静電加速器24が
出射するイオンビームのエネルギは、低く設定されてい
る。この結果、高電圧キャビネット29の電位、すなわ
ち、静電加速器24の加速電圧は、静電加速器24単体
で加速する場合に比べて、低く設定されている。
【0033】また、上記静電加速器24の後段に、集束
系25を介して配されたバンチャー26は、イオン粒子
の入射時間に応じ、各イオン粒子へ加える加速度を調整
して、イオン粒子をバンチングさせる。具体的には、所
定の周期毎に、ある時点を基準にして、早く入射したイ
オン粒子より、遅く入射したイオン粒子を大きく加速す
る。この結果、バンチャー26の出射側から所定の空間
(ドリフト空間)をおいて、イオン粒子をバンチングで
きる。なお、本実施形態に係るバンチャー26は、後述
する高周波加減速器27と同じ構成のものが用いられて
いる。したがって、バンチャー26の構成の説明は省略
する。
【0034】上記バンチャー26の後段の高周波加減速
器27は、バンチャー26から出射したイオン粒子が、
高周波加減速器27の入射孔1c(後述)にて、バンチ
ングする位置に配されている。また、バンチャー26の
駆動周波数と高周波加減速器27の駆動周波数とは、同
一に設定される。さらに、両者の位相差は、バンチング
したイオン粒子群が、高周波加減速器27の入射孔1c
に進入したときに、加速用の電場が形成されるように設
定される。
【0035】この高周波加減速器27は、図3に示すよ
うに、略円筒状のタンク(容器)1を備えている。な
お、説明の便宜上、タンク1の軸方向と平行な壁面を側
面1a、この側面1aに直交する壁面の一方を底面1b
と称する。また、タンク1の軸とは直交するように、イ
オンビームの進路が設定されており、タンク1の側面1
aには、イオンビームの進路に沿って、内部の空洞2に
連通し、断面が円形の入射孔1cおよび出射孔1dが設
けられている。タンク1において、両孔1c・1d近傍
の内壁は、他の部分の内壁より突設しており、イオンビ
ームの進路を軸とする円筒状に形成されている。各凸部
の先端を、それぞれ入射側内壁1eおよび出射側内壁1
fと称する。
【0036】また、タンク1内の空洞2のイオンビーム
の通路上には、特許請求の範囲に記載の駆動用電極に対
応し、高周波で励起する第1電極3および第2電極4が
配されている。したがって、図1に示すように、上記入
射側内壁1eと第1電極3との間の第1ギャップ2a、
両電極3・4間の第2ギャップ2b、および第2電極4
と入射側内壁1fとの間の第3ギャップ2cがそれぞれ
形成される。この結果、各ギャップ2a・2b・2c間
の静電容量や、後述する第1コイル5および第2コイル
6のインダクタンスによって、共振回路27aが形成さ
れている。これにより、2つの電極3・4が高周波で励
振するので、共振回路27aは、構成要素を機械的に変
位させることなく、両電極3・4が同位相で励振する”
0”モードと、逆位相で励振する”π”モードとの2つ
の互いに異なる共振モードで共振できる。
【0037】以下では、イオンビームの進路に沿って計
ったとき、第1ギャップ2aの中心と第2ギャップ2b
の中心との距離をdg1、第2ギャップ2bの中心と第
3ギャップ2cの中心との距離をdg2、また、第1ギ
ャップ2aの中心と第3ギャップ2cの中心との距離を
dg0で表す。各ギャップ間距離dg0・dg1・dg
2は、入射粒子のエネルギ、放電限界、共振周波数など
の組み合わせで決定され、”π”モードにおける波長を
λπ、同期βsをβsπとし、”0”モードにおける波
長をλ0、同期βsをβs0としたとき、各ギャップ間
距離dg0・dg1・dg2は、下式(4)、(5)に
示すように、 dg0=(1/2)・βs0・λ0 ・・・(4) dg1=dg2=(1/2)・βsπ・λπ ・・・(5) に設定される。なお、両電極3・4は、各ギャップ間距
離dg0・dg1・dg2が、所望の値となるように配
置される。
【0038】また、ドリフトチューブと称される各電極
3・4は、略円板状に形成されており、その中心には、
イオンビームの通路となる断面が円形の貫通孔3a・4
aがそれぞれ形成されている。また、上記両電極3・4
は、タンク1の底面1bから突設された第1コイル5あ
るいは第2コイル6に、それぞれ接続されている。各コ
イル5・6の導体内には、水などの冷却液を流通するた
めの孔が形成されており、高周波加減速器27の運転時
には、大電流が流れて特に高温になりがちな各コイル5
・6の底面1b近傍も冷却できる。
【0039】さらに、上記各コイル5・6は、タンク1
の側面1aから突設する支持体7・7によって、それぞ
れ電極側を支持されている。各支持体7は、例えば、B
Nやセラミックなど、電気抵抗が高く、誘電損が低い材
質にて、薄板状に形成されている。また、支持体7の先
端部には、例えば、図4に示すように、第1あるいは第
2コイル5・6の外径と略同じ内径の孔7aが形成され
ており、図1に示す各コイル5・6は、この孔7aに貫
装される。これにより、両コイル5・6の振動を抑制で
き、各電極3・4を所定の位置に保持できる。この結
果、各ギャップ間距離dg0・dg1・dg2を、所望
の値に保つことができる。
【0040】ここで、本実施形態に係る高周波加減速器
27の寸法について簡単に説明する。すなわち、タンク
1は、内径が14cm、軸方向の内寸が45cmに設定
されている。また、両電極3・4の外径は、2.5cm
に設定されている。また、各電極3・4が所定の位置に
配されている場合、タンク1の入射側内壁1eおよび第
1電極3間の距離と、各電極3・4間の距離と、第2電
極4および出射側内壁1f間の距離とは、それぞれ1c
mに設定されている。したがって、ギャップ間距離dg
0は、2cm、両ギャップ間距離dg1・dg2は、1
cmにそれぞれ保たれている。また、両コイル5・6
は、外径1mm、長さ3mの銅線を、外径が3cmにな
るように巻いて用いている。
【0041】また、上記寸法のコールドモデルの場
合、”π”モードの共振周波数は、25MHz、”0”
モードの共振周波数は、31MHzとなる。したがっ
て、各モードの波長λπ・λ0は、以下に示すように、
それぞれ、 λπ=1.2×103 〔cm〕 ・・・(6) λ0=9.7×102 〔cm〕 ・・・(7) となる。
【0042】また、上述の式(4)および(5)か
ら、”π”モードにおけるギャップ間距離dg1に対す
る、”0”モードにおけるギャップ間距離dg0の比率
dg0/dg1は、2となる。この比率と、上記の式
(2)とから、各モード間の同期βsの比は、下式
(8)に示すように、 βs0/βsπ=2・λπ/λ0 ・・・(8) となり、さらに、上記(6)および(7)の値を代入し
て、 βs0/βsπ=2.47 ・・・(9) となる。
【0043】同様にして、上述の式(3)から、各モー
ドにおける同期Esの比は、 Es0/Esπ=(βs0/βsπ)2 ・・・(10) Es0/Esπ=6.1 ・・・(11) となる。したがって、例えば、Esπ=50KeVの場
合、Es0≒300KeVとなる。
【0044】一方、タンク1の外部には、上記共振回路
27aを励振させるための電力を供給する電力入力部
(駆動手段)8が設けられている。該電力入力部8は、
タンク1の側面1aに設けられた電力用フィールドスル
ー1gを介して、タンク1内部の電力用プレート9へ高
周波電力を供給できる。本実施形態に係る高周波加減速
器27は、イオン加速に適した周波数帯域で2つの共振
周波数を持っている。したがって、電力入力部8は、例
えば、31MHzと25MHzとなど、上記各共振周波
数のRF波を選択して出力できる。これにより、それぞ
れの共振周波数にて、共振回路27aを励起できる。
【0045】上記電力用プレート9は、第2コイル6の
電極側端部に相対し、かつ、数センチ間隔を空けて配置
されている。この電力用プレート9は、図示しない制御
モータなどにより移動して、第2コイル6との距離を調
整できる。電力用プレート9の移動に伴って、第2コイ
ル6と電力用プレート9との間の結合キャパシタンスが
変化する。これにより、共振回路27aの入力インピー
ダンスは、例えば、50Ωなど、所望の値に保持され、
共振回路27aと電力入力部8とのインピーダンス整合
を維持できる。
【0046】また、高周波加減速器27は、共振回路2
7aの共振周波数を微調整するために、タンク1の外部
に設けられた周波数チューナ10と、タンク1内の空洞
2に設けられたチューナプレート11とを備えている。
このチューナプレート11は、第2コイル6の底面1b
側端部に相対して設けられている。周波数チューナ10
は、チューナ用フィールドスルー1hを介して、チュー
ナプレート11を第2コイル6と側面1aとの間で変位
させる。これにより、大地電位に対する浮遊キャパシタ
ンスを調整して、共振回路27aの共振周波数を微調整
できる。この結果、共振周波数を精密に調整したり、例
えば、第1コイル5や第2コイル6が加熱して寸法が変
化した場合などに、当該共振周波数を維持したりでき
る。
【0047】さらに、図2に示すエンドステーション2
8内には、例えば、シリコンウェハなどのイオン照射対
象物が、高周波加減速器27が出射するイオンビームの
進路上に配されている。これにより、イオン照射対象物
へイオンを照射して、不純物を注入したり、表面を改質
したりできる。
【0048】上記構成において、”π”モード時におけ
るバンチャー26各部の動作について、図5および図6
に基づき説明すると以下の通りである。
【0049】バンチャー26を”π”モードにて運転し
ているとき、図1に示す電力入力部8は、例えば、25
MHzなど、”π”モードの共振周波数にて、バンチャ
ー26の共振回路26aを駆動している。この状態で
は、電力用プレート9は、図示しない制御モータによっ
て、第2コイル6との距離が調整されている。これによ
り、電力入力部8と共振回路26aとのインピーダンス
整合は、維持されている。また、周波数チューナ10
は、チューナプレート11の位置を制御して、共振回路
26aの共振周波数を所定の値に維持している。
【0050】この結果、図5に示すように、第1電極3
および第2電極4は、互いに異なる位相にて励振してい
る。したがって、例えば、第1電極3の電位が−、第2
電極4の電位が+にあるときのバンチャー26内部の電
界は、図中、実線にて示すように、第1ギャップ2aお
よび第3ギャップ2cでは、イオンビームの進行方向と
同方向(順方向)になり、第2ギャップ2bでは、イオ
ンビームの進行方向と逆方向(以下では、単に逆方向と
称する)になる。一方、第1電極3の電位が+、第2電
極4の電位が−にあるときの電界は、図中、破線にて示
すように、第1ギャップ2aおよび第3ギャップ2cで
逆方向になり、第2ギャップ2bで順方向になる。
【0051】また、第1ギャップ2aのイオンビームの
進路上の点Aにおいて、イオンビームの進行方向への電
界強度Eの時間変化は、図6に示すように、上記共振周
波数の正弦波となっている。したがって、時間の変化に
伴って上昇している時点をt0とすると、時間t0にお
ける電界強度E0は、時間t0の直前t1における電界
強度E1よりも強くなり、時間t0の直後t2における
電界強度E2よりも、弱くなる。この結果、時間t0に
点Aにあるイオン粒子を基準にすると、時間t2に点A
にあるイオン粒子、すなわち、遅くきたイオン粒子は、
速くきたイオン粒子に比べてより大きく加速される。し
たがって、バンチャー26から出射したイオン粒子は、
ある一定の空間を隔てた場所、すなわち、高周波加減速
器27の入口にてバンチングする。バンチャー26は、
所定の共振周波数にて駆動しているので、高周波加減速
器27へ入射するイオンビームには、この共振周波数に
同期して、疎の部分と密の部分とが交互に現れる。
【0052】上記高周波加減速器27では、バンチャー
26と同様に、例えば、25MHzなど、”π”モード
における共振周波数にて、電力入力部8が共振回路27
aを駆動している。また、前段のバンチャー26と高周
波加減速器27との間の位相差は、バンチングされたイ
オン粒子が第1ギャップ2aを通過する間、印加される
電界が順方向になるように設定されている。
【0053】したがって、バンチングしたイオン粒子群
が入射孔1cを介して、第1ギャップ2aへ入射し、第
1電極3へ到達するまでの間、第1ギャップ2aの電界
は、順方向になる(図5に示す実線の状態)。この結
果、イオン粒子群は、さらに加速されて、第1電極3へ
到達する。また、イオン粒子が第1ギャップ1aを飛行
している時間と、第1電極3の極性が反転する時間とが
略一致するように、すなわち、イオン粒子の入射エネル
ギと同期エネルギEsπとが一致するように、共振回路
27aの共振周波数が決められている。この結果、上記
のイオン粒子群が、図1に示す貫通孔3aを通過して、
第2ギャップ2bへ入り、第2電極4へ到達するまでの
間は、第1ギャップ1aの電界が逆方向になり、第2ギ
ャップ2bの電界が順方向となる(図5に示す破線の状
態)。したがって、該イオン粒子群は、さらに加速され
て、第2電極4へ到達する。同様にして、該イオン粒子
群は、第3ギャップ2cにある場合も加速される。この
結果、高周波加減速器27は、各ギャップ2a・2b・
2cの3ギャップにて入射したイオン粒子群を加速し、
出射孔1dから出射できる。
【0054】次に、”0”モードにおける高周波加減速
器27の動作について、図7に基づいて説明する。な
お、”0”モードにおけるバンチャー26の動作は、電
界の分布が高周波加減速器27と同様であり、各ギャッ
プ間における荷電粒子の動作は、”π”モード時の動作
と略同じであるため、説明を省略する。
【0055】上述の”π”モードと同様に、図1に示す
電力入力部8は、31MHzなど、”0”モードにおけ
る共振周波数にて共振回路27aを駆動している。この
モードでは、上記”π”モードとは異なり、両電極3・
4は、同位相で励振している。したがって、両電極3・
4が共に−の電位にあるときは、図7中、実線で示すよ
うに、第1ギャップ2aには、順方向の電界が形成さ
れ、第3ギャップ2cには、逆方向の電界が形成されて
いる。また、両電極3・4が共に+の電位にあるとき
は、図中、破線で示すように、第1ギャップ2aおよび
第3ギャップ2cには、それぞれ、逆方向、順方向の電
界が形成されている。いずれの場合でも、両電極3・4
の電位が同じであるため、第2ギャップ2bには、加速
電場が形成されない。
【0056】第1ギャップ2aへ順方向の電界が形成さ
れているときに、高周波加減速器27の同期エネルギE
s0と同じ入射エネルギを持つイオン粒子群が入射する
と、該イオン粒子群は、加速されながら、第1電極3へ
到達し、そのままの速度を保ったまま、第2電極4へ到
達する。さらに、該イオン粒子群が、第3ギャップ2c
へ入った時点では、両電極3・4の電位が反転して、第
3ギャップ2cに順方向の電界が形成されている。した
がって、このイオン粒子群は、さらに加速されて、出射
孔1dより出射される。この結果、高周波加減速器27
は、第1ギャップ2aおよび第3ギャップ2cの2つの
ギャップにおいて、入射したイオン粒子を加速し、出射
孔1dより出射できる。
【0057】なお、上記では、各モードにおいて加速す
る場合についてのみ説明したが、高周波加減速器27へ
イオン粒子群が入射する際、第1ギャップ2aに逆方向
の電界が形成されるように、バンチャー26と高周波加
減速器27との位相差を調整することによって、イオン
粒子群を減速できる。また、加減速するイオン粒子の電
荷が負である場合にも、同様にして、イオン粒子群を加
減速できる。
【0058】また、いずれのモードで運転している場合
であっても、高周波加減速器27の同期エネルギEsと
イオン粒子群の入射エネルギとが異なる場合、各ギャッ
プ2a・2b・2c間をイオン粒子群が飛行する時間
と、両電極3・4の反転する時間とが異なる。したがっ
て、イオン粒子群がギャップを飛行中に、当該ギャップ
に形成されている電界が反転したり、あるいは、イオン
粒子群が順方向の電界が形成されたギャップを通り過ぎ
て、逆方向の電界が形成された他のギャップへ突入した
りして、イオン粒子群を正常に加速できない。
【0059】以上のように、本実施形態に係る高周波加
減速器27は、導電率の高いタンク1内の空洞2に、イ
オンビームの進路上に沿って、第1コイル5を介してタ
ンク1へ接続される第1電極3と、第2コイル6を介し
てタンク1へ接続される第2電極4とを配し、タンク1
の内壁と両電極3・4との間に、3つのギャップ2a、
2b、2cを形成すると共に、両電極3・4を高周波に
て励振させる電力入力部8を備えた構成である。
【0060】それゆえ、上記タンク1、両電極3・4、
および両コイル5・6などから構成された共振回路27
aは、両電極3・4が逆位相で励振する”π”モード
と、同位相で励振する”0”モードとの2つの共振モー
ドにて共振できる。
【0061】例えば、電力入力部8が共振回路27a
を”π”モードにて運転している場合、各ギャップ2a
・2b・2cには、隣接するギャップとは異なる向きの
電場が形成される。したがって、高周波加減速器27
は、その同期エネルギEsπと同じ入射エネルギを持つ
イオンビームを3つのギャップにて効率良く加速あるい
は減速できる。また、共振回路27aが”0”モードに
て運転されている場合、両端のギャップ2a・2cに
は、互いに異なる向きの電場が形成されると共に、中間
の第2ギャップ2bには、加減速用の電場が形成されな
い。したがって、高周波加減速器27は、その同期エネ
ルギEs0と同じ入射エネルギを持つイオンビームを両
端の2つのギャップにて効率よく加減速できる。
【0062】一方、いずれのモードであっても、形成さ
れている電場の強さや向きは周期的に変化する。したが
って、高周波加減速器27と同じ構造のバンチャー26
は、イオン粒子の入射タイミングによって、該イオン粒
子へ加える力を変化させて出射時の速度を変化させるこ
とができる。この結果、バンチャー26は、入射したイ
オンビームを、ドリフト空間をおいて、バンチャー26
の駆動周波数でバンチングさせることができる。
【0063】また、いずれのモードであっても、高周波
加減速器27は、運転中の同期エネルギEsとは異なる
入射エネルギを持つイオンビームが入射された場合、該
イオンビームを効率良く加減速あるいはバンチングでき
ない。したがって、イオンビームの入射エネルギに応じ
て、高周波加減速器27の同期エネルギEs、すなわ
ち、共振回路27aの共振周波数を設定する必要があ
る。
【0064】従来の高周波加減速器であれば、共振回路
の共振モードが1つしか設けられていないため、設定可
能な共振周波数が限定されている。したがって、イオン
ビームの加減速に適した範囲で、同期エネルギEsを柔
軟に変更するために、互いに異なる同期エネルギEsを
持つ高周波加減速器を複数用意して、イオンビームに合
わせて交換したり、高周波加減速器を構成する部材の位
置を機械的に変位させて、共振回路の共振周波数を調整
したりしている。
【0065】ところが、本実施形態に係る高周波加減速
器27では、共振回路27aの共振モードを変更するこ
とによって、当該高周波加減速器27の構成部材を機械
的に変更することなく、共振周波数を主調整できる。高
周波加減速器27に、同期エネルギEsを2点設けるこ
とができるので、従来に比べて同期エネルギEsを柔軟
に変更できる。
【0066】この結果、互いに異なる速度のイオン粒子
群であっても、加減速あるいはバンチング効果を得るこ
とができる。また、図2に示す静電加速器24から出射
されるビームエネルギは、電荷数に比例しており、例え
ば、6価のイオン粒子は、1価のイオン粒子の6倍のエ
ネルギを持っている。このような場合でも、同一構造の
高周波加減速器27を用いて、加減速あるいはバンチン
グ作用を得ることができる。したがって、従来に比べ
て、入射エネルギに対するアクセプタンスの広い高周波
加減速器27を実現できる。
【0067】また、本実施形態に係る高周波加減速器2
7では、共振周波数を主調整する際に機械的な調整を必
要としない。したがって、高周波加減速器27の構成を
簡単にすると共に、主調整時の手間が大幅に削減でき
る。
【0068】さらに、上記高周波加減速器27は、従来
の2ギャップ方式の高周波加減速器に比べて、タンク1
の数に対するギャップの数の割合を増やすことができ
る。したがって、同じ数のギャップを設ける場合、タン
ク1や電力入力部8、あるいは、該タンク1を支持する
図示しない支持部材などの数を削減でき、イオン注入装
置21の構成を簡略にできる。
【0069】加えて、上記2ギャップ方式に比べて、ギ
ャップの個数に対する壁の数を減らすことができる。例
えば、本実施形態に係る高周波加減速器27のように3
つのギャップを設けようとすると、従来では、2つの高
周波加減速器が必要となり、入射側から数えて、2つめ
のギャップと3つめのギャップとの間にタンクの壁が介
在することになる。ところが、本実施形態では、この壁
が不要となり、各ギャップ間距離を短くできる。この結
果、加速電圧に対する入力電力の比を大きくすることが
でき、高周波加減速器27の効率を向上できる。
【0070】また、上記電力入力部8は、共振回路27
aに設けられた各共振モードの基本周波数にて、当該共
振回路27aを駆動することが望まれる。これにより、
共振回路27aは、イオンの加減速に有利な低い共振周
波数にて共振できる。したがって、高周波加減速器27
には、イオンの加減速に有利な同期エネルギEsを従来
より多く設けることができる。この結果、イオンビーム
の加減速やバンチングに特に適した高周波加減速器27
を提供できる。
【0071】なお、本実施形態では、バンチャー26と
して、高周波加減速器27と同じ構成のものを使用して
いるが、これに限るものではない。例えば、後述するR
FQなど、他の構成のバンチング装置を用いてもよい。
【0072】ただし、本実施形態のように、バンチャー
26と高周波加減速器27との構成を同一にすることに
よって、別の構成のバンチング装置を設ける場合に比べ
て、製造および管理が容易になる。例えば、両者が同じ
構成なので、同じ部材を使用することができ、不具合な
どに備えて用意する部材を流用できる。
【0073】さらに、入射するイオンビームのエネルギ
に応じて、高周波加減速器27の同期エネルギEsを調
整する場合、すなわち、共振周波数を変更する場合で
も、バンチャー26は、高周波加減速器27と同様に、
共振モードを変更して共振周波数を調整できる。この結
果、両者の周波数を容易に同一に設定でき、同期エネル
ギEs調整時の操作性が向上する。
【0074】また、本実施形態では、バンチャー26お
よび高周波加減速器27を静電加速器24の後段に配
し、エネルギブースターとして用いている。これによ
り、静電加速器24が出射するイオンビームのエネルギ
より高いエネルギをエンドステーション28へ供給でき
る。ところで、静電加速器24単体で、イオンビームを
加速する場合、高いエネルギを得るためには、高い加速
電圧を必要とするので、高電圧キャビネット29内の電
位を高く保つ必要がある。これに伴い、高電圧キャビネ
ット29や、これに電力を供給する高電圧電源(図示せ
ず)などが大型化する。ところが、静電加速器24のエ
ネルギブースターとして、高周波加減速器27などを用
いることによって、安定で収差の少ない静電加速器24
を用いながら、高エネルギでイオンを注入でき、かつ、
コンパクトなイオン注入装置21を実現できる。また、
高エネルギイオン注入装置において、上記静電加速器2
4の加速電圧を低く抑えることができるので、装置コス
トを削減でき、ビーム電流量、取り扱い、操作性能など
を向上させることができる。
【0075】なお、本実施形態では、両ギャップ間距離
dg1・dg2を同じに設定しているが、これに限るも
のではない。イオン粒子は、各ギャップ2a・2b・2
cにて加減速されるので、厳密には、両ギャップ間距離
dg1・dg2を同じに設定すると、前段のギャップの
通過に要する時間と後段のギャップの通過に要する時間
とが異なっている。本実施形態では、イオンビームの加
減速に支障を生じないため、設計や製造時の手間の点か
ら、両ギャップ間距離dg1・dg2を同じに設定して
いる。ところが、前段のギャップの所要時間と後段のギ
ャップの所要時間とが大きく異なり、イオンビームの加
減速に支障が生じる場合には、各ギャップ間距離dg1
・dg2をそれぞれ別に設定して、両ギャップの所要時
間の相違を抑えることによって、イオンビームを何ら支
障無く加減速できる。
【0076】また、本実施形態に係る高周波加減速器2
7は、2つの電極3・4を備え、空洞2内に、3つのギ
ャップ2a・2b・2cを形成しているが、電極の数
は、これに限るものではない。複数の電極が設けられ、
3つ以上のギャップが形成されていれば、本実施形態と
同様の効果が得られる。
【0077】例えば、電極の数を3つに設定し、4つの
ギャップを設けてもよい。この場合、高周波加減速器
は、3つの電極全てが同位相で励振するf2モードと、
両端の電極が同位相、かつ、中間の電極が逆位相で励振
するf0モード、イオンビームの進路方向から見て、最
初の2つの電極が同位相、最後の電極が逆位相にて励振
するf1モードの3つのモードを備え、同期エネルギE
sを3点設けることができる。この結果、2つの電極を
設ける場合に比べて、高周波加減速器の入射エネルギに
対するアクセプタンスは、さらに向上し、加速電圧対入
力電力の比をさらに大きくできる。
【0078】次に、上記高周波加減速器27を他の構成
のイオン注入装置に適用した場合について、図8に基づ
いて説明する。なお、図2に示す部材と同一の機能を有
する部材には、同一の符号を付記して、その説明を省略
する。
【0079】本実施形態に係るイオン注入装置21a
は、図2に示すイオン注入装置21の静電加速器24を
排し、バンチャー26に代えて、入射したイオンビーム
のバンチング、集束および加速ができるRFQ30を備
えている。
【0080】上記RFQ30は、イオンビームの進路を
取り囲むように配された4つの伝送線を備えている。対
角線上に対抗する2対のQ電極が電極間のキャパシタン
スと電極を支えるポストのインダクタンスで結合された
共振器となり、これらが”π”モードにて共振すること
によって、大電流の直流ビームを効率良く、かつ、コン
パクトに、バンチング、集束、加速できる。
【0081】上記構成では、図2に示す高周波加減速器
27と同様に、RFQ30より出射したイオン粒子がバ
ンチングする位置に高周波加減速器27を配し、RFQ
30と高周波加減速器27との位相差を調整することに
よって、高周波加減速器27は、RFQ30からのイオ
ンビームを加速できる。
【0082】本実施形態に係るイオン注入装置21aで
は、図2に示すイオン注入装置21とは異なり、静電加
速器24に代えて、RFQ30を用いている。したがっ
て、イオン源22および分析電磁石23を、例えば、高
周波加減速器27など他の部材に比べて、特に高電位に
保つことなく、イオンビームをバンチングして加速でき
る。この結果、静電加速器24へ加速電位を供給する図
示しない高電圧電源が不要になる。また、上記イオン注
入装置21のように、イオン源22および分析電磁石2
3を高電圧キャビネット29に収納する必要がなくなる
ので、イオン注入装置21aの構成をより簡略化でき
る。さらに、本実施形態では、イオン源22および分析
電磁石23が高電位にならないため、イオン源22およ
び分析電磁石23の取り扱いも容易になる。この結果、
高エネルギでイオンを注入できるコンパクトなイオン注
入装置21aを実現できる。
【0083】なお、上記各実施形態では、例えば、高周
波加減速器27を2つ直列に設けて、イオンビームを順
次加速しているが、高周波加減速器27の数は、これに
限るものではない。単体で使用してもよいし、3つ以上
直列に設けてもよい。高周波加減速器27の数は、エン
ドステーション28にて必要とするイオンビームのエネ
ルギに応じて任意に設定できる。
【0084】また、高周波加減速器27は、上記各実施
形態に示す構成のイオン注入装置21(21a)に限ら
ず、他の構成のイオン注入装置にも適用できる。また、
上記各実施形態では、高周波加減速器27をイオンの加
減速あるいはバンチングに用いているが、これに限るも
のではない。例えば、電子など、他の荷電粒子の加減速
あるいはバンチングに用いることができる。ただし、イ
オンの場合、電荷や質量が豊富であるため、種々の入射
エネルギを持つ。この結果、上記各実施形態に示すよう
に、入射エネルギに対するアクセプタンスの広い高周波
加減速器27は、イオンの処理に特に適している。
【0085】
【発明の効果】請求項1の発明に係る高周波加減速器
は、以上のように、共振回路は、導電体の容器内部に形
成された空洞に配され、駆動手段からの電力により励振
する複数の駆動用電極を備えており、上記空洞内の荷電
粒子の通路上には、上記駆動用電極によって、3つ以上
のギャップが形成されている構成である。
【0086】それゆえ、高周波加減速器の構成を機械的
に変位させることなく、高周波加減速器の同期エネルギ
は、各共振モードに対応して複数設けられる。この結
果、従来に比べて、入射エネルギに対する高周波加減速
器のアクセプタンスを広げることができるという効果を
奏する。
【0087】また、ギャップの数が同じであれば、駆動
用電極間に設けられる容器の壁の数を削減できる。した
がって、高周波加減速器へ入力される電力に対する加減
速電圧の比を従来に比べて高くでき、高周波加減速器の
効率をさらに向上できるという効果を併せて奏する。
【0088】請求項2の発明に係る高周波加減速器は、
以上のように、請求項1記載の発明の構成において、上
記駆動手段は、上記共振回路の各共振モードの基本周波
数にて、当該共振回路を駆動する構成である。
【0089】それゆえ、高周波加減速器において、イオ
ンの加減速に有利な同期エネルギを従来より多く設ける
ことができる。この結果、イオンビームの加減速あるい
はバンチングに特に適した高周波加減速器を実現できる
という効果を奏する。
【0090】請求項3の発明に係る高周波加減速装置の
使用方法は、以上のように、請求項1記載の高周波加減
速器を複数直列に配し、初段は、荷電粒子をバンチング
させるバンチング部として動作させ、次段以降は、荷電
粒子を加減速する加減速部として動作させる構成であ
る。
【0091】上記構成では、バンチング部と加減速部と
を同じ構成の高周波加減速器によって実現できるので、
別の構成のバンチング部を設ける場合に比べて、バンチ
ング部を含めた装置の製造や管理が容易になるという効
果を奏する。また、両者の構成が同じなので、同期エネ
ルギ調整時における高周波加減速装置の操作性を向上で
きるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、高周波
加減速器の要部を示す構成図である。
【図2】上記高周波加減速器を具備するイオン注入装置
を示す構成図である。
【図3】上記高周波加減速器の容器付近を示す斜視図で
ある。
【図4】上記高周波加減速器に設けられたコイルの支持
部材を示す平面図である。
【図5】上記高周波加減速器において、”π”モード時
における電極間の電界を示す説明図である。
【図6】上記高周波加減速器において、容器内のある点
における電界強度の時間変化を示すグラフである。
【図7】上記高周波加減速器において、”0”モード時
における電極間の電界を示す説明図である。
【図8】他の実施形態を示すものであり、上記高周波加
減速器を具備するイオン注入装置を示す構成図である。
【図9】従来例を示すものであり、高周波加減速器の要
部を示す構成図である。
【符号の説明】
1 タンク(容器) 2 空洞 2a 第1ギャップ 2b 第2ギャップ 2c 第3ギャップ 3 第1電極(駆動用電極) 4 第2電極(駆動用電極) 8 電力入力部(駆動手段) 26 バンチャー(高周波加減速器;バンチング部) 27 高周波加減速器(高周波加減速器;加減速部) 27a 共振回路

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に空洞が形成された導電体の容器を含
    む共振回路と、該共振回路へ電力を供給する駆動手段と
    を有する高周波加減速器において、 上記共振回路は、上記空洞内に配され、上記駆動手段か
    らの電力により励振する複数の駆動用電極を備えてお
    り、 上記空洞内の荷電粒子の通路上には、上記駆動用電極に
    よって、3つ以上のギャップが形成されていることを特
    徴とする高周波加減速器。
  2. 【請求項2】上記駆動手段は、上記共振回路の各共振モ
    ードの基本周波数にて、当該共振回路を駆動することを
    特徴とする請求項1記載の高周波加減速器。
  3. 【請求項3】請求項1記載の高周波加減速器を複数直列
    に配し、 初段は、荷電粒子をバンチングさせるバンチング部とし
    て動作させ、 次段以降は、荷電粒子を加減速する加減速部として動作
    させることを特徴とする請求項1記載の高周波加減速器
    の使用方法。
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