JPH09184498A - 遠心ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 二極可逆モーターを用いた遠心ポンプであっ
て、吐出効率が良く、耐用寿命が長く、しかも確実に作
動する遠心ポンプを提供する。 【解決手段】 回転軸4aに対して半径方向に直線状に伸
びた複数の羽根を有する羽根車４を二極可逆モーターに
取り付ける。羽根車４を断面円形のポンプ室２に収容す
る。その際、吐出口３の中央とポンプ室７の中心軸7aを
通る直線上であって、ポンプ室７の中心軸7aよりも吐出
口３から離れた位置に羽根車４の回転軸4aを配置する。
ピン６をポンプ室７の中心軸7aと平行に、且つ吐出口３
の中央とポンプ室７の中心軸7aとを結ぶ線分上に取り付
ける。ピン６を介して、羽根車４の回転により生じる水
の圧力作用により作動するプラスチック製可動弁5aを揺
動自在に取り付ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は遠心ポンプに関
し、詳記すれば池や水槽の揚水用ポンプ、洗濯機の排水
用ポンプなどに好適に使用される遠心ポンプに関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】遠心ポンプに使用されているモーターの
一つに、右回転と左回転のうち、どちらか一つの方向に
回転し、その回転方向に関わりなく同じ回転数で回転す
る二極可逆モーターがある。このモーターは、軸棒に円
筒形永久磁石を差し込んで構成された回転子と、電磁石
を備えた固定子とからなり、プラスチック製等の円筒ケ
ースに回転子を回転自在に収容・保持し、そのケースの
外側に固定子を配置して、固定子内部の電磁石から発生
する交番磁界によって回転子を遠隔的に回転させるもの
である。モーターの回転方向は、電磁石に流れる電流の
初期位相や、回転子に取り付けられた永久磁石のＮ、Ｓ
極の初期位置に左右されるため、右回転と左回転のう
ち、どちらに回転するのかモーターを始動してみなけれ
ばわからないようになっている。しかしながら、こうし
た二極可逆モーターは、固定子だけを液密な容器に収容
しておけば、モーター全体を水中に配置しても、回転子
は何ら支障なく水中を回転することができる。しかも回
転子の軸受にパッキンやメカニカルシール等の水の漏洩
防止手段を講じる必要が全くない。このように二極可逆
モーターは構造が簡単で、保守・管理を容易に行うこと
ができる安価な小型モーターとして、主に池や水槽の揚
水ポンプ、洗濯機の排水ポンプなどに用いられている。

【０００３】図２及び図３は、この二極可逆モーターを
用いて構成された従来の２タイプの遠心ポンプを示して
いる。両図は、遠心ポンプ（11）（21）の内部構造を示
すために、ポンプケーシング（12）（22）をポンプ室
（17）（27）の中心軸（17ａ）（27ａ）に垂直な平面で
切断した断面図である。

【０００４】図２において、羽根車（14）は二極可逆モ
ーター（図示せず）に取り付けられており、これを断面
円形のポンプ室（17）で回転させ、遠心作用によって水
に圧力を与える遠心ポンプ（11）を示している。この遠
心ポンプ（11）は、通常、水中に配置して使用するもの
であり、水は羽根車（14）の中心に近い方、すなわち回
転軸（14ａ）付近から吸い込まれ、羽根車（14）の外周
に流れ出て、ポンプ室（17）の周壁（17ｃ）に形成され
た吐出口（13）に流れ込むようになっている。羽根車
（14）の回転軸（14ａ）は、ポンプ室（17）の中心軸
（17ａ）と同心に配置されている。また、その羽根車
（14）には、回転軸（14ａ）に対して半径方向に直線状
に伸びた複数（本図では８枚）の羽根（14ｂ）が備わっ
ている。このように羽根車（14）を同心に配置し、その
羽根（14ｂ）を直線状に形成することによって、羽根車
（14）が本図紙面に向かって右回転（Ｒ）、左回転
（Ｌ）のどちらに回転しても、同じ大きさの遠心力を発
生させることができるようになっており、その結果、羽
根車（14）の回転方向の関係なく、同じ量の水が吐出口
（13）に流れ込むように構成されている。なお、本図で
は、羽根車（14）が右回転（Ｒ）した場合の流路を
（Ｑ）、左回転（Ｌ）したときの流路を（Ｐ）として示
している。

【０００５】一方、羽根車の回転を一方向だけに回転さ
せるように制御する手段をケーシング内部に備えている
遠心ポンプもある。この種の遠心ポンプ（21）を図３に
示す。この遠心ポンプ（21）の羽根車（24）は、二極可
逆モーター（図示せず）に取り付けられているものであ
るが、スパイラル状に形成されたポンプ室（27）に収容
されている。また、回転軸（24ａ）に対してスパイラル
状の羽根（24ｂ）を複数（本図では３枚）備えているも
のである。ポンプケーシング（22）には、羽根車（24）
の回転を一方向に制御する手段として、ポンプ室（27）
の周壁（27）に沿って湾曲した逆転防止べら（26）が付
設されている。この遠心ポンプ（21）を水中に配置し、
始動すると、二極可逆モーターに取り付けられている羽
根車（24）は、右回転（Ｒ）と左回転（Ｌ）のうち、ど
ちらか一方に回転することになるが、この遠心ポンプ
（21）では逆転方向となる右回転（Ｒ）した場合におい
ては、水はポンプケーシング（22）と逆転防止べら（2
6）の隙間（Ｎ）から、逆転防止べら（26）の背部に形
成された空間（Ｍ）に流れ込み、その圧力作用によって
逆回転防止べら（26）の遊端部が羽根（24ｂ）の前に突
き出て、羽根車（24）の回転を止めるようになってい
る。こうなると、羽根車（24）は、逆転防止べら（26）
との衝撃力によって左回転（Ｌ）、すなわち正転方向に
反転するようになる。また、その正転方向に回転する途
中、羽根（24ｂ）は、逆転防止べら（26）の腹部に当接
して逆転防止べら（26）を元の位置に押し戻し、このま
ま回転を続けることができるようになっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図２に
示した遠心ポンプ（11）では、羽根車（14）がどちらに
回転しても、吐出しようとする水の一部は、羽根車（1
4）の周りを循環してしまうので、吐出効率が悪かっ
た。

【０００７】一方、図３に示した遠心ポンプ（21）にお
いては、羽根車（24）の回転方向を制御する際に、羽根
（24ｂ）と逆転防止べら（26）はかなり強い機械的衝撃
を受けるので、両者は破損し易く、耐用寿命はあまり長
くなかった。しかも、水に混入している固形物によっ
て、ポンプケーシング（22）と逆転防止べら（26）の隙
間（Ｎ）や、逆転防止べら（26）の背部に形成された空
間（Ｍ）が埋められてしまい、逆転防止べら（26）に作
動障害が生じ易くなっていた。

【０００８】そこでこの発明は、このような事情に鑑み
てなされたもので、上記二つの構成の遠心ポンプが有す
る欠点を一挙に解決できる遠心ポンプ、すなわち効率が
良く、耐用寿命が長く、しかも確実に作動する遠心ポン
プを提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この発明に係る遠心ポン
プは、二極可逆モーターに取り付けられ、回転軸に対し
て半径方向に直線状に伸びた複数の羽根を有する羽根車
と、該羽根車を収容する断面円形のポンプ室と、該ポン
プ室の周壁に形成された吐出口とを備えた遠心ポンプに
おいて、前記羽根車の回転軸が、前記吐出口の中央と前
記ポンプ室の中心軸とを通る直線上であって、前記ポン
プ室の中心軸と平行に、且つ前記ポンプ室の中心軸より
も前記吐出口から離れた位置に配設されると共に、前記
羽根車の回転により生じる水の圧力作用によって作動す
る流路切替え手段が、前記吐出口と前記羽根車との間に
設けられてなることを特徴とするものである。このよう
に構成することにより、上記目的を達成できる遠心ポン
プになる。

【００１０】すなわち、回転軸に対して半径方向に直線
状に伸びた複数枚の羽根を有する羽根車を採用すること
により、左右どちらに回転しても同じ大きさの遠心力が
発生するようになり、更に羽根車の回転軸を、前記ポン
プ室の中心軸と平行に、且つ吐出口の中央とポンプ室の
中心軸とを通る直線上といったポンプ室の対称線上に配
設することによって、羽根車の回転方向に関係なく、同
じ量の水が吐出口に流れ込むようになる。

【００１１】また、羽根車の回転軸を、ポンプ室の中心
軸よりも吐出口から離れた位置といったポンプ室の中心
軸に対し偏心した位置に配設することによって、羽根車
を回転させたときに、吐出口付近の水圧に対し、その反
対側に位置するポンプ室の底部付近の水圧の方が高くな
るように設定される。このポンプ室内に発生する圧力差
は、水を吐出口側に向けて流す働きを有するため、ポン
プ室内を循環する水の量は減少するようになる。

【００１２】また、前記流路切替え手段は、ポンプ室側
壁に揺動自在に取り付けられた可動弁であって、この可
動弁は、遊端部が吐出口両側内縁に当接しうるものと設
定され、且つ前記遊端部が吐出口の一側縁に当接するこ
とにより、羽根車の回転方向に応じてポンプ室内に形成
される右回り吐出流路と左回り吐出流路とのうち、いず
れか一方を閉鎖しうるものと設定されてなるものが好ま
しく適用できる。

【００１３】特に、前記可動弁は、ピンを介してポンプ
室側壁に取り付けられ、前記ピンがポンプ室の中心軸と
平行に、且つ吐出口の中央とポンプ室の中心軸とを結ぶ
線分上に配設されているものが好ましい。可動弁を、ポ
ンプ室の中心軸と平行に、且つ吐出口の中央とポンプ室
の中心軸とを結ぶ線分上に配設することにより、可動弁
がどちらに切り替わっても、同じ量の水が吐出口に流れ
込むようになるからである。

【００１４】また、プラスチックからなる可動弁を採用
すると、羽根車の回転により生じる水の圧力といった比
較的小さい圧力にも確実に作動するようになり、しかも
吐出口の両側内縁を傷付けることもなくなる。

【００１５】

【発明の実施の形態】この発明に係る遠心ポンプを図面
を参照しながら説明する。

【００１６】図１はこの発明に係る遠心ポンプであっ
て、（Ａ）は羽根車（４）が左回転（Ｌ）した場合、
（Ｂ）は右回転（Ｒ）した場合を示している。この図
は、遠心ポンプ（１）の内部構造を示すために、ポンプ
ケーシング（２）をポンプ室（７）の中心軸（７ａ）に
垂直な平面で切断した断面図で示している。

【００１７】図１において、羽根車（４）は二極可逆モ
ーター（図示せず）に取り付けられており、これを断面
円形のポンプ室（７）で回転させ、遠心作用によって水
に圧力を与えるものである。羽根車（４）には、左右ど
ちらに回転しても同じ大きさの遠心力が水に加わるよう
に、回転軸（４ａ）に対して半径方向に直線状に伸びた
複数（本例では８枚）の羽根（４ｂ）を備えている。ポ
ンプ室（７）の周壁（７ｃ）には、吐出口（３）が形成
されている。

【００１８】羽根車（４）の回転軸（４ａ）は、吐出口
（３）の中央と前記ポンプ室（７）の中心軸（７ａ）と
を通る直線上であって、ポンプ室（７）の中心軸（７
ａ）と平行に、且つポンプ室（７）の中心軸（７ａ）よ
りも吐出口（３）から離れた位置に配設されており、ポ
ンプケーシング（２）の底部付近の水圧の方を高くする
ものとなされている。

【００１９】吐出口（３）と羽根車（４）との間には、
羽根車（４）の回転により生じる水の圧力作用により作
動する流路切替え手段（５）が設けられている。

【００２０】この例で示した流路切替え手段（５）は、
ポンプ室（７）の側壁（７ｂ）にピン（６）を介して揺
動自在に取り付けられた可動弁（５ａ）であって、この
可動弁（５ａ）は、遊端部が吐出口（３）における両側
内縁に当接するように設定されたものである。ピン
（６）は、ポンプ室（７）の側壁（７ｂ）に取り付けら
れており、ポンプ室（７）の中心軸（７ａ）と平行に、
且つ吐出口（３）の中央とポンプ室（７）の中心軸（７
ａ）とを結ぶ線分上に配設されている。

【００２１】この可動弁（５ａ）は、羽根車（４）の回
転により生じる水の圧力作用によって、その遊端部が吐
出口（３）の両側内縁を揺動可能に構成されたものであ
る。この可動弁（５ａ）はプラスチックからなり、小さ
い圧力作用にも確実に作動するように、更には吐出口
（３）の縁部を傷付けないようになされている。ピン
（６）は、通常、防錆性に優れているステンレス鋼製の
ものが使用される。

【００２２】この例の遠心ポンプ（１）は、通常、水中
に配置して揚水等を行うものである。水は羽根車（４）
の中心に近い方、すなわち回転軸（４ａ）付近から吸い
込まれ、羽根車（４）の周りを回るように流れ出る。そ
のときの水の流れの回転方向に従って、可動弁（５ａ）
の遊端部は、吐出口（３）の両側内縁のうち、いずれか
一方の側縁に向かって動き、その側縁に当接することに
より、流路を切り替えるものとなされている。

【００２３】ここで、羽根車（４）が左回転（Ｌ）した
場合の左回り吐出流路を（Ｐ）、右回転（Ｒ）した場合
の右回り吐出流路を（Ｑ）とする。羽根車（４）が左回
転（Ｌ）した場合、図１（Ａ）で示したように、羽根車
（４）の回転により生じる水の圧力は、可動弁（５ａ）
に作用し、この可動弁（５ａ）の遊端部が吐出口（３）
の左内縁に押圧されると共に、右回り吐出流路（Ｑ）を
閉鎖するようになっている。これとは逆に、羽根車
（４）が右回転（Ｒ）した場合には、図１（Ｂ）で示し
たように、羽根車（４）の回転に生じる水の圧力は、可
動弁（５ａ）に作用し、この可動弁（５ｂ）の遊端部が
吐出口（３）の右内縁に押圧されると共に、左回り吐出
流路（Ｐ）を閉鎖するようになっている。

【００２４】実際に、図１で示したこの発明に係る遠心
ポンプ（１）と、図２及び図３に示した従来の遠心ポン
プ（11）（21）を用いて、単位時間当たりの吐出量を比
較したところ、いずれもこの発明に係る遠心ポンプ
（１）の方が約３０％上回っていたことが判明した。

【００２５】

【発明の効果】以上で説明したように、この発明に係る
遠心ポンプは、羽根車の回転により生じる水の圧力作用
によって作動する流路切替え手段を設けているので、羽
根車の回転方向に応じて流路を自動的に切替えることが
できる。しかも、回転軸に対して半径方向に直線状に伸
びた複数枚の羽根を有する羽根車を採用しているので、
左右どちらに回転しても同じ大きさの遠心力を発生させ
ることができる上、羽根車の回転軸はポンプ室の対称線
上に配設されているので、羽根車の回転方向に関係な
く、水を吐出口に送ることができる。

【００２６】また、羽根車の回転軸はポンプ室の中心軸
に対し偏心した位置に配設されているので、流路切替え
手段と共にポンプ室内を循環する水の量を減少させる作
用を奏し、吐出効率を高くすることができる。また、羽
根車は強い機械的衝撃を受けることもないので、ポンプ
の耐用寿命を長くすることができる。

【００２７】さらに、流路切替え手段に、上述した構成
の可動弁を採用すれば、一定量の水を揚水したり排出し
たりすることができるし、可動弁がプラスチックからな
るものであれば、吐出口の両側内縁を傷付けることもな
く、確実に作動する流路切替え手段を備えた遠心ポンプ
を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係る遠心ポンプを示す断面図であ
る。

【図２】従来の遠心ポンプを示す断面図である。

【図３】従来の他の遠心ポンプを示す断面図である。

【符号の説明】

１、１１、２１…遠心ポンプ ２、１２、２２…ポンプケーシング ３、１３、２３…吐出口 ４、１４、２４…羽根車 ４ａ、１４ａ、２４ａ…回転軸 ５…流路切替え手段 ５ａ…可動弁 ６…ピン ７、１７、２７…ポンプ室 ７ａ、１７ａ…中心軸 ７ｂ、１７ｂ、２７ｂ…側壁 ７ｃ、１７ｃ、２７ｃ…周壁 ２６…逆転防止べら Ｍ…隙間 Ｎ…空間 Ｐ、Ｑ…流路 Ｒ、Ｌ…羽根車の回転方向

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 二極可逆モーターに取り付けられ、回転
   軸に対して半径方向に直線状に伸びた複数の羽根を有す
   る羽根車と、該羽根車を収容する断面円形のポンプ室
   と、該ポンプ室の周壁に形成された吐出口とを備えた遠
   心ポンプにおいて、 前記羽根車の回転軸が、前記吐出口の中央と前記ポンプ
   室の中心軸とを通る直線上であって、前記ポンプ室の中
   心軸と平行に、且つ前記ポンプ室の中心軸よりも前記吐
   出口から離れた位置に配設されると共に、前記羽根車の
   回転により生じる水の圧力作用によって作動する流路切
   替え手段が、前記吐出口と前記羽根車との間に設けられ
   てなることを特徴とする遠心ポンプ。
2. 【請求項２】 流路切替え手段は、ポンプ室側壁に揺動
   自在に取り付けられた可動弁であって、該可動弁は、遊
   端部が吐出口両側内縁に当接しうるものと設定され、前
   記遊端部が吐出口の一側縁に当接することにより、羽根
   車の回転方向に応じてポンプ室内に形成される右回り吐
   出流路と左回り吐出流路とのうち、いずれか一方を閉鎖
   しうるものとなされてなる請求項１に記載の遠心ポン
   プ。
3. 【請求項３】 可動弁は、ピンを介してポンプ室側壁に
   取り付けられ、前記ピンがポンプ室の中心軸と平行に、
   且つ吐出口の中央とポンプ室の中心軸とを結ぶ線分上に
   配設されてなる請求項２に記載の遠心ポンプ。
4. 【請求項４】 可動弁がプラスチックからなる請求項２
   又は請求項３に記載の遠心ポンプ。