JPH09150371A - ステンレス鋼の高鏡面研磨用研磨工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 前研磨で発生した条痕を効率よく除去し、光
沢度に優れた高鏡面仕上げを可能にする。 【解決手段】 この研磨工具は、被研磨材５の表面と平
行な回転軸４を円筒状の基台２に固着し、基台２の円周
面に樹脂製スポンジ３を接着している。樹脂製スポンジ
３には円周方向に等間隔で複数のスリット１が形成され
ており、スリット１は研磨作用面に斜交している。被研
磨材５の表面に供給された研磨液及び砥粒は、スリット
１によって研磨作用面の外方に排出される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼の高鏡面
仕上げに使用される研磨工具に関する。

【０００２】

【従来の技術】ステンレス鋼の鏡面仕上げでは、研磨条
痕のない高光沢度をもつ鏡面研磨品質を得るために、硝
酸水溶液にアルミナ等の砥粒を分散させた研磨液を使用
したカップ型研磨方法が採用されている。使用される研
磨液の薬剤である硝酸は、金属や人体に対して強い腐食
性を示す。そのため、研磨装置や人体への飛散防止，研
磨液槽の腐食防止メンテナンス等の管理にかかるコスト
が高く、トータルでみた研磨コストが非常に高いもので
あった。高鏡面を得る手段として電解研磨も採用されて
いるが、電解条件の管理や電解液の管理，処理等によっ
て同様に研磨コストが高いものになっていた。酸化クロ
ムやアルミナ系の研磨材を使用したバフ研磨も検討され
ているが、バフ研磨は、前研磨面の研磨条痕を除去する
能率が高いものの、前述した二つの研磨方法に比較して
特有の縦スジや疵が入り易い欠点がある。更に表面品質
の安定性が悪いため、高品質の鏡面研磨が得られず、高
鏡面が要求される物品には適用できない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そこで、縦スジや疵の
発生を抑制するため、研磨作用面への研磨液の供給，研
磨屑，不要砥粒の排出等を円滑にするスリットを研磨作
用面に形成することが検討されている。しかし、図１に
示すように、スリット１は、通常研磨作用面に直交する
ように、基台２に接着した樹脂製スポンジ３に複数設け
られている。基台２に回転軸４が取り付けられており、
樹脂製スポンジ３を回転させながら被研磨材に摺擦する
ことにより研磨する。スリット１が研磨作用面に直交し
ているため、研磨中に研磨屑等の排出が十分でなく、研
磨屑等が被研磨材表面に押し付けられた状態で流動す
る。その結果、依然として多量の縦スジや疵が発生する
ことが避けられない。縦スジや疵の発生は、図２に示し
たカップ型の研磨工具においても同様である。本発明
は、このような問題を解消すべく案出されたものであ
り、研磨作用面に任意の傾斜角度でスリットを形成する
ことにより、研磨条痕のない高品質で光沢度に優れた鏡
面研磨が効率よく得られる研磨工具を提供することを目
的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明の高鏡面研磨用研
磨工具は、その目的を達成するため、被研磨材の表面と
平行な回転軸と、該回転軸を固着した円筒状の基台と、
該基台の円周面に接着された樹脂製スポンジと、円周方
向に等間隔で前記樹脂製スポンジの外周面に形成され、
研磨作用面に斜交した複数のスリットとを備え、被研磨
材表面に供給された研磨液及び砥粒が前記スリットによ
って前記研磨作用面の外方に排出されることを特徴とす
る。本発明の研磨工具は、好適には化学研磨作用及び機
械研磨作用を併用した複合研磨に使用される。この研磨
工具は、図３に示すように、スリット１が形成された樹
脂製スポンジ３を、回転軸４が取り付けられた基台２に
固着している。スポンジ３には、ウレタン樹脂，メラミ
ン樹脂，シェラック樹脂等の耐薬品性に優れた樹脂が使
用され、前研磨面の状態に応じて材質，気孔率，樹脂硬
度等が選択される。スリット１は、図４に示すように所
定の傾斜角度αで研磨作用面に対して傾斜しており、研
磨能力が落ちることがない数及び溝幅に設定されてい
る。

【０００５】

【作用】ストレート形式の研磨で縦スジや疵が被研磨材
の表面に入る原因には、研磨作用面の不均一さ，研磨屑
や不要砥粒の巻込み等が掲げられる。しかし、図３に示
すように、研磨工具として樹脂製スポンジ３を使用する
とき、研磨作用面が弾性的に且つ均一に被研磨材５の表
面に当る。そのため、研磨作用面の不均一さに起因した
縦スジや疵の発生が抑制される。研磨屑や不要砥粒の巻
込みに起因する縦スジや疵の発生は、傾斜角度αで傾斜
したスリット１を研磨作用面に形成し、研磨屑や不要砥
粒の排出を促進させることにより抑制される。すなわ
ち、スリット１は、研磨屑や不要砥粒が研磨作用面に滞
留することを解消し、外部に研磨屑や不要砥粒を効率よ
く排出する。その結果、縦スジや疵のない高品質の鏡面
が得られる。

【０００６】

【実施例】本実施例では、図３に示すストレート形式の
研磨工具を使用し、一辺が４０ｍｍの矩形断面をもち長
さ２００ｍｍのＳＵＳ３０４ステンレス鋼角パイプを＃
３，０００の弾性砥石で前研磨したものを被研磨材とし
た。基台２の材質をアクリル樹脂とし、外径１００ｍ
ｍ，内径６０ｍｍ，幅５０ｍｍの大きさの円筒形状に加
工したウレタン樹脂製スポンジ３を基台２に接着した。
スポンジ３の外周面には、研磨作用面に対し傾斜角度α
＝４５度で幅１０ｍｍのスリット１を円周方向に等間隔
で８本形成した。研磨液６としては、蓚酸を水道水で濃
度１％に希釈し、研磨砥粒として＃６，０００のホワイ
トアランダムを蓚酸水溶液１リットル当り７５ｇの割合
で配合・解膠したものを用意した。研磨条件は、ストレ
ート型及びカップ型共に回転速度３００ｒｐｍ，送り速
度１，０００ｍ／分，押付け量１ｍｍ／パスに設定し
た。それぞれの研磨工具を使用して研磨した表面を観察
し、研磨特性を評価した。本発明に従ってスリット１を
入れた研磨工具の研磨能力を条痕の除去に必要なパス回
数で判定し、図２のカップ型研磨工具の研磨能力と比較
した。表１の比較結果にみられるように、＃３，０００
の前研磨面の条痕を除去するのに必要なパス回数は、ス
トレート型では約３パス，カップ型では約５パスであっ
た。すなわち、ストレート型研磨工具は、カップ型研磨
工具に比較して格段に高い研磨能力をもち、研磨能率が
約７割向上していることが判る。

【０００７】

【０００８】スポンジ３に付けたスリット１の傾斜角度
αによる影響を調査するため、傾斜角度α＝４５度でス
リット１を形成した研磨工具，研磨作用面に直交するス
リットを形成した研磨工具及びスリットなしの研磨工具
の３種類を使用した。そして、前研磨面にある条痕の除
去能力及び縦スジや疵の発生に及ぼす研磨工具の種類に
よる影響を調査した。調査結果を示す表２にみられるよ
うに、条痕除去能力は、研磨工具の種類による差異がな
かった。しかし、本発明に従った研磨工具では、縦スジ
や疵の発生が実質的に抑制されていた。このことから、
傾斜したスリット１は、縦スジや疵の発生防止に有効で
あることが確認された。

【０００９】

【００１０】更に、傾斜角度α＝４５度のスリット１を
付けたストレート型の研磨工具を使用した３パスの研磨
により得られた研磨面の表面粗さを、従来のカップ型研
磨工具を使用した５パスの研磨と比較して表３に示す。
表面粗さは両者共に全く差異がみられず、Ｒ_max ＝０．
１μｍレベルの高鏡面が得られている。また、何れの研
磨でも、縦スジや疵等の欠陥が検出されなかった。

【００１１】

【００１２】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明の研磨工
具は、基台の円周面に接着した樹脂製スポンジに研磨作
用面に傾斜するスリットを形成しているので、被研磨材
の表面に供給された研磨液の砥粒や研磨屑が効率よく研
磨作用面から排出され、研磨面に縦スジや疵等の欠陥を
発生させることがない。そのため。前研磨工程で発生し
た条痕が効率よく除去され、光沢度に優れた高鏡面が得
られる。このようにして、本発明の研磨工具によると
き、表面研磨品質を低下させることなく、工数が大幅に
削減された低コストの研磨作業が可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 研磨作用面に直交するスリットを形成した従
来のストレート型研磨工具

【図２】 樹脂製スポンジを基台に接着した従来のカッ
プ型研磨工具

【図３】 本発明に従って傾斜角度をつけてスリットを
形成したストレート型研磨工具

【図４】 本発明に従ったスリットを形成した研磨工具
を研磨作用面からみたスリットパターン

【符号の説明】

１：スリット ２：基台 ３：樹脂製スポンジ
４：回転軸 ５：被研磨材 ６：研磨液 α：研磨作用面に対す
るスリットの傾斜角度

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被研磨材の表面と平行な回転軸と、該回
   転軸を固着した円筒状の基台と、該基台の円周面に接着
   された樹脂製スポンジと、円周方向に等間隔で前記樹脂
   製スポンジの外周面に形成され、研磨作用面に斜交した
   複数のスリットとを備え、被研磨材表面に供給された研
   磨液及び砥粒が前記スリットによって前記研磨作用面の
   外方に排出されることを特徴とするステンレス鋼の高鏡
   面研磨用研磨工具。