JPH09143139A - シアノフルオロフェノ−ルの製造方法 - Google Patents

シアノフルオロフェノ−ルの製造方法

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JPH09143139A
JPH09143139A JP33283395A JP33283395A JPH09143139A JP H09143139 A JPH09143139 A JP H09143139A JP 33283395 A JP33283395 A JP 33283395A JP 33283395 A JP33283395 A JP 33283395A JP H09143139 A JPH09143139 A JP H09143139A
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difluorobenzonitrile
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のような有毒なシアン化物を用いず、高
純度のシアノフルオロフェノールを安全に効率良く得る
方法を提供する。 【構成】 2,4−ジフルオロベンゾニトリルを金属ア
ルコキシドと反応させてフルオロアルコキシベンゾニト
リル混合物とし、この混合物にエーテル開裂・加水分解
処理を施すことによりシアノフルオロフェノール混合物
とし、この混合物から各異性体を分離精製して4−シア
ノ−3−フルオロフェノ−ルまたは2−シアノ−5−フ
ルオロフェノ−ルを得ることを特徴とするシアノフルオ
ロフェノ−ルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、農薬、染料
および液晶等の中間体として有用なシアノフルオロフェ
ノール、特に4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルおよ
び2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルの新規な製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】シアノフルオロフェノール類は、医薬、
農薬、染料および液晶等の中間体として重要な化合物で
ある。特に4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルは、特
開昭60−197651号、特開昭60−224666
号あるいは特開平4−164058号公報等に見られる
ように、非常に優れた特性を有する液晶化合物の製造原
料(中間体)となる。しかし、ベンゼン環上にOH、C
NおよびFを有するシアノフルオロフェノールには多数
の位置異性体が存在し、これらの異性体は各種の溶媒へ
の溶解性が類似した固体(常温下)であるため、シアノ
フルオロフェノールの合成においては異性体の生成比の
制御ならびに生成した異性体の分離が大きな課題となっ
ている。
【0003】例えば、4−シアノ−3−フルオロフェノ
−ルの製造方法として、以下の経路Bを辿る方法が提案
されている (Helv. Chim. Acta., vol. 67 (1984), 157
2-1578) 。
【化4】 この経路では、はじめにm−フロオロアニソール(式I
V)の臭素化を行なって3−フルオロ−4−ブロモアニ
ソール(式Va)とする。次いでジメチルホルムアミド
(DMF)の溶媒中で上記ブロモアニソールにシアン化銅を
作用させて臭素原子をシアノ基に置換してニトリル(式
VI)に転じた後に塩化アルミニウムによりエーテル結合
を開裂させて目的の4−シアノ−3−フルオロフェノ−
ル(式 VII)を得る。
【0004】経路Bの第1段の反応では、目的とする3
−フルオロ−4−ブロモアニソール(式Va)の他に以下
の式Vbおよび式Vcで表わされる位置異性体やジブロモ体
が生じる。
【化5】
【化6】 これらの異性体は融点や溶媒に対する溶解性が近似して
いるため、その分離が困難である。そこで、この分離方
法を改良した製法が欧州特許EP 0 601 977 A1号に提案
されている。この方法では、シアノフルオロアニソール
(VI)の段階でカラムクロマトグラフィ法により異性体の
分離を行ない、次いでピリジン塩酸塩を用いて脱メチル
化を行なっている。しかし、これらの方法では、分離精
製のために複雑な手順が必要であり合成プロセス全体と
しての収率も低い。また、第2段の反応(V →VI)に用
いるシアン化銅は毒性が高いため、反応を実施する上で
安全面にも問題が生じる。
【0005】異性体の生成やシアン化合物の使用を回避
するため、以下に示す経路Cの方法(Liuid Crystals, v
ol.11, No.3, 373-384 (1992))も提案されている。
【化7】 経路Cは、m−フルオロアニソールにアシル基を導入
し、これを順次、カルボキシル基、カルバモイル基、シ
アノ基に転化して4−シアノ−3−フルオロフェノ−ル
を得る方法である。アシル化の際の反応性(置換基の配
向性および立体障害)から異性体の生成が最小限に抑え
られる。
【0006】また次式に示す経路D(特開平2−174
738号)の方法も知られており、この方法では、β−
シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)を用い
て反応を位置選択的に進める。
【化8】 しかし、これらの製法のうち、経路Cでは工程が長いた
めに全体を通しての収率が10%台にとどまる。経路D
では試薬として比較的高価なシクロデキストリンを用い
る必要があり工業的な規模での実施にはコスト面での問
題が残る。さらに、シアン化銅を用いるため安全面でも
問題がある。
【0007】
【発明の解決課題】本発明は、従来の製造方法における
上記問題を解決した製造方法を提供するものであって、
式III で示されるシアノフルオロフェノールについて、
その異性体の生成比率を制御して目的のシアノフルオロ
フェノールを高純度で安全・簡便に得る方法を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題の解決手段】以上のように、従来の製法はいずれ
もモノフルオロアニソールないしモノフルオロフェノー
ルを出発物質として用い、フッ素以外の置換基に水酸基
とシアノ基を導入する製法であるが、本発明の製造方法
は、(イ) ジフルオロベンゾニトリルを出発物質とし、フ
ッ素の1つを最終的にOH基に置換すること、および
(ロ) その生成過程で生じるフルオロアルコキシシアノベ
ンセンを異性体混合物のまま処理し、好適な実施態様に
おいては、これら異性体の生成比率を制御して目的のシ
アノフルオロフェノールを得ることを特徴とする。さら
に、好ましくは(ハ) シアノフルオロフェノールの異性体
混合物から各異性体を効率的に分離する工程を有するこ
とを特徴とする。
【0009】すなわち、本発明によれば以下の構成から
なるシアノフルオロフェノ−ルの製造方法が提供され
る。 (1) 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリル:
【化9】 を金属アルコキシド(RO)n M(式中、Rは炭化水素
基、Mは金属原子、nはMの価数)またはアルカリ共存
下にアルコールROH(式中、Rは上記と同じ)と反応
させて式II:
【化10】 のフルオロアルコキシベンゾニトリルの混合物(式中、
Rは上記に同じ)とし、この混合物にエーテル開裂・加
水分解処理を施すことにより式III :
【化11】 のシアノフルオロフェノールの混合物とし、この混合物
から各異性体を分離精製して4−シアノ−3−フルオロ
フェノ−ルまたは2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル
を得ることを特徴とするシアノフルオロフェノ−ルの製
造方法。
【0010】さらに好ましくは、以下の構成からなる製
造方法が提供される。 (2) 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルを有
機溶媒中でアルコキシ化して式IIのエーテル混合物を生
成する際に、有機溶媒の種類に応じて4−シアノ−3−
フルオロフェノ−ルまたは2−シアノ−5−フルオロフ
ェノ−ルの生成比率を制御する上記(1) に記載の製造方
法。 (3) 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルをア
ルコール系の有機溶媒中でアルコキシ化することにより
2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの生成比
率を高めて4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルを得る
上記(2) に記載の製造方法。 (4) 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルをエ
ーテル類ないしベンゼン中でアルコキシ化することによ
り4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成
比率を高めて2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルを得
る上記(2) に記載の製造方法。 (5) 上記式III のシアノフルオロフェノール混合物
を加熱し蒸留または昇華によって異性体を分離する上記
(1) 〜(4) のいずれかに記載の製造方法。 (6) 上記式III のシアノフルオロフェノール混合物
に水または有機溶媒および金属陽イオン源を添加するこ
とにより異性体のうち一方を金属塩として分離する上記
(1) 〜(4) のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
【発明の実施形態】本発明の製造方法の概略は以下の経
路Aにより表わされる。
【化12】 すなわち、本発明の製造方法は、2,4−ジフルオロベ
ンゾニトリル(式I)を出発物質とし、これにRO-
たはROH/アルカリを作用させてフルオロアルコキシ
ベンゾニトリルの異性体混合物(式II)を得た後、上記
反応で生じたエーテル結合を開裂させ加水分解して目的
化合物(式III)を得る。
【0012】(I)出発物質 出発物質である2,4−ジフルオロベンゾニトリル(式
I)は、種々の方法により合成することができるが、例
えば、以下のようにして得ることができる。
【化13】
【0013】この経路では、2,4−ジクロロトルエン
(式 X)のアルキル側鎖を塩素化してα,α,α−トリ
クロロメチル−2,4−ジクロロトルエン(式XI)とし
これを加水分解するか、あるいは原料のトルエンを酸化
することにより2,4−ジクロロ安息香酸(式XII )を
得る。次いで、これにアンモニアを反応させて酸アミド
(式XIII)とし、これをP2 5 あるいはPCl3 、塩
化ホスホリル等と混合・加熱して脱水することにより
2,4−ジクロロベンゾニトリル(式 XIV)とする。最
後に、ジクロロベンゾニトリル(式 XIV)にフッ化カリ
ウム等のフッ素化剤を作用させてハロゲン交換を行なえ
ば2,4−ジフルオロベンゾニトリル(式I)が得られ
る。この製法によれば、従来のシアン化銅を用いて得た
シアノフルオロアニソールを原料とする製造方法と異な
り、有毒なシアン化銅を用いる必要がないため、安全に
2,4−ジフルオロベンゾニトリルを得ることができ
る。
【0014】(II)アルコキシ化 本発明の製造方法における第1工程のアルコキシ化は、
2,4−ジフルオロベンゾニトリルを金属アルコキシド
(RO)n M(式中、Rは炭化水素基、Mは金属原子、
nはMの価数)と反応させて、またはアルカリ存在下に
アルコールROH(式中、Rは上記と同じ)と反応させ
ることにより行なう。金属アルコキシドは無溶媒で粉末
状のまま、あるいはアルコール溶液として用いる。
【0015】金属アルコキシド中の金属元素としては、
例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ
金属を用いることができる。具体例としては、ナトリウ
ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−
ブトキシド等が挙げられ、工業的にはナトリウムメトキ
シドやナトリウムエトキシドが好ましい。その使用量は
2,4−ジフルオロベンゾニトリル1モルに対し、0.
5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.2モルであ
る。
【0016】アルカリとアルコールとを用いアルコキシ
化する場合に用いる好適なアルカリとしては水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化
アルカリおよび炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セ
シウム等の炭酸アルカリが挙げられる。工業的には、水
酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムまたは炭酸ナト
リウムもしくは炭酸カリウムが有利である。水酸化アル
カリまたは炭酸アルカリの使用量は、2,4−ジフルオ
ロベンゾニトリル1モルに対して0.5〜2.0モル、
好ましくは0.8〜1.2モルである。アルコールとし
て工業的にはメタノール、エタノール、プロパノール、
ブタノール等を用いることができる。特にメタノールや
エタノールが好ましい。アルコールと他の溶媒を混合し
て用いても良い。
【0017】(III) 溶媒効果 溶媒を用いる場合には、2,4−ジフルオロベンゾニト
リルおよび金属アルコキシドと容易には反応しないもの
が用いられる。具体的には、メタノール、エタノール、
プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン
やベンゼン等の飽和、不飽和の炭化水素類、アセトン等
のケトン類、イソプロピルエーテルのようなエーテル
類、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、ピリジ
ンやDMSO、DMFのような非プロトン性極性溶媒を
用いることができる。
【0018】ここで、シアノ基に対してパラ位のFを優
先的に置換(アルコキシドで攻撃)するためには金属ア
ルコキシドと対応した低級アルコール類、特にナトリウ
ムメトキシド−メタノール、ナトリウムエトキシド−エ
タノールの組み合わせが好ましく、シアノ基に対してオ
ルト位のFを優先的に置換するためには、イソプロピル
エーテルやベンゼン等が好ましい。
【0019】例えば、後述の実施例に示すように、2,
4−ジフルオロベンゾニトリル溶液に14%NaOC2 H 5
いし28% NaOCH3 溶液を滴下してフルオロアルコキシベ
ンゾニトリルを生成させる際、エチルアルコールまたは
メチルアルコールを溶媒として用いた場合には、2−フ
ルオロ−4−アルコキシベンゾニトリル(2-F-4-OR-BzN
と略記する場合がある)が優位に生成し、イソプロピル
エーテルないしベンゼンを溶媒として用いた場合には、
4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリル(4-F-2-
OR-BzNと略記する場合がある)が優位に生成する。
【0020】一例として、実施例に示すように、イソプ
ロピルエーテルないしベンゼンを溶媒として用いた場合
の上記異性体の生成比率は、4-F-2-OR-BzNが70%以上
であるのにに対して2-F-4-OR-BzNは30%以下であり、
4-F-2-OR-BzNの選択性が格段に高い。従って、2−シア
ノ−5−フルオロフェノールの生成に有利である。一
方、アルコール類を溶媒として用いた場合には、2-F-4-
OR-BzNの生成比率が高く、従って、4−シアノ−3−フ
ルオロフェノールの生成に有利である。
【0021】アルコキシ化の反応温度、時間等の条件
は、適宜、最適条件を選定すればよいが、概ね−20〜
200℃の温度、30分〜48時間が適当である。な
お、シアノ基に対してパラ位のFを優先的に置換するた
めには還流条件下にアルコキシドを滴下するのが好まし
く、基質濃度が低く、また長時間かけてアルコキシドを
滴下したほうが、2-F-4-OR-BzNの生成比率が高くなる傾
向がある。一方、アルコール系溶媒中でオルト位のFを
優先的に置換するには比較的低温、例えば10℃〜室温
程度で、比較的短い時間内にアルコキシドの全量を添加
するのが好ましい。
【0022】反応混合物から副生フッ化ナトリウムを濾
過等により除いた後、溶媒を留去することにより2−フ
ルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルと4−フルオロ
−2−アルコキシベンゾニトリルの混合物が得られる。
この2つの異性体は融点、沸点ともに近接しており、通
常の方法では収率よく分離するのが難しいが、本発明の
製造方法では敢えて両者を分離することなく、第2段の
エーテル開裂・加水分解反応に移行する。
【0023】(IV)エーテル開裂・加水分解 エーテル開裂反応は、既知の方法によって行うことがで
きる。好ましくは、トルエンまたはキシレン等の溶媒中
または無溶媒で塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、
塩化アルミニウム−塩化ナトリウム(1:1錯体)等の
ルイス酸触媒を用いて行なうことができる。工業的には
特に塩化アルミニウムが好ましい。その使用量はフルオ
ロアルコキシベンゾニトリル1モルに対して1〜3モ
ル、好ましくは1.01〜1.5モルである。反応温度
は80〜200℃、好ましくは100〜140℃であ
り、反応時間は3〜24時間である。
【0024】上記エーテル開裂反応の後、反応混合物を
加水分解することにより4−シアノ−3−フルオロフェ
ノール(式 VII)と、2−シアノ−5−フルオロフェノ
−ル(式VIII)の混合物が得られる。
【化14】
【化15】
【0025】(V) 異性体の分離精製 上記異性体は物性が似ているので通常の方法では収率良
く分離するのは難しいが、以下の方法により効率的に分
離精製することができる。 (イ) 蒸留昇華法:シアノフルオロフェノールの上記異性
体混合物を加熱し蒸留または昇華によって異性体を分離
する。具体的には混合物を加熱蒸留し、2−シアノ−5
−フルオロフェノ−ルを蒸留物として得、釜残渣として
4−シアノ−3−フルオロフェノールを得ることができ
る。加熱温度は70〜300℃、好ましくは150〜1
90℃が適当である。また、2−シアノ−5−フルオロ
フェノ−ルは常圧下で浴温80℃付近から昇華し、減圧
下では更に低い温度で昇華させることができ、これらの
圧力温度下で上記異性体を昇華分離することができる。 (ロ) アルカリ金属塩法:シアノフルオロフェノールの上
記異性体混合物に、水または有機溶媒中でアルカリ金属
イオン源を添加して一方を金属塩として溶解あるいは析
出させ分離する。
【0026】上記アルカリ金属塩法において、異性体の
一方を水中に金属塩として溶解させる場合は、まず両異
性体の混合物を所要量の熱水に添加して水溶液またはス
ラリーとし、その後、苛性アルカリを添加するとフェノ
ール水酸基の酸性度の違いから、2−シアノ−5−フル
オロフェノ−ルが優先的にフェノール塩を形成する。フ
ェノール塩は水溶性のため、適宜冷却し濾過することに
より、そのほぼ全量が濾液から回収される。一方、4−
シアノ−3−フルオロフェノ−ルは冷却時に水難溶性で
あるから、上記濾過の際に結晶として分離できる。苛性
アルカリとしては水酸化アルカリまたは炭酸アルカリ、
例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いるこ
とができる。苛性アルカリの添加量は2−シアノ−5−
フルオロフェノ−ル含量の0.7〜1.5倍モル相当が
適当であり、好ましくは0.9〜1.2倍モル相当が良
い。
【0027】さらに、上記アルカリ金属塩法において、
異性体の一方を有機溶媒から金属塩として析出させる場
合にも、両異性体の有機溶媒溶液に金属アルコキシド等
のアルカリ金属イオン源を添加すると、2−シアノ−5
−フルオロフェノ−ルが優先的にフェノール塩を形成し
析出し、濾液には4−シアノ−3−フルオロフェノ−ル
が残る。ここで、有機溶媒としては、両異性体と反応せ
ず金属アルコキシドと容易に反応しないものであればよ
い。例えば、エタノール、メタノールなどのアルコール
を用いることができる。アルカリ金属イオン源としては
苛性アルカリ/有機溶媒も利用できるが、水の生成によ
り2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル金属塩の溶解度
が高くなってしまうので、金属アルコキシドを用いるこ
とが好ましい。その種類は特に限定されないが、例え
ば、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等を
用いることができる。金属アルコキシドは粉末のまま添
加してもよいが、一般的には対応するアルコールの溶液
として加えるのが好ましい。
【0028】上記アルカリ金属塩法で得たフェノ−ル塩
は、いずれも酸を添加することにより2−シアノ−5−
フルオロフェノ−ルに戻すことができる。また、分離さ
れた4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルは再結晶によ
りさらに純度を高めることができる。また、この場合、
フェノール塩の形成の後、ハロゲン化アルキルやアルキ
ル硫酸等のアルキル化剤またはシリル化剤を用いて、フ
ェノール塩をアルコキシまたはシリル化合物に転化し、
通常の方法により他の異性体(遊離のフェノールとして
存在)から分離してもよい。
【0029】
【発明の効果】本発明の製造方法では、2,4−ジフル
オロベンゾニトリルを出発物質として2段階でシアノフ
ルオロフェノールを得ることができる。得られたシアノ
フルオロフェノールは2−シアノ−5−フルオロフェノ
ールと4−シアノ−3−フルオロフェノールとの混合物
であるが、本発明によれば、生成過程で生じる異性体の
生成比率を制御して目的化合物の中間体を優位に生成で
きるので、効率良く、高純度でそれぞれの化合物を得る
ことができる。特にアルコキシ化の反応条件によっては
4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルを大幅に
優先的に生成することができるので、4−シアノ−3−
フルオロフェノールを効率良く得ることができる。ま
た、従来の製造方法と異なり、2,4−ジクロロベンゾ
ニトリルを出発原料とし、有毒なシアン化物を用いる必
要がないため、工業的に安全にかつ簡便に製造すること
が可能である。
【0030】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。実施例1 (アルコキシ化工程) 撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えた
フラスコ中に、2,4−ジフルオロベンゾニトリル9
7.3g(0.7 モル)とメタノール194.6gを仕込
み還流撹拌させた。これに28%ナトリウムメトキシド
メタノール溶液を滴下して、1時間反応させた。反応
後、メタノールを留去し、冷却後、ジクロロメタン約2
00mlを加え、アルコキシ化に際して副生したフッ化ナ
トリウムを濾別した。濾液を濃縮してフルオロメトキシ
ベンゾニトリル混合物105.7gを得た。この混合物
をガスクロマトグラフィにより分析したところ、2−フ
ルオロ−4−メトキシベンゾニトリルが56.4%、4
−フルオロ−2−メトキシベンゾニトリルが37.6%
含まれていることが確認された。
【0031】実施例2 アルコキシドの種類または濃度、溶媒の種類および滴下
温度を代えた他は実施例1と同様にしてフルオロアルコ
キシベンゾニトリル混合物を製造した。条件および結果
を表1に示す。なお、異性体生成比は実施例1と同様に
ガスクロマトグラフィによる面百値より求めた。
【0032】
【表1】
【0033】表1に示すように、溶媒としてアルコール
を用いることにより、2−フルオロ−4−アルコキシベ
ンゾニトリルの生成比を高めることができる。一方、ベ
ンゼンやイソプロピルエーテル(IPE) を溶媒として用い
ることにより、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニ
トリルの生成比を高めることができ、この場合、4−フ
ルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成比は2−
フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの約2倍以上
である。なお、アルカリ金属をNaからLiに変えても
ほぼ同じ結果が得られる。さらに、K塩のアルコキシド
を用いても、2−フルオロ−4−メトキシベンゾニトリ
ルの選択性は低下するが、全体の傾向は変わらない。本
実施例ではエチル基およびメチル基を有する金属アルコ
キシについての結果を示したが、他のアルキル基を始め
とする炭化水素基を有する金属アルコキシを用いても同
様の傾向が認められる。
【0034】実施例3(エーテル開裂・加水分解工程) 撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えた
フラスコ中に、実施例1で得た2−フルオロ−4−メト
キシベンゾニトリル(56.4%)と4−フルオロ−2−メ
トキシベンゾニトリル(37.6%)の混合物105.7g
を仕込み、これにトルエン528.5gおよび無水塩化
アルミニウム102.8gを加えて110〜120℃に
加熱し、15時間撹拌還流した。反応後、水を加えて錯
体を加水分解した後、有機層を水洗して中性とし、減圧
下に溶媒を留去した。この濃縮物を159℃に加熱して
真空蒸留(20torr)した。留出液として2−シアノ−5−
フルオロフェノール31.9gを得、釜残渣として4−
シアノ−3−フルオロフェノール49.2gを得た。こ
れら異性体のIRによる測定結果を表2に示した。ま
た、これらをガスクロマトグラフィにより分析したとこ
ろ、前者の純度は99%以上であり、後者の純度は99
%以上であった。
【0035】
【表2】
【0036】実施例4(異性体の分離精製工程) 実施例3に記載の方法により脱メチル化して得た両異性
体の濃縮混合物91.1gを撹拌機、還流冷却機、温度
計および滴下ロートを備えたフラスコに入れ、水36
4.4gを加えて加熱溶解し、約80℃で10%水酸化
ナトリウム水溶液106.4gを添加した後、5℃まで
に冷却して析出した結晶を濾過分取、水洗し、これを6
0℃で24時間乾燥し白色結晶の4−シアノ−3−フル
オロフェノール46.5gを得た。これをガスクロマト
グラフィにより分析したところ純度98%以上であっ
た。
【0037】実施例5 実施例3に記載の方法により脱メチル化して得た両異性
体の濃縮混合物91.1gを撹拌機、還流冷却機、温度
計および滴下ロートを備えたフラスコに入れ、メタノー
ル91.1gを加えて溶解し約5℃に冷却した。これ
に、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液54.
0gを約30分要して滴下する。このスラリーに塩化メ
チレン455gを加えさらに5℃で1時間冷却した後、
吸引濾過して2−シアノ−5−フルオロフェノールのナ
トリウム塩を得た。このナトリウム塩を約150mlの
水に溶解し、濃塩酸44gを加えて酸性化して析出した
結晶を吸引濾過、水洗した後、60℃で24時間乾燥し
て純度99%以上の2−シアノ−5−フルオロフェノー
ル32.8gを得た。また、初めのメタノール−塩化メ
チレン濾液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣を、濃塩酸
2.8gを含む水638mlから再結晶して純度99%
以上の4−シアノ−3−フルオロフェノール49.2g
を得た。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリ
    ル: 【化1】 を金属アルコキシド(RO)n M(式中、Rは炭化水素
    基、Mは金属原子、nはMの価数)またはアルカリ共存
    下にアルコールROH(式中、Rは前記と同じ)と反応
    させて式II: 【化2】 のフルオロアルコキシベンゾニトリルの混合物(式中、
    Rは前記に同じ)とし、この混合物にエーテル開裂・加
    水分解処理を施すことにより式III : 【化3】 のシアノフルオロフェノールの混合物とし、この混合物
    から各異性体を分離精製して4−シアノ−3−フルオロ
    フェノ−ルまたは2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル
    を得ることを特徴とするシアノフルオロフェノ−ルの製
    造方法。
  2. 【請求項2】 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリ
    ルを有機溶媒中でアルコキシ化して式IIのエーテル混合
    物を生成する際に、有機溶媒の種類に応じて4−シアノ
    −3−フルオロフェノ−ルまたは2−シアノ−5−フル
    オロフェノ−ルの生成比率を制御する請求項1に記載の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリ
    ルをアルコール系の有機溶媒中でアルコキシ化すること
    により2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの
    生成比率を高めて4−シアノ−3−フルオロフェノ−ル
    を得る請求項2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリ
    ルをエーテル類ないしベンゼン中でアルコキシ化するこ
    とにより4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリル
    の生成比率を高めて2−シアノ−5−フルオロフェノ−
    ルを得る請求項2に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記式III のシアノフルオロフェノール
    混合物を加熱し、蒸留または昇華によって異性体を分離
    する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記式III のシアノフルオロフェノール
    混合物に水または有機溶媒および金属陽イオン源を添加
    することにより異性体のうち一方を金属塩として分離す
    る請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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