【発明の詳細な説明】
トランスジェニック顕花植物
本発明は、一般に、トランスジェニック顕花植物に関する。さらに詳しくは、
本発明は、フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼを発現できるように遺伝
的に変更され、これによりフラボノイド経路における中間体の操作を可能とする
、トランスジェニックのバラ、カーネーションおよびキク植物に関する。
花弁の産業は、病気および病原体への耐性から改変された花序にわたる改良さ
れた特性をもつ、新しくかつ異なる品種の顕花植物を開発するために努力してい
る。古典的な品種改良技術は多少の成功をもって使用されてきているが、このア
プローチは特定の種の遺伝子プールの拘束により制限されてきた。例えば、有色
の品種の完全なスペクトルを有することは、単一の種について稀である。したが
って、所望の特性を示すトランスジェニック植物を発生させる試みに対して実質
的な努力が払われてきた。主要な切り花の種、例えば、バラ、カーネーションお
よびキクの青色の品種の開発は、切り花および観賞植物の両方のマーケットにお
いて有意な機会を提供するであろう。
花の色は主として2種類の色素:フラボノイド類およびカロテノイド類によっ
ている。フラボノイド類は黄色から赤色から青色の色の範囲に寄与する。カロテ
ノイド類はオレンジ色または黄色の色合いを付与し、そして一般に黄色またはオ
レンジ色の花の唯一の色素である。花の色の主要な寄与を構成するフラボノイド
分子は、シアニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、ペオニジン、マルビジン
およびペラルゴニジンのグリコシル化誘導体であるアントシアニン
類であり、そして液胞の中に位置する。異なるアントシアニン類は色の顕著な差
を生成することができる。花の色はまた、無色のフラボノイド類とのコピグメン
ト化、金属との錯体形成、グリコシル化、アシル化、メチル化および液胞のpHに
より影響を受ける(Forkmann,1991)。
フラボノイド色素のための生合成経路(以後「フラボノイド経路」と呼ぶ)は
よく確立されており、そして第1図に示す(EbelおよびHahlbrock,1988;Hahlb
rockおよびGriscbach,1979;Wieringおよびde Vlaming,1984;Schramら、1984
;Stafford,1990)。この経路において最初の行われるステップは3分子のマロ
ニル−CoAと1分子のp−クマロイル−CoAとの縮合反応を含む。この反応は酵素
カルコンシンターゼ(CHS)により触媒される。この反応の生成物の2′,4,
4′,6′−テトラヒドロキシカルコンは、通常、酵素カルコンフロバノンイソ
メラーゼ(CHI)により急速に異性化されてナリンゲニンを生成する。ナリンゲ
ニンは引き続いて中央の環の3位においてフラバノン3−ヒドロキシラーゼ(F3
H)によりヒドロキシル化されて、ジヒドロケンフェロール(DHK)を生成する。
ジヒドロケンフェロールのB環は、3′、または3′と5′の両方の位置にお
いてヒドロキシル化されて、それぞれ、ジヒドロケルセチン(DHQ)およびジヒ
ドロミリセチン(DHM)を生成する。この経路に関係する2つの主要な酵素はフ
ラボノイド3′−ヒドロキシラーゼおよびフラボノイド3′,5′−ヒドロキシ
ラーゼである。フラボノイド3′−ヒドロキシラーゼはDHKに作用してDHQを生成
し、そしてナリンゲニンに作用してエリオジクチオールを生成する。フラボノイ
ド3′,5′−ヒドロキシラーゼ(以後3′,5′−ヒドロキシラーゼと呼ぶ)
は、ナリンゲニンおよびDHKの3′および5′位、並びにエリオジクチオールお
よびDHQの5′位のヒドロキ
シル化を触媒する広いスペクトルの酵素であり(StotzおよびForkmann,1982)
、両方の場合において、それぞれ、ペンタヒドロキシフラバノンおよびDHMを生
成する。アントシアニン類のB環のヒドロキシル化のパターンは花弁の色の決定
において重要な役割を演ずる。
前述の遺伝子プールの拘束のために、主要な切り花の多くは3′,5′−ヒド
ロキシラーゼを欠如し、従ってそうでなければ可能である色の範囲を表示するこ
とができない。これは特にバラ、カーネーションおよびキクの場合であり、これ
らは世界中の切り花のマーケットの主要な比率を構成する。したがって、植物、
特にバラ、カーネーションおよびキクを変更して、3′,5′−ヒドロキシラー
ゼを生成し、これによりDHKの代謝、ならびに他の基質、例えば、DHQ、ナリンゲ
ニンおよびエリオジクチオールの代謝を変更する手段を提供できるトランスジェ
ニック植物を作出することが要求されている。このような変更はアントシアニン
類のヒドロキシル化のパターンに影響を及ぼし、そしてデルフィニジンから誘導
されるアントシアニン類の生産を可能とし、これにより花弁の色を変更しそして
単一の種が花の色のより広いスペクトルを発現できるようにする。高いレベルの
デルフィニジン由来アントシアニン類を生産するトランスジェニック植物を作出
することが特に要求されている。
本発明によれば、遺伝子構成体を発生させ、そして同一種の非トランスジェニ
ック植物に比べて高いレベルのデルフィニジンおよび/またはその誘導体を発現
するトランスジェニック植物をつくるために使用する。これらの高いレベルのデ
ルフィニジンおよび関係する分子の生産は、変更された開花特性を示すある範囲
の植物を作出する場合に特に有用である。
したがって、本発明の1つの面は、フラボノイド3′,5′−ヒ
ドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドを生産し、そして同一のそれぞれの種
の非トランスジェニック植物に比べて高いレベルのデルフィニジン由来アントシ
アニン類を生産する、バラ、カーネーションおよびキクから選択されるトランス
ジェニック植物またはその後代に関する。
さらに詳しくは、本発明は、フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼ活性
を有するポリペプチドを発現し、そして同一のそれぞれの種の非トランスジェニ
ック植物に比べて高いレベルのデルフィニジンおよび/またはデルフィニジンの
誘導体を生産する、バラ、カーネーションおよびキクから選択されるトランスジ
ェニック植物またはその後代に関する。
好ましくは、ポリペプチドはペチュニア、バーベナ、デルフィニウム、ブドウ
、アイリス、フリージア、アジサイ、シクラメン、ジャガイモ、三色スミレ、ナ
ス、トルコギキョウまたはカンパネラ起源のものである。
好ましくは、ポリペプチドはフラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼであ
り、そして最も好ましくはペチュニアの3′,5′−ヒドロキシラーゼである。
本発明の遺伝子構成体は、3′,5′−ヒドロキシラーゼをコードする配列を
コードする核酸分子を含みそして必要に応じて追加の配列、例えば、トランスジ
ェニック植物中で前記分子の発現を可能とするプロモーターおよびターミネータ
ー配列を含む。遺伝子構成体がDNAである場合、それはcDNAまたはゲノムDNAであ
ることができる。好ましくは、DNAは植物のゲノムの中に組込まれて本発明のト
ランスジェニック植物を生産することができるキメラ遺伝子構成体を含んでなる
バイナリーベクターの形態である。キメラ遺伝子構成体はCHSのような植物プロ
モーターを有することができるが、あ
るいは3′,5′−ヒドロキシラーゼの遺伝子配列は発現を増強しそしてデルフ
ィニジンおよび/またはその誘導体のレベルの増加に導くように修飾することが
できる。CHSプロモーターは、フラボノイド経路における植物プロモーターであ
りそしてプロモーターの下流の遺伝配列の高いレベルの発現を指令するので、特
に便利である。最も好ましいバイナリーベクターはpCGP484,pCGP485,pCGP628
,pCGP653およびpCGP1458である。
「核酸分子」とは、ここにおいて使用するとき、3′,5′−ヒドロキシラー
ゼのアミノ酸配列を特定するヌクレオチド塩基の隣接する列を意味する。核酸は
全長の酵素またはその機能的誘導体をコードすることができる。「誘導体」とは
、天然に存在する酵素に対して、任意の単一または複数のアミノ酸の置換、欠失
および/または付加を意味する。これに関して、核酸は3′,5′−ヒドロキシ
ラーゼをコードする天然に存在するヌクレオチド配列を包含するか、あるいは前
記天然に存在する配列に対する単一または複数のアミノ酸の置換、欠失および/
または付加を含有することができる。用語「類似体」および「誘導体」はまた、
3′,5′−ヒドロキシラーゼの任意の機能的化学的同等体に拡張され、前記核
酸分子の唯一の要件は、本発明に従いトランスジェニック植物を生産するために
使用するとき、前記トランスジェニック植物が次の性質の1または2以上を示す
ことである:
(i)3′,5′−ヒドロキシラーゼ特異的mRNAの生産;
(ii)3′,5′−ヒドロキシラーゼタンパク質の生産;
(iii)デルフィニジンおよび/またはその誘導体の生産;および/または
(iv)改変された花序。
さらに詳しくは、前記トランスジェニック植物は次の性質の1また
は2以上を示す:
(i)非トランスジェニックの内因性レベルを超えた増加したレベルの3′,
5′−ヒドロキシラーゼ特異的mRNA
(ii)3′,5′−ヒドロキシラーゼのタンパク質の増加した生産;
(iii)非トランスジェニックの内因性レベルを超えた増加したレベルのデル
フィニジンおよび/またはその誘導体の生産;および/または
(iv)改変された花序。
ここにおいて使用する核酸分子は単独で、あるいはベクター分子および好まし
くは発現ベクターと組み合わせて存在することができる。このようなベクター分
子は真核細胞および/または原核細胞の中で複製および/または発現することが
できる。好ましくは、ベクター分子またはその部分は植物ゲノムの中に組込まれ
ることができる。核酸分子は、さらに、前記組込みを促進するときに有用な配列
および/または植物細胞の中の核酸分子の発現を指令することができるプロモー
ター配列を含有することができる。核酸分子およびプロモーターは、任意の数の
手段、例えば、エレクトロポレイション、パーティクルガンまたはアグロバクテ
リウム(Agrobacteriumu)仲介転移により細胞の中に導入することができる。
本発明によれば、3′,5′−ヒドロキシラーゼをコードする核酸分子は、バ
ラ、カーネーションおよびキクから成るリストから選択されるトランスジェニッ
ク植物の中に導入しそしてその中で発現させ、これによりDHKおよび/または他
の適当な基質をアントシアニン類のアントシアニン誘導体、例えば、ペチュニジ
ン、マルビジンおよび殊にデルフィニジンに変換する手段を提供することができ
る。これらのアントシアニン類の生産は青色または青色様の色の種
々の色彩の生成に寄与することができるか、あるいはそうでなければペラルゴニ
ジン、シアニジンおよびペオニジンおよびそれらの誘導体からデルフィニジンお
よびその誘導体に向けることによって花の色を変更することができる。植物の中
の核酸配列の発現は構成的、誘導可能または発生に依存性であることができる。
「改変された花序」という表現は、花弁の間の通常の変動を考慮して天然に存在
する花の色に対する花の色の任意の変更を意味する。好ましくは、改変された花
序は非トランスジェニック植物におけるそれらと異なる青、紫またはピンクの着
色の種々の色彩の生成を包含する。
本発明は、また、非トランスジェニック植物の内因性レベルを超えた増加した
レベルのデルフィニジンおよび/またはその誘導体の生産を示すトランスジェニ
ック顕花植物を生産する方法に関し、前記方法はバラ、カーネーションおよびキ
クから成るリストから選択される植物の細胞の中に、3′,5′−ヒドロキシラ
ーゼをコードする配列をコードする核酸分子を、前記核酸分子の究極的発現を可
能とする条件下に導入し、前記細胞からトランスジェニック植物を再生し、そし
て前記トランスジェニック植物を核酸分子の3′,5′−ヒドロキシラーゼ酵素
への発現を可能とするために十分な時間かつ条件下に成長させることからなる。
本発明は、また、バラ、カーネーションおよびキクから選択されるトランスジェ
ニック植物を生産する方法に関し、この方法は前記植物の中にフラボノイド3′
,5′−ヒドロキシラーゼをコードする核酸配列を含有する遺伝子構成体を導入
することからなり、前記トランスジェニック植物は同一のそれぞれの種の非トラ
ンスジェニック植物に比べて高いレベルのデルフィニジン由来アントシアニンを
生産することを特徴とする。
好ましい態様において、トランスジェニック顕花植物は増加した
レベルのデルフィニジンの生産と一致する改変された花序の性質を示し、そして
改変された花序は受容体植物の生理的条件に依存して青色の花または青色がかっ
た色彩の生成を包含する。ある種の植物の種において、「高pH系」を選択するこ
とが好ましく、これは平均の花弁の液胞pHより高いpHを有する品種として定義さ
れる。組換え3′,5′−ヒドロキシラーゼまたはその変異体および誘導体の起
源は、ペチュニア、バーベナ、デルフィニウム、ブドウ、アイリス、フリージア
、アジサイ、シクラメン、ジャガイモ、三色スミレ、トルコギキョウ、カンパネ
ラおよびナスを包含する。
結局、本発明は、3′,5′−ヒドロキシラーゼを表す核酸分子のすべてまた
は一部分および/またはそれらの任意の相同体または関係する形態を含有するト
ランスジェニックのバラ、カーネーションおよびキク植物および特に増加した3
′,5′−ヒドロキシラーゼ特異的mRNAおよび/またはデルフィニジンの増加し
た生産および/または改変された花序を示すトランスジェニック植物に拡張され
る。したがって、トランスジェニック植物は3′,5′−ヒドロキシラーゼ酵素
をコードするヌクレオチド配列を含む安定に導入された核酸分子を含有する。本
発明は、また、このようなトランスジェニック植物の後代に拡張され、そしてま
たその生殖材料(例えば、種子)に拡張される。このような種子は、殊に有色の
場合、なかでも植物の登録標識として有用であろう。
次の非限定的図面および実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
図面において、
第1(A)図および第1(B)図は、フラボノイド色素のための生合成経路の
概略的表示である。この経路の最初の部分に関係する酵素は次の通りである:PA
L=フェニルアラニンアンモニア−リア
ーゼ;C4H=シンナメート4−ヒドロキシラーゼ;4CL=4−クマレート;CoAリ
ガーゼ;CHS=カルコンシンターゼ;CHI=カルコンフロバノンイソメラーゼ;F3
H=フラバノン3−ヒドロキシラーゼ;DFR=ジヒドロフラボノール−4−リダク
ターゼ;UFGT=UDP-グルコース;フラボノイド−3−O−グリコシルトランスフ
ェラーゼ。後のステップはペチュニア・ハイブリダ(P.hybrida)の花におい
て起こることができる変換に相当しそして次のものを包含する:I=シアニジン
−3−グルコシドおよびデルフィニジン−3−グルコシドのグリコシル残基への
ラムノース糖の付加;2=アシル化および5−O・グリコシル化;3=3′メチ
ル化;4=5′メチル化;5=3′5′メチル化。
第2図は、その構成を実施例3に記載するバイナリー発現ベクターpCGP812の
ダイアグラム表示である。Gent=ゲンタマイシン耐性遺伝子;LB=左ボーダー;
RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシンシホスホトランスフェラーゼIIのための
発現カセット;GUS=β−グルクロニダーゼコーディング領域。キメラ遺伝子の
インサートは示す通りであり、そして実施例3に記載されている。制限酵素部位
は印されている。
第3図は、その構成を実施例4に記載するバイナリー発現ベクターpCGP485の
ダイアグラム表示である。Gent=ゲンタマイシン耐性遺伝子;LB=左ボーダー;
RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシンシホスホトランスフェラーゼIIのための
発現カセット。キメラ遺伝子のインサートは示す通りであり、そして実施例4に
記載されている。制限酵素部位は印されている。
第4図は、その構成を実施例5に記載するバイナリー発現ベクターpCGP628の
ダイアグラム表示である。Gent=ゲンタマイシン耐性遺伝子;LB=左ボーダー;
RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシン
シホスホトランスフェラーゼIIのための発現カセット。キメラ遺伝子のインサー
トは示す通りであり、そして実施例5に記載されている。制限酵素部位は印され
ている。
第5図は、その構成を実施例6に記載するバイナリー発現ベクターpCGP653の
ダイアグラム表示である。Gent=ゲンタマイシン耐性遺伝子;LB=左ボーダー;
RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシンシホスホトランスフェラーゼIIのための
発現カセット。キメラ遺伝子のインサートは示す通りであり、そして実施例6に
記載されている。制限酵素部位は印されている。
第6図は、その構成を実施例7に記載するバイナリー発現ベクターpCGP484の
ダイアグラム表示である。Gent=ゲンタマイシン耐性遺伝子;LB=左ボーダー;
RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシンシホスホトランスフェラーゼIIのための
発現カセット。キメラ遺伝子のインサートは示す通りであり、そして実施例7に
記載されている。制限酵素部位は印されている。
第7図は、その構成を実施例8に記載するバイナリー発現ベクターpCGP1458の
ダイアグラム表示である。nptI=ネオマイシンシホスホトランスフェラーゼI耐
性遺伝子;LB=左ボーダー;RB=右ボーダー;nptII=ネオマイシンシホスホト
ランスフェラーゼIIのための発現カセット。キメラ遺伝子のインサートは示す通
りであり、そして実施例8に記載されている。制限酵素部位は印されている。
第8図は、pCGP628で形質転換したロイアルティ(Royalty)カルス組織のサザ
ンハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィーの表示の写真を示す。ゲノ
ムDNAをEcoRIで消化し、そしてHflcDNAの720bpのEcoRV内部断片でプロービング
した。陰性対照(N)はpCGP293で形質転換したロイアルティカルス組織である
。陽性対照(H)は10pgのHfl断片を含有する。矢印は形質転換された植物
において期待される2kbのEcoRI断片を示す。
第9図はpCGP484で形質転換したクリサンテナム(Chrysanthemum)cv.ブルー
・リッジ(Blue Ridge)植物のサザンハイブリダイゼーションのオートラジオグ
ラフィーの表示の写真を示す。ゲノムDNAをXbaIで消化し、これは2.3kbのHfl-PL
TP断片を解放し、そしてHflcDNAを含有する、pCGP602から解放された1.8kbのFsp
I/BspHI断片でプロービングした。陰性対照(N)は形質転換しないブルー・リ
ッジ植物から単離されたゲノムDNAである。陽性対照(P)はXbaIで消化したpCG
P485のプラスミドDNAである。矢印は形質転換された植物において期待される2.3
kbの生成物を示す。
実施例1
材料
エリオジクチオール(Eriodictyol)およびジヒドロケルセチンをカール・ロ
ス(Carl Roth)KGから入手しそしてナリンゲニンをシグマ(Sigma)から入手し
た。ジヒドロミリセチンをミリセチン(Extra Synthese、フランス国)からVerc
ruysseら(1985)の方法により化学的に合成した。〔3H〕−ナリンゲニン(5.7
Ci/mM)および〔3H〕−ジヒドロケルセチン(12.4Ci/mM)をアマーシャム(A
mersham)から入手した。すべての酵素は商業的源から入手し、そして製造業者
の推奨に従い使用した。
使用した大腸菌(Escherichia coli)株は次の通りであった:DH5α supE
44,Δ(lacZYA-ArgF)U169,φ80 lacZ ΔM15,hsdR17(rk−,mk+),
recAl、endAl,gyrA96,thi−1,relAl,deoR。(Hanahan,1983およびBRL,19
86)。
ディスアームド(disarmed)アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agroba cterium
tumefaciens)株AGLO(Lazoら、1991)お
よびLBA4404(Hockemaら、1983)を、それぞれ、R Ludwig博士(カリフォルニア
大学、生物学部、米国サンタクルズ)およびカルジーン・インコーポレーテッド
(Calgone,Inc.)カリフォルニア州、米国、から入手した。
アームド(armed)アグロバクテリウム・ツメファシエンス株ICMP8317をRicha
rd Gardner博士(オークランド大学、細胞および分子生物学部、遺伝子技術セン
ター、ニュージーランド国)から入手した。
クローニングベクターpBluescrptはストラタジーン(Stratagene)から入手し
た。
植物を特殊化成長室の中で14時間の昼間の長さで10,000ルックスの最小光強度
および22〜26の温度において成長させた。
実施例2
pCGP90の構築
pCGP602(国際特許出願PCT/AU92/00334号;公開番号WO93/01290号)からの
cDNAインサートをセンスの向きでpCGP293のMacプロモーター(Comaiら、1990)
の背後でクローニングすることによって、プラスミドpCGP90を構築した。
バイナリー発現ベクターpCGP293はTiバイナリーベクターpCGN1559(McBrideお
よびSummerfelt,1990)から誘導した。プラスミドpCGN1559をKpnIで消化し、そ
して突出した3′末端をT4DNAポリメラーゼで標準のプロトコール(Sambrookら
、1989)に従い除去した。次いで、このベクターをXbaIでさらに消化し、そして
生ずる5′突出をDNAポリメラーゼIのクレノー断片で修復した。次いでこのベ
クターを再結合してpCGP67を得た。Macプロモーター、masターミネーターおよび
種々のクローニング部位を含有する1.97kbのPstI断片(Comaiら、1990)をpCGP4
0から単離し、そしてpCGP67のP
st
I部位に挿入してpCGP293を得た。
pCGN7334からBamHI−SacI断片としてGUS遺伝子(Jeffersonら、1987)を除去
し、そしてそれをマルチクローニング部位を含むpBluescribe M13からのBamHI−Sac
I断片と置換することによって、プラスミドpCGP40を構成した。キメラMac-GU
Smas遺伝子を含有する断片をpCGN7329(Comaiら、1990)のXhoI部位の中に挿入
することによって、プラスミドpCGN7334(Calgene,Inc.,米国カリフォルニア
州、から入手し)を構築した。
次いで、前述cDNAインサートを含有するBamHI−KpnI断片をpCGP602から単離し
、そしてpCGP293のBamHI−KpnI断片と結合した。pCGP90の中のインサートの正し
い挿入は、ゲンタマイシン耐性形質転換体から単離したDNAの制限分析により確
立された。
実施例3
pCGP812の構築
バイナリー発現ベクターpCGP812はTiバイナリーベクターpCGN1558(McBrideお
よびSummerfelt,1990)から誘導した。キメラmas-35S-GUS-ocs遺伝子を含有す
る5.2kbのXhoI断片をpKIWI101(JannsenおよびGardner,1989)から単離し、そ
してpBliescript KSのXhoIの中にサブクローニングしてpCGP82を得た。次いで、
5.2kbの断片をHindIII/KpnI消化により再結合し、そしてpCGN1558のHindIII/K pn
I部位の中にサブクローニングしてpCGP83を得た。
プラスミドpCGP83をKpnIで制限酵素処理し、そして突出した3′末端を標準の
プロトコール(Sambrookら、1989)に従いT4DNAポリメラーゼで除去した。次い
で、SmaI−BamHIアダプター(Pharmasia)を平滑化したKpnI部位に結合してBamH
I「粘着」末端を得た。pCGP807(後述する)からのキメラMac-Hf1-mas遺伝子を
含有する3.8kbのBglII断片をpCGP83のBamHI「粘着」末端と結合してpCGP
812を生成した(第2図)。
pCGP602からの前述のHflcDNAを含有する1.8kbのBamHI−KpnI断片をpCGP40のBa m
HI−KpnI末端と結合することによって、プラスミドpCGP807を構築した。
実施例4
pCGP485の構築
バイナリー発現ベクターpCGP485はTiバイナリーベクターpCGN1547(McBrideお
よびSummerfelt,1990)から誘導した。(i)キンギョソウのCHS遺伝子からの
プロモーター配列;(ii)ペチュニアからのpCGP602からの前述のcDNAインサー
トのコーディング領域、および(iii)ペチュニアのリン脂質トランスフェラー
ゼのタンパク質(PLTP)ターミネーター配列から成るキメラ遺伝子を構成した。
CHSプロモーターは、翻訳開始の部位の5′の1.2kbの遺伝子断片から成る(Somm
erおよびSaedler,1986)。ペチュニアのcDNAインサートは、pCGP602のcDNAクロ
ーンからの1.6kbのBclI/FspI断片から成る(国際特許出願PCT/AU92/00334号
;公開番号WO93/01290)。PLTPターミネーター配列はpCGP13ΔBam(Holton,19
92)からの0.7kbのSmaI/XhoI断片から成り、これはPLTP遺伝子の転写された領
域の150bpの未翻訳範囲を含む。キメラCHS/cDNAインサート/PLTP遺伝子をpCGN
1547のPstI部位の中にクローニングしてpCGP485を構築した。
実施例5
pCGP628の構築
プラスミドpCGP176(国際特許出願PCT/AU92/00334号;公開番号WO93/01290
)をEcoRIおよびSpeIで消化した。消化したDNAをクレノー断片で標準のプロトコ
ール(Sambrookら、1989)に従いフィルインし、そして自己連結した。これによ
り得られたプラスミ
ドをpCGP627と表示した。pCGP627のXbaI/KpnI消化物は1.8kbの断片を生成し、
この断片をpCGP293のXbaI/KpnI消化により得られた14.5kbの断片と結合した。
こうしてつくられたプラスミドをpCGP628と表示した。
実施例6
pCGP653の構築
プラスミドpCGP293(実施例2に前述した)をXbaIで消化し、そして生ずる5
′突出を標準のプロトコール(Sambrookら、1989)に従いクレノー断片でフィル
インした。次いでそれをHindIIIで消化した。この手順の間に、Macプロモーター
(Comaiら、1990)を欠失した。pCGP669(後述する)からの0.8kbのペチュニア
のCHS-Aプロモーターをバックボーンの中に平滑末端化したEcoRI/HindIII断片
として結合した。このプラスミド生成物をpCGP672と表示した。
pCGP807(上の実施例3に記載する)のXbaI/Asp718消化はHflcDNAを含有する
1.8kbの断片を生成し、この断片をpCGP672からの16.2kbのXbaI/Asp718断片と結
合した。こうしてつくったプラスミドをpCGP653と表示した。
CHS-A遺伝子のプロモーター断片をPCRにより、プライマーとしてオリゴヌク
レオチドCHSA-782およびCHSA+34(下の配列を参照のこと)および鋳型としてペ
チュニア・ハイブリダ(Pctunia hybrida)V30ゲノムDNAを使用して増幅した。
PCR生成物をddTテイルドpBluescript(HoltonおよびGraham,1991)の中にクロ
ーニングし、そして遺伝子断片の向きを制限酵素地図により評価した。こうして
つくったプラスミドをpCGP669と表示した。オリゴヌクレオチドのプライマーは
、ペチュニアのCHS-Aプロモーターの発表された配列に対して設計した(Koes,
1988)。
実施例7
pCGP484の構築
pCGP484の構築は、実施例4において上に概説した、pCGP485についての構築と
同一であったが、ただしpCGP484は3.5kbのPstI断片(キメラ遺伝子CHS-Hf1-PLTP
を含む)を反対方向に含有した。
実施例8
pCGP1458の構築
プラスミドpCGP1458は、バックボーンとして10kbのバイナリーベクターpBIN19
(Bevan,1984)を使用して構成した。プラスミドpBIN19をEcoRIで消化し、そし
て生ずる突出した5′末端を、標準のプロトコール(Sambrookら、1989)に従い
、クレノー断片を使用してフィルインした。プラスミドpCGP485をPstIで消化し
て、キメラCHS/cDNAインサート/PLTP遺伝子を3.5kbの断片として除去した。Ps t
Iから生ずる3′突出をT4DNAポリメラーゼで除去し、次いでこの断片をプラス
ミドpBIN19のフィルインしたEcoRI部位の中に結合した。
実施例9
大腸菌(E.coli)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスの形質転換
ベクターpCGP812,pCGP90,pCGP485,pCGP628,pCGP653,pCGP484またはpCGP1
458の1つまたは他のものを使用する大腸菌(Escherichia coli)株DH5α−細
胞の形質転換を、標準のプロトコール(Sambrookら、1989)またはInoueら、(1
990)に従い実施した。
50mlのMG/L(GarfinkelおよびNester,1980)培養物を接種しそ
して16時間震盪しながら28℃において増殖させることによって調製した、コンピ
テントアグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞の100μlに、5μgのプラ
スミドDNAを添加することによって、プラスミドpCGP8I2,pCGP90,pCGP485,pCG
P628,pCGP653,pCGP484またはpCGP1458を適当なアグロバクテリウム・ツメファ
シエンス株の中に導入した。次いで、細胞を沈降させ、そして0.5mlの85%(v
/v)100mMのCaCl2/15%(v/v)グリセロールの中に再懸濁させた。DNA-ア
グロバクテリウム混合物を液体N2の中で2分間インキュベートすることによっ
て凍結させ、次いで37℃において5分間インキュベートすることによって融解さ
せた。次いで、このDNA/細胞混合物を氷上にさらに10分間配置した。次いで細
胞を1mlのMG/L培地と混合し、そして震盪しながら16時間28℃においてインキ
ュベートした。pCGP812,pCGP90,pCGP485,pCGP628,pCGP653またはpCGP484を
有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスの細胞を、100μg/mlのゲンタ
マイシンを含有するMG/L寒天プレート上で選択した。pCGP1458を有するアグロ
バクテリウム・ツメファシエンスの細胞を、100μg/mlのカナマイシンを含有
するMG/L寒天プレート上で選択した。プラスミドの存在はゲンタマイシン耐性
形質転換体から単離したDNAのサザン分析により確証された。
実施例10
ジアンサス・カリオフィルス(Dianthus caryophyllus)の形質転換
a.植物の材料
ジアンサス・カリオフィルス(Dianthus caryophyllus)(cv.Crowley Sim.
,Red Sim,Laguna)の挿木を、バン・ウィク・アンド・サン・フラワー・サプ
ライ(Van Wyk and Son Flower Supply)、オーストラリア国ヴィクトリア州、
から入手した。外側の葉を除去
し、そして挿木を短時間70%(v/v)エタノール、次いで1.25%(w/v)次
亜塩素酸ナトリウム(ツイーン20を含む)中で6分間滅菌し、そして無菌の水
で3回すすいだ。すべての見える葉および腋芽を同時培養の前に解剖顕微鏡下に
除去した。
b.アグロバクテリウムおよびジアンサス(Dianthus)組織の同時培養
バイナリーベクターpCGP90,pCGP812,pCGP485またはpCGP653の1つを含有す
るアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGLO(Lazoら、1991)を、100mg/
lのゲンタマイシンを含有するMG/L(GarfinkelおよびNester,1980)寒天培
地上で4℃において維持した。単一のコロニーを液体MG/L培地中で一夜成長さ
せ、そして接種のすぐ前の口に5×108細胞/mlに希釈した。3%(w/v)の
スクロース、5mg/lのα−ナフタレン酢酸(NAA)、20μMのアセトシリンゴ
ンおよび0.8%のディフ・コ・バクト・アガー(Difco Bacto Agar)(pH5.7)を
補充したムラシゲ(Murashige)およびスクーグ(Skoog)(1962)培地(MS)上
で、ジアンサス(Dianthus)組織をアグロバクテリウムと同時培養した。
c.トランスジェニック・ジアンサス(Dianthus)植物の再生
1mg/lのベンジルアミノプリン(BAP)、0.1mg/lのNAA、150mg/lのカナ
マイシン、500mg/lのチカルシリンおよび0.8%のディフコ・バクト・アガー(
Difco Bacto Agar)(選択培地)を補充したMS培地に、同時培養した組織を移し
た。3週後、外植体を新鮮な選択培地に移し、そしてこの段階において茎外植体
からの腋生苗条を除去するように注意を払った。選択培地上で6〜8週後、健康
な不定芽を3%のスクロース、150mg/lのカナマイシン、500mg/lのチカルシ
リン、0.8%のディフコ・バクト・アガー(Difco Bacto Agar)を含有するホル
モン不含MS培地に移した。この段階
において、GUS組織化学的検定(Jefferson,1987)および/またはNPT IIドット
ブロット検定(McDonnellら、1987)を使用してトランスジェニック苗条を同定
した。トランスジェニック苗条を3%のスクロース、500mg/lのチカルシリン
および0.4%(w/v)のゲライト・ゲラン・グム(Gelrite Gellan Gum)(Sch
weizerhall)を補充した含MS培地に根の誘導のために移した。すべての培養物は
16時間の光周期(120μEの冷白色螢光灯)下に23±2℃において維持した。植
物が根を形成し、そして4〜6cmの高さに到達したとき、植物をミスト下に順化
した。養液栽培混合物(KandreckおよびBlack,1984)中で液浸した高い比のパ
ーライト(75%またはそれより大きい)を含有する混合物を順化に使用し、これ
は典型的には4〜5週持続させた。植物を14時間の光周期(200μEのハロゲン
化水銀灯)下に23℃において順化した。
実施例11
ロサ・ハイブリダ(Rosa hybrida)の形質転換
1.ロサ・ハイブリダ(Rosa hybrida)cvロイアルティ(Royalty)
バラ園芸品種ロイアルティ(Royalty)の植物組織を、PCT91/04412、公開番号
WO92/00371に開示されている方法に従い形質転換した。
2.ロサ・ハイブリダ(Rosa hybrida)cvカルディナール(Kardinal)
a.植物材料
カルディナール(Kardinal)の苗条を、バン・ウィク・アンド・サン・フラワ
ー・サプライ(Van Wyk and Son Flower Supply)、オーストラリア国ヴィクト
リア州、から入手した。葉を除去し、そして残りの苗条(5〜6cm)を1.25%(
w/v)次亜塩素酸ナトリウ
ム(ツイーン20を含む)中で5分間滅菌し、次いで無菌の水で3回すすいだ。
単離した苗条の先端を無菌の水中で1時間液浸し、そして同時培養の前に、3%
のスクロース、0.1mg/lのBAP、0.1mg/lのカイネチン、0.2mg/lのジベレリ
ン酸、0.5%(w/v)のポリビニルピロリドンおよび0.2%のゲライト・ゲラン
・ガム(Gelrite Gellan Gum)を含有するMS培地上で2日間前培養した。
b.アグロバクテリウムおよびロサ(Rosa)苗条組織の同時培養
バイナリーベクターpCGP812を含有する、アグロバクテリウム・ツメファシエ
ンスICMP8317(JanssenおよびGardner,1989)およびAGLOを、100mg/lのゲン
タマイシンを含有するMG/L寒天プレート上で4℃において維持した。各アグロ
バクテリウム株からの単一のコロニーを液体MG/L培地中で一夜増殖させた。5
×108細胞/mlの最終濃度を、液体MG/L培地中の希釈の前の日に、調製した。
接種前に、2つのアグロバクテリウム培養物を10:1の比で混合した。(AGLO/
pCGP812:8317/pCGP812)。苗条の茎頂を通して縦方向に切断し、そして混合し
たアグロバクテリウム培養物の2μlの分注物を苗条の茎頂に滴として配置した
。苗条の茎頂を前培養に使用したのと同一の培地上で5日間同時培養した。
バイナリーベクターpCGP1458を含有する、アグロバクテリウム・ツメファシエ
ンスAGLOを、100mg/lのカナマイシンを含有するMG/L寒天プレート上で4℃
において維持した。各アグロバクテリウム株からの単一のコロニーを液体MG/L
培地中で一夜増殖させた。5×108細胞/mlの最終濃度を、液体MG/L中の希釈
の前の日に、調製した。
c.トランスジェニック・ロサ(Rosa)植物の再生
同時培養後、苗条の茎頂を選択培地に移した。苗条の茎頂を3〜4週毎に新鮮
な選択培地に移した。苗条の茎頂に観察されたゴール
を、それらが直径6〜8mmに到達したとき、切除した。単離したゴールを、苗条
の形成のために、3%のスクロース、25mg/lのカナマイシン、250mg/lのセ
フォタキシムおよび0.25%のゲライト・ゲラン・ガム(Gelrite Gellan Gum)を
含有するMS培地に移した。ゴール組織から再生した苗条を単離し、そして選択培
地に移した。GUS組織化学的検定およびカルスの検定を使用して、トランスジェ
ニック苗条を同定した。トランスジェニック苗条を、根の誘導のために、3%の
スクロース、200mg/lのセフォタキシムおよび0.25%のゲライト・ゲラン・ガ
ム(Gelrite Gellan Gum)を含有するマンヅカ・セクスタ(Maduca sexta)培地
に移した。すべての培養物を16時間の光周期(60μEの冷白色蛍光灯)下に23±
2℃において維持した。根系をよく発育させそして苗条が5〜7cmの長さに到達
したとき、トランスジェニックバラ植物を8cmの管中のオートクレーブ処理した
デブコ(Debco)514110/2鉢植混合物に移した。2〜3週後、植物を15cmのポッ
トの中に同一の鉢植え混合物を使用して再び植え、そして23℃において14時間の
光周期(300μEのハロゲン化水銀灯)下に維持した。1〜2週後、鉢植えした
植物をガラス室(日中/夜の温度:25〜28/14℃)に動かし、そして開花まで成
長させた。
実施例12
クリサンテナム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)の形質転換
a.植物材料
クリサンテナム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)(cv.Blue
Ridge,Pnennine Chorus)挿木を、F&Iバグレイ・フラワー・アンド・プラン
ト・グロウワーズ(Baguley Flower and Plant Growers)、オーストラリア国ヴ
ィクトリア州、から入手し
た。葉を挿木から除去し、次いでこれを短時間70%(v/v)エタノール、次い
で1.25%(w/v)次亜塩素酸ナトリウム(ツイーン20を含む)中で3分間滅菌
し、そして無菌の水で3回すすいだ。節間茎切片を同時培養のために使用した。
b.アグロバクテリウムおよびクリサンテナム(Chrysanthemum)組織の同時
培養
バイナリーベクターpCGP90,pCGP484,pCGP485またはpCGP628の1つを含有す
るアグロバクテリウム・ツメファシエンス株LBA4404(Hoekemaら、1983)を、50
mg/lリファンピシンンおよび10mg/lのゲンタマイシンを含有するMG/L寒天
プレート上で成長させた。各アグロバクテリウムからの単一のコロニーを同一液
体培地中で一夜成長させた。これらの液体培養物にグリセロールを10%加え、そ
して1mlの分注物をフリーザー(−80℃)に移した。各凍結したアグロバクテリ
ウムの100〜200μlの分注物を50mg/lのリファンピシンンおよび10mg/lのゲ
ンタマイシンを含有するMG/L中で一夜成長させた。5×108細胞/mlの最終濃
度を、3%(w/v)のスクロースを含有する液体MG/L中の希釈の前の日に、
調製した。茎切片を、LBA4404/pCGP90,LBA4404/pCGP484,LBA4404/pCGP485また
はLBA4404/pCGP628のいずれか1つを含有するアグロバクテリウムと、同時培養
培地上で4日間同時培養した。
c.トランスジェニック・クリサンテナム(Chrysanthemum)植物の再生
同時培養後、茎切片を選択培地に移した。3〜4週後、再生する外植体を新鮮
な培地に移した。カナマイシンの選択に生き残る不定芽を単離し、そしてカナマ
イシンおよびセフォタキシムを含有するMS培地に苗条の伸長および根の誘導のた
めに移した。すべての培養物を16時間の光周期(80μEの冷白色蛍光灯)下に23
±2℃におい
て維持した。カナマイシンで根を形成した植物から葉の試料を集め、そしてサザ
ンブロット分析を使用してトランスジェニック植物を同定した。トランスジェニ
ッククリサンテナム(Chrysanthemum)植物が4〜5cmの長さに到達したとき、
それらを8cmのオートクレーブ処理したデブコ(Debco)514110/2鉢植混合物に
移した。2週後、植物を15cmのポットの中に同一の鉢植え混合物を使用して再び
植え、そして23℃において14時間の光周期(300μEのハロゲン化水銀灯)下に
維持した。2週後、鉢植えした植物を温室(日中/夜の温度:25〜28℃/14℃)
に動かし、そして開花まで成長させた。
実施例13
サザン分析
a.ジアンサス(Dianthus)からのゲノムDNAの単離
DNAを組織から本質的にDellaportaら、(1983)に記載されているように単離
した。DNA調製物をCsCl浮力密度遠心(Sambrookら、1989)によりさらに精製し
た。
b.クリサンテナム(Chrysanthemum)からのゲノムDNAの単離
4.5Mのグアニジウムチオシアネート、50mMのEDTA pH8.0、25mMのクエン酸ナ
トリウムpH7.0、0.1Mの2−メルカプトエタノール、2%(v/v)のラウリル
サルコシンを含有する抽出緩衝液を使用して、DNAを葉組織から単離した。植物
組織を液体N2中で微粉末に粉砕し、次いで抽出緩衝液を添加し(5ml/gの組
織)そしてこの溶液を回転ホイール上で16時間混合した。次いでこの混合物をフ
ェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)で2回抽出し、
そしてゲノムDNAを3体積のエタノールの添加および10,000rpmにおける15分間の
遠心により沈澱させた。
c.ロサ(Rosa)からのゲノムDNAの単離
組織を液体N2の存在下に乳鉢と乳棒で粉砕し、そして1mlの65
℃に加熱した抽出緩衝液(0.14Mのソルビトール、0.22Mのトリス−HCl〔pH8.0
〕、0.022MのEDTA、0.8MのNaCl、0.8%(w/v)のCTAB、1%のN−ラウリ
ルサルコシン)を添加することによって、DNAを抽出した。クロロホルム(200μ
l)を添加し、そしてこの混合物を65℃において15分間インキュベートした。遠
心後、上澄液をフェノール−クロロホルムで抽出し、次いで等しい体積のイソプ
ロパノールに添加し、倒立させて混合した。この混合物を遠心し、そしてペレッ
トを95%エタノールで洗浄し、再遠心し、そして70%エタノールで洗浄した。ペ
レットを真空乾燥し、そして30μlのTE緩衝液(pH8.0)の中に再懸濁させた。
d.サザンブロット
ゲノムDNA(10μg)を16時間60単位のEcoR Iで消化し、そしてTAE(40mMの
トリス−アセテート、50mMのEDTA)緩衝液中で0.7%(w/v)のアガロースゲ
ルを通して電気泳動させた。次いでDNAを変性溶液(1.5MのNaCl/0.5MのNaOH)
中で1〜1.5時間変性し、0.5Mのトリス−HCl(pH7.5)/1.5MのNaCl中で2〜
3時間中和し、次いでDNAをハイボンドN(Amersham)フィルターに20×SSC中で
転写した。
カナマイシンに対する選択後に得られた推定上のジアンサス(Dianthus)、ロ
サ(Rosa)およびクリサンテナム(Chrysanthemum)植物のサザン分析は、ゲノ
ムの中への適当なキメラ遺伝子の組込みを確証した。
実施例14
ノザン分析
a.ジアンサス(Dianthus)およびクリサンテナム(Chrysanthemum)のRNA
液体N2中で凍結しそして乳鉢と乳棒を使用して微粉末に粉砕し
た組織から、全体のRNAを単離した。4Mのグアニジウムイソチオシアネート、5
0mMのトリス−HCl(pH8.0)、20mMのEDTA、0.1%(v/v)のサルコシルの抽出
緩衝液を組織に添加し、そしてこの混合物をポリトロン(polytron)を最大速度
で使用して1分間均質化した。懸濁液をミラクロス(Calbiochem)を通して濾過
し、そしてJA20ローター中で10分間10,000rpmにおいて遠心した。上澄み液を集
め、そして0.2g/mlのCsCl(w/v)とした。次いで、試料を38.5mlのクイッ
ク−シール遠心管(Beckman)中で5.7MのCsCl、50mMのEDTA(pH7.0)の10mlの
クッションの上に層状にし、そしてTi−70ローター中で42,000rpmで23において1
2〜16時間遠心した。ペレットをTE/SDS(10mMのトリス−HCl(pH7.5)、1mMのE
DTA、0.1%(v/v)のSDS)の中に再懸濁させ、そして10mMのEDTA(pH7.5)中
で飽和させたフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)
で抽出した。エタノール沈澱後、RNAペレットをTE/SDSの中に再懸濁させた。
40mMのモルホリノプロパンスルホン酸(pH7.0)、5mMの酢酸ナトリウム、0.1
mMのEDTA(pH8.0)を含有する泳動用緩衝液を使用して、2.2Mのホルムアルデヒ
ド/1.2%(w/v)アガロースを通してRNAの試料を電気泳動させた。RNAを製
造業者が記載するようにハイボンド−Nフィルター(Amersham)に移し、そして32
P標識化cDNA断片(108cpm/μg,2×106cpm/ml)でプロービングした。プ
レハイブリダイゼーション(42℃において1時間)およびハイブリダイゼーショ
ン(42℃において16時間)を、50%(v/v)のホルムアミド、1MのNaCl、1
%(w/v)のSDS、10%の硫酸デキストラン中で実施した。分解したサケ***D
NA(100μg/ml)をハイブリダイゼーションステップのために32P標識化プロ
ーブとともに添加した。
フィルターを2×SSC/1%(w/v)SDS中で65℃において1〜2時間洗浄し
、次いで0.2×SSC/1%(w/v)SDS中で65℃において0.5〜1時間洗浄した。
フィルターをコダックXARフィルムに増感スクリーンを使用して−70℃において4
8時間感光した。
プラスミドpCGP90で形質転換したジアンツス(Dianthus)cv.レッド・シム(
Red sim)のノザン分析は、13植物のうちの8個体が陽性であることを示した。
b.ロサ(Rosa)のRNA
Manning,1991の方法に従い花弁(収穫後5日の芽および花)から、全RNAを抽
出した。
実施例15
DNAプローブの32P標識化
DNA断片(50〜100ng)を50μCiの〔α−32P〕−dCTPでオリゴ標識化キット(
Bresatec)を使用して放射線標識化した。組込まれなかった〔α−32P〕−dCTP
をセファデックスG−50(Fine)カラムのクロマトグラフィーにより除去した。
実施例16
アントシアニジンの分析
HPLC分析の前に、花弁抽出物の中に存在するアントシアニン分子を酸加水分解
して、アントシアニジンのコアからグリコシル部分を除去した。アントシアニン
色素のB環へのヒドロキシル化のパターンを、アントシアニジンのコア分子のHP
LC分析により決定した。この分析において使用したHPLC系は、多波長の検出器(
MWD)を装備したヘウレット−パッカード(Hewlett-Packerd)1050であった。逆
相クロマトグラフィーの分離をスフェリソーブ(Spherisorb)S50DS2キャリッジ
・カラム、250mm×4mmのIDで実施した。
a.アントシアニンおよびフラボノイド類の抽出
1%(v/v)の水性6Mの塩酸を含有する5mlのメタノールを使用して、花
弁セグメント(約50mg)から花の色素を抽出した。抽出液を水(1:9)で希釈
し、そしてHPLC系の中に注入の前に、濾過(Millex HV,0.45μ)した。
b.アントシアニン類の加水分解
上のaにおいて得られた粗製のメタノール抽出液(100μl)を、ピアース・
レアクチ−バイアル(Pierce Reacti-Vial)中で、室温において乾燥窒素の流れ
を使用して蒸発乾固した。残留物を200μlの2MのHCl中に溶解し、バイアルに
蓋をし、次いで100℃で30分間加熱した。加水分解混合物を水(1:9)で希釈
し、そして、HPLC分析前に、濾過(Millex HV,0.45μ)した。
c.クロマトグラフィー
花の色素の分離は、次の系を使用する勾配溶離により実施した:
溶媒A:(トリエチルアミン:濃H3PO4:H2O)(3:2.5:1000)
溶媒B:アセトニトリル
勾配条件:20分にわたって5%B〜40%B
流速:1ml/分
温度:35℃
検出:MWD,280,350および546nmにおける同時のデータの獲得。
アントシアニジンのピークを既知の標準を参照して同定した。花弁抽出物の中
に存在するアントシアニン分子の分析のための別の方法は、Bruglieraら、1994
の中に見出される。
HPLC分析を実施して、プラスミドpCGP90,pCGP485,pCGP484,pCGP628,pCGP6
53又はpCGP1458の1つまたは他のもので形質転換されたカーネーション、キクお
よびバラの試料の中のデルフィニジン、ペラルゴニジンおよびシアニジンの色素
の存在を決定する。トラン
スジェニックカーネーションの花中のpCGP90,pCGP485およびpCGP653の代表的な
データを表1に示す。
実施例17
3′,5′−ヒドロキシラーゼ活性について検定のための植物抽出物の調製
植物組織を10倍体積の氷冷抽出用緩衝液(100mMのリン酸カリウム(pH7.5)、
1mMのEDTA、0.25Mのスクロース、25Mのマンニトール、0.1%(w/v)のBSA
、0.1mg/mlのPMSF、20mMの2−メルカ
プトエタノールおよび10mg/mlのポリクラール(polyclar)AT)中で均質化した
。ホモジネートを13,000rpmでJA20ローター(Beckman)中で4℃において10分間
遠心し、そして上澄み液の一部を3′,5′−ヒドロキシラーゼ活性について検
定した。
3′,5′−ヒドロキシラーゼの検定
3′,5′−ヒドロキシラーゼ活性をstotzおよびForkmann(1982)に記載さ
れている方法の変法により測定した。検定反応混合物は、典型的には、200μl
の最終体積において検定緩衝液(100mMのリン酸カリウム(pH8.0)、1mMのEDTA
および20mMの2−メルカプトエタノール)中に195μlの植物抽出物、5μlの5
0mMのNADPH、および105dpm〔14C〕ナリンゲニンを含有した。23℃において一夜
のインキュベーション後、反応混合物を0.5mlの酢酸エチルで2回抽出した。酢
酸エチル相を真空下に乾燥し、次いで10μlの酢酸エチルの中に再懸濁させた。
次いで、放射線標識化したフラボノイド分子を、セルロースの薄層プレート(Me
rck Art 5577、ドイツ国)上でクロロホルム:酢酸:水(10:9:1,v/v)
溶媒系を使用して分離した。クロマトグラフィーの完結後、TLCプレートを空気
乾燥し、そして反応生成物をオートラジオグラフィーで局在化し、そして反応生
成物に沿って展開しそして紫外線下に可視化した非放射性ナリンゲニン、エリオ
ジクチオール、ジヒドロケルセチンおよびジヒドロミリセチンの標準と比較する
ことによって同定した。
実施例18
種々の園芸品種の形質転換
構成体pCGP90,pCGP812,pCGP628,pCGP485,pCGP653,pCGP484またはpCGP145
8のいずれか1つを含有するキメラ遺伝子を、実施例10,11および12に記載する
ように、アグロバクテリウム仲介遺伝子転移を使用して、バラ、カーネーション
およびキクの植物変種の中
に導入する。植物ゲノムの中への適当なキメラ遺伝子の組込みはカナマイシンの
選択後に得られた植物のサザン分析により確証され、そして上の実施例16に記載
するように、HPLC分析を使用してアントシアニン類の存在を検出する。
首尾よくトランスジェニックとされそして本発明に従い転移遺伝子を発現する
ことができる植物は、3′,5′−ヒドロキシラーゼ活性の生成に必要な遺伝子
を含有しない非トランスジェニック対照と比較して、3′,5′−ヒドロキシル
化アントシアニン類に加えて有意なレベルの3′,5′−ヒドロキシラーゼ酵素
活性を有する(実施例16参照)。
実施例19
カーネーションcv.クロウレイ・シム(Crowley Sim)+pCGP90
プラスミドpCGP90を、実施例10に記載するように、アグロバクテリウム仲介遺
伝子転移を使用して、カーネーションの園芸品種クロウレイ・シム(Crowley Si
m)の中に導入した。植物ゲノムの中の構成体の組込みは、カナマイシン選択後
に得られた植物のサザン分析により確証された。9つの植物をnptIIおよびHf1
遺伝子の存在についてそしてデルフィニジンの生産について検査した。分析した
9つの植物のうちの8つはnptIIおよびHf1の両方について陽性であったが、HPL
C分析はこれらの植物によりデルフィニジンの生産の証拠を検出することができ
なかった(表2参照;「Kan」=カナマイシン)。
実施例20
カーネーションcv.ラグナ(Laguna)+pCGP485
プラスミドpCGP485を、実施例10に記載するように、アグロバクテリウム仲介
遺伝子転移を使用して、カーネーションの園芸品種ラグナ(Laguna)の中に導入
した。植物ゲノムの中の構成体の組込みは、カナマイシン選択後に得られた植物
のサザン分析により確証された。花弁抽出物の中に存在するアントシアニン分子
のHPLC分析を、上の実施例16に記載する手順に従い実施して、3′,5′−ヒド
ロキシル化アントシアニン誘導体の存在を示した。これらの3′,5′−ヒドロ
キシル化アントシアニン類は外因性DNA配列、すなわち、バイナリーベクターpCG
P485を使用する形質転換により導入されたHf1cDNA配列の発現の結果としてのみ
生産される。
実施例21
バラcv.ロイアルティ(Royalty)+pCGP485/pCGP628
プラスミドpCGP485およびpCGP628を、実施例11に記載するように、アグロバク
テリウム仲介遺伝子転移を使用して、カーネーショ
ンの園芸品種ロイアルティ(Royalty)の中に導入した。植物ゲノムの中の構成
体の組込みは、カナマイシン選択後に得られた植物のサザン分析により確証され
た。花弁抽出物の中に存在するアントシアニン分子のHPLC分析を、上の実施例16
に記載する手順に従い実施して、3′,5′−ヒドロキシル化アントシアニン誘
導体の存在を示した。これらの3′,5′−ヒドロキシル化アントシアニン類は
外因性DNA配列、すなわち、バイナリーベクターpCGP485またはpCGP628を使用す
る形質転換により導入されたHf1cDNA配列の発現の結果としてのみ生産される。
実施例22
バラcv.カルディナール(Kardinal)+pCGP1458
プラスミドpCGP1458を、実施例11に記載するように、アグロバクテリウム仲介
遺伝子転移を使用して、バラの園芸品種カルディナールの中に導入した。植物ゲ
ノムの中の構成体の組込みは、カナマイシン選択後に得られた植物のサザン分析
により確証された。花弁抽出物の中に存在するアントシアニン分子のHPLC分析を
、上の実施例16に記載する手順に従い実施して、3′,5′−ヒドロキシル化ア
ントシアニン誘導体の存在を示した。これらの3′,5′−ヒドロキシル化アン
トシアニン類は外因性DNA配列、すなわち、バイナリーベクターpCGP1458を使用
する形質転換により導入されたHf1cDNA配列の発現の結果としてのみ生産される
。
実施例23
cv.ブルー・リッジ(BlueRidge)+pCGP484/pCGP485/pCGP628
プラスミドpCGP484,pCGP485およびpCGP628を、実施例12に記載するように、
アグロバクテリウム仲介遺伝子転移を使用して、クリサンテナム(Chrysanthemu
m)の園芸品種ブルー・リッジ(BlueRidge)の中に導入した。植物ゲノムの中の
構成体の組込みは、カナマイ
シン選択後に得られた植物のサザン分析により確証された。花弁抽出物の中に存
在するアントシアニン分子のHPLC分析を、上の実施例16に記載する手順に従い実
施して、3′,5′−ヒドロキシル化アントシアニン誘導体の存在を示した。こ
れらの3′,5′−ヒドロキシル化アントシアニン類は外因性DNA配列、すなわ
ち、バイナリーベクターpCGP484,pCGP485またはpCGP628を使用する形質転換に
より導入されたHf1cDNA配列の発現の結果としてのみ生産される。
実施例24
改変された花序
トランスジェニック植物における導入されたフラボノイド3′,5′−ヒドロ
キシラーゼ酵素活性の発現は、花の色に対する顕著な作用を有することができる
。トランスジェニック植物における花の組織は、非トランスジェニック対照植物
の淡いピンクおよび赤からより濃いピンク/えび茶色ないし青/紫の色の範囲に
変化することができる。色は、また、ロイアル・ホーティカルチュラル・ソサイ
アティイズ・カラー・チャート(Royal Horticultural Society's Colour Chart
)からの番号により記載することができる。一般に、変化は色が60C/D−65C
/Dの淡いないし中間のピンクの色相から、70と85との間の色の正方形の多数で
あるが、すべてはないものにより表される、より濃いより青い/より紫の色相に
動くように記載することができる。他の生化学的および生理学的条件は個々の結
果に影響を与えそして特定の色の引用は可能な範囲を規定すると解釈すべきでな
いことを思い起こすべきである。
前述のプラスミド構成体pCGP653を使用して生成した、受け入れ番号3655のト
ランスジェニックのカーネーションの花の場合において、花弁への明らかな効果
が観察された。レッド・シム(Red Sim)カーネーションの園芸品種の通常オレ
ンジ−赤の色(ロイアル・ホ
ーティカルチュラル・ソサイアティイズ・カラー・チャート(Royal Horticultu
ral Society's Colour Chart)の45A/Bにほぼ相当する)は青/紫の色相に変
化した。
当業者は理解するように、ここに記載する本発明は特定的に記載したもの以外
の変化および変更が可能である。本発明はすべてのこのような変化および変更を
包含することを理解すべきである。本発明は、また、個々にまたは集合的に、こ
の明細書に言及し、あるいは示したステップ、特徴、組成物および化合物のすべ
て、および前記ステップまたは特徴の任意の2またはそれ以上の任意のおよびす
べての組み合わせを包含する。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年6月29日
【補正内容】
【図1】
【図1】
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年7月4日
【補正内容】
明細書翻訳文第3頁第21行目〜第5頁第7行目の記載「本発明によれば…pCGP
1458である。」を次の通りに補正する。
『本発明によれば、遺伝子構成体を発生させ、そして同一種の非トランスジェ
ニック植物に比べて高いレベルのデルフィニジンおよび/またはその誘導体を発
現するトランスジェニック植物をつくるために使用する。本発明によれば、フラ
ボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼに操作可能に連鎖されたフラボノイド経
路の酵素をコードする遺伝子からのプロモーターを含んでなる遺伝子構成体は高
いレベルのデルフィニジン由来アントシアニン類の発現を指令することができる
ことが決定された。これらの高いレベルのデルフィニジンおよび関係する分子の
生産は、改変された花序特性を示すある範囲の植物を発生させるとき特に有用で
ある。
したがって、本発明の1つの面は、フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラー
ゼをコードする遺伝子に操作可能に連鎖されたフラボノイド経路の酵素をコード
する遺伝子からのプロモーターを含んで成る遺伝子を有し、同一のそれぞれの種
の非トランスジェニック植物に比べて高いレベルのデルフィニジン由来アントシ
アニン類を生産する、バラ、カーネーションおよびキクもしくはそれらの後代、
または顕花部分から選択されるトランスジェニック植物に関する。
好ましくは、フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼはペチュニア、バー
ベナ、デルフィニウム、ブドウ、アイリス、フリージア、アジサイ、シクラメン
、ジャガイモ、三色スミレ、ナス、トルコギキョウまたはカンパネラ起源のもの
である。
最も好ましくは、フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼはペチュニア起
源のものである。
本発明の遺伝子構成体は、3′,5′−ヒドロキシラーゼをコー
ドする配列をコードする核酸分子を含みそして必要に応じて追加の配列、例えば
、トランスジェニック植物の中で前記分子の発現を可能とするプロモーターおよ
びターミネーターの配列を含む。遺伝子構成体がDNAである場合、それはcDNAま
たはゲノムDNAであることができる。好ましくは、DNAは植物のゲノムの中に組込
まれて本発明のトランスジェニック植物を生産することができるキメラ遺伝子構
成体を含んでなるバイナリーベクターの形態である。キメラ遺伝子構成体は、フ
ラボノイド経路の酵素をコードする遺伝子からの植物プロモーターを有する。好
ましいプロモーターはカルコンシンターゼ(CHS)をコードする遺伝子からのも
のであり、そして「CHSプロモーター」と呼ぶ。CHSプロモーターは、その下流に
操作可能に連鎖された遺伝配列の高いレベルの発現を指令するので、特に好まし
い。最も好ましいバイナリーベクターはpCGP484,pCGP485,pCGP653およびpCGP1
458である。』
請求の範囲
1.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子に作用可
能に連結されたフラボノイド経路の酵素をコードする遺伝子からのプロモーター
を含んでなる遺伝子構成体を有し、同一のそれぞれの種の非トランスジェニック
植物に比べて高いレベルのデルフィニジン由来アントシアニン類を生産する、バ
ラ、カーネーションおよびキクもしくはそれらの後代、またはそれらの花序から
選択されるトランスジェニック植物。
2.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがペチュニア、バーベナ、デ
ルフィニウム、ブドウ、アイリス、フリージア、アジサイ、シクラメン、ジャガ
イモ、三色スミレ、ナス、トルコギキョウまたはカンパネラ起源のものである請
求項1記載のトランスジェニック植物。
3.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがペチュニア起源のものであ
る請求項2記載のトランスジェニック植物。
4.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがトルコギキョウ起源のもの
である請求項2記載のトランスジェニック植物。
5.プロモーターがカルコンシンターゼ(CHS)をコードする遺伝子からのも
のである請求項1〜4のいずれかに記載のトランスジェニック植物。
6.遺伝子構成体がpCGP484,pCGP485,pCGP653およびpCGP1458から選択され
るプラスミドの中に含有されている請求項5記載のトランスジェニック植物。
7.前記植物がバラである請求項3ないし6記載のトランスジェニック植物。
8.前記植物がカーネーションである請求項3ないし6記載のト
ランスジェニック植物。
9.前記植物がキクである請求項3ないし6記載のトランスジェニック植物。
10.改変された花序を示す請求項1記載のトランスジェニック植物。
11.改変された花序を示す請求項7記載のトランスジェニック植物。
12.改変された花序を示す請求項8記載のトランスジェニック植物。
13.改変された花序を示す請求項9記載のトランスジェニック植物。
14.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼをコードする核酸配列に作用
可能に連結されたフラボノイド経路の酵素をコードする遺伝子からのプロモータ
ーを含んでなる遺伝子構成体をバラ、カーネーションおよびキクの中に導入する
ことを含んでなり、該トランスジェニック植物が同一のそれぞれの種の非トラン
スジェニック植物に比べて高いレベルのデルフィニジン由来アントシアニン類の
アントシアニン誘導体を生産することを特徴とする、バラ、カーネーションおよ
びキクから選択されるトランスジェニック植物を作出する方法。
15.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがペチュニア、バーベナ、デ
ルフィニウム、ブドウ、アイリス、フリージア、アジサイ、シクラメン、ジャガ
イモ、三色スミレ、ナス、トルコギキョウまたはカンパネラ起源のものである請
求項14記載の方法。
16.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがペチュニア起源のものであ
る請求項15記載の方法。
17.フラボノイド3′,5′−ヒドロキシラーゼがトルコギキョ
ウ起源のものである請求項15記載の方法。
18.プロモーターがカルコンシンターゼ(CHS)をコードする遺伝子からのも
のである請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
19.遺伝子構成体がpCGP484,pCGP485,pCGP653およびpCGP1458から選択され
るプラスミドの中に含有されている請求項15記載の方法。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年7月11日
【補正内容】
20.前記植物がバラである請求項16ないし19記載の方法。
21.前記植物がカーネーションである請求項16ないし19記載の方法。
22.前記植物がキクである請求項16ないし19記載の方法。
23.前記トランスジェニック植物が改変された花序を示す請求項14記載の方法
。
24.前記トランスジェニック植物が改変された花序を示す請求項20記載の方法
。
25.前記トランスジェニック植物が改変された花序を示す請求項21記載の方法
。
26.前記トランスジェニック植物が改変された花序を示す請求項22記載の方法
。
27.植物のゲノムの中に組込まれて請求項1記載のトランスジェニック植物を
作出することができる遺伝子構成体を含んでなるバイナリーベクター。
28.遺伝子構成体がキメラ遺伝子構成体である請求項27記載のバイナリーベク
ター。
29.プロモーターがCHS遺伝子のプロモーターである請求項28記載のバイナリ
ーベクター。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,GE,HU,JP,KG,KP,KR,KZ,LK
,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI,S
K,TJ,TT,UA,US,UZ,VN