JPH08305853A - 対象の認識およびそれにもとづく意思決定の方法およびその装置 - Google Patents

対象の認識およびそれにもとづく意思決定の方法およびその装置

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JPH08305853A
JPH08305853A JP10531895A JP10531895A JPH08305853A JP H08305853 A JPH08305853 A JP H08305853A JP 10531895 A JP10531895 A JP 10531895A JP 10531895 A JP10531895 A JP 10531895A JP H08305853 A JPH08305853 A JP H08305853A
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JP10531895A
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Yasushi Kage
裕史 鹿毛
Satoru Shiono
悟 塩野
Satoshi Yamada
訓 山田
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Mitsubishi Electric Corp
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 人間の介在を必要とせず、外部情報にもとづ
いて対象を認識し、それに対する意思決定を行ない、環
境での使用に従って記憶データの修正と拡張を柔軟に行
う対象認識と意思決定の方法およびその装置を提供す
る。 【構成】 認識対象に関するセンサ情報から対象の属性
情報を抽出し、照合可能な内部データ表現に変換する外
部情報処理部と、複数の対象夫々の複数の属性情報の条
件付出現確率を表現した内部データ表現を構成して記憶
する記憶蓄積部と、外部情報処理部から新規に入力され
た対象の属性情報と記憶蓄積部に記憶された対象の属性
情報との夫々の内部データ表現を照合する記憶照合部と
を備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、外部信号から必要な
情報を抽出し、その情報について記憶との照合、連想、
推論を実行することによって状況に応じて対象を認識
し、意思決定を行う情報処理の方法およびその装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】外界からの情報を用いて人間が行う意思
決定を計算機に代行させるための研究がこれまで数多く
なされてきた。それらは記号推論に基づく人工知能研究
と、物体認識などを目標とする画像工学研究に大きく分
けられる。外界から得た外部信号は画像信号とは限定さ
れないが、用いられる割合が非常に大きく、ここでは画
像信号に限定して述べる。前者の人工知能研究によっ
て、エキスパート・システムなど多くの推論システムが
構築され、意思決定支援システムとして実用化されてき
た。後者の画像工学研究は、コンピュータ・ビジョンと
呼ばれる研究分野を確立している。
【0003】推論システムの例として、人工知能学会誌
(1992),Vol.7,No.6,pp1087−10
95に掲載された安信千津子らによるルールベースと事
例ベースの両方を備え持つ知識ベース推論システムがあ
る。従来のエキスパート・システムの多くは専門家の持
つ知識をルールベースに格納し、そのルールに基づいて
推論を行うものであった。しかし一般にビジネス分野の
審査業務などでは審査規制に定められていない事態も多
く発生し、その場合過去の審査事例を参考にして判断す
る。このようにルールと併せて事例を活用することが判
断に役立つ場合が多く、この従来例のシステムは状況に
応じてルールもしくは事例を参考にして意思決定を支援
する。
【0004】図7にこのシステムの構成を示す。8は専
門家の持つ知識をif−thenルールとして記憶している
ルールベース、9は過去の問題と解を事例として記憶し
ている事例ベースである。10はワーキング・メモリで
あり、現在の問題、解及び途中結果などのデータを記憶
している。11は推論エンジンであり、次の三つの機能
を持つ。 〔1〕推論パラダイムの選択:ルールベース8もしくは
事例ベース9に基づいた推論のいずれを選択するかにつ
いて、ワーキング・メモリ10の内容との照合処理によ
って決定し、現在直面している問題に対し適切な推論を
行う。ルールベース8を構成するルールまたは事例ベー
ス9を構成する事例と、ワーキング・メモリ10の内容
とが適合するか否かを、0から1の間の連続値を適合度
として算出する。この照合結果に基づき、最も適合度の
高いものがルールベース8のルールであるか事例ベース
9の事例であるかによって、それぞれに基づいた推論を
行う。両方のルールが同じ適合度の場合はルールベース
8に基づいた推論を優先する。 〔2〕検索機能:現在の問題に対し適切なif−thenルー
ルをルールベース8から検索するか、もしくは現在の問
題に類似する事例を事例ベース9から検索する。検索
は、上記の適合度計算と同様、各ルールまたは事例が役
立つか否かについて、0から1の間の連続値として計算
する。 〔3〕実行機能:ルールベース8から検索されたif−th
enルールに従い実行するか、事例ベース9から検索した
事例を現在の問題に適合するよう加工することにより、
現在の問題の解を推論する。
【0005】12はユーザインタフェースであり、ワー
キング・メモリ10のデータの設定・変更、推論の起動
の指示、推論結果の確認などの一連をユーザが行うため
の装置である。
【0006】上記の知識ベースシステムを始め、多くの
推論システムでは演繹推論の枠内でしか推論が行えず、
推論体系の拡張性に問題点があった。これを解決するた
めに、記号推論の理論的研究から様々な推論形態が提唱
されてきた。特にアブダクションという推論形態が近年
注目を集めており、研究が進められている。
【0007】一般に人間は未知の状況に置かれた場合、
過去の経験で得た知識に基づいて仮説を立て状況に応じ
た適切な判断を下す。アブダクションはこのような仮説
に基づく推論過程を基本としている。これにより従来の
演繹や帰納推論とは異なり、経験的知識から新たに仮説
を作り出し、その妥当性を試行錯誤により検証し新しい
知識として取り込むことが可能である。アブダクション
推論の形式は一般に次のように与えられる。 (1)A→B かつ (2)C→B ならば (3)A
→C (1)は今直面している状況を示し、(2)は今までに
経験して知っている知識の中の一つに対応し、(3)は
(1)と(2)に基づいて導かれた仮説である。
【0008】(2)におけるCはBを導く候補として一
般に数多く存在するので、結果として厖大な数の仮説が
得られ、従ってその数を絞り込むことが処理速度の点か
ら重要となる。さらに得られた仮説が既に持っている論
理体系と矛盾しないかどうかを検査する必要がある。こ
うした仮説の数の厖大さと無矛盾性の検査という二点を
踏まえ、記号論理によるアブダクション推論を高速に処
理することを目指したシステムとして、人工知能学会誌
(1993),Vol.8,No.6,pp786-796 に掲載された井上克巳
らによる例がある。
【0009】図8はアブダクション推論システムのモジ
ュール構成である。13は述語論理で記述された論理式
を高速計算のための記号表現に変換する翻訳モジュー
ル、14は変換された記号表現から仮説を生成する仮説
生成モジュール、15は生成された仮説が既に与えられ
ている論理体系と矛盾しないかどうかを検査する無矛盾
性検査モジュールである。ある仮説に対する矛盾の検査
法には次の二通りがある。 (I)論理式により記述された推論体系に基づき推論を
行い、矛盾を検出する。 (II)推論体系の中に矛盾を起こす仮説の集合を登録し
ておき、それとの照合により矛盾を検出する。この例で
は上記の(II)に基づいた無矛盾性検査をモジュール1
5によって処理し、そしてモジュール14とモジュール
15の機能を論理型言語向きの高速な並列計算機上に実
現し、並列に実行する計算機の台数を増やすことでアブ
ダクション推論をスピードアップさせている。
【0010】上記の二つの従来例はいずれも記号推論シ
ステムであり、次のような問題が生じる。問題解決に必
要な情報は全て記号表現として与えるので、外界情報か
ら記号への変換と意味の付与は全て人間が行う必要があ
る。視覚情報など様々なセンサ情報が処理され、知識と
して表現する方法が与えられていなければ、いかなるシ
ステムも常に人間の関与を必要とする。従って人間が行
う意思決定を全て計算機に代行させることは不可能であ
り、解決可能な問題は極めて限定される。
【0011】このことから、センサ情報を処理し外界情
報を内部表現に変換するシステムの構築が不可欠であ
る。コンピュータ・ビジョンなどの画像工学研究では、
静止画像または動画像から物体の形状および動きを識別
し、さらに複雑な背景から視標を分離するためのモデル
が提唱され、多くの画像認識システムが構築されてき
た。これらのうち、動画像処理により人間の行動認識を
行う画像認識システムとして、特開平5−46583号
公報に示された大和淳司らによる例がある。多くの画像
認識システムでは、形状抽出などの低い認知レベルに留
まっているのに対し、この従来技術では人間の行動認識
といった高度な認知レベルを目標としている。
【0012】図9はこの従来例のアルゴリズムを表わ
す。まず、画像入力部16から行動中の人間を含む動画
像を捉え、画像用メモリ17に格納する。次に、特徴抽
出部18により、動画像から特徴ベクトルが得られる。
ここで具体的な特徴ベクトルの計算方法の一例を説明す
る。
【0013】図10に示すように画像用メモリをn×m
の画像数を持つN×Mのサブブロックに分割し、各々の
サブブロックで画像の二値化を行う。次にこのサブブロ
ック内の黒画素の占有率を求め、占有率を変数値とする
N×M次元の特徴ベクトルとする。この特徴ベクトルは
特徴格納メモリ19に記録される。そして特徴ベクトル
は量子化部20によってシンボルに変換され、シンボル
格納メモリ21に記録される。この特徴ベクトルがシン
ボルに変換される方法を説明する。
【0014】図11は人間の動作認識のための代表的な
画像例であり、図12は図11の各画像の特徴ベクトル
に対応するシンボル(数字)である。時系列系に取り込
まれた複数の画像データはそれぞれ特徴ベクトルに変換
された後、特徴ベクトルに対応したシンボルの列に変換
される。図13はある時系列的に取り込まれた図11と
は別の画像データの列がシンボル列に変換された例を示
す。量子化部20はあらかじめいくつかの代表点ベクト
ルを持っており、これらの一つ一つをシンボルと呼ぶ。
つまり、量子化部20におけるシンボルへの変換とは、
特徴ベクトルが代表点ベクトル群の中で最も距離の近い
代表点ベクトルに対応するシンボルを選ぶということに
相当する。
【0015】次に認識するカテゴリ数だけ用意された認
識用状態遷移モデル格納メモリ25に格納されたモデル
の各々から、特徴ベクトルが生成される確率を尤度算出
部22によって算出する。求められた尤度が最大となる
モデルが、認識結果として選択され認識結果用メモリ2
3に蓄積される。モデルパラメータ推定部24は、各カ
テゴリ毎に複数与えられた学習用データから得られたシ
ンボルに対して、そのシンボルを発生するような状態遷
移モデルのパラメータを推定し、認識用状態遷移モデル
格納メモリ25に蓄積する。
【0016】この従来例では、認識対象の行動として四
つの動作(左足を上げる、左手を上げる、右足を上げ
る、右手を上げる)を例に挙げ、認識率として平均約9
0%という効果が得られている。しかし識別可能な人間
の動作は数種類に限定され、また未知の動作を新たに一
つの動作として登録する人間の動作は数種類に限定さ
れ、また未知の動作を新たに一つの動作として登録する
手法は与えられておらず、認識できる動作の拡張性に問
題があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】従来の推論システムの
例である安信らの方法は、if−thenルールに基づく演繹
推論システムで、推論体系の拡張性に問題があった。そ
の問題点を解決するためにアブダクション推論を導入し
た井上らの方法は、仮説の処理に関する厖大な量の計算
を、専用並列計算機で高速に処理することによって対処
している。しかし仮説の数の厖大さという問題は本質的
に解決されていない。さらにこの二つの推論システムは
いずれも記号推論システムであるため、問題解決に必要
な情報は全て記号表現として人間が与えないといけない
という問題点、すなわち各種センサで捉えられる外界情
報の内部表現への変換、および意味の付与は全て人間の
関与を必要とするという問題が残されている。
【0018】従来の画像認識システムの例である大和ら
の方法は、人間の関与しない認識の一手法を目指したも
のである。しかし識別可能な人間の動作は数種類に限定
され、未知の動作への対応は考慮されておらず動作認識
の柔軟性に問題があった。
【0019】本発明は上記のような従来の推論システム
の画像認識システムがそれぞれ抱える問題点を解消する
ためになされたもので、与えられた状況に柔軟に応じて
人間が関与せずに対象を認識し、その認識にもとづいて
意思決定を行う情報処理方法およびその装置を提供する
ことを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ために、人間がどのように外界を理解し意思決定をする
かを詳細に検討する必要があった。そのため、人工知能
や画像工学などの研究成果だけでなく、生理学や心理学
及び論理学の分野の知見も考慮に入れた研究を行い、後
述する心像という記憶表現(内部データ表現)を用いる
ことを特徴とする情報処理の方法およびその装置を提案
するに至った。
【0021】この発明に係わる情報処理装置は、例えば
認識対象を含む視覚情報などのセンサ情報を外部信号と
して必要な情報を抽出した後、記憶部に格納した情報を
使って心像を作りだし、その心像を使って認識対象を推
定し、その結果に基づいて状況に応じた意思決定を行
う。本情報処理装置の対象推定手段は外部信号処理部、
記憶蓄積部、記憶照合部の少なくとも三つの部分から構
成される。
【0022】第一に外部信号処理部について述べる。例
えば外部信号が視覚情報である場合(音や臭いなどの他
種の外部信号も同様に扱えるので、以下視覚情報に限定
して述べる)、それから内部データ表現を作る際に必要
な情報を抽出する手段として、生理学的知見に基づいた
視覚モデルを採用する。近年サル大脳皮質における視覚
生理学研究から多くの知見が得られつつあり、そのメカ
ニズムを模倣することにより人間に近い視覚システムを
実現することが可能である。
【0023】サルの視覚関連野はいくつかの領域に分か
れ、網膜情報の解析の局所性により階層構造をなしてい
ることが知られている。一次視覚野では形状、動きおよ
び色などの網膜情報が局所的に解析され、他の領野で段
階的に統合され、認識判断のための情報を作る。そこで
本発明では、形状、動き、色およびテクスチャなどの属
性を設け、CCDカメラなどで得た画像信号を処理し
て、属性に対応する情報を抽出して、システム内で照合
可能な内部データ表現に変換する。
【0024】第二に、記憶蓄積部について述べる。記憶
蓄積部における内部データ表現は、心理学研究により提
案されている人間の記憶表現に近いものを用いている。
ある三次元物体を認識対象とするとき、異なった視点か
らは異なった形状像が得られる。一般に認識対象は特定
の視点から観察されることが多いので、対象の見え方に
確率の差が生じる。その結果、対象が持つ形状像それぞ
れに条件付確率が伴っている。
【0025】本発明においては、一つの対象Sがもつ見
え方の違いによる異なった形状像の集合と、観察者の過
去の視覚体験を反映した対象Sが或る形状に見える条件
付き確率との合わせて対象Sの心像と呼び、記憶蓄積部
における内部データ表現として用いている。心像を構成
する形状像などの属性情報は外部信号処理部で抽出され
た内部データ表現により構築される。
【0026】記憶蓄積部における、例えば形状に関する
内部データ表現による記憶蓄積部の記憶内容の検索と
は、心像を構成する形状像を検索することに相当する。
動きなど他の属性についても同様である。記憶蓄積部の
記憶内容である内部データ表現とその出現確率は固定し
たものではなく、経験により随時更新される。
【0027】第三に、記憶照合部について説明する。認
識対象について外部信号処理部で作られ内部データ表現
に変換された属性情報と記憶蓄積部の属性情報との類似
度を使って、記憶蓄積部にある認識対象の候補を検索・
抽出し、この記憶照合部にそれらの集合を作る。この集
合を検索し、内部データ表現と最もよく一致するものを
認識対象とする操作を行うことが、この記憶照合部の主
な役割である。
【0028】認知心理学の研究によれば、人間の記憶は
大きく短期記憶と長期記憶の二つに分けられる。短期記
憶は最近に起こった出来事に関する記憶であり、長期記
憶はほぼ固定的で一生涯を通じて保持される記憶であ
る。これらの役割として、まず銘記される事象が短期記
憶に取り込まれ、頻繁な想起によって強化された後、長
期記憶に固定されると考えられている。本発明の記憶照
合部と記憶蓄積部は上述の短期記憶と長期記憶にそれぞ
れ対応する。
【0029】次に、本発明の意思決定手段に使用する出
力決定部について述べる。出力決定部は、記憶照合部で
認識対象と推定されたものに対して、なすべき行動を決
定する。例えば認識対象が「火」であれば例えば「消火
活動を行う」が対応づけられており、その他「近寄って
くる自動車」であれば「回避する」など、認識対象によ
って様々な行動パターンが対応づけられている。大脳生
理学の研究によれば、人間の大脳皮質では感覚連合野で
対象を認識し、その情報を前頭葉が受け、対象に応じて
なすべき行動を決定する。本発明における出力決定部
は、この前頭葉の機能に対応させている。
【0030】ここで出力決定部により決定される行動
は、一般に既知の認識対象と対応している。しかし対象
からの情報が不十分で認識が困難な場合や、または未知
の対象に対しても仮説を立てて意思決定を行う必要があ
る。さらにその意思決定に基づく行動が妥当なものであ
ったかどうかを評価する必要がある。このことから、本
発明においては上記四種の主要構成部に加えて仮説推論
部と出力評価部を設け、前者において内部データ表現が
不十分で認識が不可能な場合にアブダクション推論を行
って認識対象の候補を選び出し、後者においてそれに基
づく行動の妥当性を評価する。さらに出力評価部を既知
の認識対象に関する記憶蓄積部の記憶内容を変更した
り、未知の対象を新たに記憶蓄積部に登録することによ
り、記憶蓄積部の持つ認識体系を拡張していく役割を持
つ。
【0031】また対象とするシステムの内部状態に異変
が生じ、それを回復するためには通常の情報処理ルーチ
ンでは迅速に対処することが困難になる場合がある。こ
れに対応する機能として、生物では喉の乾きや諸々の体
内生理現象に直面した場合、視床下部と呼ばれる部位が
その変化を感知し、迅速な行動に移るための意思決定に
関わっていることが知られている。
【0032】大脳皮質を経由した判断は時間がかかるの
に対し、視床下部の情報に基づく情動行動は大脳皮質を
経由せず、緊急時の場合に即応的に対処する。本発明に
おいては上記の主要四構成部に加えて、対象システム内
部のパラメータや対象システム外部の情況の異変を監視
する状態監視部を設けており、外部信号処理部や記憶照
合部に緊急時処理ルーチンへの切り換えを命令し、シス
テム内部状態の異変に即応的に対処することを可能にす
る。
【0033】
【作用】本発明による情報処理装置は、外部信号から内
部データ表現に変換するための手法として生物の持つ情
報処理機能を模倣するモデルを用いて構成したので、人
間が介在することなく内部データ表現を獲得できる。そ
の表現形式は、従来の記号表現とは異なる冗長性を持っ
ているので、記号推論よりも柔軟な推論が可能であり、
記号論理によるアブダクション推論で見られた爆発的に
増加する計算量の問題を解決できる。
【0034】また未知の認識対象に対する判断を可能に
するように構成したので、状況に応じて記憶体系に拡張
及び修正を加え柔軟な対象認識とそれにもとづく意思決
定を行う。さらに本情報処理装置が対象とするシステム
が直面する可能性のある危険的な状況に即応的に対処す
るためのメカニズムを兼ね備えている。なお、本情報処
理装置は単独の意思決定装置として使用できるだけでな
く、意思決定を必要とする、一般のシステムに意思決定
装置として組み込んで使用することができる。
【0035】
【実施例】
実施例1.図1は本実施例の構成を示す装置の例であ
り、外部信号処理部1、記憶照合部2、記憶蓄積部3、
出力決定部4の四部分からなる。本発明による情報処理
装置では、外部信号処理部1により外部信号から必要な
情報が抽出され、色や形状など属性毎に内部データ表現
に変換される。そしてこの内部データ表現により、既に
述べた記憶蓄積部3の記憶表現である心像を検索し、対
象の推定を行う。
【0036】人間は生後様々な視覚体験を通じて、ある
特定の物体の持つ様々な二次元形状像をその出現確率と
ともに記憶し、その後の物体の認識には形状像と過去の
視覚体験に基づく出現確率を考慮して認識判断を行う。
このようにいくつかの物体と様々な形状の対応関係を出
現確率によって表現したものがイメージ標本行列と呼ば
れる(Science(1992),Vol.257,pp1357-1363)。三次元物
体S1 ,…,Sn が網膜像L1 ,…,Lm として映る場
合、物体S1 が網膜像Lj として見える条件付き確率を
P(Lj |Si )としたとき、イメージ標本行列は図2
のように表される。
【0037】人間は物体S1 ,…,Sn に対する形状像
1 ,…,Lm の関連付けを図2のような条件付き確率
の行列として獲得し、獲得後の視覚認知の際にはこの行
列を行方向に参照することにより、特定の形状像Lj
ら、元の物体がS1 ,…,Sn のいずれであるかを推定
する。イメージ標本行列を用いて、形状像Lj が観測さ
れたときの元の物体がSi である確率P(Si |Lj
は、ベイズ推定により次式で与えられる。 P(Si |Lj )=P(Lj |Si )P(Si )/{P(Li |S1 )P(S1 )+…+P(Lj |Sn )P(Sn )} (1) ここで、P(S1 ),…P(Sn )はそれぞれ物体
i ,…,Sn の生起確率を示し、次式で表わされる。 P(Si )=P(L1 |Si )+…+P(Lm |Si ) (2) 各確率の値は過去の視覚体験を反映しており、状況依存
的な値をとる。
【0038】以上の考え方を踏まえた上で、本実施例に
おける三次元物体の推定方式を次のように考える。三次
元物体Sx は、見る方向等の条件の違いによって見え方
の異なる二次元像の形状集合{L1 ,…Ly }を持って
いる。各々の形状像Lj は物体Sx と過去の視覚体験を
反映した条件付き確率P(L1 |Sx ),…,P(Ly
|Sx )によって関係づけられている。この形状集合を
物体Sx の心像と呼ぶ。観測された形状像Lj から元の
物体を推定するとき、心像の中に形状Lj を含む物体を
すべて候補とし、候補物体Si (i=1,…,n)全て
について(1)式から推定確率P(Si |Lj )を計算
する。その確率が最大となる物体SがLj から推定され
る三次元物体である。
【0039】本実施例では、形状像に基づく対象物体推
定と、それに対する行動決定について説明する。即ち、
視覚情報の持つ様々な属性のうち形状による推定を優先
させ、動きや色などの他の属性は対象推定の際には優先
度が低いとする。
【0040】外部信号処理部1はCCDカメラと画像処
理装置から構成される。前者で撮影された画像を後者を
用いて処理し、認識対象物体の二次元像から形状Lを抽
出する。
【0041】記憶蓄積部3は、認識対象とする物体Si
(i=1,…,n)の外部信号処理部1を用いて得た形
状像Lj (j=1,…,m)と、その出現確率P(Lj
|Si )を内部データ表現として記憶している。即ち実
際に本実施例を適用する環境下で、Si の様々な形状を
あらかじめ外部信号処理部1を用いてLj を得て、その
出現確率も自動的に求めることによって記憶蓄積部3の
メモリを構築する。この記憶蓄積部のメモリ内容は、以
後の経験により形状像の追加もしくは出現確率の変更と
いう形で変化させるような学習機構を組み込んでいる。
出現確率の変更は、例えば対象の推定に成功した時に増
加し、失敗した時に減少するようにする。失敗と成功の
判断は、あらかじめ設定した類似度の基準値を超えるか
どうかで行なう。
【0042】対象の推定に成功しない場合はその対象を
未知の対象として登録し、その後の推定経験によって出
現確率を構築する。この様にして推定する対象を学習的
に拡張することができる。
【0043】記憶照合部2は外部信号処理部1で得たL
に対して記憶蓄積部3を検索し、一定確率以上のLを形
状として集合に含む物体Si (i=1,…,n)を全て
列挙する。さらに記憶蓄積部3に記憶されている出現確
率P(L|Si )から、(1)式に従って元の物体の候
補Sを推定する。
【0044】出力決定部4では、各物体に対して取る行
動が対応表として管理されている。記憶照合部2で形状
Lから推定された元の物体Sに対して起こすべき行動A
が出力決定部4により選択される。
【0045】これら構成部の具体的な動作を、霊長類を
専門的に飼育している自然動物園で動物を監視し、危険
箇所にいる動物に警告を発し、その場を立ち去らせるシ
ステムを搭載した危険箇所管理システムの例で説明す
る。このシステムは観測される動物が人間であれば人間
の声で注意を促し、ゴリラであれば射撃音を聞かせ、チ
ンパンジーであれば警笛を鳴らすなどして追い払うため
のシステムである。人間以外の各動物は対応する音刺激
に対して、その場を立ち去らせるように条件付けされて
いるとする。
【0046】外部信号処理部1はCCDカメラと形状抽
出用画像情報処理装置を装備したもので、過去に見た様
々な動物の形状が観測される条件付き確率を記録し、一
方記憶蓄積部3にその結果を記憶させている。
【0047】まず外部信号処理部1が対象を促え、対象
の形状Lを抽出する。記憶照合部2は抽出された形状L
に基づき記憶蓄積部3の記憶を検索し、形状Lを心像の
中に持つ対象について、対象Sの動物園内に存在する確
率P(S)が設定した値以上であるものを候補として列
挙する。
【0048】本実施例では、形状Lが既知の形状L1
…,Lm のいずれかと特定可能であるとする。形状Lは
特定可能であるとは、既知の形状全てと照合を行い、各
形状との類似度を計算した結果、いずれかの類似度の値
が設定した基準値以上になり、その中で類似度の最大値
を与える形状を形状Lから特定された形状と呼ぶ。
【0049】対象を解析した結果、人間、チンパンジー
及びゴリラが候補として列挙されたとすると、記憶蓄積
部3に記憶されている確率と(1)式によって元の対象
を推定する。人間、チンパンジー及びゴリラが形状像L
としてそれぞれ抽出される確率P(L|human ),P
(L|chimp )及びP(L|goril )と、人間、チンパ
ンジーおよびゴリラがそれぞれ動物園内に存在する確率
P(human ),P(chimp )及びP(goril )により、
形状Lから元の対象が人間であると推定できる確率P
(human |L)は次式により計算される。 P(human |L)=P(L|human )・P(human ) /{P(L|human )・P(human )+P(L|chimp )・P(ch imp )+P(L|goril )・P(goril )} 他の動物に関する確率P(chimp |L)、P(goril |
L)についても同様である。この結果、例えばP(huma
n |L)の値が最大であれば元の対象は人間であると推
定され、この情報は出力決定部4へ送信される。
【0050】出力決定部4では、記憶蓄積部3に記憶さ
れて対象とそれに対して起こすべき行動との対応付け表
が管理されており、これに基づき行動決定がなされる。
例えば出力決定部4は図3のような対応付け表を管理し
ているとする。この表から「人間の声による警告」とい
う行動が選択される。
【0051】このように、二次元形状像として捉えられ
る対象を心像を用いて推定し、状況に応じて柔軟な意思
決定を下すことが可能である。
【0052】実施例2.実施例2の構成は図1と同じで
ある。実施例1では、形状像Lj が観測されたときに元
の物体がSi であると推定できる確率P(Si |Lj
は、(1)式で与えられるベイズ推定で計算を行ってい
た。そして物体S1 ,…,Sn の生起確率S(S1 ),
…,P(Sn )は過去の視覚体験を反映した状況依存的
な値であった。本実施例では、この各対象の出現確率が
すべて同じ値であるとして計算を行っている。その結果
(1)式は次式のように簡略化される。 P(Si |Lj )=P(Lj |Si )/{P(Lj |S1 )+…+P(Lj |S n )} (3)
【0053】本実施例による推定法は、(1)式による
推定よりも計算が速く、各対象Si(i=1,…,n)
がほぼ同様に出現する状況などで有効な推定法である。
また各対象を公平に比較することになる。
【0054】実施例3.実施例3の構成は図1と同じで
ある。実施例1では形状像Lによって認識対象Sを推定
する例を示した。しかしCCDカメラなどで取り込まれ
た画像中にノイズが多い場合などは形状像による推定で
は信頼性が低いので、例えば色Cなど形状以外の他の属
性情報を併用して認識対象Sの推定に対する信頼性を向
上させることが可能である。本実施例では、外部信号処
理部1では形状と色の検出をする画像処理部を持ち、記
憶蓄積部3は各認識対象について形状と色を出現確率を
反映した条件付き確率とともに記憶しているとする。
【0055】実施例1と同じ適用例で説明する。外部信
号処理部1により形状Lと色Cが抽出され、記憶照合部
2によって記憶蓄積部3の記憶を検出し、形状による対
象推定では人間、チンパンジー、ゴリラおよびテナガザ
ルが、色による対象推定では人間、チンパンジー、ゴリ
ラおよびニホンザルが候補対処として列挙されたとす
る。そこで共通する三つの候補である人間、チンパンジ
ーおよびゴリラについて、推定確率を形状Lと色Cにつ
いて計算し、次のような結果を得たとする。 形状L:P(human /L)=0.20, P(chimp /
L)=0.30,P(gofil /L)=0.20 色C:P(human /C)=0.70, P(chimp /
C)=0.10,P(gofil /C)=0.10
【0056】この場合、実施例1のように形状Lの推定
確率だけを用いて認識対象Sを「チンパンジー」である
と判定してもよいが、形状による対象推定の信頼性が低
い場合、色Cの推定確率も同時に用いて計算する。例え
ば形状Lおよび色Cの推定確率の平均を計算し、 「人間」の場合:{P(human |L)+P(human |C)}/2=0.45 「チンパンジー」の場合:{P(chimp |L)+P(chimp |C)}/2=0. 20 「ゴリラ」の場合:{P(goril |L)+P(goril |C)}/2=0.15 この計算結果によって、対象を「人間」であると推定す
ることが可能である。
【0057】この例では形状と色の情報を用いた推定の
例を示した。しかし明るさが充分でないときは色による
判断も信頼性が低い場合が多いので、更に動きの情報を
用いて対象推定の信頼度を向上させることも可能であ
る。この計算例では、各属性に関する確率の平均を相加
平均として計算しているが、状況に応じて形状や色、動
きに対する信頼度を評価し、重み付け平均として計算す
ることも可能である。
【0058】このように、形状だけでなく動きや色など
の属性の心像を用いることによって、記憶照合部3にお
ける対象推定の信頼性を大きく向上させることができ
る。
【0059】実施例4.図4は本実施例の装置構成を示
し、実施例1で示した構成に加え、出力評価部5を構成
部としても持つ場合の装置の例である。出力評価部5
は、出力決定部4により下された意思決定が正しいかど
うかを監視する機能を備えている。
【0060】実施例1同様の状況で観察された対象Sに
対し、出力決定部4により「人間の声による警告」とい
う行動が選択された場合を考える。この警告に対する対
象Sの行動を出力評価部5が観察する。対象Sが人間で
あれば人間の声に即座に反応し、直ちにその場を立ち退
くが、人間以外の動物であればそれぞれ個別の音刺激に
より立ち去るように条件付けされているので、人間の声
で動物を立ち去らせることはできない。
【0061】出力評価部5によって対象Sの行動に変化
がないと判断されると、出力評価部5は記憶蓄積部3で
記憶されているイメージ標本行列における、対象Sが外
部信号処理部1により形状像Lとして観測される確率P
(L/S)の値を減少させる。このようにして更新され
たイメージ標本行列に基づき、もう一度対象Sを推定す
るように出力評価部5は記憶照合部2に対し処理を促
す。イメージ標本行列を更新しても対象の推定に成功し
ない場合は、その対象を未知の対象として登録し、その
後の推定経験によって出現確率を構築する。実施例1に
おいてはイメージ標本行列の更新や新規対象の拡張を類
似度基準による推定の成功や失敗によって起動していた
が、本実施例では出力評価部5による対象の行動確認結
果に基づいて起動することができるので、より信頼性の
高いイメージ標本行列の修正と拡張が可能となる。
【0062】このように出力評価部5により、出力決定
部4により下された意思決定に基づく対象Sの行動が予
測された行動であるかどうかを出力評価部5で判断する
ことによって、記憶蓄積部3の記憶体系を修正し、与え
られた状況に柔軟に対応して推定の信頼性を改善してい
く学習機能を実現することが可能となる。
【0063】実施例5.図5は本実施例の装置構成を示
し、実施例1で示した構成に加え、仮説推論部6を構成
部として持つ場合の装置の例である。仮説推論部6の機
能は、対象の認識が不可能の場合にそれが何であるかに
ついて仮説を立てることである。本実施例は実施例3同
様、外部信号処理部1で検出された形状と色に基づき対
象の推定を行うが、実施例3と異なるのは、外部信号処
理部1により抽出された形状Lが、記憶照合部2によっ
て記憶蓄積部3の記憶を検出した結果、いずれの二次元
形状にも特定できなかった場合を想定している点であ
る。ここで形状Lが特定不可能とは、既知の形状L1
…,Lm との照合を行い、各形状との類似度を計算した
結果、いずれの類似度の値も設定した基準値以下になる
場合を指す。
【0064】このとき記憶蓄積部3の記憶内容の検索の
結果、形状Lは特定困難であるが、色Cは特定できたと
する。この色Cの情報を用いて、仮説推論部6はアブダ
クション推論を行い、対象について仮説を立てる(推論
過程(1):L→C)。そして色Cを心像の中に持つ対
象の候補S1 ,…,Sk を列挙する(推論過程(2):
1 →C,…,Sk →C)。この二つの推論過程(1)
・(2)は仮説推論6で管理する。そして推論過程
(2)で得られる対象の候補S1 ,…,Sk をただ一つ
に絞りこむ必要がある。
【0065】記号推論におけるアブダクションでは推論
過程(2)におけるk個の推論式は対等に処理されるの
でただ一つに絞りこむのは困難であるが、本実施例にお
けるアブダクションでは候補の対象S1 ,…,Sk と色
Cを関係付ける条件付き確率P(C|S1 ),…,P
(C|Sk )を用いるので、これらの確率値の中で最大
値を与えるSg を推定すべき対象とする。この結果、形
状Lの元の対象はSg であると推定される(導出仮説
(3):L→Sg )。この候補の絞り込みと仮説の導出
は仮説推論部6が行う。そして対象がSg であるという
情報を記憶照合部2を経由してそのまま出力決定部4に
送信してSg に対する行動決定を下す。
【0066】このように、アブダクション推論による仮
説の導出について、記号推論の場合では困難であった複
数の候補仮説の絞り込みが、本実施例では心像を用いる
ことにより容易になり、記号推論で見られた問題点を解
消することが可能になる。
【0067】実施例6.図6は本実施例の装置構成を示
し、実施例1で示した構成に加え、さらに状態監視部7
を構成部としても持つ場合の例である。状態監視部7、
本実施例を自動ナビゲーション装置として搭載している
走行車の制御システム内の様々な内部パラメータを監視
する処理部である。例えばこの走行車が決められた巡回
区域内を長時間走行した結果、走行に必要な燃料不足に
陥る場合がある。このような場合、状態監視部7は走行
車燃料タンクの燃料不足を感知し、作業を中断して走行
車を燃料補給所へ向かわせる必要がある。このため状態
監視部7は外部信号処理部1と記憶照合部2に対して燃
料補給所を見つけるための優先的な処理ルーチンに切り
換える命令を送信する。
【0068】例えば、巡回区域内の地図と燃料補給所の
場所、さらに区域内の道路の全ての分岐点における風景
が画像イメージとして記憶蓄積部3に記憶されており、
記憶照合部2を介して外部信号処理部1で処理された特
徴データと照合することにより、区域内における地理的
位置が常に確認できるとすれば、この走行車は燃料補給
所に到達することができる。
【0069】処理ルーチン切り換え命令を受信した外部
信号処理部1と記憶照合部2は、通常時の処理とは異な
る緊急時の処理モードに切り換わる。記憶照合部2にお
ける通常時の処理と緊急時の処理との違いは、通常部で
は記憶照合部2は外部信号処理部1の処理が終わるのを
待って記憶蓄積部3の記憶内容との照合を行うが、緊急
時には記憶照合部2は記憶蓄積部3の記憶内容のうち、
緊急時の対応に必要な情報だけを集めて記憶照合部2の
記憶内容として管理し、その記憶内容に基づいて外部信
号処理部1に対して特徴抽出に処理を限定する。
【0070】例えば燃料補給所を見つけるための手掛り
として、回転する赤いランプが目印になっているとす
る。記憶照合部2は、この目印を優先的に見つけるため
の特徴抽出に処理を限定するよう外部信号処理部1に要
求する。外部信号処理部1は、通常時には必要に応じて
形状、色、動きやテクスチャなで詳細な特徴抽出を行っ
ているが、緊急時には記憶照合部2からの要求を受け
て、「回転するもの」を見つけるための動きに関する特
徴抽出と、「赤いもの」を見つけるための色に関する特
徴抽出に処理を限定する。この時、例えば色に関しては
通常時の処理では様々な色を区別するための詳細な色の
解析を行っていたのに対し、緊急時には「赤いもの」か
それ以外かという単純な区別に処理を限定する。動きに
関する特徴抽出についても同様である。
【0071】本実施例における緊急時の処理は、上述の
ように記憶蓄積部3の記憶内容との詳細な照合過程を伴
う通常の処理とは異なり、状態監視部7から緊急状態で
あるという命令を受けているので、比較的簡略化された
照合過程を経て燃料補給所に迅速に到達するための処理
ルーチンに切り換わる。
【0072】このように、本情報処理装置が対象とする
システムの状態の様々な内部パラメータを監視する状態
監視部7を持つことにより、システム内部の異変に対応
し、通常の情報処理ルーチンを変更することによりシス
テムの直面する緊急状態に柔軟に対応することができ
る。また異常情報としてはシステム内部情報に限らず、
システム外部情報を含めてもよい。
【0073】以上の実施例では、出力決定部4で管理さ
れている認識対象と行動計画の対応表が前もって与えら
れる場合について説明したが、この対応表は本発明によ
る情報処理装置が様々な状況を学習した上で獲得される
ようにしてもよく、また必要最小限の知識をこの対応表
に記述しておき、様々な状況に置かれる度にこの対応表
が修正・拡張されるようにしてもよい。
【0074】以上実施例では、外部信号として取り込む
センサ情報を視覚情報の例で説明したが、視覚情報以外
の他のセンサ情報、例えば聴覚、嗅覚および味覚情報な
どをセンサ情報として用いてもよい。
【0075】
【発明の効果】本発明の第1の構成または工程によれ
ば、外部信号からの照合可能な内部データ表現を自動的
に作成できるので、人間の介在を必要としない対象認識
とそれにもとづく意思決定が可能である。また、属性情
報の出現確率にもとづく冗長性の高い照合方式を用いて
いるので、従来の記号推論方式より柔軟性の高い対象認
識または意思決定が可能である。また、使用される環境
下での稼動経験によって記憶蓄積部の記憶データの修正
および拡張が可能であり、認識機能の信頼性の改善と機
能拡張を学習的に行なうことができる。
【0076】本発明の第2の構成または工程によれば、
仮説推論部を備えることにより、対象の推定が不可能で
あった場合にもアブダクション推論によって推定が可能
となる。また、属性情報の出現確率にもとづく照合方式
の利用により従来の信号推論によるアブダクションでの
問題点である厖大な計算が避けられる。
【0077】本発明の第3の構成または工程によれば、
出力評価部を備えることにより対象の認識機能の高信頼
化と拡張の学習機能がより確実なものとなる。
【0078】本発明の第4の構成または工程によれば、
状態監視部を備えることにより異常事態への迅速で適切
な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による情報処理装置を示す
図である。
【図2】 本実施例1におけるイメージ標本行列を示す
図である。
【図3】 本実施例1における出力決定部で管理されて
いる対応付け表を示す図である。
【図4】 本発明の一実施例による出力評価部を持つ場
合の情報処理装置を示す図である。
【図5】 本発明の一実施例による仮説推論部を持つ場
合の情報処理装置を示す図である。
【図6】 本発明の一実施例による状態監視部を持つ場
合の情報処理装置を示す図である。
【図7】 従来方式における推論システムの構成を示す
図である。
【図8】 従来方式における記号推論によるアブダクシ
ョン推論システムの構成を示す図である。
【図9】 従来方式における画像認識システムの構成を
示す図である。
【図10】 従来方式における画像認識システムの特徴
ベクトルを示すための図である。
【図11】 従来方式における画像認識システムの認識
対象動作の代表画像を示す図である。
【図12】 従来方式における画像認識システムの代表
画像に対応するシンボルを示す図である。
【図13】 従来方式における画像認識システムで処理
されたある動作に対応するシンボル列の例を示す図であ
る。
【符号の説明】
1.外部信号処理部 2.記憶照合部 3.記憶蓄積部 4.出力決定部 5.出力評価部 6.仮説推論部 7.状態監視部

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 新規な認識対象に関するセンサ情報を外
    部信号として取込み、この外部信号から前記認識対象の
    属性情報を抽出し、この属性情報を照合可能な内部デー
    タ表現に変換する外部信号処理部と、 複数の前記認識対象の夫々に関する複数の属性情報の条
    件付出現確率を表現した内部データ表現を構成して記憶
    する記憶蓄積部と、 前記外部信号処理部から入力された認識対象の属性情報
    の内部データ表現と前記記憶蓄積部の記憶データの内部
    データ表現とを照合する記憶照合部とを備えた情報処理
    装置を用い、 前記記憶蓄積部に記憶された認識対象のうち、前記外部
    信号処理部から新規に入力された認識対象と類似度の大
    きい内部データ表現を有する認識対象を前記新規に入力
    された認識対象であると推定する対象認識方法。
  2. 【請求項2】 前記記憶蓄積部の内部データ表現とし
    て、対象毎の各属性情報の条件付出現確率からなるイメ
    ージ標本行列を用いる請求項1に記載の対象認識方法。
  3. 【請求項3】 前記推定処理の経験に従い、前記記憶蓄
    積部の記憶データである条件付出現確率の修正、属性情
    報項目の追加または認識対象の追加を、前記推定処理の
    成功および失敗にもとづいて学習的に行なう請求項1ま
    たは2に記載の対象認識方法。
  4. 【請求項4】 前記情報処理装置に仮説推論部を備え、
    前記推定が不可能な新規に入力された認識対象に対し
    て、前記推定に使用しなかった他の属性情報と前記記憶
    蓄積部の記憶データとの夫々の内部データ表現を用いた
    アブダクション推定を行って推定対象の候補を列挙し、
    前記新規入力対象と前記各候補対象との夫々の内部デー
    タ表現の類似度比較によって前記候補の絞り込みを行な
    う請求項1から3のいずれか1項に記載の対象認識方
    法。
  5. 【請求項5】 新規な認識対象に関するセンサ情報を外
    部信号として取込み、この外部信号から前記認識対象の
    属性情報を抽出し、この属性情報を照合可能な内部デー
    タ表現に変換する外部信号処理部と、 複数の前記認識対象の夫々に関する複数の属性情報の条
    件付出現確率を表現した内部データ表現を構成して記憶
    する記憶蓄積部と、 前記外部信号処理部から入力された認識対象の属性情報
    の内部データ表現と前記記憶蓄積部の記憶データの内部
    データ表現とを照合する記憶照合部と、 前記複数の認識対象と各認識対象に対してなすべき行動
    との対応表を有し、前記なすべき行動を命令として出力
    する出力決定部とを備えた情報処理装置を用い、 前記記憶蓄積部に記憶された認識対象のうち、前記外部
    信号処理部から新規に入力された認識対象と類似度の大
    きい内部データ表現を有する認識対象を前記新規に入力
    された認識対象であると推定して認識し、 前記出力決定部の認識対象となすべき行動との対応表か
    ら前記認識された認識対象に対してなすべき行動を決定
    し、これを命令として出力する意思決定方法。
  6. 【請求項6】 前記情報処理装置に出力評価部を備え、
    前記命令が実行された結果の認識対象の反応から前記命
    令または前記認識の妥当性を評価し、この評価に基づい
    て前記記憶蓄積部の記憶データである条件付出現確率の
    修正、属性項目の追加または認識対象の追加を学習的に
    行なう請求項5に記載の意思決定方法。
  7. 【請求項7】 前記情報処理装置に状態監視部を備え、
    前記意思決定を行なう環境からの異変情報または前記セ
    ンサからの異変情報に基づいて、前記推定処理および前
    記意思決定処理の内容をあらかじめ設定した緊急時用の
    内容に制限する請求項5または6に記載の意思決定方
    法。
  8. 【請求項8】 新規な認識対象に関するセンサ情報を外
    部信号として取込み、この外部信号から前記認識対象の
    属性情報を抽出し、この属性情報を照合可能な内部デー
    タ表現に変換する外部信号処理部と、 複数の前記認識対象の夫々に関する複数の属性情報の条
    件付出現確率を表現した内部データ表現を構成して記憶
    する記憶蓄積部と、 前記外部信号処理部から入力された認識対象の属性情報
    の内部データ表現と前記記憶蓄積部の記憶データの内部
    データ表現とを照合する記憶照合部とを備え、 前記記憶蓄積部に記憶された認識対象のうち、前記外部
    信号処理部から新規に入力された認識対象と類似度の大
    きい内部データ表現を有する認識対象を前記新規に入力
    された認識対象であると推定する対象認識装置。
  9. 【請求項9】 前記記憶蓄積部の内部データ表現として
    対象毎の各属性情報の条件付出現確率からなるイメージ
    標本行列を用いる請求項8に記載の対象認識装置。
  10. 【請求項10】 前記推定処理の経験に従がい、前記記
    憶蓄積部の記憶データである条件付出現確率の修正、属
    性情報項目の追加または認識対象の追加を、前記推定処
    理の成功および失敗にもとづいて学習的に行なう請求項
    8または9に記載の対象認識装置。
  11. 【請求項11】 前記推定が不可能な新規に入力された
    認識対象に対して、前記推定に使用しなかった他の属性
    情報と前記記憶蓄積部の記憶データとの夫々の内部デー
    タ表現を用いたアブダクション推定を行って推定対象の
    候補を列挙する仮説推論部を備え、前記新規入力対象と
    前記各候補対象との夫々の内部データ表現の類似度比較
    によって前記候補の絞り込みを行なう請求項8から10
    のいずれか1項に記載の対象認識装置。
  12. 【請求項12】 新規な認識対象に関するセンサ情報を
    外部信号として取込み、該外部信号から前記認識対象の
    属性情報を抽出し、この属性情報を照合可能な内部デー
    タ表現に変換する外部信号処理と、 複数の前記認識対象の夫々に関する複数の属性情報の条
    件付出現確率を表現した内部データ表現を構成して記憶
    する記憶蓄積部と、 前記外部信号処理部から入力された認識対象の属性情報
    の内部データ表現と前記記憶蓄積部の記憶データの内部
    データ表現とを照合する記憶照合部と、 前記複数の認識対象と認識対象に対してなすべき行動と
    の対応表を有し、前記なすべき行動を命令として出力す
    る出力決定部とを備え、 前記記憶蓄積部に記憶された認識対象のうち、前記外部
    信号処理部から新規に入力された認識対象と類似度の大
    きい内部データ表現を有する認識対象を前記新規に入力
    された認識対象であると推定して認識し、 前記出力決定部の認識対象となすべき行動との対応表か
    ら前記認識された認識対象に対してなすべき行動を決定
    し、これを命令として出力する意思決定装置。
  13. 【請求項13】 前記命令が実行された結果の認識対象
    の反応から前記命令または前記認識の妥当性を評価する
    出力評価部を備え、この評価に基づいて前記記憶蓄積部
    の記憶データである条件付出現確率の修正、属性項目の
    追加または認識対象の追加を学習的に行なう請求項12
    に記載の意思決定装置。
  14. 【請求項14】 前記意思決定を行なう環境からの異変
    情報または前記センサからの異変情報に基づいて前記推
    定処理および前記意思決定処理の内容をあらかじめ設定
    した緊急時用の内容に制限する状態監視部を備えた請求
    項12または13に記載の意思決定装置。
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