JPH08259117A - テープリール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】リールハブの外周面に段差を無くして、磁気テ
ープの寝押しを防止したテープリールを提供する。 【構成】リールハブを内側リングと、この内側リングと
別個に製作され内側リングに被せた外側リングとで構成
され、外側リングの内周面にリーダーテープの一端部を
係止するテープクランプを設ける。このテープクランプ
と外界との間を貫通するスリットを設けて、このスリッ
トを通じてリーダーテープの他端部を外界に引き出す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、テープリールに関し、
詳しくは、テープリールのリールハブにリーダーテープ
を係止するためのクランプ構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来技術におけるビデオカセット用テー
プリールは、図８に示すように、上フランジ１と、下フ
ランジ２と、リールハブ３とからなり、下フランジ２と
リールハブ３とは一体成形され、上フランジ１はリール
ハブ３に溶着等により固定されている。

【０００３】リールハブ３は単なる円柱ではなく、一般
的には、磁気テープを巻き付けている外側リング（外ハ
ブという）と、外ハブと同軸で直径の小さい内側リング
（内ハブという）と、上記外ハブと上記内ハブとの間を
放射状に連結する複数のリブとで一体形成されている。

【０００４】リールハブ３の外周面の１ヶ所には、テー
プクランプ４が設けられており、リーダーテープ５の先
端部を容易に抜けないように挟み込んでいる。リーダー
テープ５の後端部は、スライシングテープ６により磁気
テープ７と接続されている。所定長の磁気テープ７は、
上フランジ１と下フランジ２とに両縁を制約されてリー
ルハブ３に巻回される。

【０００５】テープクランプ４の構造（以下クランプ構
造という）の従来の考え方は、図９および図１０に示す
ように、リールハブ３の外ハブ８の１箇所を軸方向に切
り欠くことによって開口とし、内ハブ９の表面を底面と
する穴（クランプホールという）１０と、リールハブ３
とは別個に、例えば、アーチ状又はП字状に製作され、
組み立て時にリーダーテープ５を挟んでクランプホール
１０に嵌め込まれたクランパ１１とからなる。

【０００６】外ハブ８及びクランパ１１の製造に当たっ
ては、夫々の上面が同一の曲率を持ち、かつ、クランパ
１１の上面から脚部１１ａ、１１ｂの下端までの距離
は、外ハブ８の外面と内ハブ９の外面との距離（即ちク
ランプホール１０の深さ）よりリーダーテープ５の厚さ
分だけ小さくなるように成形してある。

【０００７】これにより、図示のようにクランパ１１を
リーダーテープ５を挟んでクランプホール１０に嵌め込
んだ時、両者で形成されるリールハブ３の外周面が、両
者の境界（図示のＡ及びＢ）で面一になるようにしてい
る。

【０００８】なお、クランパ１１は、組み立ての際に方
向を気にする必要がないように、左右対称の形状および
大きさに作られている。

【０００９】リールハブ３にリーダーテープ５を固定す
るには、リーダーテープ５をクランパ１１の側面に当て
てクランプホール１０の側壁との間で挟みながら、クラ
ンパ１１をクランプホール１０に嵌合する。

【００１０】その結果、リーダーテープ５は、クランプ
ホール１０の側壁面とクランパ１１の側面との間、並び
に、クランパ１１の片方または両方の脚部の先端と内ハ
ブ９の表面との間で挟まれて係止されることになる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のクランプ構造では、テープリールに巻装された磁気
テープ７に所謂寝押し現象が発生する。この寝押し現象
は、図１１に示すように、リールハブ３の外ハブ８の外
周面とクランパ１１の外周面との高さの差による段差Ｅ
により、リールハブ３に巻装された磁気テープの各巻回
毎に、図１２に示すように、クランパ１１の両側に相当
する位置Ａ、Ｂ（図９参照）と、リーダーテープ５の最
先端に当たる位置Ｃ（図９参照）とに幅方向に線状に出
来る変形Ｎのことである。この変形は磁気テープ７をテ
ープリールに巻装した状態で長期間保存すると、線状の
痕跡として固定化し、再生画像を劣化させる原因にな
る。

【００１２】寝押し現象を防止するためには、クランプ
ホール１０およびクランパ１１の各寸法をリーダーテー
プ５の厚みを考慮して、精密な加工により製作すること
により、上記段差を極力小さくすることが必要である。

【００１３】しかし、クランプホール１０を形成するリ
ールハブの本体（外ハブ、内ハブ、放射状リブ）と、ク
ランパ１１とは別個の部品として夫々大量生産され、ク
ランプホール１０の深さおよびクランパ１１の高さは、
夫々、多かれ少なかれ製作上の寸法のバラツキを有す
る。

【００１４】従って、このような寸法にバラツキのある
２つの部品群から夫々無作為に１個ずつ抽出して組み立
てた各テープリール製品には、大小および正負の段差Ｅ
が確率的な値として存在することは避けられない。

【００１５】例えば、クランプホール１０の深さおよび
クランパ１１の高さの各寸法の偏差方向および偏差値が
一致したため偶然段差Ｅがゼロのテープリールとなるも
のもあり、その反対に、上記各寸法の偏差値がいずれも
最大で、各偏差方向が反対である場合には、最大の段差
を持ったテープリールになってしまう。

【００１６】結論的に、外ハブ８の外周面にクランプホ
ール１０を形成し、このクランプホール１０に、外ハブ
８と別個に製作されたクランパ１１を嵌合することによ
りリーダーテープ５を係止するという従来のクランプ構
造による限り、段差の問題を根本的に解決することはで
きない。

【００１７】従って、本発明は、磁気テープの寝押し現
象を防止するテープリールを提供することを目的とし、
磁気テープを巻回するリールハブの外周面に段差を極め
て少なくできるテープクランプ構造に課題を有する。

【００１８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係るテープリールのリールハブは、（１）
下フランジと一体成形された内側リングと、（２）この
内側リングとは別個に製作され、テープを装着した後、
内側リングの外周に嵌め込まれた外側リングと、（３）
この外側リングの内周面に設けた空間の中に、テープの
一端部を係止するように形成されたテープクランプと、
（４）外側リングに、テープクランプと外界との間を貫
通するように形成されたスリットとを具備する。

【００１９】また、リールハブは、（５）内側リングの
外周面に設けられた突起と、（６）外側リングの内周面
に、上記内側リングの突起と対応して設けられた溝とを
有する。

【００２０】

【作用】上記構成によるテープリールのリールハブは、
下フランジと一体成形された内側リングの外側に、内側
リングとは別個に製作された外側リングを密着して被せ
た２層リング構造を持ち、外側リングの外周面はリール
ハブの外周面となる。

【００２１】テープクランプは、外側リングの内周面に
設けられており、テープの一端部を係止する。テープの
他端部は、テープクランプと空間的につながるテープ引
き出し用スリットを通してリールハブの外界へ引き出さ
れている。

【００２２】外側リングの外周面には、段差の原因にな
る他の部品は何も存在しない構造とすることができる。

【００２３】

【実施例】以下、本発明に係るテープリールの実施例に
ついて図面を参照して説明する。なお、以下の図面にお
いて、従来技術と同一のものには、図８〜１２と同一の
符号を付与してある。

【００２４】本実施例によるテープリールは、カセット
用テープリールであって、図１の分解図に示すように、
円板状の上フランジ１と、上フランジ１と同径の下フラ
ンジ２と、上フランジ１と下フランジ２との間に挟まれ
磁気テープを巻回する円筒形状のリールハブ１３とから
なる。

【００２５】リールハブ１３は、下フランジ２と一体成
形されたリング状の内ハブ１４と、この内ハブ１４とは
別個に製作され、内ハブ１４の外周に嵌め込まれ、リー
ルハブ１３の外周面を形成する外ハブ１５とで２層リン
グ構造をなしている。

【００２６】外ハブ１５の内周面には、リーダーテープ
５の一端部を係止するためのテープクランプ１６が形成
されている。また、外ハブ１５には、テープクランプ１
６と外界との間を空間的に貫通するリーダーテープ引き
出し用スリット１７が形成されている。

【００２７】リーダーテープ５は、その１端部を、テー
プクランプ１６により容易に抜けないように係止され、
リーダーテープ引き出し用スリット１７を通じてリール
ハブ１３の外へ引き出されている。

【００２８】即ち、本発明に係るテープクランプ構造
は、リールハブの外周面に設けたクランプホールにクラ
ンパを嵌め込んでリーダーテープを係止する従来のクラ
ンプ構造とは根本的に異なることに先ず注目する必要が
ある。

【００２９】リーダーテープ５の後端は、スライシング
テープ６により磁気テープ７が接続されている。所定長
の磁気テープ７は、上フランジ１と下フランジ２とに両
縁を制約されてリールハブ１３に巻き付けられている。
以下、 １．外ハブ１５、 ２．内ハブ１４、 ３．内ハブ１４と外ハブ１５との合体、 ４．最終組み立て、 の順に説明する。

【００３０】１．外ハブ１５ 外ハブ１５は、やや弾性を有する材料を用いて、内ハブ
１４とは別部品として製作され、高さが磁気テープ７の
幅とほぼ等しく、内径が内ハブ１４の外径とほぼ等しい
リング状に成形されている。なお、外ハブ１５の外径
は、リールハブ１３の所要の外径とすることは勿論であ
る。

【００３１】この外ハブ１５には、図２に示すように、
内周円上の１箇所に上下方向に貫通する溝状の凹形空間
を形成し、この凹形空間の中にリーダーテープ５の一端
部を係止する構造を持つテープクランプ１６と、このテ
ープクランプ１６から外周面に貫通したリーダー引き出
し用スリット１７と、テープクランプ１６と異なる内周
面に矩形形状のストッパ溝１８とが設けられている。

【００３２】テープクランプ１６の構造は、（１）リー
ダーテープ５の一端部を容易に抜けないように係止する
ことと、（２）係止されたリーダーテープ５を後述する
リーダーテープ引き出し用スリット１７に導く空間を有
することと、（３）その内周面は、外ハブ１４の他の内
周面と面一であるか又は凹んでいること以外には、特に
制限はない。

【００３３】第１の条件は、テープクランプ構造の必須
要件であり、第２の条件は、係止されたリーダーテープ
５をリーダーテープ引き出し用スリット１７を通してリ
ールハブ１３の外界へ引き出すために必要であり、第３
の条件は、リーダーテープ５を装着した後に内ハブ１４
と合体させるために必要である。

【００３４】上記条件に合致するテープクランプ１６の
一実施例を図３に示す。図３において、外ハブ１５の円
周方向の１箇所を、幅Ｗ、厚さＤの隘部１５ａと、この
隘部１５ａから内方向に突出する２本の爪１９ａ、１９
ｂとだけを残して他の部分を除去することによって、内
周面に、上下方向に貫通し、幅がＷであり、断面が山の
字状のクランプキャビンと称する凹形空間１９を一体成
形する。爪１９ａ、１９ｂは、夫々、円周方向外側へ突
き出た鉤状先端部を有している。

【００３５】リーダーテープ引き出し用スリット１７
は、外ハブ１５にクランプキャビン１９を形成した時
に、同時に、隘部１５ａの一端（図３では左端）に、ク
ランプキャビン１９の空間と外ハブ１５の外界との間を
貫通したスリットである。

【００３６】ストッパ溝１８は、外ハブ１５の内周面の
クランプキャビン１９と異なる位置に設けたものであ
り、図４に示すように、幅Ｘ１、深さＦ１で、上下方向
に貫通する溝を形成する。このストッパ溝１８は、内ハ
ブ１４に外ハブ１５を合体させる時、内ハブ１４の突起
２２と係合させることにより、外ハブ１５が内ハブ１４
に対して回転するのを防止すると共に、合体した後は、
内ハブ１４の回転を外ハブ１５に円滑に伝達する機能を
有する。

【００３７】一方、別部品としてクランパ２０を製作す
る。クランパ２０は、図３に示すように、幅がほぼＷに
等しく、長さが外ハブ１５の長さに等しい凹字形状に形
成されている。このクランパ２０の下面の幅方向は、外
ハブ１５の内周面と等しい曲率で湾曲している。 ま
た、クランパ２０の幅方向左右両側には、下面に直立す
る爪２１ａ、２１ｂが一体成形されている。爪２１ａ、
２１ｂは、夫々、内向きの鉤状先端部を有している。

【００３８】クランプキャビン１９およびクランパ２０
の製作に当たっては、（隘部１５ａの厚さＤ＋爪１９
ａ、１９ｂの長さ＋リーダーテープ５の厚さ＋クランパ
２０の厚さ）は、外ハブ１５の厚さに等しいかあるいは
小さくなるように、夫々の寸法を選定する。これは、ク
ランプキャビン１９にクランパ２０を嵌合した時、クラ
ンパ２０の面が外ハブ１５の内周面から飛び出さないよ
うにするためである。

【００３９】上記のように形成されたテープクランプ１
６によるリーダーテープ５の係止は下記のように行う。

【００４０】リーダーテープ５の一端部を、図３に示す
ように、リーダーテープ引き出し用スリット１７にリー
ダーテープ５を通して一端を外ハブ１５の内部に入れ
る。次に、外ハブ１５の内部に入れたリーダーテープ５
の一端部を爪１９ａ、１９ｂの各先端に当て、外ハブ１
５の内側から、クランパ２０をクランプキャビン１９に
嵌合する。この時、相対する爪１９ａと爪２１ａ、およ
び爪１９ｂと爪２１ｂの夫々の先端部同士は反対方向に
鉤状に膨らんでいるため、若干の圧力が必要であるが、
互いに弾性を有するため、軽く圧力を加えるだけで、押
し込むことができるようになっている。

【００４１】そして、クランパ２０が、図３に示すよう
に、充分に圧入されると、弾性変形していた各爪１９
ａ、１９ｂ、２１ａ、２１ｂは復元し、その結果、爪１
９ａと爪２１ａの各先端部同士、および、爪１９ｂと爪
２１ｂの各先端部同士が、夫々係合し、クランパ２０
は、リーダーテープ５を係止したまま外ハブ１５の内周
面に固定される。

【００４２】２．内ハブ１４ 内ハブ１４と下フランジ２との一体成形部品の下面を図
５に示す。内ハブ１４の外径は、外ハブ１５の内径とほ
ぼ等しく、その外周面には、図４に示すように、外ハブ
１５のストッパ溝１８の幅Ｘ１よりやや小さい幅Ｘ２
で、ストッパ溝１８の深さＦ１よりやや小さい高さＦ２
の突起２２が、上端から下端まで形成されている。

【００４３】内ハブ１４のリングの内面には、ビデオテ
ープレコーダの駆動モータの回転力をテープリール全体
に伝達するための歯車２３が形成されている。この歯車
２３は、図６に示すように、内ハブ１４の上部を構成す
る円板２４の下面から下方に突出している。

【００４４】３．内ハブ１４と外ハブ１５との合体 内ハブ１４と外ハブ１５とを合体してリールハブ１３を
形成するには、図１、図４、図６に示すように、突起２
２とストッパ溝１８とを合わせて内ハブ１４と外ハブ１
５との位置決めした後、外ハブ１５に対して上方から軽
い圧力Ｆを加える。

【００４５】すると、外ハブ１５は、内ハブ１４の内周
面にスライドして嵌め込まれる。この時、突起２２と溝
１８との係合により、外ハブ１５は、内ハブ１４に対し
て回転しないようになっている。その結果、図７の下半
分のような２層構造のリールハブ１３が出来上がる。

【００４６】４．最終組み立て 上記１．〜３．により、リーダーテープ５を装着したリ
ールハブ１３の上部に、図７に示すように、上フランジ
１を固定する。上フランジ１は上面は平らであるが、下
面には、内ハブ１４の上部の円板２４と接するために、
下方に突出する円板状中央部を有する。内ハブ１４の上
面と上フランジ１の上記中央部は、超音波溶接等で溶着
される。

【００４７】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るテー
プリールは、従来のテープリールにおいて必然的に発生
したリールハブ外周面における段差を無くした構造にし
て、段差はテープの厚み分のみとすることができ、磁気
テープの寝押し現象を極端に少なくすることができると
共に、例え寝押し状態になっても致命的な記録状態の損
壊を防止することができると云う極めて優れた効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るテープリールの実施例の全体構成
を示す分解説明図である。

【図２】同実施例の外ハブの下面図である。

【図３】同実施例のテープクランプ構造を示す説明図で
ある。

【図４】同実施例のストッパ用溝および突起を示す説明
図である。

【図５】同実施例の下フランジおよび内ハブの下面図で
ある。

【図６】同実施例におけるリールハブの組み立てを示す
説明図である。

【図７】同実施例における最終組み立てを示す説明図で
ある。

【図８】従来技術によるテープリールの斜視図である。

【図９】従来技術によるクランプ構造の説明図である。

【図１０】従来技術によるクランプ構造の説明図であ
る。

【図１１】従来技術によるクランプ構造における段差の
説明図である。

【図１２】従来技術によるクランプ構造に基づく磁気テ
ープの寝押し現象の説明図である。

【符号の説明】

１ 上フランジ ２ 下フランジ ５ リーダーテープ ６ スプライシングテープ ７ 磁気テープ １３ リールハブ １４ 内ハブ（リールハブの内側リング） １５ 外ハブ（リールハブの外側リング） １６ テープクランプ １７ リーダーテープ引き出し用スリット １８ ストッパ溝 １９ クランプキャビン ２０ クランパ ２２ 突起

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】２層リング構造のリールハブと、該リール
   ハブを挟む同径の上フランジおよび下フランジとからな
   るテープリールであって、前記リールハブは、前記下フ
   ランジと一体成形された内側リングと、該内側リングと
   は別個に作成され、テープの一端を装着して前記内側リ
   ングの外周に嵌め込まれる外側リングと、該外側リング
   の内周面に設けた空間の中に、前記テープの一端を係止
   するように形成されたテープクランプと、前記外側リン
   グに、前記テープクランプと外界との間を貫通するよう
   に形成されたリーダーテープ引き出し用スリットとを具
   備することを特徴とするテープリール。
2. 【請求項２】前記内側リングの外周面に設けられた突起
   と、 前記外側リングの内周面に、前記内側リングの突起と対
   応して設けられた溝とを具備することを特徴とする請求
   項１に記載のテープリール。
3. 【請求項３】前記テープクランプは、前記空間に内向き
   に突出する第１の爪部と、前記リーダーテープを挟ん
   で、内側から前記第１の爪部と係合する第２の爪部とを
   有することを特徴とする請求項２に記載のテープリー
   ル。