JPH08229663A - 金属焼結体複合材料 - Google Patents

金属焼結体複合材料

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JPH08229663A
JPH08229663A JP3738195A JP3738195A JPH08229663A JP H08229663 A JPH08229663 A JP H08229663A JP 3738195 A JP3738195 A JP 3738195A JP 3738195 A JP3738195 A JP 3738195A JP H08229663 A JPH08229663 A JP H08229663A
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composite material
sintered body
layer
aluminum alloy
thermal expansion
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JP3738195A
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Yoshiaki Kajikawa
義明 梶川
Manabu Fujine
学 藤根
Minoru Yamashita
実 山下
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】急冷時における亀裂を防止する金属焼結体複合
材料を提供すること。 【構成】格子構造をもつ鉄系の多孔質金属焼結体1の気
孔部分にアルミ合金(AC8A)の溶湯を高圧鋳造法に
て含浸、固化させ、これにより複合材料部2とアルミ合
金部3とからなるピストン等の金属焼結体複合材料を得
る。複合材料部2とアルミ合金部3との界面における熱
膨張差は5×10-6/℃以下に設定されている。多孔質
金属焼結体1は積層構造であり、アルミ合金部3に熱膨
張率が近い層と、摺動面を形成する層とを備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属焼結体複合材料に関
する。本発明に係る金属焼結体複合材料は例えば摺動部
材、具体的には内燃機関のピストンのピストンリング溝
を形成する領域などに適用できる。
【0002】
【従来の技術】特開平3−189063号公報、特開平
3−189064号公報には、金属粉末を焼結した多孔
質金属焼結体を用い、多孔質金属焼結体の気孔部分にア
ルミ系、マグネシウム系等の軽金属を含浸、固化させた
複合材料部をもつ金属焼結体複合材料に関する技術が提
案されている。
【0003】また上記公報によれば、上記複合材料部を
構成する軽金属と同材質の軽金属母材部で、複合材料部
を覆う技術も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した金属焼結体複
合材料の温度を急激に変化させる際に、例えば、高温領
域に加熱した直後の金属焼結体複合材料を急冷処理する
際に、複合材料部と軽金属母材部との界面において亀裂
が発生することが往々にしてある。軽金属が含浸される
多孔質金属焼結体を構成する原料として、強度、弾性
率、耐摩耗性等の特性及びコスト等の観点から鉄系が選
択されることが多いが、鉄系の焼結体を用いた場合に
は、金属焼結体複合材料の温度を急激に変化させる際
に、軽金属母材部と複合材料部との界面において亀裂が
発生し易い。
【0005】本発明は上記した実情に鑑みなされたもの
であり、請求項1の課題は、両者の熱膨張率の差を規定
することにより、焼き入れ等の急冷処理の様に温度変化
が急激な場合において、複合材料部と軽金属母材部との
界面での亀裂を抑えるのに有利な金属焼結体複合材料を
提供することにある。請求項2の課題は、上記課題に加
えて、軽金属が含浸、固化されて複合材料部を構成する
多孔質金属焼結体を積層構造とすることにより、熱膨張
率の差を小さく規定して耐亀裂性を確保しつつ、複合材
料部を摺動部材として一層適する様にした金属焼結体複
合材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る金属焼結
体複合材料は、多孔質金属焼結体の気孔部分に軽金属を
含浸、固化して形成した複合材料部と、複合材料部を被
覆すると共に該複合材料部を構成する軽金属と同材質の
軽金属母材部とからなり、複合材料部と軽金属母材部と
の界面において両者の熱膨張率の差を5×10-6/℃以
下としたことを特徴としたものである。
【0007】請求項2に係る金属焼結体複合材料は、請
求項1において、軽金属が含浸、固化されて複合材料部
を構成する多孔質金属焼結体は、軽金属母材部との熱膨
張率の差を小さくする母材側焼結体層と、母材側焼結体
層と一体をなすと共に摺動面を形成する摺動側焼結体層
とを備え、摺動側焼結体層は、母材側焼結体層よりも摺
動特性が優れていることを特徴とするものである。
【0008】
【作用及び発明の効果】請求項1によれば、複合材料部
と軽金属母材部との界面において両者の熱膨張率の差は
5×10-6/℃以下とされている。そのため急冷処理等
の様に温度が急激に変化したとしても、複合材料部と軽
金属母材部との界面において亀裂抑制性を高め得る。
【0009】熱膨張率の差が小さいため、急冷処理に伴
い発生する熱収縮に起因するせん断力の発生の度合が減
少するためと推察される。よって本発明に係る金属焼結
体複合材料によれば、両者の界面における耐亀裂性は高
まり、耐久性や長寿命化に有利である。請求項2によれ
ば、複合材料部を構成する多孔質金属焼結体は、軽金属
母材部との熱膨張率の差を小さくする母材側焼結体層
と、摺動面を形成する摺動側焼結体層とを備えており、
いわば積層構造とされている。そして、摺動面を形成す
る摺動側焼結体層は、母材側焼結体層よりも摺動特性が
優れている。
【0010】そのため請求項2によれば、複合材料部と
軽金属母材部との熱膨張率の差を小さくして界面におけ
る耐亀裂性を確保しつつ、摺動面における摺動特性(例
えば耐摩耗性、強度、弾性率、靭性など)を確保するの
に有利であり、摺動面の耐久性や長寿命化に有利であ
る。
【0011】
【実施例】本発明の実施例について、実施例に至る経緯
と共に説明する。図1は本実施例に係る金属焼結体複合
材料の断面を模式的に示す。金属焼結体複合材料は、複
合材料部2と、軽金属母材部としてのアルミ合金部3と
で形成されている。複合材料部2は、気孔部分をもつ格
子構造を備えたスケルトン状の多孔質金属焼結体1を用
い、これに軽金属としてのアルミ合金の溶湯を含浸し、
固化して形成されている。
【0012】アルミ合金部3は、複合材料部2を被覆す
ると共に複合材料部2を構成するアルミ合金と同材質の
アルミ合金で形成されている。多孔質金属焼結体1は複
合材料部2のアルミ合金を強化する強化材を構成するも
のである。多孔質金属焼結体1を構成する材料として
は、その強度、弾性率、耐摩耗性等の特性及びコストな
どから、鉄系材料を選択することが好ましい。従って鉄
系粉末を焼結して構成できる。鉄系粉末としては炭素鋼
粉末、鋳鉄系粉末、合金鋼粉末(例えばSKD系、SK
H系等)などを採用できる。
【0013】本実施例では前述の様に、気孔部分をもつ
格子構造を備えたスケルトン状の多孔質金属焼結体1を
用い、多孔質金属焼結体1の気孔部分にアルミ合金の溶
湯を高圧鋳造法にて含浸させ、固化させ、一体的に複合
化する。これにより金属焼結体複合材料を製造する。こ
の様にして製造した金属焼結体複合材料に対して、溶体
化→焼き入れ→時効処理を順に実施する。この場合、焼
き入れ時に複合材料部2とアルミ合金部3との界面にお
いて亀裂が発生し易い。
【0014】鉄系材料は一般的に熱膨張率が11×10
-6/℃程度である。複合材料部2のうち鉄系の多孔質金
属焼結体1が占める体積率を65%とした場合には、ア
ルミ合金(JIS AC8A、熱膨張率:20×10-6
/℃)の溶湯を含浸し、固化させて複合材料部2を形成
すると、その複合材料部2の熱膨張率は基本的には約1
4×10-6/℃となる。従って複合材料部2とアルミ合
金部3との熱膨張率の差は、基本的には6×10-6/℃
(=20×10-6/℃−14×10-6/℃)となり、大
きくなる。
【0015】なお体積率とは、複合材料部2の体積をV
1とし、複合材料部2のうち多孔質金属焼結体部分が占
める体積をV2としたとき、{(V2/V1)×10
0}%の意味である。この様に鉄系の多孔質金属焼結体
1を用いた複合材料部2の熱膨張率とアルミ合金部3の
熱膨張率との差が大きいため、焼き入れ等の急冷処理に
おいて急激な温度変化で、複合材料部2とアルミ合金部
3との界面において急激にせん断力が働いて、亀裂が発
生し易くなるものと推察される。
【0016】なお上記したアルミ合金(JIS AC8
A)は、JIS規格上、重量%でSiが11.0〜1
3.0%、Mgが0.7〜1.3%、Cuが0.8〜
1.3%、Niが1.0〜2.5%、Feが0.8%以
下、Znが0.1%以下と規定されている。一方、他の
形態として、オーステナイト系ステンレス鋼であるSU
S304の金属粉末を圧粉して焼結した格子構造をもつ
スケルトン状の多孔質金属焼結体1を用い、その多孔質
金属焼結体1の気孔部分にアルミ合金の溶湯を含浸、固
化させて複合化し、複合材料部2とアルミ合金部3とを
備えた金属焼結体複合材料を形成した。この複合材料部
2に占める多孔質金属焼結体1の体積率は70%であ
る。
【0017】この金属焼結体複合材料を焼き入れしたと
ころ、複合材料部2とアルミ合金部3との界面において
亀裂は発生しなかった。この場合、SUS304製の多
孔質金属焼結体1にアルミ合金を含浸、固化させて形成
した複合材料部2は、熱膨張率が基本的には約18×1
-6/℃である。従って熱膨張率がアルミ合金部3の熱
膨張率(基本的には20×10-6/℃)に近く、両者の
熱膨張率の差は小さくなり、従って急冷処理の際にそれ
ほど大きなせん断力が界面に生じないため、亀裂が発生
しなかったものと推察される。
【0018】上記検討の後、各種複合材料について同様
の検討をした結果、複合材料部2の熱膨張率とアルミ合
金部3の熱膨張率との差を5×10-6/℃以下とすれ
ば、焼き入れ等の急冷処理時に複合材料部2とアルミ合
金部3との界面において亀裂抑止効果が高くなり、亀裂
が発生しないことがわかった。ところで鉄系材料は一般
的に熱膨張率がアルミ系よりもかなり小さく、前述の様
に11×10-6/℃程度であり、アルミ系の熱膨張率と
の差は大きい。高い熱膨張率、即ちアルミ合金部3に近
い熱膨張率をもつ鉄系材料は、オーステナイト系ステン
レス鋼やマンガン鋼等に限られている。しかしこのよう
なオーステナイト系ステンレス鋼やマンガン鋼等の材料
のみでは、優れた摺動特性を備えた金属焼結体複合材料
を製造するには不利である。
【0019】そこで本発明者は、複合材料部2のうちア
ルミ合金部3に直接接触する度合が大きな領域は、アル
ミ合金部3との熱膨張率の差を5×10-6/℃以下と小
さくし、且つ、複合材料部2のうち摺動面を形成する領
域は、アルミ合金部3との熱膨張率の差が大きいもの
の、つまり5×10-6/℃を越えるかもしれないが、摺
動特性に優れた材料とすれば良いことに、着目した。
【0020】この様な特性を備えた金属焼結体複合材料
は、多層構造の多孔質金属焼結体を用い、これにアルミ
合金の溶湯を含浸、固化させて形成することにより実現
できる。この例を図2に示す。図2に示す様に、アルミ
合金が含浸される多孔質金属焼結体4は三層の積層構造
であり、外側の層を構成する母材側焼結体層としての第
1層41と、同じく外側の層を構成する母材側焼結体層
としての第3層43と、第1層41、第3層43に挟ま
れた摺動側焼結体層としての第2層42とを備えてい
る。ここで第1層41、第4層43にアルミ合金を含浸
固化させた複合材料部分の熱膨張率は、アルミ合金部3
の熱膨張率との差を小さく設定し、つまり5×10-6
℃以下に設定する。
【0021】第2層42にアルミ合金を含浸固化させた
複合材料部分は、摺動面を形成するものである。従って
第2層42は、摺動特性(一般的には耐摩耗性、強度、
弾性率及び靭性等の性質)が第1層41、第3層43よ
りも優れている様に設定されるている。 (試験例) <試験例1>表1は本試験例で用いる供試粉末を示す。
表1に示す粉末aは耐熱系高合金鋼であるSKD61相
当粉末(粒径:20〜180μm、水アトマイズ法)、
粉末bはオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS3
04相当粉末(粒径:20〜180μm、水アトマイズ
法)、粉末cはマンガン鋼粉末(粒径:20〜180μ
m、水アトマイズ法)、粉末dはセラミックス系硬質粒
子粉末であるムライト粉末(粒径:10〜45μm、粉
砕法)である。
【0022】表2は本試験例で製造した試験片A、B、
Cを示す。表2から理解できる様に、試験片Aによれ
ば、多孔質金属焼結体4は前述の様に第1層41と第2
層42と第3層43との積層構造されている。第1層4
1は体積率が60%に設定されており、粉末bで形成さ
れている。第2層42は体積率が60%に設定されてお
り、粉末aで形成されている。第3層43は体積率が6
0%に設定されており、粉末bで形成されている。
【0023】表2から理解できる様に、試験片Bによれ
ば、試験片Aと同様に多孔質金属焼結体4は第1層41
と第2層42と第3層43との積層構造されている。第
1層41は体積率が60%に設定されており、体積率4
0%に相当する粉末aと、体積率20%に相当する粉末
bとで形成されている。なお、粉末aが体積率40%に
相当するとは、第1層41に係る複合材料部分の体積を
100%としたとき、粉末aで形成された焼結体部分が
体積で40%を占めるという意味である。
【0024】第2層42は体積率が60%に設定されて
おり、粉末aで形成されている。第3層43は第1層4
1と基本的に同様であり、体積率が60%に設定されて
おり、体積率40%に相当する粉末aと、体積率20%
に相当する粉末bとで形成されている。表2から理解で
きる様に、試験片Cよれば、多孔質金属焼結体は1層で
あり、体積率が60%に設定されており、粉末aで形成
されている。
【0025】そして、表1に示した所定の金属粉末を用
い、潤滑剤としてのステアリン酸亜鉛を金属粉末に対し
て1wt%を秤量し、それらをV型混合機にて混合し
た。次に、30mm×40mmの大きさのキャビティを
備えた金型に、所定量の粉末を入れ、加圧することによ
り、圧粉体(30mm×40mm×厚さ10mm)を作
成した。
【0026】なお試験例A、試験例Bに係る3層構造の
圧粉体は、金型のキャビティに順次金属粉末を投入して
加圧することにより製作した。このとき第1層の厚さ、
第3層の厚さをそれぞれ2mm、第2層の厚さを6mm
となるように、粉末の投入量をコントロールした。そし
て試験例A〜試験例Cに係る圧粉体を真空焼結炉にてそ
れぞれ焼結した。即ち、真空焼結炉にて700℃で30
分間保持し、ステアリン酸亜鉛を揮発させ、その後に、
1100℃で30分間焼結し、以て格子構造をもつスケ
ルトン状の試験例A〜試験例Cに係る多孔質金属焼結体
を得た。
【0027】焼結した後は、100℃/分の冷却速度と
なるように窒素ガスで各多孔質金属焼結体を強制冷却し
た。つまり気体冷却した。なお窒素ガスを用いたのは多
孔質金属焼結体の酸化防止などを考慮したからである。
この場合、多孔質金属焼結体を水冷や油冷することは好
ましくない。多孔質金属焼結体の気孔内部に水分や油分
を残留させ易く、アルミ合金の溶湯を含浸して複合化し
た際に水分や油分が蒸散してガス欠陥を誘発し易いから
である。
【0028】次に、試験例A〜試験例Cに係る多孔質金
属焼結体を、それぞれ200℃において大気雰囲気で3
0分間予熱した。その後、予熱した各多孔質金属焼結体
を高圧鋳造金型のキャビティの所定位置に配置し、75
0℃のアルミ合金(JISAC8A)の溶湯をキャビテ
ィに注ぎ、直ちに100MPaの加圧力で加圧した。こ
れによりスケルトン状の多孔質金属焼結体の気孔部分に
アルミ合金の溶湯を含浸させた。アルミ合金の固化によ
り両者が一体化して金属焼結体複合材料(φ100×5
0mm)が形成される。これを金型から取り出した。こ
の様にして製造した金属焼結体複合材料の断面を図3に
示す。
【0029】この様にして製造した金属焼結体複合材料
を用い、大気中において500℃×3時間の条件で加熱
保持して溶体化処理した後、約70℃の温水に焼き入れ
した。その後、その金属焼結体複合材料を大気中におい
て220℃×3時間の条件で加熱保持して時効処理を実
施した(ASTM:T7処理)。この時効処理により複
合材料部2のアルミ部分、アルミ合金部3のアルミ部分
は強化、安定化される。
【0030】この様にして得られた金属焼結体複合材料
を複合材料部2が露出するように半分に切断した。そし
て、その切断面をカラーチェックをして複合材料部2と
アルミ合金部3との界面における亀裂発生状況を調査し
た。その結果を表2において○×で示した。表2から理
解できる様に、試験片Cにおいては、亀裂発生の評価は
×であった。即ち、複合材料部2とアルミ合金部3との
界面において赤色の発色がみられ、亀裂が発生していた
ことが確認された。一方、三層積層構造の多孔質金属焼
結体4が採用されている試験片Aにおいては、複合材料
部2とアルミ合金部3との界面には、全く赤色の発色が
見られず、亀裂が発生していないことが確認できた。
【0031】また三層積層構造の多孔質金属焼結体4が
採用されている試験片Bにおいても、試験例Aと同様
に、複合材料部2とアルミ合金部3との界面には、全く
赤色の発色が見られず、亀裂が発生していないことが確
認できた。上記試験例A〜試験例Cに使用された複合材
料部2の各層と同じ材質の熱膨張測定試験片を形成し、
その熱膨張率を測定した。同様にアルミ合金部3と同じ
材質の熱膨張測定試験片を形成し、その熱膨張率も測定
した。その結果も表2に示す。
【0032】表2から理解できる様に、試験片Aによれ
ば、オーステナイト系ステンレス鋼粉末を基材とする第
1層41に係る複合材料部分は熱膨張率が18.4×1
-6/℃である。SKD61相当粉末を基材とする第2
層42に係る複合材料部分は熱膨張率が14.5×10
-6/℃である。第3層43に係る複合材料部分は第1層
41の場合と同様に熱膨張率が18.4×10-6/℃で
ある。なお、熱膨張率は常温領域〜400℃の温度領域
において測定したものである。
【0033】表2から理解できる様に、試験片Bによれ
ば、第1層41に係る複合材料部分は熱膨張率が15.
4×10-6/℃であり、第2層42に係る複合材料部分
は熱膨張率が14.5×10-6/℃であり、第3層43
に係る複合材料部分は熱膨張率が15.4×10-6/℃
であった。SKD61相当粉末のみを基材とする試験片
Cは、熱膨張率が14.5×10-6/℃であった。
【0034】前述した様に試験片Cにおいて亀裂が発生
したのは、複合材料部2とアルミ合金部3との熱膨張率
の差が5.5×10-6/℃(=20.0×10-6−1
4.5×10-6)と大きく、急冷時においてせん断力が
作用して界面において亀裂が発生したものと推察され
る。また試験片Aによれば、複合材料部2の第1層41
に係る複合材料部分、第3層41に係る複合材料部分と
アルミ合金部3との熱膨張率の差が1.6×10-6/℃
(=20.0×10-6−18.4×10-6)である。ま
た試験片Bによれば、4.6×10-6/℃(=20.0
×10-6−15.4×10-6)と小さな値であり、熱膨
張率の差が5.0×10-6/℃以下であるため、界面に
おいて亀裂は発生しなかった。
【0035】以上の結果を勘案すれば、複合材料部2と
アルミ合金部3との熱膨張差が5×10-6/℃以下であ
れば、焼き入れ時において界面の亀裂の発生を防止でき
ることが分かる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】 <試験例2>試験例Dとして、図4に示すリング状の多
孔質金属焼結体5(外径92mm、内径72mm、厚さ
7mm)を形成した。このリング状の多孔質金属焼結体
は、外側の層を構成する母材側焼結体層としての第1層
51及び第3層53(厚み1mm)と、第1層51及び
第3層53に挟まれた摺動側焼結体層としての第2層5
2(厚み5mm)とで形成されている。
【0038】表3から理解できる様に、試験片Dによれ
ば、第1層51は体積率が60%に設定されており、体
積率30%に相当する粉末aと、体積率30%に相当す
る粉末cとで形成されている。ここで、粉末aが体積率
30%に相当するとは、前述同様に、多孔質金属焼結体
の第1層51に係る複合材料部分を100体積%とした
とき、そのうち粉末aからなる焼結体部分が30%占め
るという意味である。第2層52は体積率が63%に設
定されており、体積率60%に相当する粉末aと、3%
に相当する粉末dとで形成されている。第3層53は第
1層51と基本的に同様であり、体積率が60%に設定
されており、体積率30%に相当する粉末aと、体積率
30%に相当する粉末cとで形成されている。
【0039】第2層52は表2から理解できる様に、S
KD61相当の粉末とセラミックス硬質粒子を形成する
ムライト粉末(Hv1400〜1500〜1600程
度)との混合粉末で形成されているため、耐摩耗性、強
度、弾性率の性質が、外第1層51及び第3層53より
も優れている。次に、上記した図4に示す多孔質金属焼
結体を300℃×30分の条件で予熱した後、ピストン
用高圧鋳造金型のキャビティのうちのトップリング溝位
置に対応するに配置し、そして760℃のアルミ合金
(JIS AC8A)溶湯を注ぎ、約100MPaの加
圧力で加圧し、高圧鋳造によりピストン7(図5参照)
を形成した。図5から理解できる様にピストン7は、ピ
ストン7の主体を形成すると共にピストンヘッド7kを
備えた複合材料部2と、この複合材料部2を被覆するア
ルミ合金部3とで構成されている。このピストン7は、
ディーゼル系内燃機関に装備されるものでも良いし、ガ
ソリン系内燃機関に装備されるものでも良い。
【0040】上記試験片Dに使用された複合材料部2と
同じ材質の熱膨張測定試験片を形成し、その熱膨張率を
測定した。その結果も表3に示す。表3から理解できる
様に、試験片Dによれば、第1層51に係る複合材料部
分は熱膨張率が16.7×10-6/℃であり、第2層5
2に係る複合材料部分は熱膨張率が14.1×10-6
℃であり、第3層53に係る複合材料部分は熱膨張率が
16.7×10-6/℃であった。
【0041】従って、第1層51及び第3層53に係る
複合材料部分の熱膨張率とアルミ合金部3の熱膨張率と
の差は、ピストン7の半径方向つまり矢印X1方向(図
5参照)において、(20.0×10-6/℃)−(1
6.7×10-6/℃)=3.3×10-6/℃となり、か
なり小さい。上記の様に製造したピストン7を用い、前
述同様な条件で溶体化→焼き入れ→時効の熱処理をそれ
ぞれ実施した。そして、第2層52に係る複合材料部分
を機械加工してリング溝55を形成した。リング溝55
を区画する上面55x、下面55y及び側面55zが、
ピストンリングとしてのトップリングと摺動する摺動面
を構成する。
【0042】この様な試験例Dにおいても、複合材料部
2とアルミ合金部3との界面における亀裂有無をカラー
チェックにより調査したところ、亀裂の発生は見られな
かった。内燃機関で使用される際には、一般的にピスト
ン7の空洞部70にはオイル等の冷却剤が吹付けられる
ので、ピストン7の空洞部70を区画する内面70iは
オイルで冷却される。なお75はセカンドリングが装備
されるリング溝、76はオイルリングが装備されるリン
グ溝を示す。リング溝75、76はピストン7に直接切
削加工して形成される。
【0043】
【表3】 なお図6に示す形態の様に、第1層51の内周側と第3
層53の内周側とを連設した連設層59を、第1層51
や第3層53と同様の材質で形成しても良い。この場合
には、連設層59の熱膨張率をピストン7のアルミ合金
の熱膨張率に近づけるのに有利である。
【0044】更に図4に示す多孔質金属焼結体5を構成
する第1層51、第2層52、第3層53を形成する金
属粉末を傾斜組成で金型のキャビティに装填し、第1層
51、第2層52、第3層53を傾斜組成とし、これに
より熱膨張率を傾斜的にピストン7のアルミ合金に近づ
けることにしても良い。 (他の形態) ○上記した例では、アルミ合金を注入して軽金属母材部
を形成しているが、アルミ合金の組成は上記したものに
限定されるものではなく、他の材質のものでもよい。更
にアルミ合金に代えてMg系の合金を注入して軽金属母
材部を形成しても良い。また上記した例では三層構造の
多孔質金属焼結体を採用しているが、これに限らず用途
に応じて2層、4層、5層等でも良い。 ○また、アルミ合金が含浸固化される多孔質金属焼結体
4、5は、本発明者の試験によれば、摺動面における耐
焼付性に大きな影響を与える。そこで、多孔質金属焼結
体4、5の硬度(特に、耐焼付性等の摺動特性が要請さ
れる摺動面を形成する第2層42、52の硬度)をマイ
クロビッカース硬度でHv200〜800程度にするこ
とが好ましい。
【0045】この様にすれば、使用温度が高い場合(例
えば250〜300℃)等の様に厳しい環境下で使用さ
れた場合であっても、多孔質金属焼結体4、5の気孔に
含浸したアルミやマグネシウム等の軽金属の硬度が低下
したとしても、スケルトン状の多孔質金属焼結体4、5
の格子構造が良好に維持されるため、軟化した軽金属を
しっかりと保持し、摺動面における焼付を軽減、回避す
ることができる。
【0046】ここでHv200未満では、多孔質金属焼
結体4、5としての強度が充分ではなく、摺動面におい
て軽金属と共に塑性流動し易くなり、焼付による面荒れ
状態が生成され易い。またHv800を越えると、複合
材料部2の被削性が低下する。なお多孔質金属焼結体
4、5の硬度の上限値及び下限値は、金属焼結体複合材
料の種類、使用温度等の使用環境等に応じて適宜選択さ
れるが、硬度の上限値は例えば750、700、65
0、600にでき、硬度の下限値は例えば250、30
0、350にできる。
【0047】この様な多孔質金属焼結体4、5を構成す
る金属粉末としては、前述したSKD系、SKH系、F
e−Mn鋼系が挙げられる。 ○複合材料部2に占める多孔質金属焼結体4、5の割合
は、体積率で45〜85%が好ましい。多孔質金属焼結
体4、5の格子部分が軽金属を良好に保持するために
は、ある程度の体積率が必要とされるからである。
【0048】なお金属焼結体複合材料の用途等に応じ
て、多孔質金属焼結体4、5が占める体積率の上限値は
80%、75%、70%にでき、体積率の下限値は50
%、55%にできる。 ○上記した多孔質金属焼結体4、5の内部(特に、摺動
特性が要請される摺動面を形成する第2層42、52)
に硬質繊維や硬質粒子を含むこともできる。硬質繊維や
硬質粒子はマイクロビッカース硬度でHv2000以下
のものが好ましい。Hv2000を越えると、相手攻撃
性が強すぎ、摺動面から脱落した硬質繊維や硬質粒子が
摺動面に噛みこまれて摺動面を荒らしたりするが、Hv
2000以下のものであれば、荒れの程度は抑えられ
る。
【0049】硬質粒子や硬質繊維の硬度の上限値は19
00、1800、1700等にでき、硬度の下限値は4
00、500、600等にできる。この様な硬質粒子と
しては上記したムライト粒子の他に、FeCr粒子(H
v1700程度)、FeMo粒子(Hv1400程
度)、FeCrC粒子(Hv800程度)を採用でき
る。
【0050】なお硬質粒子の平均粒径は適宜選択できる
が、3〜50μm程度、特に4〜30μm程度にでき
る。硬質繊維の平均繊維径は適宜選択できるが、0.5
〜15μm程度、特に1〜7μm程度にできる。 ○上記した点を考慮し、多孔質金属焼結体4、5を形成
する金属粉末としては、特に摺動面を形成する第2層4
2、52を形成する金属粉末としては、重量%でCが
0.1〜8%、Crが8.0%〜70.0%を含むもの
を採用できる。金属粉末としては、重量%でCが0.1
〜3%、Crが2.0%〜20.0%、Mo、V、W、
Coの少なくとも1種が0.3〜30%を含むものを採
用できる。
【0051】例えば上記したSKD61相当の鉄系粉
末、更にはSKD11相当の鉄系粉末を採用できる。な
おSKD11の基本組成は、重量%でCが1.5%、S
iが0.4%、Mnが0.4%、Crが12%、Moが
1%、Vが0.8%である。この範囲であれば、金属粉
末の圧粉体を焼結して多孔質金属焼結体4、5を形成し
た後に気体冷却(例えば、窒素ガス等によるガス冷却、
空気冷却)すれば、上記した範囲の硬度が確保され易
く、即ち多孔質金属焼結体4、5の硬度はHv200〜
800の領域を確保し易い。従ってその後に600℃以
上の軽金属の溶湯を含浸固化させても、多孔質金属焼結
体4、5の過剰な軟化はなく、耐焼付性を確保できる。
【0052】(付記)上記した実施例から次の技術的思
想も把握できる。 ○母材側焼結体層の一層ぶんの厚みよりも、摺動側焼結
体層の厚みを厚く設定する請求項2に記載の金属焼結体
複合材料。 ○母材側焼結体層と摺動側焼結体層とが積層されてお
り、積層方向と直交する方向の端側に摺動部を形成する
請求項2に記載の金属焼結体複合材料。 ○多孔質金属焼結体はリング形態または平盤形態である
請求項1に記載の金属焼結体複合材料。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合材料部をアルミ合金部で被覆した状態の断
面図である。
【図2】複合材料部の強化材を構成する多孔質金属焼結
体の斜視図である。
【図3】複合材料部をアルミ合金部で被覆した状態の断
面図である。
【図4】複合材料部の強化材を構成する多孔質金属焼結
体の斜視図である。
【図5】複合材料部を備えたピストンの部分断面図であ
る。
【図6】他の形態に係る複合材料部を備えたピストンの
部分断面図である。
【符号の説明】
図中、2は複合材料部、3はアルミ合金部(軽金属母材
部)、4及び5は多孔質金属焼結体、41及び51は第
1層(母材側焼結体層)、42及び52は第2層(摺動
側焼結体層)、43及び53は第3層(母材側焼結体
層)、7はピストンを示す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多孔質金属焼結体の気孔部分に軽金属を含
    浸、固化して形成した複合材料部と、 該複合材料部を被覆すると共に該複合材料部を構成する
    軽金属と同材質の軽金属母材部とからなり、 該複合材料部と該軽金属母材部との界面において両者の
    熱膨張率の差を5×10-6/℃以下としたことを特徴と
    した金属焼結体複合材料。
  2. 【請求項2】軽金属が含浸、固化されて複合材料部を構
    成する多孔質金属焼結体は、 軽金属母材部との熱膨張率の差を小さくする母材側焼結
    体層と、該母材側焼結体層と一体をなすと共に摺動面を
    形成する摺動側焼結体層とを備え、 該摺動側焼結体層は、該母材側焼結体層よりも摺動特性
    が優れていることを特徴とする請求項1に記載の金属焼
    結体複合材料。
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