JPH08206192A - 人工心臓のシール機構 - Google Patents

人工心臓のシール機構

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JPH08206192A
JPH08206192A JP7190981A JP19098195A JPH08206192A JP H08206192 A JPH08206192 A JP H08206192A JP 7190981 A JP7190981 A JP 7190981A JP 19098195 A JP19098195 A JP 19098195A JP H08206192 A JPH08206192 A JP H08206192A
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JP
Japan
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sealing liquid
bearing
sealing
pump
artificial heart
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Application number
JP7190981A
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English (en)
Inventor
Kenji Yamazaki
健二 山崎
Toshio Mori
敏夫 森
Masaru Kobayashi
賢 小林
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Sun Medical Technology Research Corp
Original Assignee
Sun Medical Technology Research Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】軸受内の摺動摩擦熱による温度上昇を抑えて軸
受への変性凝着を防ぎ、また、シール部材からフラッシ
ュする密封液を少量に制御させ、駆動軸の血液に対する
軸封が長期間確実に維持でき、全体の密封液の消費量が
少ない人工心臓のシール機構を提供するものである。 【構成】人工心臓1を構成する人工心臓本体3は、ポン
プ部4と、モーター22内蔵の駆動部5とを備え、モー
ターの駆動軸10を軸承する動圧軸受13と、循環ポン
プ作用をする滑り軸受14と、その間に形成される密封
液室15と、ポンプ側からの血液を軸封するシール部材
17と、シール部材と滑り軸受の間に形成される流動液
室16とを有し、密封液を駆動部内とポンプ部内を経て
密封液バッグ内まで循環させ、調整弁28と密封液中の
変性タンパクを除去するフィルター29が設けられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人体の心臓の心室内に
挿入して使用される補助的な人工心臓であって、人工心
臓本体に設けられたポンプを駆動する駆動軸の血流に対
する確実な軸封が維持できる人工心臓のシール機構に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、開発・研究されている人体の心臓
の心室内に挿入して使用される補助的な人工心臓は、人
工心臓本体に内蔵された軸流ポンプにより心室内の血液
を大動脈弁を貫通するノズルの先端から大動脈内に送る
形式のものがある。図3は、従来形式の人工心臓本体を
人体の心臓に取り付けた状態を示す説明図である。図に
おいて、Aは心臓、Bは左心室、Cは心尖部、Dは大動
脈弁、Eは大動脈であり、1は左心室Bに埋設固定され
た人工心臓である。人工心臓1は、心臓Aの心尖部Cを
貫通して埋設固定される筒状の心尖部リング2と、人工
心臓本体3とで構成され、人工心臓本体3には、先端部
が縮径されてノズル部6を形成し心尖部リング2を貫通
して心臓の左心室内に挿入される円筒状のポンプ部4
と、人体の心臓の外側に配設されポンプ部の基端部に接
続し内蔵された軸流ポンプを駆動する駆動部5とを備え
ており、ノズル部6は心臓Aの大動脈弁Dを貫通し大動
脈Eに挿入される。ポンプ部の外周には、心室内の血液
を吸入する複数個の吸込口7が配設されており、心室内
の血液は吸込口7からポンプ部4内に吸入されノズル部
6から大動脈内に吐出される。また、心尖部リング2と
人工心臓本体3とは、シール材8により液密が確保され
ている。人体内で心臓の外側に設けられ可撓性の材料で
形成されている密封液バッグ12は、送液管11を介し
て駆動部5内に連通Lており、密封液の中には、血液の
凝着を抑制するヘパリン等の抗凝血剤が混入されてい
る。この密封液がポンプ部内部に充填されている。上記
のような軸流ポンプを血液ポンプとして用いる場合に
は、軸流ポンプを駆動する駆動軸の血液に対する軸封が
最大の問題となる。軸流ポンプ側の駆動軸を軸承する軸
受内に万が一血液が進入すると血液に含まれているフィ
ブリノーゲン等のタンパク成分が回転摩擦熱によって摺
動面に変性凝固し、軸受凝着を起こして軸の回転を止め
てしまう。そこで、これを防ぐために、駆動軸にオイル
シール等のシール部材を装着し、このシール部材から密
封液を持続的にフラッシュさせるようにすることが行わ
れていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
シール部材での物理的な軸封だけでは100%血液の軸
封は難しく、万が一血液がシール部材を介して軸受内に
進入した場合でも、軸受凝着を起こさないように密封液
で常時軸受を洗浄してやることが必要となってくる。し
かし、このような場合でも、密封液の流量が十分大きく
ないと軸受凝着を防ぎ軸封を長期間にわたって完全に維
持することは難しい。また、密封液の流量を多量にする
と密封液の補給のため密封液バッグを頻繁に交換する必
要がありその分患者の負担が増加する。その上、上記の
ような抗凝血剤を混入させた密封液で軸受を洗浄しても
血液タンパク成分が軸受の回転摩擦熱により変性凝固を
おこすために血液の軸受凝着を十分に防ぐことができな
い。この変性凝固を防ぐには、軸受の回転摩擦熱を低く
抑えたり、軸受凝着したタンパク分子を熱耐性の高いタ
ンパク分解酵素で分解させ軸受表面を清浄に保つように
しなければならない。また、軸受内温度が60℃以上に
上昇する場合には、密封液内にタンパク分解酵素、アミ
ノペプチド等の抗凝血剤は熱変性により効力を失うため
に使えなくなるので、軸受内温度を50℃以下に低く保
つ必要がある。本発明は上記の問題点を解消するために
なされたもので、血液の凝固を抑制する抗凝血剤が混入
された密封液バッグに充填された軸受内の血液の凝固を
抑制し洗浄できる密封液をポンプ部内に大量に循環さ
せ、軸受内の摺動摩擦熱による温度上昇を抑え密封液の
軸受への変性凝固を防ぎ、また、シール部材からフラッ
シュする密封液を少量に制御させ、駆動軸の血液に対す
る軸封が長期間確実に維持でき、かつ、全体の密封液の
消費量が少ない人工心臓のシール機構を提供することを
目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明による人工心臓の
シール機構は、人体に使用される人工心臓を構成する人
工心臓本体は、円筒状のポンプ部と、ポンプ部の基端部
に接続しモーターの駆動軸を介して内蔵されたポンプを
駆動させる駆動部と、ポンプ部の外周に係止され先端に
ノズル部が形成されているケーシングとを備え、内部に
は駆動軸の基端部を軸承する動圧軸受と、駆動軸の先端
側を軸承すると共に循環ポンプ作用をする滑り軸受と、
滑り軸受と動圧軸受との間に形成される密封液室と、ポ
ンプ側からの血液を軸封するシール部材と、シール部材
と滑り軸受の間に形成される流動液室とを有しており、
密封液室に駆動部から送液管を介して連通し血液の凝固
を抑制する抗凝血剤が混入された密封液が充填されてい
る密封液バッグと、流動液室から駆動部まで密封液を流
動させる流動管と、駆動部と連通し密封液を密封液バッ
グに還流させる還流管とを設けてなり、滑り軸受により
流速を高めた多量の密封液を密封液バッグからポンプ部
内を経て密封液バッグまで循環させてなり、密封液を密
封液バッグから駆動部内のローターの外周を通りポンプ
部内を経て密封液バッグまで循環させてなり、還流管に
密封液の循環流量を制御する流量調整弁を設けてなり、
密封液バッグ内に密封液中に混入した変性タンパクを除
去するフィルターを設けてなり、密封液バッグに充填さ
れる密封液内に、滑り軸受内の血液の凝固を抑制するタ
ンパク分解酵素又は複数種のアミノペプチド若しくは熱
耐性菌の分泌するタンパク分解酵素が混入されてなるも
のである。
【0005】
【作用】滑り軸受により流速を高めた多量の密封液を密
封液バッグからポンプ部内に循環させたことにより、多
量の密封液が軸受内の摺動摩擦熱を吸収して温度上昇を
抑えるので、軸受への血液タンパク成分の変性凝固を防
ぎながら洗浄できる。その上、流速を高めた多量の密封
液を密封液バッグ内から駆動部内のローターの外周を通
りポンプ部内に循環させたことにより、密封液が冷却水
として働きローターの発熱を抑え、駆動部内の温度上昇
を低く保持させることができるので、血液ポンプの寿命
を大幅に延ばすことができる。また、還流管に密封液の
循環流量を制御する流量調整弁を設けたことにより、密
封液の軸受内を通過する流量を多量に維持したままでシ
ール部材からフラッシュする密封液を少量に制御するこ
とができる。これにより、密封液の消費量が少なく抑え
られて密封液の補給を頻繁に行う必要がない。さらに、
密封液バッグ内に密封液中に混入した変性タンパクを除
去するフィルターを設けたことにより、クリーンな密封
液を循環させることができる。さらにまた、密封液バッ
グに充填される密封液内に、滑り軸受内の血液の凝固を
抑制するタンパク分解酵素を混入させたことにより、軸
受摺動面への血液凝着を強力に抑制し、ポンプを駆動す
る駆動軸の血液に対する確実な軸封が維持されるので、
ポンプの寿命を大幅に改善できる。そしてまた、タンパ
ク分解酵素に代えて複数種のアミノペプチドを混入させ
たことにより、フィブリンの形成(ポリメライゼーショ
ン)を阻止しフィブリノーゲンの変性温度限界を高め、
軸受内での摺動摩擦熱を抑え、血漿タンパクの熱変性に
よる凝着が防止される。そしてさらに、タンパク分解酵
素に代えて熱耐性菌の分泌するタンパク分解酵素を混入
させたことにより、軸受内の血液の凝着を完全に防止し
ポンプを駆動する駆動軸の血液に対する確実な軸封が維
持されるので、ポンプの寿命を大幅に改善できる。その
結果、軸流ポンプを血液ポンプとして使用する場合の問
題点であるポンプ側からの血液の軸封が長期間確実に維
持することができる。
【0006】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例における人工心臓本体の拡大断
面図である。図において、4は円筒形のポンプ部、5は
内蔵されたポンプを駆動させる駆動部、9は先端にノズ
ル部が形成されているケーシングである。ポンプ部4
は、基端部側が駆動部5に接続し、中間部の外周に複数
個の吸込口7が配設されており、先端側の外周にケーシ
ング9が係止されている。駆動部5内には、ローター2
3を有するモーター22が内蔵され、モーターに接続す
る駆動軸10がポンプ部4の中間部に延伸しポンプに接
続されており、駆動軸10の基端部を軸承する動圧軸受
13が設けられている。また、密封液を吸込、吐出する
吸込口24、吐出口25が設けられている。ポンプ部4
内には、駆動軸10の先端側を軸承すると共に循環ポン
プ作用をする滑り軸受14が設けられており、以下本実
施例では滑り軸受として一方向性動圧軸受を用いた例で
説明する。動圧軸受13と一方向性動圧軸受との間には
駆動軸の周囲を囲むように密封液室15が形成されてい
る。また、一方向性動圧軸受とポンプからの血液の流入
を軸封するシール部材17との間には流動液室16が形
成されている。さらに、流動液室から駆動部の吐出口ま
で密封液を流動させる流動管26が設けられている。密
封液室15は、駆動部5の吸込口24から可撓性の送液
管11を介して人体に埋設されている密封液バッグ12
に連通しており、流動液室16は、流動管26を経て駆
動部5の吐出口25から可撓性の還流管27を介して密
封液バッグ12に連通している。ケーシング9の内部に
は、ポンプを構成する駆動軸に係止しプロペラ18が一
体成形されたプロペラボス19と、これに隣接してガイ
ドベーン20が一体成形されたガイドベーンボス21が
配設されており、左心室内の血液を吸込口7から吸引し
ノズル部6に吐出させている。密封液バッグ12には、
その中に血液の凝固を抑制する抗凝血剤が混入された密
封液が充填されている。抗凝血剤としては、サブチリジ
ン、サーモリジンなどが混入されている。このサブチリ
ジン、サーモリジンなどの酵素群は、タンパク分解酵素
の一種で作用特性が広く、タンパク分解作用が強く、熱
変性温度も高く変性を起こしても固体表面に凝着せず、
しかも、溶液中での半減期が14日〜21日ときわめて
長いという特徴を有している。
【0007】図4は、溶液のベアリング凝着状況を示す
グラフ図である。血漿タンパク成分の中で主なアルブミ
ン、γ−グロブリン、フィブリノーゲンを成分別に、そ
れぞれの濃度は生理的によい濃度に調整し、溶液のPH
は7.4に調整して行い、モーターの消費エネルギーを
モーターの電圧、電流より算出して、その変化をモータ
ーの出力変化率によりみるベアリング凝着試験では、図
4に示すようにアルブミン、γ−グロブリンでは経過時
間を通して安定しているのに対し、フィブリノーゲン溶
液では不規則に増加し軸受凝着を起こした。ベアリング
の表面をみるとアルブミン、γ−グロブリン溶液ではタ
ンパク成分の凝着は認められなかったが、フィブリノー
ゲンの溶液では表面に凝着したフィブリノーゲンが認め
られた。また、密封液中の酵素群の濃度が比較的高くて
も、軸受部から血液中へ流出する速度が低いために、シ
ール部材からポンプを経て血液中に放出される酵素の量
は微量であること、軸受部からフラッシュした酵素液は
毎分3〜5lの高速多量の血流によって瞬時に希釈され
てしまうこと、また、血液中に放出された酵素は血中の
α−アンチプロチアーゼ、α−マクログロブリン等
によって補束され、さらに単核球による貧血作用を受け
速やかに失活すること等の理由により、副作用はほとん
どない。
【0008】図5は、溶液の混濁度の変化状況を示すグ
ラフ図である。溶液の混濁度の変化を分光光度計により
みるベアリング凝着試験では、図5に示すようにタンパ
ク成分を含む溶液は、タンパク成分の変性、凝集により
混濁度が経過時間に従って変化し、テスト溶液の中では
フィブリノーゲン溶液のみ混濁度が増加した。この液を
顕微鏡でみると球状の変性したフィブリノーゲンが認め
られ、これはフィブリノーゲンに熱を加えた際得られる
変性タンパクと同一形状のものであった。フィブリノー
ゲンは、中央にEドメイン、両側にDドメインを持つ3
ドメイン構造であり、これらの熱変性温度はEドメイン
が95℃、Dドメインが50℃である。アルブミン、グ
ロブリンの変性温度はこの中間にある。これらよりフィ
ブリノーゲンの変性は主にDドメインの変性によること
がわかる。別に行ったテストによっても、フィブリノー
ゲンは50℃に加熱されるとDドメインが固体表面に強
く凝着することが判った。軸受の凝着にはタンパク成分
の熱変性凝着が強く関与しており、これをいかに防ぐか
が重要である。その予防手段としては、次の3つの方法
がある。 1.ベアリングギャップの温度を50℃以下に保つ。→
ベアリング内部及びその周辺にパージ液を高流量で循
環させることにより、ベアリングの放熱効率を高める。 2.ベアリング内に侵入するタンパク成分の変性温度限
界を上げる。→ GPRPによりフィブリノーゲンの変
性温度限界を上げる。 3.変性凝着したタンパク成分を分解、除去する。→
タンパク分解酵素、表面活性剤等を使用する。 図6は、溶液の熱変化状況を示すグラフ図である。予防
手段2に対するフィブリノーゲン溶液の熱変化をディフ
ァレンシアル・スキャンニング・カロリメター(Dif
ferential scanning calori
meter)によりみるフィブリノーゲン溶液の加熱実
験では、図6に示すようにフィブリノーゲン溶液を加熱
していくと2つの吸熱ピークが見られる。これは、50
℃→Dドメインの変性、95℃→Eドメインの変性に相
当するものである。GPRP(Gly−Pro−Arg
−Pro)をフィブリノーゲン溶液に0.125%加え
るとDドメインの変性温度が約3.5℃上昇する。GP
RPはフィブリノーゲンDドメイン上のポリメライゼー
ションリセプターに結合し、Dドメインのタンパク構造
を安定化させる作用を持ち結果的に変性温度限界を上昇
させる。加えてGPRPには、ポリメライゼーションリ
セプターをブロックすることによるフィブリノーゲンの
ポリメライゼーション抑制作用もある。図7は、分解酵
素のベアリング凝着状況を示すグラフ図である。予防手
段3に対するフィブリノーゲン溶液中にサブチリジン、
サーモリジンを0.001%の濃度で加え、モーター出
力の変化率によりみる分解酵素のベアリング凝着実験で
は、図7に示すように分解酵素のサブチリジン、サーモ
リジンを溶液中に加えたものはモーター出力の変化率も
少なく、フィブリノーゲン溶液でのベアリング凝着が予
防でき、試験後のベアリング表面もクリーンであった。
【0009】心臓の心室内の血液は、ケーシング9の吸
込口7からポンプによりノズル部6を通り大動脈に吐出
される。このポンプを駆動するモーターの駆動軸10に
オイルシール等のシール部材17が装着されており、ポ
ンプ側からの血液が軸封されている。一方、密封液バッ
グ内の一方向性動圧軸受14内に刻まれた図示してない
動圧発生溝による循環ポンプ作用により流速が高められ
た多量(1cc/分以上)の密封液は、送液管11から
動圧軸受13を経て密封液室15、流動液室16、流動
管26、還流管27を通り密封液バッグ内まで循環して
いる。一方向性動圧軸受により流速が高められた多量の
密封液を上述のポンプ部4内の経路を循環させることに
よって、多量の密封液が軸受の摩擦熱を吸熱し、軸受内
の温度上昇を抑制しながら洗浄するので、万が一ポンプ
側からの血液がシール部材17を介して軸受内に進入し
ても軸受凝着、軸の焼付き、回転不能等を発生させな
い。その結果、軸流ポンプを血液ポンプとして使用する
場合の問題点であるポンプ側からの血液の軸封が長期間
確実に維持することができる。その上、一方向性動圧軸
受のポンプ作用を利用することにより、外部ポンプを省
略することができるという利点もある。また、還流管に
密封液の循環流量を制御する流量調整弁が設けられてい
ることにより、密封液の軸受内を通過する流量を多量に
維持したままでシール部材17からフラッシュする密封
液を少量(1cc/日程度)に制御することができるの
で、循環された密封液がシール部材から生体内へ放出さ
れる量もごく微量であり人体には全く影響がなく、生体
内に多量に入っては好ましくないタンパク分解酵素、抗
凝固剤、界面活性剤等の添加剤を密封液に混入させるこ
とが可能となる。
【0010】そこで、タンパク分解酵素に代えて密封液
バッグ12の中に、γ鎖C−ターミナルのレセプターを
ブロックするGly(グリシン)Pro(プロリン)−
Arg(アルギニン)−Pro(プロリン)の4つのア
ミノ酸からなるポリペプチドを用いたアミノペプチドを
混入させ、軸受内のフィブリノーゲンのモル濃度100
倍程度にアミノペプチドのモル濃度にすることにより、
フィブリノーゲンのポリメライゼーションを抑制し、軸
受内での摺動摩擦熱を減少させる効果が得られ、また、
A−α鎖N−ターミナルをブロックするγ鎖C−ターミ
ナル〔HiS−HiS−Les−Gly−Gly−Al
a−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val
(γ400〜411)〕を用いても同様な効果が期待で
きる。また、タンパク分解酵素に代えて密封液バッグ1
2の中に、タンパク分解酵素の一種で熱耐性菌であるB
−サーモプロテオリティカス(B−Thermopro
teolycus)の分泌するサーモリジン(Ther
molysin)という名の酵素の熱耐性が極めて高く
至適温度が70〜80℃と高い特徴を有する熱耐性菌の
分泌するタンパク分解酵素を混入させることにより、軸
受内の血液の凝固を完全に防止し洗浄でき駆動軸の血液
に対する確実な軸封が維持されるので、軸の焼付き、回
転不能等を発生させないためにポンプの寿命が大幅に改
善される。さらに、密封液中に混入した変性タンパクを
除去するフィルターを密封液バッグ内に設けたことによ
り、クリーンな密封液が循環するので、人工心臓の安全
性を高めることができる。
【0011】図2は、本発明の他の実施例における人工
心臓本体の拡大断面図である。図2に示すように、密封
液バッグ内の一方向性動圧軸受14内に刻まれた図示し
てない動圧発生溝による循環ポンプ作用により流速が高
められた多量(1cc/分以上)の密封液は、送液管1
1からローター23の外周、動圧軸受13を経て密封液
室15、流動液室16、流動管26、還流管27を通り
密封液バッグ内まで循環している。密封液をローター外
周を経て循環させることにより、密封液がモーターの冷
却の役目を果たしローターの発熱を抑え、駆動部内の温
度上昇を低く保持させることができるので、人体への影
響も少なく長期間の使用が可能となり血液ポンプの寿命
を大幅に延ばすことができる。本発明において、密封液
に混入させるタンパク分解酵素としてサブチリジン、サ
ーモリジンなどの酵素群を使用したが、タンパク分解酵
素としてキモトリプシンA,B,C、エラスターゼ、ア
スペルギールスアルカリプロティナーゼ、パペイン、プ
ロナーゼ、アクアリジン、カルドリジン等を使用するこ
とができる。なお、本発明の実施例では軸流ポンプを使
用したが斜流ポンプ、遠心ポンプなどの他のポンプを使
用しても同様な効果が得られる。そしてまた、一方向性
動圧軸受を用いたかこれに限定されるものではない。ま
た、密封液バッグは、人体内、人体外どちらに設けても
よく、人体外の場合は密封液を低温に保つことが可能と
なるので冷却効果がさらに高められる。さらにまた、シ
ール部材としてオイルシールの他にメカニカルシールな
どを使用することができる。また、密封液を循環させる
ための一方向性動圧軸受の循環ポンプ作用を利用した
が、これに限定されるものではなく、外部の輸液ポンプ
を使用してもよい。さらに、モーターとしてキャンド式
モーターを使用した実施例で説明したが、モーター部を
独立させたマグネットカップリング方式のモーターを使
用してもよい。
【0012】
【発明の効果】以上に詳述したごとく、本発明による人
工心臓のシール機構は、一方向性動圧軸受の循環ポンプ
作用により流速が高められた多量(1cc/分以上)の
密封液バッグ内の密封液を、送液管から動圧軸受を経て
ポンプ部内を通り密封液バッグ内まで循環させることに
より、多量の密封液が軸受の摩擦熱を吸熱し、軸受内の
温度上昇を抑制しながら洗浄するので、軸受凝着、軸の
焼付き、回転不能等を発生させない。その上、一方向性
動圧軸受のポンプ作用を利用することにより、外部ポン
プを省略することができるという利点もある。また、還
流管に密封液の循環流量を制御する流量調整弁を設けた
ことにより、循環する密封液の軸受内を通過する流量を
多量(1cc/分以上)に維持したままでシール部材か
らフラッシュする密封液を少量(1cc/日程度)に制
御することができる。そのため、密封液の消費量が少な
く抑えられて密封液の補給を頻繁に行う必要がない。こ
れにより、ポンプ側からの血液の軸封が長期間確実に維
持することができる。しかも、循環された密封液がシー
ル部材から生体内にフラッシュする量もごく微量である
ために人体には全く影響がなく、生体内に多量に入って
は好ましくない熱変性の低いタンパク分解酵素、抗凝固
剤、界面活性剤等の添加剤を密封液に混入させることが
可能となる。その上、密封液中に混入した変性タンパク
を除去するフィルターを密封液バッグ内に設けたことに
より、クリーンな密封液が循環するので、人工心臓の安
全性を高めることができる。さらに、一方向性動圧軸受
の循環ポンプ作用により流速が高められた多量(1cc
/分以上)の密封液を、送液管からローターの外周、動
圧軸受を経てポンプ部内を通り密封液バッグ内まで循環
させることにより、密封液がモーターの冷却の役目を果
たしローターの発熱を抑え、駆動部内の温度上昇を低く
保持させることができるので、人体への影響も少なく長
期間の使用が可能となり血液ポンプの寿命を大幅に延ば
すことができる。さらにまた、密封液バッグに充填され
る密封液内に、一方向性動圧軸受内の血液の凝固を抑制
するタンパク分解酵素又は複数種のアミノペプチド若し
くは熱耐性菌の分泌するタンパク分解酵素を混入させる
ことにより、軸受内の血液の凝固を完全に防止し、ポン
プを駆動する駆動軸の血液に対する確実な軸封が維持さ
れるので、ポンプの寿命を大幅に改善でき、ポンプを血
液ポンプとして使用する場合の問題点であるポンプ側か
らの血液の軸封が長期間確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における人工心臓本体の拡大断
面図。
【図2】本発明の他の実施例における人工心臓本体の拡
大断面図。
【図3】従来形式の人工心臓本体を人体の心臓に取り付
けた状態を示す説明図。
【図4】溶液のベアリング凝着状況を示すグラフ図。
【図5】溶液の混濁度の変化状況を示すグラフ図。
【図6】溶液の熱変化状況を示すグラフ図。
【図7】分解酵素のベアリング凝着状況を示すグラフ
図。
【符号の説明】
A ・・・ 心臓, B ・・・ 左心室 C ・・・ 心尖部, D ・・・ 大動脈弁 E ・・・ 大動脈 1 ・・・ 人工心臓, 2 ・・・ 心尖部リ
ング 3 ・・・ 人工心臓本体, 4 ・・・ ポンプ部 5 ・・・ 駆動部, 6 ・・・ ノズル部 7 ・・・ 吸込口, 8 ・・・ シール材 9 ・・・ ケーシング 10 ・・・ 駆動軸 11 ・・・ 送液管 12 ・・・ 密封液バッグ 13 ・・・ 動圧軸受 14 ・・・ 滑り軸受 15 ・・・ 密封液室 16 ・・・ 流動液室 17 ・・・ シール部材 18 ・・・ プロペラ 19 ・・・ プロペラボス 20 ・・・ ガイドベーン 21 ・・・ ガイドベーンボス 22 ・・・ モータ 23 ・・・ ローター 24 ・・・ 吸込口 25 ・・・ 吐出口 26 ・・・ 流動管 27 ・・・ 還流管 28 ・・・ 流量調整弁 29 ・・・ フィルター

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 本発明は、人体に使用される人工心臓
    (1)を構成する人工心臓本体(3)は、円筒状のポン
    プ部(4)と、前記ポンプ部の基端部に接続しモーター
    (22)の駆動軸(10)を介して内蔵されたポンプを
    駆動させる駆動部(5)と、前記ポンプ部の外周に係止
    され先端にノズル部(6)が形成されているケーシング
    (9)とを備え、内部には前記駆動軸の基端部を軸承す
    る動圧軸受(13)と、前記駆動軸の先端側を軸承する
    と共に循環ポンプ作用をする滑り軸受(14)と、滑り
    軸受と前記動圧軸受との間に形成される密封液室(1
    5)と、前記ポンプ側からの血液を軸封するシール部材
    (17)と、シール部材と前記滑り軸受の間に形成され
    る流動液室(16)とを有しており、前記密封液室に駆
    動部から送液管(11)を介して連通し血液の凝固を抑
    制する抗凝血剤が混入された密封液が充填されている密
    封液バッグ(12)と、前記流動液室から駆動部まで密
    封液を流動させる流動管(26)と、前記駆動部と連通
    し密封液を前記密封液バッグに還流させる還流管(2
    7)とを設けてなり、前記滑り軸受により流速を高めた
    多量の密封液を前記密封液バッグから前記ポンプ部内を
    経て密封液バッグまで循環させてなることを特徴とする
    人工心臓のシール機構。
  2. 【請求項2】密封液を前記密封液バッグから駆動部内の
    ローター(23)の外周を通り前記ポンプ部内を経て前
    記密封液バッグまで循環させてなることを特徴とする請
    求項1記載の人工心臓のシール機構。
  3. 【請求項3】前記還流管に密封液の循環流量を制御する
    流量調整弁(28)を設けてなることを特徴とする請求
    項1記載の人工心臓のシール機構。
  4. 【請求項4】前記密封液バッグ内に密封液中に混入した
    変性タンパクを除去するフィルター(29)を設けてな
    ることを特徴とする請求項1記載の人工心臓のシール機
    構。
  5. 【請求項5】前記密封液バッグに充填される密封液内
    に、前記滑り軸受内の血液の凝固を抑制するタンパク分
    解酵素が混入されてなることを特徴とする請求項1記載
    の人工心臓のシール機構。
  6. 【請求項6】前記密封液バッグに充填される密封液内
    に、前記滑り軸受内の血液の凝固を抑制する複数種のア
    ミノペプチドが混入されてなることを特徴とする請求項
    1記載の人工心臓のシール機構。
  7. 【請求項7】前記密封液バッグに充填される密封液内
    に、前記滑り軸受内の血液の凝固を抑制する熱耐性菌の
    分泌するタンパク分解酵素が混入されてなることを特徴
    とする請求項1記載の人工心臓のシール機構。
JP7190981A 1994-12-02 1995-06-22 人工心臓のシール機構 Pending JPH08206192A (ja)

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Cited By (2)

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