JPH08136477A - 試料分析装置 - Google Patents

試料分析装置

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JPH08136477A
JPH08136477A JP28026394A JP28026394A JPH08136477A JP H08136477 A JPH08136477 A JP H08136477A JP 28026394 A JP28026394 A JP 28026394A JP 28026394 A JP28026394 A JP 28026394A JP H08136477 A JPH08136477 A JP H08136477A
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JP
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scattered ions
sample
scattered
ions
energy
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JP28026394A
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English (en)
Inventor
Kiyotaka Ishibashi
清隆 石橋
Kenichi Inoue
憲一 井上
Kazuji Yokoyama
和司 横山
Kojin Furukawa
行人 古川
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 定量性がよく,しかも高感度な表面汚染元素
の検出が可能な試料分析装置。 【構成】 本装置A′は,高エネルギイオンビームを照
射する高エネルギイオンビーム発生源1と,このビーム
を照射された試料5から後方散乱される散乱イオン6を
検出する半導体検出器7と,試料5と半導体検出器7と
の間に配設され,散乱イオン6を電場あるいは磁場中を
通過させたときの散乱イオン6の偏向量に基づいて散乱
イオン6を分別する粒子エネルギフィルタ12とから構
成されている。上記構成により,定量性がよく,しかも
高感度な表面汚染元素の検出が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,試料分析装置に係り,
詳しくはラザフォード後方散乱法を用いた試料分析装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】VLSIなど半導体デバイスにおいて高
集積化が進むにつれて,キャパシタなどに用いられる絶
縁膜の電気特性についても限界に近い値が要求されるよ
うになってきた。このような高特性を持つ絶縁膜の製造
には,材料や成膜技術の開発のほか,前工程でシリコン
ウエハ表面から耐圧性の劣化やリーク電流の増大の原因
となる汚染元素を除く洗浄技術の向上が重要な課題とな
る。従って,シリコンウエハ表面の汚染度の評価は,デ
バイス製造メーカにとっても,またシリコンウエハ供給
メーカにとっても重要な技術となる。現状では,シリコ
ンウエハ表面上の汚染元素検出を目的として二次イオン
質量分析法(SIMS)や全反射蛍光X線分析法(TX
RF)が用いられている。これらの装置を用いた場合の
汚染元素検出限界は,CuやZnなどの遷移元素やAu
やPbなどの重金属元素に対して1010atoms/c
2 程度である。一般に,これらの手法は絶対定量が困
難なため標準試料が必要であり,その校正用として定量
性に優れるラザフォード後方散乱法(RBS)による分
析装置が用いられている。以下,このような従来のRB
S分析装置Aの説明を行う。図10に示すように,従来
のRBS分析装置Aでは,まず高エネルギイオンビーム
発生源1から出射した特定の単色エネルギ(通常1〜2
MeV)を持ったヘリウムイオンビーム2を分析室3内
の試料載置台4上に載置された被分析試料5に照射す
る。このヘリウムイオンビーム2の一部は試料5によっ
てあるエネルギをもって後方散乱され,散乱イオン6と
して半導体検出器7に入射する。そして,半導体検出器
7は散乱イオン6のエネルギに対応した高さを持つパル
ス電気信号を発生する。このパルス電気信号を信号処理
器8は処理し,パルス電気信号の高さ(散乱イオン6の
エネルギ)別に信号の発生量をエネルギスペクトルとし
て記録する。図11は信号処理器8により得られるエネ
ルギスペクトルの模式図を示す。ここでは,表面に微量
の遷移元素または重金属元素が汚染元素として存在する
シリコンウエハを分析した場合を想定している。図中の
シリコン(Si)に起因したスペクトル9はあるエネル
ギEsiから低エネルギ側へ連続的に延びている。この
理由は,ヘリウムイオンビーム2の照射により,試料5
中に入射されたイオン(以下,入射イオンという)が試
料5表面よりやや内部の原子によって散乱される場合に
は,その入射イオンが原子に到達するまでエネルギをロ
スし,また散乱後試料5から脱出するまでにもエネルギ
をロスするが,これらのエネルギロスによりスペクトル
図ではより低エネルギ側にシグナルが生じるためであ
る。これに対して,シリコンウエハの表面汚染元素は,
一般に試料5の極表面にのみ存在するので,上述したエ
ネルギロスが無視できる。従って,汚染元素に起因した
スペクトル10はピーク状になっている。また,汚染元
素に起因したスペクトル10はSiに起因したスペクト
ル9よりも高エネルギ側に現れる。この理由は,散乱エ
ネルギは散乱した原子の質量とともに大きくなるからで
ある。図11中の符号11はいわゆるパイルアップシグ
ナルを示す。これは複数の散乱イオンが半導体検出器7
にほぼ同時に入射して生じるパルス電気信号である。そ
の信号の高さは同時入射した散乱イオンが持つ散乱エネ
ルギの総和に相当する。従って,本例ではSiに起因し
た散乱イオンが圧倒的に多いため,パイルアップシグナ
ル11もほとんどSiに起因した散乱イオンの同時入射
によるものである。ただし,実質上問題になるのは,2
つの散乱イオンの同時入射の場合のみであり,これに起
因したパイルアップシグナル11のスペクトルは図11
に示すようにEsiの2倍の値より低エネルギ側に現れ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来の
RBS分析装置Aでは,次のような問題点があった。 (1)図11からわかるように,RBS分析装置Aの検
出限界は,汚染元素に起因したシグナル量と,バックグ
ランドとなる基板元素シグナルのパイルアップに起因し
たシグナル量との比(S/N比)によって決まる。上記
従来のRBS装置Aの検出限界は通常1012〜1013
toms/cm2 程度になる。これは,前記SIMS,
TXRFによる検出限界に比べて検出感度が劣っている
ことを意味する。従って,さらにこの検出限界を改善す
る必要があった。 (2)このためには,まず基板元素Siに起因したシグ
ナルのみを減少することにより,パイルアップシグナル
も下げることが考えられるが,現状では実現された例は
ない。 (3)また,汚染元素に起因するシグナルの強度を高め
ることが考えられる。このためには入射イオンビームの
ビーム電流を高めるか,もしくは検出器の検出効率を高
める必要がある。しかし,信号処理器の信号処理速度が
有限であり,且つ検出される散乱イオンの大半がSi原
子による散乱に起因しているので,汚染元素によるシグ
ナル量を上げる有効な手だてがなかった。本発明は,こ
のような従来の技術における課題を解決するために,試
料分析装置を改良し,定量性がよく,しかも高感度な表
面汚染元素検出が可能な試料分析装置を提供することを
目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は,高エネルギイオンビームを照射する照射手
段と,該ビームを照射された試料から後方散乱される散
乱イオンを検出する検出手段とを具備した試料分析装置
において,上記試料と検出手段との間に配設され,上記
散乱イオンを電場あるいは磁場中を通過させたときの該
散乱イオンの偏向量に基づいて,上記散乱イオンを分別
するフィルタ手段を設けたことを特徴とする試料分析装
置として構成されている。さらには,上記フィルタ手段
が,少なくとも上記電場を発生させる1対の電極と,該
電極に入射する散乱イオンの立体角を制限する入口側絞
り手段と,該立体角を制限された散乱イオンを電場中を
通過させたときの該散乱イオンの偏向量に基づいて上記
散乱イオンの電極からの出射成分を制限することにより
該散乱イオンを分別する出口側絞り手段とからなること
を特徴とする試料分析装置である。さらには,上記1対
の電極のうち,上記散乱イオンの電極への入射方向と,
電極からの出射方向とを含む面内における低電位側の電
極の断面形状内側が階段状をなすように該低電位側の電
極に複数の突起部を形成すると共に,上記各突起部の上
記散乱イオンが衝突する側の傾き角度を,該散乱イオン
が該各突起部に衝突して跳ばされたときに直接上記検出
手段に到達しないように設定したことを特徴とする試料
分析装置である。さらには,上記試料を連続回転又は連
続並進移動可能な載置台上に保持した試料分析装置であ
る。さらには,上記試料を少なくとも回転2軸の自由度
を有する載置台上に保持した試料分析装置である。
【0005】
【作用】本発明によれば,高エネルギイオンビームが照
射手段により照射され,該ビームが照射された試料から
後方散乱されたイオンが検出手段により検出されるに際
し,上記試料と検出手段との間に配設されたフィルタ手
段により,上記散乱イオンが電場あるいは磁場中を通過
させられたときの該散乱イオンの偏向量に基づいて,上
記散乱イオンが分別される。これにより,基板元素に起
因した散乱イオンの検出量を選択的に抑制できるため,
基板元素に起因したパイルアップシグナルも抑制でき
る。図2はこれを模式的に示したものであるが,前記図
11と比較すると,フィルタ手段によって基板元素(図
中ではSiの例を示している)に起因したスペクトル
9′及びそれに起因したパイルアップシグナル11′が
抑制されている一方,汚染元素に起因したスペクトル1
0は変化しないことが分かる。従って,汚染元素に起因
したシグナルに対するバックグランドも抑制できること
になり,検出限界が大幅に改善される。また,結果的に
検出手段に入射する散乱イオンのトータル量が減少する
ので,その分だけ信号処理速度が許す限りイオンビーム
電流量を増加できる。従って,汚染元素の検出感度が向
上できる。さらに,上記フィルタ手段を,少なくとも上
記電場を発生させる1対の電極と,該電極に入射する散
乱イオンの立体角を制限する入口側絞り手段と,該立体
角を制限された散乱イオンを電場中を通過させたときの
該散乱イオンの偏向量に基づいて,上記散乱イオンの電
極からの出射成分を制限することにより該散乱イオンを
分別する出口側絞り手段とからなることとしてもよい。
【0006】この場合,フィルタ機能を磁場ではなく電
場で行っているが,次の理由によりこの方が装置がコン
パクトになると共に,エネルギ分解能がよくなる。即
ち,一般にRBSは真空の下で検出されるが,電極を用
いた構造は容易にその真空中に導入できるので,装置に
新たに真空ダクトを追加する必要などがなく,比較的コ
ンパクト化ができる。また,エネルギ分解能に関して,
磁場はエネルギの平方根に比例し,電場はその1乗に比
例するため,電場を用いるほうが分解能がよくなる。さ
らに,上記のごとく1対の電極を用いた場合,基板元素
により散乱された散乱イオンは,一部,該電極によって
形成される電場によって偏向されて電極に衝突し,衝突
した散乱イオンが再度真空中に散乱される。もし,これ
らの再散乱されたイオンが検出手段へ入射した場合に
は,これらに起因したシグナルはやはりバックグランド
の一因となる。この事態は,以下のようにフィルタ手段
を構成することにより有効に回避される。即ち,上記1
対の電極の内,上記散乱イオンの電極への入射方向と,
電極からの出射方向とを含む面内における低電位側の電
極の断面形状内側が階段状をなすように,該低電位側の
電極に複数の突出部を形成すると共に,上記各突出部の
上記散乱イオンが衝突する側の傾き角度を,該散乱イオ
ンが該各突起部に衝突して跳ばされたときに直接上記検
出手段に到達しないように設定すればよい。
【0007】このような突起部を設けることにより,一
度だけ上記電極で散乱された散乱イオンが直接検出手段
に入射することがほとんど不可能となり,基板元素に起
因したシグナル量が一層抑制される。さらに,上記試料
を連続回転又は連続並進移動可能な載置台上に保持して
もよく,その場合には,測定中に試料を連続回転等させ
ることにより,高いビーム電流量であっても,イオンビ
ーム入射による試料損傷または汚染元素の損失を軽減す
ることができる。さらに,上記試料を少なくとも回転2
軸の自由度を有する載置台上に保持してもよい。これに
よりビーム入射方向を基板元素の結晶の軸にアライメン
トすることができ,試料表面より数原子層だけ深い位置
にある原子による散乱を数十分の一となすことができ
る。つまり,基板元素に起因したシグナル量のみを一層
抑制することができる。その結果,定量性が良く,しか
も高感度な表面汚染元素の検出が可能な試料分析装置を
得ることができる。
【0008】
【実施例】以下添付図面を参照して,本発明を具体化し
た実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以
下の実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発
明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここ
に,図1は本発明の一実施例に係るRBS分析装置A′
の概略構成を示す模式図,図2はRBS分析装置A′の
動作の基本原理を示す説明図,図3は粒子エネルギフィ
ルタの概略構造図,図4は粒子エネルギフィルタの詳細
構造図,図5〜図7は散乱イオンの軌道解析結果を示す
図,図8及び図9はRBS分析装置A′による実測結果
を示す図である。尚,前記図10に示した従来のRBS
分析装置Aの一例における概略構成を示す模式図と共通
する要素には,同一符号を使用した。図1に示すごと
く,本実施例に係るRBS分析装置A(試料分析装置に
相当)は高エネルギのヘリウムイオンビーム2(高エネ
ルギイオンビームに相当)を照射する高エネルギイオン
ビーム発生源1(照射手段に相当)と,該ビームを照射
された被分析試料5から後方散乱される散乱イオン6を
検出する半導体検出器7(検出手段に相当)とを具備し
ている点で従来例と同様である。しかし,本実施例で
は,試料5と半導体検出器7との間に配設され,散乱イ
オン6を電場或いは磁場中を通過させたときの散乱イオ
ン6の偏向量に基づいて,散乱イオン6を分別する粒子
エネルギフィルタ12(フィルタ手段に相当)を設けた
点で従来例と異なる。
【0009】以下,本装置A′についてさらに具現化す
ると共に,その動作を説明する。図1において,高エネ
ルギイオンビーム発生源1から出射された特定の単色エ
ネルギを持ったヘリウムイオンビーム2は,分析室3内
の試料載置台4上に載置された被分析試料5に照射され
る。その一部は試料5によってあるエネルギを持って後
方散乱され,散乱イオン6として粒子エネルギフィルタ
12に入射する。この散乱イオン6が持つエネルギ,即
ち散乱エネルギは試料5中の元素の種類に依存し,ま
た,ここでいう散乱イオン6には試料5中に入射したイ
オンがそこで中性化されたいわゆる散乱中性子をも含ん
でいる。従って,散乱イオン6は粒子エネルギフィルタ
12中を通過する際に分別されて特定範囲内にあるエネ
ルギを持つ散乱イオン6′のみが半導体検出器7に入射
する。半導体検出器7は散乱イオン6′のエネルギに対
応した高さを持つパルス電気信号を発生する。このパル
ス電気信号を信号処理器8は処理し,パルス電気信号の
高さ(散乱イオン6′のエネルギ)別に,信号の発生量
をエネルギスペクトルとして記録する。ここで,本装置
A′の基本原理について述べる。このようにして本装置
A′の粒子エネルギフィルタ12により,基板元素に起
因した散乱イオンの検出量を選択的に抑制できる。従っ
て,基板元素に起因したパイルアップシグナルも抑制で
きることになる。図2はこれを模式的に示したものであ
るが,前記図11と比較すると,粒子エネルギフィルタ
12によって基板元素(図中ではSiの例を示してい
る)に起因したスペクトル9′及びそれに起因したパイ
ルアップシグナル11′が抑制される一方,汚染元素に
起因したスペクトル10は変化しないことが分かる。そ
の結果,汚染元素に起因したシグナルに対するバックグ
ランドも抑制できることとなり,検出限界を大幅に改善
できることになる。
【0010】また本装置A′の半導体検出器7に入射す
る散乱イオン6′はもとの散乱イオン6のトータル量よ
りも少ないため,その分だけ信号処理器8の処理速度が
許す限りイオンビーム電流量を増加できる。従って,汚
染元素の検出感度を向上することができ,その検出効率
を高めることができる。次に,粒子エネルギフィルタ1
2の構造等をさらに詳しく説明する。図3に示す如く,
粒子エネルギフィルタ12は,少なくとも上記電場を発
生させる1対の電極14,15と,電極14,15に入
射する散乱イオン6の立体角,即ち,散乱角を制限する
前段スリット13(入口側絞り手段に相当)と,散乱角
を制限された散乱イオン6を電場中を通過させたときの
散乱イオンの偏向量に基づいて散乱イオンの電極14,
15からの出射成分を制限することにより散乱イオンを
分別する後段スリット16a,16b(出口側絞り手段
に相当)とからなり,以下のように動作する。即ち,散
乱イオン6は前段スリット13により散乱角を制限され
たのち,低電位側電極14,高電位側電極15によって
形成される電場中を通過する。その際,散乱イオン6の
うち,比較的低エネルギをもつ散乱イオン6aは,電場
により大きく偏向され,後段低エネルギ側スリット16
aにより除去される。一方,比較的高エネルギを持つ散
乱イオン6bはあまり偏向されず,後段スリット16
a,16bのスリット間隙を通過して半導体検出器7に
より検出される。入射ヘリウムイオンのうち一部は試料
5中の電子を捕獲し,散乱中性粒子6cになる。これは
電場中にあっても直進し,後段高エネルギ側スリット1
6bにより除去される。尚,散乱イオン6が後段スリッ
ト16a,16bのスリット間隙を通過し得る散乱イオ
ン6aのエネルギ範囲は,電極14,15により形成さ
れる電場強度と,後段スリット16a,16bの位置と
を調整することにより容易に調整できる。例えば,エネ
ルギ範囲の下限を高めたい場合は,後段低エネルギ側ス
リット16aを後段高エネルギ側スリット16bに近づ
ければよい。
【0011】このように,本実施例では粒子エネルギフ
ィルタ12のフィルタ機能を磁場ではなく,電場にて行
う方法をとったが,その理由は,電場を用いるほうが装
置A′がコンパクトになると共に,エネルギ分解能が良
くなるからである。即ち,一般にRBSは真空の下で検
出されるが,電極14,15を用いた構造は容易にその
真空を実現する分析室3中に導入できるので,新たに真
空ダクトを追加する必要がなく,比較的コンパクト化が
可能となる。ただし,コンパクト化の要請があまりない
ような場合には,磁場を用いることももちろん可能であ
る。また,エネルギ分解能に関しては,磁場はエネルギ
の平方根に比例し,電場はその1乗に比例することか
ら,電場を用いた方がエネルギ分解能の良い装置が得ら
れる。ところで,散乱イオンの粒子エネルギフィルタ1
2として,上記のごとく,1対の電極14,15を用い
た場合,基板元素により散乱された散乱イオンが,一部
電極によって形成される電界により偏向されて電極に衝
突し,衝突した散乱イオンの一部は再度分析室3内の真
空中へ散乱される。もし,これらの再散乱されたイオン
が半導体検出器7へ入射した場合,これらに起因したシ
グナルはバックグランドの一因となる。この事態を防ぐ
ため,粒子エネルギフィルタ12の構造をさらに次によ
うに改善した。すなわち,1対の電極14,15のう
ち,散乱イオン6の電極への入射方向と電極14,15
からの出射方向とを含む面内における低電位側の電極1
4の断面形状内側が階段状をなすように低電位例の電極
14に複数の突起部を形成すると共に,各突起部の散乱
イオンが衝突する側の傾き角度を,散乱イオンが各突起
部に衝突して跳ばされたときに直接半導体検出器7に到
達しないように設定した。
【0012】図4は本実施例の効果を実証すべく実験的
に作成した粒子エネルギフィルタ12の詳細断面図であ
る。図4において,低電位側電極14の表面形状は,散
乱イオン入射方向17に傾いた面群18と,逆方向に傾
いた面群19とからなる。散乱イオン入射方向17に傾
いた傾き角は,前段スリット13を通過した散乱イオン
が電場により偏向されて面群18に衝突して散乱された
としても,2度と電極に衝突することなく後段スリット
16a,16bの間隙を通過することができないように
設計されている。また,散乱イオン入射方向17と逆方
向に傾いた面群19には,前段スリット13を通過した
散乱イオンが直接衝突することがないように設計されて
いる。一方,高電位側電極15の表面形状は,突起部2
0を有し,散乱イオンのうち中性粒子はこの突起部20
により除去されるように設計されている。上記条件を満
たす面群18,19の角度設計が可能であることを以下
に示す。
【0013】図5〜図7は,数値計算により散乱イオン
の軌道を解析した一例である。具体的には,電場解析に
有限要素法を用い,一方軌道解析にはルンゲクッタ法を
用いた。この設計では約300keV以下の散乱イオン
を排除することを目的としている。両電極14,15に
はそれぞれ,−5kVおよび+5kVの電位を印加する
ものとする。低エネルギ側電極14の表面の形状は上記
図4の形状と若干異なるが,結果はほとんど変わらな
い。図5の解析例では,散乱イオンが図中のA点21で
散乱イオン入射方向17に対して仰角20°,エネルギ
50keV及び60keVで再散乱された後の軌道2
2,23を示している。仰角20°とはA点21が含ま
れる面の傾き角をいう。つまり,再散乱される散乱イオ
ンは,仰角20°以下では電極14,15外へ散乱され
ない。即ち,同図から明らかなように,両散乱条件では
再散乱イオンは後段スリット16a,16bを通過出来
ずに,低エネルギ側電極14に再衝突する。もし,仰角
をより大きくしたり,エネルギを高めた場合には,高エ
ネルギ側電極15に再衝突することになる。この結果
は,電極14,15で再散乱された散乱イオンがそのま
ま直接には後段スリット16a,16bを通過できない
ことを示している。ちなみに,図6の電極形状例のよう
に単純なものでは散乱イオンがB点24で15°方向に
100keVのエネルギで再散乱された場合,軌道25
で示すように散乱イオンは後段スリット16a,16b
の間隙を通過してしまう。図7の解析例では,80〜2
00keVのエネルギをもった散乱イオンの前段スリッ
ト13を通過後の軌道群24を示している。この場合に
は図から明らかなように,散乱イオンが面群19に直接
衝突しないことがわかる。
【0014】このように電極が複数の突起物を持つ形状
をしている場合には,一度だけ電極で散乱された散乱イ
オンが直接検出器7に入射することが,ほとんど不可能
となる。従って,基板元素に起因したシグナル量をより
一層抑制することができる。本装置A′を用いた実験結
果の一例を次に示す。まず,図8では,SiのRBSス
ペクトルを粒子エネルギフィルタ12の電極14,15
間にかける電圧を変化させて測定したものである。同図
において横軸は検出された散乱イオン6′のエネルギ,
縦軸は信号量である。粒子エネルギフィルタ12の電極
14,15間にかける電圧は,スペクトルA(25),
スペクトルB(26)及びスペクトルC(27)に対し
てそれぞれ,4kV,6kV及び8kVである。この図
より粒子エネルギフィルタ12の電極14,15間にか
ける電圧によりSiスペクトルの検出エネルギ下限28
がコントロールできることがわかる。また,図9では,
同じ試料5に対して測定結果の一部を縦軸を対数表示に
して表したものである。ただし,縦軸は入射イオンのト
ータルチャージ量により規格化している。図中のスペク
トルD(29),スペクトルE(30)及びスペクトル
F(31)は,それぞれ以下のような条件で得られたも
のである。 スペクトルD(29):入射イオンの試料5に対する入
射方向…ランダム入射条件,粒子エネルギフィルタ12
の電極間14,15にかける電圧…6kV スペクトルE(30):入射イオンの試料5に対する入
射方向…ランダム入射条件,粒子エネルギフィルタ12
の電極間14,15にかける電圧…12kV スペクトルF(31):入射イオンの試料5に対する入
射方向…チャネリング条件,粒子エネルギフィルタ12
の電極間14,15にかける電圧…12kV
【0015】ただし,入射イオンは500keVのヘリ
ウムイオン,散乱角(入射イオンの入射方向に対する散
乱イオン6の検出方向)は145°である。図9より以
下のことが明らかである。すなわち,スペクトルD(2
9)では散乱エネルギが約200keVから300ke
VにかけてSiに起因したシグナルが大きいため,その
パイルアップ成分がおよそ350keV以上で現れてい
る。一方,スペクトルE(30)ではSiに起因したシ
グナルが除去された結果,パイルアップ成分がほとんど
検出されず,散乱エネルギが約200keVから300
keVの範囲でのスペクトル強度がスペクトルD(2
9)のそれより3桁以上抑制されている。その結果,パ
イルアップシグナルがほとんどなくなり,Si基板表面
上を汚染していたと思われるCu及びPd元素のピーク
状のシグナル32,33が検出されている。スペクトル
F(31)では,散乱エネルギが約200keVから3
00keVの範囲でのスペクトル強度がスペクトルE
(30)のそれと比較した場合,Siに起因したシグナ
ルの抑制効果が2倍程度あることがわかった。上記実施
例では,粒子エネルギフィルタ12に印加した電圧は最
大12kVであるが,通常20kVまでは容易に印加で
きる。したがって,上記実施例では500keVのヘリ
ウムイオンビームを用いたが,1000keVまでエネ
ルギを上げることができる。また,上記実施例では,基
板元素をSiであるとしたが,ダイヤモンド基板などよ
り軽い元素からなる基板に対しては,粒子エネルギフィ
ルタ12で除去すべきエネルギ上限が下がる。従って,
結果として入射イオンビームのエネルギの最大許容値は
2000keV程度になる。下限については,入射イオ
ンのエネルギがかなり低いと,スパッタ効果による試料
損傷の問題が生じるということから一義的に決まる。以
上より,本発明が有効となる入射エネルギイオンビーム
のエネルギ範囲は100〜2000keVとなる。
【0016】このように,本発明では,Si基板上の汚
染元素の検出のみならず,もっと一般的な分析対象に対
しても当てはまる。即ち,特定エネルギ領域にのみ分析
興味がある場合は,粒子エネルギフィルタ12を用いる
ことにより選択的に特定エネルギ領域外の散乱イオン検
出量を減ずることができる。従って,その分だけ入射イ
オン電流量を増やすなどして所望の散乱イオン検出量を
増やすことができるのである。つまり,従来技術と比較
して検出感度を高められるか,又は測定時間を短縮する
ことができる。また,測定中において,試料を連続回転
又は連続並進移動させることにより,高いビーム電流量
であっても,イオンビーム入射により試料損傷又は汚染
元素の損失を軽減できる。さらに,試料が結晶の場合な
どでは,回転2軸の試料載置台を用いてビーム入射方向
を結晶の軸にアライメントすると,試料表面より数原子
層より深い位置にある原子による散乱が数十分の一とな
る。つまり,基板元素に起因したシグナル量のみを一層
抑制することができる。このように,試料を傾けたり,
並進させられるような試料載置台はすでに市販品があ
り,また従来技術のRBS/チャネリング分析装置には
搭載されているので,その実現性は十分にある。
【0017】
【発明の効果】第1の発明に係る試料分析装置は,上記
したように構成されているため,基板元素に起因した散
乱イオンの検出量を選択的に抑制でき,これに伴い基板
元素に起因したパイルアップシグナルも抑制できる。従
って,汚染元素に起因したシグナルに対するバックグラ
ンドも抑制できることになり,検出限界が大幅に改善さ
れる。また,結果的に検出手段に入射する散乱イオンの
トータル量が減少するので,その分だけ信号処理速度が
許す限りイオンビーム電流量を増加できる。従って汚染
元素の検出感度が向上できる。また,フィルタ手段を少
なくとも1対の電極等により構成することにより,フィ
ルタ機能を磁場ではなく電場で行えば,装置がよりコン
パクトになると共に,エネルギ分解能がよくなる。さら
に,上記1対の電極に突起部を設けることにより,一度
だけ上記電極で散乱された散乱イオンが直接検出手段に
入射することがほとんど不可能となるため,基板元素に
起因したシグナル量を一層抑制できる。さらに,上記試
料を連続回転又は連続並進移動可能な載置台上に保持し
た場合には,測定中に試料を連続回転等させることによ
り,高いビーム電流量であっても,イオンビーム入射に
よる試料損傷または汚染元素の損失を軽減することがで
きる。さらに,上記試料を少なくとも回転2軸の自由度
を有する載置台上に保持した場合には,ビーム入射方向
を基板元素の結晶の軸にアライメントすることができ,
試料表面より数原子層だけ深い位置にある原子による散
乱を数十分の一となすことができる。つまり,基板元素
に起因したシグナル量のみを一層抑制することができ
る。その結果,定量性が良く,しかも高感度な表面汚染
元素の検出が可能な試料分析装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係るRBS分析装置A′
の概略構成を示す模式図。
【図2】 RBS分析装置A′の動作の基本原理を示す
説明図。
【図3】 粒子エネルギフィルタの概略構造図。
【図4】 粒子エネルギフィルタの詳細構造図。
【図5】 散乱イオン軌道解析結果を示す図。
【図6】 散乱イオン軌道解析結果を示す図。
【図7】 散乱イオン軌道解析結果を示す図。
【図8】 RBS分析装置A′による実測結果を示す
図。
【図9】 RBS分析装置A′による実測結果を示す
図。
【図10】 従来のRBS分析装置Aの一例における概
略構成を示す模式図。
【図11】 従来のRBS分析装置Aの動作の基本原理
示す説明図。
【符号の説明】
A′…RBS分析装置(試料分析装置に相当) 1…高エネルギイオンビーム発生源(照射手段に相当) 2…ヘリウムイオンビーム(高エネルギイオンビームに
相当) 4…載置台 5…試料 6…散乱イオン 6′…特定範囲内にあるエネルギを持つ散乱イオン 7…半導体検出器(検出手段に相当) 8…信号処理器 12…粒子エネルギフィルタ(フィルタ手段に相当) 13…前段スリット(入口側絞り手段に相当) 14…低電位側電極(電極に相当) 15…高電位側電極(電極に相当) 16a…後段低エネルギ側スリット(出口側絞り手段に
相当) 16b…後段高エネルギ側スリット(出口側絞り手段に
相当) 20…突起部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 行人 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高エネルギイオンビームを照射する照射
    手段と,該ビームを照射された試料から後方散乱される
    散乱イオンを検出する検出手段とを具備した試料分析装
    置において,上記試料と検出手段との間に配設され,上
    記散乱イオンを電場あるいは磁場中を通過させたときの
    該散乱イオンの偏向量に基づいて,上記散乱イオンを分
    別するフィルタ手段を設けたことを特徴とする試料分析
    装置。
  2. 【請求項2】 上記フィルタ手段が,少なくとも上記電
    場を発生させる1対の電極と,該電極に入射する散乱イ
    オンの立体角を制限する入口側絞り手段と,該立体角を
    制限された散乱イオンを電場中を通過させたときの該散
    乱イオンの偏向量に基づいて上記散乱イオンの電極から
    の出射成分を制限することにより該散乱イオンを分別す
    る出口側絞り手段とからなることを特徴とする請求項1
    記載の試料分析装置。
  3. 【請求項3】 上記1対の電極のうち,上記散乱イオン
    の電極への入射方向と,電極からの出射方向とを含む面
    内における低電位側の電極の断面形状内側が階段状をな
    すように該低電位側の電極に複数の突起部を形成すると
    共に,上記各突起部の上記散乱イオンが衝突する側の傾
    き角度を,該散乱イオンが該各突起部に衝突して跳ばさ
    れたときに直接上記検出手段に到達しないように設定し
    たことを特徴とする請求項2記載の試料分析装置。
  4. 【請求項4】 上記試料を連続回転又は連続並進移動可
    能な載置台上に保持した請求項1〜3のいずれかに記載
    の試料分析装置。
  5. 【請求項5】 上記試料を少なくとも回転2軸の自由度
    を有する載置台上に保持した請求項1〜3のいずれかに
    記載の試料分析装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003511845A (ja) * 1999-10-13 2003-03-25 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド ラザフォード後方散乱を用いたイオン注入におけるビームアライメント測定
JP2006153751A (ja) * 2004-11-30 2006-06-15 Kyoto Univ イオンビーム分析装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003511845A (ja) * 1999-10-13 2003-03-25 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド ラザフォード後方散乱を用いたイオン注入におけるビームアライメント測定
JP4838470B2 (ja) * 1999-10-13 2011-12-14 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド ラザフォード後方散乱を用いたイオン注入におけるビームアライメント測定
JP2006153751A (ja) * 2004-11-30 2006-06-15 Kyoto Univ イオンビーム分析装置

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