JPH08109585A - ゴム物品補強用スチールコードおよび重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 コード径を拡大することなしに、大きな曲げ
変形に起因した破断に対する耐久性を高めたコードの適
用によって、特に荒れ地走行における耐久性を向上させ
たタイヤを提供する。 【構成】 １〜３本のスチールフィラメントからなるコ
アと、このコアのまわりに配列した多数本のスチールフ
ィラメントからなる少なくとも１層のシースとを撚り合
わせた、コアストランドのまわりに、１〜３本のスチー
ルフィラメントからなるコアと、このコアのまわりに配
列した多数本のスチールフィラメントからなる少なくと
も１層のシースとを撚り合わせた、シースストランドを
６本配置して撚り合わせたコードであって、該コアスト
ランドおよびシースストランドの最外層を形成するシー
スフィラメントの撚り方向を互いに逆にしたコードを、
タイヤのベルトに適用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、空気入りタイヤや工
業用ベルト等のゴム物品の補強材として使用されるスチ
ールコードおよびこのスチールコードからなるベルトに
てカーカスを補強した空気入りタイヤに関し、特にコー
ドの破断に対する耐久性の向上をはかろうとするもので
ある。

【０００２】スチールコードで補強したゴム物品として
よく知られているタイヤ、中でもトラック・バス用や建
設車両用などの重い荷重を支持する重荷重用タイヤで
は、不整地路および荒れ地を走行する機会が多く、この
走行中にタイヤが大きな突起や岩石等に乗り上げた際
に、突起や岩石等と当たる部分が局部的に大きく変形す
るため、ベルトのコードに、そのタイヤ径方向外側で圧
縮力および内側で引張り力がそれぞれ作用し、特に引張
り側からの亀裂によってコードが破断する結果、ベルト
の切断からタイヤの故障に至る事例が多い。

【０００３】

【従来の技術】従来、ベルトの切断を回避する手法とし
ては、ベルト剛性を高めて局部変形を小さくし、かつ変
形時に発生する大きな張力にも耐えることを狙って、コ
ード径を拡大してベルトの総強力を上昇させるのが、通
例である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、コード
径を拡大すると、タイヤの負荷転動中に歪が集中するコ
ード端面の面積、すなわちゴムとの非接着面が増大する
ため、ベルト端を起点としたセパレーションが発生しや
すくなり、さらにコード径の拡大に伴ってベルト、ひい
てはトレッドが厚くなって、走行中のタイヤ発熱が激し
くなるため、ベルトの耐久性の劣化は回避できない。ま
た、ベルト重量の増加は、当然タイヤの製造コストの削
減および自動車の低燃費化に逆行するものである。

【０００５】そこで、この発明の目的は、コード径を拡
大することなしに、大きな曲げ変形に起因した破断に対
する耐久性を高めたコードを提供すること、そしてこの
コードの適用によって、特に荒れ地走行における耐久性
を向上させたタイヤを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は、１〜３本の
スチールフィラメントからなるコアと、このコアのまわ
りに配列した多数本のスチールフィラメントからなる少
なくとも１層のシースとを撚り合わせた、コアストラン
ドのまわりに、１〜３本のスチールフィラメントからな
るコアと、このコアのまわりに配列した多数本のスチー
ルフィラメントからなる少なくとも１層のシースとを撚
り合わせた、シースストランドを６本配置して撚り合わ
せたコードであって、該コアストランドおよびシースス
トランドの最外層を形成するシースフィラメントの撚り
方向を互いに逆にしたことを特徴とするゴム物品補強用
コードである。

【０００７】また、この発明は、１対のビード部間でト
ロイド状に延びるカーカスを骨格とし、さらにカーカス
のクラウン部を少なくとも２層のベルトで補強した空気
入りラジアルタイヤであって、該ベルトはタイヤ赤道面
に対して傾いた向きに延びて互いに平行に配列した複数
のコードからなり、このコードに、上記のコードを適用
してなる空気入りタイヤである。

【０００８】さて図１に、この発明に従って、タイヤの
ベルトなどに適用する、スチールコードの断面を、撚り
構造１×（１＋６）＋６×（１＋６）＋１について示
す。該コードは、１本のスチールフィラメントからなる
コア１のまわりに６本のスチールフィラメントからなる
シース２を撚り合わせた、コアストランド３を中心とし
て、そのまわりに、コアストランド３と同一構造、すな
わち１本のコア1aのまわりに６本のスチールフィラメン
トからなるシース2aを撚り合わせた、シースストランド
４を６本撚り合わせてなる。ここで、コアストランド３
のシース２とシースストランド４のシース2aとの撚り方
向を逆にすることが肝要である。さらに、図示例では、
６本のシースストランド４のまわりに、ラップフィラメ
ント５をらせん巻きして、コードの束ねを強化してある
が、ラップフィラメント５を省略することも可能であ
る。

【０００９】また、図２に示すコードは、撚り構造１×
（３＋９）＋６×（３＋９）＋１であり、すなわちコア
ストランド３またはシースストランド４が、３本のスチ
ールフィラメントからなるコア１または1aのまわりに９
本のスチールフィラメントからなるシース２または2aを
撚り合わせた構造になり、この場合も、コアストランド
３のシース２とシースストランド４のシース2aとの撚り
方向を逆にする。なお、シースストランド４のまわりに
ラップフィラメント５をらせん巻きして、コードの束ね
を強化するのは、図１のコードと同様である。

【００１０】さらに、図３に示すコードは、撚り構造１
×（３＋９＋１５）＋６×（３＋９＋１５）＋１であ
り、すなわちコアストランド３またはシースストランド
４が、３本のスチールフィラメントからなるコア１また
は1aのまわりに９本のスチールフィラメントからなるシ
ース２または2aを撚り合わせ、さらにシース２のまわり
に15本のスチールフィラメントからなる第２シース６ま
たは6aを撚り合わせた構造になり、この場合は、コアス
トランド３の第２シース６とシースストランド４の第２
シース6aとの撚り方向を逆にする必要がある。なお、シ
ースストランド４のまわりにラップフィラメント５をら
せん巻きして、コードの束ねを強化するのは、図１のコ
ードと同様である。

【００１１】ここに、図１〜３に示したコードは、その
複数本を互いに並行に揃えてゴムシートに埋設してなる
プライを、タイヤのベルトに適用して、カーカスの補強
に供するもので、タイヤの構造としては、在来のトラッ
ク、バス用または建設車両用の空気入りタイヤに則るも
のでよく、例えば、図４に示す、ベルトの配置が有利に
適合する。ここで、同図において、符号７がビードコ
ア、８がこのビードコア７にタイヤの内側から外側に巻
き回したカーカス、９がこのカーカス８上に配置する６
層構造のベルトおよび10はこのベルト上に配置するトレ
ッドである。

【００１２】

【作用】例えば、タイヤのベルトを構成するコードの破
断に対する耐久性は、プランジャーテストによって評価
することが可能である。すなわち、図５に示すように、
プランジャーにトレッドの踏面を押しつけることによっ
て、タイヤのベルトには、図６に示すように、局部的な
曲げ変形が与えられ、その結果、引張り側のコードに亀
裂が発生してコード破断が発生する。

【００１３】そこで、重荷重用タイヤに特に使用され
る、層撚り構造のストランドを複数本撚り合わせてなる
コードを対象とした、プランジャーテストにおいて、そ
のコードの破断形態について究明したところ、コードの
破断は、コードの中心に配置したコアストランドのシー
スフィラメントとコアストランドのまわりに配置したシ
ースストランドのシースフィラメントとの接触域で発生
した亀裂から破断に至るケースが殆どであり、特に図７
に示すように、両シースフィラメントの交差点Ｐが破断
の起点となっていることが判明した。

【００１４】これは、プランジャーによる大変形を受け
た際に、図６に示したように、曲げによる大張力Ｆがコ
ードに働き、その結果、両フィラメントが点接触となる
交差点Ｐに応力が集中するためである。

【００１５】従って、両フィラメントを点で接触させな
いこと、つまり両フィラメントを線接触の関係とするこ
とによって、応力集中を緩和させることが肝要である。
具体的には、コアストランドおよびシースストランドの
最外層を形成するシースフィラメントの撚り方向を相互
に逆にすることによって、両シースフィラメントの線接
触を実現し、コードの耐破断性を大幅に向上するのであ
る。

【００１６】なお、重荷重用タイヤは、先に述べたよう
に、不整地路および荒れ地の走行中にタイヤが大きな突
起や岩石等に乗り上げる機会が多く、このときにトレッ
ド踏面に受けた切傷がトレッド部にとどまらずにベルト
までを切断する、いわゆるカット貫通故障という致命的
な故障が発生することがある。従って、重荷重用タイヤ
においては、耐カット貫通性にも優れることが好まし
い。そして、この耐カット貫通性とプランジャーテスト
の結果とが非常に良く対応することが確認されているか
ら、この発明に従うコードの採用によって、プランジャ
ーテストの結果が好転するため、耐カット貫通性の向上
も併せて達成されるのである。

【００１７】

【実施例】

実施例１ 図１に示した構造のコードを表１に示す仕様の下に製作
し、該コードを、図４に示したタイヤのベルト６枚中、
カーカス側寄りの１〜４層のベルトに打込み数：14.0本
/5cmで適用し、サイズ36.00R51の建設車両用ラジアルタ
イヤを試作した。なお、コードの各ストランドを構成す
るスチールフィラメントには、0.32mmφを用いた。かく
して得られたタイヤについて、プランジャーエネルギ
ー、発熱温度、ベルト重量および耐久性を測定または評
価した。その結果を、表２に示す。

【００１８】なお、プランジャーエネルギーは、各タイ
ヤに700 kPa の内圧を充填してから、図５に示したよう
に、90mmφの頭部を有するプランジャーに各タイヤを押
しつけてベルトが破断するまでエネルギーを、図８に斜
線で示す面積で表したものであり、算出した各タイヤに
おける面積を従来タイヤを100 としたときの指数にて、
表２に示した。また、発熱温度は、タイヤに700 kPa の
内圧を充填しかつ規定荷重を負荷した状態でタイヤをド
ラム上に載せ、室内温度：30℃および走行速度：８km／
ｈの条件下で２４時間走行させたのち、トレッドの表面
温度を測定した。そして、ベルト重量は、ベルトの各材
料の合計量にて比較した。さらに、耐久性は、規定内圧
を充填したタイヤをドラム上に、規定荷重およびスリッ
プアングル１°の条件下で載せて、８km／ｈの速度で24
時間走行させ、次いで荷重を規定荷重の10％増加したの
ち、同様の速度で24時間走行させ、その後荷重を規定荷
重の10％増加したのち、同様の速度でタイヤ故障が発生
するまで走行させたときの走行距離にて評価した。この
評価も、従来タイヤを100 としたときの指数にて、表２
に示した。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】

【００２１】実施例２ 図２に示した構造のコードを表３に示す仕様の下に製作
し、該コードを、図４に示したタイヤのベルトに打込み
数：14.0本／５cmで適用し、サイズ36.00R51の建設車両
用ラジアルタイヤを試作した。なお、コードの各ストラ
ンドを構成するスチールフィラメントには、0.23mmφを
用いた。かくして得られたタイヤについて、プランジャ
ーエネルギー、発熱温度、ベルト重量および耐久性を、
実施例１と同様に測定または評価した。その結果を、表
４に示す。

【００２２】

【表３】

【００２３】

【表４】

【００２４】実施例３ 図３に示した構造のコードを表５に示す仕様の下に製作
し、該コードを、図４に示したタイヤのベルトに打込み
数：13.3本/5cmで適用し、サイズ36.00R51の建設車両用
ラジアルタイヤを試作した。なお、コードの各ストラン
ドを構成するスチールフィラメントには、0.175 mmφを
用いた。かくして得られたタイヤについて、プランジャ
ーエネルギー、発熱温度、ベルト重量および耐久性を、
実施例１と同様に測定または評価した。その結果を、表
６に示す。

【００２５】

【表５】

【００２６】

【表６】

【００２７】

【発明の効果】この発明によれば、コード径を拡大する
ことなしにコードの耐破断性を向上することができるた
め、このコードをタイヤのベルトに適用することによっ
て、特に荒れ地での耐久性を向上させた、重荷重用タイ
ヤに好適のタイヤを提供し得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のコードを示す断面図である。

【図２】この発明のコードを示す断面図である。

【図３】この発明のコードを示す断面図である。

【図４】この発明に好適のタイヤ構造を示す断面図であ
る。

【図５】プランジャーテストの要領を示す模式図であ
る。

【図６】プランジャーテスト中のベルトの状態を示す模
式図である。

【図７】コードを構成するストランド間でのフィラメン
ト接触状態を示す模式図である。

【図８】プランジャーエネルギーの測定要領を説明する
図である。

【符号の説明】

１，1a コア ２，2a シース ３ コアストランド ４ シースストランド ５ ラップフィラメント ６，6a シース ７ ビードコア ８ カーカス ９ ベルト 10 トレッド

─────────────────────────────────────────────────────

【手続補正書】

【提出日】平成６年１１月７日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１８

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１８】なお、プランジャーエネルギーは、各タイ
ヤに700 kPa の内圧を充填してから、図５に示したよう
に、90mmφの頭部を有するプランジャーに各タイヤを押
しつけてベルトが破断するまでエネルギーを、図８に斜
線で示す面積で表したものであり、算出した各タイヤに
おける面積を従来タイヤを100 としたときの指数にて、
表２に示した。また、発熱温度は、タイヤに700 kPa の
内圧を充填しかつ規定荷重を負荷した状態でタイヤをド
ラム上に載せ、室内温度：30℃および走行速度：８km／
ｈの条件下で２４時間走行させたのち、トレッドの内部
温度を測定した。そして、ベルト重量は、ベルトの各材
料の合計量にて比較した。さらに、耐久性は、規定内圧
を充填したタイヤをドラム上に、規定荷重およびスリッ
プアングル１°の条件下で載せて、８km／ｈの速度で24
時間走行させ、次いで荷重を規定荷重の10％増加したの
ち、同様の速度で24時間走行させ、その後荷重を規定荷
重の10％増加したのち、同様の速度でタイヤ故障が発生
するまで走行させたときの走行距離にて評価した。この
評価も、従来タイヤを100 としたときの指数にて、表２
に示した。

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００２２

【補正方法】変更

【補正内容】

【００２２】

【表３】

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １〜３本のスチールフィラメントからな
   るコアと、このコアのまわりに配列した多数本のスチー
   ルフィラメントからなる少なくとも１層のシースとを撚
   り合わせた、コアストランドのまわりに１〜３本のスチ
   ールフィラメントからなるコアと、このコアのまわりに
   配列した多数本のスチールフィラメントからなる少なく
   とも１層のシースとを撚り合わせた、シースストランド
   を６本配置して撚り合わせたコードであって該コアスト
   ランドおよびシースストランドの最外層を形成するシー
   スフィラメントの撚り方向を互いに逆にしたことを特徴
   とするゴム物品補強用コード。
2. 【請求項２】 １対のビード部間でトロイド状に延びる
   カーカスを骨格とし、さらにカーカスのクラウン部を少
   なくとも２層のベルトで補強した空気入りラジアルタイ
   ヤであって、該ベルトはタイヤ赤道面に対して傾いた向
   きに延びて互いに平行に配列した複数のコードからな
   り、このコードに、請求項１に記載のコードを適用して
   なる空気入りタイヤ。