JPH08109443A - 耐銹性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
耐銹性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板Info
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- JPH08109443A JPH08109443A JP24444294A JP24444294A JPH08109443A JP H08109443 A JPH08109443 A JP H08109443A JP 24444294 A JP24444294 A JP 24444294A JP 24444294 A JP24444294 A JP 24444294A JP H08109443 A JPH08109443 A JP H08109443A
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Abstract
レス鋼板を提供する。 【構成】 wt%表示で、C≦0.03、Si≦0.3 、Mn≦1.0
、P≦0.08、S≦0.020、Cr:10〜35、N≦0.08、Nb:
0.05〜2.0 、Al:0.008 〜0.80を含有し、更に必要に応
じて、Ti:0.05〜2.0 、Cu:0.05〜1.0 、Ni:0.05〜5.
0 、Mo:0.05〜5.0 %のうち1種以上を含み残部はFe
と不可避不純物とからなり、更に表面にC,O 及びNを除
いたカチオンのみの割合で、皮膜内の平均濃度でAl≧15
at%、Nb≧6at%で、鋼中にTiを添加した場合のみTiを
含み残部が鋼中元素の酸化物からなる光輝焼鈍による酸
化皮膜を備えた耐銹性と加工性に優れた建築建材や自動
車モール用などに適する外装用フェライト系ステンレス
鋼板。更に、ダルロールでの圧延により表面粗度を算術
平均粗さRaで0.3 μm以上とした上記鋼板。
Description
動車モール用素材などとして、湿潤大気環境下での耐銹
性に優れ、さらに加工性にも優れたフェライト系ステン
レス鋼板に関する。
ナイト系ステンレス鋼に比べてNi含有量が少なく比較
的安価なため、建築物の内外装材や自動車モール材など
として広く使用されている。しかし、海塩粒子や亜硫酸
ガスなど腐食性因子が多い環境では、Niが少ないため
発銹やしみなどの腐食損傷が問題となっている。特に、
近年の酸性雨やSO2 ガスの増加、臨海地域開発に伴う
高濃度海塩粒子環境でのステンレス鋼建材の使用、さら
に輸送機器においては冬季の安全確保のための塩化物系
融雪剤散布など、腐食環境は厳しくなってきており、フ
ェライト系ステンレス鋼のより一層の高耐食化が求めら
れている。
するには、CrやMoを多量に合金化する方法と、水素
−窒素混合ガス中での光輝焼鈍により表面に耐銹性に優
れた皮膜を形成させる方法とがある。前者は合金化によ
るコスト増加を招くため、特に安価な素材が要求される
建築建材や自動車・輸送機器用としては好ましくなく、
そのため、後者の光輝焼鈍を利用した高耐食化方法につ
いて種々の研究や発明がなされている。
は、Siを0.3重量%以上含むステンレス鋼を800
℃〜1100℃で光輝焼鈍することにより、Si分を3
0原子%以上含む非晶質シリカ(SiO2 )を主成分と
する皮膜を形成させて耐銹性を高めた鋼とその製造方法
が開示されている。
は、SiO2 皮膜の耐銹性にとってAlが有害であると
の発見から、鋼中Al量と酸化皮膜中Al量に上限を規
定したステンレス鋼の製造方法が開示されている。その
主旨は、Al含有量が0.05重量%以下のステンレス
鋼を960℃以上1040℃以下で光輝焼鈍し、表面に
Cを除いた原子%で金属状態のFeを10原子%以下、
酸化物状態のAlを60原子%以下とし、残部がSiO
2 とその他の金属酸化物からなる表面皮膜を形成させる
ものである。
には、SiO2 皮膜の耐銹性にとってNbが有効に作用
するとの発見に基づき、光輝焼鈍材の皮膜の表層2.0
nmに含まれるSiとNbの平均原子%の比をNb/Si
=0.1〜0.3とすると、耐銹性が向上することが開
示されている。
ェライト系ステンレス鋼の耐銹性改善技術は、 主に脱酸元素として添加されるSiが低露点の水素−
窒素混合ガスの環境下で優先的に酸化されてSiO2 を
主成分とする皮膜が形成されること、 このSiO2 皮膜は耐銹性が良好であること、 SiO2 皮膜の耐銹性がAl酸化物やNb酸化物の共
存により阻害されたり改善されたりすることに基づいて
いる。従って、従来技術に基づき耐銹性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼を得るためには、たとえNbやAl
量を制御しても不十分であり、光輝焼鈍時に優先的に酸
化し表面皮膜に所定量以上濃縮するだけのSiを鋼中に
添加することが必然的に必要である。実際に、上述した
発明の実施例では、何れも鋼中Siが0.3重量%以上
である。
とって有効であるが、ステンレス鋼の加工性を著しく阻
害するという欠点がある。特に、フェライト系ステンレ
ス鋼の曲げや絞りなどの加工性をSUS304鋼などの
汎用オーステナイト系ステンレス鋼並みに高めるには、
Si量を0.3重量%未満に低める必要がある。しか
し、以上のように加工性に優れた低Siフェライト系ス
テンレス鋼の耐銹性を著しく改善する技術は未だ開発さ
れていない。
性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供
することを目的としてなされた。
れる低Siのステンレス鋼の耐銹性を改善すべく、鋼中
成分と光輝焼鈍で生成する皮膜組成との関係、さらに光
輝焼鈍条件と生成する皮膜組成や厚さの関係、光輝焼鈍
で生成する皮膜性状と耐銹性との関係などについて研究
を行った結果、(1)フェライト系ステンレス鋼のSi
量が0.3重量%以下になると光輝焼鈍により生成する
皮膜中のSiO2 量が少なくなり、耐銹性が劣化するこ
と、(2)フェライト系ステンレス鋼のSi量が0.3
重量%以下であっても、鋼中にNbとAlを複合添加
し、さらに光輝焼鈍によりAl酸化物とNb酸化物を含
む皮膜を形成すると耐銹性が良好になること、(3)鋼
中成分量と焼鈍条件を制御することで、皮膜中のAl酸
化物とNb酸化物の量を高めると耐銹性が飛躍的に向上
すること、(4)光輝焼鈍後にダルロールで表面粗度を
高めた場合でも、ダル圧延後の皮膜中にAl酸化物とN
b酸化物が一定量以上含まれる場合には、鋼板の耐銹性
は比較的良好であること、(5)上記(2)〜(4)の
現象に対して、鋼中のTiおよび皮膜中のTi酸化物は
耐銹性をさらに向上させる方向に作用すること、などの
全く新しい事実を発見した。
であって、その要旨とするところは下記の通りである。
すなわち重量%にて、C :0.03%以下、
Si:0.3%以下、Mn:1.0%以下、
P :0.08%以下、S :0.020%以
下、 Cr:10%以上35%以下、N :
0.08%以下、 Nb:0.05%以上
2.0%以下、Al:0.008%以上0.80%以下
を含有し、さらに必要に応じて、Ti:0.05%以上
2.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、N
i:0.05%以上5.0%以下、Mo:0.05%以
上5.0%以下のうち1種以上を含み残部はFeと不可
避不純物とからなり、さらに表面にC,OおよびNを除
いたカチオンのみの割合で、皮膜内の平均濃度でAlが
15原子%以上、Nbが6原子%以上で鋼中にTiを添
加した場合のみTiを含み残部を鋼中元素の酸化物から
なる光輝焼鈍による皮膜を備えた耐銹性と加工性に優れ
たフェライト系ステンレス鋼板。さらに、ダルロールで
の圧延により表面粗度を算術平均粗さRaで0.3μm
以上とした上記鋼板である。
酸化皮膜組成の限定理由について詳細に説明する。 (1)ステンレス鋼の成分範囲 Cは、それ自体では光輝焼鈍皮膜の耐銹性には影響しな
いが、過度に含有すると鋼板の靭性を劣化するため、
0.03重量%以下とした。Siの添加は深絞りや曲げ
などの加工性を著しく阻害する。本発明では、加工性を
十分確保するため、Siの添加量は0.3重量%を上限
とした。
加工性を改善する。また、Mn自体は光輝焼鈍皮膜の耐
銹性には影響しないが、多量に添加してもコスト上昇に
見合った熱間加工性改善効果を期待できないため、1.
0重量%以下とした。Pは、多量に存在すると、光輝焼
鈍皮膜の耐銹性にとって有害であるので、0.08重量
%以下とした。Sは、主にMnSなどの介在物として存
在し、発銹の起点となる。このため、上限を0.020
重量%とした。
が破壊された際の補修機能を高める。しかし、10重量
%未満ではその効果が弱く所望の結果を期待できず、3
5重量%を超えて添加した場合には、耐銹性は極めて向
上するが、加工性が著しく劣化する。このため、上限を
35重量%とした。また、Cr添加量が比較的少ない場
合には、光輝焼鈍皮膜による耐銹性改善効果が薄れる傾
向があるため、特に耐銹性を高める必要がある場合に
は、Crを20重量%以上添加することが望ましい。N
は、それ自体では光輝焼鈍皮膜の耐銹性には影響しな
い。しかし、Nを過度に含有すると鋼板の靭性が低下す
るため、上限を0.08重量%とした。
を防止するとともに、光輝焼鈍時にAlとともに酸化さ
れ表面皮膜に濃化し、耐銹性を向上させる作用がある。
この効果を期待するためには、後述するようにNb酸化
物が皮膜に一定量以上含まれることが必要であり、その
ためにはNbを0.05重量%以上添加する必要があ
る。しかし、過度の添加はコスト上昇に見合う効果が期
待できなくなるばかりではなく、加工性を阻害すること
になる。このため、添加量の上限を2.0重量%とし
た。さらに、後述するように、このNbはAlと複合添
加することにより、はじめて耐銹性向上効果を発揮す
る。
時に表面皮膜中に濃化し、耐銹性を改善する。耐銹性改
善を期待するには、後述するように酸化皮膜中にAlを
一定量以上濃縮させる必要があり、このためには鋼中に
Alを0.008重量%以上添加する必要がある。しか
し、過度に添加すると加工性が劣化するため、添加量の
上限は0.80重量%とした。また、このAlが耐銹性
を高める作用は、Nbとの複合添加によりはじめて効果
が現れる。
炭化物析出を抑制し耐粒界腐食性を高める作用があり、
必要に応じて添加する。この安定化元素としての効果は
Nbで代替可能であり、通常はTiを添加する必要はな
い。しかし、Tiは光輝焼鈍中にNbやAlとともに酸
化され表面皮膜中に濃化することで耐銹性を向上させる
作用がある。この特性を重視する場合にはTiを添加す
る必要があり、十分な効果を期待するには、0.05重
量%以上添加するのが好ましい。しかし、過度に添加す
ると表面肌にキズが発生しやすくなることから、添加量
の上限を2.0重量%とした。尚、その作用機構の詳細
は不明であるが、酸化皮膜中のTiによる耐銹性向上
は、酸化皮膜中にAlとNbが一定値以上存在すること
が必須条件である。
量に濃縮することはないが、鋼中に存在し皮膜破壊時の
皮膜補修機能を改善する作用があり、ステンレス鋼の耐
酸性や耐銹性を向上させる。従って、AlとNb添加、
またはAl,Nb,Ti添加による耐銹性改善でも不十
分な場合には、必要に応じてCu,Ni,Moの中から
1種類以上を添加し、耐銹性を補うことができる。しか
し、過度の添加はコスト上昇を招くため、Cuは0.0
5重量%以上1.0重量%以下、Niは0.05重量%
以上5.0重量%以下、Moは0.05重量%以上5.
0重量%以下とした。
Nbおよび酸化物状Tiは、耐銹性を向上させる作用が
ある。詳細な作用機構は不明であるが、耐銹性を向上さ
せるには、AlとNbを酸化皮膜中に共存させる必要が
あり、さらにAl,NbとTiが共存するとより耐銹性
が向上する。しかし、酸化皮膜中でのAlおよびNbの
量が少ないと耐銹性向上の度合いが少ない。このため、
酸化皮膜組成としては、C,OおよびNを除いたカチオ
ンのみの存在割合で、皮膜内の平均濃度でAlが15原
子%以上、Nbを6原子%以上で残部が鋼中元素の酸化
物からなる酸化皮膜とする必要がある。
でも効果を発揮するため、オージェ電子分光法で検出可
能な程度存在すれば十分である。オージェ電子分光法の
検出限界は、使用する装置の性能にも左右されるがおよ
そ0.1〜1原子%である。しかし、実施例で後述する
ように1原子%程度のTiにより耐銹性が向上すること
から、Tiは0.1原子%未満でも耐銹性を向上させる
効果があることは十分に予測される。しかし、現状では
分析機器の問題から皮膜中Ti量の下限値を明確にする
ことは困難であるため、皮膜中にTiが存在することを
本発明では規定することにした。このTiはAlおよび
Nbと共存することによりはじめて効果を発揮する。ま
た、耐銹性をさらに高める必要がある場合には、Alを
20原子%以上、Nbを10原子%以上とすることが望
ましい。
した手順で酸化皮膜の厚さを定義した場合のものであ
る。すなわち、Arイオンスパッタリングによりステン
レス鋼の酸化皮膜を最表層から徐々に削って行きなが
ら、オージェ電子分光法により表面組成の変化を測定す
る。そして、酸化皮膜表層付近の酸素濃度OF と金属素
地部分の酸素濃度OM の算術平均値((OF +OM )/
2)を求める。ここで、スパッタリングにより皮膜がな
くなると、酸素濃度がゼロ原子%に近い一定値になるこ
とから、下地金属の露出と金属素地部分での酸素濃度を
知ることができる。次いで、図1のように酸素濃度のス
パッタリング時間に対する変化曲線から、酸素濃度が
(OF +OM )/2となる時点を求め、ここを酸化皮膜
と金属素地の界面とし、スパッタリング開始時点の最表
層からこの皮膜/金属界面までの距離を膜厚とする。そ
して、皮膜内の平均組成とは、図1に示したように、以
上の手順で決めた皮膜中における注目する元素濃度の平
均値である。尚、ここで言う皮膜組成とは、100μm
×100μmよりも広い範囲での平均値である。また、
皮膜組成とはオージェ電子分光法による分析値である。
して変化する。さらにArイオンスパッタリングやエリ
プソメトリーなどの計測手法に依存して測定値が異なり
絶対値の決定が困難である。そのため、明確に膜厚の範
囲は記述できないが、おおむね2.0nm以上であれば、
耐銹性向上機能を発揮する。しかし、500nmを超えた
場合には干渉色が発生し、装飾用としてはあまり実用的
ではない。
l,Tiなどを添加したフェライト系ステンレス鋼は開
発および製造されている。しかし、上記の皮膜組成に関
することが不明であったため、耐銹性が比較的劣る鋼板
しか製造することができなかった。従って、本発明の特
徴の1つは、表面にC,OおよびNを除いたカチオンの
みの割合で、皮膜内平均濃度でAlが15原子%以上、
Nbが6原子%以上、もしくはさらにTiを含み残部を
鋼中元素の酸化物からなる光輝焼鈍による皮膜を備えて
いることにある。
窒素の混合ガスなどの還元性ガスを使用する必要があ
る。これは光輝焼鈍過程で生成する皮膜の厚さを500
nm以下に薄くして、干渉色の発生を抑えステンレス鋼特
有の金属光沢を維持するためである。雰囲気ガスの露点
は−35℃以下であることが望ましい。ガスが還元性で
あっても、露点が高い場合には、鋼中に多量に存在する
FeやCrが多量に酸化してしまい、所定の成分からな
る皮膜を形成させることが困難になる。露点が−80℃
以上の場合には、露点を低くすればするほどAl,N
b,Tiの皮膜への濃縮量は増える。
温焼鈍ほどAl,Nb,Tiが優先酸化し、特にAlと
Tiの酸化にとって有利である。しかし、再結晶温度を
超えて高温で焼鈍を行うと、結晶粒が粗大化し機械的な
特性が劣化する。そこで、適量のNbを添加し再結晶温
度を高め結晶粒の粗大化を抑制する必要がある。また、
Al,Ti,Nbの添加量を高めれば、それだけ各元素
の皮膜への濃縮も容易になり、本発明で規定している組
成の皮膜をより低温で合成することができる。
乱の度合いが増す。従って、屋根材や建築外層材として
要求される防眩性を確保するには、Raを0.3μm以
上にする必要がある。ダルロールでの圧延については、
光輝焼鈍処理の前または後に行う方法がある。ここで、
光輝焼鈍処理の後にダル圧延を行う場合には、圧下率を
高めRaを大きくすると、防眩性は高まるものの光輝焼
鈍皮膜が機械的に破壊され金属素地が露出し、耐銹性の
劣る空気中生成皮膜で覆われた部分の割合が増す危険性
がある。従って、この場合には、圧延に先立つ光輝焼鈍
で十分にAlとNb、あるいはTiを皮膜に十分濃縮さ
せておき、ダル圧延後の耐銹性を確保する必要がある。
尚、ダル圧延後に局所的にNbやAlの低い部分やTi
の存在しない部分が存在しても、100μm×100μ
m以上の広さでの平均値で皮膜組織が本発明の範囲であ
れば、たとえ光輝焼鈍皮膜が部分的に機械的に破壊され
ていたとしても、耐銹性は良好である。
ス鋼の製造方法として、光輝焼鈍とダルロールによる圧
延を組み合わせた方法が開発されている。しかし、今ま
でに知られている組成の光輝焼鈍皮膜は、ダル圧延を受
けて皮膜の一部が機械的に破壊され素地が露出すると全
く防食作用を失う。このため、光輝焼鈍前にダル圧延す
ることが必須であったり、光輝焼鈍後にダル圧延を行う
場合でも皮膜を強化するために硝酸浸漬や電解などの後
処理が必須であり、コスト上昇の大きな原因であった。
本発明の組成を有する光輝焼鈍で生成した酸化皮膜は、
その作用機構の詳細は不明であるが、ダル圧延後の耐銹
性改善にとっても有効であるという機能を有している。
する。通常の真空溶解・圧延法により、表1に示した番
号1〜50のフェライト系ステンレス鋼板を作製した。
そして、冷間圧延後に厚さ0.5mmで縦50mm、横40
mmの大きさに切断し試験片とした。これらを水素75容
量%−窒素25容量%の混合ガス中で、750℃〜12
00℃の温度で1s〜20s間焼鈍することで、本発明
鋼板1〜36と比較鋼板37〜50を得た。焼鈍ガスの
露点は、番号41と48が−32℃で、それ以外は全て
−48℃で行った。焼鈍には赤外線加熱炉を使用し、1
5℃・s-1の昇温速度で所定の温度まで加熱後、所定時
間保定した後炉冷した。加熱,均熱,冷却過程を通して
水素−窒素の混合ガスを試験片に吹き付けた。また、ガ
スの流量制御により、冷却速度は400℃以上の領域で
は15℃・s-1以上、400℃〜100℃でも10℃・
s-1程度となるように制御した。
オンスパッタリングの併用により分析した。分析面積は
縦100μm横100μmの範囲であり、分析値はこの
面積の平均値である。分析結果は、C,OおよびNを除
いた酸化皮膜を構成しているカチオンの割合で表した。
また、皮膜組成は表面酸化皮膜内での平均値で表示し
た。表1中の※印は、鋼板の化学組成あるいは皮膜組成
が本発明範囲から外れていることを示す。尚、鋼板4
2,43,49,50は光輝焼鈍後に、生成した光輝焼
鈍皮膜をダイヤモンドペースト研磨により除去したもの
である。
食試験での銹発生面積率から判定した。この試験は、
人工海水噴霧(35℃、4時間)、乾燥(60℃、2
時間)、湿潤(相対湿度95%以上、50℃、2時
間)を1サイクルとしたサイクル腐食試験であり、5サ
イクルでの銹発生面積率の程度により耐銹性を評価し
た。銹発生面積率は、フルカラーの画像解析装置で計測
した、赤銹としみを含めた面積率である。
量が高い鋼板は、銹発生が少ないことが分かる。例え
ば、鋼板3〜7および鋼板21〜25は、それぞれ同一
化学組成の鋼の焼鈍条件を変えることにより、皮膜組成
を変化させたものである。焼鈍温度が高くなるほど、皮
膜へのAlとNb濃化度が高まり、銹発生が軽微にな
る。また、鋼板40,41と47,48は、鋼中成分量
は本発明の範囲内であるが皮膜成分が範囲外のものであ
る。これらは銹発生面積率が10%以上であり耐銹性は
悪い。このように鋼中成分のみの規定では、耐銹性に優
れた鋼板を開発することはできない。さらに、鋼板42
と49は、それぞれ鋼板3と21の皮膜を鏡面研磨によ
り除去したものであるが、研磨後に生成する空気中生成
皮膜にはNbとAlが濃縮しないため、耐銹性は極めて
悪い。以上のことから、耐銹性を向上させるためには皮
膜組成が最も重要であることが分かる。
は、鋼中のNbとAlの量が少ない場合には生成しな
い。比較材37〜39および44〜46はNbもしくは
Al、または両方が本発明の範囲よりも少ない材料であ
る。これらの素材は、光輝焼鈍条件を変化させても光輝
焼鈍皮膜へのNbとAlの濃化度は低く本発明の範囲外
となり、耐銹性も悪い。皮膜へNbとAlを濃縮させる
ためには、鋼中にNbを0.05重量%以上、Alを
0.008重量%以上添加することが必要である。
皮膜中にNbもしくはAlの一方だけを濃縮したもので
ある。Nbの添加により僅かな耐銹性改善が見られる
が、銹発生面積率は15%程度であり耐銹性は悪い。し
かし、発明鋼(例えば、鋼板11や28)のように皮膜
中にNbとAlを同時に濃縮させることにより、銹発生
面積率は約5%以下になり、皮膜へのNbとAlの複合
添加によりはじめて耐銹性が著しく向上する。また、鋼
板14〜16および32〜34は、光輝焼鈍皮膜の耐銹
性を補うためにNi,Cu,Moのうち1種類を添加し
た鋼であるが、無添加材に比べて耐銹性が改善させてい
ることが分かる。
板である。これらは、同程度のAlとNbを皮膜に含む
鋼板(例えば13と10の比較)に比べて耐銹性が良好
であり、皮膜中にTiが存在すると極めて耐銹性が向上
することが分かる。また、比較材43と50は発明鋼板
17および35の光輝焼鈍皮膜を研磨し、空気中生成皮
膜を形成させたものである。皮膜にはTiは含まれてい
ない。オージェ電子分光法の感度を考慮すると、仮に存
在したとしても0.1原子%未満である。これら鋼板の
銹発生面積率は10%以上であり、Tiを含む光輝焼鈍
皮膜を有する鋼板の銹面積率が0.1%未満であること
から、このような皮膜を持った鋼は、たとえ鋼中成分を
本発明の範囲内に規制しても耐銹性は悪いことが分か
る。また、Tiを鋼中と皮膜に含む鋼板にCu,Ni,
Moのうち1種類以上を添加したものが鋼板17,1
8,35,36である。これら鋼板は、耐銹性が優れて
いることも表2から分かる。
43について、皮膜中のNbとAl量と銹発生面積率と
の関係を再整理した結果である。皮膜中のNb量が6原
子%以上の場合には、皮膜中Al量の増加とともに耐銹
性が向上する。特にAlが15原子%以上になると銹発
生面積率が完全に10%以下になり耐銹性が著しく良好
になる。しかし、皮膜中のNbが6原子%未満の場合に
は、皮膜中のAl量が増しても耐銹性は向上しない。
厚さ0.4mmの大きさで鋼中成分が表1の鋼板35であ
る冷間圧延板を作製し、小型光輝焼鈍炉にて焼鈍処理の
後に圧延機にてダルロールを用いて圧延した後の孔食発
生電位を示したものである。ダル圧延は、圧下率を変え
ることで、Raを0.51μmと0.95μmのものを
作製した。光輝焼鈍は、1050℃で炉内の均熱帯での
滞在時間を30sとした。焼鈍雰囲気ガスは、水素75
容量%−窒素25容量%で露点を−45℃に調整したも
のを使用した。この試験では、光輝焼鈍後にダル圧延を
行うため、表1の実験に比べ焼鈍時間を長くし、皮膜中
のAl,Nb,Tiの量をできるだけ高めるように工夫
した。尚、孔食発生電位は、35℃の3.5重量%Na
Cl水溶液(N2 脱気)で飽和カロメル電極基準で測定
した。皮膜組成の分析結果は、上述の方法と同一であ
り、分析結果は縦100μm、横100μmでの平均値
である。
銹性の変化について調べた結果である。この表に示した
通り、皮膜組成が本発明の範囲内であれば、ダル圧延を
経た鋼板であっても孔食発生電位は研磨仕上げよりも著
しく高くなり、耐銹性に優れていることが分かる。この
際、光輝焼鈍皮膜はダル圧延により一部が機械的に破壊
されている可能性もあるが、このような状況でも、光輝
焼鈍により皮膜組成を本発明の範囲に規制することによ
り優れた耐銹性を有する鋼板を得ることができる。
に優れた材料が要求される、建築建材、自動車モール
材、輸送用機器など屋外での使用に適したステンレス鋼
を提供することが可能であり、本発明は、工業上極めて
有用な効果をもたらす。
グを併用した表面分析のデータから皮膜/金属界面を決
定する手順と皮膜内での平均元素濃度を求める手順を示
す図。
での銹発生面積との関係を示す図。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%にて、 C :0.03%以下、 Si:0.3%以下、 Mn:1.0%以下、 P :0.08%以下、 S :0.020%以下、 Cr:10%以上35%以下、 N :0.08%以下、 Nb:0.05%以上2.0%以下、 Al:0.008%以上0.80%以下 を含有し、残部はFeと不可避不純物とからなる鋼板で
あって、その表面にC,OおよびNを除いたカチオンの
みの割合で、皮膜内の平均濃度でAlが15原子%以
上、Nbが6原子%以上で残部が鋼中元素の酸化物から
なる光輝焼鈍による酸化皮膜を備えたことを特徴とする
耐銹性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項2】 請求項1記載の鋼板組成に、さらに重量
%として、 Cu:0.05%以上1.0%以下、 Ni:0.05%以上5.0%以下、 Mo:0.05%以上5.0%以下 のうち1種以上を含有し、その表面にC,OおよびNを
除いたカチオンのみの割合で、皮膜内の平均濃度でAl
が15原子%以上、Nbが6原子%以上で残部が鋼中元
素の酸化物からなる光輝焼鈍による酸化皮膜を備えたこ
とを特徴とする耐銹性と加工性に優れたフェライト系ス
テンレス鋼板。 - 【請求項3】 請求項1あるいは2に記載の鋼板組成
に、さらに、重量%として、 Ti:0.05%以上2.0%以下 を含有し、鋼板表面に、C,OおよびNを除いたカチオ
ンのみの割合で、皮膜内の平均濃度でAlが15原子%
以上、Nbが6原子%以上でさらにTiを含み残部が鋼
中元素の酸化物からなる光輝焼鈍による酸化皮膜を備え
た耐銹性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼
板。 - 【請求項4】 ダルロールでの圧延により表面粗度を算
術平均粗さ(Ra)で0.3μm以上としたことを特徴
とする請求項1,2あるいは3の何れかに記載した耐銹
性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
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