JPH0794458B2 - 新規化合物チオマリノールbの製造方法 - Google Patents

新規化合物チオマリノールbの製造方法

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JPH0794458B2
JPH0794458B2 JP27510893A JP27510893A JPH0794458B2 JP H0794458 B2 JPH0794458 B2 JP H0794458B2 JP 27510893 A JP27510893 A JP 27510893A JP 27510893 A JP27510893 A JP 27510893A JP H0794458 B2 JPH0794458 B2 JP H0794458B2
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thiomarinol
methanol
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sodium
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた抗菌作用を有する
新規化合物チオマリノ−ルB(Thiomarinol B) の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】海水より分離したアルテロモナス (Alte
romonas)属に属する微生物が、例えば抗腫瘍活性を有す
るビスカベリン(bisucaberin) を生産することが知られ
ている(特開昭63-27484号)。しかし、ビスカベリンは
環状ペプチド化合物である。
【0003】水酸基で置換されたテトラヒドロピラン骨
格を母核とした誘導体は数多いが、中でもチオマリノ−
ル(後述の式を参照)に類似した構造を有する化合物と
しては、例えばシュ−ドモナス フルオレセンス(Pseu
domonas fluorescens)が生産するシュ−ドモン酸(Pseud
omonic acid)A(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,294頁(197
7 年))、シュ−ドモン酸B(J.Chem.Soc.Perkin Trans.
I,318頁(1977 年))、シュ−ドモン酸C(J.Chem.Soc.Per
kin Trans.I, 2827頁(1982 年))およびシュ−ドモン酸
D(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I, 2655頁(1983 年))が知
られている。しかし、これらには例えばチオマリノ−ル
の特徴であるテトラヒドロピラン骨格とα、β−不飽和
カルボニルに挟まれたメチレンに水酸基が存在しない。
なお現在、シュ−ドモン酸Aの 2 %軟膏(商品名、「B
actroban」 、Beecham 社)が皮膚感染症治療剤として欧
米で実用に供されている。しかし、これらシュ−ドモン
酸の抗菌活性はチオマリノ−ルBより弱い。
【0004】また、シュ−ドモン酸の末端カルボン酸を
アミドに変換した誘導体も知られている(特開昭52−10
2279号、特開昭54−12375 号、特開昭54−90179 号、特
開昭54−103871号、特開昭54−125672号)。しかし、こ
れらの中にはチオマリノ−ルBのような強い抗菌力、多
くのグラム陰性菌まで含む広い抗菌スペクトルを有する
ものはない。むしろ、その活性はシュ−ドモン酸より弱
くなる傾向がある。
【0005】チオマリノ−ルBの構造上の特徴のひとつ
に、テトラヒドロピラン骨格とα、β−不飽和カルボニ
ルに挟まれたメチレンに水酸基が存在する。このような
水酸基を有する化合物としては唯一、海洋細菌由来の化
合物が報告されている(Am.Chem.Soc.の 200年会(1990
年 8月 26-31日)の Abstracts of Papers、Part 2、
ORGN.No.139 )。しかしながら、この化合物の末端のカ
ルボニル基に結合する複素環基は2−ピペリドン−3−
イル基であり、その抗菌活性の詳細は不明である。
【0006】一方、ホロシン(holothin, Helv.Chim.Act
a,42巻,563頁(1959 年))骨格を母核とした誘導体として
は、例えば放線菌の一種 Streptomyces 属より単離され
たピロシン属抗生物質としてホロマイシン(holomycin,
Helv.Chim.Acta,42 巻,563頁(1959 年))、ピロシン(pyr
rothine, J.Am.Chem.Soc.,77巻, 2861頁(1955 年))、チ
オルチン(thiolutin, Angew.Chem.,66巻,745頁(1954
年))、アウレオスリシン(aureothricin, J.Am.Chem.So
c.,74巻, 6304頁(1952 年))などを挙げることができ
る。また、細菌由来の抗生物質としてゼノルアブジン
(xenorhabdin)I〜V(特表昭59−501950号;J.Natural
Products, 54巻、 774頁(1991年)) が単離されてい
る。しかし、これらの化合物にはチオマリノ−ルBほど
の強い抗菌活性は報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】チオマリノールおよび
チオマリノールBは共にほぼ同等の非常に強力な抗菌力
を有する新規な化合物である。そして、チオマリノール
Bはチオマリノールに比べて毒性が弱いという利点を有
する。しかし、現在、両者は醗酵法で得られているのみ
であり、特にチオマリノールBはその生産力価が低く、
十分な量を供給することは困難である。そこで、チオマ
リノールBを十分に供給する方法の開発が望まれてい
る。
【0008】本発明者らは、チオマリノールBの製造方
法について鋭意研究を行い、容易に得られるチオマリノ
ールを酸化することにより、チオマリノールBを製造す
る方法を見出して本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は新規化合物チオ
マリノールを酸化することによる新規化合物チオマリノ
ールBの製造方法である。
【0010】ここに、本発明の目的化合物チオマリノー
ルBは、下記の構造式および理化学的性状を有する。
【0011】
【化1】
【0012】(1)物質の性状:黄色粉末 (2)分子式:C30 H44 N2 O11 S2 (3)分子量:672 (FAB-MS 法により測定) (4)高分解能質量分析:C30 H45 N2 O11 S2[(M+H)+;
FAB-MS法により測定] 実測値 673.2468 計算値 673.2465 (5)元素分析値:(%) C30 H44 N2 O11 S2+H2O と
して 実測値 C 52.34、 H 6.79、 N 3.92、 S 9.02 計算値 C 52.16、 H 6.71、 N 4.06、 S 9.28 (6)赤外線吸収スペクトル:νmax cm-1 臭化カリウム(KBr) 錠剤法で測定した赤外線吸収スペク
トルは、次に示す通りである。 3660、3503、3318、3075、2966、2928、2870、1704、1653、1509、 1467、1381、1349、1299、1217、1199、1152、1112、1063、1047、 1019、975 、949 、884 、839 、764 、730 、660 、609 、553 。
【0013】(7)紫外線吸収スペクトル:λmax nm
(ε) 1−プロパノール中で測定した紫外線吸収スペクトル
は、次に示す通りである。 377(2,900)、301(13,000) 、215(21,000) 1−プロパノール+塩酸中で測定した紫外線吸収スペク
トルは、次に示す通りである。 377(2,900)、301(13,000) 、223(17,000) 1−プロパノール+水酸化ナトリウム中で測定した紫外
線吸収スペクトルは、次に示す通りである。 377(2,900)、301(13,000) 、221(19,000) 。
【0014】(8)比旋光度: [α]D 25 + 7.7°( C
=1.0 、1−プロパノール) (9)高速液体クロマトグラフィー: 分離カラム;センシュウパック(Senshu Pak) ODS H-215
1 (カラムサイズ、φ 6× 150 mm 、センシュウ科学
(株)製) 溶媒; 40 %アセトニトリル−水 流速; 1.5 ml /分 保持時間; 8.4分 。
【0015】(10) 1H−核磁気共鳴スペクトル:
(δ:ppm) 重ジメチルスルホキシド中、内部基準にテトラメチルシ
ランを使用して測定した核磁気共鳴スペクトル(360MHz)
は、次に示す通りである。 11.28(1H,s(br)) 、10.47(1H,s) 、7.23(1H,s)、 5.97(1H,s) 、 5.37(2H,m)、 4.88(1 H,d,J=7.5Hz)、 4.61(1H,s(br)) 、 4.43(1H,d,J=7.2Hz)、 4.28(1H,d,J=3.6Hz) 、4.18(1H,d,J=7.2Hz)、 4.02(2H,t,J=6.6Hz)、3.74(1H,s(br))、3.64(1H),3.61(1H) 、 3.54(1H)、 3.51(1H) 、3.35(1H,d,J=10.9Hz) 、 2.43(2H,t,J=7.3Hz)、 2.12(1H) 、2.09(1H)、 2.03(1H) 、 2.02(3H,s)、 1.61(1H) 、1.58(2H)、 1.50(2H) 、1.32(2H)、 1.30(2H)、 1.25(2H) 、 0.96(3H,d,J=6.3Hz) 、 0.92(3H,d,J=6.9Hz)。
【0016】(11)13C−核磁気共鳴スペクトル:
(δ:ppm) 重ジメチルスルホキシド中、内部基準にテトラメチルシ
ランを使用して測定した核磁気共鳴スペクトル(90MHz)
は、次に示す通りである。 173.5(s)、 166.1(s) 、 165.7(s) 、 160.8(s) 、 143.2(s) 、 134.2(d)、 127.8(d) 、 123.3(s) 、 115.2(s) 、 114.4(d) 、 109.4(d)、 76.2(d) 、 72.4(d) 、 69.6(d) 、 69.3(d) 、 64.3(t)、 63.9(d) 、 63.0(t) 、 43.2(d) 、 42.2(d) 、 34.7(t)、 31.9(t) 、 28.3(t) 、 28.2(t) 、 28.1(t) 、 25.3(t)、 24.5(t) 、 20.0(q) 、 15.7(q) 、 15.6(q) 。
【0017】(12)溶解性: メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等
のアルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、エチ
ルエーテルに可溶。n−ヘキサン、水に不溶。
【0018】(13)薄層クロマトグラフィー: Rf値 ; 0.52 吸着剤 ;シリカゲル(メルク社製、Art. 5715) 展開溶剤;メチレンクロリド:メタノール=85:15 。
【0019】一方、本発明の原料化合物であるチオマリ
ノ−ルは下記の構造式および性状を有する。
【0020】
【化2】
【0021】1)物質の性状:黄色粉末 2)融点:84−89 ℃ 3)分子式:C30 H44 N2 O9 S2 4)分子量: 640 (FAB-MS法により測定) 5)高分解能質量分析:C30 H45 N2 O9 S2[(M+H)+ FAB
-MS 法により測定] 実測値 641.2585 計算値 641.2567 6)元素分析:(%) 実測値 C 55.92、 H 6.82 、 N 4.23 、 S
9.90 計算値 C 56.23、 H 6.92 、 N 4.37 、 S 1
0.01 。
【0022】7)赤外線吸収スペクトル:νmaxcm-1 臭化カリウム(KBr) 錠剤法で測定した赤外線吸収スペク
トルは、次に示す通りである。 3394、2930、1649、1598、1526、1288、1216、1154、1102、1052。
【0023】8)紫外線吸収スペクトル:λmax nm
(ε) メタノールまたはメタノール+塩酸中で測定した紫外線
吸収スペクトルは、次に示す通りである。 387(12、000) 、300(3、500)、214(26、000) メタノール+水酸化ナトリウム中で測定した紫外線吸収
スペクトルは、次に示す通りである。 386(9、600)、306(3、200)、206(25、000) 。
【0024】9)比旋光度:[α]D 25 +4.3 °(C=
1.0 、メタノ−ル) 10)高速液体クロマトグラフィー: 分離カラム;センシュウパック(Senshu Pak) ODS H-215
1 ( カラムサイズ、 φ 6× 150 mm 、センシュウ科学
(株)製 ) 溶媒; 40 % アセトニトリル−水 流速; 1.5 ml /分 波長; 220-350 nm (フォトダイオ−ドアレイ検出) 保持時間; 5.9 分 。
【0025】11) 1Hー核磁気共鳴スペクトル:
(δ:ppm ) 重ジメチルスルホキシド中、内部基準にテトラメチルシ
ランを使用して測定した核磁気共鳴スペクトル(270 MH
z) は、次に示す通りである。 0.91(3H,d,J=6.8Hz)、 0.95(3H,d,J=5.9Hz)、1.30(6H,m(br.)) 、 1.55(5H,m(br.)) 、2.03(3H,s)、2.09(3H,m)、2.34(2H,t,J=7.3Hz)、 3.33(1H,d,J=10.7Hz) 、3.52(2H,m)、3.64(2H,m)、 3.73(1H,dd) 、 4.02(2H,t,J=6.6Hz)、4.18(1H,d(br.),J=7.3Hz) 、 4.30(1H,d,J=4.4Hz)、4.44(1H,d,J=7.8Hz)、4.63(1H,d,J=3.4Hz)、 4.89(1H,d,J=7.3Hz)、5.37(2H,m)、5.97(1H,s(br.)) 、7.04(1H,s)、 9.80(1H,s (br.))、10.68(1H,s (br.)) 。
【0026】12)13Cー核磁気共鳴スペクトル:(
δ:ppm) 重メタノ−ル中、内部基準にテトラメチルシランを使用
して測定した核磁気共鳴スペクトル(68 MHz)は、次に示
す通りである。 174.3(s)、170.4(s)、168.6(s)、161.1(s)、137.9(s)、135.7(d)、 135.1(s)、129.8(d)、116.3(d)、115.8(s)、113.7(d)、 77.6(d)、 74.4(d)、 72.1(d)、 71.8(d)、 66.0(t)、 65.7(d)、 64.9(t)、 45.3(d)、 43.9(d)、 36.6(t)、 33.4(t)、 30.1(t)、 30.0(t)、 29.7(t)、 27.0(t)、 26.7(t)、 20.3(q)、 16.6(q)、 16.3(q)。
【0027】13)溶解性: メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等
のアルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、エチ
ルエーテルに可溶、n−ヘキサン、水に不溶。
【0028】14)呈色反応: 硫酸、ヨード、過マンガン酸カリウムに陽性。 15)薄層クロマトグラフィー: Rf値 ; 0.57 吸着剤 ;シリカゲル(メルク社製、Art.5715) 展開溶剤;ジクロロメタン:メタノール = 85 :15
【0029】本発明の目的化合物チオマリノールBおよ
び原料化合物チオマリノ−ルは、いくつかの不斉炭素原
子およびいくつかの二重結合を有する。特にα,β−不
飽和カルボニル部分は異性化される可能性がある。それ
故、種々の立体および幾何異性体が存在する。本発明に
おいては、これらの異性体がすべて単一の式で示されて
いる。従って、本発明においては、ラセミ化合物を含む
これらの異性体およびこれらの異性体の混合物をもすべ
て含むものである。立体特異的合成法が使用される場
合、または立体異性体が原料化合物として使用される場
合、個々の異性体は直接的に製造してもよいし、一方、
異性体の混合物が製造されれば個々の異性体は常法によ
り得てもよい。
【0030】本発明のチオマリノールを酸化してチオマ
リノールBを得る酸化反応は、チオマリノールに溶剤の
存在下で塩基の存在下または不存在下、酸化剤を作用さ
せることによって達成される。
【0031】使用される酸化剤としては通常の酸化反応
に使用されるものであれば特に限定はなく、例えば過マ
ンガン酸カリウム;二クロム酸カリウム(重クロム酸カ
リウム)、二クロム酸ナトリウム(重クロム酸ナトリウ
ム)、酸化クロム(VI)、塩化クロミル、クロム酸t−ブ
チルのようなクロム酸類;四酸化ルテニウム;塩素、臭
素、ヨウ素のようなハロゲン類;オゾン;酸素;過酸化
水素;ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、クミル
ヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドの
ような有機過酸化物類;ジオキシラン、ジメチルジオキ
シラン、ビストリフルオロメチルジオキシラン、トリフ
ルオロメチルクロロジフルオロメチルジオキシラン、ジ
フルオロジオキシラン、エチルメチルジオキシラン、メ
チルプロピルジオキシラン、ブチルメチルジオキシラ
ン、ジエチルジオキシラン、メチルフルオロジオキシラ
ン、フルオロジオキシラン、メチルジオキシラン、メチ
ルトリフルオロメチルジオキシランのようなジオキシラ
ン類;過酢酸、過ギ酸、m−クロロ過安息香酸のような
有機過酸類;ペルオキソ一硫酸、ペルオキソニ硫酸カリ
ウム、OXONE (商標名、アルドリッチ社製)のようなペ
ルオキソ硫酸類;等をあげることができる。好適には過
酸化水素、有機過酸類、有機過酸化物類、ジオキシラン
類、ペルオキソ硫酸類、であり、特に好適には、過酸化
水素、ジメチルジオキシラン、ペルオキソ硫酸類、であ
る。
【0032】使用される塩基としては、反応に影響を与
えないものであれば特に限定はなく、好適には、炭酸ナ
トリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムのようなアルカ
リ金属炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウ
ム、炭酸水素リチウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩
類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウ
ムのようなアルカリ金属水素化物類;水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム
のようなアルカリ金属水酸化物類;弗化ナトリウム、弗
化カリウム、弗化セシウムのようなアルカリ金属弗化物
類;等の無機塩類、またはナトリウムメトキシド、ナト
リウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウム
メトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド類;ナト
リウムメチルスルフィド(sodium methyl sulfide) 、ナ
トリウムエチルスルフィド(sodiumethyl sulfide)のよ
うなアルカリ金属アルキルスルフィド類(alkali metala
lkyl sulfides) ;トリエチルアミン、トリブチルアミ
ン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリ
ン、ピリジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,
N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、1,5-ジア
ザビシクロ[4.3.0]ノナ-5- エン(DBN )、1,4-ジア
ザビシクロ[2.2.2 ]オクタン(DABCO )、1,8-ジアザ
ビシクロ[5.4.0 ]ウンデセ-7- エン(DBU )のような
窒素化合物類;等の有機塩類、をあげることができ、好
適には、アルカリ金属炭酸塩類およびアルカリ金属炭酸
水素塩類である。
【0033】使用される溶剤としては反応に影響を与え
ないものであれば特に限定はなく、例えば水;メタノー
ル、エタノール、プロパノールのようなアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;酢
酸、ギ酸のような有機酸類;酢酸エチルのようなエステ
ル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのような
エーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミドのようなアミド類;およびこれらの混合溶剤をあげ
ることができる。好適にはアルコール類、水とケトン類
の混合溶剤であり、特に、水−アセトンである。
【0034】また、必要により反応の促進剤として、酸
化白金、酸化バナジウムなどの無機触媒を使用すること
ができる。
【0035】反応温度としては、通常 −78 ℃乃至 1
00 ℃であり、好適には −10 ℃乃至室温である。
【0036】反応時間としては、使用される酸化剤、塩
基、反応温度等により変化するが、通常 15 分乃至 30
時間であり、好適には 15 分乃至 2 時間である。
【0037】反応終了後、目的化合物は、常法、例えば
反応液を水に注ぎ、水と混和しない溶剤、例えば、ベン
ゼンのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテルのよ
うなエーテル類、酢酸エチルのような有機酸エステル
類、ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類など
で抽出し、抽出液より溶剤を留去することによって得ら
れる。このようにして得られた目的化合物は所望によ
り、常法に従って各種クロマトグラフィー等に付すこと
により、更に精製することもできる。
【0038】本発明の原料化合物チオマリノ−ルおよび
目的化合物チオマリノ−ルBは、微生物培養によっても
得られる。
【0039】すなわち、海水より分離したアルテロモナ
ス(Alteromonas) 属に属する SANK73390株の培養液か
ら、チオマリノールおよびチオマリノールBが生産され
る。本発明の、チオマリノールおよびチオマリノールB
を生産する上記SANK 73390株は静岡県南伊豆町小稲の海
岸で採取した海水から常法により分離した海洋細菌であ
る。
【0040】チオマリノ−ルおよびチオマリノールBの
生産菌である SANK 73390 株の菌学的性状は次の通りで
ある。
【0041】1.形態学的性状 マリンアガ−(Difco 社製)上で 23 ℃、 24 時間培養
後の観察では、細胞は直径 0.8−1.0 μm 、長さ 2.0−
3.6 μm の桿状であり、単極毛を有し、運動する。胞
子を形成せず、グラム染色は陰性である。
【0042】2.マリンアガ−培地上での生育状態 23℃で 24 時間培養したコロニ−はいくぶん灰色を帯び
た黄色、不透明で円形、扁平状、全縁である。水溶性の
色素を生成しない。
【0043】3.生理学的性状 (1)海水の要求性:生育に海水を要求する。 (2)O−F(オキシダティブ−ファ−メンタティブ)
テスト[ヒュ−・レイフソン( Hugh ・Leifson )法
(J.Bact.,66巻、24-26 頁、(1953年))、人工海水で調
製]:糖を分解しない。 (3)オキシダ−ゼ:+ (4)カタラ−ゼ:+ (5)酸素に対する態度:好気的。 (6)硝酸塩の還元:− (7)デンプンの加水分解:+ (8)寒天の分解:− (9)ゼラチンの液化:+ (10)DNaseの産生:+ (11)リパ−ゼの産生:+ (12)生育温度:4 ℃では微弱に生育し、17−26℃で
は良好な生育を示す。35℃では生育しない。 (13)栄養要求性:ジャ−ナル・オブ・バクテリオロ
ジ−(Journal of Bacteriology)、 107巻、 268-294頁
(1971年) 記載の基本培地を用いた場合、ビタミンフリ
−のカザミノ酸を要求する。 (14)炭素化合物の利用性:ジャ−ナル・オブ・バク
テリオロジ−(Journal of Bacteriology)、 107巻、 2
68-294頁 (1971年) 記載の基本培地にビタミンフリ−の
カザミノ酸を 0.1 % 濃度添加し、振とう培養を行っ
た場合。 L−アラビノ−ス:− D−リボ−ス:− D−キシロ−ス:− D−グルコ−ス:+ D−ガラクト−ス:− D−フラクト−ス:− 麦芽糖:+ ショ糖:− トレハロ−ス:+ セロビオ−ス:− メリビオ−ス:− マンニト−ル:− ソルビト−ル:− グリセリン:− 酢酸ソ−ダ:+ プロピオン酸ソ−ダ:+ 。
【0044】4.化学分類学的性状 (1)DNAのG+C(グアニン+シトシン含量):4
3.4 %(HPLC法) (2)キノン系:ユビキノンQ−8。
【0045】以上の菌学的性状を有する SANK 73390 株
はバ−ジ−ズ・マニュアル・オブ・システマティック・
バクテリオロジ−(Bergey's Manual of Systematic Ba
cteriology)、 1 巻(1984年)および最新のインタ−ナ
ショナル・ジャ−ナル・オブ・システマティック・バク
テリオロジ−(International Journal of Systematic
Bacteriology)に記載の種と照合すると、海洋細菌のア
ルテロモナス・サイトレア(Alteromonas citrea)に類
似した菌と推定された。但し、本菌はアルテロモナス・
サイトレア(Alteromonas citrea)の基準株 ATCC 297
19 株との比較培養を行ったところ、本菌のコロニ−の
色調がいくぶん灰色を帯びた黄色であるのに対し、ATCC
29719 株は緑色を帯びた黄色であり、SANK 73390 株
は 4 ℃で生育し、トレハロ−スとプロピオン酸ソ−ダ
を炭素源として利用する点でアルテロモナス・サイトレ
ア(Alteromonas citrea)と異なっている。それ故、本
発明者らは本菌をアルテロモナス属に属する新種である
と確認し、アルテロモナス属・ラバ種(Alteromonas ra
va)と命名し、新菌株をアルテロモナス・ラバ・ SANK
73390 (Alteromonas rava SANK 73390 )株と命名し
た。
【0046】本菌株は、アルテロモナス・ラバ・ SANK
73390 (Alteromonas rava SANK 73390 )株としてブダ
ペスト条約に従って通商産業省工業技術院微生物工業技
術研究所(1993年 1月 1日より「通商産業省工業技術院
生命工学工業技術研究所」と改称)に国際寄託されてい
る(寄託番号、微工研条寄第 3381 号 (FERM BP-3381)
:原寄託日、1991年 4月30 日)。
【0047】以上、SANK 73390 株について説明した
が、周知の如くアルテロモナス属の菌類の諸性質は一定
したものではなく、自然的、または人工的な操作(例え
ば、紫外線照射、放射線照射、化学薬品処理等)によ
り、変異を起こし易く、本発明のSANK 73390 株もこの
点は同じである。本発明にいう SANK 73390 株はその
すべての変異株を包含する。また、これらの変異株の中
には、遺伝学的方法、例えば、組み替え、形質導入、形
質転換等により得られたものも包含される。即ち、アル
テロモナス属に属するチオマリノ−ルを生産する、SANK
73390 株、その変異株およびそれらと明確に区別され
ない菌株は、すべて SANK 73390 株に包含されるもので
ある。
【0048】原料化合物チオマリノ−ルおよび目的化合
物チオマリノ−ルBを得るため、これらの微生物の培養
は他の発酵生成物を生産するために用いられるような培
地中で行なわれる。このような培地中には、微生物が資
化出来る炭素源、窒素源および無機塩を含有する。
【0049】一般に、炭素源としてグルコース、フラク
トース、マルトース、シュークロース、マンニトール、
グリセロール、デキストリン、オート麦、ライ麦、トウ
モロコシデンプン、ジャガイモ、トウモロコシ粉、大豆
粉、綿実油、糖蜜、クエン酸、酒石酸などを単一に、あ
るいは併用して用いる事が出来る。一般には、培地量の
1ー10 重量%で変量する。
【0050】窒素源としては、一般に蛋白質を含有する
物質を発酵工程に用いる。適当な窒素源としては、大豆
粉、フスマ、落花生粉、綿実粉、カゼイン加水分解物、
ファーマミン、魚粉、コーンスチープリカー、ペプト
ン、肉エキス、イースト、イーストエキス、マルトエキ
ス等の動物系、植物系またはエキス類の窒素源、硝酸ナ
トリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無
機窒素源である。窒素源は、単一または併用して培地量
の 0.1-6 重量%の範囲で用いる。
【0051】培地中に取り入れる栄養無機塩は、ナトリ
ウム、アンモニウム、カルシウム、カリウム、マグネシ
ウム、鉄、フォスフェート、サルフェート、クロライ
ド、カーボネート等のイオンを得ることの出来る通常の
塩類である。また、コバルト、マンガン、ストロンチウ
ム等の微量の金属、その他ブロマイド、フルオライド、
ボレ−ト、シリケ−ト等の微量イオンを得る塩も含む。
【0052】液体培養に際しては、消泡剤としてシリコ
ン油、植物油、界面活性剤等が使用される。
【0053】アルテロモナス・ラバ(Alteromonas rav
a) SANK 73390 株を培養しチオマリノ−ルおよびチオ
マリノ−ルBを生産する培地の pH は、5.0ー8.0 に変化
させることが出来る。
【0054】菌の生育温度は 4 ℃ から 32 ℃ まで
であるが 17 ℃ から 26 ℃ の範囲が生育良好であ
り、 更にチオマリノ−ルおよびチオマリノ−ルBの生産
には、20 ℃ から 26 ℃ が好適である。
【0055】チオマリノ−ルおよびチオマリノ−ルB
は、好気的に培養して得られるが通常用いられる好気的
培養法、例えば固体培養法,振とう培養法、通気撹拌培
養法等が用いられる。
【0056】小規模な培養においては、20 ℃ から 2
6 ℃で数日間振とう培養を行うのが良好である。培養は
三角フラスコ中で、1ー2段階の種の発育工程により開
始する。種発育段階の培地は、炭素源および窒素源を併
用出来る。種フラスコは定温インキュベーター中で 23
℃、1 乃至 3 日間振とうするか、または充分に成長す
るまで振とうする。成長した種は第二の種培地、または
生産培地に接種するのに用いる。中間の発育工程を用い
る場合には、本質的に同様の方法で成長させ、生産培地
に接種するためにそれを部分的に用いる。接種したフラ
スコを一定温度で 1 乃至3 日間、または生産量が最大
に達するまで振とうし、インキュベーションが終わった
らフラスコの含有物を遠心分離またはろ過する。
【0057】大量培養の場合には、撹拌機、通気装置を
付けた適当なタンクで培養するのが好ましい。この方法
によれば、栄養培地をタンクの中で作成出来る。栄養培
地を125 ℃ まで加熱して滅菌し、冷却後、滅菌培地
にあらかじめ成長させてあった種を接種する。培養は 2
0 ℃乃至 26 ℃で通気撹拌して行う。この方法は、多量
の化合物を得るのに適している。
【0058】培養の経過に伴って生産されるチオマリノ
−ルおよびチオマリノールBの量の経時変化は、高速液
体クロマトグラフィーを用いて測定することが出来る。
通常は、チオマリノールの生産量は 19 時間から 96 時
間の培養で最高値に達し、チオマリノールBの生産量は
19 時間から 200 時間の培養で最高値に達する。
【0059】培養終了後、培養液中の液体部分及び菌体
内に存在するチオマリノ−ルおよびチオマリノ−ルB
は、菌体、その他の固形部分を珪藻土をろ過助剤とす
る、ろ過操作または遠心分離によって分別し、そのろ液
または上清中および菌体中に存在するチオマリノ−ルお
よびチオマリノ−ルBを、その物理化学的性状を利用し
抽出精製することにより得られる。例えば、ろ液また
は、上清中に存在するチオマリノ−ルおよびチオマリノ
−ルBは、中性または酸性 pH 条件下で水と混和しない
有機溶剤、例えば酢酸エチル、クロロホルム、塩化エチ
レン、塩化メチレンなどの単独または、それらの組み合
わせにより抽出精製することができる。あるいは吸着剤
として、例えば活性炭または吸着用樹脂であるアンバー
ライト XAD−2、XAD −4 ( ローム・アンド・ハース社
製) 等や、ダイアイオン HP −10、HP−20、 CHP−20、
HP−50( 三菱化成( 株) 製) 等が使用される。チオマリ
ノ−ルおよびチオマリノ−ルBを含む液を上記のごとき
吸着剤の層を通過させて不純物を吸着させて取り除く
か、またはチオマリノ−ルおよびチオマリノ−ルBを吸
着させた後、メタノール水、アセトン水、n−ブタノー
ル水などを用いて溶出させることにより得られる。ま
た、菌体内に存在するチオマリノ−ルおよびチオマリノ
−ルBは、50-90 % 含水アセトンまたは含水メタノー
ルにより抽出し有機溶剤を除去した後、ろ液と同様な抽
出精製操作を行なうことにより得られる。
【0060】このようにして得られた原料化合物チオマ
リノ−ルおよび目的化合物チオマリノ−ルBは、更にシ
リカゲル、マグネシウムーシリカゲル系のフロリジルの
ような担体を用いた吸着カラムクロマトグラフィー、セ
ファデックス LH −20( ファルマシア社製) などを用い
た分配カラムクロマトグラフィー、および順相、逆相カ
ラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等で精製する
ことが出来る。以上の分離、精製の手段を単独または適
宜組み合わせ反復用いることによりチオマリノ−ルまた
はチオマリノ−ルBを分離精製することができる。
【0061】
【作用】本発明の目的化合物チオマリノ−ルBは、文献
未載の新規化合物であり、動物( 例、ヒト、イヌ、ネ
コ、ウサギ等) において、グラム陽性細菌、グラム陰性
細菌およびマイコプラズマ菌に対し抗菌作用を示すこと
から、各種細菌感染症を対象とする抗菌剤として有用で
ある。
【0062】本発明のチオマリノ−ルBを医薬として用
いる場合、常法に従って種々の形態で投与される。その
投与形態としては例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル
剤、シロップ剤などの形態で経口的または注射剤(静脈
内、筋肉内、皮下)、点滴剤、座剤、塗布剤、軟膏剤な
どの形態で非経口的に安全に投与することが出来る。こ
れらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合
剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、溶解補助
剤、懸濁剤、コ−ティング剤、希釈剤などの医薬の製剤
技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて
製剤化することができる。投与量は対象疾患、投与経路
および投与回数などにより異なるが、例えば成人に対し
ては 1 日 20 mg から 2000 mg を、症状に応じて 1
回または数回に分けて投与するのが好ましい。
【0063】
【実施例】次に実施例、参考例および試験例をあげて本
発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。実施例1.チオマリノール 100.9
mg をアセトン 5 ml および水 5 ml の混合溶剤に溶解
し、氷冷下で冷却した。この溶液に、OXONE (商標名、
アルドリッチ社製)112.2 mg を加え、氷冷下で 40 分
間攪拌した。この混合物に、飽和炭酸水素ナトリウム水
溶液 1.2 ml を加え、氷冷下で 30 分間攪拌した。反応
混合物に水 5 mlを加え、次いでジクロロメタン−テト
ラヒドロフラン(10:1)にて抽出した。抽出液を乾燥
後、溶剤を留去した。得られた残渣を逆相高速液体クロ
マトグラフィー(Senshu Pak ODS-5251-N 、40%CH3CN
(H2O))にて単離精製することにより淡黄色のチオマリ
ノールB 79.5mg(75%)が得られた。
【0064】実施例2. チオマリノール 100 mg をアセトン 15 mlおよび水 7.5
ml の混合溶剤に溶解し、35 %過酸化水素水 0.074 m
l を加え、希炭酸水素ナトリウムを 2 滴加えた。反応
混合物を 5 分間攪拌した後、アセトンを留去し、次い
でアセトニトリルを加え、逆相高速液体クロマトグラフ
ィー(Senshu Pak ODS-H-2151, 40 %CH3CN(H2O))に
て、チオマリノールBの生成を確認した。反応混合物よ
り溶剤を留去し、得られた残渣を 40 %アセトニトリル
に溶解し、逆相高速液体クロマトグラフィー(Senshu P
ak ODS-4251-N 、40%CH3CN(H2O))にて単離精製するこ
とにより淡黄色のチオマリノールB 43.2mg(41%)が
得られた。
【0065】実施例3. チオマリノール 100 mg をアセトン 40 ml に溶解し、
氷冷下で 134 mg の m- クロロ過安息香酸を加え、室温
で、1.5 時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで
抽出後、3 回水洗し、有機層をさらに、炭酸水素ナトリ
ウム水溶液で洗浄した。抽出液を乾燥後、溶剤を留去し
た。得られた残渣を逆相高速液体クロマトグラフィー
(Senshu Pak ODS-4251N、 40 %CH3CN(H2O))にて単離
精製することにより、淡黄色のチオマリノールB 8.5
mg(8 %)が得られた。
【0066】参考例1.チオマリノ−ルのジャ−培養 A)培養 アルテロモナス・ラバ SANK 73390 株を、マリンアガ−
スラント(MarineAgar Slant、Difco 社製)上で 22 ℃
で 3 日間培養を行い、それを人工海水3 ml に懸濁さ
せ、その 0.1 ml を無菌的に滅菌した後述の組成の培地
100 mlを含む 500 ml の三角フラスコに接種し、 23
℃ で、 200 rpm (7 cmの回転半径) のロータリー振と
う培養機で 24 時間培養した。その 15 ml を無菌的に
滅菌した同様の組成の培地 15 リットルを含む 30 リッ
トルのジャ−ファ−メンタ−4 機に埴菌し、 23 ℃で、
通気(7.5 リットル/分)、攪拌(100 rpm )下に23
時間培養した。
【0067】 培地組成 マリンブロス(Difco 社製) 37.4 g ────────────────────────── 脱イオン水 1000 ml pH 無調整 。
【0068】B)単離 得られた培養液 60 リットルは、塩酸で pH 3 に調整
し、アセトン 60 リットルを添加、0.5 時間攪拌しな
がら抽出した。抽出液にろ過助剤としてセライト545
(米国ジョーンズ・マンビル・プロジェクト・コーポレ
ーション製)1.2 Kgを加えてろ過を行った。そのろ液 1
10 リットルは酢酸エチル 60 リットルで1 回、さ
らに 30 リットルで 2 回抽出した。得られた酢酸エチ
ル層を 30 リットルの 5 %重炭酸ナトリウム、30 リ
ットルの飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥した後、減圧下で濃縮乾固して 14 g の油状物
が得られた。
【0069】得られた油状物をシリカゲル 200 g をメ
チレンクロリドで充填したカラムに、同溶剤に溶解して
吸着させ、次いでメチレンクロリド−酢酸エチル( 1:
1 )、酢酸エチル、酢酸エチル−メタノ−ル( 9:1 )
と順次展開溶媒の極性を上げて溶出した。溶出液を 18
ml づつ分画し、酢酸エチル−メタノ−ルで溶出したチ
オマリノ−ルを含むフラクションを集め、減圧下で濃縮
乾固して油状物 7 gが得られた。得られた油状物をダイ
アイオンHP−20 を水で充填したカラム 600ml に、50
%メタノ−ル 400 ml に溶解して吸着させ、次いで
50 %メタノ−ルで洗浄し、90 %メタノ−ルで溶出
した。これを減圧下で濃縮乾固して黄色粗粉末 1 g が
得られた。黄色粗粉末はさらにセファデックス LH −20
を用いてクロマトを行い、メチレンクロリド−酢酸エ
チル−メタノ−ル( 19 : 19:2 )で展開し、活性の
フラクションを集めて、黄色粉末のチオマリノ−ルが75
0 mg 得られた。
【0070】参考例2.チオマリノールBのタンク培養 A)培養 アルテロモナス・ラバSANK 73390株を、マリンアガー
(Marine Agar 、Difco社製)斜面培地上で 22 ℃、3
日間培養を行なった後、斜面培養物を滅菌した人工海水
3 ml に懸濁した。無菌的に滅菌した後述の組成の培地
100 ml を含む500 ml 容の三角フラスコ 2 本に先の
懸濁液を各々 0.1 ml 接種し、23 ℃、210 rpm の条件
下、24 時間回転振とう培養を行なった。別に滅菌した
同様の組成の培地 200 リットルを含む 600 リットル
容の通気攪拌培養槽に上記培養物全量を接種し、次いで
溶存酸素濃度を 5.0 ppmに保持するように回転数を 82.
5〜170 rpmに調整し、23 ℃、通気量 0.5 vvmの条件
下 26 時間培養した。 培地組成 マリンブロス(Difco 社製) 37.4 g ────────────────────────── 脱イオン水 1000 ml pH 無調整 。
【0071】B)単離 得られた培養液 230 リットルは、塩酸で pH 2.5 に調
整し、アセトン 200リットルを添加、0.5 時間攪拌しな
がら抽出した。抽出液にろ過助剤としてセライト 545
(米国ジョーンズ・マンビル・プロジェクト・コーポレ
ーション製)4.0 kg を加えてろ過を行なった。そのろ
液 430 リットルは酢酸エチル 200リットルで 1 回、
さらに 100 リットルで 2 回抽出した。得られた酢酸
エチル層を 200 リットルの 5 %重炭酸ナトリウム、
100 リットルの飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸ナ
トリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮乾固して約 80g
の油状物が得られた。
【0072】得られた油状物をメチレンクロリドに溶解
し、シリカゲル 1.1 kg を同溶剤で充填したカラムに吸
着させ、次いでメチレンクロリド−酢酸エチル( 1:1
)、酢酸エチル、酢酸エチル−メタノール( 9:1 )
と順次展開溶媒の極性を上げて溶出した。溶出液を 500
ml ずつ分画し、酢酸エチル−メタノールで溶出したチ
オマリノールBを含むフラクションを集め、減圧下で濃
縮乾固して油状物 60 gが得られた。
【0073】得られた油状物を 50 %メタノール 6 リ
ットルに溶解して、ダイアイオンHP-20 を水で充填した
カラム 2.3 リットルに吸着させ、次いで 30 %メタノ
ールから 90 %メタノールまで、順次メタノール濃度を
上げるステップワイズ・グラジエント溶出を行なった。
即ち、順に 30 %メタノール、50 %メタノール、60
%メタノール、70 %メタノール、80 %メタノールを
それぞれ 4 リットルずつ流し、次いで 90 %メタノー
ルによる溶出を行なった。HPLCによるモニターでさらな
る溶出がなくなるまで行ない、約 10 リットルを要し
た。90 %メタノール溶出画分を集めて、これを減圧下
で濃縮乾固して黄色粉末 3.8 g が得られた。この黄色
粉末はさらにセファデックス LH-20 を用いてクロマト
を行なった。320 g のセファデックス LH-20 をメチレ
ンクロリド−酢酸エチル−メタノール(19:19:2) で充填
したカラムを用い、同溶媒で展開して精製した。
【0074】さらに逆相カラムを用いた高速液体クロマ
トグラフィーによる精製を行なった。分離カラムとして
センシュウパック(Senshu Pak) ODS H-5251(カラムサ
イズ、φ20×250 mm, センシュウ科学(株)製)を用
い、展開溶媒として 40 %アセトニトリル−水を 15 ml
/ 分の流速で流し、220 nm の吸光度をモニターしなが
ら精製した。チオマリノールBは保持時間 13 〜14 分
のピークとして得られたので、これを集め、減圧下で濃
縮乾固して 130 mg を単離した。
【0075】試験例1.チオマリノ−ルBの抗菌作用 一般グラム陽性および陰性細菌に対するチオマリノ−ル
Bの最小発育阻止濃度(MIC )は、普通寒天培地(栄研
化学(株)製)を用いた寒天培地希釈法によって測定し
た。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】表1から明かのごとく、チオマリノ−ルB
は一般グラム陽性および陰性細菌に対して優れた効果を
示した。
【0078】以上から、本発明の新規化合物チオマリノ
ールBは抗菌作用を示し、各種細菌に対する抗菌剤とし
て有用である。
【0079】試験例2.チオマリノ−ルBの抗マイコプ
ラズマ菌作用 一般マイコプラズマ菌に対するチオマリノ−ルBの最小
阻止濃度(MIC )は、以下の測定条件下において、寒天
平板希釈法によって測定した。
【0080】測定条件 接種菌量 :105 CFU /ml を 0.005 ml 接種 測定用培地:チャノック(Chanock) の培地(P.N.A.S.,48
巻、41-49頁(1962 年) 記載の培地に 20 % 馬血清を添加
した培地) 培養条件 :37℃、5 日間、微好気培養[BBL ガスパッ
ク(BBL GasPac(商品名、Becton Dickinson Microbiolog
y Systems 社、米国))法] 結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】表2から明かのごとく、チオマリノ−ルB
は一般マイコプラズマ菌に対して優れた効果を示した。
【0083】
【発明の効果】チオマリノールBはチオマリノ−ルを酸
化することにより得られた。本発明の新規化合物チオマ
リノールBは抗菌作用を示し、各種細菌に対する抗菌剤
として有用である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チオマリノールを酸化することを特徴とす
    るチオマリノールBの製造方法。
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