JPH075642B2 - キチン誘導体の製造方法 - Google Patents

キチン誘導体の製造方法

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JPH075642B2
JPH075642B2 JP18678292A JP18678292A JPH075642B2 JP H075642 B2 JPH075642 B2 JP H075642B2 JP 18678292 A JP18678292 A JP 18678292A JP 18678292 A JP18678292 A JP 18678292A JP H075642 B2 JPH075642 B2 JP H075642B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はキチン誘導体の新規製
造方法に係り、特には、複雑な工程を必要とすることな
く安全に収率よくキチン誘導体を製造することが可能な
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キチンは、カニ・エビ等の甲殻、甲虫の
甲、カビ類等の微生物の細胞壁、イカの軟甲などに含ま
れる多糖類であり、その資源量の大きさからセルロ−ス
に次ぐバイオマスとして注目されている。
【0003】キチンの利用および応用については、従来
からカニ・エビ殻由来のキチンを原料として様々な研究
開発がなされている。中でも、キチンの生体適合性に着
目した手術用縫合糸、人工皮膚等としての利用、キチン
を脱アセチル化したキトサンの抗菌性に着目した食品保
存剤としての利用、ビ−ズ化したキトサンの生体触媒固
定化担体、クロマトグラフィ−充填剤としての利用な
ど、いくつかの用途が見出され実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、カニ・
エビ由来のキチンは、溶媒に対する親和性が低い、硬く
剛直である、などの性質を有するため、さらに幅広い用
途開発が困難になっている。実際、現在生産されている
カニ・エビ殻キチンの大部分は、キトサンに変換され、
その凝集性を生かして廃水処理の工程で発生する余剰汚
泥の凝集剤として利用されているにすぎない。
【0005】キチンを化学修飾して種々の誘導体を調製
し、高機能性を付与したキチン化合物として利用しよう
とする試みも従来より行われているが、カニ・エビ殻由
来のキチンはフッ素化溶媒などのごく一部の特殊な溶媒
に溶解するのみであり、温和な条件で化学修飾すること
は困難であった。
【0006】そこで、キチンを水酸化ナトリウム等の多
量のアルカリ塩と共に混合して得られるアルカリキチン
が水溶性であることを利用して、これを出発物質とし、
部分脱アセチル化キチン、グリコ−ルキチン、カルボキ
シメチルキチン、ジエチルアミノエチルキチンのような
いくつかのキチン誘導体を製造する工夫がなされてい
る。このようなキチン誘導体の調製例は、例えば、Sann
an, T.、K. Kurita 、Y.Iwakura、 Makromol. Chem.、
176、1191(1975)にアルカリキチンの調製が、千手諒
一、沖増哲、日本農芸化学会誌、23、 432(1950)にグ
リコ−ルキチンの調製が、沖増哲、日本農芸化学会誌、
32、 303(1958)および Trujillo, R. 、Carbohydr. R
es. 、 7、 483(1968)にカルボキシメチルキチンの調
製が、並びに K. Kurita、Y. Koyama 、S. Inoue、S. N
ishimura、Macromolecules、23、2865(1990)にジエチ
ルアミノエチルキチンの調製がそれぞれ開示されてい
る。
【0007】しかしながら、この方法はアルカリキチン
を一度経由しなければならないため、工程が繁雑にな
る。また、非常に高濃度の試薬を使用することから、副
反応として脱アセチル化が大きく進むことが避けられ
ず、さらにキチン主鎖が開裂して分子量が低下すること
も知られている。
【0008】また、化学修飾をさらに広範に行なうため
には、広く溶媒として使用されているピリジン等の有機
溶媒に溶解する必要がある。しかしながら、上述のよう
に、カニ・エビ殻キチン自体はピリジン等の有機溶媒に
は溶解しないため、有機溶媒に懸濁した状態で反応せざ
るを得ない。したがって、反応を過酷な条件下で行なわ
なければならず、反応率を高くすることは困難である
上、キチン主鎖の分解を伴うため収量が極端に低下す
る、生成物が着色してしまう等の問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、キチンが
注目されている割にほとんど利用されていないのは、キ
チン誘導体の製造方法が上記従来法のような繁雑で効率
の悪い方法しか知られていないことに起因するという観
点から、より簡便で効率のよいキチン誘導体の製造方法
について鋭意研究を行なった。その結果、カニ・エビ殻
キチンが非常に硬く剛直でほとんどの溶媒に不溶である
のに対して、イカ軟甲由来のキチンはしなやかでピリジ
ンをはじめとする多くの溶媒に高度に膨潤することに着
目し、この膨潤条件下で置換基導入剤と反応させること
により非常に簡便に効率よくキチン誘導体が得られるこ
とを見出し、この発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、この発明のキチン誘導体の製造
方法は、イカ軟甲を脱灰処理および脱タンパク質処理
し、次いで溶媒で膨潤させた後、置換基導入剤を添加し
て反応させることを特徴とする。
【0011】この発明において用いられるイカ軟甲とし
ては、スルメイカ、アカイカ、ヤリイカ、ツメイカ、ド
スイカ、ホタルイカ、ケンサキイカのようなツツイカ目
に属するイカの軟甲を好適に使用することができるが、
イカの種類は特に限定されるものではない。
【0012】これらのイカから得た軟甲には、キチンの
他に灰分、タンパク質等が含まれている。この発明の方
法においては、まずイカの軟甲に対して脱灰処理および
脱タンパク質処理を施し、イカ軟甲キチンを精製する。
イカ軟甲の脱灰処理は、例えば、0.05〜 2規定の酸類に
浸漬し、10分〜 5時間放置することにより行なうことが
できる。
【0013】また、脱タンパク質処理は、例えば、 0.1
〜 3規定のアルカリ溶液に浸漬し、室温に 2〜24時間放
置するか、もしくは30分〜 5時間煮沸することにより行
なうことができる。上記脱灰処理および脱タンパク質処
理を行なう順番は特に限定されるものではなく、脱タン
パク質処理を行なった後に脱灰処理を行なうこともでき
る。
【0014】典型的には、イカ軟甲の脱灰処理および脱
タンパク質処理は次のように行なう。すなわち、まず洗
浄したイカ軟甲を荒く粉砕し、約 0.1規定の塩酸に室温
で数時間浸漬する。その後、約 1規定の水酸化ナトリウ
ム中で約 1時間煮沸し、流水でアルカリ液を洗浄して乾
燥させればよい。
【0015】なお、イカ軟甲は、カニ・エビ甲殻と比較
して、アスタキサンチン等の色素類を全く含まず、カル
シウムをはじめとする灰分の含有量が少なく、さらに、
酸・アルカリ溶液の浸透がよいという性質を有してい
る。そのため、イカ軟甲キチンは、カニ・エビ甲殻キチ
ンよりも、軽減された精製工程で純度の高いものが得ら
れる。
【0016】精製されたイカ軟甲キチンは、必要に応じ
て粉砕機で粉砕して白色綿状の微細キチンとした後、適
当な溶媒に添加、分散して膨潤させる。ここで用いられ
る溶媒は、特に限定されるものではなく、通常化合物の
化学修飾の際に用いられる溶媒であればどのようなもの
でもよい。好ましい溶媒としては、ピリジン、ジメチル
スルホキシド、n−メチルピロリドン、m−クレゾ−
ル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘ
キサメチルホスホルアミド、メタノ−ル、エタノ−ルお
よびジクロロ酢酸を挙げることができ、これらは単独
で、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。
【0017】このように溶媒中においてイカ軟甲キチン
を膨潤させた状態で、さらに置換基導入剤を添加して反
応させる。ここで、置換基導入剤とは、キチンの6位水
酸基、および場合によっては、3位水酸基を置換するこ
とができる化合物を意味し、導入しようとする置換基の
種類により種々の化合物を用いることができる。置換基
導入剤の代表的な例としては、エチレンクロロヒドリ
ン、プロピレンクロロヒドリン、トリメチレンクロロヒ
ドリン、3-クロロ-1,2- プロパンジオ−ル、エチレンオ
キシド、プロピレンオキシド、ジエチルアミノエチルク
ロリド、β- クロロエチルアミン、3-クロロプロピルア
ミン、3-クロロプロピオニトリル、アクリロニトリル等
のアルキル化剤、モノクロロ酢酸、無水酢酸、ベンゾイ
ルクロリド、フェニルイソシアナ−ト、p-トルエンスル
ホニルクロリド等のアシル化剤を挙げることができる。
【0018】さらに、必要に応じて種々の触媒を用いる
こともできる。触媒としては、ピリジン、ジメチルアミ
ノピリジン、4-ピペリジノピリジン、ジメチルスルホキ
シド、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0
]ウンデセン-7- エン等の塩基類を好適に用いること
ができる。
【0019】使用する置換基導入剤、触媒等により反応
条件は種々異なり特定されるものではないが、分子量を
保存し、変性・着色を防止するという観点からは、 100
℃以下の温度で80時間以内に反応を完了することが好ま
しい。この発明のキチン誘導体の製造方法により製造さ
れるキチン誘導体は、下記一般式(I)で表わすことが
できる。
【0020】
【化2】
【0021】上記一般式(I)において、置換基R1
よびR2 は使用する置換基導入剤により異なり、特に限
定されるものではないが、代表的な例としては、R1
して置換もしくは無置換のアルキル基、アシル基、カル
バモイル基、スルホニル基およびアラルキル基を、R2
として置換もしくは無置換のアルキル基、アシル基、カ
ルバモイル基およびスルホニル基を挙げることができ
る。R1 およびR2 はそれぞれ独立にこれらの基をとり
得る。より具体的には、R1 として、ヒドロキシエチ
ル、カルボキシメチル、アミノエチル、ジエチルアミノ
エチル、シアノエチル、ヒドロキシプロピル、アミノプ
ロピル、ジヒドロキシプロピル、アセチル、ベンゾイ
ル、カルバモイル、トシルおよびトリチル基を、またR
2 として、ヒドロキシエチル、カルボキシメチル、アミ
ノエチル、ジエチルアミノエチル、シアノエチル、ヒド
ロキシプロピル、アミノプロピル、ジヒドロキシプロピ
ル、アセチル、ベンゾイル、カルバモイルおよびトシル
基をそれぞれ挙げることができる。
【0022】
【作用】この発明においてキチン誘導体の原料として用
いられるイカ軟甲は、カニ・エビ殻と比較してカルシウ
ムをはじめとする灰分およびアスタキサンチン等の色素
の含有量が非常に少ない。したがって、脱灰および脱色
処理を簡略に済ますことが可能であり、これらの処理工
程において生じるキチンの低分子化および副反応物の生
成等を抑制することが可能になる。
【0023】また、イカ軟甲より得られるイカ軟甲キチ
ンは、通常、物質の化学修飾の際に用いられるピリジン
等の溶媒中で高度に膨潤する。このため、比較的温和な
条件で化学修飾を行なうことが可能である。
【0024】
【実施例】以下、実施例を挙げてこの発明をより詳細に
説明するが、これらの実施例はこの発明を限定すること
を意図するものではない。
【0025】実施例1:トリチル化キチンの製造 水道水で洗浄した後乾燥させたイカ軟甲 200gを 5cm
ほどの長さに砕き、 0.1規定の塩酸 2リットルに 2時間
浸漬した。その後、塩酸を除去し、 1規定の水酸化ナト
リウム 2リットルを注加して 1時間煮沸した。煮沸後、
水酸化ナトリウム廃液を除去し、流水で一晩洗浄するこ
とによりアルカリ液を洗い流し、さらに蒸留水で2度洗
浄した後、70℃の乾燥器で一晩乾燥して60gのイカ軟甲
キチンを得た。このようにして得たイカ軟甲キチンを粉
砕機で処理し、白色・綿状の微細イカ軟甲キチンを得
た。
【0026】得られた微細イカ軟甲キチン 0.2gをピリ
ジン10ml中に投入し、撹拌機で 2分間撹拌して高度に
膨潤したキチンド−プを得た。次いで、このキチンド−
プにクロロトリフェニルメタン 2.7gを添加し、さらに
ジメチルアミノピリジン 1gを添加して、窒素雰囲気下
で90℃に加熱しながら72時間撹拌を続けた。反応終了
後、加熱を止め、室温に冷却した後、溶媒を蒸発させて
反応液を濃縮した。得られた残渣を充分量のエタノ−ル
に撹拌しながら投入し、析出した固体をろ過により集
め、充分量のエタノ−ルおよびエ−テルで洗浄した後減
圧乾燥した。これにより淡黄色の粉末0.36gを得た。
【0027】得られた化合物の構造および置換度を決定
するために、赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)
分析および元素分析を行なった。その結果、赤外線吸収
スペクトルからは 762cm-1および 703cm-1にモノ置
換ベンゼンを示す吸収が観察され、この化合物がトリフ
ェニルメタンが結合したトリチル化キチンであることが
示唆された。また、元素分析からは、この化合物のトリ
チル化度が0.85であることが明らかになった。元素分析
の結果を下記表1に示す。 このように、イカ軟甲を原料とすることにより、下記反
応式に示すように、イカ軟甲キチンから一段階の反応で
所望のキチン誘導体を得ることができる。
【0028】
【化3】
【0029】比較例1 カニ甲殻を原料とし、常法(T. Sannan 、K. Kurita 、
Y. Iwakura、Makromol. Chem. 、 177、3589(1976))
に従ってカニ甲殻キチンを調製した後、 100メッシュに
粉砕した。このカニ甲殻キチン 0.2gをピリジン10ml
に投入し、撹拌機で撹拌を行なった。しかしながら、 1
時間ほど撹拌を継続しても全く膨潤する様子が見られな
いので、そのまま 3日間撹拌を継続した。 3日間の撹拌
の後も外見上はほとんど変化がなかったが、これにクロ
ロトリフェニルメタン 2.7gおよびジメチルアミノピリ
ジン 1gを添加し、窒素雰囲気下で90℃に加熱しながら
さらに72時間撹拌を続けた。反応終了後、加熱を止め、
室温で冷却した後、溶媒を蒸発させて濃縮した。得られ
た残渣を充分量のエタノ−ルに投入し、固体をろ過によ
り集めて充分量のエタノ−ルおよびエ−テルで洗浄した
後、減圧乾燥した。その結果、褐色の粉末を得た。
【0030】得られた化合物をIRスペクトル分析およ
び元素分析に供したところ、トリチル化キチンの特徴を
示す吸収は全く見られず、原料のキチンが多少の炭化を
受けたものと推定された。
【0031】比較例2 比較例1に示すように、カニ甲殻キチンはそのままでは
溶媒に溶解もしくは膨潤しないため、まず、常法( K.
Kurita、T. Sannan 、Y. Iwakura、Makromol.Chem. 、1
78 、3197(1977))により脱アセチル化を行なってキ
トサンを得た。得られたキトサン 2gをジメチルホルム
アミド 400ml中に分散させ、フタル酸無水物 5.5gを
添加して窒素雰囲気下において 130℃で 5時間加熱し
た。この反応によって得られた溶液を氷水中に注ぎ、生
成した沈殿をエタノ−ルおよびエ−テルで順次洗浄した
後、乾燥させることにより淡茶色のフタロイル化キトサ
ンを得た。このフタロイル化キトサンはピリジンに可溶
性である。
【0032】得られたフタロイル化キトサン 2gをピリ
ジン30mlに溶解し、クロロトリフェニルメタン19.2g
を添加して、窒素雰囲気下において90℃で24時間加熱し
た。この反応液から溶媒を蒸発させ、得られた粘稠な溶
液をエタノ−ル 120ml中に注ぎ、生成した白色の固体
をろ過により集めた。これをエタノ−ルおよびエ−テル
で順次洗浄し、乾燥させて白色粉末 3.6gを得た(収率
99%)。
【0033】このようにして得られた生成物 2g、ヒド
ラジン一水和物10.8mlおよび蒸留水21.6mlを混合
し、窒素雰囲気下において、撹拌しながら 100℃で15時
間加熱した。反応後、室温まで冷却し、蒸留水20mlを
加えて希釈してロ−タリ−エバポレ−タ−で蒸発乾固さ
せた。この操作を 3回繰り返した後、脱イオン水に懸濁
させ、白色の懸濁物をろ過により集め、エタノ−ルおよ
びエ−テルで順次洗浄した後乾燥させて白色の粉末 1.5
gを得た(収率84%)。
【0034】この白色の生成物 0.5gを10%希酢酸10m
lに溶解し、さらにメタノ−ル50mlを添加して希釈し
た。この溶液に無水酢酸 0.4mlを滴下、混合した後、
室温で12時間静置してゲル状物を得た。このゲル状物を
メタノ−ル 300mlに懸濁させ、室温で24時間撹拌した
後、懸濁物をろ過により集めた。次いで、この懸濁物を
蒸留水に再懸濁して未反応物を洗浄除去し、再度懸濁物
をろ過により集めて乾燥させた。これにより、収率92%
で反応生成物を得た。
【0035】得られた生成物をIRスペクトル分析およ
び元素分析に供し、生成物の構造の確認を行なった。そ
の結果、得られた生成物がトリチル化キチンであること
が確認された。
【0036】以上のように、カニ甲殻キチンを原料とし
てトリチル化キチンを得るためには、下記反応式に示す
ように、5段階の極めて複雑な工程を経なければならな
い。その結果、反応時間だけをとってみても各工程の所
用時間の合計は80時間であり、さらに生成物の洗浄、ろ
過、溶解等の操作に要する時間を入れると 100時間を越
えるものである。また、全工程を通しての収率は73%に
留まった。
【0037】
【化4】
【0038】実施例2:トシル化キチンの製造 実施例1と同様に調製した微細イカ軟甲キチン 0.2gを
ピリジン10mlに投入し、p-トルエンスルホニルクロリ
ド 2.0g、続いてジメチルアミノピリジン 0.2gを添加
して、窒素雰囲気下において室温で48時間撹拌した。こ
のようにして得られた濃黄色の液体を氷水中に注ぎ、析
出した懸濁物をろ過により集めた。この懸濁物をエタノ
−ルおよびエ−テルで順次洗浄した後減圧乾燥すること
により淡褐色の粉末 0.3gを得た。
【0039】この化合物をIRスペクトル分析および元
素分析に供したところ、1174cm-1にトシル基に由来す
るスルホン基の吸収が観測され、また元素分析の結果よ
りトシル化度が81%であることが確認された。下記表2
に元素分析の結果を示す。
【0040】この実施例において得られたトシル化キチ
ンは極性溶媒に可溶であるため、温和な条件下で化学反
応が可能である。したがって、さらに複雑な化学修飾を
行なうための前駆体として大変有用である。
【0041】比較例3 比較例1と同様に調製し、微粉化したカニ甲殻キチンお
よびエビ甲殻キチンをそれぞれ原料として、上記実施例
2と同様の手順でトシル化キチンの製造を行なった。し
かしながら、いずれの場合も反応が起こらずトシル化キ
チンを得ることはできなかった。
【0042】比較例4 微粉末にしたカニ甲殻キチン 2.5gに42重量%の水酸化
ナトリウム水溶液72.5gを加え、減圧下において室温で
3時間放置した。その後、氷 125gを添加して撹拌し、
アルカリキチンを得た。得られたアルカリキチンに、ト
シルクロリド35gをクロロホルム75mlに溶解した溶液
を激しく撹拌しながら加えた。この溶液を 0℃で 1時
間、続いて室温で 3時間撹拌した後、脱イオン水中に注
ぎ、生じた懸濁物をろ過により集めた。集めた懸濁物
は、洗浄液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、次い
でメタノ−ルおよびエ−テルで順次洗浄した後、減圧乾
燥して白色の粉末 4.0gを得た。この生成物をIRスペ
クトル分析および元素分析に供したところ、トシル化度
75%であった。
【0043】この生成物の脱アセチル化度を電導度滴定
法により測定したところ0.18であった。この結果、カニ
甲殻キチンをアルカリキチンとすることにより脱アセチ
ル化が副次的に起こっており、トシル化キチンとしては
純度の低いものであった。また、カニ甲殻キチンを原料
とした場合には、上述のように、クロロホルムなどのハ
ロゲン化溶媒を多量に必要とする点も大きな問題であ
る。
【0044】実施例3:完全N−アセチル化キチンの製
造 実施例1と同様の手順で調製した微細イカ軟甲キチン
0.2gをメタノ−ル20mlに投入し、 5分間撹拌して膨
潤させた後、無水酢酸10mlを添加して窒素雰囲気下に
おいて40℃で48時間撹拌を続けた。得られた生成物は氷
水中に投入して 2時間放置した。その後、析出した懸濁
物をろ過により集め、水およびアセトンで順次洗浄し、
減圧乾燥して白色粉末 0.2gを得た。
【0045】反応前のキチンと反応終了後の反応生成物
の脱アセチル化度を電導度滴定法で測定したところ、反
応前が0.07であったのに対して反応終了後には0.00であ
った。すなわち、この反応により 100%N−アセチル化
したキチンが得られた。また、この反応生成物に対して
は、IRスペクトルによりキチンの骨格が変性していな
いことを確認した。
【0046】このようにして得られた完全N−アセチル
化キチンは、非常に純度の高いキチンであり、キチンを
原料とする化学反応の出発物質として大変有用なもので
ある。
【0047】比較例5 微粉砕したカニ甲殻キチン(脱アセチル化度0.11)およ
びエビ甲殻キチン(脱アセチル化度0.13)をそれぞれ原
料とし、上記実施例3と同様の手順によりN−アセチル
化反応を行なった。しかしながら、反応終了後のキチン
の脱アセチル化度はそれぞれ0.11および0.13であり、こ
の方法ではアセチル化は全く進まなかった。
【0048】比較例6 微粉砕したカニ甲殻キチン 3gに40重量%の水酸化ナト
リウム溶液75gを加え、減圧下で 3時間放置した後、氷
222gを加えて撹拌し、アルカリキチン水溶液とした。
次いで、この水溶液を25℃で77時間放置し、 5℃に冷却
した後、氷 210gを添加し、塩酸を滴下してpHを 9に
下げた。この溶液を、 0℃に冷却したアセトン- 水(
7:1 )混合溶媒 5リットルに撹拌しながら滴下し、再
沈殿させた。次に、沈殿をろ過により集め、溶媒を除去
した後、再度冷アセトン- 水混合溶媒に懸濁し、少量の
水を加えて液の白濁を消失させた。このろ過洗浄工程を
5回繰り返し、最終的にアセトンで洗浄した後乾燥さ
せ、水溶性キチンを得た。このようにして得られた水溶
性キチン0.44gを40gの氷上に投入し、氷の融解と共に
水溶性キチンを溶解させた。得られた水溶液に酢酸1.44
gおよびジシクロヘキシルカルボジイミド4.94gをジメ
チルホルムアミド60mlに溶解した溶液を加え、室温で
44時間撹拌した後、この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム
水溶液に注ぎ入れた。これにより生じた懸濁物をろ過に
より集め、水およびメタノ−ルで順次洗浄した後、乾燥
させて白色の粉末を得た。得られた生成物を電導度滴定
及びIRスペクトル分析に供したところ、脱アセチル化
度は0.01であることが確認された。
【0049】このように、この比較例の方法によりカニ
甲殻キチンからN−アセチル化キチンを得ることができ
るが、アセチル化は 100%達成されておらず、工程が極
めて繁雑である上多量のアセトンを必要とするなどの問
題点がある。
【0050】実施例4:部分O−アセチル化キチンの製
造 実施例1と同様の手順により調製した微細イカ軟甲キチ
ン 0.2gをピリジン20mlに投入した後、無水酢酸10m
lを加え、さらにジメチルアミノピリジン 0.2gを加え
て窒素雰囲気下において室温で48時間撹拌した。反応終
了後、反応液を氷水中に注ぎ、 2時間放置した。その
後、析出した懸濁物をろ過により集め、エタノ−ルおよ
びエ−テルで順次洗浄し、減圧乾燥して白色の粉末 0.2
47gを得た。
【0051】得られた生成物をIRスペクトル分析およ
び元素分析に供した。その結果、IRスペクトルでは、
1742cm-1および1240cm-1にO−アセチル基由来の吸
収が観測されO−アセチルキチンであることが確認され
た。また、元素分析からは、アセチル化度が 2.0である
ことが確認された。元素分析の結果を下記表3に示す。
【0052】実施例5:完全O−アセチル化キチンの製
造 反応を、窒素雰囲気下において50℃で48時間撹拌しなが
ら行なうこと以外は実施例4と同様の操作を行なった。
その結果得られた白色の粉末を、実施例4と同様にIR
スペクトルおよび元素分析に供したところ、アセチル化
度 3.0の完全アセチル化キチンであることが確認され
た。
【0053】上記実施例4および5の他にも、種々の条
件下でのO−アセチル化について検討を行なったが、い
ずれの場合にもアセチル化度は 2.0または 3.0となり、
理由は不明ではあるがこの中間の値を取ることはなかっ
た。これらのことから、上記アセチル化度 2.0のO−ア
セチル化キチンは6位の第1級水酸基がアセチル化され
たO−アセチル化キチンであり、アセチル化度 3.0のO
−アセチル化キチンは6位水酸基の他に3位の第2級水
酸基がアセチル化された完全O−アセチル化キチンであ
ることが確認された。すなわち、これらの方法によれ
ば、厳密な条件設定を要することなく、簡便に、6位水
酸基のみをアセチル化したO−アセチル化キチンまたは
6位および3位水酸基のいずれもがアセチル化された完
全O−アセチル化キチンのいずれかを選択的に得ること
が可能になる。
【0054】比較例7 微細化したエビ甲殻キチン 0.2gを、15℃に保ったトリ
クロロ酢酸 6.5gおよび1,2-ジクロロエタン 3.5gの混
合溶液中に投入し、 2時間撹拌して溶解したものを 4℃
に冷却して24時間静置した。この溶液に無水酢酸 1.1m
lを滴下して温度を15℃に保ったまま 1時間撹拌した
後、 4℃で24時間静置することにより反応を行なった。
反応終了後、反応液を氷水中に注ぎ、生成する懸濁物を
ろ過により集めてエタノ−ルおよびエ−テルで順次洗浄
した。洗浄後、減圧乾燥することにより白色の粉末 0.2
35gを得た。
【0055】この生成物をIRスペクトル分析および元
素分析に供した。その結果、O−アセチル基由来の1742
cm-1および1240cm-1での吸収が観察され、O−アセ
チル化キチンであることが確認されたが、塩素含量が0.
37%と高く、トリクロロ酢酸を溶媒として使用すること
に起因する副反応が生じていることが推察され、純度の
低いものであった。
【0056】
【発明の効果】以上のように、この発明のキチン誘導体
の製造方法によると、キチン誘導体の製造工程が非常に
簡略化され、高品質のキチン誘導体を比較的容易に、収
率よく得ることができる。また、反応自体も過酷な条件
を必要としないので、安全であり、加えてキチン主鎖の
開裂がほとんど起こらず比較的高分子量で、変性・着色
等の少ないキチン誘導体が得られる。
【0057】この発明の方法により得られるキチン誘導
体の用途は非常に広範囲にわたる。とりわけ、キチンの
6位の第1級水酸基のみが化学修飾されたキチン誘導
体、例えば実施例2のトシル化キチンは、トシル化され
たことによって6位がより活性化されて反応性が向上す
るため、6位のみを他の化合物で化学修飾することが容
易になる。また、実施例1のトリチル化キチンおよび実
施例4の部分O−アセチル化キチンは、3位の水酸基を
他の置換基で化学修飾した後、必要に応じて6位に結合
しているトリチル基およびアセチル基を除去することに
より、3位の水酸基のみが選択的に化学修飾されたキチ
ン誘導体を容易に得ることができる。このように、この
発明により6位の第1級水酸基を種々の置換基で化学修
飾したキチン誘導体は、3位および6位のみを選択的に
化学修飾する際の出発物質として好適に用いることがで
きる。これらのキチン誘導体の中には、抗ウイルス物
質、抗血液凝固剤としてその効果が期待される化合物が
含まれる。また、これらのキチン誘導体は、有機溶媒に
可溶のものが多く、容易に膜を形成させることが可能で
あり、選択的透過膜としての利用が期待されている。
【0058】実施例3の完全N−アセチル化キチン、実
施例4の部分O−アセチル化キチン、実施例5の完全O
−アセチル化キチン等は特定の位置がアセチル化したも
のであり、キチンを出発物質として化学修飾を行なう
際、構造的に明確であることが要求される場合に有用で
ある。さらに、各種分析における標準物質としても好適
に用いられる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イカ軟甲を脱灰処理および脱タンパク質
    処理し、次いで溶媒で膨潤させた後、置換基導入剤を添
    加して反応させるキチン誘導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記キチン誘導体が下記一般式(I)で
    表わされる請求項1記載の方法。 【化1】 (ここで、R1 は置換もしくは無置換のアルキル基、ア
    シル基、並びにカルバモイル基、スルホニル基およびア
    ラルキル基を表わし、R2 は置換もしくは無置換のアル
    キル基、アシル基、並びにカルバモイル基およびスルホ
    ニル基を表わす)
  3. 【請求項3】 前記溶媒が、ピリジン、ジメチルスルホ
    キシド、n−メチルピロリドン、m−クレゾ−ル、ジメ
    チルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチ
    ルホスホルアミド、メタノ−ル、エタノ−ルおよびジク
    ロロ酢酸からなる群より選ばれる有機溶媒の少なくとも
    1種である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記置換基導入剤がハロゲン化アルキ
    ル、カルボン酸無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化
    スルホニル、ハロゲン化アラルキル、エポキシ化合物か
    ら選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のキチン誘導体の製造方法
    における中間体としてのキチンであって、イカ軟甲を脱
    灰処理および脱タンパク質処理することにより得られる
    キチン。
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